JP2013247014A - リチウムイオン二次電池用セパレータ、それを用いたリチウムイオン二次電池、および該リチウムイオン二次電池を用いた二次電池システム - Google Patents

リチウムイオン二次電池用セパレータ、それを用いたリチウムイオン二次電池、および該リチウムイオン二次電池を用いた二次電池システム Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池を大型電気機器に適用すべく、容量、安全性および耐熱性の3項目を小型電子機器の場合よりも高いレベルでバランスさせることのできるリチウムイオン二次電池用セパレータを提供する。また、容量、安全性および耐熱性の3項目が高いレベルでバランスしたリチウムイオン二次電池および二次電池システムを提供する。
【解決手段】本発明に係るリチウムイオン二次電池用セパレータは、リチウムイオン二次電池における正極と負極とを仕切るセパレータであって、前記セパレータは、多数の細孔を有する多孔体からなり、前記多孔体の表面には、所定の官能基を有する過充電防止剤が担持されており、前記所定の官能基は、前記リチウムイオン二次電池が過充電領域の温度に達した時に、不活性ガスを発生して、該不活性ガスによって前記細孔を閉塞する官能基であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用セパレータ、それを用いたリチウムイオン二次電池、および二次電池システムに関するものである。
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いことから小型化に有利であり、携帯用パソコンや携帯電話機等の小型電子機器に広く用いられてきた。近年、リチウムイオン二次電池の用途は、大型電気機器(例えば、HEV(ハイブリッド自動車)やEV(電気自動車)などの自動車用動力電源や、電力貯蔵用電源)にも拡大してきている。リチウムイオン二次電池をこれらの大型電気機器に適用するためには、小型電子機器の場合よりも、はるかに高い出力と容量とを実現することに加えて、絶対的な容積が大きくなるが故により高い安全性を確保することが重要である。
リチウムイオン二次電池のセパレータとしては、多数の細孔を有するポリオレフィン製の微多孔膜が広く知られている。このセパレータは、リチウムイオン二次電池が過充電などで異常発熱した時に、セパレータを構成するポリオレフィンが溶融して細孔を塞ぐことでリチウムイオンの移動を妨げ、リチウムイオン二次電池の更なる過熱を防止できるとされている。このように、リチウムイオン二次電池の安全性を確保するため、電池を停止させる機能(シャットダウン機能)をセパレータに持たせている。
シャットダウン機能を効果的に発現させるためには、セパレータを構成する材料の融点が低いことが望ましい。これは、リチウムイオン二次電池の異常発熱が発生した時、速やかにセパレータが溶融してリチウムイオン二次電池を停止することが好ましいからである。
一方、HEV等の自動車用動力電源に適用されるリチウムイオン二次電池は、高温環境下で使用されるため、高い安全性とともに、高い耐熱性が要求される。リチウムイオン二次電池の耐熱性を高くするためには、セパレータを構成する材料の融点は高いことが望ましい。
リチウムイオン二次電池において高い安全性と高い耐熱性とを両立させるため、セパレータに対しては相反するような特性が求められている。この要求を満たすべく、種々の研究開発が精力的に進められている。
例えば、特許文献1には、不織布の表裏両面に主としてメタ芳香族ポリアミドから成る多孔質層が形成されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータが開示されている。特許文献1によると、耐熱性が十分に高く、過充電対策にも有効でハンドリング性良好なセパレータを提供することができるとしている。
また、特許文献2には、耐熱性含窒素芳香族重合体およびセラミックス粉末を含むことを特徴とする非水電解質電池セパレータが開示されている。特許文献2によると、高耐熱性でショート温度(シャットダウン後、さらに温度が上昇し、セパレータが溶融して孔が開き、電池が短絡する温度)が高く、さらにイオン透過性が良好で電池特性が良い非水電解質電池用セパレータを提供することができるとしている。
また、特許文献3には、非水系電解液二次電池に用いるセパレータであって、少なくとも二つの層が積層された積層体よりなり、該少なくとも二つの層のうち、少なくとも一層が140℃以下のシャットダウン温度を有しており、少なくとも一層の熱変形温度(JIS K 7207A)が100℃以上であり、正極と対向する層の酸素指数(JIS K 7201A)が26以上であることを特徴とする非水系電解液二次電池用セパレータが開示されている。特許文献3によると、耐酸化還元性に優れ、さらに、高温での形状維持とシャットダウン特性のバランスに優れた非水系電解液二次電池用セパレータを提供することができるとしている。
国際公開第2006/123811号 特開2000‐030686号公報 特開2011‐233534号公報
リチウムイオン二次電池に対する高い容量、高い安全性および高い耐熱性の要求は、近年ますます高まっている。特に、リチウムイオン二次電池を大型電気機器に適用しようとする場合、容量、安全性および耐熱性の3項目において小型電子機器の場合よりも高いレベルでバランスさせることが非常に重要であり、その観点で更なる改善が強く望まれていた。
したがって、本発明の目的は、リチウムイオン二次電池を大型電気機器に適用すべく、容量、安全性および耐熱性の3項目を小型電子機器の場合よりも高いレベルでバランスさせることのできるリチウムイオン二次電池用セパレータを提供することにある。また、該セパレータを用いることによって、容量、安全性および耐熱性の3項目が高いレベルでバランスしたリチウムイオン二次電池、およびそれを用いた二次電池システムを提供することにある。
(I)本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池における正極と負極とを仕切るセパレータであって、前記セパレータは、多数の細孔を有する多孔体からなり、前記多孔体の表面には、所定の官能基を有する過充電防止剤が担持されており、前記所定の官能基は、前記リチウムイオン二次電池が過充電領域の温度に達した時に、不活性ガスを発生して、該不活性ガスによって前記細孔を閉塞する官能基であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータを提供する。なお、本発明において、多孔体の表面とは細孔の内表面を含む。また、本発明において、不活性ガスとは可燃性や支燃性でないガスであって、燃焼反応に関与するラジカル種(ヒドロキシラジカルや水素ラジカル)や酸素を捕捉するガスを含む。
(II)本発明の他の一態様は、正極と、負極と、前記正極と前記負極とを仕切るセパレータとを有するリチウムイオン二次電池であって、前記セパレータは、多数の細孔を有する多孔体からなり、前記多孔体の表面には、所定の官能基を有する過充電防止剤が担持されており、前記所定の官能基は、前記リチウムイオン二次電池が過充電領域の温度に達した時に、不活性ガスを発生して該不活性ガスによって前記細孔を閉塞する官能基であることを特徴とするリチウムイオン二次電池を提供する。
(III)本発明の更に他の一態様は、上記の発明に係るリチウムイオン二次電池を用いたことを特徴とする二次電池システムを提供する。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池における容量、安全性および耐熱性の3項目を小型電子機器の場合よりも高いレベルでバランスさせることのできるリチウムイオン二次電池用セパレータを提供することができる。また、該セパレータを用いることによって、容量、安全性および耐熱性の3項目が高いレベルでバランスしたリチウムイオン二次電池、およびそれを用いた二次電池システムを提供することができる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池の1例を示す断面模式図である。 本発明に係る二次電池システムの1例を示す断面模式図である。 本発明で好適に用いられるセルロース誘導体の基本構造を示す図である。
リチウムイオン二次電池を過充電すると、正極側で非水電解液の酸化や正極材料の結晶構造の破壊が起こったり、負極側で金属リチウムが析出したりすることによって、電池が発熱する。過充電は、リチウムイオン二次電池を急激に劣化させるだけでなく、電池の破裂・発火の要因となる場合がある。そのため、過充電の防止は、リチウムイオン二次電池の安全性確保の観点から、非常に重要な課題である。
本発明者等は、リチウムイオン二次電池において耐熱性の向上と高い安全性の確保との両立を目指して、従来技術における不具合の発生を詳細に分析し、セパレータと過充電防止剤との構成について鋭意検討した。その結果、特定の官能基を有する過充電防止剤をセパレータの表面(多孔体の細孔の内表面を含む)に担持させることによって、二次電池の過充電時に該官能基のわずかな分解により生成したガスが、セパレータの細孔を閉塞してリチウムイオンの移動を効果的に抑止できることを見出した。これは、従前の低融点セパレータ材におけるシャットダウン機能と同様の作用と言えた。本発明は、当該知見に基づいて完成されたものである。
本発明は、前述した発明に係るリチウムイオン二次電池用セパレータおよびリチウムイオン二次電池において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記所定の官能基は、カルボン酸基、α‐ケト酸基、ジアゾ基およびリン酸基の内の少なくとも1つである。
(ii)前記不活性ガスは、二酸化炭素、窒素およびリンの内の少なくとも1つを含むガスである。
(iii)前記多孔体は、セルロース繊維を含有する。
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながらより具体的に説明する。ただし、本発明は、ここで取り挙げた実施形態に限定されることはなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、図面において、同義の部材・部位には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
[リチウムイオン二次電池用セパレータ]
前述したように、本発明に係るリチウムイオン二次電池用セパレータは、多数の細孔を有する多孔体からなり、該多孔体の表面には所定の官能基を有する過充電防止剤が担持されている。所定の官能基(詳細は後述する)は、リチウムイオン二次電池が過充電領域の温度に達した時に、分解して不活性ガスを発生する。該不活性ガスが、多孔体からなるセパレータの細孔を閉塞し、リチウムイオンの移動を抑止するためリチウムイオン二次電池の過充電を防止することができる。
従来技術では、セパレータ自身が溶融してセパレータの細孔を閉塞するメカニズム(シャットダウン機能)であったために、セパレータ材として融点の低い材料を選択しなければならなかった。その場合、前述したように、リチウムイオン二次電池の高耐熱性化を達成することが困難であった。
これに対し、本発明は、セパレータ自身を溶融させないため、耐熱性の高い種々の材料を利用することができ、リチウムイオン二次電池の高耐熱性化に大きく貢献する。本発明のセパレータの材料としては、非水電解質や電極と化学反応しないもので、過充電防止剤を担持できるものあれば、任意のものを選択することができる。
リチウムイオン二次電池用セパレータは、二次電池の充放電時にリチウムイオンを透過させる必要があることから、細孔径が0.01〜10μmであることが好ましく、気孔率が40〜90%であることが好ましい。気孔率が40%よりも小さいと、リチウムイオンの移動が阻害され、90%よりも大きいと、セパレータの強度が不十分となる。以上の条件を考慮し、耐熱性の高い繊維材料を骨材として用い、結着剤で一体化した構造(いわゆる不織布)は、好ましい形態である。
より具体的には、本発明のセパレータは、耐熱性の高い繊維材料として、ポリアラミド繊維やセルロース繊維などを好適に用いることができる。中でもセルロース繊維は、従来用いられてきたポリオレフィン系材料よりも耐熱性が高い上に安価であることから、特に好ましい。
結着剤としては、セルロース誘導体を好適に用いることができる。図3は、本発明で好適に用いられるセルロース誘導体の基本構造を示す図である。図3に示したように無水グルコースを繰り返し単位として、図中の「R」をアルキル基、カルボニル基(-C=O)、カルボキシル基(-COOY、Yは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属など)で置換したものを好適に用いることができる。具体例として、メチルセルロース(「R」が「-CH3」)、ヒドロキシエチルセルロース(「R」が「-CH2CH2OH」)、ヒドロキシプロピルセルロース(「R」が「-CH2CH(CH3)OH」)、アセチルセルロース(「R」が「-COCH3」)などが挙げられる。
また、上述したセルロース誘導体の他、スチレンブタジエンポリマ、エチレンプロピレンポリマ、ポリアクリル酸またはそのアルカリ金属塩、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などを結着剤として好適に用いることができる。これらの中でも、セルロース誘導体やスチレンブタジエンポリマは、水中での分散性に優れ、セパレータを作製する上でコストを抑えることができるため、特に好ましい。
本発明では、リチウムイオン二次電池の過充電領域の温度を、100℃以上200℃以下とする。そのため、本発明で用いる過充電防止剤は、過充電防止剤に結合した官能基の分解温度が100℃以上200℃以下であるものを選択する。分解温度が100℃未満では、高温環境下でのリチウムイオン二次電池の使用を想定した場合に不十分である。また、分解温度が200℃超では、安全性の観点(例えば、非水電解液の耐熱性の観点)から好ましくない。
本発明の過充電防止剤(過充電防止剤に結合した官能基)は、上述した過充電領域の温度において不活性ガスを発生する。発生させる不活性ガスとしては、二酸化炭素や窒素を含むガスが好ましい。さらに、リンを含むガスを発生させることがより好ましい。リンを含むガスは、燃焼を抑制する作用があることから、過充電防止機能に加えて非水電解液の燃焼抑制機能を更に付与することができる。
100℃以上200℃以下で分解し、二酸化炭素、窒素またはリンを含むガスを発生する官能基としては、カルボン酸基、α‐ケト酸基、ジアゾ基、リン酸基の内の少なくとも1つを有することが好ましい。それら官能基を有する化合物(過充電防止剤)として、例えば、α-ケトカルボン酸、ピルビン酸、メチルジアゾ・リチウム塩、オキシフルオロフォスフェート、トリメチルオキシジフルオロフォスフェート、マグネシウムヘキサフルオロフォスフェート、カルシウムヘキサフルオロフォスフェート、ピルビン酸リチウム、第3級アミンヘキサフルオロフォスフェート、ジアゾヘキサフルオロフォスフェート、アルキルオキシフルオロフォスフェート、アルキルオキシジフルオロフォスフェートなどを好適に用いることができる。
本発明の過充電防止剤のセパレータへの担持方法に特段の限定はなく、成形されたセパレータの表面に塗布・含浸させてもよいし、結着剤と混合した後にセパレータを成形してもよい。また、担持させる過充電防止剤の量は、過充電防止剤に結合した官能基が分解して発生する不活性ガスが、セパレータの有する細孔を十分に閉塞させることができる量であればよい。
ここで、セルロース繊維を骨材として用いた場合について説明する。セルロースは、その分子構造中に酸素を多数有しており、六員環の側鎖としてカルボン酸やエーテルやエステルを導入することが容易である。そして、これらの側鎖を介して、所定の官能基を容易に結合させることができる。言い換えると、所定の官能基をセルロース繊維に結合させることにより、セルロース繊維自体を過充電防止剤として機能させることができる。
上述したセパレータに、ポリオレフィン系高分子シート(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)や、フッ素系高分子シート(例えば、ポリオレフィン系高分子と4フッ化ポリエチレンの混合物)を更に溶着させ、多層構造としてもよい。また、電池温度が高くなった時にセパレータが望まない収縮を起こさないように、セパレータの表面にセラミックスとバインダとの混合物を薄層状に形成してもよい。
[リチウムイオン二次電池]
リチウムイオン二次電池の構成について説明する。図1は、本発明に係るリチウムイオン二次電池の1例を示す断面模式図である。図1に示したように、正極107および負極108は、これらが直接接触しないようにセパレータ109を挟み込んだ状態で惓回されて、電極群を形成している。なお、電極群の構造は、円筒状、扁平状などの任意の形状の捲回に限定されるものではなく、短冊状電極を積層したものであってもよい。
正極107には正極リード110が付設されており、負極108には負極リード111が付設されている。リード110、111は、ワイヤ状、箔状、板状などの任意の形状を採ることができる。電気的損失を小さくし、かつ化学的安定性を確保できるような構造・材質が選定される。
電極群は、電池容器102に収容されており、電池容器102の上部に設置された絶縁シール112および底部に設置された絶縁シール(図示せず)によって、挿入された電極群が電池容器102と直接接触しないようになっている。さらに、電池容器102の内部には、非水電解液が注入され、正極107と負極108の表面およびセパレータ109の細孔内部や表面に保持されている。電極群を電池容器102に収納し密閉した後に、非水電解液を注液口106より滴下し、所定量の充填した後に、注液口106を密封する。なお、非水電解液の注入方法・手順は、他の方法・手順でもよい。
電池容器102の形状は、通常、電極群の形状に合わせた形状(例えば、円筒状、扁平長円柱状、角柱など)が選択される。絶縁性シール112は、非水電解液と反応せず、かつ気密性に優れた任意の材質(例えば、熱硬化性樹脂、ガラスハーメチックシールなど)を好適に使用することができる。
電池容器102の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼製など、非水電解液に対し耐食性のある材料から選択される。電池容器102への蓋103の取り付けは、溶接の他に、かしめ、接着などの他の方法も採ることができる。非水電解液の注液に用いる注液口106に安全機構としての機能を付与することも可能である。安全機構としては、例えば、電池容器内部の圧力が所定以上となった際に解放する圧力弁がある。
正極リード110または負極リード111の途中、あるいは正極リード110と正極外部端子104との接続部や、負極リード111と負極外部端子105との接続部に、正温度係数抵抗素子を利用した電流遮断機構(図示せず)を設けることは好ましい。電流遮断機構を設けると、電池内部の温度が高くなったときに、リチウムイオン二次電池101の充放電を停止させ、電池を保護することが可能となる。
リチウムイオン二次電池を構成する正極107は、正極集電体の片面または両面に正極活物質を含む正極合剤スラリーを塗布・乾燥させた後、ロールプレス機などを用いて圧縮成形して、所定の大きさに切断することで作製される。正極の集電体には、厚さが10〜100μmのアルミニウム箔や、厚さ10〜100μmで孔径0.1〜10 mmのアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡アルミニウム板などが用いられる。材質は、アルミニウムの他に、ステンレス鋼、チタンなども適用可能である。
同様に、リチウムイオン二次電池を構成する負極108は、負極集電体の片面または両面に負極活物質を含む負極合剤スラリーを塗布・乾燥させた後、ロールプレス機などを用いて圧縮成形して、所定の大きさに切断することで作製される。負極の集電体には、厚さが10〜100μmの銅箔や、厚さ10〜100μmで孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡銅板などが用いられ、材質は、銅の他に、ステンレス鋼、チタン、ニッケルなども適用可能である。
正極合剤スラリーおよび負極合剤スラリーの塗布方法に特段の限定はなく、従前の方法(例えば、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法など)を利用することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、複数の合剤層を集電体に積層することも可能である。
正極107に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵および放出をすることができるリチウム化合物であれば特に限定されない。例えば、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。これらいずれかの単独または2種以上の混合物を用いることができる。正極活物質に対して、バインダ、増粘剤、導電剤、溶媒などを必要に応じて混合して正極合剤スラリーが作製される。
正極活物質の粒径は、合剤層の厚さ以下になるように規定される。正極活物質粉末中に合剤層厚さ以上の粒径を有する粗粒がある場合、ふるい分級、風流分級などにより粗粒を予め除去し、合剤層厚さ以下の粒子を用意する。
正極活物質とバインダとの混合比率は、質量比で85 : 15〜95 : 5の範囲になるようにすることが好ましい。正極活物質の質量比率が85/100未満では、二次電池のエネルギー密度が低下する。一方、正極活物質の質量比率が95/100超では、導電剤が不足して充放電できる最大電流値が低下すると共に、サイクル寿命が低下する。
正極の導電剤としては、導電性繊維(例えば、気相成長炭素、カーボンナノチューブ、ピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して製造した繊維、アクリル繊維から製造した炭素繊維など)が好適に用いられる。また、導電剤は、正極活物質よりも電気抵抗の低い材料であって、正極の充放電電位(通常は2.5〜4.2Vである)にて酸化溶解しない材料を使用してもよい。例えば、耐食性金属(チタンや金など)、炭化物(SiCやWCなど)、窒化物(Si3N4やBNなど)が挙げられる。高比表面積の炭素材料(例えば、カーボンブラックや活性炭など)も使用できる。
負極108に用いられる負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵および放出をすることができる材料であれば特に限定されない。例えば、アルミニウム、シリコン、錫、炭素材料(黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェ−ズ炭素、膨張黒鉛、炭素繊維、気相成長法炭素繊維、ピッチ系炭素質材料、ニードルコークス、石油コークス、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、カーボンブラック、非晶質炭素など)が利用可能である。非晶質炭素は、例えば、5員環または6員環の環式炭化水素や環式含酸素有機化合物を熱分解して作製される。これらいずれかの単独または2種以上の混合物を用いることができる。これらの中でも、非晶質炭素はリチウムイオンの吸蔵および放出の際の体積変化率が少ない材料であるため、充放電のサイクル特性が高いことから、負極活物質として非晶質炭素を含むことは好ましい。また、上述した炭素材料に加えて、導電性高分子材料(ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリアセチレンなど)を添加してもよい。負極活物質に対して、バインダ、増粘剤、導電剤、溶媒などを必要に応じて混合して負極合剤スラリーが作製される。
負極活物質とバインダの混合比率は、質量比で90 : 10〜99 : 1の範囲になるようにすることが好ましい。負極活物質の質量比率が90/100未満では、二次電池のエネルギー密度が低下する。一方、負極活物質の質量比率が99/100超では、バインダが不足してサイクル寿命が低下する。負極の導電剤としては、正極導電剤と同様の材料を用いることが可能である。
正極合剤スラリーおよび負極合剤スラリーに用いられるバインダ、増粘剤および溶媒に特段の限定はなく、従前と同様のものを用いることができる。
非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)にジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などを混合した非水溶媒に、電解質(支持塩ともいう)として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、あるいはホウフッ化リチウム(LiBF)を溶解させた溶液がある。本発明は、非水溶媒や電解質の種類、非水溶媒の混合比に制限されることなく、他の非水電解液も利用可能である。
非水電解液に使用可能な非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、1,2-ジエトキシエタン、クロルエチレンカーボネート、クロルプロピレンカーボネートなどが挙げられる。本発明の二次電池に内蔵される正極上または負極上で分解されないものであれば、これ以外の非水溶媒を用いてもよい。
また、非水電解液に用いる電解質としては、従前のものを利用することができ、例えば、化学式でLiPF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6あるいはリチウムトリフルオロメタンスルホンイミドで代表されるリチウムのイミド塩などの多種類のリチウム塩がある。これらの塩のいずれか単体または混合物を好適に用いることができる。
さらに、電解質としては、イオン性液体を用いることができる。例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-テトラフルオロボレイト(EMI-BF4)、リチウム塩とトリグライムとテトラグライムの混合錯体(LiN(SO2CF3)2(LiTFSI))、環状四級アンモニウム系陽イオン(N-メチル-N-プロピルピロリジウムなど)、イミド系陰イオン(ビス(フルオロスルフォニル)イミドなど)が挙げられる。
これら電解質の濃度については、非水溶媒の合計体積に対して、0.8〜2.0 mol/Lの範囲とすることが好ましい。
[二次電池システム]
リチウムイオン二次電池を使用した二次電池システムの構成について説明する。本発明に係る二次電池システムとは、少なくとも2個以上のリチウムイオン二次電池を直列あるいは並列に接続し、かつ充放電制御機構を有するシステムと定義する。図2は、本発明に係る二次電池システムの1例を示す断面模式図である。図2に示したように、本構成では2個のリチウムイオン二次電池101a,101bが直列に接続されている。図2の紙面右側に配置したリチウムイオン二次電池101aの負極外部端子105は、電力ケーブル213により充放電制御機構216の負極入力ターミナルに接続されている。紙面左側に配置したリチウムイオン二次電池101bの負極外部端子105は、電力ケーブル214によりリチウムイオン二次電池101aの正極外部端子104に接続されている。さらに、リチウムイオン二次電池101bの正極外部端子104は、電力ケーブル215により充放電制御機構216の正極入力ターミナルに接続されている。このような配線構成によって、2個のリチウムイオン二次電池101a,101bを充放電制御機構216で制御しながら充電または放電させることができる。なお、ここで説明していない部品については、対応する同一番号の図1の部品と同じである。
充放電制御機構216は、電力ケーブル217,218を介して、外部機器219との間で電力の授受を行う。外部機器219は、外部負荷の他、充放電制御機構216に給電するための外部電源や回生モータ等の各種電気機器を含む。また、外部機器が対応する交流、直流の種類に応じて、インバータやコンバータを設けることができる。
発電装置222は、電力ケーブル220,221を介して充放電制御機構216に接続される。発電装置222が発電しているときには、充放電制御機構216が充電モードに移行し、外部機器219に給電するとともに、余剰電力をリチウムイオン二次電池101a,101bに充電する。発電装置222の発電量が外部機器219の要求電力よりも少ないときには、リチウムイオン二次電池101a,101bから電力供給させるように充放電制御機構216が放電モードに移行する。充放電制御機構216は、そのようなモード移行が自動的に行われるようにプログラムが記憶されていることが好ましい。
発電装置222としては、再生可能エネルギーを生み出す発電装置(例えば、風力発電装置、地熱発電装置、太陽電池)や、通常の発電装置(例えば、燃料電池、ガスタービン発電機など)を用いることができる。
本発明に係る二次電池システムは、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動式建設機械、運搬機器、建設機械、介護機器、軽車両、電動工具、ロボット、離島の電力貯蔵システム、宇宙ステーションなどの電源として利用することができる。
本発明は、リチウムイオン二次電池に限らず、非水電解液を用い、電極へのイオンの吸蔵・放出により、電気エネルギーを貯蔵・利用可能とする電気化学デバイスに適用することが可能である。本発明は容量、耐熱性および安全性に優れるため、特に大型の移動体または定置型の電池システムに好適である。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[リチウムイオン二次電池の作製と評価]
(実施例1のリチウムイオン二次電池の作製)
(1)正極の作製
まず、正極活物質(85質量%、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)、バインダ(8質量%、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、株式会社クレハ製)、導電剤(7質量%、カーボンブラック)および溶媒(1-メチル-2-ピロリドン)を調合して正極合剤スラリーを作製した。
次に、この正極合剤スラリーを、厚さ20μmの正極集電体(アルミニウム箔)の片面にドクターブレード法を用いて塗布し、乾燥させて、正極合剤層を形成した。その後、ロールプレス機により圧縮成形し、所定の大きさに切断してリチウムイオン二次電池用正極を作製した。
(2)負極の作製
負極活物質(98質量%、黒鉛(XRD測定により求めた(002)の面間隔d002 = 0.35〜0.36 nm))、バインダ(2質量%、スチレンブタジエンゴム(1質量%)+カルボキシルメチルセルロースナトリウム(1質量%))および溶媒(純水)を調合して負極合剤スラリーを作製した。
次に、この負極合剤スラリーを、厚さ20μmの負極集電体(銅箔)の片面にドクターブレード法を用いて塗布し、乾燥させて、負極合剤層を形成した。その後、ロールプレス機により圧縮成形し、所定の大きさに切断してリチウムイオン二次電池用負極を作製した。
(3)セパレータの作製
骨材としてセルロース繊維を用い、結着剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMCと略す。融点:300℃以上)を用いてセパレータ(厚さ:30μm、平均細孔径:1〜3μm、気孔率:70〜80%)を作製した。本実施例では、セルロース繊維として、セルロースのβ位の炭素にトリメチルアミンヘキサフルオロフォスフェートで置換したもの(図3における「-OR」を「-N(CH3)2PF6」として重合したもの)を使用した。これにより、セパレータに過充電防止剤を担持させた。
(4)非水電解液の作製
非水電解液の非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(体積比=1 : 1)を調合した。該混合溶媒に対して、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1 mol/Lとなるように溶解させて、非水電解液を作製した。なお、電解質の濃度は、非水溶媒全体に対するに対する体積モル濃度である。
(5)リチウムイオン二次電池の作製
上記で作製した正極、負極、セパレータおよび非水電解液を使用して、図1に示したリチウムイオン二次電池(定格容量:3 Ah)を作製した。電池容器102および蓋103にはステンレス鋼を用い、絶縁性シール112にはフッ素樹脂を用いた。また、図1に示したように、セパレータ109は、正極107と電池容器102との間、負極108と電池容器102との間にも配置し、電池容器102を通じて正極107と負極108とが短絡しない構成とした。
(試験評価)
(a)充放電試験(初期容量評価)
上記で用意したリチウムイオン二次電池について、以下の充放電試験を実施し、初期容量を評価した。まず、作製した二次電池を開回路の状態から電池電圧が4.2 Vになるまで、2時間率相当の定電流にて充電した。電池電圧が4.2 Vに達した後は、電流値が100時間率相当になるまで4.2 Vを保持した。その後、充電を停止し、30分間の休止時間を設けた。次いで、0.5時間率相当の定電流の放電を開始し、電池電圧が3.0 Vに達するまで放電させた。その後、放電を停止し、30分の休止時間を設けた。ここまでの工程を初期エージングと称す。この初期エージングを3回繰り返した後に得られた放電容量を当該二次電池の初期容量とした。同じ条件の二次電池を5個作製し、上述した試験を同様に実施して、初期容量の平均値を算出した。定格容量に対して、±5%以内の初期容量を「合格」と評価し、±5%超の初期容量を「不合格」と評価した。結果を後述する表1に示す。
なお、ここで言う時間率とは、電池の設計放電容量を所定の時間で放電する電流値と定義する(以下、同様)。例えば、上述の0.5時間率とは、電池の設計容量を0.5時間で放電する電流値である。さらに具体的には電池の容量をC(単位:Ah)とすると、0.5時間率の電流値はC/0.5(単位:A)となる。
(b)過充電試験(安全性評価)
初期容量を評価した二次電池に対し過充電試験を実施した。過充電試験の手順を以下に示す。上記で用意したリチウムイオン二次電池を、初期容量を得た後、初期エージングの充電条件に従って再充電し、充電深度100%にした。その状態から、上限電圧4.2 Vを10 Vに変更し、10 Vに達するまで過充電を継続した。この間、二次電池の破裂または発火がないものを「合格」と評価し、二次電池の破裂または発火があったものを「不合格」と評価した。結果を表1に併記する。
(実施例2のリチウムイオン二次電池の作製)
セパレータに用いたセルロース繊維として、セルロースのβ位の炭素にピルビン酸リチウムで置換したもの(図3における「-OR」を「-CH2COCOOLi」として重合したもの)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験および過充電試験を実施した。セパレータの構成と試験・評価結果を表1に併記する。
(実施例3のリチウムイオン二次電池の作製)
セパレータに用いたセルロース繊維として、セルロースのβ位の炭素にメチルジアゾアセテートで置換したもの(図3における「-OR」を「-CH2OCOCHNN」として重合したもの)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験および過充電試験を実施した。セパレータの構成と試験・評価結果を表1に併記する。
(実施例4のリチウムイオン二次電池の作製)
セパレータに用いたセルロース繊維として、セルロースのβ位の炭素にオキシフルオロフォスフェートで置換したもの(図3における「-OR」を「-POxFy」として重合したもの)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験および過充電試験を実施した。セパレータの構成と試験・評価結果を表1に併記する。なお、オキシフルオロフォスフェートは単一の組成で合成することは困難であるため、複数の組成の混合物となる。リンの酸化数が5となるように、xおよびyはそれぞれ「x=1〜3」、「y=0〜5」の範囲にある。
(実施例5のリチウムイオン二次電池の作製)
セパレータに用いたセルロース繊維として、セルロースのβ位の炭素にメチルフルオロフォスフェートで置換したもの(図3における「-OR」を「-CH2OPOF(OC2H5)」として重合したもの)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験および過充電試験を実施した。セパレータの構成と試験・評価結果を表1に併記する。
(実施例6のリチウムイオン二次電池の作製)
セパレータの骨材としてセルロース繊維を用い、結着剤としてCMCを用いて成形したセパレータを、アセトニトリルに溶解させたマグネシウムヘキサフルオロフォスフェート(Mg(PF6)2)溶液に含漬した。その後、アセトニトリル(溶媒)を蒸発させ、セパレータの表面(細孔内表面を含む)にマグネシウムヘキサフルオロフォスフェートを保持させたセパレータを作製した。該セパレータを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験および過充電試験を実施した。セパレータの構成と試験・評価結果を表1に併記する。なお、実施例6のセパレータは、アセトニトリルに溶解させたマグネシウムヘキサフルオロフォスフェート溶液にセルロース繊維を分散させ、該セルロース繊維をすき取って溶媒を蒸発させた後に結着剤とともに成形して、マグネシウムヘキサフルオロフォスフェートをセルロース繊維に混合する手順でも同じものができる。
(実施例7のリチウムイオン二次電池の作製)
マグネシウムヘキサフルオロフォスフェート(Mg(PF6)2)をアルミナ粉末(平均粒径:3μm)と乾式で混合した。これにイソプロピルアルコールを添加し、混練装置にて混ぜ合わせて過充電防止剤スラリを調合した。この過充電防止剤スラリを、セルロース繊維とポリオレフィンとで成形したセパレータの表面に塗布・乾燥し、セパレータの表面(細孔内表面を含む)に過充電防止剤を担持させた。このセパレータを用いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験および過充電試験を実施した。セパレータの構成と試験・評価結果を表1に併記する。
(実施例8のリチウムイオン二次電池の作製)
カルシウムヘキサフルオロフォスフェート(Ca(PF6)2)をアセトニトリルに溶解させて、過充電防止剤溶液を調合した。この過充電防止剤溶液を、セルロース繊維とポリオレフィンとで成形したセパレータの表面に塗布・乾燥し、セパレータの表面(細孔内表面を含む)に過充電防止剤を担持させた。このセパレータを用いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験および過充電試験を実施した。セパレータの構成と試験・評価結果を表1に併記する。
(比較例1のリチウムイオン二次電池の作製)
過充電防止剤を担持させずにセパレータを作製したこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験および過充電試験を実施した。セパレータの構成と試験・評価結果を表1に併記する。
(比較例2のリチウムイオン二次電池の作製)
比較例1と同様に、セパレータは、過充電防止剤を担持させずに作製した。一方、非水電解液に、過充電防止剤としてピルビン酸リチウムを添加・溶解させた。それら以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験および過充電試験を実施した。セパレータの構成と試験・評価結果を表1に併記する。
Figure 2013247014
表1に示したように、本発明に係るセパレータ(実施例1〜8)は、初期容量、過充電試験の両方の項目において、要求されるレベルを全てクリアしていることが分かる。一方、本発明に係るセパレータを用いていない比較例1および比較例2は、過充電試験(安全性評価)が不合格となった。また、比較例2では、過充電防止剤を非水電解液に添加したことから、初期容量に低下が見られた。
過充電試験において、実施例1〜8の二次電池の表面温度を熱電対で測定したところ、120℃を超えるところから、充電電流が徐々に低下し、0.1 Aまで低下した。これは、二次電池が過充電領域の温度に達した時に、本発明の過充電防止剤(過充電防止剤に結合した官能基)が分解し、発生した不活性ガスがセパレータの細孔を閉塞してリチウムイオンの移動を抑止したためと考えられた。このことから、本発明に係るセパレータは、過充電を防止する機能を有していることが確認された。また、充放電試験の結果から、本発明に係るセパレータは、初期容量に影響を与えないことが確認された。
[二次電池システムの試験評価]
上記の実施例1で作製したリチウムイオン二次電池を用いて、図2に示す二次電池システムを作製し、充放電試験、サイクル試験、および過充電試験を行った。
発電装置222における発電状況に合わせて、リチウムイオン二次電池101a,101bの充放電を行いながら、外部機器219に電力を供給する実験を行った。2時間率の充電を行った後に1時間率の放電を行い、初期の放電容量を求めた。試験条件は実施例1に記載した条件と同じである。その結果、各二次電池101a、101bの設計容量3 Ahの99.5〜100%の容量が得られることを確認した。
その後、環境温度20〜30℃の条件で、充放電サイクル試験を行った。まず、2時間率の電流(1.5 A)にて充電を行い、充電深度50%(1.5 Ah充電した状態)になった時点で、充電方向に5秒のパルスを、放電方向に5秒のパルスを電池101a、101bに与え、発電装置222からの電力の受け入れと外部機器319への電力供給を模擬するパルス試験を行った。なお、電流パルスの大きさは、ともに9 Aとした。
続けて、残りの容量1.5 Ahを2時間率の電流(1.5 A)で各二次電池の電圧が4.2 Vに達するまで充電し、その電圧で1時間の定電圧充電を行って充電を終了させた。その後、1時間率の電流(3 A)にて各二次電池の電圧が3.0 Vになるまで放電した。
上記一連の充放電サイクル試験を500回繰り返したところ、初期の放電容量に対し、98〜99%の容量を得た。電力受け入れと電力供給の電流パルスを電池に与えても、本実施例の二次電池システムの性能はほとんど低下しないことがわかった。
次に、二次電池101aのみを予め充電深度100%まで充電し、二次電池101bは放電した状態で、図2の二次電池システムを組み立てた。この状態から充電を開始した(すなわち、二次電池101bを充電深度100%まで充電しようとした)。二次電池101aは既に充電深度100%まで充電されているので、充電過程において二次電池101aは過充電状態になったが、本発明に係るセパレータによる過充電防止作用によって、二次電池101a、101bへの充電が停止された。その結果、二次電池101aにおいて過充電に起因する破裂・発火は発生せず、高い安全性を示すことが確認された。
なお、上記の二次電池システムの試験評価では、原理検証実験のため二次電池の定格容量を3 Ahとした。ただし、本発明は、それに限定されることなく、電極サイズや電極数、あるいは電池の直列数または並列数を増加させることにより、大容量の二次電池システムを提供できることは自明である。
以上説明したように、本発明によれば、小型電子機器のリチウムイオン二次電池よりも容量、安全性および耐熱性の3項目を高いレベルでバランスさせたリチウムイオン二次電池用、およびそれを用いた二次電池システムを提供することができることが確認された。
101,101a,101b…リチウムイオン二次電池、102…電池容器、103…蓋、
104…正極外部端子、105…負極外部端子、106…注液口、
107…正極、108…負極、109…セパレータ、110…正極リード線、
111…負極リード線、112…絶縁性シール、
213,214,215,217,218,220,221…電力ケーブル、216…充放電制御機構、
219…外部機器、222…発電装置。

Claims (9)

  1. リチウムイオン二次電池における正極と負極とを仕切るセパレータであって、
    前記セパレータは、多数の細孔を有する多孔体からなり、
    前記多孔体の表面には、所定の官能基を有する過充電防止剤が担持されており、
    前記所定の官能基は、前記リチウムイオン二次電池が過充電領域の温度に達した時に、不活性ガスを発生して該不活性ガスによって前記細孔を閉塞する官能基であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用セパレータにおいて、
    前記所定の官能基は、カルボン酸基、α‐ケト酸基、ジアゾ基およびリン酸基の内の少なくとも1つであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ。
  3. 請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用セパレータにおいて、
    前記不活性ガスは、二酸化炭素、窒素およびリンの内の少なくとも1つを含むガスであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用セパレータにおいて、
    前記多孔体は、セルロース繊維を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ。
  5. 正極と、負極と、前記正極と前記負極とを仕切るセパレータとを有するリチウムイオン二次電池であって、
    前記セパレータは、多数の細孔を有する多孔体からなり、
    前記多孔体の表面には、所定の官能基を有する過充電防止剤が担持されており、
    前記所定の官能基は、前記リチウムイオン二次電池が過充電領域の温度に達した時に、不活性ガスを発生して該不活性ガスによって前記細孔を閉塞する官能基であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  6. 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記所定の官能基は、カルボン酸基、α‐ケト酸基、ジアゾ基およびリン酸基の内の少なくとも1つであることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  7. 請求項5または請求項6に記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記不活性ガスは、二酸化炭素、窒素およびリンの内の少なくとも1つを含むガスであることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  8. 請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記多孔体は、セルロース繊維を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  9. 請求項5乃至請求項8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池を用いたことを特徴とする二次電池システム。
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