JP2012072865A - 固定式等速自在継手 - Google Patents

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Tomoshige Kobayashi
智茂 小林
Minoru Ishijima
実 石島
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Abstract

【課題】鍛造成形トラックと仕上げ加工トラックのボールとの安定した接触状況を確保することでより優れた耐久性を確保し、鍛造金型や製品の品質管理も従来と変わらず容易とするトラック形状を有する固定式等速自在継手を提供する。
【解決手段】外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝の少なくとも一方を、冷間鍛造仕上げにより成型する。トラック溝の横断面形状を、トラック溝底側をゴシックアーチ形状とし、トラック溝開口側を前記ゴシックアーチ形状よりも曲率半径が大きい単一アール形状とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、固定式等速自在継手に関し、特に、自動車のドライブシャフトやプロペラシャフト等に用いることが可能な固定式等速自在継手に関する。
固定式等速自在継手には、バーフィールド型(BJ)やアンダーカットフリー型(UJ)等の固定式等速自在継手がある。
バーフィールドの固定式等速自在継手は、内球面に複数のトラック溝が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材と、外球面に外側継手部材のトラック溝と対をなす複数のトラック溝が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材と、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外側継手部材の内球面と内側継手部材の外球面との間に介在してボールを保持するケージとを備えている。
このような固定式等速自在継手における外側継手部材及び内側継手部材は、以下の方法で製作される。まず、円柱状ビレットを熱間鍛造、温間鍛造または冷間鍛造で外側継手部材あるいは内側継手部材の概略形状に形成し、任意の形状に旋削加工を行う。その後に熱処理を施し、外球面、内球面とトラック溝を研削や焼入れ鋼切削などで仕上げ加工することにより製作している。
このように、鍛造、旋削および熱処理の後、トラック溝の仕上げ加工を行っていると、トラック溝の仕上げ加工に要する設備、工具などの費用が嵩むと共に、仕上げ加工に時間を要することや、材料の歩留まりも悪いという不都合がある。そこで、外側継手部材のトラック溝あるいは内側継手部材のトラック溝の少なくとも一方またはその両方を冷間鍛造仕上げにより形成する方法がある(特許文献1)。このように、冷間鍛造仕上げで形成したことにより、トラック溝の形成が冷間鍛造仕上げのみとなるので、従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工などの多くの機械加工を省略することができ、歩留まりが向上し、固定式等速自在継手の低コスト化を図ることができる。
特開2008-2624号公報
ところで、このような固定式等速自在継手のトラック溝の横断面形状は、トラック溝に対するボールの接触状態を安定化させるために、ボールとアンギュラ接触させる構造が望ましい。トラック溝の横断面形状は、研削や焼入れ鋼切削加工による仕上げ加工方法では、工具と加工方法から略楕円形状となるのに対し、冷間鍛造仕上げトラック溝の横断面形状は、鍛造の成型のし易さや品質管理の観点から、通常ゴシックアーチ形状としていた。
トルク負荷を受けた固定式等速自在継手の内部では、内側継手部材(外側継手部材)→ボール→外側継手部材(内側継手部材)と荷重が伝わり、内側継手部材と外側継手部材間のPCDスキマやトルクの大小により、ボールとトラックの接触点が球面部側に移動し(ボールがトラック斜面を乗りあがって)、接触角が変化する。
上記従来技術の冷間鍛造仕上げトラック溝(ゴシックアーチ形状)と加工トラック溝(略楕円形状)を比較すると、その形状差から接触点の移動距離(接触角度の変化量)が異なるため、外側継手部材と内側継手部材のトラックの加工方法が異なる場合など、ボールと外側継手部材及び内側継手部材トラックの接触角度が狙い値から外れ、耐久性にバラつきが生じる事が懸念される。
従来の鍛造成型トラックの横断面形状を図16に示し、仕上げ加工トラックの横断面形状を図17に示す。通常の鍛造成型のトラック溝横断面形状は、単純Rを垂直軸に対して投影した形となるため、トラック溝底2側に形成されるVC(Vertical Clearance)(トラック溝1の溝底2とボール3のこの溝底対応部3aとの間の寸法)を大きくすることが出来、VC測定による形状管理が容易となっている。しかしながら、仕上げ加工のトラック溝1の横断面形状は楕円形状であり、トラック溝底2側のVCが小さくなる。すなわち、鍛造成型トラックのVC量をVC1とし、仕上げ加工トラックのVC量をVC2とした場合、VC1>VC2となる。このため、仕上げ加工をしない鍛造仕上げのトラックに仕上げ加工のトラック形状を適用する場合、単純Rの場合より金型や鍛造品の形状管理がし難くなる。
本発明の課題は、鍛造成形トラックと仕上げ加工トラックのボールとの安定した接触状況を確保することでより優れた耐久性を確保し、鍛造金型や製品の品質管理も従来と変わらず容易とするトラック形状を有する固定式等速自在継手を提案する。
本発明の固定式等速自在継手は、内径面にトラック溝を形成した外側継手部材と、外径面にトラック溝を形成した内側継手部材と、外側継手部材のトラック溝とこれに対応する内側継手部材のトラック溝とが協働して形成されるトラックに配設されるトルク伝達ボールと、トルク伝達ボールを保持するケージとを備えた固定式等速自在継手であって、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝の少なくとも一方を、冷間鍛造仕上げにより成型し、その横断面形状を、トラック溝底側をゴシックアーチ形状とし、トラック溝開口側を前記ゴシックアーチ形状よりも曲率半径が大きい単一アール形状としたものである。
本発明の固定式等速自在継手は、トラック溝底付近を従来の鍛造仕上品と同様に単純アールのゴシックアーチ形状とし、球面に近い側(トラック溝開口側)をトラック溝底付近のゴシックアーチ形状よりも大きな曲率半径の単純アール形状とすることができる。これによって、管理上必要なトラック範囲をゴシックアーチ形状とし、機能上必要なトラック範囲を前記ゴシックアーチ形状よりも大きな曲率半径の単純アール形状とすることになる。
トラック溝の開角側(継手開口側)から継手奥側に向かって、ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ角度(繋ぎ位置)を徐々に小さくすることによって、継手奥側においても、接触楕円のはみ出しが発生しにくくなる。この場合、継手開口側であるトラック溝の開角側から継手奥側に向けて接触角が徐々に小さくなるように設定できる。
ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ位置を、ボール中心とトラック溝底中心とを結んだ直線を中心に、30°〜45°の範囲で溝開口側に位置するようにしたり、20°〜35°の範囲で継手奥側に位置するようにしたりできる。20°未満では、形状管理のためのVC量が不足し、また、45°を越えれば、45°を超える範囲のトラック面(範囲)が小さく、大きい単一アール形状とすることの影響が小さくなる(有利さが発揮されない)。
外側継手部材における内径面とトラック溝との境界部と、内側継手部材における外径面とトラック溝との境界部とにそれぞれトラックチャンファを形成するとともに、トラックチャンファのトラック溝側に、トラック溝と連結されるアール部を形成したものとすることができる。また、外側継手部材における内径面とトラック溝との境界部と、内側継手部材における外径面とトラック溝との境界部をアール状のトラックチャンファとすることができる。
さらに、外側継手部材の開口縁全周に沿って形成される入口チャンファと、外側継手部材における内径面とトラック溝との境界部のトラックチャンファと、入口チャンファとトラック溝との境界部のトラック入口チャンファとを冷間鍛造仕上げにより形成することができる。
外側継手部材の開口端面乃至開口縁全周に沿って形成される入口チャンファを冷間鍛造仕上げにより形成してもよい。また、外側継手部材のトラック溝とトラック入口チャンファとを同時冷間鍛造仕上げにより形成したり、外側継手部材のトラック溝とトラックチャンファ、及び内側継手部材のトラック溝とトラックチャンファを同時冷間鍛造仕上げによりそれぞれ形成したりすることができる。
固定式等速自在継手として、トラック溝底が円弧部のみであるバーフィールド型やトラック溝底が円弧部及び直線部とからなるアンダーカットフリー型の固定式等速自在継手であってもよい。
自動車の駆動軸用の固定式等速自在継手に用いたり、自動車のプロペラシャフト用の固定式等速自在継手に用いたりできる。
トルク伝達ボールが10個以下であるのが好ましい。
本発明の固定式等速自在継手では、機能上必要なトラック範囲を単一アール形状とし、管理上必要なトラック範囲をゴシックアーチ形状とすることになり、鍛造金型や製品の品質管理の容易さと、ボールとトラック溝の接触状態の安定化を両立させることが可能となる。
トラック溝の開角側(継手開口側)から継手奥側に向かって、ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ角度(繋ぎ位置)を徐々に小さくすることによって、トラック溝における継手奥側の浅い部位においても、接触楕円のはみ出しが発生し難くなり、より高い耐久性を確保することができる。
ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ位置を、ボール中心とトラック溝底中心とを結んだ直線を中心に、20°〜45°の範囲で溝奥側に位置するものでは、形状管理のためのVC量を十分確保でき、機能上必要なトラック面を十分確保できる。
外側継手部材の入口チャンファと、外側継手部材のトラックチャンファと、内側継手部材のトラックチャンファと、入口チャンファとトラック溝とのトラック入口チャンファ等を冷間鍛造仕上げすることによって、従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工等を省略することができる。これによって、歩留まりが向上し、固定式等速自在継手の製造コストの低減を図ることができる。
特に、外側継手部材のトラック溝とトラック入口チャンファとを同時冷間鍛造仕上げにより形成したり、外側継手部材のトラック溝とトラックチャンファ、内側継手部材のトラック溝とトラックチャンファを同時冷間鍛造仕上げにより形成したりすることによって生産性の向上を図ることができる。
トルク伝達ボールが10個以下であればよいので、設計自由度が大となって、設計性に優れる。また、種々のタイプの固定式等速自在継手に対応することができる。
本発明の第1の固定式等速自在継手の外側継手部材のトラック溝の断面図である。 前記外側継手部材のトラック溝の要部拡大断面図である。 前記固定式等速自在継手の内側継手部材のトラック溝の断面図である。 前記内側継手部材のトラック溝の要部拡大断面図である。 前記固定式等速自在継手の外側継手部材のトラック溝形状を示し、(a)は継手開口側のθ1が30〜45degの範囲の説明図であり、(b)は継手奥側のθ2が20〜35degの範囲の説明図である。 前記固定式等速自在継手の内側継手部材のトラック溝形状を示し、(a)は継手開口側のθ1が30〜45degの範囲の説明図であり、(b)は継手奥側のθ2が20〜35degの範囲の説明図である。 前記固定式等速自在継手の断面図である。 前記固定式等速自在継手の外側継手部材のトラック溝の簡略展開図である。 前記固定式等速自在継手の外側継手部材の半裁断面図である。 前記固定式等速自在継手の内側継手部材の半裁断面図である。 前記外側継手部材の繋ぎ角度を変化させていないときのトラック溝を示し、(a)は図9のA断面であり、(b)図9のB断面であり、(c)は図9のC断面である。 外側継手部材の繋ぎ角度を変化させたときのトラック溝を示し、(a)は図9のA断面であり、(b)は図9のB断面であり、(c)は図9のC断面である。 前記内側継手部材の繋ぎ角度を変化させていないときのトラック溝を示し、(a)は図10のA断面であり、(b)は図10のB断面であり、(c)は図10のC断面である。 内側継手部材の繋ぎ角度を変化させたときのトラック溝を示し、(a)は図10のA断面であり、(b)は図10のB断面であり、(c)は図10のC断面である。 本発明の第2の固定式等速自在継手の断面図である。 鍛造成型トラック溝の断面形状を示す断面図である。 仕上げ加工トラック溝の断面形状を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図7は本発明の固定式等速自在継手であるアンダーカットフリータイプの固定式等速自在継手を示している。この固定式等速自在継手は、内球面(内径面)11に複数のトラック溝12が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材13と、外球面(外径面)14に外側継手部材13のトラック溝12と対をなす複数のトラック溝15が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材16と、外側継手部材13のトラック溝12と内側継手部材16のトラック溝15との間に介在してトルクを伝達する複数のボール17と、外側継手部材13の内球面11と内側継手部材16の外球面14との間に介在してボール17を保持するケージ18とを備えている。ケージ18には、ボール17が収容されるポケット18aが周方向に沿って複数配設されている。
また、外側継手部材13のトラック溝12は、奥側が円弧部12aとされ、開口側が直線部12bとされる。内側継手部材16のトラック溝15は、奥側が直線部15aとされ、開口側が円弧部15bとされる。内側継手部材16のトラック溝15bの曲率中心O1および外側継手部材13のトラック溝12aの曲率中心O2は、継手中心Oに対して等距離F、Fだけ軸方向に逆向きにオフセットされている。
また、内側継手部材16はシャフト嵌入用孔部19が設けられ、このシャフト嵌入用孔部19の内径面に雌スプライン23が形成されている。内側継手部材16のシャフト嵌入用孔部19にシャフト25の端部雄スプライン25aが嵌入され、この端部雄スプライン25aが内側継手部材16の雌スプライン23に嵌合する。なお、端部雄スプライン25aの端部には周方向溝26が設けられ、この周方向溝26に止め輪27が装着されている。
外側継手部材13において、図8に示すように、開口縁全周に沿って形成される入口チャンファ(カップ入口チャンファ)30が形成され、内径面11とトラック溝12との境界部には、トラックチャンファ31が形成され、トラック溝12とカップ入口チャンファ30との境界部にはトラック入口チャンファ32が形成されている。
また、内側継手部材16において、外径面14とトラック溝15との境界部とにトラックチャンファ33(図3と図4等参照)が形成される。
外側継手部材13のトラック溝12の横断面形状を、図2に示すように、トラック溝底側をゴシックアーチ形状とし、トラック溝開口側を前記ゴシックアーチ形状よりも曲率半径が大きい単一アール形状としている。すなわち、外側継手部材13のトラック溝12は、トラック溝底側にアーチトラック形状部35を形成するとともに、トラック溝開口側の単一アールトラック形状部36,36を備えるものである。アーチトラック形状部35の曲率半径をR1とし、単一アールトラック形状部36の曲率半径をR2としたときに、R1<R2となる。なお、外側継手部材13における内径面11とトラック溝12との境界部のトラックチャンファ31は、図1と図2に示すように、テーパ状面31aからなり、このトラックチャンファ31aとトラック溝12とはアール部31bを解して連接されている。
内側継手部材16のトラック溝15の横断面形状も、図4に示すように、トラック溝底側をゴシックアーチ形状とし、トラック溝開口側をゴシックアーチ形状よりも曲率半径が大きい単一アール形状としている。すなわち、内側継手部材16のトラック溝15は、トラック溝底側にアーチトラック形状部38を形成するとともに、トラック溝開口側の単一アールトラック形状部39,39を備えるものである。アーチトラック形状部38の曲率半径をR1aとし、単一アールトラック形状部39の曲率半径をR2aとしたときに、R1a<R2aとなる。内側継手部材16における外径面14とトラック溝15との境界部のトラックチャンファ33は、図2と図3に示すように、テーパ状面33aからなり、このトラックチャンファ33aとトラック溝15とはアール部33bを介して連設されている。
ところで、アーチトラック形状部35(38)と単一アールトラック形状部36(39)との繋ぎ位置22,22aは、図5(a)(b)、図6(a)(b)に示すように、ボール中心Obとトラック溝底中心とを結んだ直線Lを中心に、θ(θ1、θ2)の範囲で溝開口側に位置する。すなわち、図1と図2に示すように、アーチトラック形状部35(38)は範囲H内に設けられ、単一アールトラック形状部36(39)は範囲H1内に設けられる。図5(a)及び図6(a)では、そのθをθ1(30°〜45°)とし、図5(b)では、そのθをθ2(20°〜35°)としている。図5(a)及び図6(a)は、継手開口側での繋ぎ位置22,22aを表しており、図5(b)及び図6(b)は、継手奥側での繋ぎ位置22,22aを表している。
外側継手部材13においては、トラック溝12、入口チャンファ(カップ入口チャンファ)30、トラックチャンファ31、及びトラック入口チャンファ32、開口端面13aが冷間鍛造仕上げにより形成される。特に、外側継手部材13のトラック溝12とトラック入口チャンファ32とを同時冷間鍛造仕上げにより形成し、外側継手部材13のトラック溝12とトラックチャンファ31を同時冷間鍛造仕上げにより形成する。
ところで、外側継手部材13の鍛造仕上げには、既設の製造装置(例えば、特開2009−185933号公報に開示された製造装置等)にて行うことができる。この場合、複数の分割パンチのトラック溝形成部の形状を、アーチトラック形状部35と単一アールトラック形状部36,36とを形成することができる形状に変更すればよい。
また、内側継手部材16においても、トラック溝15とトラックチャンファ33とは同時冷間鍛造仕上げにより形成する。内側継手部材16の鍛造仕上げには、既設の製造装置(例えば、特開2007−260698号公報に開示された製造装置等)にて行うことができる。この場合、ダイスのトラック溝形成部の形状を、アーチトラック形状部38と単一アールトラック形状部39,39とを形成することができる形状に変更すればよい。
本発明の固定式等速自在継手は、ラック溝底付近を従来の鍛造仕上品と同様に単純アールのゴシックアーチ形状とし、球面に近い側(トラック溝開口側)をトラック溝底付近のゴシックアーチ形状よりも大きな曲率半径の単純アール形状とすることができる。これによって、管理上必要なトラック範囲をゴシックアーチ形状とし、機能上必要なトラック範囲を前記ゴシックアーチ形状よりも大きな曲率半径の単純アール形状とすることになる。このため、鍛造金型や製品の品質管理の容易さと、ボール17とトラック溝12(15)の接触状態の安定化を両立させることが可能となる。
また、ゴシックアーチ形状と単一アーチ形状との繋ぎ位置を、ボール中心Obとトラック溝底中心とを結んだ直線を中心に、20°〜45°の範囲で溝開口側に位置する。このため、形状管理のためのVC(Vertical Clearance)量を、VC3(図1に示す溝底20と、これに対向するボールの対応部21との間のクリアランス)及びVC4(図3に示す溝底20aと、これに対向するボールの対応部21bとの間のクリアランス)に示すように、十分確保でき、機能上必要なトラック面を十分確保できる。
外側継手部材13の入口チャンファ30と、外側継手部材13のトラックチャンファ31と、外側継手部材13のトラック入口チャンファ32と、内側継手部材16のトラックチャンファ33等を冷間鍛造仕上げすることによって、従来の冷間鍛造後の切削加工や研削加工等を省略することができる。これによって、歩留まりが向上し、固定式等速自在継手の製造コストの低減を図ることができる。
特に、外側継手部材13のトラック溝12とトラック入口チャンファ32とを同時冷間鍛造仕上げにて形成したり、外側継手部材13のトラック溝12とトラックチャンファ31、及び内側継手部材16のトラック溝15とトラックチャンファ33を同時冷間鍛造仕上げにて形成したりすることによって生産性の向上を図ることができる。
トルク伝達ボールとしては10個以下であればよい。このため、設計自由度が大となって、設計性に優れる。
ところで、この種の固定式等速自在継手においては、図9に示すように、外側継手部材13のトラック溝12は、トラック開角側(継手開口側)から継手奥側に向かって徐々に浅くなる。このため、アーチトラック形状部35と単一アールトラック形状部36との繋ぎ位置22が、開角側から継手奥側に沿って同一位置であれば、継手奥側ほど繋ぎ位置22からトラックエッジE(トラック溝と内径面との境界線)(図11と図12参照)までの距離が、継手奥側ほど短くなる。
すなわち、図9のA断面(トラック溝12の中心O2とA部とを結ぶ直線に沿って切断されてなる断面)におけるθと、図9のB断面(トラック溝12の中心O2とB部とを結ぶ直線に沿って切断されてなる断面)におけるθと、図9のC断面(トラック溝12の中心O2とC部とを結ぶ直線に沿って切断されてなる断面)におけるθとが、図11(a)(b)(c)では同一である。
この場合、図11(a)に示すように、A断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離をLaとし、図11(b)に示すように、B断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離をLbとし、図11(c)に示すように、C断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離をLcとする。この場合、La<Lb<Lcとなる。このため、想定以上の大きなトルクを負荷した場合、接触楕円がはみ出して寿命が低下することがある。
そこで、本発明では、トラック溝の開角側(継手開口側)から継手奥側に向かって、前記ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ角度θ(θa、θb、θc)を図12に示すように、徐々に小さくしている。このように、設定すれば、A断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離がLa´(図12(a)参照)とし、B断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離がLb´(図12(b)参照)とし、C断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離がLc´(図12(c)参照)となる。この場合、La<La´となり、Lb<Lb´となり、Lc=Lc´となる。
また、図10に示すように、内側継手部材16のトラック溝15も、トラック開角側(継手開口側)から継手奥側に向かって徐々に浅くなる。このため、アーチトラック形状部38と単一アールトラック形状部39との繋ぎ位置22aが、開角側から継手奥側に沿って同一位置であれば、継手奥側ほど繋ぎ位置22aからトラックエッジE(トラック溝と内径面との境界線)(図13と図14参照)までの距離が、継手奥側ほど短くなる。
すなわち、図13のD断面(トラック溝15の中心O2とD部とを結ぶ直線に沿って切断されてなる断面)におけるθと、図9のE断面(トラック溝15の中心O2とE部とを結ぶ直線に沿って切断されてなる断面)におけるθと、図9のF断面(トラック溝12の中心O2とF部とを結ぶ直線に沿って切断されてなる断面)におけるθとが、図13(a)(b)(c)では同一である。
この場合、図13(a)に示すように、D断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離をLaとし、図13(b)に示すように、E断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離をLbとし、図13(c)に示すように、F断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離をLcとする。この場合、Ld<Le<Lfとなる。このため、想定以上の大きなトルクを負荷した場合、接触楕円がはみ出して寿命が低下することがある。
そこで、本発明では、トラック溝の開角側(継手開口側)から継手奥側に向かって、前記ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ角度θ(θd、θe、θf)を図14に示すように、徐々に小さくしている。このように、設定すれば、D断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離がLd´(図14(a)参照)とし、E断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離がLe´(図14(b)参照)とし、F断面での繋ぎ位置22からトラックエッジEまでの距離がLf´(図14(c)参照)となる。この場合、Ld<Ld´となり、Le<Le´となり、Lf=Lf´となる。
これによって、トラック溝における継手奥側の浅い部位においても、接触楕円のはみ出しが発生し難くなり、より高い耐久性を確保することができる。この場合、接触角として、継手開口側から継手奥側に沿って変化しないものであっても、継手開口側から継手奥側に沿って徐々に小さくなるものであってもよい。
次に、図15はバーフィールドタイプの固定式等速自在継手であって、この固定式等速自在継手は、内径面41に複数のトラック溝42が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材43と、外径面44に外側継手部材43のトラック溝42と対をなす複数のトラック溝45が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材46と、外側継手部材43のトラック溝42と内側継手部材46のトラック溝45とが協働して形成されるボールトラックにそれぞれ配されたトルク伝達ボール47と、外側継手部材43の内径面41と内側継手部材46の外径面44との間に介在してボール47を保持するケージ48とを備えている。
この場合も、トラック溝42、45は図1と図3に示すように、トラック溝底側にアーチトラック形状部35、38を形成するとともに、トラック溝開口側の単一アールトラック形状部36,36、39,39を備えるものである。しかも、トラック溝の開角側から継手奥側に向かって、前記ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ角度を徐々に小さくする。
さらには、外側継手部材43において、開口縁全周に沿って形成される入口チャンファ(カップ入口チャンファ)30が形成され、内径面41とトラック溝42との境界部には、トラックチャンファが形成され、トラック溝42とカップ入口チャンファ30との境界部にはトラック入口チャンファが形成されている。また、内側継手部材46において、外径面44とトラック溝45との境界部とにトラックチャンファが形成される。
この場合も、トラック溝42、入口チャンファ(カップ入口チャンファ)、トラックチャンファ、及びトラック入口チャンファ、外側継手部材43の開口端面43aが冷間鍛造仕上げにより形成される。特に、外側継手部材43のトラック溝42とトラック入口チャンファとを同時冷間鍛造仕上げにより形成し、外側継手部材43のトラック溝42とトラックチャンファ、内側継手部材46のトラック溝45とトラックチャンファを同時冷間鍛造仕上げにより形成する。
このようなバーフィールドタイプの固定式等速自在継手であっても、前記図7に示すアンダーカットフリータイプの固定式等速自在継手と同様の作用効果を奏する。このため、本発明の固定式等速自在継手は、自動車の駆動軸用の固定式等速自在継手に用いたり、自動車のプロペラシャフト用の固定式等速自在継手に用いたりできる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、外側継手部材及び内側継手部材の各トラック溝を冷間鍛造仕上げにて形成していたが、外側継手部材及び内側継手部材のいずれか一方のみのトラック溝を冷間鍛造仕上げにて形成したものであってもよい。チャンファのアール部の曲率半径としては、トラック溝と内径面(又は外径面)とが滑らかに連続するものであれば種々変更することができる。また、図7のθa、θb、θc等の変位量は、トラック溝における継手奥側の浅い部位においても接触楕円のはみ出しが発生しにくくなる範囲で種々変更できる。
11 内球面(内径面)
12 トラック溝
12a 円弧部
12b 直線部
13 外側継手部材
14 外球面(外径面)
15 トラック溝
15a 直線部
15b 円弧部
16 内側継手部材
17 ボール
18 ケージ
30 カップ入口チャンファ
31 トラックチャンファ
32 トラック入口チャンファ
33 トラックチャンファ
41 内径面
42 トラック溝
43 外側継手部材
44 外径面
45 トラック溝
46 内側継手部材
47 ボール
48 ケージ

Claims (16)

  1. 内径面にトラック溝を形成した外側継手部材と、外径面にトラック溝を形成した内側継手部材と、外側継手部材のトラック溝とこれに対応する内側継手部材のトラック溝とが協働して形成されるトラックに配設されるトルク伝達ボールと、トルク伝達ボールを保持するケージとを備えた固定式等速自在継手であって、
    外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝の少なくとも一方を、冷間鍛造仕上げにより成型し、その横断面形状を、トラック溝底側をゴシックアーチ形状とし、トラック溝開口側を前記ゴシックアーチ形状よりも曲率半径が大きい単一アール形状としたことを特徴とする固定式等速自在継手。
  2. トラック溝の開角側から継手奥側に向かって、前記ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ角度を徐々に小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の固定式等速自在継手。
  3. 継手開口側であるトラック溝の開角側から継手奥側に向けて接触角が徐々に小さくなる
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定式等速自在継手。
  4. ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ位置を、ボール中心とトラック溝底中心とを結んだ直線を中心に、30°〜45°の範囲で溝開口側に位置することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  5. ゴシックアーチ形状と単一アール形状との繋ぎ位置を、ボール中心とトラック溝底中心とを結んだ直線を中心に、20°〜35°の範囲で溝奥側に位置することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  6. 外側継手部材における内径面とトラック溝との境界部と、内側継手部材における外径面とトラック溝との境界部とにそれぞれトラックチャンファを形成するとともに、トラックチャンファのトラック溝側に、トラック溝と連結されるアール部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  7. 外側継手部材における内径面とトラック溝との境界部と、内側継手部材における外径面とトラック溝との境界部をアール状のトラックチャンファとしたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  8. 外側継手部材の開口縁全周に沿って形成される入口チャンファと、外側継手部材における内径面とトラック溝との境界部のトラックチャンファと、入口チャンファとトラック溝との境界部のトラック入口チャンファとを冷間鍛造仕上げにより形成したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  9. 外側継手部材の開口端面乃至開口縁全周に沿って形成される入口チャンファを冷間鍛造仕上げにより形成したことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  10. 外側継手部材のトラック溝とトラック入口チャンファとを同時冷間鍛造仕上げにより形成したことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  11. 外側継手部材のトラック溝とトラックチャンファ、及び内側継手部材のトラック溝とトラックチャンファを同時冷間鍛造仕上げによりそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  12. トラック溝底が円弧部のみであることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  13. トラック溝底が円弧部及び直線部とからなることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  14. 自動車の駆動軸用固定式等速自在継手に用いたことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の固定式等速自在継手。
  15. 自動車のプロペラシャフト用固定式等速自在継手に用いたことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の固定式等速自在継手。
  16. トルク伝達ボールが10個以下であることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
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