JP2013244919A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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広記 細江
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Abstract

【課題】動力源としての内燃機関および回転機を制御する場合において、排ガス浄化触媒が過昇温状態になるのを回避でき、商品性を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】燃焼モードを火花点火燃焼モードと圧縮着火燃焼モードとに切り換えて運転可能な内燃機関3および電気モータ4を動力源として備えるハイブリッド車両Vの制御装置1は、ECU2を備える。ECU2は、内燃機関3の燃焼モードが火花点火燃焼モード中である場合において検出された触媒温度TLNCが所定値T3のときに、内燃機関3の燃焼モードを火花点火燃焼モードから圧縮着火燃焼モードに切り換える(ステップ27,24)とともに、燃焼モードが切り換えられたときに、燃焼モードの切り換えに伴う内燃機関3の出力低下分DTRQ_ENGをアシストするように、電気モータ4の出力を制御する(ステップ55,70)。
【選択図】図5

Description

本発明は、内燃機関および回転機を動力源とするハイブリッド車両の制御装置に関する。
従来、車両用の内燃機関の制御装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この内燃機関は、その燃焼モードを圧縮着火燃焼モードと火花点火燃焼モードとの間で切り換えて運転されるものであり、排気通路内の排ガスを浄化する三元触媒を備えている。また、制御装置は、三元触媒の下流側における排気温度を検出する温度センサを備えており、この温度センサの検出信号に基づいて、三元触媒の温度(以下「触媒温度」という)が検出される。
この制御装置では、内燃機関の燃焼モードとして、下記の(A1)〜(A3)の条件がいずれも成立しているときに、圧縮着火燃焼モードが実行され、それ以外のときに火花点火燃焼モードが実行される(段落[0034],[0035])。
(A1)触媒温度が所定の活性温度以上であること。
(A2)アクセル開度が所定開度以下であること。
(A3)機関回転数が所定回転数以下であること。
すなわち、火花点火燃焼モードは、三元触媒が不活性状態にあるとき、アクセル開度が所定開度を超えているとき、または機関回転数が所定回転数を超えているときに実行される。
特開2002−47969号公報
上記特許文献1の制御装置によれば、アクセル開度が所定値を超えているか、または機関回転数が所定値を超えているときには、三元触媒の温度にかかわらず、火花点火燃焼モードが実行される。この火花点火燃焼モードの場合、圧縮着火燃焼モードよりも濃い混合気が燃焼する関係上、排ガス温度が圧縮着火燃焼モードのときよりも高温になることによって、三元触媒が過昇温状態になるおそれがあり、その場合には、三元触媒の劣化やエミッションの増大を招いてしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、動力源としての内燃機関および回転機を制御する場合において、排ガス浄化触媒が過昇温状態になるのを回避でき、商品性を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、燃焼モードを火花点火燃焼モードと圧縮着火燃焼モードとに切り換えて運転可能な内燃機関3および回転機(電気モータ4)を動力源として備え、排ガス浄化触媒(NOx触媒3d)によって排気通路3bの排ガスが浄化されるハイブリッド車両Vにおいて、内燃機関3および回転機を制御するハイブリッド車両Vの制御装置1であって、排ガス浄化触媒の温度である触媒温度TLNCを検出する触媒温度検出手段(触媒温度センサ25)と、内燃機関3の燃焼モードを制御するとともに、内燃機関3の燃焼モードが火花点火燃焼モード中である場合において検出された触媒温度TLNCが所定温度(所定値T3)以上となる燃焼モード切換条件が成立したとき(ステップ27の判別結果がYESのとき)に、内燃機関3の燃焼モードを火花点火燃焼モードから圧縮着火燃焼モードに切り換える燃焼モード制御手段(ECU2、ステップ24,60)と、燃焼モード切換条件の成立によって燃焼モードが切り換えられたときに、燃焼モードの切り換えに伴う内燃機関3の出力低下分(エンジントルク偏差DTRQ_ENG)をアシストするように、回転機の出力を制御する出力制御手段(ECU2、ステップ55,70)と、を備えることを特徴とする。
燃焼モードを火花点火燃焼モードと圧縮着火燃焼モードとに切り換えて運転可能な内燃機関の場合、排ガス温度および発生出力は、火花点火燃焼モード中の方が圧縮着火燃焼モード中よりも高くなるのが一般的である。そのため、火花点火燃焼モードを継続して実行した場合、排ガス浄化触媒が過昇温状態になる可能性があるとともに、火花点火燃焼モードから圧縮着火燃焼モードに切り換えた場合、内燃機関の出力低下が発生することになる。これに対して、このハイブリッド車両の制御装置によれば、内燃機関の燃焼モードが火花点火燃焼モード中である場合において検出された触媒温度が所定温度以上となる燃焼モード切換条件が成立したときには、内燃機関の燃焼モードが火花点火燃焼モードから圧縮着火燃焼モードに切り換えられるので、この所定温度を適切に設定することによって、排ガス浄化触媒が過昇温状態になるのを回避することができる。それにより、排ガス浄化触媒の劣化やエミッションの増大を回避でき、商品性を向上させることができる。
これに加えて、燃焼モード切換条件の成立によって燃焼モードが切り換えられたときに、燃焼モードの切り換えに伴う内燃機関の出力低下分をアシストするように、回転機の出力が制御されるので、内燃機関の出力低下に伴う運転性の低下を回避することができ、良好な運転性を確保することができ、商品性をさらに向上させることができる(なお、本明細書における「触媒温度の検出」は、センサなどにより触媒温度を直接検出することに限らず、他のパラメータに基づいて、触媒温度を推定したり、算出したりすることも含む)。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両Vの制御装置1において、排ガス浄化触媒(NOx触媒3d)は、酸化雰囲気の排ガス中のNOxを吸着または浄化するとともに、触媒温度TLNCが所定温度以上の温度域にあるときに、触媒温度TLNCが高いほど、NOxを吸着または浄化する度合(NOx吸着率R_NOx)がより低下する特性を有していることを特徴とする。
このハイブリッド車両の制御装置によれば、排ガス浄化触媒が、酸化雰囲気の排ガス中のNOxを吸着または浄化する特性を有しているので、圧縮着火燃焼モード中、内燃機関から排出される酸化雰囲気の排ガス中のNOxを、排ガス浄化触媒によって吸着または浄化することができる。また、この排ガス浄化触媒が、触媒温度が所定温度以上の温度域にあるときに、触媒温度が高いほど、NOxを吸着または浄化する度合がより低下する特性を有しているものの、触媒温度が所定温度以上となったときに、内燃機関の燃焼モードが火花点火燃焼モードから圧縮着火燃焼モードに切り換えられるので、圧縮着火燃焼モードへの切り換え以降、時間の経過に伴って、触媒温度を低下させることができ、触媒温度を所定温度未満の領域に保持することができる。それにより、排ガス浄化触媒によるNOxの吸着能力または浄化能力を高いレベルに維持することができ、商品性をさらに向上させることができる。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のハイブリッド車両Vの制御装置1において、排ガス浄化触媒(NOx触媒3d)は、固体酸性を有する担体上に貴金属を担持した触媒を含むことを特徴とする。
このハイブリッド車両の制御装置によれば、排ガス浄化触媒は、固体酸性を有する担体上に貴金属を担持した触媒を含んでいるので、酸化雰囲気の排ガスが流入したときに、排ガス中のHCおよびCOなどを酸化し、浄化することができる。特に、排ガス中のパラフィン系HCを一般的な三元触媒よりも高い効率で浄化することができる。それにより、商品性をより一層、向上させることができる。また、固体酸性を有する担体上に貴金属を担持した触媒を含んでいる排ガス浄化触媒の場合、上述したように、排ガス中のパラフィン系HCの浄化性能が優れているものの、耐熱性が低く、触媒温度が所定の劣化温度を超えると、急激に劣化するという特性を有している。したがって、前述した所定温度を所定の劣化温度よりも低い適切な値に設定し、触媒温度がそのような所定の劣化温度を超える前に、内燃機関の燃焼モードを火花点火燃焼モードから圧縮着火燃焼モードに切り換える制御を実行することによって、排ガス浄化触媒の劣化を確実に回避することができる。それにより、排ガス浄化触媒の劣化やエミッションの増大を確実に回避でき、商品性をさらに向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る制御装置およびこれを適用したハイブリッド車両の動力系の概略構成を模式的に示す図である。 NOx触媒におけるNOx吸着率R_NOxの触媒温度TLNCに対する特性を示す図である。 トルク算出処理を示すフローチャートである。 トルク分配係数Ktrqの算出処理を示すフローチャートである。 フラグ設定処理を示すフローチャートである。 内燃機関の運転域の判定に用いるマップの一例を示す図である。 エンジントルクTRQ_ENGおよびモータトルクTRQ_MOTの算出処理を示すフローチャートである。 エンジン出力制御処理を示すフローチャートである。 モータ出力制御処理を示すフローチャートである。 制御装置による制御結果の一例を示すタイミングチャートである。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置について説明する。図1に示すように、本実施形態の制御装置1が適用されたハイブリッド車両(以下「車両」という)Vは、動力源として、内燃機関3および電気モータ4(回転機)を備えている。制御装置1は、これらの内燃機関3および電気モータ4の出力すなわちトルクを制御するものであり、ECU2を備えている。
この車両Vでは、内燃機関(以下「エンジン」という)3のクランクシャフト3aが電気モータ4の回転軸に直結されているとともに、電気モータ4が、クラッチ5、自動変速機6および差動ギヤ機構7などを介して、左右の前輪8,8に機械的に連結されている。クラッチ5は、電磁クラッチタイプのものであり、ECU2に電気的に接続されている。このクラッチ5では、ECU2からの制御入力信号によって、その締結・遮断状態が制御される。
また、自動変速機6は、ベルトCVT方式の無段変速機で構成されており、ECU2に電気的に接続されたCVTアクチュエータ(図示せず)を備えている。この自動変速機6では、ECU2からの制御入力信号によってCVTアクチュエータが駆動されることにより、その変速比が制御される。以上の構成により、クラッチ5が締結されている場合、エンジン3や電気モータ4の出力が駆動輪である前輪8,8に伝達される。一方、エンジン始動時には、クラッチ5を遮断した状態で、電気モータ4の出力がエンジン3側に伝達される。また、車両Vは、遊動輪である左右の後輪(図示せず)を備えている。
エンジン3は、ガソリンを燃料とする多気筒内燃機関であり、気筒(図示せず)ごとに設けられた第1燃料噴射弁11、第2燃料噴射弁12および点火プラグ13(いずれも1つのみ図示)などを有している。第1燃料噴射弁11は、各気筒の図示しない吸気ポート内に燃料を噴射するように、インテークマニホールドの分岐部(いずれも図示せず)に取り付けられている。
また、第2燃料噴射弁12は、燃料を燃焼室内に直接噴射するように図示しないシリンダヘッドに取り付けられており、点火プラグ13は、図示しない燃焼室内に臨むようにシリンダヘッドに取り付けられている。これらの燃料噴射弁11,12および点火プラグ13はいずれもECU2に電気的に接続されており、後述するように、ECU2によって、2つの燃料噴射弁11,12による燃料の噴射量および噴射時期と、点火プラグ13による混合気の点火時期とが制御される。それにより、エンジン3は、圧縮着火燃焼モード(以下「HCCI燃焼モード」という)と火花点火燃焼モード(以下「SI燃焼モード」という)との間で、燃焼モードを切り換えて運転される。
このHCCI燃焼モードは、後述するように、HCCI燃焼モードの実行条件が成立しているときに実行されものであり、以下に述べるように、混合気を燃焼させるものである。すなわち、1回の燃焼サイクルにおいて、まず、燃料を吸気行程で第1燃料噴射弁11から噴射することにより、リーンな空燃比の均質混合気を生成し、次いで、燃料を圧縮行程で第2燃料噴射弁12から極少量噴射することにより、リッチな空燃比(または理論空燃比)の成層混合気を点火プラグ13の付近に集中させ、かつその周囲を均質混合気で取り囲むように、混合気を生成する。そして、点火プラグ13を介して、成層混合気を火花点火により火炎伝播燃焼させることによって、筒内温度を上昇させ、均質混合気を自己着火燃焼させる。
また、このHCCI燃焼モード中、燃焼室内の混合気の空燃比は、全体として理論空燃比よりもリーンになるように制御され、その結果、酸化雰囲気の排ガスが燃焼室から排気通路3bに排出される。
また、SI燃焼モードは、燃料を吸気行程で第1燃料噴射弁11から噴射することにより、ストイキ雰囲気の均質混合気を生成し、これを火花点火により火炎伝播燃焼させるものであり、後述するように、SI燃焼モードの実行条件が成立しているときに実行される。このSI燃焼モード中、燃焼室内の混合気の空燃比は、理論空燃比になるように制御され、その結果、ストイキ雰囲気の排ガスが燃焼室から排気通路3bに排出される。
また、エンジン3の排気通路3bには、上流側から順に、三元触媒3cおよびNOx触媒3d(排ガス浄化触媒)が設けられている。この三元触媒3cは、ストイキ雰囲気下において、排ガス中のHCおよびCOなどを酸化しかつNOxを還元することによって、排ガスを浄化するとともに、酸化雰囲気下では、ストイキ雰囲気下と比べて、排ガス中のパラフィン系HCの浄化率が低下するという特性を備えている。
一方、NOx触媒3dは、上下二層構造の触媒層を同一ハニカム上に担持したタイプのものであり(いずれも図示せず)、その上側触媒層は、ジルコニア−シリカ−イットリウム−タングステン複合酸化物を担体とし、この担体上に白金およびロジウムを担持した構造を有している。また、下側触媒層は、NOx吸着剤としての酸化セリウムを含む、アルミナ担体上に白金を担持した構造を有している。
以上の構成により、このNOx触媒3dは、酸化雰囲気の排ガスが流入したときに、下側触媒層により、排ガス中のNOxを高い効率で吸着するとともに、上側触媒層により、排ガス中のHCおよびCOなどを酸化し、浄化する。その際、上側触媒層によって、排ガス中のパラフィン系HCが上記三元触媒3cよりも高い効率で浄化される。これに加えて、このNOx触媒3dは、ストイキ雰囲気の排ガスが流入したときに、上側触媒層によって排ガス中のHC、COおよびNOxなどを浄化するとともに、還元雰囲気の排ガスが流入したときに、下側触媒層で吸着したNOxを還元する。
なお、このNOx触媒3dにおいて、上記2つの触媒層の上下関係を逆に配置した場合、酸化雰囲気の排ガス中のパラフィン系HCの浄化率およびNOx吸着率(=NOx浄化率)が、上述した配置のものと比べて低下することが本出願人の実験によって確認された。そのため、このNOx触媒3dでは、パラフィン系HCの浄化率およびNOx吸着率をより高めることを目的として、2つの触媒層が上述したような上下関係で配置されている。
さらに、このNOx触媒3dの場合、酸化雰囲気の排ガス中のNOxを吸着したときに、そのNOx吸着率R_NOx(NOxを吸着する度合)が、図2に示すように、NOx触媒3dの温度(以下「触媒温度」という)TLNCの変化に伴って変化する特性を有している。同図において、値R1は、NOx吸着率R_NOxの所定値であり、値T1〜T3は、T1<T2<T3の関係が成立する触媒温度TLNCの所定値である。同図に示すように、NOx吸着率R_NOxは、TLNC≦T2の領域では、触媒温度TLNCが低いほど、より低くなるとともに、TLNC>T2の領域では、触媒温度TLNCが高いほど、より低くなる。
さらに、NOx吸着率R_NOxは、T1<TLNC<T3の領域において、所定値R1を上回る値を示し、TLNC≦T1,T3≦TLNCの領域では、所定値R1以下であるとともに、T1<TLNC<T3の領域と比べて、触媒温度TLNCの変化に伴うNOx吸着率R_NOxの低下度合の勾配がより大きくなっている。これは、触媒温度TLNCが所定温度T1以下の領域にあるときには、NOx触媒3dが不活性状態になるためであり、触媒温度TLNCが所定温度T3以上の領域にあるときには、NOx触媒3dのNOx吸着能力が急激に低下する特性を有しているためである。
以上の理由により、本実施形態の制御装置1では、所定値R1を上回るような、良好なNOx吸着率R_NOxを確保する観点から、触媒温度TLNCがT1<TLNC<T3の領域に保持されるように、エンジン3の各種の制御処理が実行される。
さらに、エンジン3は、排気通路3b内の排ガスの一部を吸気通路(図示せず)に還流させるEGR装置(図示せず)を備えており、このEGR装置は、排気通路3bと吸気通路との間に延びるEGR通路(図示せず)と、ECU2に電気的に接続されたEGR制御弁14などを備えている。このEGR装置では、ECU2からの制御入力信号によってEGR制御弁14が駆動されることにより、EGR通路の開口面積が変更される。それにより、EGR通路を介して還流される排ガスの量(以下「外部EGR量」という)が制御される。
さらに、エンジン3は、吸気弁および排気弁(いずれも図示せず)のバルブタイミングを変更する可変動弁機構(図示せず)を備えており、この可変動弁機構は、ECU2に電気的に接続されたVTアクチュエータ15を備えている。この可変動弁機構では、ECU2からの制御入力信号によってVTアクチュエータ15が駆動されることにより、吸気弁および排気弁のバルブタイミングが変更され、バルブオーバーラップが変更される。それにより、燃焼室内に残留する既燃ガスの量(以下「内部EGR量」という)が制御される。
一方、電気モータ4は、ブラシレスDCモータで構成されており、PDU16を介して、ECU2およびバッテリ17に電気的に接続されている。このPDU16は、インバータなどを含む電気回路で構成されている。ECU2は、PDU16を介して、電気モータ4とバッテリ17との間の電力の授受を制御し、それにより、車両Vの加速走行中などには、電気モータ4の出力を制御するとともに、車両Vの減速走行中などには、電気モータ4による電力回生を制御する。
また、ECU2には、クランク角センサ20、水温センサ21、アクセル開度センサ22、4つの車輪速度センサ23(1つのみ図示)、電流電圧センサ24および触媒温度センサ25が電気的に接続されている。このクランク角センサ20は、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、クランクシャフト3aの回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。
このCRK信号は、所定クランク角(例えば1゜)毎に1パルスが出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、各気筒のピストンが吸気行程のTDC位置よりも若干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、所定クランク角毎に1パルスが出力される。
また、水温センサ21は、エンジン3のシリンダブロック内を循環する冷却水の温度であるエンジン水温TWを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。さらに、アクセル開度センサ22は、図示しないアクセルペダルの操作量であるアクセル開度APを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
一方、4つの車輪速度センサ23はそれぞれ、左右の前輪8,8および左右の後輪の回転速度を表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、これらの車輪速度センサ23の検出信号に基づき、車速VPを算出する。
また、電流電圧センサ24は、バッテリ17に入出力される電流・電圧値を表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この電流電圧センサ24の検出信号に基づき、バッテリ17における電力の蓄積量すなわち充電レベルSOCを算出する。さらに、触媒温度センサ25(触媒温度検出手段)は、触媒温度TLNCを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
また、ECU2(燃焼モード制御手段、出力制御手段)は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ20〜25の検出信号などに応じて、以下に述べるように、トルク算出処理、エンジン出力制御処理およびモータ出力制御処理などの各種の制御処理を実行する。
以下、図3を参照しながら、ECU2によって実行されるトルク算出処理について説明する。この処理は、エンジン3が発生すべきトルクであるエンジントルクTRQ_ENGと、電気モータ4が発生すべきトルクであるモータトルクTRQ_MOTとを算出するものである。
同図に示すように、まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)で、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図示しないマップを検索することにより、運転者要求トルクTRQ_DRVを算出する。この運転者要求トルクTRQ_DRVは、運転者によって要求されているトルクに相当する。
次いで、ステップ2に進み、エアコンディショナやオイルポンプ(いずれも図示せず)などの補機の運転状態に応じて、補機要求トルクTRQ_HOKIを算出する。この補機要求トルクTRQ_HOKIは、補機を駆動するのに必要なトルクに相当する。
次に、ステップ3で、下式(1)により、全要求トルクTRQ_ALLを算出する。この全要求トルクTRQ_ALLは、車両Vに要求されている全トルクに相当する。
Figure 2013244919
ステップ3に続くステップ4で、トルク分配係数Ktrqの算出処理を実行する。この算出処理は、具体的には、図4に示すように実行される。同図に示すように、まず、ステップ10で、充電レベルSOCが所定値SOCREFよりも大きいか否かを判別する。
この判別結果がYESのときには、充電レベルSOCが十分であり、エンジン3および電気モータ4の双方の出力によって車両Vを駆動可能であると判定して、ステップ11に進み、エンジン回転数NE、アクセル開度APおよび車速VPに応じて、図示しないマップを検索することにより、トルク分配係数Ktrqを算出する。この場合、トルク分配係数Ktrqは、0≦Ktrq≦1が成立するような値として算出される。以上のように、ステップ11を実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ10の判別結果がNOのときには、充電レベルSOCが不十分であり、エンジン3の出力のみによって車両Vを駆動可能であると判定して、ステップ12に進み、トルク分配係数Ktrqを値1に設定する。その後、本処理を終了する。
図3に戻り、ステップ4で、以上のようにトルク分配係数Ktrqを算出した後、ステップ5に進み、下式(2)により、基本エンジントルクTRQ_ENG_BASEを算出する。
Figure 2013244919
次いで、ステップ6に進み、下式(3)により、基本モータトルクTRQ_MOT_BASEを算出する。
Figure 2013244919
次に、ステップ7で、フラグ設定処理を実行する。このフラグ設定処理は、以下に述べるように、2つのフラグF_COOL,F_HCCIを設定するものであり、具体的には、図5に示すように実行される。同図に示すように、まず、ステップ20で、前述したステップ10と同様に、充電レベルSOCが所定値SOCREFよりも大きいか否かを判別する。この判別結果がYESで、充電レベルSOCが十分であるときには、ステップ21に進み、エンジン水温TWが所定値TWHCCIよりも高いか否かを判別する。
この判別結果がYESで、TW>TWHCCIのときには、ステップ22に進み、基本エンジントルクTRQ_ENG_BASEおよびエンジン回転数NEに応じて、図6に示すマップを検索することにより、エンジン3の運転域がHCCI燃焼モードを実行すべきHCCI領域(図中に右上がりのハッチングで示す領域)にあるか否かを判別する。
この判別結果がYESで、エンジン3の運転域がHCCI領域にあるときには、HCCI燃焼モードの実行条件が成立していると判定して、ステップ23に進み、触媒冷却制御フラグF_COOLを「0」に設定する。この触媒冷却制御フラグF_COOLは、後述するように、触媒温度TLNCを低下させるための触媒冷却制御処理を実行する必要があるかどうかを表すものであり、F_COOL=0のときには、触媒冷却制御処理を実行する必要がないことを表している。この触媒冷却制御処理は、具体的には、エンジン3の燃焼モードとしてHCCI燃焼モードを強制的に実行する制御処理である。
次いで、ステップ24に進み、HCCI燃焼モードの実行条件が成立していることを表すために、HCCI燃焼モードフラグF_HCCIを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
一方、ステップ22の判別結果がNOで、エンジン3の運転域がSI燃焼モードを実行すべきSI領域(図中に右下がりのハッチングで示す領域)にあるときには、ステップ25に進み、触媒温度TLNCが所定の判定値TREF以下であるか否かを判別する。この所定の判定値TREFは、触媒冷却制御処理の実行によって触媒温度TLNCが十分に低下したか否かを判定するための値であり、T1<TREF<T3が成立するような値に設定されている。
このステップ25の判別結果がNOで、TLNC>TREFのときには、ステップ26に進み、触媒冷却制御フラグF_COOLが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、触媒冷却制御処理を実行中でないときには、ステップ27に進み、触媒温度TLNCが前述した所定値T3以上であるか否かを判別する。この場合、HCCI燃焼モードの実行中は、排ガス温度がSI燃焼モードの実行中よりも低くなり、触媒温度TLNCが所定値T3以上になることはないので、ステップ26の判別結果がYESとなるのは、SI燃焼モードが継続して実行されているときとなる。
ステップ27の判別結果がYESのとき、すなわちエンジン3の運転域がSI領域にあるものの、触媒温度TLNCが所定値T3以上で、NOx触媒3dのNOx吸着能力が大幅に低下するような温度域にあるときには、触媒温度TLNCを低下させるために、触媒冷却制御処理を実行すべきであると判定して、ステップ28に進み、それを表すために、触媒冷却制御フラグF_COOLを「1」に設定する。次いで、前述したように、ステップ24を実行した後、本処理を終了する。
ステップ28で以上のように触媒冷却制御フラグF_COOLが「1」に設定されると、前述したステップ26の判別結果がYESとなり、その場合には、前述したように、ステップ24を実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ27の判別結果がNOのとき、またはステップ25の判別結果がYESのときには、触媒冷却制御処理を実行する必要がなく、SI燃焼モードの実行条件が成立していると判定して、ステップ29に進み、触媒冷却制御処理を実行する必要がないことを表すために、触媒冷却制御フラグF_COOLを「0」に設定する。次いで、ステップ30に進み、SI燃焼モードの実行条件が成立していることを表すために、HCCI燃焼モードフラグF_HCCIを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
また、前述したステップ20,21のいずれかの判別結果がNOのとき、すなわち、SOC≦SOCREFが成立しているとき、またはTW≦TWHCCIが成立しているときには、SI燃焼モードの実行条件が成立していると判定して、前述したように、ステップ29,30を実行した後、本処理を終了する。
図3に戻り、ステップ7で、以上のようにフラグ設定処理を実行した後、ステップ8に進み、エンジントルクTRQ_ENGおよびモータトルクTRQ_MOTの算出処理を実行する。この算出処理は、具体的には、図7に示すように実行される。
同図に示すように、まず、ステップ50で、HCCI燃焼モードフラグF_HCCIが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、HCCI燃焼モードの実行条件が成立しているときには、ステップ51に進み、エンジン回転数NEに応じて、図示しないマップを検索することにより、HCCI時最大トルクTRQ_HCCI_MAXを算出する。
このHCCI時最大トルクTRQ_HCCI_MAXの算出用のマップはここでは図示しないが、そのマップ値は、エンジン回転数NEが前述した図6のHCCI領域に対応する回転域にあるときには、そのHCCI領域の最上位の基本エンジントルクTRQ_ENG_BASEの値に設定されており、それ以外の領域では所定の一定値に設定されている。なお、HCCI時最大トルクTRQ_HCCI_MAXを、エンジン回転数NEにかかわらず、所定値(一定値)に設定してもよい。
次に、ステップ52に進み、下式(4)により、エンジントルク偏差DTRQ_ENG(内燃機関の出力低下分)を算出する。
Figure 2013244919
次いで、ステップ53に進み、エンジントルク偏差DTRQ_ENGが値0より大きいか否かを判別する。この判別結果がYESで、TRQ_ENG_BASE>TRQ_HCCI_MAXであるときには、ステップ54に進み、下式(5)により、エンジントルクTRQ_ENGを算出する。すなわち、エンジントルクTRQ_ENGはHCCI時最大トルクTRQ_HCCI_MAXに設定される。
Figure 2013244919
次に、ステップ55に進み、下式(6)により、モータトルクTRQ_MOTを算出する。すなわち、モータトルクTRQ_MOTは、基本モータトルクTRQ_MOT_BASEに、エンジントルク偏差DTRQ_ENGを加算することによって、エンジン3の発生トルクの不足分をアシストするように算出される。
Figure 2013244919
以上のように、ステップ55を実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ53の判別結果がNOで、TRQ_ENG_BASE≦TRQ_HCCI_MAXであるときには、ステップ56に進み、下式(7)により、エンジントルクTRQ_ENGを算出する。すなわち、エンジントルクTRQ_ENGは、基本エンジントルクTRQ_ENG_BASEに設定される。
Figure 2013244919
次いで、ステップ57に進み、下式(8)により、モータトルクTRQ_MOTを算出する。すなわち、モータトルクTRQ_MOTは、基本モータトルクTRQ_MOT_BASEに設定される。
Figure 2013244919
以上のように、ステップ57を実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ50の判別結果がNOで、エンジン3の燃焼モードとしてSI燃焼モードを実行すべきであるときには、上述したように、ステップ56,57で、エンジントルクTRQ_ENGおよびモータトルクTRQ_MOTを算出した後、本処理を終了する。
図3に戻り、ステップ8で、以上のようにエンジントルクTRQ_ENGおよびモータトルクTRQ_MOTの算出処理を実行した後、トルク算出処理を終了する。
次に、図8を参照しながら、ECU2によって実行されるエンジン出力制御処理について説明する。この制御処理では、エンジン3の発生出力すなわち発生トルクがエンジントルクTRQ_ENGになるように、各種の制御処理が実行される。
具体的には、まず、ステップ60で、前述したHCCI燃焼モードフラグF_HCCIが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、HCCI燃焼モードの実行条件が成立しているときには、ステップ61に進み、HCCI燃焼モード用のEGR制御処理を実行する。具体的には、まず、エンジントルクTRQ_ENGおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないHCCI燃焼モード用のマップを検索することにより、HCCI燃焼モード用の外部EGR量および内部EGR量の目標値を算出し、これらの目標値に応じて、EGR制御弁14用およびVTアクチュエータ15用の制御入力値がそれぞれ算出される。そして、これらの制御入力値に対応する制御入力信号を、EGR制御弁14およびVTアクチュエータ15にそれぞれ供給することにより、外部EGR量および内部EGR量がこれらの目標値になるように、EGR制御弁14およびVTアクチュエータ15が制御される。
次いで、ステップ62に進み、HCCI燃焼モード用の燃料噴射制御処理を実行する。具体的には、エンジントルクTRQ_ENGおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないHCCI燃焼モード用のマップを検索することにより、HCCI燃焼モード用の燃料噴射量の基本値を算出し、これをエンジン水温TWなどの各種の運転状態パラメータに応じて補正することにより、HCCI燃焼モード用の燃料噴射量を算出するとともに、これとエンジン回転数NEに応じて、HCCI燃焼モード用の燃料噴射時期が算出される。そして、HCCI燃焼モード用の燃料噴射量および燃料噴射時期に対応するタイミングで、2つの燃料噴射弁11,12の開閉タイミングが制御される。
次に、ステップ63で、HCCI燃焼モード用の点火時期制御処理を実行する。具体的には、上記HCCI燃焼モード用の燃料噴射時期およびエンジン回転数NEに応じて、図示しないマップを検索することにより、HCCI燃焼モード用の点火時期の基本値を算出し、これをエンジン水温TWなどの各種の運転状態パラメータに応じて補正することにより、HCCI燃焼モード用の点火時期を算出するとともに、このHCCI燃焼モード用の点火時期に対応するタイミングで、点火プラグ13による放電状態が制御される。なお、本実施形態のエンジン3の場合、HCCI燃焼モード中、混合気が自己着火燃焼するような状態で生成されるので、火花点火は本質的に不要であるが、失火防止と、自己着火燃焼タイミングを適切に制御することを目的として、HCCI燃焼モード中も、点火プラグ13による火花点火が実行される。
以上のように、ステップ63で、HCCI燃焼モード用の点火時期制御処理を実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ60の判別結果がNOで、SI燃焼モードの実行条件が成立しているときには、ステップ64に進み、SI燃焼モード用のEGR制御処理を実行する。具体的には、エンジントルクTRQ_ENGおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないSI燃焼モード用のマップを検索することにより、SI燃焼モード用の外部EGR量および内部EGR量の目標値を算出し、これらの目標値に応じて、EGR制御弁14用およびVTアクチュエータ15用の制御入力値がそれぞれ算出される。そして、これらの制御入力値に対応する制御入力信号を、EGR制御弁14およびVTアクチュエータ15にそれぞれ供給することにより、外部EGR量および内部EGR量がこれらの目標値になるように、EGR制御弁14およびVTアクチュエータ15が制御される。
次いで、ステップ65に進み、SI燃焼モード用の燃料噴射制御処理を実行する。具体的には、エンジントルクTRQ_ENGおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないSI燃焼モード用のマップを検索することにより、SI燃焼モード用の燃料噴射量の基本値を算出し、これをエンジン水温TWなどの各種の運転状態パラメータに応じて補正することにより、SI燃焼モード用の燃料噴射量を算出するとともに、これとエンジン回転数NEに応じて、SI燃焼モード用の燃料噴射時期が算出される。そして、SI燃焼モード用の燃料噴射量および燃料噴射時期に対応するタイミングで、第1燃料噴射弁11の開閉タイミングが制御される。
次に、ステップ66で、SI燃焼モード用の点火時期制御処理を実行する。具体的には、上記SI燃焼モード用の燃料噴射時期およびエンジン回転数NEに応じて、図示しないマップを検索することにより、SI燃焼モード用の点火時期の基本値を算出し、これをエンジン水温TWなどの各種の運転状態パラメータに応じて補正することにより、SI燃焼モード用の点火時期を算出するとともに、このSI燃焼モード用の点火時期に対応するタイミングで、点火プラグ13による放電状態が制御される。
以上のように、ステップ66で、SI燃焼モード用の点火時期制御処理を実行した後、本処理を終了する。
次に、図9を参照しながら、モータ出力制御処理について説明する。この制御処理では、電気モータ4が、その発生出力すなわち発生トルクがモータトルクTRQ_MOTになるように制御される。具体的には、ステップ70で、モータトルクTRQ_MOTに応じて、図示しないマップを検索することにより、電気モータ4用の制御入力値を算出し、これに対応する制御入力信号を電気モータ4に供給する。それにより、電気モータ4の発生トルクがモータトルクTRQ_MOTになるように、電気モータ4が力行制御される。なお、前述したように、SOC≦SOCREFのときには、トルク分配係数Ktrqが値1に設定されるので、式(3)により、基本モータトルクTRQ_MOT_BASEが値0として算出され、その場合には、電気モータ4の制御が停止される。以上のように、ステップ70を実行した後、本処理を終了する。
次に、図10を参照しながら、本実施形態の制御装置1による制御結果について説明する。なお、同図の触媒温度TLNCを表す曲線において、実線で示す曲線は、制御装置1による制御結果の一例(以下「本制御例」という)を表しており、破線で示す曲線は、比較のために、前述した触媒冷却制御処理を省略した場合の制御結果の一例(以下「比較例」という)を表している。また、同図のNOx濃度は、NOx触媒3dの下流側におけるNOx濃度であり、実線で示す曲線は本制御例のものを、破線で示す曲線は比較例のものをそれぞれ表している。
同図に示すように、本制御例および比較例の双方において、HCCI燃焼モードの実行中、時刻t1で、SI燃焼モードの実行条件が成立し、HCCI燃焼モードフラグF_HCCIが「1」に設定された以降、SI燃焼モードが実行されるとともに、それに伴って、触媒温度TLNCが上昇する。また、SI燃焼モードを実行すべきSI領域では、HCCI領域と比べて、基本エンジントルクTRQ_ENG_BASEが大きくなることで、エンジントルク偏差DTRQ_ENG>0の状態となる。
そして、比較例の場合、SI燃焼モードの実行中、触媒温度TLNC≧T3が成立したタイミング(時刻t2)以降も、SI燃焼モードが継続して実行されることで、触媒温度TLNCが上昇し続ける。その結果、DTRQ_ENG<0が成立し、HCCI燃焼モードの実行条件が成立したタイミング(時刻t3)で、燃焼モードがSI燃焼モードからHCCI燃焼モードに切り換えられ、排ガスがストイキ雰囲気から酸化雰囲気になると、それ以降、NOx触媒3dの前述した図2に示す特性に起因して、NOx濃度が急激に上昇しており、排ガス特性が悪化することが判る。
これに対して、本制御例の場合、SI燃焼モードの実行中、触媒温度TLNC≧T3が成立したタイミング(時刻t2)で、前述した触媒冷却制御フラグF_COOLが「1」に設定されることにより、それ以降、触媒冷却制御処理が実行される。すなわち、エンジン3の燃焼モードがSI燃焼モードからHCCI燃焼モードに切り換えられるとともに、それ以降のHCCI燃焼モードの実行によって、触媒温度TLNCの上昇が回避され、時間の経過に伴って、触媒温度TLNCが低下する。さらに、触媒冷却制御処理による触媒温度TLNCの低下により、SI燃焼モード中にHCCI燃焼モードの実行条件が成立したタイミング(時刻t3)以降でも、比較例と異なり、NOx濃度の上昇を回避できており、それにより、SI燃焼モードとHCCI燃焼モードとの間での燃焼モードの切り換えを実行した場合でも、良好な排ガス特性を確保できることが判る。
以上のように、この制御装置1によれば、SI燃焼モードの実行中、触媒温度TLNCが前述した所定値T3以上になったときに、触媒冷却制御処理が実行されることにより、燃焼モードがSI燃焼モードからHCCI燃焼モードに切り換えられる。それにより、NOx触媒3dが、NOx吸着率R_NOxが低下するような過昇温状態になるのを回避することができる。
また、NOx触媒3dは、触媒温度TLNCが所定値T3以上の温度域では、触媒温度TLNCが高いほど、NOxを吸着する度合がより低下する特性を有しているものの、前述したように、触媒温度TLNCが所定値T3以上のときに、燃焼モードがSI燃焼モードからHCCI燃焼モードに切り換えられるので、その切り換え以降、時間の経過に伴って、触媒温度TLNCを低下させ、所定値T3未満の領域に保持することができる。以上により、NOx触媒3dによるNOxの吸着能力を高いレベルに維持することができ、良好な排ガス特性を確保することができる。
さらに、NOx触媒3dが、前述したような構造の上側触媒層および下側触媒層を有しているので、HCCI燃焼モード中、酸化雰囲気の排ガスが流入したときに、下側触媒層により、排ガス中のNOxを高い効率で吸着するとともに、上側触媒層により、排ガス中のHCおよびCOなどを酸化し、浄化する。その際、上側触媒層によって、排ガス中のパラフィン系HCを三元触媒3cよりも高い効率で浄化することができる。以上のように、NOx触媒3dの劣化や排ガス特性の悪化を回避することができる。
これに加えて、触媒冷却制御処理の実行中、燃焼モードの切り換えに伴うエンジン3の出力低下分であるエンジントルク偏差DTRQ_ENGをアシストするように、電気モータ4の出力が制御されるので、エンジン3の出力低下に伴う運転性の低下を回避することができ、良好な運転性を確保することができる。以上により、商品性を向上させることができる。
なお、実施形態は、排ガス浄化触媒として、NOx触媒3dを用いた例であるが、本発明の排ガス浄化触媒はこれに限らず、排気通路の排ガスを浄化するものであればよい。例えば、排ガス浄化触媒として、選択還元触媒、酸化触媒および三元触媒を用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。その場合、選択還元触媒を用いるときには、還元剤の存在下でNOxを選択的に還元するタイプのものを用いればよい。
また、実施形態は、排ガス浄化触媒として、NOx触媒3dを用いた例であるが、本発明の排ガス浄化触媒はこれに限らず、酸化雰囲気の排ガス中のNOxを吸着または浄化するとともに、触媒温度が所定温度以上の温度域にあるときに、触媒温度が高いほど、NOxを吸着または浄化する度合がより低下する特性を有しているものであればよい。例えば、排ガス浄化触媒として、還元剤の存在下でNOxを選択的に還元する選択還元触媒を用いてもよい。
さらに、実施形態は、触媒における固体酸性を有する担体として、ジルコニア−シリカ−イットリウム−タングステン複合酸化物を用いた例であるが、本発明の担体はこれに限らず、固体酸性を有するものであればよい。例えば、担体として、シリカジルコニアや、シリカアルミナなどを用いてもよい。
また、実施形態は、触媒における貴金属として、白金およびロジウムを用いた例であるが、本発明の貴金属はこれに限らず、貴金属類であればよい。例えば、貴金属として、白金およびロジウムの一方のみを用いてもよい。
さらに、実施形態は、触媒温度検出手段として、触媒温度センサ25を用いた例であるが、本発明の触媒温度検出手段はこれに限らず、排ガス浄化触媒の温度を検出または推定するものであればよい。例えば、排気通路の排ガス浄化触媒付近の排ガスの温度を排ガス温度センサで検出し、ECUにより、排ガス温度センサの検出信号に基づいて排ガス浄化触媒の温度を推定または算出してもよい。その場合には、排ガス温度センサおよびECUが触媒温度検出手段に相当する。また、触媒温度検出手段としてECUを用い、このECUにより、燃料噴射量、エンジン回転数および排ガスボリュームなどのパラメータに基づいて、触媒温度を推定または算出してもよい。
一方、実施形態では、触媒冷却制御処理の実行中、触媒温度TLNCが所定の判定値TREF以下になったときに、触媒冷却制御処理を中止するように構成したが、これに代えて、触媒冷却制御処理の実行時間が所定時間に達したときに、触媒冷却制御処理を中止するように構成してもよい。その場合、所定時間を触媒温度TLNCが所定の判定値TREF以下まで低下するような値に設定すればよい。
V ハイブリッド車両
1 制御装置
2 ECU(燃焼モード制御手段、出力制御手段)
3 内燃機関
3b 排気通路
3d NOx触媒(排ガス浄化触媒)
4 電気モータ(回転機)
25 触媒温度センサ(触媒温度検出手段)
TLNC 触媒温度
T3 触媒温度の所定値(所定温度)
DTRQ_ENG エンジントルク偏差(内燃機関の出力低下分)
R_NOx NOx吸着率(NOxを吸着する度合)

Claims (3)

  1. 燃焼モードを火花点火燃焼モードと圧縮着火燃焼モードとに切り換えて運転可能な内燃機関および回転機を動力源として備え、排ガス浄化触媒によって排気通路の排ガスが浄化されるハイブリッド車両において、前記内燃機関および前記回転機を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、
    前記排ガス浄化触媒の温度である触媒温度を検出する触媒温度検出手段と、
    前記内燃機関の前記燃焼モードを制御するとともに、前記内燃機関の前記燃焼モードが前記火花点火燃焼モード中である場合において前記検出された触媒温度が所定温度以上となる燃焼モード切換条件が成立したときに、前記内燃機関の前記燃焼モードを前記火花点火燃焼モードから前記圧縮着火燃焼モードに切り換える燃焼モード制御手段と、
    前記燃焼モード切換条件の成立によって前記燃焼モードが切り換えられたときに、当該燃焼モードの切り換えに伴う前記内燃機関の出力低下分をアシストするように、前記回転機の出力を制御する出力制御手段と、
    を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 前記排ガス浄化触媒は、酸化雰囲気の排ガス中のNOxを吸着または浄化するとともに、前記触媒温度が前記所定温度以上の温度域にあるときに、前記触媒温度が高いほど、当該NOxを吸着または浄化する度合がより低下する特性を有していることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  3. 前記排ガス浄化触媒は、固体酸性を有する担体上に貴金属を担持した触媒を含むことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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