JP5852549B2 - 曲げ加工性と溶接継手の疲労特性を兼備した熱延鋼板および角筒状構造体の製造方法 - Google Patents

曲げ加工性と溶接継手の疲労特性を兼備した熱延鋼板および角筒状構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、曲げ加工性と溶接継ぎ手の疲労特性を兼備した熱延鋼板およびそれを用いた角筒状構造体に関し、詳しくは、建設産業機械、例えば自走式クレーン(ホイールクレーン)やパワーショベルのブーム等の角筒状構造体を作製するために使用される板厚5〜20mmの熱延鋼板、および、それを用いた角筒状の溶接構造体の製造方法に関する。
近年、自走式クレーンやパワーショベル等の建設産業機械には、それらの構造体の大型化に伴い、車体全体重量の軽量化による燃費向上とともに、操作性向上のためにブーム自体の軽量化も求められており、ブームを作製するのに使用される熱延鋼板の高強度化が進展している。
自走式クレーンやパワーショベルのブームは、従来、板厚5〜20mm程度の平板の熱延鋼板4枚を互いに溶接接合して角筒状に形成した溶接構造体(4プレートブーム)が用いられていた。このような4プレートブームでは、幅方向断面において溶接部が4隅にそれぞれ存在する。
ここで、溶接部の熱影響部(以下、「HAZ」ともいう。)では、母材よりも疲労強度が低下することが知られている。このため、溶接構造体は、HAZの疲労強度を支配因子として設計されている。したがって、構造体を溶接接合して作製する場合は、単に母材の疲労特性を改善するだけでは不十分で、HAZの疲労特性をも改善することが重要となる。
一方、現在は、従来の4プレートブームに替えて、2枚の長尺鋼板をU字状にプレス曲げし、U字状の先端部同士を突き合わせ溶接して箱型に形成したプレス曲げブームが主流になりつつある(特許文献1、非特許文献1参照)。従来の4プレートブームでは、上述したように、幅方向断面において、溶接部が構造上強度および疲労強度の設計上不利なコーナー部4箇所存在していたが、プレス曲げブームでは、溶接部が設計上有利な平面部に配され、しかも2箇所に減少している。このため、プレス曲げブームでは、HAZの疲労強度を支配因子として設計されるブームの肉厚を、従来の4プレートブームよりも薄くすることが可能になり、軽量化が図れるようになってきた。
しかしながら、両者の幅方向断面形状を比較すると、曲線部の多いプレス曲げブームは、直線部のみで構成された矩形状の4プレートブームよりも、同一断面積では断面二次モーメントが小さくなることから、曲げ荷重に対する耐力を確保するために断面積を大きくせざるを得ず、さらなる軽量化の余地が残されていた。
したがって、U字状(曲線状)に曲げ加工した部材を用いる替わりに、L字状やコの字状に90°曲げ加工した部材を溶接接合して断面矩形状に形成することができれば、断面二次モーメントをできるだけ大きく維持しつつ、溶接部を減少させることを両立でき、ブームをより軽量化することが可能となる。
以上のことから、ブームを最大限に軽量化するには、ブームを作製するのに使用される熱延鋼板に対して、HAZの疲労特性に優れるとともに、90°曲げ加工をも可能とする曲げ加工性の兼備が要求されることとなる。
ここで、熱延鋼板に関する従来技術については、以下のように種々の提案がなされている。
例えば、特許文献2には、Si/16≦Ce≦0.0060%を満たすようにCeを含有し、ベーニティック・フェライト相を主相とする金属組織を有し、板厚が5mm以上の、強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板が開示されている。
また、特許文献3には、板厚20〜80mm程度、強度が600MPa以上の鋼材を対象として、鋼板のミクロ組織において旧オーステナイト粒のアスペクト比が20以下、かつ析出物および/または介在物が1000個/μm以下、かつ、セメンタイトの平均粒子径が60nm以下で、鋼板の板厚1/4位置の{110}面の集積度が0.3〜1.8、鋼板の板厚1/4位置の{211}面の集積度が0.9〜2.4である曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼材が開示されている。
また、特許文献4には、フェライトを主相とする炭素鋼または低合金鋼からなる鋼板であって、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)、および、当該Dの700℃における増加速度(μm/min)を制御した、加工性に優れた熱延鋼板が開示されている。
また、特許文献5には、ベイナイト分率が80%以上で、析出物の平均粒径r(nm)と析出物分率fを制御した、板厚3mm程度の薄物の、疲労特性及び伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板が開示されている。
しかしながら、上記特許文献2〜5には、熱延鋼板自体(母材)の機械的特性や加工性を向上させることについては開示されているものの、溶接部の継手性能、特にHAZの疲労強度を改善する観点で開示したものは見当たらない。
特開2010−275101号公報 特開2009−167460号公報 特開2009−242840号公報 再表2007/015541号公報
中山浩樹,「シティークレーンのプレス曲げブームにおける高剛性軽量化技術」,R&D神戸製鋼技報,2012年8月,第62巻,第1号,p.73−77
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、曲げ加工性と溶接継手の疲労特性を兼備した熱延鋼板、および、それを用いた角筒状構造体の製造方法を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、
板厚が5〜20mmであり、
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C :0.05〜0.2%、
Si:2.0%以下(0%を含まない)、
Mn:1.0〜2.5%、
Al:0.002〜0.1%、
REM:0.0002〜0.05%、
Ca:0.0005〜0.01%
をそれぞれ含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、
全組織に対する面積率で、
フェライト:50〜90%、
ベイナイト:10〜50%、
マルテンサイト+残留オーステナイト:10%未満
からなる組織を有し、
JIS G0555(1988)に規格される「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」により測定された、A系介在物、B系介在物およびC系介在物の合計量が0.05%以下であり、
鋼板の表面から1mm深さまでの表層部の平均結晶粒径が5μm以下である
ことを特徴とする曲げ加工性と溶接継手の疲労特性を兼備した熱延鋼板である。
請求項2に記載の発明は、
成分組成が、さらに、
V:0.0005〜0.1%、および/または、
Nb:0.02〜0.2%
を含むものである請求項1に記載の熱延鋼板である。
請求項3に記載の発明は、
成分組成が、さらに、
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜1.0%、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%の1種または2種以上
を含むものである請求項1または2に記載の熱延鋼板である。
請求項に記載の発明は、
請求項1〜のいずれか1項に記載の熱延鋼板を、長手方向に沿って曲げ加工することにより幅方向断面がL字状またはコの字状に形成された曲げ加工部材を1または2本用い、前記1本の曲げ加工部材と1もしくは2枚の平板状部材の端部同士、または、前記2本の曲げ加工部材の端部同士を溶接接合することにより角筒状に形成することを特徴とする角筒状構造体の製造方法である。
本発明によれば、フェライト+ベイナイト鋼をベースとし、鋼中の非金属介在物の量を制限するとともに表層部の組織を微細化することで、曲げ加工性を高めるとともに、溶接継手部のHAZの疲労強度をも向上させうる熱延鋼板、および、それを用いた角筒状構造体の製造方法を提供できるようになった。
角筒状構造体の幅方向断面を示す図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
〔本発明鋼板の板厚:5〜20mm〕
まず、本発明に係る鋼板(以下、「本発明鋼板」ともいう。)は、板厚が5〜20mmの熱延鋼板を対象とする。板厚が5mm未満では、構造体としての剛性が確保できなくなる。一方、板厚が20mmを超えると、本発明で規定する組織形態を達成することが難しく、所望の効果が得られなくなる。好ましい板厚は6〜19mmである。
次に、本発明鋼板を特徴づける組織について説明する。
〔本発明鋼板の組織〕
上述したとおり、本発明鋼板は、フェライト+ベイナイト鋼をベースとするものであるが、特に、鋼中の非金属介在物の量を制限するとともに表層部の組織を微細化することを特徴とする。
<全組織に対する面積率で、フェライト:50〜90%、ベイナイト:10〜50%、マルテンサイト+残留オーステナイト:10%未満>
フェライトが50%未満、または、ベイナイトが50%を超えると、ベイナイト同士が連結することにより伸びが確保できず、一方、フェライトが90%を超え、または、ベイナイトが5%に満たないと、引張強度TSと伸びフランジ性λが確保できない。好ましくは、フェライト:60〜80%、ベイナイト:20〜40%である。
主相であるフェライトおよびベイナイト以外の組織としては、マルテンサイト+残留オーステナイト(MA)を10%未満とするのが望ましい。これはより硬質の組織の存在によって、強度−伸び−伸びフランジ性のバランスが低下し、曲げ加工性が低下するためである。
〔各相の面積率の測定方法〕
上記各相の面積率については、各供試鋼板をナイタール腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM;倍率1000倍)により5視野撮影し、フェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイト+残留オーステナイトの各比率を点算法で求めることができる。
<JIS G0555(1988)に規格される「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」により測定された、A系介在物、B系介在物およびC系介在物の合計量が0.05%以下>
鋼中の非金属介在物の量を制限することで、HAZの疲労強度を確保ないし向上させるためである。このような効果を得るためには、JIS G0555(1988)に規格される「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」により測定された、A系介在物、B系介在物およびC系介在物の合計量を0.05%以下、好ましくは0.04%以下、さらに好ましくは0.03%以下とする。
〔非金属介在物の量の測定方法〕
ここで、JIS G0555(1988)に規格される「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」について説明する。鋼中に存在する非金属介在物は、熱処理による欠陥の発生や使用中における損傷原因となる場合があり、鋼中に存在している介在物の種類や分布、量など調べその清浄度を判定する試験方法が規定されている。試験片は圧延方向又は鍛錬方向に平行に、その中心線を通って切断採取し、その面を検鏡面とし、琢磨仕上げによって鏡面とした後、ノーエッチングの状態で検鏡する。縦横20本の格子線が入った接眼レンズを用い、400倍で観察する。原則的に60視野をランダムに観察し、介在物によって占めた格子点中心の数を数え、清浄度として算出する。
d=(n/p×f)×100
ここに、d:清浄度、p:視野内の総格子点数、f:視野数、n:f個の視野における介在物によって占められる格子点中心の数 を示す。
ここで、介在物の種類には、加工によって粘性変形したA系介在物(細長状で硫化物のMnS、珪酸塩のSiOなど)、加工方向に集団で不連続的に粒状に並んだB系介在物(Al)、粘性変形をしないで不規則に分散したC系介在物(粒状酸化物)の3種類があるため、非金属介在物の量としては、A系介在物、B系介在物およびC系介在物の清浄度の合計量で評価を行う。
<鋼板の表面から1mm深さまでの表層部の平均結晶粒径が5μm以下>
一般に、板厚が厚い(厚物の)熱延鋼板では、自動車部品等に用いられている板厚2〜3mm程度の薄物の熱延鋼板に比較して、結晶粒径も大きくなり、板厚方向の結晶粒径が不均一になり、加工性を劣化させる。これは、板厚が厚くなるにつれて表層部と内部の冷却速度の差が大きくなり、結晶粒径が不均一になるためである。そして、板厚が5mm以上になると、表層部と内部の冷却速度の差が臨界値を超えて、加工性に影響するようになる。特に、曲げ加工性では、表面部の結晶粒が粗大であると、割れが発生しやすくなる。
そこで、本発明鋼板では、鋼板の表面から1mm深さまでの表層部の平均結晶粒径を5μm以下に規定した。このように、表層部の結晶粒を微細化することで、表面からの割れの発生を抑制できるようになり、板厚5mm以上の厚物の熱延鋼板の90°曲げ加工性の向上に寄与する。上記表層部の平均結晶粒径は、好ましくは4.5μm以下であり、より好ましくは4μm以下である。
〔表層部の平均結晶粒径の測定方法〕
上記表層部の平均結晶粒径については、以下のようにして測定することができる。すなわち、最表層部、0.5mm深さ、1mm深さの3箇所にそれぞれ存在するフェライトとベイナイトの結晶粒径を測定する。マルテンサイト+残留オーステナイトについては、存在量が少ないので、平均結晶粒径の測定においては無視した。具体的には、最表層部、0.5mm深さ、1mm深さの各測定箇所における圧延方向の側面部をナイタール腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM;倍率1000倍)により該当部位を5視野撮影する。そして、フェライト粒子1個の粒径については、その重心直径を画像解析により測定して求める。ベイナイト粒子1個の粒径については、フェライトに囲まれたベイナイトの領域全体を1個の粒と定義し、その領域の面積を画像解析により測定し、円相当直径に換算して求める。そして、上記3箇所に存在するフェライト粒子+ベイナイト粒子の粒径全部を算術平均したものを上記表層部の平均結晶粒径と定義した。
次に、本発明本発明鋼板を構成する成分組成について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。
〔本発明鋼板の成分組成〕
C:0.05〜0.20%
Cは強化元素であり、C量が増加するとフェライトの面積率が低下する。0.05%未満では必要な強度が得られず、0.20%を超えるとベイナイトの面積率が大きくなり過ぎ、強度−伸び−伸びフランジ性のバランスが確保できなくなり、90°曲げ加工性が劣化する。好ましくは0.06〜0.15%であり、より好ましくは0.07〜0.13%である。
Si:2.0%以下(0%を含まない)
Siはフェライトの固溶強化元素としてTS−λバランスの改善に寄与し、疲労特性改善にも寄与する。しかし、2.0%を超えるとフェライトが強化されすぎ、強度−伸び−伸びフランジ性のバランスが確保できなくなり、90°曲げ加工性が劣化する。好ましい下限値は0.2%であり、より好ましい下限値は0.5%である。また、好ましい上限値は1.7%であり、より好ましい上限値は1.3%である。
Mn:1.0〜2.5%
Mnは脱酸元素として添加され、また固溶強化により強度−伸び−伸びフランジ性のバランスの改善に寄与し、疲労特性改善にも寄与する。しかし、1.0%未満であると脱酸が不十分となり強度−伸び−伸びフランジ性のバランスが劣化し、2.0%を超えると焼き入れ性が高くなり過ぎフェライトの面積率が低下する。好ましくは1.2〜2.2%であり、より好ましくは1.5〜2.0%である。
Al:0.002〜0.1%、
Alは固溶強化により強度−伸び−伸びフランジ性のバランスを改善する効果があり、必要に応じて添加される。しかし、下限値未満ではその効果が得られず、上限値を超えると粒界偏析し粒界破壊を助長して強度−伸び−伸びフランジ性のバランスを低下させ、90°曲げ加工性を劣化させる。好ましくは0.01〜0.08%であり、より好ましくは0.02〜0.06%である。
REM:0.0002〜0.05% REM(希土類元素)は、それぞれの酸化物を生成させるとともに、非金属介在物の生成を抑制するのに必要な元素である。これらの酸化物を含有することで、酸化物が微細分散し易くなり、この微細分散した酸化物が粒内フェライトの生成核となるとともに、破壊の起点となる非金属介在物の量を制限するため、HAZの疲労強度向上に寄与する。上記作用を有効に発揮させるためには、REMは、0.0002%以上含有させるべきであり、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上、さらに好ましくは0.0015%以上含有させるとよい。しかしながら、REMを過剰に添加すると粗大な酸化物を形成し、HAZ靭性が却って劣化する。したがって、REMの含有量は0.05%以下に抑えるべきである。好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.01%以下である。
なお、本発明において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLnまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有するのがよい。
本発明の鋼は上記成分を基本的に含有し、残部が鉄および不可避的不純物であり、この不可避的不純物としてはP、S、N、O等が含まれるが、その他、本発明の作用を損なわない範囲で、以下の許容成分を添加することができる。
V:0.0005〜0.1%、および/または、
Nb:0.02〜0.2%
これらに元素は、フェライト中に微細な炭化物を形成することで母材の疲労特性を改善する。また、HAZにおいて、溶接による加熱時に固溶してオーステナイト粒の微細化を抑制し、かつ、固溶C量および固溶V量を増加させることで、HAZの焼入れ性を向上させて強度を高め、HAZの疲労特性をも改善する。しかし、それぞれ下限値未満であると析出強化効果が不十分であり、上限値を超えて添加しても特性改善効果が得られない。Vのより好ましい含有量は0.002〜0.08%であり、Nbのより好ましい含有量は0.03〜0.15%である。
なお、Tiも、Nb、Vと同様、フェライト中に微細な炭化物を形成することで母材の疲労特性を改善しうる元素であるが、一方で、鋳造時や熱延前の加熱中に粗大なTiN化合物が生成することを抑えることができず、加工割れの起点となり曲げ加工性を低下させるとともに、HAZの疲労強度を低下させる。したがって、本発明においては、Tiは極力添加しない。
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜1.0%、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%の1種または2種以上
これらの元素は鋼の焼き入れ性を高めることにより、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の形成を抑制する効果があり、必要に応じて添加される。しかし、下限値未満ではその効果が得られず、上限値を超えるとフェライトが脆化し、強度−伸び−伸びフランジ性のバランスを低下させ、90°曲げ加工性を劣化させる。より好ましくは、それぞれ0.1〜0.8%である。
Ca:0.0005〜0.01%
Caは、硫化物系介在物の形態制御に有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、0.0005%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.001%以上、さらに好ましくは0.0015%以上である。しかしCaを過剰に添加すると、粗大な酸化物を形成し、HAZの疲労強度および靭性が却って劣化する。したがってCaを含有させる場合は、0.01%以下に抑える必要がある。より好ましくは0.008%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。
〔角筒状構造体〕
[比較形態]
上述したように、従来、ブームのような角筒状構造体は、図1(a)にその幅方向断面を示すように、熱延鋼板の平板を4枚組み合わせて、4箇所のコーナー部を溶接接合した構造(4プレートブーム)を採用していた。この構造は平板のみの組み合わせであるため作製が簡易で、また、断面が矩形状であるため断面二次モーメントが大きい点では好ましいが、溶接部が、構造体強度および疲労強度の設計上不利なコーナー部に4箇所も配置しているため、構造体としての強度、剛性の確保に課題を有していた。
そこで、本発明では、上記のように曲げ加工性とHAZの疲労強度が向上した本発明鋼板を用い、これを長手方向に沿って90°曲げ加工して、幅方向断面がL字状またはコの字状の曲げ加工部材を作製する。そして、この曲げ加工部材を1または2本使用し、必要により平板状部材と組み合わせ、図1(b)〜(d)に例示したように、必要箇所を溶接接合して、幅方向断面が矩形状の角筒状構造体を形成する。
[実施形態1]
図1(b)は、コの字状の曲げ加工部材2本を用い、それらの幅端部同士を溶接接合したものであり、溶接部を構造体強度および疲労強度の設計上有利な平面部に配置するとともに、溶接部の箇所も2箇所に減らすことができ、構造体としての強度、剛性の向上効果が大きい。
[実施形態2]
また、図1(c)は、コの字状の曲げ加工部材1本と平板状部材1枚とを組み合わせ、それらの幅端部同士を溶接接合したものであり、溶接部はコーナー部に存在するが、その箇所を2箇所に減らすことができ、上記図1(b)の構造より劣るものの、上記図1(a)の比較形態に比べ、構造体としての強度、剛性の向上効果が得られる。
[実施形態3]
また、図1(d)は、L字状の曲げ加工部材2本を用い、それらの幅端部同士を溶接接合したものであり、溶接部はコーナー部に存在するが、その箇所を2箇所に減らすことができ、上記図1(b)の構造より劣るものの、上記図1(a)の比較形態に比べ、構造体としての強度、剛性の向上効果が得られる。
また、図示しないが、L字状の曲げ加工部材1本と平板状部材2枚とを組み合わせ、コーナー部3箇所を溶接接合することでも、溶接部の箇所を3箇所に減らすことができ、上記図1(b)〜(d)の構造より劣るものの、上記図1(a)の比較形態に比べ、構造体としての強度、剛性の向上効果が得られる。
さらに、上記のようにL字状またはコの字状の曲げ加工部材を用いることで、溶接箇所を従来の4箇所から2箇所または3箇所に減らせるので、施工コストの削減も同時に達成することができる。
なお、構造上は、上述したように、図1(b)の構造が最も好ましいが、加工コスト節約の観点から、曲げ加工の工程を少なくできる図1(c)または(d)の構造体を選択してもよい。
また、L字状またはコの字状の曲げ加工部材と組み合わせて使用する平板状部材には、曲げ加工性を要求されないので、必ずしも本発明鋼板を用いる必要はなく、HAZの疲労強度に優れた鋼板を適宜選択して用いることができる。
次に、上記本発明鋼板を得るための好ましい製造方法を以下に説明する。
〔本発明鋼板の好ましい製造方法〕
[溶鋼の調製]
まず、溶存酸素量と全酸素量を調整した溶鋼に、所定の順番で所定の合金元素を添加することによって、粒内フェライトの生成核となる所望の酸化物を生成させることができる。特に本発明では、粗大な酸化物が生成しないように、溶存酸素量を調整した後、全酸素量を調整することが極めて重要である。
溶存酸素とは、酸化物を形成しておらず、溶鋼中に存在するフリーな状態の酸素を意味する。全酸素とは、溶鋼に含まれる全ての酸素、即ち、フリー酸素と酸化物を形成している酸素の総和を意味する。
まず、溶鋼の溶存酸素量を0.0010〜0.0060%の範囲に調整する。溶鋼の溶存酸素量が0.0010%未満では、溶鋼中の溶存酸素量が不足するため、粒内フェライト変態の核となるREM系酸化物を所定量確保することができず、優れたHAZ靭性が得られない。また、溶存酸素量が不足すると、REMが硫化物を形成するため、母材自体の靭性を劣化させる原因となる。したがって、上記溶存酸素量は0.0010%以上とする。上記溶存酸素は、好ましくは0.0013%以上、より好ましくは0.0020%以上である。
一方、上記溶存酸素量が0.0060%を超えると、溶鋼中の酸素量が多くなりすぎるため、溶鋼中の酸素と上記元素の反応が激しくなって溶製作業上好ましくないばかりか、粗大な酸化物を生成して却ってHAZ靭性を劣化させる。したがって、上記溶存酸素量は0.0060%以下に抑えるべきである。上記溶存酸素量は、好ましくは0.0055%以下、より好ましくは0.0053%以下とする。
ところで、転炉や電気炉で一次精錬された溶鋼中の溶存酸素量は、通常0.010%を超えている。そこで本発明の製法では、溶鋼中の溶存酸素量を何らかの方法で上記範囲に調整する必要がある。
溶鋼中の溶存酸素量を調整する方法としては、例えばRH式脱ガス精錬装置を用いて真空C脱酸する方法や、SiやMn,Ti,Alなどの脱酸性元素を添加する方法などが挙げられ、これらの方法を適宜組み合わせて溶存酸素量を調整してもよい。また、RH式脱ガス精錬装置の代わりに、取鍋加熱式精錬装置や簡易式溶鋼処理設備などを用いて溶存酸素量を調整してもよい。この場合、真空C脱酸による溶存酸素量の調整はできないため、溶存酸素量の調整にはSi等の脱酸性元素を添加する方法を採用すればよい。Si等の脱酸性元素を添加する方法を採用するときは、転炉から取鍋へ出鋼する際に脱酸性元素を添加しても構わない。
溶鋼の溶存酸素量を0.0010〜0.0060%の範囲に調整した後は溶鋼を攪拌し、溶鋼中の酸化物を浮上分離することによって溶鋼中の全酸素量を0.0010〜0.0070%に調整する。このように本発明では、溶存酸素量が適切に制御された溶鋼を撹拌し、不要な酸化物を除去してから、粒内フェライト変態核生成元素を添加しているため、粗大な酸化物の生成を防止できる。
上記全酸素量が0.0010%未満では、所望の酸化物量不足になるため、HAZ靭性の向上に寄与する粒内フェライトの生成核となる酸化物量を確保することができない。したがって、上記全酸素量は0.0010%以上とする。上記全酸素量は、好ましくは0.0015%以上、より好ましくは0.0018%以上である。
一方、上記全酸素量が0.0070%を超えると、溶鋼中の酸化物量が過剰となり、粗大な酸化物が生成してHAZ靭性が劣化する。したがって、上記全酸素量は0.0070%以下に抑えるべきである。上記全酸素量は、好ましくは0.0060%以下、より好ましくは0.0050%以下とする。
溶鋼中の全酸素量は、概ね溶鋼の攪拌時間に相関して変化することから、撹拌時間を調整するなどして制御することができる。具体的には、溶鋼を撹拌し、浮上してきた酸化物を除去した後の溶鋼中の全酸素量を適宜測定しながら、溶鋼中の全酸素量を適切に制御する。
溶鋼中の全酸素量を上記範囲に調整した後は、次いで、REMを添加してから鋳造する。全酸素量を調整した溶鋼へ上記の元素を添加することによって所望とする粒内フェライト変態の核となるREM系酸化物が得られる。
溶鋼へ添加するREMの形態は特に限定されず、例えば、REMとして、純Laや純Ce、純Yなど、或いは純Ca、さらにはFe−Si−La合金、Fe−Si−Ce合金、Fe−Si−Ca合金、Fe−Si−La−Ce合金、Fe−Ca合金、Ni−Ca合金などを添加すればよい。また、溶鋼へミッシュメタルを添加してもよい。ミッシュメタルとは、セリウム族希土類元素の混合物であり、具体的には、Ceを40〜50%程度,Laを20〜40%程度含有している。ただし、ミッシュメタルには不純物としてCaを含むことが多いので、ミッシュメタルがCaを含む場合は、本発明で規定する好適範囲を満足する必要がある。
本発明では、粗大な酸化物の除去を促進する目的で、REMを添加した後は、40分を超えない範囲で溶鋼を攪拌することが好ましい。攪拌時間が40分を超えると、微細な酸化物が溶鋼中で凝集・合体するため酸化物が粗大化し、HAZ靭性が劣化する。したがって、攪拌時間は40分以内とすることが好ましい。攪拌時間は、より好ましくは35分以内であり、さらに好ましくは30分以内である。溶鋼の攪拌時間の下限値は特に限定されないが、攪拌時間が短過ぎると添加元素の濃度が不均一となり、鋼材全体として所望の効果が得られない。したがって、容器サイズに応じた所望の攪拌時間が必要となる。
以上のようにREMを添加することで、成分組成が調整された溶鋼が得られる。得られた溶鋼を用いて鋳造し、鋼片を得る。
次に、加熱、仕上げ圧延を含む熱間圧延、熱延後の急冷、急冷停止後の緩冷、緩冷後の急冷、巻取りを行って製造する。
[加熱]
熱間圧延前の加熱は1050〜1300℃で行う。この加熱によりオーステナイト単相とする。V、Nbが添加される場合は、オーステナイトに固溶させる。加熱温度が1050℃未満ではV、Nbがオーステナイトに固溶できず、粗大な炭化物が形成されるため疲労特性改善効果が得られない。一方、1300℃を超える温度は操業上困難である。また、不純物としてTiが含まれる場合、炭化物のうち最も溶体化温度の高いTiを固溶させる点でも、TiCの溶体化温度以上1300℃以下が必要である。加熱温度の好ましい下限は1100℃、さらに好ましい下限は1150℃である。
[熱間圧延]
熱間圧延は、仕上げ圧延温度が880℃以上になるように行う。仕上げ圧延温度を低温化しすぎるとフェライト変態が高温で起るようになり、フェライト中の析出炭化物が粗大化するため、一定以上の仕上げ圧延温度が必要である。仕上げ圧延温度は、オーステナイト粒を粗大化してベイナイトの粒径を大きくするため、900℃以上とするのがより好ましい。なお、仕上げ圧延温度の上限は温度確保が難しいため、1000℃とする。
[熱間圧延パススケジュール]
本発明の熱延鋼板の板厚は5〜20mmであるが、表層部の結晶粒を微細化し、所定の粒径範囲に制御するために、上記の圧延温度の制御だけでなく、仕上げ圧延のタンデム圧延の最終圧下率を15%以上とすることが必要である。通常、仕上げ圧延は、5〜7パスのタンデム圧延を実施するが、板のカミ込み制御の観点でパススケジュールが設定され、最終圧下率は、12〜13%程度までである。上記最終圧下率は、好ましくは16%以上、より好ましくは17%以上である。上記最終圧下率は、20%、30%と高いほど、結晶粒をより微細化する効果が得られるが、圧延制御の観点で上限は30%程度に規定される。
[熱延後の急冷]
上記仕上げ圧延終了後、5s以内に20℃/s以上の冷却速度(第1急冷速度)で急冷し、580℃以上670℃未満の温度(急冷停止温度)で急冷を停止する。フェライト変態の開始温度を低温化することによりフェライト中に形成される析出炭化物を微細化するためである。冷却速度(第1急冷速度)が20℃/s未満ではパーライト変態が促進され、または、急冷停止温度が580℃未満ではパーライト変態またはベイナイト変態が促進され、いずれも所定の相分率のフェライト−ベイナイト鋼を得るのが困難になり、強度−伸び−伸びフランジ性のバランスが低下し、曲げ加工性が劣化する。一方、急冷停止温度が670℃以上になるとフェライト中の析出炭化物が粗大化してしまい、HAZの疲労特性が確保できない。急冷停止温度は、好ましくは600〜650℃、さらに好ましくは610〜640℃である。
[急冷停止後の緩冷]
上記急冷停止後、放冷または空冷により10℃/s以下の冷却速度(緩冷速度)で5〜20s緩冷する。これによりフェライトの形成を十分に進行させつつ、フェライト中の析出炭化物を適度に微細化させる。冷却速度が10℃/sを超え、または、緩冷時間が5s未満では、フェライトの形成量が不足する。一方、緩冷時間が20sを超えると析出炭化物が粗大化せず、HAZの疲労特性が確保できない。
[緩冷後の急冷、巻取り]
上記緩冷後、再度20℃/s以上の冷却速度(第2急冷速度)で急冷し、300℃超450℃以下で巻き取る。残部をベイナイト主体の組織にすることで強度−伸び−伸びフランジ性のバランスを改善するためである。冷却速度(第2急冷速度)が20℃/s未満、または、巻取り温度が450℃超では、パーライトが形成され、一方300℃未満では、マルテンサイトや残留オーステナイトが多く形成され、強度−伸び−伸びフランジ性のバランスが低下し、曲げ加工性が劣化する。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
[実施例1]
真空溶解炉(容量150kg)を用い、表1に示した化学成分を含有する供試鋼を溶製し、150kgのインゴットに鋳造して冷却した。真空溶解炉で供試鋼を溶製するに当っては、Al、REM、Ca以外の元素について成分調整するとともに、C,SiおよびMnから選ばれる少なくとも1種の元素を用いて脱酸して溶鋼の溶存酸素量を調整した。溶存酸素量を調整した溶鋼を1〜10分程度攪拌して溶鋼中の酸化物を浮上分離させることによって溶鋼の全酸素量を調整した。
全酸素量を調整した溶鋼に、REMおよびCaを添加することによって成分調整した溶鋼を得た。なお、REMはLaを約25%とCeを約50%含有するミッシュメタルの形態で、CaはNi−Ca合金、またはCa−Si合金、またはFe−Ca圧粉体の形態で、それぞれ添加した。
得られたインゴットを表2に示す加熱条件、熱延条件、冷却条件にて熱間圧延して板厚が5〜20mmの圧延材を製造した。
このようにして得られた熱延鋼板(母材相当)について、鋼板中組織の各相の面積率、非金属介在物の量、および、表層部の平均結晶粒径を、上記[発明を実施するための形態]のところで説明した各測定方法により求めた。
上記母材相当の熱延鋼板から、JISZ2241に準拠して引張試験を実施し、母材の引張強度(TS)を測定した。また、上記母材相当の熱延鋼板から板サンプルにしたうえで、鉄連規格JFST001に準拠して穴広げ試験を実施し、穴広げ率を測定し、これを母材の伸びフランジ性(λ)とした。さらに、上記母材相当の熱延鋼板の表裏面を0.2mmずつ研削し、その後、JIS Z2275に記載の平面曲げ試験によりS−N曲線を作成して疲労限度を求め、それを母材の疲労強度とした。また、90°曲げ加工性は、90°Vブロック試験により評価した。鋼板の板厚をt、パンチの内側最小曲げ半径をRとしたとき、その比R/t=1となる曲率を有する90度パンチを用いて、試験片を90度のダイの中に押し込んだ後、試験片を取り出し、曲げの外側を目視で観察した。目視観察の結果、割れの発生が見られる場合を×、割れは発生していないが、目視できるクラックが見られる場合を△、微小な凹凸(シワ)が見られるものの、クラックは発生していない場合を○、シワの発生も見られない場合を◎とした。なお、「割れ」と「クラック」とは、隙間の最大幅が、1mm以上のものを「割れ」、1mm未満のものを「クラック」と定義して区別した。
ここで、HAZは、溶接金属の近傍に形成されるが、その組織の形態は、溶接金属に近い側から順に、粗粒域、細粒域、焼戻し域の3領域に分類される。そして、従来鋼においては、上記HAZの各領域の特性は、一般的に以下のような挙動を示すことが知られている。すなわち、粗粒域では、溶接による加熱時にオーステナイト粒が粗大化するため、溶接後の冷却の際にマルテンサイト化またはベイナイト化して一般に高強度となる。これに対して、細粒域では、溶接による加熱時にオーステナイト粒が微細化するため、溶接後の冷却の際にフェライトや上部ベイナイトが形成されやすくなり、強度が低下して疲労破壊の起点になる。また、焼戻し域では、焼戻しにより強度が低下し、疲労強度も低下する。 つまり、HAZにおいてはその細粒域または焼戻し域での疲労強度が支配的となる。
そこで、HAZの細粒域を模擬するため、上記母材相当の熱延鋼板を熱処理シミュレータで950℃まで30℃/sの昇温速度で加熱した後、直ちに30℃/sの冷却速度で室温まで冷却して細粒域模擬材とした。また、HAZの焼戻し域を模擬するため、上記母材相当の熱延鋼板を熱処理シミュレータで700℃まで30℃/sの昇温速度で加熱した後、直ちに30℃/sの冷却速度で室温まで冷却して焼戻し域模擬材とした。これら細粒域模擬材と焼戻し域模擬材については、上記母材相当の熱延鋼板と同様にして疲労試験を行ったが、疲労限度が存在しなかったため、2×10回で未破断となる時間強度を疲労強度とした。
これらの測定結果を表3に示す。
Figure 0005852549
Figure 0005852549
Figure 0005852549
表3に示すように、鋼No.1、2、5、15〜20はいずれも、本発明の成分組成の範囲を満足する鋼種を用い、推奨の熱間圧延条件で製造した結果、本発明の組織規定の要件を充足する発明鋼であり、母材の機械的特性(引張強度、伸びフランジ性、90°曲げ性)およびHAZの疲労強度は全て合格基準を満たしており、曲げ加工性と溶接継手の疲労特性を兼ね備えた熱延鋼板が得られることが確認できた。
これに対し、鋼No.3、4、6〜14は本発明で規定する成分組成および組織の要件のうち少なくともいずれかを満足しない比較鋼であり、母材の機械的特性(引張強度、伸びフランジ性、90°曲げ性)およびHAZの疲労強度のうち少なくともいずれかが合格基準を満たしていない。
例えば、鋼No.3は、成分組成の要件は満たしているものの、熱延時の最終圧下率が推奨範囲を外れて低すぎ、表層部の結晶粒が粗大化し、HAZの疲労強度が劣っている。
また、鋼No.4は、成分組成の要件は満たしているものの、熱延時の加熱温度、仕上げ圧延温度、急冷停止温度、巻き取り温度が推奨範囲を外れて、いずれも低すぎ、母材組織においてフェライトが不足する一方、マルテンサイト+残留オーステナイトが過剰になり、90°曲げ加工性、HAZの疲労強度ともに劣っている。
また、鋼No.6(鋼種c)は、REM含有量が低すぎるとともに、熱延時の最終圧下率が推奨範囲を外れて低すぎ、非金属介在物量が過剰になるとともに、表層部の結晶粒が粗大化し、90°曲げ加工性、HAZの疲労強度ともに劣っている。
また、鋼No.7(鋼種d)は、熱延条件は推奨範囲にあるものの、REM含有量が高すぎ、非金属介在物量が過剰になり、90°曲げ加工性、HAZの疲労強度ともに劣っている。
また、鋼No.8(鋼種e)は、熱延条件は推奨範囲にあるものの、C含有量が低すぎ、90°曲げ加工性が劣っている。
一方、鋼No.9(鋼種f)は、熱延条件は推奨範囲にあるものの、C含有量が高すぎ、90°曲げ加工性が劣っている。
また、鋼No.10(鋼種g)は、熱延条件は推奨範囲にあるものの、Si含有量が高すぎ、フェライトが過剰になる一方でベイナイトが不足し、90°曲げ加工性が劣っている。
また、鋼No.11(鋼種h)は、熱延条件は推奨範囲にあるものの、Mn含有量が低すぎ、90°曲げ加工性が劣っている。
一方、鋼No.12(鋼種i)は、熱延条件は推奨範囲にあるものの、Mn含有量が高すぎ、フェライトが不足する一方でマルテンサイト+残留オーステナイトが過剰になり、90°曲げ加工性が劣っている。
また、鋼No.13(鋼種j)は、熱延条件は推奨範囲にあるものの、Al含有量が低すぎ、マルテンサイト+残留オーステナイトが過剰になり、90°曲げ加工性が劣っている。
一方、鋼No.14(鋼種k)は、熱延条件は推奨範囲にあるものの、Al含有量が高すぎ、マルテンサイト+残留オーステナイトが過剰になり、90°曲げ加工性が劣っている。
[実施例2]
次に、構造体の強度解析について、既述の図1(a)〜(c)に示す断面形状をもとに、汎用有限要素解析ソフト「ABAQUS」を用いてシミュレーション計算を行い、強度・剛性評価を実施した。なお、シミュレーション計算の前提条件としては、図1(a)〜(c)に示す断面形状を有する角筒状構造体について、断面の外周形状を1辺50cmの正方形、部材の厚みを1cm、角筒状構造体の長さを200cmとして数値解析上のメッシュを作成し、溶接部の材料強度データとして、表3に示すHAZ細粒域の疲労強度の値を入力し、限界疲労状態での構造体の剛性および座屈強度を評価した。表4に解析結果を示す。解析No.1は、従来の熱延鋼板相当の鋼No.6(表3参照)を用い、その平板4枚で構成した「(a)参考形態」(従来の4プレートブーム相当)について、強度解析を行ったものである。解析No.2は、本発明鋼板である鋼No.1(表3参照)を用い、その平板4枚で構成した「(a)参考形態」(従来の4プレートブーム相当)について、強度解析を行ったものである。また、解析No.3は、同じく本発明鋼板である鋼No.1を用い、それを90°曲げ加工して形成したコの字状の曲げ加工部材2本で構成した「(b)実施形態1」について、強度解析を行ったものである。また、解析No.4は、同じく本発明鋼板である鋼No.1を用い、それを90°曲げ加工して形成したコの字状の曲げ加工部材1本と平板1枚とで構成した「(c)実施形態2」について、強度解析を行ったものである。解析結果の剛性および座屈強度は、解析No.1の剛性および座屈強度を基準値としてともに「1.0」とし、相対値で表示したものである。
Figure 0005852549
表4に示すように、比較鋼板に替えて発明鋼板を用いることで、従来の4隅に溶接部を配した4プレートブームの構造体であっても、剛性、座屈強度ともに向上するが(解析No.1→解析No.2)、発明鋼板をコの字状に曲げ加工した部材1本と平板状部材1枚とを組み合わせて、角筒状構造体を形成することで、剛性、座屈強度ともにさらに向上し(解析No.2→解析No.4)、発明鋼板をコの字状に曲げ加工した部材2本を用いて角筒状構造体を形成することにより、溶接部をコーナー部にでなく、平面部に配置することで、剛性、座屈強度ともにさらに向上する(解析No.4→解析No.3)ことが確認できた。

Claims (4)

  1. 板厚が5〜20mmであり、
    質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
    C :0.05〜0.2%、
    Si:2.0%以下(0%を含まない)、
    Mn:1.0〜2.5%、
    Al:0.002〜0.1%、
    REM:0.0002〜0.05%、
    Ca:0.0005〜0.01%
    をそれぞれ含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、
    全組織に対する面積率で、
    フェライト:50〜90%、
    ベイナイト:10〜50%、
    マルテンサイト+残留オーステナイト:10%未満
    からなる組織を有し、
    JIS G0555(1988)に規格される「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」により測定された、A系介在物、B系介在物およびC系介在物の合計量が0.05%以下であり、
    鋼板の表面から1mm深さまでの表層部の平均結晶粒径が5μm以下である
    ことを特徴とする曲げ加工性と溶接継手の疲労特性を兼備した熱延鋼板。
  2. 成分組成が、さらに、
    V:0.0005〜0.1%、および/または、
    Nb:0.02〜0.2%
    を含むものである請求項1に記載の熱延鋼板。
  3. 成分組成が、さらに、
    Cu:0.01〜1.0%、
    Ni:0.01〜1.0%、
    Cr:0.01〜1.0%、
    Mo:0.01〜1.0%の1種または2種以上
    を含むものである請求項1または2に記載の熱延鋼板。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の熱延鋼板を、長手方向に沿って曲げ加工することにより幅方向断面がL字状またはコの字状に形成された曲げ加工部材を1または2本用い、前記1本の曲げ加工部材と1もしくは2枚の平板状部材の端部同士、または、前記2本の曲げ加工部材の端部同士を溶接接合することにより角筒状に形成することを特徴とする角筒状構造体の製造方法。
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