JP5483822B2 - 等速ジョイント - Google Patents

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Description

この発明は、等速ジョイントに関し、外輪を機械構造用炭素鋼を用いて冷間鍛造により加工し、製造コストの低減を図った技術に関する。
等速ジョイントとして、球形内面にトラック溝が形成された外輪と、球形外面にトラック溝が形成された内輪と、内外輪のトラック溝間に組込まれたトルク伝達ボールと、これらトルク伝達ボールを保持するケージとからなるものがある。外輪の開口縁には、内外輪の相互の屈曲時に、内輪を装着した軸に外輪の開口縁が干渉しないようにカップ入口チャンファが設けられている。
自動車用等の等速ジョイントでは、その外輪の材質として、剛性確保のために、はだ焼鋼よりも炭素量の多い機械構造用炭素鋼が用いられる。等速ジョイントの外輪に用いられる機械構造用炭素鋼は、硬質のため、冷間鍛造が困難な材質である。逆に言えば、室温等で加工する冷間鍛造では、熱間鍛造に比べて材料の変形能が大幅に低下し、変形抵抗が非常に高くなるため、鍛造しうる材料は制限される。前記「変形抵抗」とは、材料を変形させるのに必要な応力のことである。この変形抵抗が大きいと加工力が高くなり、金型に作用する応力が高くなるため、金型の摩耗や変形、破壊が起こしやすくなる。前記「変形能」とは、破壊することなしに変形しうる性質で、鍛造加工時の割れ発生限度、すなわち加工率またはひずみの大小で評価される。
また上記外輪は機械精度が要求される部品である。このため、従来、機械要素である外輪については一般的な冷間鍛造は不可能という技術常識があって、冷間鍛造という発想はなく、熱間で鍛造して得た素材を、製品に近い形状に旋削加工し、熱処理後に研削加工を施して製造していた。具体的には、球形内面、カップ入口チャンファ、およびトラック入口チャンファを切削加工し、熱処理後に、トラック溝、球形内面に研削加工を施している。従来は、このように鍛造加工の後工程として、切削加工および研削加工が多用されていたため、後工程の工数が大きくなり、製造コストが高くなる。
このような背景下で、冷間鍛造を採用し、機械加工工程を少なくしようとする提案もなされてきている。しかし、これらの提案は、冷間鍛造は不可能という技術常識下で改良されるものであって、加工し易い箇所だけを冷間鍛造するものであり、等速ジョイント外輪のごく一部の冷間鍛造に止まる。等速ジョイント外輪の大部分を冷間鍛造しようとする提案もなされてはいる(例えば、特許文献1)。
特開2002−346688号公報
しかし、上記の等速ジョイント外輪の大部分を冷間鍛造しようとする提案例は、材質面からの考察がなされていない。冷間鍛造は、前記変形抵抗および変形能の観点から軟質な素材であれば、最終製品の形状まで仕上げることが可能であり、実用化されているが、等速ジョイント外輪は、上記のように剛性を確保する必要があり、硬質の素材を用いる必要があって、全体の冷間鍛造は非常に困難である。材質面からも考察し、かつ剛性も確保できなければ、全体の冷間鍛造の実現は困難である。
この発明の目的は、鍛造加工後の後加工を低減して加工工数の低減を図ると共に、歩留りの向上を図ることができ、かつ等速ジョイント外輪の剛性も確保できて、材質面からも実用化が可能であり、さらに外輪外径面のブーツ溝の加工等に際して切削工具の短寿命の問題のない等速ジョイントを提供することである。
この発明の等速ジョイントは、カップ部分の球形内面に軸方向に沿うトラック溝が形成された外輪と、球形外面に外輪のトラック溝と同数のトラック溝が形成された内輪と、内外輪のトラック溝間に組込まれたトルク伝達ボールと、外輪の前記球形内面および内輪の球形外面に案内され前記トルク伝達ボールを保持するケージとを有し、前記外輪と前記内輪とが軸方向に相対移動不能な固定式の等速ジョイントにおいて、
前記外輪は、炭素成分が0.37wt%以上0.61wt%以下である機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、開口端に向けて広がりを持つカップ状の外輪前素材を成形し、この外輪前素材に冷間鍛造を施して、この外輪のカップ部分における外径面の表面硬度を250HV以上350HV以下に規定したことを特徴とする。前記炭素成分が0.37wt%以上0.61wt%以下である機械構造用炭素鋼は、いわゆる調質鋼の範囲であり、日本工業規格、略称JISのG4051に規定されるS40C〜S58Cに相当する。
この構成によると、特に、機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、カップ状の外輪前素材を成形する。その後、この外輪前素材に冷間鍛造を施して、カップ部分における外径面の表面硬度を250HV以上350HV以下に規定する。外輪が炭素成分0.37wt%以上と炭素量の多い機械構造用炭素鋼から鍛造仕上げされるので、カップ部分の外表面の表面硬度を高めることができる。これにより製品のねじり強度を高くすることができる。素材となる機械構造用炭素鋼の炭素成分の上限は、0.61wt%以下とし、且つ前記外径面の表面硬度の上限値を350HVとしたため、硬すぎて加工不能となることがなく、外径面の一部を後加工することが容易となる。これにより切削工具の寿命を延ばすことが可能となり、その分、製造コストの低減を図ることができる。
前記外輪は、前記カップ部分の内表面に、
前記トラック溝、
前記球形内面、
外輪の開口縁全周に沿って形成されるカップ入口チャンファ、
前記球形内面と前記トラック溝との境界部に沿って形成されるトラックチャンファ、および、
前記トラック溝とカップ入口チャンファとの境界部に前記トラック溝の円弧全域に沿って形成されるトラック入口チャンファを有し、このトラック入口チャンファは断面が凸曲線とされ、
これらトラック溝、球形内面、カップ入口チャンファ、トラックチャンファ、および、トラック入口チャンファを含むカップ部分が冷間鍛造により仕上げられている。
前記外輪の外径面には、熱処理を施さない非熱処理部分が設けられ、前記冷間鍛造した球形内面およびトラック溝には、高周波熱処理を施す熱処理部分が設けられても良い。機械構造用炭素鋼は浸炭鋼よりも炭素量が多いため、この高周波熱処理を採用し得る。これにより、熱処理の時間短縮を図ると共に、球形内面およびトラック溝に対する焼入れ深さを深くすることができる。
高周波熱処理を施した前記球形内面が研削により仕上げられていても良い。カップ部分の内表面のトラック溝、カップ入口チャンファ、トラックチャンファ、および、トラック入口チャンファを研削しないので、加工工数の低減を図ることができる。球形内面を研削するため、より高精度のケージの案内面を実現でき、円滑な動作を得ることができる。球形内面は、円滑な動作を得るために厳しい寸法精度、形状精度が要求されている。このように、特に厳しい精度の要求される球形内面のみを研削加工等することで、機械加工を最小限としながら、優れた機能と生産性とを両立させることができる。
この発明の等速ジョイントは、カップ部分の球形内面に軸方向に沿うトラック溝が形成された外輪と、球形外面に外輪のトラック溝と同数のトラック溝が形成された内輪と、内外輪のトラック溝間に組込まれたトルク伝達ボールと、外輪の前記球形内面および内輪の球形外面に案内され前記トルク伝達ボールを保持するケージとを有し、前記外輪と前記内輪とが軸方向に相対移動不能な固定式の等速ジョイントにおいて、
前記外輪は、前記カップ部分の内表面に、前記トラック溝、前記球形内面、外輪の開口縁全周に沿って形成されるカップ入口チャンファ、前記球形内面と前記トラック溝との境界部に沿って形成されるトラックチャンファ、および、前記トラック溝とカップ入口チャンファとの境界部に前記トラック溝の円弧全域に沿って形成されるトラック入口チャンファを有し、このトラック入口チャンファは断面が凸曲線とされ、これらトラック溝、球形内面、カップ入口チャンファ、トラックチャンファ、および、トラック入口チャンファを含むカップ部分が冷間鍛造により仕上げられていて、前記外輪は、炭素成分が0.37wt%以上0.61wt%以下である機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、開口端に向けて広がりを持つカップ状の外輪前素材を成形し、この外輪前素材に冷間鍛造を施して、この外輪のカップ部分における外径面の表面硬度を250HV以上350HV以下に規定したため、鍛造加工後の後加工を低減して加工工数の低減を図ると共に、歩留りの向上を図ることができ、かつ等速ジョイント外輪の剛性も確保できて、材質面からも実用化が可能であり、さらに外輪外径面のブーツ溝の加工等に際して切削工具の短寿命の問題のないようにし得る。
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
この発明の一実施形態を図1ないし図16と共に説明する。
以下、等速ジョイントの全体構成、構成部品、外輪成形金型、および外輪成形方法について順次説明する。
図1は等速ジョイントを示す。この等速ジョイントは、自動車のドライブシャフトの固定側端に設けられる。この等速ジョイントは、外輪1の球形内面2に複数の軸方向に沿うトラック溝3を形成し、内輪4の球形外面5に上記トラック溝3と同数のトラック溝6を設け、その外・内輪1,4のトラック溝3,6間に組込んだトルク伝達ボール7を、両輪1,4間に組込んだケージ8で保持している。トラック溝3,6の本数は、図示の例では、6本としているが、8本であっても、また他の本数であっても良い。外輪1の球形内面2は、上記トラック溝3によって、周方向に並ぶ複数の球形内面部分2a(球形内面に相当)に分かれている。
ケージ8は、外輪1の球形内面部分2aと内輪4の球形外面5とで接触案内される球面9a,9bを内外に有する。外輪1は、カップ部分1aと、このカップ部分1aの底部から軸方向に延びる軸部分1bとを有する。前記カップ部分1aの開口縁に沿ってカップ入口チャンファ11が形成されている。
外輪1のトラック溝3は、溝底に沿う断面形状が円弧状の曲線状とされている。この外輪1のトラック溝3の中心O1と内輪4のトラック溝6の中心O2 は、ジョイント角度中心O0 に対して左右にオフセットされている。ここで、ジョイントの角度中心O0 は、外輪1の球形内面2および内輪4の球形外面5の球面中心と一致する。
図2(A),(B)は外輪1の一部分を拡大して示す。外輪1の開口縁には全周に上記カップ入口チャンファ11が設けられている。カップ入口チャンファ11は、外輪1の球形内面2からトラック溝3の溝底に対応する半径位置まで設けられ、外輪軸方向Laに対して所定角度β(図1参照)だけ傾いた円すい面状とされている。所定角度βは、例えば60°程度とされる。このカップ入口チャンファ11は、外輪1の正面つまり外輪軸方向一方から見ると、図2(B)、図4のように表される。
また、図2(A)に示すように、外輪1のトラック溝3の有効深さH1 は、外輪1の軸心と直交して球形内面2の球面中心を含む直線より角度αsだけ外輪奥側に偏った位置イから外輪開口端に至る範囲にわたって均一深さとされている。
外輪1は機械構造用炭素鋼から成り、その炭素成分は、0.37wt%以上0.61wt%が好ましく、より好ましくは0.50wt%以上0.58wt%以下である。この機械構造用炭素鋼としては、日本工業規格、略称JIS:Japanese Industrial Standardsで規定される、S40C〜S58C、望ましくはS53C〜S55Cが適用される。例えばS53Cは、炭素0.50wt%以上0.56wt%以下を含む中炭素鋼である。図2(B)、図4に示すように、この外輪1の、球形内面部分2a、トラック溝3、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、トラック入口チャンファ13が、例えば、0℃以上50℃以下の冷間鍛造により仕上げられている。ただし、この冷間鍛造の温度範囲は必ずしも0℃以上50℃以下に限定されるものではない。
前記トラックチャンファ12は、球形内面部分2aとトラック溝3との境界部に沿って形成され、この断面が円弧状等の凸曲線とされる。前記トラック入口チャンファ13は、トラック溝3とカップ入口チャンファ11との境界部に沿って形成され、断面が円弧状等の凸曲線とされる。
本実施形態では、外輪1の球形内面部分2aを冷間鍛造の後、研削仕上げとする。球形内面部分2aは、要求される精度が厳しい場合があり、その場合は、この球形内面部分2aのみ研削仕上げとすることにより要求精度を満たし得る。この場合、従来技術のものより、切削加工の工数を削減し、等速ジョイントの製造コストの低減を図ることができる。なお、球形内面部分2aの要求精度によっては、この球形内面部分2aを冷間鍛造仕上げとすることも可能である。
前記トラック入口チャンファ13は、トルク伝達ボール7の稼動する有効範囲を確保する必要があるため、例えばR2.5mm以下、望ましくはR1.5mm程度の円弧状断面に設定される。このような設定値にトラック入口チャンファ13を形成することにより、トルク伝達ボール7の稼動する有効範囲を容易に確保することができる。
図4、図5に示すように、外輪1の球形内面2に、軸方向に沿ったスリット溝Smを各トラック溝3間に位置するように円周方向一定間隔おきに複数(本実施形態の場合6条)形成している。ただしスリット溝Smは6条に限定されるものではない。例えば8条でも良い。すなわち、外輪1の球形内面部分2a、カップ入口チャンファ11、およびカップ端面15に連なるスリット溝Smを形成している。このスリット溝Smの幅寸法S1を、周方向に隣接するトラック溝3,3間における前記球形内面部分2aの最大幅寸法S2に対して5%以上30%以下としている。このスリット溝Smは、後述する分割パンチ間のすきまδ1に外輪前素材1M(図14、図15参照)の余肉が入らないように設けられる。
後述するが、図15に示すように、外輪前素材成形過程において、外輪前素材スリット溝Smaの幅寸法S3をこの球形内面部分2aの最大幅寸法S2に対して10%以上40%以下としている。このため、冷間鍛造後のスリット溝Smの幅寸法S1を、図4、図5に示すように、球形内面部分2aの最大幅寸法S2に対して5%以上30%以下とすることができる。これにより、冷間鍛造の際、周方向に分割した分割パンチ間の隙間δ1いわゆる周方向隙間δ1に、外輪前素材1Mの余肉が入り込まないようにすることができる。
本実施形態に係る等速ジョイントにおいて、トルク伝達ボール7のボール個数が6個の場合、前記最大幅寸法S2は、球形内面2の長手方向中間付近つまり軸方向中間付近における幅寸法となる。ただし、等速ジョイントの形態やボール個数によっては、この「最大幅寸法」が球形内面2の軸方向中間付近とはならない場合もある。
図1において、前記冷間鍛造された外輪1の外径部16は、ねじり強度を高めるため焼入れ等の熱処理を施しておらず、この冷間鍛造による加工硬化により製品強度を高くしている。
上記外径部16は、カップ部分1aの周壁部のうちカップ開口側の先端16sから、底部まで繋がる基端16kにわたる外周面全体を言う。一方、この外径部16の硬度が高過ぎると、外径部16のカップ開口側の外径面端縁部16a(図16参照)、ブーツ溝16bの旋削加工等の際、旋削工具の短寿命化等の原因になる。このため、外輪1の外径部16における外径面端縁部16a、ブーツ溝16b付近部の表面硬度を250HV以上350HV以下に規定している。
JIS Z 2244に規定されるビッカース硬さ試験により、これら外径面端縁部16a、ブーツ溝16b付近部外周の例えば円周方向複数箇所の表面硬度を測定し、上記規定範囲内にあるか否かを確認し得る。ただし、測定箇所は一箇所であっても良い。前記外径面端縁部16a、ブーツ溝16b付近部は、外径面端縁部16a自体、ブーツ溝16b自体をも含む。
外輪1の外径部16における外径面端縁部16a、ブーツ溝16b付近部を、上記規定範囲内の表面硬度に規定することにより、外輪1のねじり強度を高めることができると共に、同外径部16の旋削加工等を容易化して工具寿命を長くすることが可能となる。
図3に示すように、前記外輪1の軸部分1bのうち、基端部から長手方向中間付近部にわたってスプラインSPが形成され、軸部分1bの先端部に雄ねじ17が形成されている。
前記冷間鍛造された外輪1のカップ部分1aのうち、球形内面部分2aおよびトラック溝3に、高周波熱処理を施している。これにより、トルク伝達ボール7やケージ8の接触する外輪接触面を高強度化し、外輪1の耐久性の向上を図っている。この高周波熱処理後、球形内面部分2aについてのみ、焼入れ鋼切削または研削等の機械加工を施している。これにより、球形内面部分2aに対する厳しい要求精度を満たすことが可能となる。この球形内面部分2a要求精度によっては、前記機械加工を省略することも可能である。この場合、工数を削減し、製造コストの低減をさらに図ることができる。
等速ジョイント外輪の製造装置としての外輪成形金型について、図6ないし図13と共に説明する。
図6、図7は、外輪成形金型となるパンチセット18と絞り込みダイス19とを示す。前記パンチセット18は、パンチセット本体20、パンチホルダ21、複数の分割パンチ22、パンチベース23、傘パンチ24、およびスプリング25を含む。このパンチセット18において、パンチセット本体20の上面に、パンチホルダ21を図示外のボルト等により固定している。
パンチセット本体20は、上方に開放する有底円筒状に形成され、この円筒孔20aの底面の中央部に、傘パンチ24の基端部を収容する孔部20aaが形成されている。パンチベース23の下端に設けられる突出部23aが前記円筒孔20aに入り込み、さらにこの突出部23aの端部23aaが前記底面に当接した状態で、パンチホルダ21のフランジ部21aがパンチセット本体20の上面の周縁部に固定される。
パンチホルダ21はテーパ筒状に形成され、内径孔は上方に向かう程小径化するテーパ孔21bに形成されている。このテーパ孔21bに、そのテーパ形状に対応した複数の分割パンチ22、パンチベース23等を設けている。パンチベース23は、複数の分割パンチ22を円周方向一定間隔おきに配置するものである。図13(A),(B)に示すように、パンチベース23は、これら分割パンチ22を配置するパンチベース本体23bと、このパンチベース本体23bの下端に連なる前記突出部23aとを有する。パンチベース本体23bのテーパ状外周23baに、複数(この例では6個)の割型仕切片26を放射状に突出させて設けている。なお、前記テーパ状外周23baは、パンチホルダ21のテーパ孔に対応したテーパ度に形成されている。
図13(A)に示すように、各割型仕切片26は、横断面が台形状ないし三角形状のテーパ状とされ、かつ図13(B)に示すように、各割型仕切片26の先端が上端側へ狭まるテーパ状の側面形状とされている。これら割型仕切片25間に各分割パンチ22を介在させる。
図10乃至図12に示すように、分割パンチ22は、横断面形状が略扇形のものであり、内径球面成形部27、トラック溝成形部28、トラックチャンファ成形部29、カップ入口チャンファ成形部30、およびトラック入口チャンファ成形部31とを有し、これら成形部27,28,29,30,31は一体形成されている。
トラック溝成形部28が、分割パンチ22の上記略扇形の外周側面における周方向の中央に突出していて、トラック溝成形部28の両側に内径球面成形部27が設けられている。前記内径球面成形部27は、外輪1の球形内面部分2aを成形するための部分であり、前記略扇形の円弧に略対応して形成される。また内径球面成形部27は、特に図12に示すように、上下両端から高さ方向中間付近に向けて次第に半径方向外方に突出するような湾曲形状に形成される。トラック溝成形部28は、外輪1のトラック溝3を成形するための部分で、内径球面成形部27よりも径方向外方に突出する横断面形状が円弧状の突条に形成されている。
トラックチャンファ成形部29は、外輪1のトラックチャンファ12を成形するための部分である。このトラックチャンファ成形部29は、内径球面成形部27とトラック溝成形部28との境界部に沿って形成され、上端から下端まで延びる横断面形状が円弧状の突条に形成されている。
カップ入口チャンファ成形部30は、外輪1のカップ入口チャンファ11を成形するための部分である。このカップ入口チャンファ成形部30は、内径球面成形部27、トラック溝成形部28、およびトラックチャンファ成形部31の各下端と、この分割パンチ22の環状胴部22aの上端とによって囲まれている。胴部22aは、分割パンチ22が円周上に並ぶことで環状部分を構成する。
また、カップ入口チャンファ成形部30は、半径方向外方に向かうに従って下方に傾斜するテーパ状に形成され、このテーパ状のカップ入口チャンファ成形部30により、外輪1のカップ入口チャンファ11の所定角度β(図1)を実現している。トラック入口チャンファ成形部31は、外輪1のトラック入口チャンファ13を成形するための部分であり、カップ入口チャンファ成形部30とトラック溝成形部28との境界部に沿って形成されている。
内径球面成形部27、トラック溝成形部28、トラックチャンファ成形部29、カップ入口チャンファ成形部30、およびトラック入口チャンファ成形部31を、全て一体の分割パンチ22に形成したため、例えばカップ入口チャンファ成形部を分割パンチとは別体に形成したもの等に比べて、各成形部の寸法精度を高めると共に、これらの寸法相互差の低減を図ることが可能となる。これにより、外輪1の球形内面部分2a、トラック溝3、トラックチャンファ12、カップ入口チャンファ11、およびトラック入口チャンファ13の寸法精度を高めると共に、これらの寸法相互差の低減を図ることができる。
各分割パンチ22は、その扇形中心側の稜線部22bがパンチベース本体23bのテーパ部に沿うように傾斜している。各分割パンチ22は、このパンチベース本体23bのテーパ部に沿う上下方向に移動可能に支持されている。各分割パンチ22の上方への移動は、傘パンチ24で拘束される。
この傘パンチ24は、パンチベース23の小径孔23c、スプリング25を収容するばね収容孔23d、および支持部材32の孔部32aにわたって設けられている。これら小径孔23c、ばね収容孔23d、孔部32aは、同心位置に形成されている。前記小径孔23cはパンチベース本体23bの上部に形成され、ばね収容孔23dは小径孔23cよりもやや大径に形成され、パンチベース本体23bの長手方向中段、下段および突出部23aにわたって形成される。前記支持部材32は、パンチセット本体20の孔部20aaに嵌合されている。この支持部材32の上端部とばね収容孔23dの上端面との間に、前記スプリング25を介在させている。前記傘パンチ24は、このスプリング25により弾性付勢され上端の広がり部分24aで各分割パンチ22の上端面を受けている。
図6、図7に示すように、絞り込みダイス19は、外輪1の外径面および底側端面に対応する内径形状の貫通孔部19aを有する。この貫通孔部19aの下端開口部が開口端側に開くテーパ面19aaに形成されている。この貫通孔部19aの上端から中段にわたり円筒面状のストレート面19abを成し、外輪前素材1Mを貫通して支持する治具33が挿入可能に構成されている。
パンチセット18および絞り込みダイス19による外輪成形方法を、図6、図7、図14、図15等と共に説明する。外輪前素材成形過程の後、冷間鍛造過程を行い、所望の外輪1を製造する。
外輪前素材1Mは、図14、図15に示すように、温間鍛造、熱間鍛造、または亜熱間鍛造による塑性加工でカップ状に成形され、その開口部付近の周壁部分は開口端に向けて広がりを持ち、内周には分割パンチ22(図10)と同数のトラック溝3Mが形成されている。外輪前素材1Mの底部外面の中心には軸部1bが突出している。また、外輪前素材1Mのカップ部分1aの開口端面には、カップ入口チャンファ11Mが、おおよその形状に形成されている。
図15に示すように、外輪前素材1Mの球形内面には、軸方向に沿った外輪前素材スリット溝Smaを形成している。周方向に隣接するトラック溝3M,3M間における球形内面の最大幅寸法S2に対して、この外輪前素材スリット溝Smaの幅寸法S3を10%以上40%以下としている。このため、以下の冷間鍛造過程後のスリット溝Smの幅寸法S1(図5)を5%以上30%以下とすることができる。これにより、冷間鍛造の際、周方向に分割した分割パンチ22,22間の隙間δ1に、外輪前素材1Mの余肉が入り込まないようにすることができる。
冷間鍛造過程について説明する。
図6に示すように、この外輪前素材1Mを治具33に設けたうえで絞り込みダイス19の貫通孔部19aに挿入する。その後、絞り込みダイス19に対しパンチセット18を相対移動させると、傘パンチ24が、外輪前素材カップ部分1aの内表面における球面底部に当接し、分割パンチ22が同内表面におけるトラック溝に嵌合する。
この状態で、図7、図9に示すように、パンチセット18をさらに相対移動させることにより、外輪前素材1Mのカップ部分1aは、絞り込みダイス19により絞り込み作用を受けて半径方向内方へ縮径する。その絞り込み時に、前記トラック溝の表面は分割パンチ22のトラック溝成形部28により拘束され、カップ部分1aのトラック溝3、球形内面部分2a、およびトラックチャンファ12のそれぞれが、トラック溝成形部28、内径球面成形部27、およびトラックチャンファ成形部29によって塑性変形される。これと共に、前記絞り込み時に、カップ入口チャンファ11、およびトラック入口チャンファ13のそれぞれが、カップ入口チャンファ成形部30、およびトラック入口チャンファ成形部31によって塑性変形される。
外輪前素材1Mの成形後、絞り込みダイス19に対し、パンチセット本体20を相対的に離隔させると、スプリング25の復元力により、傘パンチ24がパンチホルダ21に対して上昇する。前記スプリング25の復元力に抗して、分割パンチ22がパンチベース23のテーパ部に沿って軸方向に若干の滑りを生じ、複数の分割パンチ22の円形の配列が縮径する。これにより、分割パンチ22がカップ部分1aのトラック溝3から外れ、分割パンチ22および傘パンチ24の先端部が、外輪1から引き抜かれる。
これにより、外輪1のカップ部分1aの、トラック溝3、球形内面部分2a、トラックチャンファ12、カップ入口チャンファ11、およびトラック入口チャンファ13のそれぞれが、所定の形状、寸法に仕上げられる。
以上説明した等速ジョイントによれば、外輪1は、カップ部分1aの内表面に、トラック溝3、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、および、トラック入口チャンファ13を有し、外輪1は、機械構造用炭素鋼から成り、これら、トラック溝3、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、および、トラック入口チャンファ13を含むカップ部分1aの大部分が冷間鍛造により仕上げられている。
また、球形内面部分2aを研削または焼入れ鋼切削により仕上げているので、より高精度のケージ8の案内面を実現でき、円滑な動作を得ることができる。球形内面部分2aは、円滑な動作を得るために厳しい寸法精度、形状精度が要求されている。このように、特に厳しい精度の要求される球形内面部分2aのみを研削加工等することで、機械加工を最小限としながら、優れた機能と生産性とを両立させることができる。
外輪1が浸炭鋼等ではなく特に機械構造用炭素鋼から成り、この外輪1のトラック溝3、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、および、トラック入口チャンファ13を含むカップ部分1aの大部分を冷間鍛造により仕上げているため、図16左欄に示すような従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工等を省略することができる。それ故、歩留まりが向上し、等速ジョイントの製造コストの低減を図ることができる。
また、カップ部分1aの大部分を冷間鍛造により仕上げているため、従来のものに比べて製品の強度を高めることが可能となる。外輪1が炭素成分0.37wt%以上と炭素量の多い機械構造用炭素鋼から鍛造仕上げされるので、カップ部分1aの内外表面を所望の硬い表面硬度にすることができる。これにより、製品寿命を延ばすことが可能となる。素材となる機械構造用炭素鋼の炭素成分の上限は、0.61wt%以下としたので、硬すぎて加工不能となることなく、冷間鍛造が可能である。また、特に硬い材質を用いなくても、冷間鍛造で成形するため、加工硬化により、外輪1のカップ部分1aの外径部分の硬度が高くなり、剛性の高い高強度の外輪1となる。カップ部分1aの内表面の大部分を冷間鍛造により一体に仕上げることができるため、この内表面のトラック溝3、およびチャンファ等の寸法精度をより高めることができる。また、これらトラック溝3、チャンファ等の寸法の相互差を、従来のものより低減することができる。
図2(B)に示すように、外輪1は、カップ入口チャンファ11と球形内面部分2aとの境界部に沿って形成される内径球面入口チャンファ34を有し、この内径球面入口チャンファ34を含む前記カップ部分の内表面の大部分が冷間鍛造により仕上げられていても良い。この場合、内径球面入口チャンファ34の旋削加工、研削加工等をも省略して、加工工数を低減することで、歩留まり向上および製造コストの低減を図ることができる。
カップ入口チャンファ11は、円すい面状とされている。このため、内外輪4,1の相互の屈曲時に、内輪4を装着した軸35に外輪1の開口縁が干渉することを防ぐことができる。このような円すい面状のカップ入口チャンファ11を冷間鍛造により仕上げるため、カップ入口チャンファ11の旋削加工等を省略し、歩留まり向上および製造コストの低減を確実に図ることができる。
冷間鍛造の後、球形内面部分2aおよびトラック溝3に、高周波熱処理を施しても良い。機械構造用炭素鋼は浸炭鋼よりも炭素量が多いため、この高周波熱処理を採用し得る。これにより、熱処理の時間短縮を図ると共に、焼入れ深さを深くすることができる。
上記の等速ジョイント外輪の製造方法によると、機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、開口端に向けて広がりを持つカップ状の外輪前素材1Mを成形する外輪前素材成形過程と、前記外輪前素材1Mに冷間鍛造を施して、この外輪1のカップ部分1aの内表面における、前記トラック溝3、外輪1の開口縁全周に沿って形成されるカップ入口チャンファ11、外輪1の球形内面部分2aと前記トラック溝3との境界部に沿って形成されるトラックチャンファ12、および、前記トラック溝3とカップ入口チャンファ11との境界部に沿って形成されるトラック入口チャンファ13を同時に成形する冷間鍛造過程とを有する。
この構成によると、外輪前素材成形過程において、特に、機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、カップ状の外輪前素材1Mを成形する。その後、冷間鍛造過程において、この外輪前素材1Mに冷間鍛造を施して、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、およびトラック入口チャンファ13を同時に成形する。このため、従来の冷間鍛造後の切削加工等複数の加工工程を省略することができる。それ故、歩留まりが向上し、外輪の製造コストの低減を図ることができる。
本実施形態に係る等速ジョイント外輪の製造装置は、トラック溝成形部28とカップ入口チャンファ成形部30とトラックチャンファ成形部29とトラック入口チャンファ成形部31と内径球面成形部27とが一体形成された分割パンチ22を円形に配列したパンチセット18と、機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、開口端に向けて広がりを持つカップ状の外輪前素材1Mについて、これら成形部を同外輪前素材1Mのカップ部分1aの内側に挿入した状態で、前記外輪前素材1Mの外径を絞り込む絞り込みダイス19とを有する。
この構成によると、機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、カップ状の外輪前素材1Mを成形する。この外輪前素材1Mのカップ部分1aの内側に、分割パンチ22の、トラック溝成形部28,カップ入口チャンファ成形部30,トラックチャンファ成形部29,トラック入口チャンファ成形部31,内径球面成形部27,およびトラック溝成形部28を挿入する。この挿入状態で、絞り込みダイス19をパンチセット18に対して相対移動させる。これにより、外輪前素材1Mの外径は、絞り込みダイス19による絞り込み作用を受けて半径方向内方に縮径する。その絞り込み時に、トラック溝3の表面はトラック溝成形部28により拘束され、トラック溝3がトラック溝成形部28により塑性変形すると共に、球形内面部分2aが内径球面成形部27により塑性変形する。これにより所定の形状、寸法に仕上げられる。
この発明の他の実施形態に係る等速ジョイントについて説明する。
この等速ジョイントは、図16右欄に示すように、外径面端縁部16aおよびブーツ溝16bを除くカップ部分1aの外径面が冷間鍛造により仕上げられている。前記「外径面」とは、カップ部分1aの周壁部においてカップ開口側の先端16sから、基端16kにわたる外周面全体のうち、カップ開口側の外径面端縁部16aおよび、ブーツの端部を保持するブーツ溝16bを除く残余の部分である。その他前述の図1に示す実施形態と同様の構成となっている。
この他の実施形態に係る等速ジョイントによると、外輪1が浸炭鋼等ではなく特に機械構造用炭素鋼から成り、この外輪1のトラック溝3、球形内面部分2a、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、および、トラック入口チャンファ13を含むカップ部分1aの内表面全体を冷間鍛造により仕上げている。さらに、ブーツ溝16b等を除くカップ部分1aの前記外径面を冷間鍛造により仕上げているため、従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工等多くの機械加工を省略することができる。それ故、歩留まりが向上し、等速ジョイントの製造コストの低減を図ることができる。
また、ブーツ溝16bを除くカップ部分1aの前記外径面を冷間鍛造により仕上げているため、このカップ部分1aの外径面の硬度を高め、ねじり強度を高くすることができるうえ、加工工数を低減して製造コストの低減を図ることができる。
この発明のさらに他の実施形態に係る等速ジョイントについて説明する。
この等速ジョイントは、
図1、図2(B)に示すように、外輪1の球形内面部分2aが、冷間鍛造後、研削または焼入れ鋼切削により仕上げられ、
図16右欄に示すように、外径面端縁部16aおよびブーツ溝16bを除くカップ部分1aの前記外径面が冷間鍛造により仕上げられている。その他前述の図1に示す実施形態と同様の構成となっている。
この構成によると、外輪1が特に機械構造用炭素鋼から成り、この外輪1のトラック溝3、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、および、トラック入口チャンファ13を含むカップ部分1aの内表面の大部分を冷間鍛造により仕上げている。さらに、ブーツ溝16b等を除くカップ部分1aの前記外径面を冷間鍛造により仕上げているため、従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工等多くの機械加工を省略することができる。それ故、歩留まりが向上し、等速ジョイントの製造コストの低減を図ることができる。
また、前記球形内面部分2aを研削または焼入れ鋼切削により仕上げているので、球形内面部分2aの厳しい要求精度に対応することができる。
図16右上欄に示すように、前記ブーツ溝16bは、トラック溝3を半径方向内方側からチャックして切削加工により仕上げられている。トラック溝3等を含むカップ部分1aの内表面全体を冷間鍛造により一体に仕上げることができるため、これらトラック溝3等の寸法精度をより高めることができる。このように寸法精度を高めたトラック溝3を半径方向内方側からチャックつまり支持して、図16右下欄に示すように、外輪1を軸芯まわりに回転させ、ブーツ溝16bおよび外径面端縁部16aを切削加工するので、このブーツ溝16bの寸法精度をも高めることができる。
他の提案例に係る等速ジョイント外輪の製造方法について説明する。
この製造方法は、機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、開口端に向けて広がりを持つカップ状の外輪前素材1Mを成形する外輪前素材成形過程と、前記外輪前素材1Mに冷間鍛造を施して、この外輪1のカップ部分1aにおける外径面の表面硬度を250HV以上350HV以下に規定する冷間鍛造過程とを有する。
この構成によると、外輪前素材成形過程において、特に、機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、カップ状の外輪前素材1Mを成形する。その後、冷間鍛造過程において、この外輪前素材1Mに冷間鍛造を施して、カップ部分1aにおける外径面の表面硬度を250HV以上350HV以下に規定する。外輪1が炭素成分0.37wt%以上と炭素量の多い機械構造用炭素鋼から鍛造仕上げされるので、カップ部分1aの外径面の表面硬度を高めることができる。これにより製品のねじり強度を高くすることができる。
素材となる機械構造用炭素鋼の炭素成分の上限は、0.61wt%以下とし、且つ前記外径面の表面硬度の上限値を350HVとしたため、硬すぎて加工不能となることがなく、外径面の一部を後加工することが容易となる。これにより切削工具の寿命を延ばすことが可能となり、その分、製造コストの低減を図ることができる。前記外径面の表面硬度の上限値を350HVとしたため、外径面の一部つまり図16右欄に示す外径面端縁部16a、ブーツ溝16bを後加工することが容易となる。これにより切削工具の寿命を延ばすことが可能となり、その分、製造コストの低減を図ることができる。
カップ部分1aの前記外径面の一部を切削加工等してこの加工後の一部をチャックして軸部分1b等に加工を施す場合、その振れ精度を高精度に保ち、加工精度を高精度化することが可能となる。
特に、外輪前素材1Mが浸炭鋼等ではなく機械構造用炭素鋼であり、カップ部分1aにおける外径面を冷間鍛造により仕上げているため、いわゆる外径面総削り品等よりも加工工数の低減を図ることができるうえ、加工硬化による強度向上を図ることができる。前記加工工数の低減により、歩留まりが向上し、等速ジョイント外輪の製造コストの低減を図ることができる。
前記外径面の表面硬度を規定する構成において、カップ部分1aの前記外径面には、熱処理を施さない非熱処理部分が設けられ、冷間鍛造した球形内面部分2aおよびトラック溝3には、高周波熱処理を施す熱処理部分が設けられていても良い。
機械構造用炭素鋼は浸炭鋼よりも炭素量が多いため、この高周波熱処理を採用し得る。これにより、熱処理の時間短縮を図ると共に、球形内面部分2aおよびトラック溝3に対する焼入れ深さを深くすることができる。
前記外径面の表面硬度を規定する構成において、高周波熱処理を施した球形内面部分2aが研削により仕上げられていても良い。カップ部分1aの内表面のトラック溝3、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、および、トラック入口チャンファ13を研削しないので、加工工数の低減を図ることができる。球形内面部分2aを研削するため、球形内面部分2aの厳しい要求精度に対応することができる。
この発明のさらに他の実施形態に係る等速ジョイントについて説明する。
この等速ジョイントは、図5に示すように、球形内面部分2aの最大幅寸法S2に対して、スリット溝Smの幅寸法S1を5%以上30%以下としている。
この等速ジョイントの外輪1は、機械構造用炭素鋼から成り、トラック溝3、球形内面部分2a、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、および、トラック入口チャンファ13を含むカップ部分1aの内表面の大部分が冷間鍛造により仕上げられ、球形内面部分2aに軸方向に沿ったスリット溝Smを形成し、周方向に隣接するトラック溝3,3間における球形内面部分2aの最大幅寸法S2に対して、スリット溝Smの幅寸法S1を5%以上30%以下としている。
この構成によると、外輪1が浸炭鋼等ではなく特に機械構造用炭素鋼から成り、この外輪1のトラック溝3、球形内面部分2a、カップ入口チャンファ11、トラックチャンファ12、および、トラック入口チャンファ13を含むカップ部分1aの内表面全体を冷間鍛造により仕上げているため、従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工等を省略することができる。それ故、歩留まりが向上し、等速ジョイントの製造コストの低減を図ることができる。
また、球形内面部分2aの最大幅寸法S2に対して、スリット溝Smの幅寸法S1を5%以上30%以下としたため、前記冷間鍛造の際、周方向に分割したいわゆる分割パンチ22,22間の隙間δ1に、外輪前素材1Mの余肉が入り込まず、球形内面部分2aについて所望の形状精度を得ることができる。特に、前記下限値を5%以上としたため、これら分割パンチ22による鍛造加工後、複数の分割パンチ22の円径の配列を縮径させて、これら分割パンチ22を外輪1から円滑に引き抜くことができる。前記上限値を最大幅寸法30%以下としたため、等速ジョイント外輪の球形内面の必要面積が確保できて、強度不足の問題を解消することができる。また、分割パンチ22,22間の隙間δ1に生じていた突出部分を未然に防止できるので、この突出部分除去のための後加工が不要となり、その分、製造コストの低減を図ることができる。
このスリット溝Smの幅寸法S1を規定した構成において、球形内面部分2aが研削または焼入れ鋼切削により仕上げられていても良い。この場合、球形内面部分2aの厳しい要求精度に対応することができる。前記冷間鍛造後、この球形内面部分2aの研削または焼入れ鋼切削前に、球形内面部分2aおよびトラック溝3に高周波熱処理を施す熱処理過程を有するものであっても良い。
この発明のさらに他の実施形態に係る等速ジョイント外輪の前素材について説明する。
外輪前素材1Mは、図15に示すように、外輪前素材成形過程において、外輪前素材スリット溝Smaの幅寸法S3をこの球形内面部分2aの最大幅寸法S2に対して10%以上40%以下としている。このため、冷間鍛造後のスリット溝Smの幅寸法S1を、図4、図5に示すように、球形内面部分2aの最大幅寸法S2に対して5%以上30%以下とすることができる。これにより、冷間鍛造の際、周方向に分割した分割パンチ間の隙間δ1いわゆる周方向隙間δ1に、外輪前素材1Mの余肉が入り込まないようにすることができる。
この発明の一実施形態に係る等速ジョイントの断面図である。 (A)は同等速ジョイントの外輪の要部の断面図、(B)はこの外輪の要部を拡大して示す側面図である。 同外輪の冷間鍛造形状を一部破断して表す断面図である。 図3の一側面図である。 同外輪における内径球面幅の最大寸法等を表す斜視図である。 外輪成形金型と外輪前素材との関係を表す縦断側面図である。 同外輪成形金型の成形時の状態を表す縦断側面図である。 同外輪成形金型のパンチセットを軸方向一方から視た平面図である。 同パンチセットの加工時の状態を表す断面図である。 同パンチセットの各分割パンチの要部の斜視図である。 同分割パンチの平面図である。 同分割パンチの側面図である。 (A)は同外輪成形金型のパンチベースの平面図、(B)はこのパンチベースの断面図である。 同外輪の外輪前素材を一部破断して表す断面図である。 図14の一側面図である。 従来例と本発明の一例の加工工程の違いを説明する図である。
符号の説明
1…外輪
1a…カップ部分
1b…軸部分
1M…外輪前素材
2a…球形内面部分
3,6…トラック溝
4…内輪
7…トルク伝達ボール
8…ケージ
11…カップ入口チャンファ
12…トラックチャンファ
13…トラック入口チャンファ
14…センタ孔
18…パンチセット
19…絞り込みダイス
27…内径球面成形部
28…トラック溝成形部
29…トラックチャンファ成形部
30…カップ入口チャンファ成形部
31…トラック入口チャンファ成形部
34…内径球面入口チャンファ

Claims (3)

  1. カップ部分の球形内面に軸方向に沿うトラック溝が形成された外輪と、球形外面に外輪のトラック溝と同数のトラック溝が形成された内輪と、内外輪のトラック溝間に組込まれたトルク伝達ボールと、外輪の前記球形内面および内輪の球形外面に案内され前記トルク伝達ボールを保持するケージとを有し、前記外輪と前記内輪とが軸方向に相対移動不能な固定式の等速ジョイントにおいて、
    前記外輪は、前記カップ部分の内表面に、
    前記トラック溝、
    前記球形内面、
    外輪の開口縁全周に沿って形成されるカップ入口チャンファ、
    前記球形内面と前記トラック溝との境界部に沿って形成されるトラックチャンファ、および、
    前記トラック溝とカップ入口チャンファとの境界部に前記トラック溝の円弧全域に沿って形成されるトラック入口チャンファを有し、このトラック入口チャンファは断面が凸曲線とされ、
    これらトラック溝、球形内面、カップ入口チャンファ、トラックチャンファ、および、トラック入口チャンファを含むカップ部分が冷間鍛造により仕上げられていて、
    前記外輪は、
    炭素成分が0.37wt%以上0.61wt%以下である機械構造用炭素鋼に熱間鍛造または温間鍛造を施して、開口端に向けて広がりを持つカップ状の外輪前素材を成形し、この外輪前素材に冷間鍛造を施して、この外輪のカップ部分における外径面の表面硬度を250HV以上350HV以下に規定したことを特徴とする等速ジョイント。
  2. 請求項1において、前記外輪の外径面には、熱処理を施さない非熱処理部分が設けられ、前記冷間鍛造した球形内面およびトラック溝には、高周波熱処理を施す熱処理部分が設けられる等速ジョイント。
  3. 請求項2において、高周波熱処理を施した前記球形内面が研削により仕上げられている等速ジョイント。
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