JP2013221190A - 脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板 - Google Patents

脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP2013221190A
JP2013221190A JP2012094274A JP2012094274A JP2013221190A JP 2013221190 A JP2013221190 A JP 2013221190A JP 2012094274 A JP2012094274 A JP 2012094274A JP 2012094274 A JP2012094274 A JP 2012094274A JP 2013221190 A JP2013221190 A JP 2013221190A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel plate
thick steel
strength thick
crack propagation
plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012094274A
Other languages
English (en)
Inventor
Tadashi Ishikawa
忠 石川
Yuji Funatsu
裕二 船津
Jun Otani
潤 大谷
Hiroyuki Shirahata
浩幸 白幡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp filed Critical Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority to JP2012094274A priority Critical patent/JP2013221190A/ja
Publication of JP2013221190A publication Critical patent/JP2013221190A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】溶接熱影響部靭性の劣化がなく、かつ、機械特性の異方性がない、脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.001〜0.10%、Ti:0.005〜0.020%、Ni:0.15〜2.00%、N:0.001〜0.008%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる高強度厚鋼板において、(x)鋼板のミクロ組織が、ベイナイトを母相とするフェライト及び/又はパーライト組織であり、かつ、(y)鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域では、(y1)結晶粒の平均円相当径が15μm以下であり、かつ、(y2)粒径が95%最大値を超える結晶粒の硬さが、該結晶粒が存在する板厚深さにおける平均硬さ以下であり、(z)上記領域以外の板厚中心部を含む領域では、結晶粒の平均粒径が40μm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板に関する。
造船、建築、タンク、海洋構造物、ラインパイプなどの構造物に用いる厚鋼板には、構造物の脆性破壊を防止するため、脆性破壊の原因となる亀裂の伝播を抑止する能力である脆性亀裂伝播停止性能(以下「アレスト性能」ということがある。)が求められる。
近年、構造物の大型化に伴い、降伏応力が390〜500MPa、板厚40〜100mmの高強度厚鋼板が多用されている。しかし、鋼板のアレスト性能は、一般に、強度及び板厚とは相反する傾向にあるので、高強度厚鋼板のアレスト性能を向上させることが望まれている。
厚鋼板のアレスト性能を向上させる方法として、例えば、結晶粒径を制御する方法(例えば、特許文献1〜3、参照。)、脆化第二相を制御する方法(例えば、特許文献4、参照。)、及び、集合組織を制御する方法(例えば、特許文献5、参照。)が知られている。
結晶粒径を制御する方法は、フェライトを母相とし、このフェライトを細粒化して、アレスト性能を向上させるものである。脆化第二相を制御する方法は、母相となるフェライト中に微細な脆化第二相(例えば、マルテンサイト)を分散させて、脆性亀裂先端部において脆化第二相に微小亀裂を発生させることにより、亀裂先端部の応力状態を緩和するものである。
集合組織を制御する方法は、極低炭素(C<0.003%)のベイナイト単相鋼において、圧延面と平行な{211}面の集合組織を発達させるものである。
その他、特許文献6に記載の高強度厚鋼板は、鋼板表層部の組織を微細化して延性破壊(以下「シアリップ」ということがある。)領域を形成して、アレスト性能を向上させたものである。また、特許文献7に記載の高強度厚鋼板は、鋼板の板厚方向の3つの領域で、それぞれ集合組織の形態を制御して、アレスト性能を向上させたものである。
特開昭61−235534号公報 特開2003−221619号公報 特開平05−148542号公報 特開昭59−047323号公報 特開2002−241891号公報 特許第4058097号公報 特開2008−169467 号公報
しかし、高強度厚鋼板のアレスト性能の向上を図る上記従来方法には、次の課題がある。特許文献1〜3に記載の結晶粒径を制御する方法においては、軟質のフェライトを母相にしているので、高強度で板厚の厚い鋼板を得ることが困難である。
特許文献4に記載の脆化第二相を制御する方法においては、フェライト中にマルテンサイトが分散しているので、耐脆性亀裂発生特性が著しく劣化してしまう。さらに、フェライトを母相としているので、同様に、高強度で板厚の厚い鋼板を得ることが困難である。
特許文献5に記載の集合組織を制御する方法においては、組織を極低炭素のベイナイト単相にして、板厚方向に均一な集合組織を発達させているので、アレスト性能を飛躍的に向上させることができない。また、極低炭素鋼を得るための製鋼コストが極めて大きい。
特許文献6に記載の高強度厚鋼板においては、優れたアレスト性能を安定的に確保することができない。この理由については後述する。特許文献7に記載の高強度厚鋼板においては、鋼板の板厚方向において集合組織の形態が異なるので、溶接継手部の欠陥検査などで用いる超音波検査で機械特性の異方性を検出し、必要な補正をしなければならず、構造物への適用の点で課題が残る。
本発明は、従来方法における上記課題に鑑み、溶接熱影響部靭性(以下「HAZ靭性」ということがある。)の劣化がなく、かつ、機械特性の異方性がない、アレスト性能に優れた高強度厚鋼板を、低コストで提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成する手法について鋭意研究した。その結果、ミクロ組織を、ベイナイトを母相とするフェライト及び/又はパーライト組織とし、所要の機械的特性を確保し、かつ、鋼板表層部における結晶粒の粒径と硬さを所要の範囲に制御すれば、アレスト性能が顕著に向上することが判明した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.10%、Ti:0.005〜0.020%、Ni:0.15〜2.00%、N:0.001〜0.008%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる高強度厚鋼板において、
(x)鋼板のミクロ組織が、ベイナイトを母相とするフェライト及び/又はパーライト組織であり、かつ、
(y)鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域では、
(y1)結晶粒の平均円相当径が15μm以下であり、かつ
(y2)粒径が95%最大値を超える結晶粒の硬さが、該結晶粒が存在する板厚深さにお ける平均硬さ以下であり、
(z)上記領域以外の板厚中心部を含む領域では、結晶粒の平均粒径が40μm以下である
ことを特徴とする脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
(2)前記鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域の結晶粒の結晶方位差が15°以上であることを特徴とする前記(1)に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
(3)前記(1)又は(2)に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板において、
(y3)上記鋼板の板厚Th(mm)、板厚中央部のシャルピー破面遷移温度vTrs(℃)、及び、鋼板面のNDT温度NDT(℃)が、下記式(1)を満たす
ことを特徴とする脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
NDT(℃)≦A1−C・Th−D・vTrs ・・・(1)
1、C、D:実験的に定まる係数で、
0≦A1≦16.0
1.5≦C≦3.0
0.5≦D≦1.4
(4)前記式(1)において、A1=6.032、C=1.994、D=0.7525であることを特徴とする前記(3)に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
(5)前記(1)又は(2)に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板において、
(y4)上記鋼板の板厚Th(mm)、板厚中央部のシャルピー破面遷移温度vTrs(℃)、鋼板面のNDT温度NDT(℃)、及び、設計温度Te(℃)が、下記式(2)を満たす
ことを特徴とする脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
NDT(℃)≦A2+B・Te−C・Th−D・vTrs ・・・(2)
2、B、C、D:実験的に定まる係数で、
12.5≦A2≦37.5
1.6≦B≦2.5
1.5≦C≦3.0
0.5≦D≦1.4
(6)前記式(2)において、A2=24.69、B=1.865、C=1.994、D=0.7525であることを特徴とする前記(5)に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
(7)前記鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域では、圧延方向と垂直な面に対し±15°をなす{100}面が、面積率で30%以下存在することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
(8)前記鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域以外の板厚中心部を含む領域では、圧延方向と垂直な面に対し±15°をなす{100}面が、面積率で15%以下存在することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
(9)前記高強度厚鋼板の板厚が40mm以上であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
(10)前記高強度厚鋼板の降伏応力が390MPa以上であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
(11)前記高強度厚鋼板が、さらに、質量%で、Cu:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.02〜0.15%、及び、B:0.0003〜0.003%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
(12)前記高強度厚鋼板が、さらに、質量%で、Ca:0.0003〜0.005%、Mg:0.0003〜0.005%、及び、REM:0.0003〜0.005%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれかに記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
本発明によれば、HAZ靭性の劣化がなく、かつ、機械特性の異方性がない、アレスト性能に優れた高強度厚鋼板を低コストで提供することができる。
アレスト性能が目標(6000N/mm1.5以上)に達している鋼板の表面から板厚方向に板厚の5%までの領域における結晶粒径分布と結晶粒径の累積分布を示す図である。 アレスト性能が目標(6000N/mm1.5以上)に達していない鋼板の表面から板厚方向に板厚の5%までの領域における結晶粒径分布と結晶粒径の累積分布を示す図である。 アレスト性能が目標(6000N/mm1.5以上)に達していない別の鋼板の表面から板厚方向に板厚の5%までの領域における結晶粒径分布と結晶粒径の累積分布を示す図である。 厚鋼板の表面から板厚方向に板厚の5%までの領域における95%最大値の粒径と、鋼板のアレスト性能の関係を示す図である。 粒径が95%最大値を超える結晶粒の硬さの、該結晶粒が存在する板厚深さにおける平均硬さに対する比と、鋼板のアレスト性能の関係を示す図である。
本発明の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板(以下「本発明鋼板」ということがある。)は、ミクロ組織を、ベイナイトを母相とするフェライト及び/又はパーライト組織とし、所要の機械的特性を確保し、かつ、鋼板表層部における結晶粒の粒径と硬さを制御して、アレスト性能を向上させることを基本思想とするものである。
ベイナイトを母相とする理由は、板厚が厚く強度が高い鋼板とするためであり、フェライトが母相では、そのような鋼板とすることが困難であるからである。所望の板厚、強度の鋼板が得ることができれば、第二相としてフェライト及び/又はパーライトとすることが可能である。
具体的には、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.10%、Ti:0.005〜0.020%、Ni:0.15〜2.00%、N:0.001〜0.008%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる高強度厚鋼板において、
(x)鋼板のミクロ組織が、ベイナイトを母相とするフェライト及び/又はパーライト組織であり、かつ、
(y)鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域では、
(y1)結晶粒の平均円相当径が15μm以下であり、かつ
(y2)粒径が95%最大値を超える結晶粒の硬さが、該結晶粒が存在する板厚深さにお ける平均硬さ以下であり、
(z)上記領域以外の板厚中心部を含む領域では、結晶粒の平均粒径が40μm以下である
ことを特徴とする。
また、本発明鋼板は、さらに、
(y3)上記鋼板の板厚Th(mm)、板厚中央部のシャルピー破面遷移温度vTrs(℃) 、及び、鋼板面のNDT温度NDT(℃)が、下記式(1)を満たす、又は、
(y4)上記鋼板の板厚Th(mm)、板厚中央部のシャルピー破面遷移温度vTrs(℃) 、鋼板面のNDT温度NDT(℃)、及び、設計温度Te(℃)が、下記式(2)を満たす
ことを特徴とする。
NDT(℃)≦A2−C・Th−D・vTrs ・・・(1)
1、C、D:実験的に定まる係数
NDT(℃)≦A1+B・Te−C・Th−D・vTrs ・・・(2)
2、B、C、D:実験的に定まる係数
以下、本発明鋼板について説明する。
まず、本発明鋼板の成分組成を限定する理由について説明する。なお、%は質量%を意味する。
Cは、強度と靭性を確保する元素である。添加効果を得るため、0.03%以上を添加する。0.15%を超えると、良好なHAZ靭性を確保するのが難しくなるので、上限を0.15%とする。
Siは、脱酸元素及び強化元素として有効な元素である。添加効果を得るため、0.1%以上を添加する。0.5%を超えると、HAZ靭性が劣化するので、上限を0.5%とする。
Mnは、強度と靭性を経済的に確保する元素である。添加効果を得るため、0.5%以上を添加する。2.0%を超えると、中心偏析が顕著となり、偏析部分とHAZの靭性が劣化するので、上限を2.0%とする。
Pは、不純物元素であり、HAZ靭性を安定的に確保するため、0.02%以下に低減する。好ましくは0.013%以下である。
Sも、不純物元素であり、鋼板の機械特性及びHAZ靭性を安定的に確保するため、0.01%以下に低減する。
Alは、脱酸を担い、不純物元素のOを低減する元素である。MnやSiも脱酸に寄与するが、Mn、Siが添加されている場合でも、0.001%以上を添加する。0.10%を超えると、アルミナ系の粗大酸化物や、そのクラスターが生成し、鋼板の機械特性及びHAZ靭性が劣化するので、上限を0.10%とする。
Tiは、本発明鋼板において重要な元素である。TiNを形成し、鋼片の加熱時にオーステナイト粒径が大きくなることを抑制する元素である。オーステナイト粒径が大きくなると、変態後のベイナイトの粒径も大きくなるので、所望のベイナイト粒径を得るために、0.005%以上を添加する。0.020%を超えると、TiCが生成してHAZ靭性が低下するので、上限を0.020%とする。
Niは、本発明鋼板において重要な元素である。Ni量を調整し、かつ、鋼板冷却過程における冷却速度を制御することにより、ベイナイトのサブユニット、即ち、結晶方位差が15°以上の界面を粒界と定義した場合の結晶粒を微細化することができる。この結晶粒微細化効果を得るため、0.15%以上を添加する。Niは高価な元素であり、過剰添加はコストの上昇を招き、また、添加効果が飽和するので、上限を2.00%とする。
Nは、本発明鋼板において重要な元素である。TiNを形成するため、0.001%以上を添加する。Nの過剰添加は、鋼板の脆化を招くので、上限を0.008%とする。好ましくは0.003〜0.006%である。
本発明鋼板は、上記元素の他に、強度及び靭性を向上させるため、質量%で、Cu:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.02〜0.15%、B:0.0003〜0.003%の1種又は2種以上を含有してもよい。ただし、上限を超えると、HAZ靭性や溶接性が低下する。
さらに、本発明鋼板は、上記添加元素の他に、質量%で、Ca:0.0003〜0.005%、Mg:0.0003〜0.005%、REM:0.0003〜0.005%の1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素の添加により、HAZ靭性が向上するが、上限を超えると、粗大な介在物が生成し、逆にHAZ靭性が低下する。
以下、本発明鋼板の要件について説明する。
本発明鋼板の要件(x)の技術的意義について説明する。ミクロ組織の母相がフェライトであると、所要の強度を確保することが難しい。本発明鋼板では、所要の強度を確保するため、ミクロ組織を、ベイナイトを母相とする組織とする。そして、ミクロ組織の第二相を、フェライト及び/又はパーライトとすることで、所要の機械特性を確保する。
次に、本発明鋼板の要件(y1)の技術的意義について説明する。
一般に、ベイナイトの粒径は、ベイナイトに変態する前のオーステナイトの粒径に支配される。それ故、ベイナイトの粒径を細粒化することは難しいが、特許文献6には、Ni添加量を多くすると結晶粒が微細化し、さらに、鋼板の冷却速度を速くすると結晶粒が微細化することが開示されている(特許文献6の図1、参照)。
板厚40mm以上の鋼板を冷却する場合、通常、鋼板面から板厚方向に板厚の10%の領域(以下「鋼板表裏層部」ということがある。)では、冷却速度が約30℃/秒であり、鋼板表裏層部以外の板厚中心部を含む領域(以下「鋼板中心部」ということがある。)では、冷却速度が約5℃/秒である。
このような厚鋼板の冷却態様において、Ni量が0.15質量%以上であれば、鋼板表裏層部の結晶粒径は15μm以下となり、鋼板中心部の結晶粒径は40μm以下となる(特許文献6の図1、参照)。
特許文献6には、結晶粒径が、鋼板表裏層部で15μm以下、鋼板中心部で40μm以下の厚鋼板は、−10℃におけるKcaが6000N/mm1.5以上の高アレスト性能を示すことが開示されているが、本発明者らの調査によれば、結晶粒径が上記条件を満たしても、目標(6000N/mm1.5以上)のアレスト性能が得られない場合がある。
即ち、前述したように、特許文献6に記載の高強度厚鋼板においては、優れたアレスト性能を安定して確保することが難しい。
本発明者らは、目標(6000N/mm1.5以上)のアレスト性能が得られない原因を解明するため、アレスト性能が目標に達している鋼板の脆性亀裂伝播破面と、アレスト性能が目標に達していない鋼板の脆性亀裂伝播破面を詳細に観察した。その結果、アレスト性能が目標に達していない鋼板では、鋼板面から板厚方向に板厚10%までの領域の結晶粒の平均粒径が15μm以下であっても、シアリップが形成され難いことが判明した。
即ち、アレスト性能が目標に達している鋼板と、アレスト性能が目標に達していない鋼板においては、シアリップの形成態様が実質的に異なることが判明した。
さらに、シアリップの形成が始まる領域の破面を詳細に観察した結果、シアリップには、比較的粗大な壁開破面が存在し、その破面は、粗大なフェライト粒と対応していることが判明した。また、その粗大な壁開破面は、鋼板表層部に近いほど、多数存在していることが判明した。
そこで、本発明者らは、鋼板の板厚方向において、鋼板の表層部から中心部にかけてミクロ組織を詳細に観察した。その結果、鋼板表層部に近いほど、粗大なフェライトが、僅かの量ではあるが存在していることが判明した。
破壊現象は、機械特性が最も弱い領域の組織態様に支配されるので、平均結晶粒径が15μm以下であっても、粒径が15μmを超える粗大フェライトが僅かでも存在すれば、その粗大フェライトに、鋼板の破壊現象が支配されると考えられる。
ミクロ組織の観察で、鋼板表層部に粗大フェライトが多く存在していることが解ったので、本発明者らは、粗大フェライトの存在がアレスト性能に及ぼす影響を調査するため、鋼板表層部を、研削する厚さを変えて研削し、ESSO試験を行った。
その結果、鋼板の表・裏層部から板厚方向に、それぞれ板厚の5%に相当する厚さを研削すると、目標のアレスト性能(6000N/mm1.5以上)を確保できることが判明した。一方、アレスト性能を確保できることを確認した鋼板(図1に示した「鋼板1」)の表・裏層部から板厚方向に、それぞれ板厚の5%に相当する厚さを研削すると、逆に、目標のアレスト性能を確保することができなかった。
即ち、鋼板の表・裏層部の板厚方向に、それぞれ板厚の5%に相当する領域が、鋼板全体のアレスト性能を決定する重要な領域であることが判明した。このことは、本発明の基礎をなす知見である。
そこで、本発明者らは、上記知見を踏まえ、鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域における結晶粒径分布を調査した。その結果の一部を図1〜3に示す。
図1に、アレスト性能が目標(6000N/mm1.5以上)に達している鋼板(以下「鋼板1」ということがある。)の表面から板厚方向に板厚の5%までの領域における結晶粒径分布と結晶粒径の累積分布を示す。
図2に、アレスト性能が目標(6000N/mm1.5以上)に達していない鋼板(以下「鋼板2」ということがある。)の表面から板厚方向に板厚の5%までの領域における結晶粒径分布と結晶粒径の累積分布を示す。
図3に、アレスト性能が目標(6000N/mm1.5以上)に達していない別の鋼板(以下「鋼板3」ということがある。)の表面から板厚方向に板厚の5%までの領域における結晶粒径分布と結晶粒径の累積分布を示す。
なお、鋼板1〜3は、成分組成が、質量%で、C:0.08%、Si:0.2%、Mn:1.1%、P:0.005%、S:0.005%、Al:0.01%、Ti:0.008%、Ni:1.0%、N:0.002%、Nb:0.015%、B:0.001%、Ca:0.001%であり、板厚が70mmの厚鋼板である。
鋼板1〜3のミクロ組織の結晶粒径分布は、次のように求めた。鋼板の板厚方向に、鋼板表面から0.5mmの深さ位置、板厚の2.5%の深さ位置、及び、板厚の5%の深さ位置において、それぞれ10視野につき粒径を測定して求めた。
一般に、結晶粒径が微細であると、次の理由でアレスト性能が向上する。隣接する結晶粒の結晶方位が異なると、亀裂が隣接する結晶粒に伝播するとき、亀裂の伝播方向が変化する。亀裂の伝播方向の変化により、ミクロ組織内に未破断領域が生じ、亀裂伝播応力は分散されて、亀裂閉口応力となる。その結果、ミクロ組織内で亀裂を伝播させる駆動力が低下して、アレスト性能が向上する。
また、ミクロ組織内の未破断領域が最終的に延性破壊する際、脆性破壊に要するエネルギーを吸収するので、アレスト性能が向上する。
結晶粒が微細で、粗大結晶粒が存在しない鋼板の表層部では、シアリップが形成され易いので、脆性破壊が生じ難い。鋼板表層部の結晶粒を細粒化し、かつ、粗大結晶粒の存在率を小さくすれば、シアリップ領域の形成を促進できる。
シアリップが形成される前の未破断領域では、亀裂伝播応力が分散して亀裂閉口応力となり、また、シアリップの形成により、脆性破壊に要するエネルギーが吸収されるので、鋼板のアレスト性能が著しく向上する。
以上の知見に基づいて、本発明鋼板においては、(y1)鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域では、結晶粒の平均円相当径が15μm以下であるとする。
次に、本発明鋼板の要件(y2)の技術的意義について説明する。
鋼板1〜3の平均結晶粒径は15μm以下であるが、図2及び図3に示す結晶粒径分布によれば、アレスト性能が目標(6000N/mm1.5以上)に達していない鋼板2及び3においては、鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域に、粒径が大きい結晶粒が多数存在していることが解る。
図4に示すように、結晶粒径が、95%最大値の17μmを超えると、アレスト性能は目標以下に低下する。しかし、鋼板の表・裏面から板厚方向に板厚の5%までの領域において、粒径が17μmを超える結晶粒は存在する可能性があるので、本発明者らは、粒径が17μmを超える結晶粒が何故、急激にアレスト性能に及ぼす影響を及ぼすかについて検討した。
鋼板組織を微細化するために、Ar3変態点直上の温度域で、できるだけ大圧下圧延をすることが望ましいが、鋼板の表・裏層部は温度が低くなり易いので、局所的にフェライト変態が開始してしまうことがあり、生成したフェライトが、大圧下圧延により塑性歪を受けることがある。その塑性歪が、生成したフェライトの粒成長エネルギーとして作用し、周辺の平均組織よりも著しく粒径が大きくなる現象を回避しなければならない。
歪を受けた結晶粒は、粒成長して粗大になりきらずとも、既に、加工歪を受けて脆化しているので、へき開破壊し易く、シアリップの形成を阻害する支配要因である。そこで、周辺の粒径よりも粗大化している結晶粒(ここでは、累積頻度分布で95%最大値を示す結晶粒)に注目し、そのミクロ的なビッカース硬さを測定することにより、加工歪を受けているかを判断することができる。
即ち、ミクロ的なビッカース硬さは、ホールペッチの関係に従い、粒径が大きいほど低下するので、95%最大値を示す結晶のミクロ硬さは、平均硬さ(50%最大値を示す結晶のミクロ硬さに相当)よりも低いはずである。しかし、加工歪を受けていれば、硬さが上昇するので、加工歪の有無を判定することができる。
そこで、本発明者らは、鋼板裏面から板厚方向に板厚の5%までの領域において、板厚方向に沿って、結晶粒のビッカース硬さ(ビッカース1kgfのHv)を測定した。
粒径が95%最大値を超える結晶粒の硬さは、該結晶粒の存在する板厚方向において、同じ深さ位置で10点を測定し、その平均値を算出した。粒径が95%最大値を超える結晶粒は、400倍の光学顕微鏡で確認した。同じ深さ位置での平均硬さは、ステージをシフトさせて測定して算出した。
図5に、粒径が95%最大値を超える結晶粒の硬さの、該結晶粒が存在する板厚深さにおける平均硬さに対する比と、鋼板のアレスト性能の関係を示す。図5から、(粒径が95%最大値を超える結晶粒の硬さHv)/(該結晶粒が存在する板厚深さにおける平均硬さHv)が1以下であれば、アレスト性能が目標に達することが解る。このことも、本発明者らが新規に見いだした知見である。
以上の知見に基づき、本発明鋼板においては、粒径が95%最大値を超える結晶粒の硬さは、該結晶粒が存在する板厚深さにおける平均硬さ以下とする(要件(y2))。
次に、本発明鋼板の要件(y3)及び要件(y4)の技術的意義について説明する。
本発明者らは、本発明鋼板の脆性亀裂伝播停止性能に加え、基本的機械特性である耐衝撃性能について調査した。その結果、本発明鋼板は、鋼板の板厚Th(mm)、板厚中央部のシャルピー破面遷移温度vTrs(℃)、及び、鋼板面のNDT温度NDT(℃)が、下記式(1)を満たすことが判明した。
NDT(℃)≦A1−C・Th−D・vTrs ・・・(1)
1、C、Dは、実験的に定まる係数で、0≦A1≦16、1.5≦C≦3.0、0.5≦D≦1.4である。好ましくは、A1=6.032、C=1.994、D=0.7525である。
鋼板の板厚Th(mm)、板厚中央部のシャルピー破面遷移温度vTrs(℃)、及び、鋼板表面から採取した落重試験片により求めたNDT温度NDT(℃)に、設計温度Te(℃)を加えると、下記式(2)を満たすことが判明した。
NDT(℃)≦A2+B・Te−C・Th−D・vTrs ・・・(2)
2、B、C、Dは、実験的に定まる係数で、12.5≦A2≦37.5、1.6≦B≦2.5、1.5≦C≦3.0、0.5≦D≦1.4である。好ましくは、A2=24.69、B=1.865、C=1.994、D=0.7525である。
本発明者らの調査によれば、隣接する結晶粒の結晶方位差が15°未満であると、結晶粒界は脆性亀裂の伝播を阻止する障害となり難い。それ故、鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域において、隣接する結晶粒の結晶方位差は15°以上が好ましい。
それ故、本発明鋼板において、目標とするアレスト性能を確実に確保するため、鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域において、粒径17μm以下の結晶粒と、該結晶粒に隣接する結晶粒との結晶方位差を15°以上とすることが好ましい。
鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域以外の板厚中心部を含む領域の結晶粒については、平均結晶径を40μm以下とする。平均結晶粒が40μmを超えると、上記板厚中心部を含む領域の靭性が低下して、該領域内における脆性亀裂の伝播が支配的となる。その結果、鋼板表層部に対する破壊駆動力が大きくなって、鋼板表層部にシアリップが形成され難くなる。
鋼板が外部応力を受けた際に発生する脆性亀裂は、{100}面の壁開面に沿って伝播するので、外部応力と垂直な面に{100}面が発達していれば、結晶粒径制御によるアレスト性能向上効果が減少することが判明した。
厚鋼板は、通常、圧延方法に主応力が作用するように鋼構造物に組み込まれることから、鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域において、圧延方向と垂直な面に対し±15°の角度をなす{100}面の面積率を30%以下に抑制すれば、結晶粒径制御によるアレスト性能向上効果は阻害されず、アレスト性能は充分に目標を達成することが判明した。
また、上記領域以外の板厚中心部を含む領域において、上記{100}面の面積率を15%以下に抑制すれば、結晶粒径制御によるアレスト性能向上効果は阻害されず、アレスト性能は充分に目標を達成することが判明した。
{100}面の面積率が、鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域において30%以下、及び/又は、該領域以外の板厚中心部を含む領域において15%以下を満足する鋼板は、−10℃におけるKcaが7000N/mm1.5と高いアレスト性能を示した。また、鋼板の破面に、鋼板表層部において、板厚の約10%のシアリップが観察された。
{100}面の面積率が小さいほど、アレスト性能は向上するが、極端に小さいと、他の組織が発達しアレスト性能に異方性が生じるので、{100}面の面積率は、鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域においては5%以上、該領域以外の板厚中心部を含む領域においては3%以上が好ましい。
本発明鋼板のアレスト性能向上効果は、降伏応力が390〜500MPaの鋼板、及び、板厚が40〜100mmの鋼板において、顕著に発現する。降伏応力が390MPa未満、又は、500MPa超であると、所望の組織及び結晶粒径を得ることが困難である。また、板厚が40mm未満、又は、100mm超であると、同様に、所望の組織及び結晶粒径を得ることが困難である。
次に、本発明鋼板の製造方法について説明する。
上記成分組成の溶鋼を、転炉製鋼法等の公知の方法で製造し、連続鋳造等の公知の方法で鋳造する。鋳造時の冷却途中又は冷却後に鋳片を950〜1200℃に加熱し、組織をオーステナイト単相とする。950℃未満では、溶体化が不十分であり、1200℃超では、オーステナイト粒が粗大化して、圧延後に微細組織が得られず靭性が低下する。
加熱した鋳片に、オーステナイトの細粒化を図るため、900℃以上で再結晶圧延を施してもよい。950〜1200℃に加熱した鋳片を、Ar3〜Ar3+100℃、累積圧下率30%以上で熱間圧延し、Ar3−20℃以上で仕上げ圧延を終了し冷却する。このとき、670℃以上850℃以下の温度で累積圧下率30%以上の圧延を行い、650℃以上の温度から冷却を開始することが望ましい。冷却速度は、鋼板面において25℃/秒以上、鋼板中心部において5℃/秒以上が望ましい。
なお、自己焼戻を行うことを目的として、水冷を、500℃以下から空冷に切り替えてもよい。また、必要に応じて、冷却後に、300〜650℃で焼戻しを行い、鋼板の強度と靭性を調節してもよい。
本発明鋼板の製造方法においては、極低温圧延や、複雑な熱処理を必要としないので、本発明鋼板を、高い生産性で、かつ、低コストで製造することができる。また、本発明鋼板の製造方法においては、鋼板内の残留応力を低減できるので、形状矯正に起因したコストの増加を抑制することができる。
本発明鋼板の製造方法により、鋼板表層部で、平均粒径15μm以下、鋼板中央部で、平均粒径40μm以下を達成することができるが、95%最大値(粒径)の結晶粒の硬さを上昇させないようにするためには、圧延終了温度を厳格に管理する必要がある。
鋼板面の圧延温度は、圧延中に低下し易い。圧延温度が、フェライト変態温度のAr3以下になると、局所的にフェライトが生成する。生成したフェライトが圧延により歪を受けて、フェライトが粒成長するが、歪エネルギーが十分に消費されないと硬さは上昇したまま、大きな値となる。
圧延温度がAr3より僅かに低下しても、与える歪が小さければ、フェライトの粒成長は顕著でなく、硬さの上昇も抑制される。圧延終了温度がAr3−20℃になる場合は、Ar3以下での圧下率を10%以下とすることが必要である。
所要のNiを含有する鋼板のベイナイト主体のミクロ組織の結晶粒径を微細化し、さらに、必要に応じ、圧延方向と垂直な面に±15°で配向した{100}面の面積率を低減することにより、本発明鋼板において、アレスト性能を顕著に向上させることができる。
そして、降伏応力が390〜500MPa、板厚が40〜100mmの厚鋼板において、アレスト性能を示す−10℃におけるKcaを6000N/mm1.5以上にすることができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
表1に成分組成を示す鋼を通常の方法で鋳片とした。この鋳片を表2に示す条件で、降伏強度390〜500MPa、板厚50〜100mmの厚鋼板を製造した。この厚鋼板のミクロ組織を観察するとともに、アレスト性能を調査した。結果を表3に示す。
Figure 2013221190
Figure 2013221190
Figure 2013221190
表3から、発明例では、目標とする6000N/mm1.5以上のアレスト性能が得られていることが解る。
(実施例2)
実施例1で製造した厚鋼板の機械特性を調査した。結果を、アレスト性能とともに、表4に示す。なお、(2)式の右辺の値は、A2=24.69、B=1.865、C=1.994、D=0.7525、設計温度を−10℃として算出した。
Figure 2013221190
前述したように、本発明によれば、HAZ靭性の劣化がなく、かつ、機械特性の異方性がない、アレスト性能に優れた高強度厚鋼板を低コストで提供することができる。その結果、鋼構造物の建造コストの低減や安全性の向上を図ることが可能となる。よって、本発明は、鋼構造物産業において利用可能性が高いものである。

Claims (12)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.10%、Ti:0.005〜0.020%、Ni:0.15〜2.00%、N:0.001〜0.008%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる高強度厚鋼板において、
    (x)鋼板のミクロ組織が、ベイナイトを母相とするフェライト及び/又はパーライト組織であり、かつ、
    (y)鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域では、
    (y1)結晶粒の平均円相当径が15μm以下であり、かつ
    (y2)粒径が95%最大値を超える結晶粒の硬さが、該結晶粒が存在する板厚深さにお ける平均硬さ以下であり、
    (z)上記領域以外の板厚中心部を含む領域では、結晶粒の平均粒径が40μm以下である
    ことを特徴とする脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
  2. 前記鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域の結晶粒の結晶方位差が15°以上であることを特徴とする請求項1に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板において、
    (y3)上記鋼板の板厚Th(mm)、板厚中央部のシャルピー破面遷移温度vTrs(℃)、及び、鋼板面のNDT温度NDT(℃)が、下記式(1)を満たす
    ことを特徴とする脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
    NDT(℃)≦A1−C・Th−D・vTrs ・・・(1)
    1、C、D:実験的に定まる係数で、
    0≦A1≦16.0
    1.5≦C≦3.0
    0.5≦D≦1.4
  4. 前記式(1)において、A1=6.032、C=1.994、D=0.7525であることを特徴とする請求項3に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
  5. 請求項1又は2に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板において、
    (y4)上記鋼板の板厚Th(mm)、板厚中央部のシャルピー破面遷移温度vTrs(℃)、鋼板面のNDT温度NDT(℃)、及び、設計温度Te(℃)が、下記式(2)を満たす
    ことを特徴とする脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
    NDT(℃)≦A2+B・Te−C・Th−D・vTrs ・・・(2)
    2、B、C、D:実験的に定まる係数で、
    12.5≦A2≦37.5
    1.6≦B≦2.5
    1.5≦C≦3.0
    0.5≦D≦1.4
  6. 前記式(2)において、A2=24.69、B=1.865、C=1.994、D=0.7525であることを特徴とする請求項5に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
  7. 前記鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域では、圧延方向と垂直な面に対し±15°をなす{100}面が、面積率で30%以下存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
  8. 前記鋼板面から板厚方向に板厚の5%までの領域以外の板厚中心部を含む領域では、圧延方向と垂直な面に対し±15°をなす{100}面が、面積率で15%以下存在することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
  9. 前記高強度厚鋼板の板厚が40mm以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
  10. 前記高強度厚鋼板の降伏応力が390MPa以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
  11. 前記高強度厚鋼板が、さらに、質量%で、Cu:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.02〜0.15%、及び、B:0.0003〜0.003%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
  12. 前記高強度厚鋼板が、さらに、質量%で、Ca:0.0003〜0.005%、Mg:0.0003〜0.005%、及び、REM:0.0003〜0.005%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板。
JP2012094274A 2012-04-17 2012-04-17 脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板 Pending JP2013221190A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012094274A JP2013221190A (ja) 2012-04-17 2012-04-17 脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012094274A JP2013221190A (ja) 2012-04-17 2012-04-17 脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013221190A true JP2013221190A (ja) 2013-10-28

Family

ID=49592395

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012094274A Pending JP2013221190A (ja) 2012-04-17 2012-04-17 脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013221190A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016105003A1 (ko) * 2014-12-24 2016-06-30 주식회사 포스코 취성균열전파 저항성이 우수한 구조용 극후물 강재 및 그 제조방법
JP2018503744A (ja) * 2014-12-24 2018-02-08 ポスコPosco 脆性亀裂伝播抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP2018504520A (ja) * 2014-12-24 2018-02-15 ポスコPosco 脆性亀裂伝播抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP2018504523A (ja) * 2014-12-24 2018-02-15 ポスコPosco 脆性亀裂伝播抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
EP3889295A4 (en) * 2018-11-30 2022-03-09 Posco ULTRA THICK STEEL WITH EXCELLENT BRITTLE STRENGTH AND PRODUCTION PROCESSES FOR THEREOF
JP7188655B1 (ja) * 2021-06-10 2022-12-13 Jfeスチール株式会社 厚鋼板の脆性亀裂伝播停止性能の評価方法
JP7252525B1 (ja) * 2021-11-29 2023-04-05 Jfeスチール株式会社 厚鋼板の脆性亀裂伝播停止性能の評価方法
WO2023095528A1 (ja) * 2021-11-29 2023-06-01 Jfeスチール株式会社 厚鋼板の脆性亀裂伝播停止性能の評価方法

Cited By (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016105003A1 (ko) * 2014-12-24 2016-06-30 주식회사 포스코 취성균열전파 저항성이 우수한 구조용 극후물 강재 및 그 제조방법
CN107109591A (zh) * 2014-12-24 2017-08-29 Posco公司 耐脆性裂纹扩展性优异的构造用超厚钢材及其制造方法
JP2018503744A (ja) * 2014-12-24 2018-02-08 ポスコPosco 脆性亀裂伝播抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP2018504520A (ja) * 2014-12-24 2018-02-15 ポスコPosco 脆性亀裂伝播抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP2018504524A (ja) * 2014-12-24 2018-02-15 ポスコPosco 脆性亀裂伝播抵抗性に優れた構造用極厚鋼材及びその製造方法
JP2018504523A (ja) * 2014-12-24 2018-02-15 ポスコPosco 脆性亀裂伝播抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
US10822671B2 (en) 2014-12-24 2020-11-03 Posco High-strength steel having superior brittle crack arrestability, and production method therefor
US10883159B2 (en) 2014-12-24 2021-01-05 Posco High-strength steel having superior brittle crack arrestability, and production method therefor
EP3889295A4 (en) * 2018-11-30 2022-03-09 Posco ULTRA THICK STEEL WITH EXCELLENT BRITTLE STRENGTH AND PRODUCTION PROCESSES FOR THEREOF
JP7188655B1 (ja) * 2021-06-10 2022-12-13 Jfeスチール株式会社 厚鋼板の脆性亀裂伝播停止性能の評価方法
JP7252525B1 (ja) * 2021-11-29 2023-04-05 Jfeスチール株式会社 厚鋼板の脆性亀裂伝播停止性能の評価方法
WO2023095528A1 (ja) * 2021-11-29 2023-06-01 Jfeスチール株式会社 厚鋼板の脆性亀裂伝播停止性能の評価方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4058097B2 (ja) アレスト性に優れた高強度厚鋼板
EP3042976B1 (en) Steel sheet for thick-walled high-strength line pipe having exceptional corrosion resistance, crush resistance properties, and low-temperature ductility, and line pipe
JP5064150B2 (ja) 脆性き裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板
JP2013221190A (ja) 脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板
JP6648270B2 (ja) 脆性亀裂伝播抵抗性及び溶接部の脆性亀裂開始抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
WO2016119500A1 (zh) 一种具有高止裂性能的钢板及其制造方法
JP2013221189A (ja) 脆性亀裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板
JP6475837B2 (ja) 脆性亀裂伝播抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP6648271B2 (ja) 脆性亀裂伝播抵抗性及び溶接部の脆性亀裂開始抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP5445723B1 (ja) 溶接用超高張力鋼板
JP2009127069A (ja) 高靭性ラインパイプ用鋼板およびその製造方法
JP5064149B2 (ja) 脆性き裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板及びその製造方法
JP2010248621A (ja) 高強度高靭性鋼の製造方法
JP5439889B2 (ja) 厚肉高靭性鋼管素材用厚鋼板およびその製造方法
JP4868762B2 (ja) 音響異方性の小さい高強度高靭性ベイナイト非調質鋼板
JP6665515B2 (ja) 耐サワー鋼板
JP5668668B2 (ja) 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材並びに溶接継手、溶接継手の製造方法
JP5447778B2 (ja) 非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法
JP2010215996A (ja) 耐震性構造物用鋼材及びその製造方法
JP6631353B2 (ja) 耐サワー鋼板及び耐サワー鋼管
JP4959401B2 (ja) 耐表面割れ特性に優れた高強度溶接構造用鋼とその製造方法
JP5852549B2 (ja) 曲げ加工性と溶接継手の疲労特性を兼備した熱延鋼板および角筒状構造体の製造方法
JP2017155290A (ja) 耐サワー鋼板
JP5811044B2 (ja) 溶接性、溶接熱影響部靭性に優れた厚手高強度鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140811

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150410

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150512

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150622

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20151208