JP2018132118A - 等速自在継手およびその製造方法 - Google Patents

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一彦 田口
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Abstract

【課題】 内側継手部材に中空シャフトを結合した等速自在継手の低コスト化を図る。
【解決手段】 内側継手部材6の軸孔63を、軸方向一方側を閉塞部64で閉塞すると共に、軸方向他方側を開口した形状とする。中空シャフト4の外周面に軸方向に延びる凸部42を設け、凸部42を軸孔63に開口側から圧入して、圧入した凸部42で、内側継手部材6に凸部42の形状が転写された凹部67を形成し、凸部と凹部との嵌合接触部位全域が密着する凹凸嵌合構造9を構成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、等速自在継手およびその製造方法に関する。
自動車の動力伝達系で使用されるドライブシャフトにおいては、中間軸のインボード側(車幅方向の中央側)に摺動型等速自在継手が結合され、アウトボード側(車幅方向の端部側)に固定型等速自在継手が結合される。ここでいう摺動式等速自在継手は、二軸間の角度変位および軸方向相対移動の双方を許容するものであり、固定式等速自在継手は、二軸間での角度変位を許容するが、二軸間の軸方向相対移動は許容しないものである。
このドライブシャフトにおいて、中間軸のインボード側端部は、摺動型等速自在継手の内側継手部材と結合され、中間軸のアウトボード側端部は固定型等速自在継手の内側継手部材に結合される。中間軸と各内側継手部材とは、スプラインを介して結合するのが通例である。
近年では、軽量化の要請に応えるべく、上記の中間軸を中実シャフトから中空シャフトに置き換える事例が多い。この中空シャフトは、軸方向に貫通した中空部を有するため、そのままでは、等速自在継手の内部に封入された潤滑用のグリースが中空シャフトの中空部に入り込み、やがては等速自在継手の潤滑不良を招くことになる。かかる事態を防止するため、従来では、中空シャフトの両端の開口部に金属製材料等からなる閉塞部材を圧入する手法(特許文献1)や、中空部全体に発泡ウレタン等の発泡樹脂を充填する手法が提案されている(特許文献2)。
特開2011−144817号公報 特開2006−46408号公報
しかしながら、何れの手法でも、閉塞部材を製作して中空部に圧入する工程、あるいは発泡樹脂を中空部に充填する工程が必要となり、中間軸として中実シャフトを使用する場合に比べ、部品点数や組立工程数の増加によるコストアップを招くことになる。
本発明は、以上の問題に鑑み、内側継手部材に中空シャフトを結合した等速自在継手の低コスト化を図ることを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討することで、中空シャフトの中空部を閉塞する閉塞部を、従来のように中空シャフト側に設けるのではなく、内側継手部材側に設ける、との新たな着想に至った。
その一方で、このように閉塞部を内側継手部材側に設けた場合、閉塞部が中間軸を挿入するための軸孔に対して蓋のような形態となるため、内側継手部材の内周に雌スプラインを加工(鍛造加工あるいはブローチ加工等)する際に、加工用の治具や工具が閉塞部と干渉し、雌スプラインの形成を阻害することが判明した。すなわち、加工用の工具等は加工部よりも軸方向に突き出た部分を有するのが通例であり、この突き出た部分が閉塞部と干渉するため、雌スプラインの形成が困難となる。従って、内側継手部材と中空シャフトとの間には、このような加工上の不都合を生じない、新たな結合構造を採用する必要がある。
以上の検証に基づいて創案された本発明は、外側継手部材と、軸孔を有する内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材の間に介在するトルク伝達部材と、両端のうち少なくとも一端に開口部を有する中空状をなし、内側継手部材の軸孔に前記一端を嵌合させた中空シャフトとを備える等速自在継手において、内側継手部材の軸孔を、軸方向一方側を閉塞すると共に、軸方向他方側を開口した形状とし、中空シャフトの外周面に軸方向に延びる凸部を設け、当該凸部を軸孔に圧入して、圧入した凸部で、内側継手部材に凸部の形状が転写された凹部を形成し、凸部と凹部との嵌合接触部位全域が密着する凹凸嵌合構造を構成したことを特徴とするものである。
このように内側継手部材の軸孔を、軸方向一方側を閉塞すると共に、軸方向他方側を開口した形状とすることにより、中空シャフト端部の開口部と等速自在継手の内部空間とが軸孔を閉塞する部分で隔絶された状態となる。そのため、等速自在継手の内部空間に封入されたグリースが中空シャフトの開口部に入り込む事態を防止することができ、等速自在継手の潤滑状態を長期間維持することが可能となる。かかる効果を得る際に、専用の別部品を製作する工程やこれを組み付ける工程も不要となる。従って、等速自在継手の低コスト化を図ることができる。
また、中空シャフトの外周面に設けた凸部を軸孔に圧入し、圧入した凸部で、内側継手部材に凸部の形状が転写された凹部を形成することにより、最終製品において結合構造を構成する凸部自身を加工用の工具として機能させながら凹部を形成することができる。従って、凹部の形成時に上記閉塞する部分との干渉が問題とはならず、内側継手部材と中空シャフトを確実に結合することが可能となる。また、凸部の形状が凹部に転写されて凸部と凹部の嵌合接触部位の全域が密着しているため、等速自在継手の内部空間に封入されたグリースが、内側継手部材の軸孔の開口側から凹凸嵌合構造を介して中空シャフトの開口部に到達することもない。
この等速自在継手では、内側継手部材に、軸孔の軸方向一方側を閉塞する閉塞部を一体に設け、中空シャフトを閉塞部に接触させるのが好ましい。これにより、中空シャフトと内側継手部材との間で軸方向の位置決めを行うことができる。
また、凹部を、圧入した凸部による切削で形成し、前記中空シャフトに、前記切削で形成される切粉を収容する収容部を設けるのが好ましい。凹部を圧入した凸部による切削で形成することにより、凹部を、圧入した凸部で内側継手部材を塑性変形させて形成する場合に比べて圧入荷重を低減できるため、組み立て作業性が向上する。また、収容部を設けることで、切粉が凸部と凹部の間に噛み込むような事態も防止することができる。
内側継手部材に、軸孔の軸方向一方側を閉塞する閉塞部を設け、軸孔を形成する内周面と閉側部の内端面とを鍛造面で形成するのが好ましい。内側継手部材は、その全体形状を鍛造で成形(粗成形)することが多く、その場合、同一の鍛造工程で軸孔や閉塞部を成形可能となるため、内側継手部材の製造コストを低廉化することができる。
内側継手部材に、浸炭焼入れにより形成した硬化層を設け、あるいは、内側継手部材に、高周波焼入れにより形成した硬化層を設けるのが好ましい。これにより内側継手部材の強度アップを図ることができる。
以上に述べた等速自在継手は、金属素材を鍛造することにより、内側継手部材に対応し、かつ軸方向一方側を閉塞すると共に、軸方向他方側を開口した形状の軸孔を有する素形材を成形し、素形材に後加工を施して内側継手部材を形成し、中空シャフトの外周面に軸方向に延びる凸部を設け、前記凸部を軸孔に圧入して、圧入した凸部で内側継手部材に凸部の形状が転写された凹部を形成し、凸部と凹部との嵌合接触部位全域が密着する凹凸嵌合構造を構成することで製造することができる。
本発明によれば、内側継手部材に中空シャフトを結合した等速自在継手の低コスト化を図ることができる。
ドライブシャフトを示す縦断面図である。 固定式等速自在継手を拡大して示す縦断面図である。 内側継手部材の鍛造工程を示す縦断面図である。 内側継手部材を示す縦断面図である。 中空シャフトの端部を拡大して示す側面図および一部縦断面図である。 凹凸嵌合構造を拡大して示す横断面図である。 高周波焼入れされた内側継手部材を示す図で、(a)図は正面図、(b)図はB−B線断面図、(c)図はC−C線断面図である。 浸炭焼入れされた内側継手部材を示す図で、(a)図は正面図、(b)図はB−B線断面図、(c)図はC−C線断面図である。 従来の固定式等速自在継手を示す縦断面図である。
図1に示すように、自動車のドライブシャフト1は、アウトボード側に配置された固定式等速自在継手2と、インボード側に配置された摺動式等速自在継手3とを有する。固定式等速自在継手2と摺動式等速自在継手3との間には中間軸としての中空シャフト4が介在している。中空シャフト4は、破線で示すように、軸方向全長にわたって貫通した中空部41を有する。この中空シャフト4は、例えば鋼製パイプを絞り加工等することで製作される。
以下、本発明を固定式等速自在継手2に適用した場合を例に挙げて、その実施形態を説明する。
固定式等速自在継手2の一例として、図1および図2にはツェッパ型と呼ばれる等速自在継手を例示している。この固定式等速自在継手2は、図2に拡大して示すように、外側継手部材5と、外側継手部材5の内径側に配置された内側継手部材6と、トルク伝達部材としてのボール7と、保持器8と、内側継手部材6に結合された中間シャフト4とを備えている。なお、固定式等速自在継手2としては、ツェッパ型以外にアンダーカットフリー型を使用することもできる。
外側継手部材5は、カップ部5aと、カップ部5aの底から軸方向に延びる軸部5bとを一体に有する。カップ部5aの球状内面51には、軸方向に沿うトラック溝52が円周方向の複数箇所に形成される。内側継手部材6の球状外面61にも、軸方向に沿うトラック溝62が円周方向の複数箇所に形成されている。外側継手部材5のトラック溝52と内側継手部材6のトラック溝62とは対面しており、対面したトラック溝52,62の間にボール7が配置されている。ボール7は保持器8によって円周方向の複数箇所に保持されている。保持器8は、外側継手部材5の球状内面51および内側継手部材6の球状外面61に案内される。図1に示すように、外側継手部材のカップ部5a(図2参照)の外周面と中間シャフト4の外周面にはブーツ15が嵌合固定されており、このブーツ15によって、固定式等速自在継手2の内部空間が密封されている。
外側継手部材5のトラック溝52は、溝底に沿う縦断面形状が円弧状の曲線とされている。また、内側継手部材6のトラック溝62も、溝底に沿う縦断面形状が円弧状の曲線とされている。外側継手部材5のトラック溝52の中心O1と、内側継手部材6のトラック溝62の中心O2とは、継手中心Oに対して左右にオフセットされている。継手中心Oは、外側継手部材5の球状内面51および内側継手部材6の球状外面61の球面中心と一致する。外側継手部材5のトラック溝52と、内側継手部材6のトラック溝62とで構成されるボールトラックは、外側継手部材5の奥側から開口側に向かって径方向間隔が徐々に拡大する楔形状をなしている。
図4に示すように、内側継手部材6の軸心上には、軸方向一方側(中間シャフト4の圧入方向側)を閉塞すると共に、軸方向他方側を開口した軸孔63が形成される。軸孔63の軸方向一方側は、内側継手部材6と一体に形成された閉塞部64によって閉塞される。軸孔63の開口側端部には、軸方向他方側に向けて拡径したテーパ面状のガイド部63aが形成されている。後述するように、軸孔63に中空シャフト4の一端を圧入することで、図2に示すように、内側継手部材6と中空シャフト4が凹凸嵌合構造9(図6参照)を介してトルク伝達可能に結合される。この時、凹凸嵌合構造9で必要とされる嵌合長を確保するため、閉塞部64は、極力、内側継手部材6の反開口側(軸方向一方側)に寄せて形成するのが望ましい。この観点から、図2では、閉塞部64を内側継手部材6の軸方向一方側の端部に設けた場合を例示している。
内側継手部材6の軸孔63は、図4に示すように、内周面65と閉側部64の内端面66とで形成される。閉塞部64の内端面66は半径方向に延びる平坦面状に形成されている。中間シャフト4を圧入する前の時点では、内側継手部材6の内周面65は円筒面状に形成されている。
以上に述べた内側継手部材6は、図3の左側に示す金属素材11を型鍛造することで、成形される。この鍛造により、図3の右側に示すように、内側継手部材6の球状外面61、トラック溝62、軸孔63、閉塞部64、内周面65、および内端面66の各部に対応する部分61’、62’、63’、64’、65’、66’を備えた素形材6’が形成される。鍛造は1回のみ行い、あるいは2回以上に分けて行っても良い。
鍛造加工の終了後、素形材6’の所要個所に切削や研磨等の後加工を行うことで、図4に示す内側継手部材6が完成する(図4に示す二点鎖線は、素形材6’の輪郭を表す)。後加工としての切削は、例えば素形材6’の両端面、球状外面対応部分61’、内周面対応部分65’、および内端面対応部分66’に対して行われる。この切削により、軸孔63の開口側端部にガイド部63aが形成される。また、後加工としての研磨は、例えばトラック溝62および切削後の球状外面61に対して行われる。
素形材6’の閉塞部に相当する部分64’は、鍛造時に余肉となる部分である。従来の鍛造による内側継手部材6の成形では、この余肉部を打ち抜き加工により除去して軸方向に貫通する軸孔(通し穴)を形成している。これに対し、本発明では、この打ち抜き加工を省略し、鍛造後の余肉部を閉塞部64として活用して軸孔63を止め穴形状に保持している。このように打ち抜き加工を省略することで、材料の歩留まりを向上することができる。なお、本実施形態では、内側継手部材6の内周面65に対するスプライン加工は行われない。
図5は、中空シャフト4のアウトボード側端部を拡大して示す図である。同図の中空シャフト4において、上半分が側面図を、下半分が縦断面図をそれぞれ示す。同図に示すように、中空シャフト4のアウトボード側端部の外周面には、軸方向に延びる複数の凸部42を備える雄スプライン43が転造等によって形成されている。各凸部42の圧入開始側の端面42aは、径方向に延びる平坦面である。このように端面42aを径方向に延びる面とすることで、雄スプライン43の汎用品に倣って、凸部42の圧入開始側の端面をチャンファ104(図9参照)で形成した場合には得られない、相手材に対する切削性を確保することができる。
また、中空シャフト4のアウトボード側端部は段付きの軸状をなし、その先端には、雄スプライン43の小径部よりも小径の収容部45が、中空シャフト4の先端面46に達するように形成されている。収容部45のインボード側の端面は、凸部42の圧入開始側の端面42aの延長線上にある。中空シャフト4の先端面46は円環状をなし、かつ径方向に延びる平坦面状に形成される。
以上の構造を有する中空シャフト4のアウトボード側端部は、図2に示すように、内側継手部材6の軸孔63に圧入される。圧入に先立ち、雄スプライン43の各凸部42が軸孔63のガイド部63a(図4参照)によって案内されることで、中空シャフト4と内側継手部材6の芯合わせが行われる。圧入された凸部43は、その歯面中腹から頂部に至る領域全体で内側継手部材6の円筒面状の内周面65を切削する。そのため、図6に示すように、内周面65に凸部42の形状が転写され、当該内周面65に凸部42の形状に対応した複数の凹部67が形成される。このように圧入した凸部42で凹部67を新たに形成することにより、凸部42と凹部67の嵌合接触部位全域が密着した凹凸嵌合構造9が構成される。
凸部42の圧入は、図2に示すように、中空シャフト4の先端面46が閉塞部64の内端面66と当接するまで行われる。このように中空シャフト4と閉塞部64を軸方向に当接させることで、中空シャフト4と内側継手部材6の間で軸方向の位置決めを行うことが可能となる。
凸部42による切削に伴って、内側継手部材6には、その内周面65から立ち上がった切粉68が形成される。この切粉68は、収容部45に収容されるため、凸部42と凹部67の間に切粉68が噛み込むことはない。従って、凸部42の圧入作業をスムーズに行うことができる。
凸部42を圧入する際の圧入荷重を小さくすると共に、凸部42と凹部67の間で十分な噛み込み代を確保するため、図6に示すように、内側継手部材6の内周面65の内径寸法は、雄スプライン43の大径寸法よりも小さく、かつ雄スプライン43の小径寸法よりも大きくする。この寸法関係から、凸部42の圧入後は、内側継手部材6の内周面65と、隣接する凸部42間の谷部との間に隙間Pが形成される。
内側継手部材6の球状外面61やトラック溝62は、強度確保のため、熱処理により硬化させる必要がある。その一方で、凸部42が圧入される内周面65を硬化させると、凸部42を圧入する際の切削性を害するため、内周面65は未硬化状態とするのが望ましい。従って、硬化のための熱処理手法としては、任意の表面に表面硬化層を形成できる熱処理、例えば高周波焼入れ(高周波焼入れ焼戻し)や浸炭焼入れ(浸炭焼入れ焼戻し)を採用するのが好ましい。
図7(a)〜(c)は、内側継手部材6に対して高周波焼入れを行った場合の硬化層69(クロスハッチングで示す)の分布を示すものである。同図に示すように、硬化層69は、球状外面61およびトラック溝62に形成されるが、それ以外の領域には形成されていない。また、図8(a)〜(c)は内側継手部材6に対して浸炭焼入れを行った場合の硬化層69の分布を示すものである。この場合、軸孔63に防炭処理を行うことで、同図に示すように、軸孔63を除く表面(球状外面61、トラック溝62、および閉塞部64の外端面)に硬化層69が形成される。
なお、図示は省略するが、凸部42による切削性を向上させるため、各凸部42を熱処理(高周波焼入れ等)によって硬化させ、被切削側となる内側継手部材6の内周面65との間に硬度差を設けるのが好ましい。
このように内側継手部材6の軸孔63に中空シャフト4の一端を圧入して、凸部42と凹部67の嵌合接触部位全域が密着した凹凸嵌合構造9を構成することで、本発明にかかる固定式等速自在継手2が完成する。この等速自在継手によれば、以下の作用効果を得ることができる。
内側継手部材6の軸孔63を、軸方向一方側を閉塞すると共に、軸方向他方側を開口した形状としているので、中空シャフト4の開口部と固定式等速自在継手2の内部空間とが軸孔63を閉塞する閉側部64で隔絶された状態となる。そのため、固定式等速自在継手2の内部空間に封入されたグリースが中空シャフト4の開口部に入り込む事態を防止することができる。また、かかる効果を得るために専用部品を別途準備する必要もないため、等速自在継手の低コスト化を図ることができる。加えて、閉塞部64を設けることで、凸部42の圧入時に発生する切粉が固定式等速自在継手2に入り込むことを防止することができる。
また、軸孔63に圧入した凸部42で、軸孔63の内周面65に凸部42の形状が転写された凹部67を形成しているので、最終製品において結合構造を構成する凸部42自身を加工用の工具として機能させながら凹部67を新たに形成することができる。従って、凹部67の形成に伴う工具等と閉塞部64との干渉が問題とはならず、内側継手部材6と中空シャフト4を確実に結合することが可能となる。また、凸部42の形状が凹部67に転写されて凸部42と凹部67の嵌合接触部位の全域が密着しているため、固定式等速自在継手2の内部空間に封入されたグリースが、内側継手部材6の軸孔63の開口側から凹凸嵌合構造9を介して中空シャフト4の開口部に到達することもない。
また、従来のスプライン嵌合を採用した等速自在継手では、図9に示すように中空シャフト4に設けた止め輪溝101に止め輪102を取り付け、この止め輪102を内側継手部材6の軸孔内周面に設けた傾斜面103と係合させることで、内側継手部材6と中間シャフト4の軸方向位置決めを行っているため、スプライン嵌合部100で必要な嵌合長さを確保しようとすると、軸孔の軸方向長さ、さらには内側継手部材6の軸方向長さが増大する問題がある。これに対し、本発明では、中空シャフトの先端面46を閉塞部64の内端面に当接させて内側継手部材6中空シャフト4の位置決めを行っているため、必要な嵌合長を確保しつつ内側継手部材6の軸方向長さを短縮することができる。
内側継手部材6に形成する軸孔63として、図4では、軸方向両端を除いて同径のストレートな円筒面として形成した場合を例示したが、軸孔63の形状は、凸部42の圧入により凹部67の形成が可能となる限り任意である。
以上の説明では、固定式等速自在継手2の内側継手部材6と中間シャフト4との結合部に本発明を適用した場合を例示したが、上記と同様の構成は、図1に示すように、摺動式等速自在継手3の内側継手部材11と中間シャフト4との結合部にも同様に適用することができる。
ここで、図1に示す摺動式等速自在継手3は、トリポート型等速自在継手と呼ばれるものであり、外側継手部材10と、外側継手部材10の内径側に配置された内側継手部材11(トリポード部材とも呼ばれる)と、外側継手部材10と内側継手部材11の間に介在させたトルク伝達部材としてのローラ12とを有する。ローラ12は内側継手部材11の円周方向3個所に形成された脚軸11aの外周に回転可能に支持されており、各ローラ12を外側継手部材10の内周面に形成されたトラック溝に転動可能に嵌合させることで、外側継手部材10と内側継手部材11の間の軸方向変位が許容される。外側継手部材10の外周面と中間シャフト4の外周面にはブーツ16が嵌合固定されており、このブーツ16によって、摺動式等速自在継手2の内部空間が密封されている。摺動式等速自在継手3としては、クロスグルーブ型等速自在継手やダブルオフセット型等速自在継手等を使用することもできる。
摺動式等速自在継手3の内側継手部材11と中間シャフト4との結合部においても、内側継手部材11の軸孔63を、軸方向一方側(インボード側)を閉塞部64で閉塞すると共に、軸方向他方側を開口した形状とし、凸部42を軸孔63に圧入して、圧入した凸部による切削で、他方に凸部の形状が転写された凹部を形成することで、上記と同様の作用効果を得ることができる。このように固定式等速自在継手2と摺動式等速自在継手3の双方に本発明を適用する他、何れか一方の等速自在継手にのみ本発明を適用しても構わない。この場合、他方の等速自在継手においては、中空シャフト4の開口部を別部品の閉塞部材で閉塞するか、もしくは中空シャフト4の端部を開口部のない中実形状に形成するのが好ましい。
また、以上の説明では、軸孔63に圧入した凸部42による切削で凹部67を形成する場合を説明したが、特に問題がなければ、軸孔63に圧入した凸部42で内側継手部材6を塑性変形させて軸孔63の内周面に凹部67を形成することもできる。この場合、雄スプライン43として、各凸部の圧入開始側の端面をチャンファで形成したもの(図9の符号104参照)を使用することで、内側継手部材6を、切削を伴うことなく塑性変形させることができる。このように塑性変形で凹部67を形成しても、凸部42の形状が凹部に転写されるため、凸部42と凹部67の嵌合接触部位全域が密着した凹凸嵌合構造9を構成することができる。
1 ドライブシャフト
2 固定式等速自在継手
3 摺動式等速自在継手
4 中空シャフト(中間軸)
5 外側継手部材
6 内側継手部材
7 トルク伝達部材(ボール)
8 保持器
9 凹凸嵌合構造
10 外側継手部材
11 内側継手部材
12 トルク伝達部材(ローラ)
41 中空部
42 凸部
43 雄スプライン
45 収容部
63 軸孔
64 閉塞部
65 内周面
66 内端面
68 切粉
69 硬化層

Claims (6)

  1. 外側継手部材と、軸孔を有する内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材の間に介在するトルク伝達部材と、両端のうち少なくとも一端に開口部を有する中空状をなし、内側継手部材の軸孔に前記一端を嵌合させた中空シャフトとを備える等速自在継手において、
    内側継手部材の軸孔を、軸方向一方側を閉塞すると共に、軸方向他方側を開口した形状とし、中空シャフトの外周面に軸方向に延びる凸部を設け、当該凸部を軸孔に圧入して、圧入した凸部で、内側継手部材に凸部の形状が転写された凹部を形成し、凸部と凹部との嵌合接触部位全域が密着する凹凸嵌合構造を構成したことを特徴とする等速自在継手。
  2. 内側継手部材に、軸孔の軸方向一方側を閉塞する閉塞部を一体に設け、中空シャフトを閉塞部に接触させた請求項1に記載の等速自在継手。
  3. 前記凹部が、圧入した凸部による切削で形成され、前記中空シャフトに、前記切削で形成される切粉を収容する収容部を設けた請求項1または2に記載の等速自在継手。
  4. 内側継手部材が、浸炭焼入れにより形成された硬化層を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の等速自在継手。
  5. 内側継手部材が、高周波焼入れにより形成された硬化層を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の等速自在継手。
  6. 外側継手部材と、軸孔を有する内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材の間に介在するトルク伝達部材と、両端のうち少なくとも一端に開口部を有する中空状をなし、内側継手部材の軸孔に前記一端を嵌合させた中空シャフトとを備える等速自在継手の製造方法であって、
    金属素材を鍛造することにより、内側継手部材に対応し、かつ軸方向一方側を閉塞すると共に、軸方向他方側を開口した形状の軸孔を有する素形材を成形し、
    素形材に後加工を施して内側継手部材を形成し、
    中空シャフトの外周面に軸方向に延びる凸部を設け、
    前記凸部を軸孔に圧入して、圧入した凸部で内側継手部材に凸部の形状が転写された凹部を形成し、凸部と凹部との嵌合接触部位全域が密着する凹凸嵌合構造を構成することを特徴とする等速自在継手の製造方法。
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