図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力すると共にエンジン22の燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などを行なうエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤ62を介して連結された駆動軸32にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸32に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリ50と、バッテリ50の端子間電圧や充放電電流Ib,電池温度Tbなどを用いてバッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、シフトレバー81のポジションを検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPやアクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキポジション,車速センサ88からの車速Vなどを入力すると共にエンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信して車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能なエンジンとして構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)を有する浄化装置134を介して外気へ排出されると共に排気を吸気に還流する排気再循環装置(以下、「EGR(Exhaust Gas Recirculation)システム」という)160を介して吸気側に供給される。EGRシステム160は、浄化装置134の後段に接続されて排気を吸気側のサージタンクに供給するためのEGR管162と、EGR管162に配置されステッピングモータ163により駆動されるEGRバルブ164とを備え、EGRバルブ164の開度の調節により、不燃焼ガスとしての排気の還流量を調節して吸気側に還流する。エンジン22は、こうして空気と排気とガソリンとの混合気を燃焼室に吸引することができるようになっている。以下、エンジン22の排気を吸気側に還流することをEGRといい、吸気側に還流される排気の量をEGR量Veという。
エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットル開度Ta,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,吸気管内の圧力を検出する吸気圧センサ158からの吸気圧Pin,浄化装置134に取り付けられた温度センサ134aからの触媒温度Tc,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号O2,シリンダブロックに取り付けられてノッキングの発生に伴って生じる振動を検出するノックセンサ159からのノック信号Ks,EGRバルブ164の開度を検出するEGRバルブ開度センサ165からのEGRバルブ開度EVなどが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号,EGRバルブ164の開度を調整するステッピングモータ163への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数即ちエンジン22の回転数Neを演算したり、エアフローメータ148からの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて体積効率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算したり、エアフローメータ148からの吸入空気量QaとEGRバルブ開度センサ165からのEGRバルブ開度EVとエンジン22の回転数Neとに基づいてEGR量Veとエンジン22の吸入空気量Qaとの和に対するEGR量Veの比率としてのEGR率Reを演算したり、ノックセンサ159からのノック信号Ksの大きさや波形に基づいてノッキングの発生レベルを示すノック強度Krを演算したりしている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸32に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸32に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであり、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
エンジン運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*に駆動軸32の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2に換算係数を乗じて得られる回転数や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPr*を計算すると共に計算した走行用パワーPr*からバッテリ50の残容量(SOC)に基づいて得られるバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定し、要求パワーPe*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、バッテリ50を充放電してもよい最大電力としてバッテリ50の残容量(SOC)やバッテリ50の温度により設定される入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにするための回転数フィードバック制御によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共にモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸32に作用するトルクを要求トルクTr*から減じてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてエンジンECU24に送信し、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信する。そして、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてEGR率Reの目標値としての目標EGR率Re*を設定し、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによってエンジン22が運転されるようエンジン22の制御(具体的には、スロットルバルブ124の開度を制御する吸入空気量制御や、燃料噴射弁126からの燃料噴射量を制御する燃料噴射制御,点火プラグ130の点火時期を制御する点火制御,吸気バルブ128の開閉タイミングを制御する吸気バルブタイミング可変制御など)を行なうと共にEGR率Reが目標EGR率Re*となるようEGRシステム160のEGRバルブ164の開度を制御するEGR制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。エンジン運転モードでは、要求パワーPe*がエンジン22を効率よく運転するためにエンジン22の運転を停止した方がよいとして予め設定された閾値Pstop未満に至ったときにエンジン22の運転を停止してモータ運転モードに移行する。
モータ運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸32に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信する。そして、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。モータ運転モードでは、上述の要求パワーPe*がエンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を始動した方がよいとして予め設定された閾値Pstart以上に至ったときにエンジン22を始動してエンジン運転モードに移行する。
実施例のハイブリッド自動車20では、システム起動後に、各機器や装置に故障や異常等が生じていないか否かの診断(異常診断)を行なう。異常診断項目のうち、エンジン22への燃料噴射を停止して(いわゆる燃料カットして)行なわれる異常診断項目は、例えば、空燃比センサ135aの異常診断や酸素センサ135bの異常診断、EGRシステム160の異常診断などを挙げることができる。実施例では、これらの異常診断項目は、各異常診断項目を実行する前提条件の成立を条件に、以下のように異常診断する。酸素センサ135bの異常診断は、燃料カットを開始してから浄化後排気の酸素濃度が大気相当の酸素濃度になるまでに要する時間(例えば6secなど)を経過する前に酸素センサ135bの出力電圧Voが大気の酸素濃度に対応する電圧(以下、大気時電圧という)Vo1に近傍に至ったときには酸素センサ135bは正常であると判定し、浄化後排気の酸素濃度が大気相当の酸素濃度になるまでに要する時間を経過したときでも酸素センサ135bの出力電圧Voが大気時電圧Vo1近傍に至らないときには酸素センサ135bに故障が生じていると判定する、ことにより行なう。空燃比センサ135aの異常診断は、燃料カットを開始してからエンジン22からの排気が十分に大気に近づくのに要する時間(例えば6secなど)を経過したときに、空燃比センサ135aからの出力電流Iafが実験などにより予め定められた所定範囲(エンジン22からの排気が大気のときに想定される出力電流Iaf1を含む範囲)内か否かを判定し、空燃比センサ135からの出力電流Iafが所定範囲内のときには空燃比センサ135aは正常であると判定し、空燃比センサ135aからの出力電流Iafが所定範囲外のときには空燃比センサ135aに故障が生じていると判定する、ことにより行なう。EGRシステム160の異常診断は、EGRバルブ154を強制的に開として不燃焼ガスとしての排気を吸気側に供給するときにおける吸気圧センサ158からの吸気圧Pin1とEGRバルブ154を強制的に閉として排気を吸気側に供給しないときにおける吸気圧センサ158からの吸気圧Pin2との偏差ΔPin(Pin1−Pin2)を計算し、計算した偏差ΔPinが実験などにより予め定められた所定範囲内か否かを判定し、偏差ΔPinが所定範囲内のときにはEGR装置は正常であると判定し、偏差ΔPinが所定範囲内にないときにはEGRシステム160に故障が生じていると判定する、ことにより行なう。こうした異常診断は、エンジンECU24からハイブリッド用電子制御ユニット70に対して燃料カット要求フラグFreqに値1を設定することにより燃料カットを要求することによって、エンジン22を燃料カットした状態でモータリングしながらアクセル開度Accに応じた要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力して走行する異常診断時走行制御を実行している最中に行なわれる。異常診断時走行制御としては、エンジン22の回転数Neが保持されるようにモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると共にアクセル開度Accに応じた要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより行なわれる。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20のエンジンECU24による燃料カット要求フラグFreqの設定の様子について説明する。図3はエンジンECU24により実行される燃料カット要求フラグ設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、燃料カットの実行の有無に拘わらず、エンジン22が運転されているとき(燃料カットしてモータMG1によりモータリングされているときを含む)に繰り返し実行される。
燃料カット要求フラグ設定ルーチンが実行されると、エンジンECU24のCPU24aは、まず、異常診断完了フラグFendや燃料カット実行フラグFcut,異常診断前提条件データ,車速Vなどの燃料カット要求フラグFreqを設定するのに必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、異常診断完了フラグFendは、エンジンECU24により、初期値として値0がセットし、エンジン22の燃料カットを伴って実行される異常診断項目の全ての異常診断を完了したときに値1をセットするものであり、実施例では、エンジンECU24のRAM24cの所定アドレスに記憶されたものを読み込むことにより入力するものとした。燃料カット実行フラグFcutは、エンジンECU24により燃料カットを実行していないときに値0をセットし、燃料カットが実行されているときに値1をせっとするものであり、実施例では、エンジンECU24のRAM24cの所定アドレスに記憶されたものを読み込むことにより入力するものとした。異常診断前提条件データとしては、酸素センサ135bの異常診断では、例えば、冷却水温Twが所定温度(例えば70℃など)以上である条件,触媒温度Tcが所定温度(例えば400℃)以上である条件,酸素センサ活性フラグが値1である条件,燃料カット継続時間tfcが所定時間(例えば2secなど)以上である条件をすべて満たしているか否かのデータが該当し、空燃比センサ135aの異常診断では、例えば、冷却水温Twが所定温度(例えば75℃など)以上である条件,空燃比センサ活性フラグが値1である条件,燃料カット継続時間tfcが所定時間(例えば2secなど)以上である条件をすべて満たしているか否かのデータが該当し、EGRシステム160の異常診断では、例えば、冷却水温Twが所定温度(例えば70℃など)以上である条件,吸気温度Taが所定温度(例えば−10℃など)以上である条件,エンジン22の回転数偏差ΔNeの絶対値が所定値(例えば3rpmなど)以下である条件,車速Vが所定車速(例えば45km/hなど)以上である条件),燃料カット継続時間tfcが所定時間(例えば800msecなど)以上である条件をすべて満たしているか否かのデータが該当する。
こうしてデータを入力すると、入力した異常診断完了フラグFendを調べ(ステップS110)、異常診断完了フラグFendが値1のときには、全ての異常診断項目の異常診断が完了しているために燃料カットを要求する必要がないと判断し、燃料カット要求フラグFreqに値0をセットして(ステップS170)、本ルーチンを終了する。異常診断完了フラグFendが値0のときには、未実施の異常診断項目があると判断し、燃料カット実行フラグFcutの値を調べて燃料カット中であるか否かを判定する(ステップS120)。燃料カット実行フラグFcutが値0のときには、燃料カット中ではないと判断し、車速Vを閾値Vbと比較し(ステップS140)、車速Vが閾値Vb未満のときには、燃料カットを要求すべきではないと判断して、燃料カット要求フラグFreqに値0をセットして(ステップS170)、本ルーチンを終了する。閾値Vbは、燃料カット中ではないときに燃料カットの要求を解除する車速として用いられ、例えば、30km/hや20km/hなどを用いることができる。
車速Vが閾値Vb以上のときには、異常診断前提条件データに基づいて、未実施の異常診断項目のうちいずれかの診断項目を実行するための前提条件が成立しているか否かを判定し(ステップS140)、未実施の異常診断項目の全ての前提条件が成立していないときには、燃料カットを要求する必要がないと判断して、燃料カット要求フラグFreqに値0をセットして(ステップS170)、本ルーチンを終了する。未実施の異常診断項目のうちのいずれかの異常診断項目を実行するための前提条件が成立しているときには、車速Vを閾値Vaと比較する(ステップS150)。ここで、閾値Vaは、燃料カットをある程度の時間に亘って行なうことができる程度の車速が用いられ、例えば、40km/hや50km/hなどを用いることができる。車速Vが閾値Va未満のときには、燃料カットをある程度の時間に亘って行なうことができないと判断して、燃料カット要求フラグFreqに値0をセットして(ステップS170)、本ルーチンを終了し、車速Vが閾値Va以上のときには、燃料カットをある程度の時間に亘って行なうことができると判断して、異常診断を実行するために燃料カット要求フラグFreqに値1をセットして(ステップS180)、本ルーチンを終了する。
ステップS120で燃料カット実行フラグFcutが値1のとき、即ち燃料カット中(異常診断のための燃料カット中を含む)のときには、車速Vを閾値Vcと比較する(ステップS160)。閾値Vcは、燃料カット中のときに燃料カットの要求を解除する車速として用いられ、閾値Vbより小さな車速、例えば、15km/hや10km/hなどを用いることができる。車速Vが閾値Vc以上のときには、燃料カット要求フラグFreqを変更することなく本ルーチンを終了し、車速Vが閾値Vc未満のときには、燃料カット要求フラグFreqに値0をセットして(ステップS170)、本ルーチンを終了する。
図4は、車速Vとアクセル操作に対して実施例と比較例の燃料カット要求フラグFreqと燃料カット実行フラグFcutと異常診断完了フラグFendの変化の様子を示す説明図である。比較例としては、燃料カットの実行に拘わらず車速Vが閾値Vb未満に至ったときに燃料カット要求フラグFreqに値0をセットする従来例を考える。時刻T1以前は、車速Vが閾値Va以上に至って燃料カット要求フラグFreqに値1がセットされている状態である。この状態からアクセルオフされた時刻T1では、実施例も比較例も、アクセルオフに伴って燃料カットが実行されるため燃料カット実行フラグFcutに値1がセットされる。こうした燃料カットの実行により未実施の異常診断が開始される。アクセルオフに伴って車速Vが閾値Vb未満に至る時刻T2では、実施例では、その前の状態が保持されるため、異常診断は継続されるが、比較例では、車速Vが閾値Vb未満に至ったことにより燃料カット要求フラグFreqに値0がセットされるから、異常診断が完了していないにも拘わらず燃料カットが解除されて燃料カット実行フラグFcutに値0がセットされる。車速Vが閾値Vc未満に至る前の時刻T3では、実施例では、異常診断が完了したことにより異常診断完了フラグFendに値1がセットされ、これに伴って燃料カットが解除されて燃料カット実行フラグFcutに値0がセットされると共に、燃料カット要求フラグFreqに値0がセットされる。なお、異常診断が完了する前に車速Vが閾値Vc未満に至ると、時刻T2の比較例と同様に、燃料カット要求フラグFreqに値0がセットされ、異常診断が未完了の状態で燃料カットが解除されて燃料カット実行フラグFcutに値0がセットされる。このように、実施例では、燃料カットが実行されているとき(燃料カット実行フラグFcutが値1のとき)には車速Vが閾値Vbより小さな値Vc未満に至るまで燃料カット要求フラグFreqに値0をセットして燃料カットの要求を解除することを行なわないから、燃料カットが実行されているときでも車速Vが閾値Vb未満に至ったときに燃料カット要求フラグFreqに値0をセットする比較例に比して、未実施の異常診断を完了することができる頻度を高くすることができる。この結果、異常診断を完了することができないにも拘わらずに燃料カットが実行されるのを抑制することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、未実施の異常診断項目があるときに燃料カット要求フラグFreqに値1がセットされて燃料カットが要求されたときには、燃料カットが実行されていないときには車速Vが閾値Vb未満に至ったときに燃料カット要求フラグFreqに値0をセットして燃料カットの要求を解除し、燃料カットが実行されているときには車速Vが閾値Vbより小さな閾値Vc未満に至ったときに燃料カット要求フラグFreqに値0をセットして燃料カットの要求を解除することにより、燃料カットの実行の有無に拘わらずに車速Vが閾値Vb未満に至ったときに燃料カット要求フラグFreqに値0をセットして燃料カットの要求を解除するものに比して、未実施の異常診断を完了することができる頻度を高くすることができる。この結果、異常診断を完了することができないにも拘わらずに燃料カットが実行されるのを抑制することができ、異常診断を完了することができないにも拘わらずに燃料カットが実行されることによる燃費の悪化や運転者のドライブフィーリングの悪化などの不都合を抑制することができる。また、実施例のハイブリッド自動車20によれば、未実施の異常診断項目のうちいずれかの診断項目を実行するための前提条件が成立しており且つ車速Vが閾値Va以上に至ったときに燃料カット要求フラグFreqに値1をセットして燃料カットを要求するから、異常診断を実行するための前提条件が成立していないにも拘わらずに燃料カットを実行するのを回避することができる。もとより、未実施の異常診断項目があるときには、燃料カット要求フラグFreqに値1をセットして燃料カットを要求するから、エンジン22の間欠停止より燃料カットを優先する用にして異常診断の機会を多くすることができる。また、異常診断が完了するまで燃料カットを継続するものに比して、過剰なモータ走行による運転者のドライブフィーリングが低下するのを抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、未実施の異常診断項目のうちいずれかの診断項目を実行するための前提条件が成立しており且つ車速Vが閾値Va以上に至ったときに燃料カット要求フラグFreqに値1をセットして燃料カットを要求するものとしたが、単に、車速Vが閾値Va以上に至ったときに燃料カット要求フラグFreqに値1をセットして燃料カットを要求するもの、即ち、未実施の異常診断項目のうちいずれかの診断項目を実行するための前提条件の成立の有無に拘わらずに車速Vが閾値Va以上に至ったときに燃料カット要求フラグFreqに値1をセットして燃料カットを要求するものとしても構わない。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2からの動力を駆動輪63a,63bに連結された駆動軸32に出力するものとしたが、図5の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2からの動力を駆動軸32が接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図5における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動軸32に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸32に出力するものとしたが、図6の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動輪63a,63bに連結された駆動軸に変速機230を介してモータMGを取り付け、モータMGの回転軸にクラッチ229を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機230とを介して駆動軸に出力すると共にモータMGからの動力を変速機230を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。また、図7の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、エンジン22からの動力を変速機330を介して駆動輪63a,63bに接続された車軸に出力すると共にモータMGからの動力を駆動輪63a,63bに接続された車軸とは異なる車軸(図8における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG2が「モータ」に相当し、図3の燃料カット要求フラグ設定ルーチンを実行するエンジンECU24が「燃料カット要求設定解除手段」に相当する。また、閾値Vbが「第1の閾値」に相当し、閾値Vcが「第2の閾値」に相当し、閾値Vaが「第3の閾値」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。