JP2013224746A - 固定式等速自在継手の外側継手部材 - Google Patents

固定式等速自在継手の外側継手部材 Download PDF

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Abstract

【課題】鍛造加工後の後加工を低減して加工工数の低減を図り、歩留まりの向上、および製造コストの低減が図れる固定式等速自在継手の外側継手部材を提供する。
【解決手段】カップ部16と、カップ部16の底部から軸方向に延びる軸部18とを備えた固定式等速自在継手の外側継手部材である。機械構造用炭素鋼から成り、トラック溝12と、内径球面部14aと、カップ入口チャンファ12bと、トラックチャンファ12cと、トラック入口チャンファ12aと、カップ部16の外径面におけるブーツ取付部19を除く部位と、軸部18の端面18aのセンター穴13とを冷間鍛造により仕上げられている。トラック入口チャンファ12aは、トラック溝12のトラック入口端におけるボール接触点対応部位に設けられるボール食い込み緩和用の切欠アール部12a,22aからなる
【選択図】図1

Description

本発明は、固定式等速自在継手の外側継手部材に関する。
等速自在継手には、角度変位のみ許容する固定式等速自在継手と、角度変位のみならず軸方向変位も許容する摺動式等速自在継手とがある。固定式等速自在継手には、バーフィールド型(BJ)やアンダーカットフリー型(UJ)等があり、摺動式等速自在継手には、ダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)やクロスグルーブ型等速自在継手(LJ)等がある。
BJタイプの固定式等速自在継手は、内球面に複数のトラック溝が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材としての外輪と、外球面に外輪のトラック溝と対をなす複数のトラック溝が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材としての内輪と、外輪のトラック溝と内輪のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外輪の内球面と内輪の外球面との間に介在してボールを保持するケージとを備えている。ケージには、ボールが収容される窓部が周方向に沿って複数配設されている。
自動車用等速自在継手では、その外輪(外側継手部材)の材質として、剛性確保のため、はだ焼鋼よりも炭素量の多い機械構造用炭素鋼が用いられる。等速自在継手に用いられる外側継手部材の機械構造用炭素鋼は、硬質のため、冷間鍛造が困難な材質である。逆に言えば、温室等で加工する冷間鍛造では、熱間鍛造に比べて材料の変形能が大幅に低下し、変形抵抗が非常に高くなるため、鍛造しうる材料は制限される。ここで、変形抵抗とは、材料を変形させるのに必要な応力のことである。この変形抵抗が大きいと加工力が高くなり、金型に作用する応力が高くなるため、金型の摩耗や変形、破壊が起りやすくなる。また、変形能とは、破壊することなしに変形しうる性質で、鍛造加工時の割れ発生限度、すなわち、加工率またはひずみの大小で評価される。
ところで、前記外側継手部材(外輪)は機械精度が要求される部品である。このため、従来、機械要素である外輪については、一般的な冷間鍛造は不可能という技術常識があって、冷間鍛造という発想はなく、熱間で鍛造して得た素材を、製品に近い形状に旋削加工し、熱処理後に研削加工を施して製造していた。具体的には、内径球面、カップ入口チャンファ、及びトラック入口チャンファを切削加工し、熱処理後に、トラック溝、内径球面に研削加工を施していた。このため、従来では、このように鍛造加工の後工程として、切削加工および研削加工が多用されているため、後工程の工数が大きくなり、製造コストが高くなる。
このため、近年では、冷間鍛造を採用して、機械加工工程を少なくしようとする提案がなされている(特許文献1)。
特開2002−346688号公報
しかしながら、冷間鍛造を採用する場合、通常は冷間鍛造は不可能という技術常識下で改良されるものであって、加工し易い箇所だけを冷間鍛造するものであり、外輪のごく一部だけを冷間鍛造するものである。これに対して、前記特許文献1に記載のものでは、外輪の大部分を冷間鍛造するものである。
ところが、前記特許文献1では、各部位を冷間鍛造で成形する旨の記載はあるものの、この冷間鍛造でもって仕上げられるとの記載はない。このため、この特許文献1に記載の外輪の製造方法では、冷間鍛造を行った後に、各部位での仕上げ加工を必要とする。
本発明は、上記課題に鑑みて、鍛造加工後の後加工を低減して加工工数の低減を図り、歩留まりの向上、および製造コストの低減が図れる固定式等速自在継手の外側継手部材を提供する。
本発明の固定式等速自在継手の外側継手部材は、カップ部と、このカップ部の底部から軸方向に延びる軸部とを備えた固定式等速自在継手の外側継手部材であって、機械構造用炭素鋼から成り、カップ部の内径面に、トラック溝と、内径球面部と、カップ部の開口縁全周に沿って形成されるカップ入口チャンファと、内径球面部とトラック溝との境界部に沿って形成されるトラックチャンファと、トラック溝のトラック入口端におけるボール接触点対応部位に設けられるボール食い込み緩和用の切欠アール部からなるトラック入口チャンファとを有し、トラック溝と、内径球面部と、カップ入口チャンファと、トラックチャンファと、トラック入口チャンファと、カップ部の外径面におけるブーツ取付部を除く部位と、軸部の端面のセンター穴とが冷間鍛造により仕上げられているものである。ここで、冷間鍛造により仕上げているとは、冷間鍛造後における切削加工や研削加工等の仕上げ加工を行わなくてよいことである。
本発明の固定式等速自在継手の外側継手部材によれば、機械構造用炭素鋼から成り、トラック溝と、内径球面部と、カップ入口チャンファと、トラックチャンファと、トラック入口チャンファと、カップ部の外径面におけるブーツ取付部を除く部位と、軸部の端面のセンター穴とが冷間鍛造により仕上げているので、これらの部位においては、従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工等の仕上げ加工を行わないで済むことにある。
前記カップ部の内径球面部としては、要求される精度が厳しい場合があり、このため、熱処理後の仕上げ加工が施されるものであってもよい。ここで、熱処理とは、例えば、高周波焼入れ処理である。また、仕上げ加工としては、例えば切削加工や研削加工等の仕上げ加工である。高周波焼入れとは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。なお、内径球面部の要求精度によって、この内径球面部を冷間鍛造による仕上げのままとすることができる。
前記カップ部の内径球面部に軸方向に沿って延びるスリット溝が形成され、周方向に隣設するトラック溝間における内径球面部の最大幅寸法に対して、前記スリット溝の幅寸法を5%〜30%とするのが好ましい。
このように外側継手部材の内径球面部で周方向に隣接するトラック溝間に軸方向に延びるスリット溝を形成すれば、冷間鍛造の際、冷間鍛造用の成形型の隙間に、外側継手部材の素材の余肉が入り込まず、内径球面部について所望の形状精度を得ることができる。特に、スリット溝の幅寸法を5%〜30%とすれば、冷間鍛造時に外側継手部材を成形型から離型させることが容易となり、かつ、外側継手部材の内径球面部の必要面積が確保できて、必要な強度、耐久性を確保することができる。なお、スリット溝の幅寸法が5%よりも小さいと、冷間鍛造時に外側継手部材を成形型から離型させることが困難となり、かつ、スリット溝の幅寸法が30%よりも大きいと、外側継手部材の内径球面部の必要面積が確保することが困難となって強度、耐久性の低下を招くことになる。
トラック溝の開口端において、ボール接触点対応部位に、前記トラック入口チャンファとしての切欠アール部を設けることになる。切欠アール部としては、トラック溝毎に2個形成されるものであっても、トラック溝の開口端全体(開口端全周)に設けてもよい。
このような切欠アール部を設けることによって、等速自在継手の高角作動時、特に使用時において想定されている角度をなんらかの理由で超えて、ボールが外側継手部材のトラック溝の軸方向端部に位置したとしても、切欠アール部によって、ボールがこの軸方向端部に食い込むことを防止できる。この際、トラック溝と切欠アール部とを同時冷間鍛造により仕上げるのが好ましい。
切欠アール部からなるトラック入口チャンファとして、トラック溝とカップ入口チャンファとの境界部全体に形成されたものであってもよく、この際、トラック溝とこのトラック入口チャンファとを同時冷間鍛造により仕上げるのが好ましい。
また、トラックチャンファを凸アール形状とするのが好ましい。このように凸アール形状とすれば、この部分における応力集中を回避することができる。この際、トラック溝とトラックチャンファとを同時冷間鍛造により仕上げるのが好ましい。
トラック溝の横断面形状を、ボールとアンギュラ接触するゴシックアーチ形状とし、その接触角を35°〜45°とするのが好ましい。このような接触角であれば、トラック溝に対するボールの接触状態を安定化させることができる。なお、ボール接触角が35°よりも小さいと、トラック面圧が増大し耐久性の低下が懸念される。逆に、ボール接触角が45°よりも大きいと、高作動角におけるトラック肩部までのボールの乗り上げ余裕が小さくなり、高トルク負荷時のボールによる接触楕円の乗り上げが生じ、トラック肩部の欠け等が懸念される。
トラック溝の曲率中心とこのトラック溝に嵌合するボールのボール中心とを結ぶ線と、ボール中心と内径球面部の曲率中心とを結ぶ線とが成す角度であるトラックオフセット角を5.5°〜7.5°とするのが好ましい。このようなトラックオフセット角であれば、等速自在継手の作動性、耐久性、および準静捩り強度を同時に満足できる。
トラック溝の曲率中心を、継手軸心上に位置するときの半径よりも大きい半径を描く位置となるように径方向にずらすことも可能である。これによって、トラック溝の軸方向中央部ですきまを詰めることができる。
本発明の固定式等速自在継手の外側継手部材では、従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工等の仕上げ加工を行わないで済むので、歩留まりが向上し、外側継手部材、延いてはこの外側継手部材を用いる等速自在継手の製造コストの低減を図ることができる。
また、カップ入口チャンファを設けることによって、等速自在継手が作動角をとった際に、内側継手部材に装着したシャフトにこの外側継手部材の開口縁が干渉しなくて済む。トラック入口チャンファ(切欠アール部)を設けることによって、トルク伝達ボールの稼動する有効範囲を有効に確保することができる。トラックチャンファを設けることによって、トラック溝エッジ部の欠けを防止できる。
軸部の端面にセンター穴を設けることによって、このセンター穴を用いたその後の加工(軸に形成される雄スプラインや雄ねじ等の加工)性の向上を図ることができる。特に、このセンター穴の冷間鍛造を行う際に、他の部位の冷間鍛造を行うことができ、これによって、センター穴がこの外側継手部材の軸方向位置の基準面となって、外側継手部材の軸方向位置精度を高精度に成形することができる。このため、本発明の外側継手部材は、軸方向位置精度を必要とするBJタイプの固定式等速自在継手の外側継手部材に最適となる。
前記カップ部の内径球面部に対して、熱処理後の仕上げ加工を施すことによって、要求される高精度に対応することができ、高品質の製品(外側継手部材)を成形することができる。
内径球面部にスリット溝を形成し、内径球面部の最大幅寸法に対して、スリット溝の幅寸法を5%〜30%とすれば、高精度、高品質の製品(外側継手部材)を安定して低コストで生産することができる。
トラック溝の横断面形状を、ボールとアンギュラ接触するゴシックアーチ形状とし、その接触角を35°〜45°とすることによって、ボールの接触状態を安定化させることができて、回転力伝達をなめらかに行うことができ、耐久性に優れた等速自在継手を構成できる。
トラックオフセット角を5.5°〜7.5°とすることによって、この外側継手部材を用いた等速自在継手は、作動性、耐久性、及び強度を満足することができる。このトラックオフセット角が5.5°未満であれば、十字作動性、耐久性、および準静捩り強度の全ての面で問題があり、トラックオフセット角が7.5°を越えると、耐久性及び強度面で劣る。
トラック溝の曲率中心を、継手軸心上に位置するときの半径よりも大きい半径を描く位置となるように径方向にずらすことによって、トラック溝の軸方向中央部ですきまを詰めることができ、ガタ詰めが容易となって異音の発生を抑制することができる。
本発明の実施形態を示す外側継手部材を用いた固定式等速自在継手の断面図である。 前記固定式等速自在継手の横断面図である。 前記固定式等速自在継手のトラック溝の形状を示す拡大断面図である。 外側継手部材の開口端部を示し、(a)は切欠アール部の一例を示す部分拡大斜視図であり、(b)は切欠アール部の他例を示す部分拡大斜視図である。 内側継手部材の開口端部を示し、(a)は切欠アール部の一例を示す部分拡大斜視図であり、(b)は切欠アール部の他例を示す部分拡大斜視図である。 カップ入口チャンファ、トラックチャンファおよびトラック入口チャンファとスリット溝を設けた外輪を示す部分斜視図である。 図6の外輪をその開口端側から見た状態を示す側面図である。 外側継手部材を成形する鍛造装置の断面図である。 前記鍛造装置における成形時の断面図である。 前記鍛造装置のパンチセットの平面図である。 前記鍛造装置の加工時のパンチセットの断面図である。 パンチセットの分割パンチの要部斜視図である。 パンチセットの分割パンチの平面図である。 パンチセットの分割パンチの側面図である。 前記鍛造装置のパンチベースを示し、(a)は平面図であり、(b)はだ断面図である。 外輪前素材の一部断面で示す側面図である。 前記外輪前素材の平面図である。 外輪のトラック溝の曲率中心を、継手軸心上に位置するときの半径よりも大きい半径を描く位置となるように径方向にずらした等速自在継手を示す部分断面図である。 内輪のトラック溝の曲率中心を、継手軸心上に位置するときの半径よりも小さい半径を描く位置となるように径方向にずらした等速自在継手を示す部分断面図である。
以下本発明の実施の形態を図1〜図19に基づいて説明する。図1と図2は本発明にかかる外側継手部材を用いた固定式等速自在継手である。この固定式等速自在継手は、バーフィールド型であって、外側継手部材である外輪10、内側継手部材である内輪20、ボール30およびケージ40を主要な構成要素とし、内輪20、ボール30およびケージ40からなる内部部品50を外輪10に角度変位可能に収容した構造を具備する。
外輪10は機械構造用炭素鋼からなり、一端が開口したカップ状をなし、軸方向に延びる複数のトラック溝12が内径面14に円周方向等間隔に形成されている。なお、周方向で隣合うトラック溝間を内径球面部14aと呼ぶ。内輪20は、軸方向に延びる複数のトラック溝22が外輪10のトラック溝12と対をなして外球面24に円周方向等間隔に形成されている。ボール30は、外輪10のトラック溝12と内輪20のトラック溝22との間に介在してトルクを伝達する。ケージ40は、外輪10の内径面14と内輪20の外球面24との間に介在してボール30を保持する。
機械構造用炭素鋼の炭素成分は、0.37wt%以上0.61wt%以下が好ましく、より好ましくは0.50wt%以上0.58wt%以下である。具体的には、日本工業規格(JIS)で規格されている、S40C〜S58C、望ましくはS53C〜S55Cである。
複数のボール30は、ケージ40に形成されたポケット42に収容されて円周方向等間隔に配置されている。この実施形態では6個のボール30を例示しているが、その個数については任意である。外輪10のトラック溝12と内輪20のトラック溝22とが協働して形成するボールトラックは外輪10の開口側へ向けて拡径する楔形状をなす。
なお、外輪10は、内輪20、ボール30およびケージ40からなる内部部品50を収容したカップ部(マウス部)16と、そのカップ部16の底部から一体的に軸方向に延びるステム部(軸部)18とで構成され、その軸部18の外周面には図示省略の車輪用軸受に連結するための雄スプライン11及び端部ねじ部15が形成されている。また、内輪20の軸孔26には、図示省略のシャフトを連結するためのスプライン28が形成されている。
外輪10の軸部18の端面18aにはセンター穴13が形成されている。また、外輪10のカップ部16の開口縁全周に沿ってカップ入口チャンファ12bが形成されている。
外輪10の内径球面部14aとトラック溝12との境界部に沿って形成されたトラックチャンファ12c、および内輪20の外球面24とトラック溝22との境界部に沿って形成されたトラックチャンファ22cは、図2で拡大して示すようにR形状としている。このR形状のトラックチャンファ12c,22cは、トラック溝12と内径球面部14aとの間およびトラック溝22と外球面24との間で滑らかに繋がるように連続的に形成されている。
外輪10のトラック溝12および内輪20のトラック溝22の横断面形状は、ボール30とアンギュラ接触するゴシックアーチ形状としている。例えば、図3は外輪10のトラック溝12および内輪20のトラック溝22の横断面形状を例示する。このゴシックアーチ形状を有するトラック溝12,22では、ボール30とアンギュラ接触する二つのボール接触点P,Q(ボール接触角α)を持っている。
このボール30とアンギュラ接触する二つのボール接触点P,Qにおけるボール接触角αは、35〜45°が好ましい。ボール接触角αを前述の規定範囲とすることにより、トラック溝12,22に対するボール30の接触状態を安定化させることができる。
図4(a)に示すように外輪10のトラック溝12の開口端において、ボール接触点対応部位にトラック入口チャンファ12aとしての切欠アール部を設けている。また、図5(a)に示すように内輪20のトラック溝22の開口端において、ボール接触点対応部位に切欠アール部22aを設けている。前述のボール接触点対応部位は、前述したようにトラック溝12,22とボール30とがアンギュラ接触することから、図中の一点鎖線で示すように二つのボール接触点P,Q(図中では接触点の軌跡を示す)がトラック溝12,22の開口端と交わる部位となる。
このように外輪10のトラック溝12の開口端および内輪20のトラック溝22の開口端に切欠アール部12a,22aを設けることにより、等速自在継手の高角作動時、特に使用時において想定されている角度をなんらかの理由で超えて、ボール30が外輪10あるいは内輪20のトラック溝12,22の軸方向端部に位置したとしても、切欠アール部12a,22aによって、ボール30がこの軸方向端部に食い込むことを防止できる。
なお、前述の場合、切欠アール部12a,22aを外輪10のトラック溝12の開口端および内輪20のトラック溝22の開口端においてボール接触点対応部位のみに形成しているが、図4(b)および図5(b)に示すように、外輪10のトラック溝12の開口端全体および内輪20のトラック溝22の開口端全体に切欠アール部12a,22aを設けてもよい。このように外輪10のトラック溝12の開口端全体および内輪20のトラック溝22の開口端全体に設けた場合には、その切欠アール部12a,22aは後述のトラック入口チャンファとなる。このように、切欠アール部12a,22aは、ボール食い込み緩和用の切欠アール部を構成する。
トラック溝12が形成された外輪10において、図6および図7に示すように、外輪10の開口縁全周に沿って形成されたカップ入口チャンファ12bと、内径球面部14aとトラック溝12との境界部に沿って形成されたトラックチャンファ12cと、トラック溝12とカップ入口チャンファ12bとの境界部に沿って形成されたトラック入口チャンファ12aと形成されることになる。また、外輪10の開口端部には、継手内部に充填されたグリースの漏洩ならびに継手外部からの水や異物の侵入を防止するための樹脂またはゴム製のブーツ(図示省略)が装着される。このため、その外輪10の開口端外周面に凹溝からなるブーツ取付部19を設けている。
また、外輪10の内径球面部14aで周方向に隣接するトラック溝12間に軸方向に延びるスリット溝12dを形成する。このスリット溝12dは、外輪10の開口端面からカップ入口チャンファ12bを経て内径球面部14aへ至るように形成されている。なお、この実施形態では、6本のスリット溝12dを例示しているが、その本数については任意である。この場合、周方向に隣接するトラック溝12間における内径球面部14aの最大幅寸法S2に対して、スリット溝12dの幅寸法S1を5%〜30%としている。このスリット溝12dは、後述する分割パンチ55間のすきまδ1(図10参照)に外輪前素材M(図16と図17参照)の余肉が入らないように設けている。このため、外輪10の内径面14には、トラック溝12と、周方向に隣合うトラック溝12間の内径球面部14aと、各内径球面部14aの設けられるスリット溝12dとが設けられることになる。
ボール30が6個の場合、前記最大幅寸法S2は、内径球面部14aの軸方向中間付近における寸法となる。しかしながら、等速自在継手の形態やボール数によっては、最大幅寸法が内径球面部14aの軸方向中間付近とならない場合がある。
図1に示すように外輪10のトラック溝12の曲率中心O1と内輪20のトラック溝22の曲率中心O2とは、継手中心Oに対して軸方向に等距離Fだけ反対側(トラック溝12の曲率中心O1は継手の開口側、トラック溝22の曲率中心O2は継手の奥部側)にオフセットされている。そのため、ボールトラックは開口側が広く、奥部側に向かって漸次縮小した楔形状になっている。
また、ケージ40の外球面44の曲率中心、およびその外球面44に摺接する外輪10の内径面14の曲率中心のそれぞれは継手中心Oに一致する。また、ケージ40の内球面46の曲率中心、およびその内球面46に摺接する内輪20の外球面24の曲率中心のそれぞれも継手中心Oに一致する。外輪10と内輪20とが角度変位すると、ケージ40に保持されたボール30は常にどの作動角においても、その作動角の二等分面内に維持され、継手の等速性が確保される。
図1に示すように、トラック溝12の曲率中心O1とボール中心O3とを結ぶ線L1と、ボール中心O3と内径面14の曲率中心(つまり、前記継手中心O)とを結ぶ線L2とが成す角度であるトラックオフセット角φを5.5°〜7.5°とする。このオフセット角φは従来品のオフセット角(8.0°程度)よりも小さく、それゆえトラック溝12の深さは従来品に比べて軸方向でより均一に近くなる。
この場合、トラック溝12の浅い所では従来品よりも溝深さが深くなるので、高負荷下においてもトラック溝12の肩部にボール30による接触楕円が乗り上げにくくなり、肩部の欠け等を防止してトラック溝12の高強度化、耐久性の向上を図ることができる。また、ケージ40の肉厚を厚くすることもできるので、ケージ40の高強度化や長寿命化も達成される。さらに、前述した通り、この範囲内のオフセット角φであれば、作動性も良好に維持される。
その結果、外輪10のトラック溝12の高強度化、耐久性の向上が図れることから、後述するように、外輪10のトラック溝12を冷間鍛造仕上げにより形成することが容易となる。また、ボール30が継手開口側に飛び出そうとする力(軸力)も従来品に比べて弱くなるため、ボール30の軸力に起因した打音の発生を抑制することも可能となる。
その一方、オフセット角φが小さすぎると、逆に耐久性や強度が低下したり、あるいは作動性に問題を生じることが懸念される。
外輪10において、トラック溝12と、内径球面部14aと、カップ入口チャンファ12bと、トラックチャンファ12cと、トラック入口チャンファ12aと、カップ部の外径面におけるブーツ取付部19を除く部位と、および軸部18の端面18aのセンター穴13とを冷間鍛造により仕上げている。この冷間鍛造における温度としては、例えば、0℃以上50℃以下とされる。なお、もちろんこの冷間鍛造の温度に限るものではない。
この場合、冷間鍛造された外輪10の外径面は、ねじり強度を高めるため焼入れ等の熱処理を施さず、この冷間鍛造による加工硬化により製品強度を高くしている。また、外輪10の外径面の硬度が高すぎると、ブーツ取付部19における溝の旋削加工等の際に、旋削加工工具の短寿命化を招いたりする。このため、ブーツ取付部19の表面硬度を250HV〜350HV程度としている。
次に、外側継手部材(外輪)10に成形する製造装置(鍛造装置)を図8〜図15に示す。この装置は、外輪成形金型となるパンチセット51と絞り込みダイス52とを備える。パンチセット51は、パンチセット本体53と、パンチホルダ54と、複数の分割パンチ55と、パンチベース56と、傘パンチ57と、スプリング58とを備える。
パンチセット本体53は有底短円筒体からなり、その底壁60に傘パンチ57の軸部76の基端部が支持部材77を介して収容される貫孔60aが設けられている。また、パンチセット本体53の孔部53a内には、パンチベース56の下部膨出部56aが嵌入され、その下部膨出部56aの底面61が底壁60の内面62に当接した状態で、パンチホルダ54のフランジ部54aがパンチセット本体53の上面に載置固定される。
パンチホルダ54はテーパ孔63を有し、このテーパ孔63に、複数の分割パンチ55とパンチベース56等を設けている。パンチベース56は、複数の分割パンチ55を円周方向一定間隔おきに配置するものである。図15(a)(b)に示すように、パンチベース56は、これら分割パンチ55を配置するためのパンチベース本体56bと、このパンチベース本体56bの下端に連設される前記膨出部56aとを有する。パンチベース本体56bのテーパ状外周部65に、複数(この場合、6個)の割型仕切溝66を形成している。この割型仕切溝66に、図10と図11に示すように、周方向に沿って配設される分割パンチ55が介在される。なお、テーパ状外周部65のテーパ角は前記テーパ孔63のテーパ角に対応させている。
分割パンチ55は断面略扇型部材からなり、図12〜図14に示すように、内径球面部成形部70と、トラック溝成形部71と、トラックチャンファ成形部72と、カップ入口チャンファ成形部73と、トラック入口チャンファ成形部74とを有する。
トラック溝成形部71は、外輪10のトラック溝12を成形するためのものであって、その両側に外輪10の内径球面部を成形する内径球面部成形部70、70が形成されている。また、トラック溝成形部71と内径球面部成形部70との境界部にトラックチャンファ成形部72が形成される。カップ入口チャンファ成形部73は、外輪10のカップ入口チャンファ12bを成形するためのものであって、内径球面部成形部70の下端縁と、トラック溝成形部71の下端縁と、トラックチャンファ成形部72の下端と、トラック溝成形部71よりも下方に配設される胴部79の上面とで形成される。なお、胴部79は、複数の分割パンチ55を周方向に沿って配設したことによって、環状部分を構成する。
カップ入口チャンファ成形部73は、半径方向外方に向かうに従って下方に傾斜するテーパ状に形成され、このテーパ状のカップ入口チャンファ成形部73により、外輪10のカップ入口チャンファ12bの所定角度を設定することができる。トラック入口チャンファ成形部74は、外輪10のトラック入口チャンファ12aを成形するためのものであって、カップ入口チャンファ成形部73とトラック溝成形部71との境界部に沿って形成されている。
このように、内径球面部成形部70と、トラック溝成形部71と、トラックチャンファ成形部72と、カップ入口チャンファ成形部73と、トラック入口チャンファ成形部74とを、一体として一つの分割パンチ55に設けている。このため、これらを別体で形成したものに比べて、各成形部の寸法精度を高めるとともに、これらの寸法相互差の減少を図ることが可能となる。すなわち、前記製造装置(鍛造装置)を用いれば、各部位の寸法精度を高めることができるとともに、これらの寸法相互差の低減を図ることができる。
各分割パンチ55は、その内径側の稜線部55bがパンチベース本体56bのテーパ部に沿うように傾斜し、このテーパ部に沿った上下動が可能とされている。また、パンチベース56には貫通孔75が設けられ、この貫通孔75に傘パンチ57から突設される軸部76が挿通されている。軸部76の下端部がパンチセット本体53との底壁60の貫孔60aに配置された支持部材77に支持されている。
貫通孔75は、図15(b)に示すように、小径部78aと大径部78bとを備え、大径部78bに、軸部76に外嵌されるスプリング58が配置されている。これによって、軸部76に連設されている傘パンチ57が下方に弾性付勢され、傘パンチ57にて分割パンチ55の上端縁を規制している(抑えている)。
絞り込みダイス52は、外輪10の外径面を成形するための貫通孔部80を備える。この貫通孔部80は、上部側のストレート孔80aと、下部側のテーパ孔80bとからなる。テーパ孔80bは下方に向かって拡開している。
また、絞り込みダイス52の貫通孔部80には、軸部成形用ダイス82の突出部82bが挿入される。軸部成形用ダイス82は、ダイス本体部82aと、このダイス本体部82aの下面から突設される前記突出部82bとを備え、外輪10の軸部が挿入される孔部83が設けられている。この孔部83は、軸部の雄スプライン形成部位を成形する大径部83aと、軸部の雄ねじ部形成部位を成形する小径部83bと、この大径部83aと小径部83bとの間のテーパ部83cとを備える。
絞り込みダイス52の孔部83の小径部83bには、外輪10の軸部18の端面18aのセンター穴13を成形するためのセンター穴成形ポンチ85が嵌入される。センター穴成形ポンチ85の外径面は、前記小径部83bの内径面と僅かな隙間を持って対向するものである。そして、センター穴成形ポンチ85の下端に、センター穴13を成形するコーン部85aが設けられている。
ところで、センター穴13は、図1に示すように、センター穴基準となる基準テーパ孔部13aと、この基準テーパ孔部13aの開口端縁から連設される開口側テーパ孔部13bと、この開口側テーパ孔部13bの開口端縁から連設される大径開口部13cとからなる。このため、センター穴成形ポンチ85のコーン部85aは、その外面に、基準テーパ孔部13aを成形する基準テーパ部位86が形成されている。
製造装置(鍛造装置)を用いて外輪10を成形する場合、図16と図17に示すような外輪前素材Mが予め成形され、この外輪前素材Mが製造装置(鍛造装置)に投入されて、冷間鍛造が行われる。外輪前素材Mは、温間鍛造、熱間鍛造、又は亜熱間鍛造等による塑性加工で成形される。すなわち、外輪前素材Mは、カップ部M16と、このカップ部M16の底部に連設される軸部M18とからなり、カップ部M16の内径面に、トラック溝M12及びスリット溝M12dが形成されている。また、外輪前素材Mのカップ部M16の開口端面には、カップ入口チャンファM12bが形成されている。
また、カップ部M16の内径球面部のスリット溝M12dは、周方向に隣接するトラック溝M12間に設けられ、内径球面部の最大幅寸法S4に対して、このスリット溝M12dの溝幅S3を10%以上40%以下とするのが好ましい。このように設定することによって、製品(外輪10)のスリット溝の溝幅寸法を内径球面部(トラック溝によって分離されたアイランド状の内径球面部)の最大幅寸法の5%以上30%以下とすることができる。
次に、前記のように構成された製造装置(鍛造装置)にて、外輪を成形する方法を説明する。予め成形され外輪前素材Mを、絞り込みダイス52の貫通孔部80に挿入する。その後、絞り込みダイス52に対してパンチセット51を相対移動させ、これによって、傘パンチ57が、外輪前素材Mのカップ部M16の内表面における球面底部に当接し、分割パンチ55が内面表面におけるトラック溝M12に嵌合する。
この状態で、パンチセット51をさらに相対移動させることにより、外輪前素材Mのカップ部M16は、絞り込みダイス52の絞り込み作用を受けて半径方向内方へ縮径する。その絞り込み時に、トラック溝M12の表面は分割パンチ55のトラック溝成形部71により拘束され、このトラック溝12、内径球面部14a、及びトラックチャンファ12aが、それぞれ、トラック溝成形部71、内径球面部成形部70、トラックチャンファ成形部72によって塑性変形される。さらには、これとともに、前記絞り込み時に、カップ入口チャンファ12b及びトラック入口チャンファ12aが、それぞれカップ入口チャンファ成形部73及びトラック入口チャンファ成形部74によって塑性加工される。
この際、カップ部16の外径面におけるブーツ取付部19を除く部位においても塑性加工(冷間鍛造)が施されることになる。また、前記絞り込み時には、センター穴成形ポンチ85のコーン部85aを外輪前素材Mの軸部M18の端面M18aに押し付ける。これによって、センター穴13を成形することになる。すなわち、軸部成形用ダイス82とセンター穴成形ポンチ85とを同時に外輪前素材Mに押し当てることになり、この際、外輪前素材Mの移動が拘束されて、センター穴13が成形される。これにより、型離れの防止によるカップ部16の内部精度の向上と、センター穴13の成形が同時に実現される。
センター穴成形ポンチ85は、軸部成形用ダイス82の内径面に僅かな隙間を持ってガイドされ、また軸部成形用ダイス82を外輪前素材Mに押し付けるときに、外輪前素材Mの軸部外径部が軸部成形用ダイス82の孔部83の大径部83aでしごき加工される。そのため、外輪前素材Mと同心に心出しされた軸部成形用ダイス82の内径面にガイドされてセンター穴成形ポンチ85が外輪10の軸部18の端面18aにセンター穴13を成形することになる。よって、センター穴13の外輪10の軸部外径に対する同心度が、高精度に確保される。
また、センター穴13の成形時には、センター穴成形ポンチ85と軸部成形用ダイス82の軸方向位置が一定となるように設定される。このため、センター穴成形ポンチ85と軸部成形用ダイス82の基準面82cの相対位置は一定となる。この押圧力付与方式によるセンター穴13の形成は、常に外輪前素材Mの基準面Maを基準にして成形が行われる。このため、成形されたセンター穴13の素材基準面Maに対する軸方向位置精度、つまり寸法Aの精度が、高精度に確保される。
このように、製造装置(鍛造装置)を用いることによって、トラック溝12と、内径球面部14aと、カップ入口チャンファ12bと、トラックチャンファ12cと、トラック入口チャンファ12aと、カップ部16の外径面におけるブーツ取付部19を除く部位と、軸部18の端面18aのセンター穴13とを冷間鍛造により仕上げられてなる外輪10を成形することができる。なお、ブーツ取付部19においては、旋削加工等により溝加工がなされる。
ところで、カップ部16の内径球面部14aとしては、要求される精度が厳しい場合があり、このため、熱処理後の仕上げ加工が施されるものであってもよい。ここで、熱処理とは、例えば、高周波焼入れ処理である。また、仕上げ加工としては、例えば切削加工や研削加工等の仕上げ加工である。高周波焼入れとは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。内径球面部の要求精度によって、この内径球面部を冷間鍛造による仕上げのままとすることができる。
このように、カップ部16の内径球面部14aに対して、熱処理後の仕上げ加工を施すことによって、要求される高精度に対応することができ、高品質の製品(外側継手部材)を成形することができる。
本発明の固定式等速自在継手の外側継手部材によれば、機械構造用炭素鋼から成り、トラック溝12と、内径球面部14aと、カップ入口チャンファ12bと、トラックチャンファ12cと、トラック入口チャンファ12aと、カップ部16の外径面におけるブーツ取付部19を除く部位と、軸部18の端面18aのセンター穴13とを冷間鍛造により仕上げているので、これらの部位においては、従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工等の仕上げ加工を行わないで済むことである。このため、歩留まりが向上し、外側継手部材、延いてはこの外側継手部材を用いる等速自在継手の製造コストの低減を図ることができる。
カップ部16に大部分を冷間鍛造により仕上げているので、製品の強度を高めることが可能となる。特に、外輪10の炭素成分を0.37wt%以上と炭素量を多い機械構造用炭素鋼から鍛造仕上げすれば、カップ部16の内外表面を所望の硬い表面硬度にすることができる。これにより、製品寿命を延ばすことが可能となる。素材となる機械構造用炭素鋼の炭素成分の上限を0.61wt%以下に設定することによって、硬すぎて加工不能となることなく、冷間鍛造が可能となる。また、特に硬い材質を用いなくても、冷間鍛造で成形するので、加工硬化により、外輪10のカップ部16の外径面の硬度が高くなり、剛性の高い高強度の外輪10となる。
また、カップ入口チャンファ12bを設けることによって、等速自在継手が作動角をとった際に、内輪20に装着したシャフトにこの外輪10の開口縁が干渉しなくて済む。トラック入口チャンファ12aを設けることによって、トルク伝達ボール30の稼動する有効範囲を有効に確保することができる。トラックチャンファ12cを設けることによって、トラック溝エッジ部の欠けを防止できる。トラックチャンファ12cを凸アール形状とすれば、この部分における応力集中を回避することができる。
軸部18の端面18aにセンター穴13を設けることによって、このセンター穴13を用いたその後の加工(軸に形成される雄スプラインや雄ねじ等の加工)性の向上を図ることができる。特に、このセンター穴13の冷間鍛造を行う際に、他の部位の冷間鍛造を行うことができ、これによって、センター穴13がこの外輪10の軸方向位置の基準面となって、外輪10の軸方向位置精度を高精度に成形することができる。このため、本発明の外側継手部材(外輪10)は、軸方向位置精度を必要とするBJタイプの固定式等速自在継手の外輪に最適となる。
内径球面部14aにスリット溝12dを形成し、内径球面部14aの最大幅寸法に対して、スリット溝12dの幅寸法を5%〜30%とすれば、高精度、高品質の製品(外輪10)を安定して低コストで生産することができる。すなわち、冷間鍛造の際、周方向に分離した分離パンチ間の周方向すきまδ1に、外輪前素材Mの余肉が入り込まないようにできる。なお、スリット溝の幅寸法が5%よりも小さいと、冷間鍛造時に外側継手部材を成形型から離型させることが困難となり、かつ、スリット溝の幅寸法が30%よりも大きいと、外輪10の内径球面部14aの必要面積を確保することが困難となって強度、耐久性の低下を招くことになる。
トラック溝12の横断面形状を、ボール30とアンギュラ接触するゴシックアーチ形状とし、その接触角αを35°〜45°とすることによって、ボール30の接触状態を安定化させることができて、回転力伝達をなめらかに行うことができ、耐久性に優れた等速自在継手を構成できる。なお、ボール接触角が35°よりも小さいと、トラック面圧が増大し耐久性の低下が懸念される。逆に、ボール接触角が45°よりも大きいと、高作動角におけるトラック肩部までのボールの乗り上げ余裕が小さくなり、高トルク負荷時のボールによる接触楕円の乗り上げが生じ、トラック肩部の欠け等が懸念される。
トラックオフセット角を5.5°〜7.5°とすることによって、この外輪10を用いた等速自在継手は、作動性、耐久性、及び強度を満足することができる。このトラックオフセット角が5.5°未満であれば、十字作動性、耐久性、および準静捩り強度の全ての面で問題があり、トラックオフセット角が7.5°を越えると、耐久性及び強度面で劣る。
ところで、外輪10のトラック溝12の曲率中心O1'を、図18に示すように継手軸心上に位置するときの半径よりも大きい半径を描く位置となるように径方向にずらすようにしてもよい。また、内輪20のトラック溝22の曲率中心O2'を、図19に示すように継手軸心上に位置するときの半径よりも小さい半径を描く位置となるように径方向にずらすようにしてもよい。
このように外輪10のトラック溝12の曲率中心O1'を、継手軸心上に位置するときの半径よりも大きい半径を描く位置となるように径方向にずらしたり、あるいは、内輪20のトラック溝22の曲率中心O2'を、継手軸心上に位置するときの半径よりも小さい半径を描く位置となるように径方向にずらしたりすることにより、トラック溝12,22の軸方向中央部ですきまを詰めることができる。その結果、ガタ詰めが容易となって異音の発生を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、外側継手部材としては、トラック溝の底面が円弧部のみからなるバーフィールド型(BJ)の固定式等速自在継手に用いるものであったが、トラック溝の底面が円弧部と直線部とを備えたアンダーカットフリー型(UJ)の固定式等速自在継手であってもよい。また、トラック溝12の数は6個に限るものではなく、増減は任意である。
センター穴形状としては、図1に示すものに限るものではなく、少なくとも基準テーパ孔部13aを備えたものであればよい。
12 トラック溝
12a 切欠アール部(トラック入口チャンファ)
12b カップ入口チャンファ
12c,22c トラックチャンファ
12d スリット溝
13 センター穴
14 内径面
14a 内径球面部
16 カップ部
18 軸部
18a 端面
19 ブーツ取付部
70 内径球面部成形部
71 トラック溝成形部
72 トラックチャンファ成形部
73 カップ入口チャンファ成形部
74 トラック入口チャンファ成形部

Claims (11)

  1. カップ部と、このカップ部の底部から軸方向に延びる軸部とを備えた固定式等速自在継
    手の外側継手部材であって、
    機械構造用炭素鋼から成り、カップ部の内径面に、トラック溝と、内径球面部と、カップ部の開口縁全周に沿って形成されるカップ入口チャンファと、内径球面部とトラック溝との境界部に沿って形成されるトラックチャンファと、トラック溝のトラック入口端におけるボール接触点対応部位に設けられるボール食い込み緩和用の切欠アール部からなるトラック入口チャンファとを有し、トラック溝と、内径球面部と、カップ入口チャンファと、トラックチャンファと、トラック入口チャンファと、カップ部の外径面におけるブーツ取付部を除く部位と、軸部の端面のセンター穴とが冷間鍛造により仕上げられていることを特徴とする固定式等速自在継手の外側継手部材。
  2. 前記カップ部の内径球面部は、熱処理後の仕上げ加工が施されてなることを特徴とする請求項1に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
  3. 前記カップ部の内径球面部に軸方向に沿って延びるスリット溝が形成され、周方向に隣設するトラック溝間における内径球面部の最大幅寸法に対して、前記スリット溝の幅寸法を5%〜30%としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
  4. トラック溝と切欠きアール部からなるトラック入口チャンファとを同時冷間鍛造により仕上げていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
  5. 切欠きアール部からなるトラック入口チャンファが、トラック溝とカップ入口チャンファとの境界部全体に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
  6. 切欠きアール部からなるトラック入口チャンファが、トラック溝毎に2箇所形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
  7. 前記トラックチャンファを凸アール形状としたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
  8. トラック溝とトラックチャンファとを同時冷間鍛造により仕上げることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
  9. トラック溝の横断面形状を、ボールとアンギュラ接触するゴシックアーチ形状とし、その接触角を35°〜45°としたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
  10. トラック溝の曲率中心とこのトラック溝に嵌合されるボールのボール中心とを結ぶ線と、ボール中心と内径球面部の曲率中心とを結ぶ線とが成す角度であるトラックオフセット角を5.5°〜7.5°としたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
  11. トラック溝の曲率中心を、継手軸心上に位置するときの半径よりも大きい半径を描く位置となるように径方向にずらしたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手の外側継手部材。
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