JP2013246374A - 調光体 - Google Patents

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Abstract

【課題】可視領域の光の透過率と赤外領域の光の透過率とを制御できる調光体を提供する。
【解決手段】透明基板上に透明電極が形成されてなる一対の透明電極基板の、透明電極面同士が対向する間隙に、エレクトロクロミック性を有する物質を含有するエレクトロクロミック層と、支持電解質、バインダー樹脂及びサーモクロミック性を有する物質を含有する電解質層とが挟持されてなる調光体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、可視領域の光の透過率と赤外領域の光の透過率とを制御できる調光体に関する。
電圧等の刺激によって光の透過率が変化する調光体は、広く用いられている。
上記調光体としては、対向する一対の電極基板の間に、エレクトロクロミック層と電解質層とからなる調光シートが挟み込まれている調光体が提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、無機酸化物を含有するエレクトロクロミック層、イオン伝導層、無機酸化物を含有するエレクトロクロミック層の3層が順次積層された積層体が、2枚の導電性基板間に挟み込まれている調光体が開示されている。また、特許文献3及び特許文献4には、対向する一対の電極基板の間に、有機エレクトロクロミック材料を含有するエレクトロクロミック層と電解質層とが挟み込まれている調光体が開示されている。これらのエレクトロクロミック性を有する物質を用いた調光体は、電圧の印加により光の透過率を変化させることができる。
近年、調光体を建築物や自動車等に用いることが検討されている。例えば、可視領域の光の透過率を下げ、かつ、赤外領域の光の透過率を低く抑えることができれば、暑い夏期において高い快適性を得ることができる。逆に、寒い冬期においては、可視領域及び赤外領域の光の透過率を高くできれば、太陽光からの熱線を取り入れて内部の温度を上昇させることができる。このように、可視領域の光の透過率と赤外領域の光の透過率とを制御できれば、調光体を自動車用や建築用等の広い範囲に適用することが可能となる。
しかしながら、従来の調光体では、可視領域の光の透過率と赤外領域の光の透過率とを同時に変化させることは可能であったが、可視領域の光の透過率と赤外領域の光の透過率とを別々に制御することは難しいという問題があった。
特開2004−062030号公報 特開2005−062772号公報 特表2002−526801号公報 特表2004−531770号公報
本発明は、上記現状に鑑み、可視領域の光の透過率と赤外領域の光の透過率とを制御できる調光体を提供することを目的とする。
本発明は、透明基板上に透明電極が形成されてなる一対の透明電極基板の、透明電極面同士が対向する間隙に、エレクトロクロミック性を有する物質を含有するエレクトロクロミック層と、支持電解質、バインダー樹脂及びサーモクロミック性を有する物質を含有する電解質層とが挟持されてなる調光体である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、透明基板上に透明電極が形成されている一対の透明電極基板が、該透明電極同士が対面するように、エレクトロクロミック性を有する物質を含有するエレクトロクロミック層と、支持電解質及びバインダー樹脂を含有する電解質層とを挟持する構造を有する調光体に、サーモクロミック性を有する物質を組み合わせることにより、電圧による光の透過率の制御と、温度による赤外領域の光の透過率の制御とを行うことができることを見出した。
上記サーモクロミック性を有する物質は、上記電解質層中に配合される。
上記サーモクロミック性を有する物質としては、二酸化バナジウム、又は、二酸化バナジウムのバナジウム原子の一部をタングステン、モリブデン、ニオブ及びタンタルから選択される少なくとも1種以上の原子で置換した置換二酸化バナジウムが挙げられる。
上記二酸化バナジウムは様々な結晶層が存在するが、特定の温度において単斜品結晶と正方晶結晶(ルチル型)とが可逆的に相転移することにより、赤外線透過率を大きく変化させるサーモクロミック特性を有する。
上記二酸化バナジウムの相転移温度は約68℃である。
ただし、上記相転移温度は、二酸化バナジウム中のバナジウム原子の一部をタングステン、モリブデン、ニオブ及びタンタルから選択される少なくとも1種の原子で置換することにより調整することができる。従って、二酸化バナジウム又は置換二酸化バナジウムを適宜選択したり、置換二酸化バナジウムにおいて置換する原子種や置換率を適宜選択したりすることにより、相転移温度を調整することができる。
なお、以下において「二酸化バナジウム」は、置換、非置換いずれをも含む総称としても用いる。
上記サーモクロミック性を有する物質として置換二酸化バナジウムを用いる場合、金属原子の置換率の好ましい下限は0.1原子%、好ましい上限は10原子%である。置換率が0.1%原子以上であると、上記置換二酸化バナジウムの相転移温度を容易に調整することができ、10原子%以下であると、優れたサーモクロミック性を得ることができる。
上記サーモクロミック性を有する物質として上記二酸化バナジウム又は置換二酸化バナジウムを用いる場合、上記二酸化バナジウム又は置換二酸化バナジウムは、上記電解質層又はサーモクロミック層中に粒子状に微分散していることが好ましい。
上記二酸化バナジウム粒子、置換二酸化バナジウム粒子の個数平均分散径(D50)の好ましい上限は100μmである。D50が100μmを超えると、得られる調光体の透明性が劣ることがある。D50のより好ましい上限は10μmである。D50の下限は、実質的には10nm程度が限度であると考えられる。
なお、D50とは粒子をある粒子径から二つに分けたときに、大きい側と小さい側が等量となる粒子径のことを意味する。
上記二酸化バナジウム粒子は、実質的に二酸化バナジウムのみで構成された粒子であってもよく、コア粒子の表面に二酸化バナジウムが付着した粒子であってもよい。同様に、上記粒子状の置換二酸化バナジウムは、実質的に置換二酸化バナジウムのみで構成された粒子であってもよく、コア粒子の表面に置換二酸化バナジウムが付着した粒子であってもよい。
上記コア粒子としては、例えば、酸化ケイ素、シリカゲル、酸化チタン、ガラス、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト化合物、ハイドロタルサイト化合物の焼成物、及び、炭酸カルシウム等の無機粒子が挙げられる。
上記電解質層又はサーモクロミック層中の上記サーモクロミック性を有する物質の配合量の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は10重量%である。上記サーモクロミック性を有する物質の配合量がこの範囲内であると、容易に温度による赤外領域の光の透過率の制御を行うことができる。上記サーモクロミック性を有する物質の配合量のより好ましい下限は0.02重量%、より好ましい上限は1重量%である。
上記二酸化バナジウム粒子又は置換二酸化バナジウム粒子を上記電解質層又はサーモクロミック層中に微分散させる方法としては、上記二酸化バナジウム粒子又は置換二酸化バナジウム粒子を分散させた二酸化バナジウム粒子分散液を調製し、該二酸化バナジウム分散液を上記電解質層又はサーモクロミック層を構成するバインダー樹脂に混合する方法等が挙げられる。
上記二酸化バナジウム粒子分散液の媒体としては、例えば、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート及びトリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート等の液状化合物が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートが好適である。
上記二酸化バナジウム粒子分散液は、分散剤としてポリカルボン酸を含有することが好ましい。上記ポリカルボン酸は、分散剤としての役割の他、得られる調光体のサーモクロミック性を向上させる効果も有する。
上記ポリカルボン酸としては、例えば、カルボキシル基を有するポリマーにポリオキシアルキレンをグラフトしたポリカルボン酸重合体等が挙げられる。
上記ポリカルボン酸の市販品としては、例えば、日油社製マリアリムシリーズ(AFB−0561、AKM−0531、AFB−1521、AEM−3511、AAB−0851、AWS−0851、AKM−1511−60等)等が挙げられる。
上記二酸化バナジウム粒子分散液を製造する方法としては、例えば、上記二酸化バナジウム粒子又は置換二酸化バナジウム粒子、ポリカルボン酸、溶媒を、ビーズミル、遊星式攪拌装置、湿式メカノケミカル装置、ヘンシェルミキサー、ホモジナイザー、超音波照射機等を用いて混練する方法等が挙げられる。
本発明の調光体は、エレクトロクロミック層を有する。
上記エレクトロクロミック層は、エレクトロクロミック性を有する物質を含有する。
上記エレクトロクロミック化合物は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。
上記エレクトロクロミック性を有する無機化合物としては、例えば、Mo、Ir、NiO、V、WO、TiO等の金属酸化物や、プルシアンブルー等の混合原子価錯体が挙げられる。
上記エレクトロクロミック性を有する有機化合物としては、例えば、ポリピロール化合物、ポリアセチレン化合物、ポリチオフェン化合物、ポリパラフェニレンビニレン化合物、ポリアニリン化合物、ポリエチレンジオキシチオフェン化合物、金属フタロシアニン化合物、ビオロゲン化合物、ビオロゲン塩化合物、フェロセン化合物、テレフタル酸ジメチル化合物等が挙げられる。なかでも、ポリアセチレン化合物が好ましく、芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物がより好ましい。
上記芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物は、エレクトロクロミック性と導電性とを有し、かつ、エレクトロクロミック層の形成が容易である。従って、芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物を用いれば、優れた調光性能を有するエレクトロクロミック層を容易に形成できる。また、芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物は、構造が変化することにより、吸収特性に変化を示す。その結果、吸収スペクトルが近赤外線の波長領域に及ぶため、エレクトロクロミック層は広い波長領域について優れた調光性能を有する。
上記芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物としては、例えば、一置換又は二置換の芳香族を側鎖に有するポリアセチレン化合物等が好適である。
上記芳香族側鎖を構成する置換基としては、例えば、フェニル、p−フルオロフェニル、p−クロロフェニル、p−ブロモフェニル、p−ヨードフェニル、p−ヘキシルフェニル、p−オクチルフェニル、p−シアノフェニル、p−アセトキシフェニル、p−アセトフェニル、ビフェニル、o−(ジメチルフェニルシリル)フェニル、p−(ジメチルフェニルシリル)フェニル、o−(ジフェニルメチルシリル)、p−(ジフェニルメチルシリル)フェニル、o−(トリフェニルシリル)フェニル、p−(トリフェニルシリル)フェニル、o−(トリルジメチルシリル)フェニル、p−(トリルジメチルシリル)フェニル、o−(ベンジルジメチルシリル)フェニル、p−(ベンジルジメチルシリル)フェニル、o−(フェネチルジメチルシリル)フェニル、p−(フェネチルジメチルシリル)フェニル等のフェニル基や、ビフェニル基や、1−ナフチル、2−ナフチル、1−(4−フルオロ)ナフチル、1−(4−クロロ)ナフチル、1−(4−ブロモ)ナフチル、1−(4−ヘキシル)ナフチル、1−(4−オクチル)ナフチル等のナフチル基や、ナフタレン基や、1−アントラセン、1−(4−クロロ)アントラセン、1−(4−オクチル)アントラセン等のアントラセン基や、1−フェナントレン等のフェナントレン基や、1−フルオレン等のフルオレン基や、1−ペリレン等のペリレン基等が挙げられる。
上記エレクトロクロミック層は、熱線吸収剤や接着力調整剤を含有してもよい。
上記エレクトロクロミック層の厚さは、好ましい下限が0.05μm、好ましい上限が2μmである。上記エレクトロクロミック層の厚さが0.05μm未満であると、上記エレクトロクロミック層に電圧を印加しても充分に光の透過率が変化しないことがあり、2μmを超えると、調光材料の透明性が低下することがある。上記エレクトロクロミック層の厚さのより好ましい下限は0.1μm、より好ましい上限は1μmである。
本発明の調光体は、電解質層を有する。
上記電解質層は、イオンを伝導することにより上記エレクトロクロミック層に電圧を印加し、エレクトロクロミック層を透過する光の波長を変化させる役割を有する。
上記電解質層は、支持電解質及びバインダー樹脂を含有する。また、上記電解質層は、上記サーモクロミック性を有する物質を含有する。
上記バインダー樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、三フッ化エチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、ビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、ビニルアセタール樹脂がより好ましい。
上記支持電解質としては、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、リンフッ化リチウム等の無機酸アニオンリチウム塩や、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム等の有機酸アニオンリチウム塩が挙げられる。
上記支持電解質は、アンモニウムカチオンと、アニオンとの塩であってもよい。
上記アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラエチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、メチルプロピルピロリジニウム、メチルブチルピロリジニウム、メチルプロピルピペリジニウム、メチルブチルピペリジニウム等のアルキルアンモニウムカチオンや、エチルメチルイミダゾリウム、ジメチルエチルイミダゾリウム、メチルピリジニウム、エチルピリジニウム、プロピルピリジニウム、ブチルピリジニウム等が挙げられる。
上記アニオンとしては、過塩素酸アニオン、ホウフッ化アニオン、リンフッ化アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドアニオン等が挙げられる。
上記電解質層中における上記支持電解質の配合量は、上記バインダー樹脂100重量部に対する好ましい下限が3重量部、好ましい上限が60重量部である。上記支持電解質の配合量が3重量部未満であると、イオン伝導性が低くなって、電圧を印加してもエレクトロクロミック層の光の透過率が変化しないことがあり、60重量部を超えると、エレクトロクロミック層の応答性が低くなることがある。上記支持電解質の配合量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は50重量部である。
上記電解質層は、溶媒を含有してもよい。
上記溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等のエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の置換テトラヒドロフラン類や、1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、t−ブチルエーテル、イソブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン等のエーテル類や、エチレングリコール、ポリエチレングリコールスルホラン、3−メチルスルホラン、蟻酸メチル、酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒が挙げられる。
上記溶媒としては、例えば、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)等を用いることもできる。
上記電解質層中における上記溶媒の配合量は、上記バインダー樹脂100重量部に対する好ましい下限が30重量部、好ましい上限が150重量部である。上記溶媒の配合量が30重量部未満であると、イオン伝導性が低くなって、電圧を印加してもエレクトロクロミック層の光の透過率が変化しないことがあり、150重量部を超えると、電解質層が形状を維持できないことがある。上記溶媒の配合量のより好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は100重量部である。
上記電解質層は、接着力調整剤を含有してもよい。
上記接着力調整剤は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。なかでも、炭素数2〜16のカルボン酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が好適であり、具体的には例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。これらの接着力調整剤は単独で用いられてもよく、併用されてもよい。上記電解質層がバインダー樹脂としてビニルアセタール樹脂を含有する場合、接着力調整剤を含有することが好ましい。
上記電解質層は、上記エレクトロクロミック層と接する側とは反対側の面に混合原子価錯体を含有する対極層を有してもよい。上記電解質層の一方の面にエレクトロクロミック層が、他方の面に対極層があることにより、著しく応答性が高く、電圧を印加してから透過する光の波長の変化が完了するまでの時間が極めて短い調光体が得られる。これは、電解質層の一方の面側のエレクトロクロミック層と他方の面側の対極層との酸化還元反応が対になるため、透過する光の波長の変化に必要な酸化還元電位を低下させることができるためであると考えられる。
上記混合原子価錯体は、金属元素とシアノ基とを有する化合物であることが好ましく、鉄等の金属元素とシアノ基とを有する化合物であることがより好ましい。
上記混合原子価錯体として、例えば、ハロゲン化フタロシアニンやプルシアンブルー型錯体(KFe[Fe(CN)]等)が挙げられる。なかでも、ハロゲン化フタロシアニンを用いた場合には、電圧を印加してから透過する光の波長の変化が完了するまでの時間が極めて短いだけでなく、耐光性に優れる調光体が得られる。
上記ハロゲン化フタロシアニンとしては、中心金属として金属原子を含有することが好ましい。上記ハロゲン化フタロシアニンが中心金属として金属原子を含有することにより、電圧を印加してから透過する光の波長の変化が完了するまでの時間が極めて短く、耐光性に優れる調光体が得られる。
上記金属原子としては、例えば、銅、コバルト、ニッケル、鉄、ベリリウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、白金、パラジウム、鉛、ビスマス、ケイ素等や、酸素や塩素等の軸配位子を持つバナジウムやチタン等が挙げられる。なかでも、電圧を印加してから透過する光の波長の変化が完了するまでの時間がより短く、より耐光性に優れる調光体が得られることから、銅を中心金属とすることが好ましい。
上記ハロゲン化フタロシアニンは、フッ素化フタロシアニン、塩素化フタロシアニン又は臭素化フタロシアニンであることが好ましく、銅を含有するフッ素化フタロシアニン、銅を含有する塩素化フタロシアニン又は銅を含有する臭素化フタロシアニンであることがより好ましい。
上記プルシアンブルー型錯体(KFe[Fe(CN)]等)は、鉄原子の一部が鉄原子以外の原子に置換されていてもよい。
上記対極層はバインダー樹脂を含有してもよい。上記バインダー樹脂は上記電解質層に含まれるバインダー樹脂と同様のバインダー樹脂を用いることができる。
上記対極層の厚さは、好ましい下限が0.05μm、好ましい上限が2μmである。上記対極層の厚さが0.05μm以上であると、電圧を印加してから透過する光の波長の変化が完了するまでの時間がより一層短くなり、2μm以下であると、調光体の透明性が高くなる。上記対極層の厚さのより好ましい下限は0.1μm、より好ましい上限は1μmである。
上記電解質層の厚さは、好ましい下限が0.1mm、好ましい上限が3.0mmである。上記電解質層の厚さが0.1mm未満であると、上記エレクトロクロミック層に電圧を印加しても光の透過率が変化しないことがあり、3.0mmを超えると、上記エレクトロクロミック層に電圧を印加した場合、光の透過率の変化速度が低下することがある。上記電解質層の厚さのより好ましい下限は0.3mm、より好ましい上限は1.0mmである。
本発明の調光体は、上記エレクトロクロミック層上の透明電極基板に接する側の面に、部分的に熱可塑性樹脂を含有する接着層が形成されていてもよい。上記接着層を部分的に形成することにより、エレクトロクロミック性を損なうことなく、透明電極に対する密着性を向上させることができる。
上記部分的に形成された接着層の形状としては、網目状、線状又は斑点状等が挙げられる。
本発明の調光体は、透明基板上に透明電極が形成されている一対の透明電極基板が、該透明電極同士が対面するように、上記エレクトロクロミック層と電解質層とを挟持する構造を有する。
上記透明電極基板を構成する透明基板としては、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスからなる透明板ガラス基板を用いることができる。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックスからなる基板を用いることもできる。
上記透明基板として、2種類以上の基板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板とを組み合わせてもよいし、透明板ガラス基板と有機プラスチックからなる基板とを組み合わせてもよい。また、2種以上の厚さの異なる基板を組み合わせてもよい。
上記透明電極としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等からなる透明導電膜が挙げられる。
本発明の調光体を製造する方法としては、例えば、上記エレクトロクロミック化合物を有機溶剤に溶解させた溶液を調製し、得られた溶液を一方の透明電極基板の透明電極面上に塗布して有機溶剤を揮発させてエレクトロクロミック層を形成した後、該エレクトロクロミック層上に上記電解質層と他方の透明電極基板とを積層する方法等が挙げられる。
本発明によれば、可視領域の光の透過率と赤外領域の光の透過率とを制御できる調光体を提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
(1)エレクトロクロミック層の形成
ポリ(9−エチニル−10−n−オクタデシルフェナントレン)5重量部を100重量部のトルエンに溶解して溶液を調製した。この溶液をITO導電膜が形成されたガラス基板に、トルエンが揮発した後の厚さが1.0μmになるようにダイコーター(伊藤忠マシンテクノス社製)を用いて塗布し、乾燥して、エレクトロクロミック層が形成された基板を得た。
(2)電解質層の調製
二酸化バナジウム粒子((WO)2重量%(VO)98重量%、NanoAmor社製)0.1重量部、分散剤としてポリカルボン酸(AFB−0561、日油社製)0.5重量部を、28重量部のトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート中に添加し、ビーズミルで混合して二酸化バナジウム粒子分散液を得た。
なお、粒度分布計(日機装社製、マイクロトラックUAM−1)を用いて分散液中の個数平均分散径(D50)を測定したところ、93nmであった。
得られた二酸化バナジウム粒子分散液48重量部に、支持電解質としてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)13.4重量部を溶解して電解質溶液を調製した。
得られた電解質溶液の全量と、バインダー樹脂として平均重合度が2300であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドによりアセタール化して得られたビニルブチラール樹脂(アセチル基量13mol%、水酸基量22mol%)100重量部とを混合して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに挟み、厚さ800μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、9.8MPaの条件で5分間加圧し、二酸化バナジウム粒子の濃度が0.07重量%、厚さ0.8mmの電解質層を得た。
(3)調光体の製造
得られたエレクトロクロミック層が形成された基板のエレクトロクロミック層側の面に、電解質層とITO導電膜が形成されたガラス基板とを積層して、調光体を得た。
(実施例2〜4)
電解質層に配合する二酸化バナジウム分散液中の二酸化バナジウム粒子の配合量を表1に示したようにした以外は、実施例1と同様にして調光体を製造した。
(比較例1)
電解質層に二酸化バナジウムを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして調光体を製造した。
(評価)
実施例及び比較例で得られた調光体について、以下の評価を行った。
結果を表1に示した。
(1)エレクトロクロミック性の評価
エレクトロクロミック層が形成された基板側電極が低電位となるよう、調光体に2Vの直流電圧を印加し完全に着色させた状態を着色状態、逆方向に2Vの直流電圧を印加し完全に消色させた状態を消色状態とし、直記分光光度計(日立ハイテク社製、U−4000)を用いて、JIS R 3106に準拠した方法により、得られた調光体の着色状態及び消色状態における可視光線透過率Tを測定し、着色状態の可視光線透過率Tと消色状態の可視光線透過率Tとの差(ΔT)を算出した。
なお、評価は、調光体を10℃又は50℃に調整した室内に30分間放置した後、各温度下に行った。
(2)サーモクロミック性の評価
直記分光光度計(日立ハイテク社製、U−4000)を用いて、JIS R 3106に準拠した方法により、得られた調光体の10℃及び50℃における赤外線透過率TIRを測定し、10℃の赤外線透過率TIRと50℃の赤外線透過率TIRとの差(ΔTIR)を算出した。
なお、評価は、エレクトロクロミック層が形成された基板側電極が低電位となるよう、調光体に2Vの直流電圧を印加し完全に着色させた着色状態、及び、逆方向に2Vの直流電圧を印加し完全に消色させた消色状態において行った。
また、調光体を各温度に調整した室内に30分間放置することにより、調光体の温度が充分に均一になってから、測定を行った。
Figure 2013246374
本発明によれば、可視領域の光の透過率と赤外領域の光の透過率とを制御できる調光体を提供することができる。

Claims (2)

  1. 透明基板上に透明電極が形成されてなる一対の透明電極基板の、透明電極面同士が対向する間隙に、エレクトロクロミック性を有する物質を含有するエレクトロクロミック層と、支持電解質、バインダー樹脂及びサーモクロミック性を有する物質を含有する電解質層とが挟持されてなることを特徴とする調光体。
  2. サーモクロミック性を有する物質は、二酸化バナジウムであることを特徴とする請求項1記載の調光体。
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