JP2013227658A - 摺動部材、及び摺動部材の製造方法 - Google Patents

摺動部材、及び摺動部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐摩耗性が高く、かつ相手攻撃性が低い摺動部材とその製造方法を提供する。
【解決手段】Siを6質量%以上含有する高Siアルミニウム合金相と、Siを2質量%以下含有する低Siアルミニウム合金相と、非金属無機材料からなり、各合金相に分散される硬質粒子とを備える摺動部材である。摺動部材を相手材と摺動させた際、硬質粒子が金属相から脱落しても、その硬質粒子を再度低Siアルミニウム合金相に保持し易く、相手材を摩耗させる相手攻撃性が低い。
【選択図】図4

Description

本発明は、アルミニウム合金基焼結体からなる摺動部材とその製造方法に関するものである。特に、耐摩耗性に優れると共に、摺動部材と摺接する相手材の摩耗性(相手攻撃性)が低い摺動部材に関するものである。
自動車、OA機器、家庭用電気製品といった種々の分野の機械部品に、焼結部材が利用されている。焼結部材は、強度や耐摩耗性といった機械的特性に優れる上、最終製品形状に近いものが製造できるため、複雑な三次元形状の製品の素材に適している。一方で、より軽量の素材による摺動部材が求められており、アルミニウム合金を用いた材料が提案されている。例えば、特許文献1には、アルミニウム合金に硬質粒子を添加して、強度と耐摩耗性の両立を狙いとした焼結アルミニウム合金が開示されている。この焼結アルミニウム合金は、Al-Zn-Mg-Cu系合金に所定量のアルミナやムライトの硬質粒子を含有した液相焼結アルミニウム合金である。
特開2009-242883号公報
しかし、上記焼結アルミニウム合金であっても、耐摩耗性と相手攻撃性の両立に関して更なる改善の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、耐摩耗性が高く、かつ相手攻撃性が低い摺動部材とその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、アルミニウム合金に硬質粒子を添加した摺動部材の耐摩耗性の向上を図るため、特許文献1のAl-Zn-Mg-Cu系合金をAl-Si-Mg-Cu系合金に置換した摺動部材を検討した。その際、耐摩耗性を重視してAl-Si系合金におけるSi量を増量すると、析出したSi粒子の脱落が増え、相手攻撃性がより顕著に増大することが判明した。このことから、さらに相手攻撃性の要因について検討を行った。その結果、摺動部材を相手材と摺接させた際、硬質粒子がAl-Si-Mg-Cu系合金の金属相から脱落し、その硬質粒子が摺動部材と相手材との間に介在された状態で動かされることで、摺動部材・相手材共に摩耗されることが相手攻撃性を高める一因であるとの知見を得た。そこで、硬質粒子が脱落しても摺動部材と相手材との間に介在される状態を回避し易い摺動部材を検討し、本発明を完成するに至った。
本発明の摺動部材は、Siの含有量が6質量%以上である高Siアルミニウム合金相と、Siの含有量が2質量%以下である低Siアルミニウム合金相と、非金属無機材料からなり、各アルミニウム合金相に分散される硬質粒子とを備える。
この構成によれば、硬質粒子が金属相から脱落した場合でも、比較的柔らかい低Siアルミニウム合金相に脱落した硬質粒子が再度埋め込まれて保持され易い。そのため、摺動部材を相手材と摺接させた際、脱落した硬質粒子が両部材の間に介在された状態で動かされることを抑制し易く、摺動部材の相手攻撃性を低減することができる。また、金属相として比較的硬質の高Siアルミニウム合金相を備え、金属相に非金属無機材料の硬質粒子を分散させることで、摺動部材の強度の低下を抑制しつつ、耐摩耗性を高めることができる。そのため、本発明の摺動部材は、高い耐摩耗性と低い相手攻撃性とを両立することができる。
本発明の摺動部材の一形態として、摺動部材の金属相に占める低Siアルミニウム合金相の含有量が10質量%以上60質量%以下であることが挙げられる。
この構成によれば、低Siアルミニウム合金相の含有量を所定量とすることで、摺動部材の硬度を維持しつつ、相手攻撃性の低減をより効果的に実現できる。
本発明の摺動部材の一形態として、硬質粒子の平均粒径は、低Siアルミニウム合金相の平均粒径よりも小さいことが挙げられる。
この構成によれば、低Siアルミニウム合金相の平均粒径よりも小さな平均粒径の硬質粒子を用いることで、低Siアルミニウム合金相で硬質粒子を保持し易くし、かつ硬質粒子が脱落しても再度低Siアルミニウム合金相で保持し易くできる。
本発明の摺動部材の一形態として、硬質粒子の平均粒径が30μm以下であることが挙げられる。
この構成によれば、微細な硬質粒子を用いることで、耐摩耗性に優れる摺動部材とすることができる。
本発明の摺動部材の一形態として、硬質粒子の摺動部材に占める含有量が0.5質量%以上10質量%以下であることが挙げられる。
この構成によれば、硬質粒子の含有量を規定することで、他の焼結部材と同程度又はそれ以上の強度や硬度を有する摺動部材とでき、かつ相手攻撃性を適度に抑えた摺動部材とできる。
本発明の摺動部材の一形態として、高Siアルミニウム合金相がAl-Si-Mg-Cu系合金で構成されることが挙げられる。
Al-Si-Mg-Cu系合金は硬度に優れ、金属相として用いることで、摺動部材の耐摩耗性を高めることに寄与する。
本発明の摺動部材の一形態として、非金属無機材料は、ビッカース硬度がHv800以上の材料であることが挙げられる。
硬質粒子の硬度を規定することで、耐摩耗性の高い摺動部材とすることができる。
本発明の摺動部材の一形態として、非金属無機材料は、アルミナ又はムライトであることが挙げられる。
硬質粒子がアルミナであれば、特に耐摩耗性に優れ、かつ相手攻撃性が適度に低い摺動部材とすることができる。硬質粒子がムライトであれば、アルミナよりは若干劣るが耐摩耗性に優れ、かつ相手攻撃性が十分に低い摺動部材とすることができる。
本発明の摺動部材の一形態として、以下の条件によりチップオンディスク式の摺動試験を行った際、試験前におけるチップの摺動面の表面粗さよりも、試験後におけるチップの摺動面の表面粗さの方が小さい形態が挙げられる。
チップ:本発明の摺動部材からなるチップ
ディスク:チップと同一材質のディスク
ディスクのチップ圧接箇所の周速:1.6m/sec
荷重と時間:30kgf×1時間
潤滑:油中
温度:室温
この構成によれば、摺動試験前よりも摺動試験後の方が摺動面の表面粗さが小さくなるため、摺動部材を同一材質の相手材と摺動させた際、初期なじみが良好で、その後も、摺動部材・相手材共に摩耗の増加を抑制し易い。
本発明の摺動部材の製造方法は、次の準備工程、成形工程及び焼結工程を含む。
準備工程:Siの含有量が6質量%以上である高Siアルミニウム合金粉末と、実質的にSiを含有しない高純度アルミニウム粉末と、非金属無機材料の硬質粒子とを含む混合粉末を準備する。
成形工程:この混合粉末を成形して成形体とする。
焼結工程:この成形体を焼結して、Siの含有量が6質量%以上である高Siアルミニウム合金相、Siの含有量が2質量%以下である低Siアルミニウム合金相、及びこれら合金相に分散される硬質粒子を含む焼結体とする。
この方法によれば、本発明の摺動部材を得ることができる。
本発明の摺動部材の製造方法の一形態としては、成形体の焼結は、液相の出現温度にて行うことが挙げられる。
液相焼結することで、焼結体に含まれる空孔を少なくでき、より高密度の摺動部材を形成し易い。
本発明の摺動部材によれば、耐摩耗性と低相手攻撃性を両立できる。また、本発明の摺動部材の製造方法によれば、本発明の摺動部材を容易に得ることができる。
摺動試験に用いるチップを示し、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)はチップの摩耗幅wの説明図である。 摺動試験の試験方法の説明図である。 摺動試験の結果を示すグラフである。 (A)は本発明の摺動部材に係る試料の摺動試験前の摺動面のSEM写真、(B)は摺動試験後の摺動面のSEM写真である。 摺動試験の前後における摺動面の表面粗さを示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の摺動部材は、高Siアルミニウム合金相、低Siアルミニウム合金相及び硬質粒子を備える。以下、摺動部材の構成要件について説明し、その後、その摺動部材の製造方法について説明する。
[摺動部材]
(高Siアルミニウム合金相)
<組成>
本発明の摺動部材の高Siアルミニウム合金相は、添加元素と残部がAl及び不純物からなるアルミニウム合金で構成され、Siを6質量%以上含有するAl-Si合金とする。母材の組成は適宜選択することができるが、特に、Al-Si-Mg-Cu系合金が好適に利用できる。Al-Si-Mg-Cu系合金は耐摩耗性に優れて好ましい。Al-Si-Mg-Cu系合金の具体的組成としては、質量%でSiを6〜18%、Mgを0.2〜1.0%、Cuを1.2〜3.0%含有し、残部がAl及び不純物からなるものが挙げられる。特に、Siは8〜15%含有されることが好ましい。母材中の添加元素は、アルミニウム中に固溶又は晶出、析出して存在する。母材の組成(元素及び含有量)は、例えば、SEM-EDXや発光分光分析方法などを利用することで測定できる。母材の組成は、原料となる母材粉末の組成により調整するとよい。
<含有量>
摺動部材の金属相に占める高Siアルミニウム合金相の含有量は、40質量%以上90質量%以下が好ましい。下限値以上の高Siアルミニウム合金相を含有することで、硬度が高く耐摩耗性に優れる摺動部材とすることができる。さらには強度にも優れる摺動部材とすることができる。上限値以下の高Siアルミニウム合金相を含有することで、残部の金属相を低Siアルミニウム合金相とすることができ、相手攻撃性の低い摺動部材とすることができる。この含有量は摺動部材から硬質粒子を除いた材料を金属相とし、その金属相を100質量%としたときの高Siアルミニウム合金相の含有量である。
<平均粒径>
高Siアルミニウム合金相の平均粒径は、45μm以上350μm以下程度が好ましい。この範囲の平均粒径とすることで、成形性、焼結性、製造性に優れる。この平均粒径は、原料粉末である高Siアルミニウム合金粉末の平均粒径と実質的に同一とみなすことができる。より好ましい平均粒径は、45μm以上100μm以下程度である。
<その他>
なお、本発明の摺動部材は押出工程を経ていない焼結材であり、金属相(次述する低Siアルミニウム合金相も含む)の結晶粒子のアスペクト比(最大径と最小径との比)が小さい(5未満)。即ち、摺動部材の金属組織を調べることで、焼結により製造されたことが確認できる。また、本発明の摺動部材は溶製材とも異なる。溶製材には、非金属無機材料等の硬質粒子を分散させることが困難である。
(低Siアルミニウム合金相)
<組成>
低Siアルミニウム合金相は、高Siアルミニウム合金相における添加元素とアルミニウムと不純物とからなる組成で構成される。後述するように、本発明の摺動部材は、Siの含有量が6質量%以上である高Siアルミニウム合金粉末と、実質的にSiを含有しない高純度アルミニウム粉末とを原料粉末に用いて製造される。このような原料粉末を含む成形体を焼結した際、高Siアルミニウム合金粉末の添加元素の一部は高純度アルミニウム粉末に拡散し、低Siアルミニウム合金相を生成する。高Siアルミニウム合金相に含まれる添加元素としては、Si、Mg、Cuなどが挙げられる。このうち、Siは焼結時に高純度アルミニウム粉末へ殆ど固溶しない。一方、MgやCuは焼結時に高純度アルミニウム粉末へ固溶し易い。そのため、低Siアルミニウム合金相は、Siの含有量は低いものの、MgやCuは高Siアルミニウム合金相におけるMgやCuの含有量に近い程度含まれることがある。低Siアルミニウム合金相におけるSiの含有量は、2質量%以下、好ましくは1質量%以下で、さらには0.5質量%以下、特に0.1質量%未満であり、実質的に含有されない場合もある。
この低Siアルミニウム合金相は、焼結体の摺動部材中においても、高Siアルミニウム合金相とは区別できる状態で存在する。上述のように、低Siアルミニウム合金相は原料粉末に含まれる高Siアルミニウム合金粉末の添加元素が高純度アルミニウム粉末に拡散することで生成される。但し、高Siアルミニウム合金粉末のSiが高純度アルミニウム粉末に固溶される量は非常に微量であり、低Siアルミニウム合金相は高Siアルミニウム合金相と独立して存在する。この低Siアルミニウム合金相は、摺動部材をSEM-EDXによる面分析などにより分析することで確認できる。
<含有量>
摺動部材の金属相に占める低Siアルミニウム合金相の含有量は、10質量%以上60質量%以下が好ましい。下限値以上の低Siアルミニウム合金相を含有することで、相手攻撃性の低い摺動部材とすることができる。これは、摺動部材を相手材と摺接した際、摺動部材から脱落した硬質粒子を柔らかい低Siアルミニウム合金相が再度保持できるからであると考えられる。さらに、この低Siアルミニウム合金相は、摺動部材内において、硬質粒子を脱落し難くする保持機能も有すると考えられる。上限値以下の低Siアルミニウム合金相を含有することで、残部の金属相を高Siアルミニウム合金相とすることができ、硬度が高く耐摩耗性に優れる摺動部材とすることができ、摺動部材の強度の低下を抑制できる。この含有量も摺動部材から硬質粒子を除いた材料を金属相とし、その金属相を100質量%としたときの低Siアルミニウム合金相の含有量である。
<平均粒径>
低Siアルミニウム合金相の平均粒径は、高Siアルミニウム合金相と同様に、45μm以上350μm以下程度が好ましい。この下限値以上の平均粒径とすることで、合金成分が拡散し、強度が高い摺動部材を得ることができる。上限値以下の平均粒径とすることで、脱落した硬質粒子を保持しやすい摺動部材を得ることができる。この平均粒径も、原料粉末である高純度アルミニウム粉末の平均粒径と実質的に同一とみなすことができる。より好ましい平均粒径は、45μm以上100μm以下程度である。
<形状>
低Siアルミニウム合金相の粒子形状は、扁平状でアスペクト比の大きな場合が多い。低Siアルミニウム合金相は、摺動部材中の他の構成材料に比べて柔らかく、変形性に富むため、成形時の圧縮により変形し易いからである。具体的には、アスペクト比が1〜5程度であることが多い。
(硬質粒子)
<組成>
本発明の摺動部材は、上述した金属相に硬質粒子が分散されている。この硬質粒子の材質としては、非金属無機材料とする。非金属無機材料には、セラミックス、金属間化合物、ダイヤモンドなどが挙げられる。特に、化合物の非金属無機材料が好適に利用できる。より具体的な材質は、Si単体の他、アルミナ(Al2O3)、ムライト(アルミナと酸化ケイ素との化合物)、SiC、AlN、BNなどの化合物が挙げられる。中でも、アルミナを用いると金属相との反応性がよく、耐摩耗性に優れる摺動部材が得られ、ムライトを用いると相手攻撃性の低い摺動部材が得られる。これら各種の硬質粒子は、単一種であっても良いし、複数種を混合して摺動部材に含まれていても良い。摺動部材中の硬質粒子の組成(単体元素、化合物元素及び含有量)は、例えば、SEM-EDX、X線回折、化学分析などを利用することで測定できる。
<含有量>
摺動部材に占める硬質粒子の含有量(複数種の硬質粒子を含有する場合、合計含有量)は、0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。0.5質量%以上であると、他の焼結部材と同程度或いはそれ以上の耐摩耗性が得られ易く、さらには実用上十分な強度、硬度を有することができる。より好ましい下限値は1質量%以上である。硬質粒子の含有量は多いほど、耐摩耗性や硬度が向上する。但し、10質量%を超えると、強度が低下したり、相手材の摩耗や損傷が激しくなる。より好ましい上限値は5.0質量%以下、特に3.0質量%以下である。
<硬度>
硬質粒子の硬度は、Siよりも高硬度とする。特に、ビッカース硬度でHv800以上、さらにはHv1000以上、特にHv1500以上であることが好ましい。このような硬度の硬質粒子を用いることで、高硬度で耐摩耗性に優れる摺動部材とすることができる。例えば、アルミナはHv2600程度であり、ムライトはHv1150程度である。ビッカース硬度Hvの測定方法は、JIS Z 2244(2003)に基づく。
摺動部材の硬度は、硬質粒子の硬度が高いほど、或いは硬質粒子の含有量が多いほど高くなる傾向にある。
<粒径>
硬質粒子の平均粒径は、小さい方が引張強度の低下が抑えられる。硬質粒子の平均粒径が大き過ぎると脱落し易く、相手攻撃性が増す。この平均粒径は低Siアルミニウム合金相の平均粒径よりも小さいことが好ましい。このような微細な硬質粒子を用いることで、高強度で耐摩耗性に優れる摺動部材とでき、かつ相手材との摺接時に脱落した硬質粒子を再度低Siアルミニウム合金相に埋め込むように保持することで、相手攻撃性を効果的に抑制することができる。例えば、平均粒径を30μm以下とすることが好ましい。特に、硬質粒子の最大径が低Siアルミニウム合金相の平均粒径よりも小さいことが好ましい。このような最大径の規定により、脱落した硬質粒子をより一層低Siアルミニウム合金相に保持し易くできる。例えば、最大径を30μm以下とすることが好ましい。
より具体的な硬質粒子の平均粒径は、アルミナ粒子の場合、10μm以下が好ましく、1μm以上6μm以下がより好ましい。特に、最大径は10μm以下であることが好ましく、5μm以上10μm以下がより好ましい。上記範囲を満たす大きさのアルミナ粒子を上記特定の範囲で含有する場合、摺動部材の焼結性を高める効果がある。ムライト粒子の場合、平均粒径は、20μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましい。
原料に用いる硬質粒子の粒度分布は、例えば、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱式粒度分析法)で計測する。摺動部材中の硬質粒子の平均粒径、最大径は以下のように測定する。摺動部材の任意の断面を光学顕微鏡(100〜400倍)で観察し、この観察像を画像処理して、この断面中に存在する全ての硬質粒子の面積を測定する。各面積の円相当径を演算し、この円相当径を各粒子の直径とし、当該断面における最大の直径をこの断面の最大径とする。n=10個の断面について最大径を求め、10個の最大径の平均を硬質粒子の最大径とする。また、一つの断面における全ての粒子の直径の平均をとり、n=10個の断面について平均を求め、10個の直径の平均を更に平均したものを硬質粒子の平均粒径とする。
<形状>
硬質粒子の形状は、シャープエッジをもたないこと、言い換えれば可能な限り球形に近い方が好ましい。球形に近い硬質粒子又は角が角張っていない硬質粒子を用いることで、細長い粒子などを用いる場合に比べて相手攻撃性を低減できる。
[摺動部材の摺動特性]
本発明の摺動部材は、上述した摺動試験の前よりも後の方が摺動面の表面粗さが小さくなる傾向にある。そのため、摺動部材を同一材質の相手材と摺動させた際、初期なじみが良好で、両者の間の微細な隙間のばらつきを抑え易く、摺動部材・相手材共に摩耗の増加を抑制し易い。この表面粗さは、例えばJIS B0601 94における算術平均粗さRaにより評価する。試験後の摺動面の表面粗さは、試験前の摺動面の表面粗さに比べて50%以下、特に30%以下程度となることが好適である。一方、例えば溶製材は、試験前より後の方が摺動面の表面粗さが粗くなる傾向にある。これは、溶製材のSiは平均粒径が大きく、そのSiが脱落して孔が形成されたり、脱落したSiにより摺動部材・相手材共に摺動面が傷付けられるためであると考えられる。
[摺動部材の機械的特性]
本発明の摺動部材は、アルミニウム合金相よりも高硬度で微細な硬質粒子を含有することで、耐摩耗性に優れると共に、高強度である傾向にある。金属相の組成や製造方法にもよるが、本発明の摺動部材は、他の合金系に硬質粒子を添加する場合に比べて、強度低下が抑えられ、引張強度が150MPa以上を満たすことができる。また、硬度は、HRBで60以上を満たすことができる。
[摺動部材の製造方法]
上記の摺動部材は、原料粉末の準備工程、成形工程、焼結工程を備え、必要に応じて、サイジング工程や熱処理工程を行うことで得られる。各工程の詳細は次の通りである。
(準備工程)
準備工程では、摺動部材の原料粉末を用意する。この原料粉末には、Siを6質量%以上含有する高Siアルミニウム合金粉末(以下、Al合金粉末と呼ぶ)、実質的にSiを含有しない高純度アルミニウム粉末(以下、高純度Al粉末と呼ぶ)、及び硬質粒子が含まれる混合粉末を用いる。Al合金粉末は、摺動部材(焼結体)における高Siアルミニウム合金相と同様の添加元素で、高Siアルミニウム合金相の各添加元素の含有量よりも多い含有量の組成の粉末が利用できる。Al合金粉末の具体的組成としては、質量%でSiを6〜40%、Mgを0.2〜2.0%、Cuを1.2〜8.0%含有し、残部がAl及び不純物からなるものが挙げられる。より好ましいSiの含有量は8〜30%、さらに好ましいSiの含有量は17〜18%又は12〜13%である。Al合金の共晶点は、例えば、急冷凝固粉末の場合、Siの含有量が17〜18%近傍のときであり、溶製材粉末の場合、Siの含有量が12〜13%近傍のときである。共晶点付近はSiが最も微小に析出し易いため、Siの含有量を共晶点におけるSi含有量の近傍(±1%)とすれば、より相手攻撃性が低い摺動部材を得ることができる。高純度Al粉末は、代表的には純度97%以上のアルミニウムで構成され、例えば純度が99質量%以上の純アルミニウムが利用できる。さらにAl合金粉末は、Mgを0.03質量%以上2質量%以下含有してもよい。所定量のMgを含有することで、焼結性を高めることができる。この原料粉末の混合には、各粉末粒子の粉砕をできるだけ伴わないような混合方法とすることが好ましい。軟らかい高純度Al粉末を含有すると、上述した脱落硬質粒子の保持に加え、成形性に優れる。
原料に用いた硬質粒子は、摺動部材中に実質的にそのまま残存する。従って、摺動部材中の硬質粒子の含有量や大きさが所望の量や所望の大きさとなるように、原料となる硬質粒子の量や大きさを調整する。また、Al合金粉末や高純度Al粉末の粒径も、その粒径が摺動部材中でほぼ維持される。
(成形工程)
成形は、上述の混合粉末を金型に充填し、圧縮することで行う。例えば、冷間金型成形などの冷間の加圧成形が利用できる。成形圧力としては2〜10ton/cm2程度が挙げられる。この金型のキャビティの形状を調整することで、複雑形状の成形体を得ることもできる。
(焼結工程)
得られた成形体の焼結は、液相出現温度で行えばよい。代表的な焼結条件は、窒素やアルゴンといった不活性雰囲気で、温度:550〜600℃、時間:0(規定温度到達と同時に降温開始)〜60分が挙げられる。この焼結工程により、Al合金粉末はSiを6質量%以上含有する高Siアルミニウム合金相となり、高純度Al粉末はAl合金粉末中の添加元素の一部が拡散されてSiの含有量が2質量%以下である低Siアルミニウム合金相となって、これら合金相に分散される硬質粒子を含む焼結体が得られる。
上述のように成形体を液相焼結すると、原料粉末間の空孔が液相により縮小され、固相焼結の焼結材に比べて空孔が少なく高密度の焼結体が得られる。また、液相の出現前における原料粉末間の空孔は凹凸の多い不規則な形状であるが、液相の出現後には空孔が丸みを帯びた形状になり易い。そのため、本発明の摺動部材を断面観察した場合、空孔は円形に近い形状のものが多い。
(サイジング工程)
得られた焼結体に適宜サイジングを施してもよい。サイジングは、熱間でも冷間でもよい。冷間サイジングは、寸法精度を向上させることができ、熱間サイジングは、強度を向上させることができる。
(熱処理工程)
焼結後、又はサイジング後、溶体化、時効の熱処理を適宜施してもよい。熱処理条件は、公知の条件を利用することができる。また、溶体化後にサイジングを施し、その後に時効することによって寸法精度を高めることができる。溶体化後の焼結体は軟質であるため、高精度にサイジングし易いためである。
[試験例]
種々の硬質粒子を含む摺動部材の試料を作製し、その摺動特性を調べた。各試料は、原料粉末の準備→成形→焼結→冷間サイジング→熱処理という工程で作製した。各試料の製造条件は次の通りである。試料No.1〜No.6は、いずれも引張強度:150MPa以上、硬度:HRB60以上を満たしていた。
《試料No.1:Al-Si-Mg-Cu系合金+硬質粒子》
Al-18Si-3.25Cu-0.81Mg(単位:質量% 以下同様)の組成のAl-Si-Mg-Cu系合金粉末(高Siアルミニウム合金粉末)と、Al-0.5Mgの組成の高純度アルミニウム粉末と、アルミナ粉末とを用意する。Al-Si-Mg-Cu系合金粉末と高純度アルミニウム粉末の各平均粒径は50μm、アルミナ粉末は、平均粒径が2μm(最大径6μm)である。用意したAl-Si-Mg-Cu系合金粉末、高純度アルミニウム粉末、及びアルミナ粉末をそれぞれ混合させた混合粉末を作製する。Al-Si-Mg-Cu系合金粉末と高純度アルミニウム粉末の質量割合は80:20であり、この割合は、摺動部材の金属相に占める高Siアルミニウム合金相と低Siアルミニウム合金相の質量割合である。混合粉末に対してアルミナ粉末が1.0質量%となるように、上記金属粉末とアルミナ粉末とを混合する。得られた混合粉末を5ton/cm2の面圧で金型成形して成形体を作製した。続いて、この成形体を窒素雰囲気中で560±5℃×50分の焼結条件で液相焼結した。得られた焼結体に、490℃に加熱後、水冷して溶体化を施し、その後6ton/cm2の条件で冷間サイジングし、さらに175℃×7時間の時効を行って硬質粒子を含有する焼結Al-Si-Mg-Cu系合金の試料を作製した。
《試料No.2:Al-Si-Mg-Cu系合金+硬質粒子》
試料No.1の混合粉末に対するアルミナ粒子の含有量を3.0質量%とした点以外は試料No.1と同一の条件で硬質粒子を含有する焼結Al-Si-Mg-Cu系合金の試料を作製した。
《試料No.3:Al-Si-Mg-Cu系合金+硬質粒子》
試料No.1の混合粉末において、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末と高純度アルミニウム粉末の質量割合を70:30とした点以外は試料No.1と同一の条件で硬質粒子を含有する焼結Al-Si-Mg-Cu系合金の試料を作製した。
《試料No.4:Al-Si-Mg-Cu系合金+硬質粒子》
試料No.1の混合粉末において、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末と高純度アルミニウム粉末の質量割合を60:40とした点以外は試料No.1と同一の条件で硬質粒子を含有する焼結Al-Si-Mg-Cu系合金の試料を作製した。
《試料No.5:Al-Si-Mg-Cu系合金+硬質粒子》
試料No.1の混合粉末において、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末と高純度アルミニウム粉末の質量割合を40:60とした点以外は試料No.1と同一の条件で硬質粒子を含有する焼結Al-Si-Mg-Cu系合金の試料を作製した。
《試料No.6:Al-Si-Mg-Cu系合金+硬質粒子》
試料No.1の混合粉末において、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末と高純度アルミニウム粉末の質量割合を90:10とした点以外は試料No.1と同一の条件で硬質粒子を含有する焼結Al-Si-Mg-Cu系合金の試料を作製した。
《試料No.11:F-08C2》
市販の焼結部材(F-08C2)を用意した。この試料No.11の機械的特性は、硬度:HRB75、引張強さ:430MPaである。
《試料No.12:A390》
A390(17質量%のSiを含有する鋳物用Al-Si過共晶系合金)の溶製材の押出体を用意し、熱処理は試料No.1と同様の条件で行ってA390合金の試料を作製した。この試料No.12の機械的特性は、硬度:HRB80、引張強さ:390MPaである。
《試料No.13:Al-Si-Mg-Cu系合金》
硬質粒子を含まない点を除いて試料No.1と同様の組成の混合粉末を同様の条件で成形体に成形した。この成形体を560±5℃×50分で焼結し、それ以降の冷間サイジング、熱処理は試料No.1と同様の条件で行って焼結Al-Si-Mg-Cu系合金の試料を作製した。この試料No.13の機械的特性は、硬度:HRB75、引張強さ:300MPaである。
《試料No.14:Al-Si-Mg-Cu系合金+硬質粒子》
試料No.1の混合粉末において、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末と高純度アルミニウム粉末の質量割合を20:80とした点以外は試料No.1と同一の条件で硬質粒子を含有する焼結Al-Si-Mg-Cu系合金の試料を作製した。この試料No.14の機械的特性は、硬度:HRB57、引張強さ:275MPaである。
《試料No.15:Al-Si-Mg-Cu系合金+硬質粒子》
試料No.1の混合粉末において、高純度アルミニウム粉末を含まない点以外は試料No.1と同一の条件で硬質粒子を含有する焼結Al-Si-Mg-Cu系合金の試料を作製した。この試料No.15の機械的特性は、硬度:HRB78、引張強さ:257MPaである。
(摺動試験)
上記の各材料からなる所定の形状のチップを作製し、チップオンディスク摩耗試験を行う。この試験の後、図1(C)に示すチップ10の摺動面における摩耗幅wを測定する。その結果を図3のグラフに示す。
《チップ形状》
摺動試験に用いるチップ10は、図1(A)、(B)に示す舌片状のブロックとした。このチップ10の一方の端面は摺動試験においてチップ10を保持する支持具が取り付けられる平面で、その支持具を挿入するための孔が形成され、他方の端面はディスクに対する摺動面で、円弧状の湾曲面で構成されている。このチップ10の寸法は次の通りである。
幅(図1(A)の上下距離):10mm
厚さ(図1(A)の左右距離):5mm
長さ(図1(B)の左右距離):10mm
摺動面の曲げ半径:5mm
《摺動条件》
上記のチップ10を、図2に示すように、回転するディスク20に圧接し、チップの摩耗量を測定する。摺動条件は次の通りである。この摺動試験では、チップとディスクの材質を同一とした共摺性を評価しているため、チップとディスクの摩耗量は同程度となる。そのため、チップの摩耗量が少なければ、相手材であるディスクの摩耗量も少ないといえる。
ディスクの材質:チップと同一
ディスクのチップ圧接箇所の周速:1.6m/sec
圧接条件:30kgf×1時間
潤滑:油中
温度:室温
(表面粗さ測定)
試料No.2、12、13について上記摺動試験の前後における摺動面の表面粗さを測定した。具体的には、JIS B0601 94における算術平均粗さRaを測定した。その結果を図5のグラフに示す。このグラフは、試験前の摺動面の表面粗さを100%として、試験後の摺動面の表面粗さを相対値で示している。なお、摺動試験前の摺動面は、上述した時効後のチップのままの状態であり、研磨などは行っていない。この試験前の摺動面の表面粗さRaは0.35μm以下である。
(粒径測定)
各試料における高Siアルミニウム合金相と低Siアルミニウム合金相の平均粒径を測定した。樹脂に埋め込んだ各試料の断面を研磨し、その断面に対して倍率:150倍でSEM-EDXによる面分析を行う。試料断面の撮影画像から画像処理により高Siアルミニウム合金相と低Siアルミニウム合金相の各々の粒子を抽出し、次の手順により各々の平均粒径を求めた。各粒子の最大径を長径DL、長径DLに垂直な面の最大径を短径DSとし、個々の粒子の粒径rsを次式により求める。そして、10個の粒子について粒径rsの平均を演算して、その値を平均粒径rAVEとする。
個々の粒径rs=(長径DL×短径DS1/2
(結果)
《摺動面の状態》
図4(A)に摺動試験前の摺動面のSEM写真を、図4(B)に摺動試験後の摺動面のSEM写真を示す。この写真は、いずれも試料No.1の摺動面の写真である。この写真において、白い粒子がアルミナ粒子であり、その背景の灰色に見える箇所が金属相である。この写真ではわかり難いが、SEM-EDXによる面分析を行うことで、金属相は高Siアルミニウム合金相と低Siアルミニウム合金相の粒子状の各領域がまだらに存在することがわかる。さらに、摺動試験前の摺動面の写真(A)では、アルミナ粒子が金属相から突出しているのがわかるのに対し、摺動試験後の摺動面の写真(B)ではアルミナ粒子が金属相にめり込むように保持されていることがわかる。
また、図5に示すように、溶製材を押出した試料No.12(A390)は摺動試験前よりも摺動試験後の方が大幅に面粗度が粗くなっている。これは試料中のSiの平均粒径が大きいためであると考えられる。また、アルミナ粒子を添加していない試料No.13は、摺動試験前後の摺動面の面粗度が僅かに変化しているが、やはり摺動試験前よりも後の方が面粗度は粗くなっている。これに対し、アルミナ粒子を添加した試料No.2では、摺動試験前よりも後の面粗度の方が大幅に滑らかになっていることがわかる。具体的には、試験後の面粗度は試験前の面粗度の30%程度となっていることがわかる。
《金属相の粒径とSi含有量》
各試料における高Siアルミニウム合金相と低Siアルミニウム合金相の平均粒径は、いずれも高Siアルミニウム合金粉末と高純度アルミニウム粉末の平均粒径である50μmに近似した値であった。また、上記面分析の結果、試料No.1の焼結Al-Si-Mg-Cu系合金部材(摺動部材)において、高Siアルミニウム合金相のSi含有量は約15質量%であり、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末のSi含有量よりも減少していた。一方、低Siアルミニウム合金相は0.1質量%未満の極微量のSiが含有されており、高純度アルミニウム粉末に対してAl-Si-Mg-Cu系合金粉末のSiが固溶したものと考えられる。その他、試料No.2〜No.6,No.13,No.14についても、面分析の結果、高Siアルミニウム合金相のSi含有量は、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末のSi含有量よりも減少したのに対し、低Siアルミニウム合金相は、0.1質量%未満の極微量のSiが含有されていた。そのため、高Siアルミニウム合金相はAl-Si-Mg-Cu系合金粉末に由来して生成されるが、高純度アルミニウム粉末との混合割合によって、高純度アルミニウム粉末にAl-Si-Mg-Cu系合金粉末の添加元素が固溶していると考えられる。高Siアルミニウム合金相におけるSi含有量は、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末と高純度アルミニウム粉末の質量割合を調整することで変えることができる。その結果を表1に示す。
《摩耗量》
上記摺動試験の結果を表1及び図3に示す。表1及び図3のグラフに示すように、原料粉末においてAl-Si-Mg-Cu系合金粉末と高純度アルミニウム粉末とを質量割合40:60〜90:10で混合し、かつこの混合粉末に対してアルミナ粒子を含有した試料No.1〜No.6は、アルミナ粒子を含有しない試料No.13に比べて摩耗幅が小さくなっていることがわかる。特に、アルミナ粒子を3質量%含有する試料No.2は、市販の焼結部材の試料No.11に最も近い耐摩耗性を示している。また、原料粉末において、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末の質量割合が少な過ぎる試料No.14は、高Siアルミニウム合金相のSi含有量が少ないため、摩耗幅が大きくなっていることがわかる。一方、原料粉末において、Al-Si-Mg-Cu系合金粉末のみ(高純度アルミニウム粉末を含まない)の試料No.15は、低Siアルミニウム合金相が生成されないため、摩耗幅が大きくなっていることがわかる。
アルミナ粒子を含有しないアルミニウム合金の試料No.12(A390)は、最も摩耗幅が大きかった。
《考察》
以上の結果から次のことが考察される。
(1)図4の写真から、高Siアルミニウム合金相と低Siアルミニウム合金相の金属相に硬質粒子を含む場合、耐摩耗性が改善されると共に、金属相から硬質粒子が脱落しても、この脱落粒子が低Siアルミニウム合金相に埋め込まれるように保持されるため、相手攻撃性が低減できると考えられる。
(2)図3のグラフより、高Siアルミニウム合金相と低Siアルミニウム合金相を備え、高Siアルミニウム合金相が特定範囲のSiを含有していることで、耐摩耗性が向上する傾向にある。さらに、硬質粒子の含有量を多くすることで、耐摩耗性が向上する傾向にある。
(3)図5のグラフより、高Siアルミニウム合金相と低Siアルミニウム合金相の金属相に硬質粒子を含む場合、摺動試験前よりも摺動試験後の方が面粗度は小さくなる傾向にある。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、高Siアルミニウム合金相の組成や硬質粒子の含有量を適宜変更することができる。
本発明の摺動部材は、十分な強度を備えると共に耐摩耗性に優れ、相手攻撃性が低く、かつ軽量化が望まれる種々の分野の製品素材として好適に利用することができる。本発明の摺動部材の製造方法は、本発明の摺動部材、特に複雑な三次元形状の摺動部材の製造に好適に利用することができる。
10 チップ 20 ディスク

Claims (11)

  1. Siの含有量が6質量%以上である高Siアルミニウム合金相と、
    Siの含有量が2質量%以下である低Siアルミニウム合金相と、
    非金属無機材料からなり、前記各アルミニウム合金相に分散される硬質粒子とを備える摺動部材。
  2. 前記摺動部材の金属相に占める前記低Siアルミニウム合金相の含有量が10質量%以上60質量%以下である請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記硬質粒子の平均粒径は、前記低Siアルミニウム合金相の平均粒径よりも小さい請求項1又は2に記載の摺動部材。
  4. 前記硬質粒子の平均粒径が30μm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動部材。
  5. 前記硬質粒子の前記摺動部材に占める含有量が0.5質量%以上10質量%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の摺動部材。
  6. 前記高Siアルミニウム合金相がAl-Si-Mg-Cu系合金で構成される請求項1〜5のいずれか一項に記載の摺動部材。
  7. 前記非金属無機材料は、ビッカース硬度がHv800以上の材料である請求項1〜6のいずれか一項に記載の摺動部材。
  8. 前記非金属無機材料は、アルミナ又はムライトである請求項7に記載の摺動部材。
  9. 以下の条件によりチップオンディスク式の摺動試験を行った際、試験前におけるチップの摺動面の表面粗さよりも、試験後におけるチップの摺動面の表面粗さの方が小さい請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動部材。
    チップ:請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動部材からなるチップ
    ディスク:チップと同一材質のディスク
    ディスクのチップ圧接箇所の周速:1.6m/sec
    荷重と時間:30kgf×1時間
    潤滑:油中
    温度:室温
  10. Siの含有量が6質量%以上である高Siアルミニウム合金粉末と、実質的にSiを含有しない高純度アルミニウム粉末と、非金属無機材料の硬質粒子とを含む混合粉末を準備する工程と、
    この混合粉末を成形して成形体とする工程と、
    この成形体を焼結して、Siの含有量が6質量%以上である高Siアルミニウム合金相、Siの含有量が2質量%以下である低Siアルミニウム合金相、及びこれら合金相に分散される硬質粒子を含む焼結体とする工程とを有する摺動部材の製造方法。
  11. 前記成形体の焼結は、液相の出現温度にて行う請求項10に記載の摺動部材の製造方法。
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