JP2013220631A - 熱線遮断フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高効率の熱遮断性と、熱割れ防止性とを両立させ、さらには、製造コストが安く大面積化が可能であり、柔軟性があり、かつ可視光透過率が高い熱線遮断フィルムとその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一形態によれば、熱線遮断フィルムが提供される。本形態に係る熱線遮断フィルムは、屈折率が相互に異なる2層以上の屈折率層から構成される熱線反射ユニットを2つ以上含む誘電積層膜と、アップコンバージョン型波長変換物質を含有する波長変換層とを有し、波長変換層が誘電積層膜に対して光線の入射側とは反対の側に配置されている点に特徴を有するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱遮断性、可視光透過性、および熱割れ防止性に優れた熱線遮断フィルムおよびその製造方法に関する。
近年、省エネルギー対策への関心の高まりに呼応して、冷房設備にかかる負荷を減らす観点から、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する熱線遮断フィルムに対する要望が高まってきている。
太陽から放射される光は、紫外光領域から赤外光領域まで幅広いスペクトルを有している。可視光は、紫色から黄色を経て赤色光に至る波長380〜780nmの範囲であり、太陽光の約45%を占めている。赤外光については、可視光に近いものは近赤外線(波長780〜2500nm)と呼ばれ、それ以上は中赤外線と称され、太陽光の約50%を占めている。この領域の光エネルギーは、紫外線と比較するとその強さは約10分の1以下と小さいが、その一方で熱的作用は大きく、物質に吸収されると熱として放出されて温度上昇をもたらす。このため、近赤外線および中赤外線は熱線とも呼ばれ、これらの光線を遮蔽することにより、室内の温度上昇を抑制することができる。また、寒冷地の冬季の暖房熱を室外に逸散することを抑制することもできる。
熱線遮断フィルムとしては、熱線を反射するタイプ(例えば、特許文献1参照)、および、熱線を吸収するタイプ(例えば、特許文献2および3参照)が知られている。
熱線を吸収するタイプは主として、樹脂に金属酸化物や色素等の赤外吸収剤を添加してコーティングするタイプである。この場合、日射を吸収する部分と吸収しない部分が生じると、ガラス内の温度差が大きくなることから、ガラス板の熱割れを誘引する可能性が高いという問題があった。
一方、熱線を反射するタイプは、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層されてなる積層膜を、蒸着法、スパッタ法などのドライ製膜法を用いて形成する方法や、屈折率の異なる樹脂層を多層構成にする多層フィルムとして提案されている。
この熱線を反射するタイプは、熱割れ等の問題はないものの、ドライ製膜法や多層フィルム製膜法で製造する場合には、積層膜形成に用いる真空装置等が大型であったり、製膜装置が複雑であったりすることで製造コストが高騰し、大面積化が困難であるという問題がある。また、得られた熱戦遮断フィルムは柔軟性に乏しいという問題も抱えている。
さらに近年では、省エネルギー対策への関心の高まりから、さらなる熱線遮断性向上への要望が高まっており、熱線の反射と吸収とを併用するタイプも提案されている(例えば特許文献4)。しかしながら、熱線の反射と吸収とを併用するタイプにおいても、熱線吸収タイプの根幹的問題である熱割れの誘因の虞は解決しておらず、熱割れの虞を低減しつつ高効率の熱線遮断性を有する熱線遮断フィルムに対する要望は依然として強い。
特開2007−331296号公報 特開2000−927号公報 特開平08−281860号公報 特表2008−528313号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、高効率の熱遮断性と、熱割れ防止性とを両立させ、さらには、製造コストが安く大面積化が可能であり、柔軟性があり、かつ可視光透過率が高い熱線遮断フィルムとその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.屈折率が相互に異なる2層以上の屈折率層から構成される熱線反射ユニットを2つ以上含む誘電積層膜と、
アップコンバージョン型波長変換物質を含有する波長変換層と、
を有し、
前記波長変換層が前記誘電積層膜に対して光線の入射側とは反対の側に配置されている、熱線遮断フィルム;
2.基材をさらに有し、
前記誘電積層膜が前記基材の一方の面側に配置され、
前記波長変換層が前記基材の他方の面側に配置される、上記1に記載の熱線遮断フィルム;
3.前記波長変換物質が、850nmを超えて2500nm以下の波長の光を吸収し、400nmを超えて850nm以下の波長の光を発光する物質である、上記1または2に記載の熱線遮断フィルム;
4.前記波長変換物質が、希土類元素またはアルカリ金属元素を含む半導体粒子であり、かつ、1〜100nmの平均粒径を有する、上記1〜3のいずれか1項に記載の熱線遮断フィルム;
5.前記波長変換層の前記誘電積層膜とは反対側の面に、凸部の底面の円換算平均直径が20〜300nmの凹凸パターンが設けられている、上記1〜4のいずれか1項に記載の熱線遮断フィルム;
6.前記屈折率層の少なくとも1つが、金属酸化物粒子および水溶性高分子を含有する、上記1〜5のいずれか1項に記載の熱線遮断フィルム;
7.上記1〜6のいずれか1項に記載の熱線遮断フィルムの製造方法であって、当該熱線遮断フィルムを構成する層の少なくとも1つを、水系塗布液を用いて形成する工程を含む、製造方法。
本発明に係る上記手段によれば、高効率の熱遮断性と、熱割れ防止性とを両立させ、さらには、製造コストが安く大面積化が可能であり、柔軟性があり、かつ可視光透過率が高い熱線遮断フィルムとその製造方法が提供されうる。
本発明の一実施形態に係る熱線遮断フィルムを示す模式断面図である。 図1に示す凹凸パターン132の拡大斜視図である。 本発明の一実施形態に係る熱線遮断フィルムの変形例を示す模式断面図である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
≪熱線遮断フィルム≫
本発明の一形態によれば、熱線遮断フィルムが提供される。本形態に係る熱線遮断フィルムは、屈折率が相互に異なる2層以上の屈折率層から構成される熱線反射ユニットを2つ以上含む誘電積層膜と、アップコンバージョン型波長変換物質を含有する波長変換層とを有し、波長変換層が誘電積層膜に対して光線の入射側とは反対の側に配置されている点に特徴を有するものである。
図1は、本発明の一実施形態に係る熱線遮断フィルムを示す模式断面図である。
図1に示すように、本実施形態の熱線遮断フィルム10は、まず、基材110(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる透明樹脂フィルムなど)を有する。そして、基材110の一方の面には、誘電積層膜120が配置されている。誘電積層膜120は、屈折率が異なる2つの屈折率層(すなわち、低屈折率層122および高屈折率層124)から構成される熱線反射ユニット126を含んでいる。より具体的には、誘電積層膜120は、低屈折率層122および高屈折率層124が交互に積層された構成を有している。
一方、本実施形態の熱線遮断フィルム10において、基材110の誘電積層膜120が形成されているのとは反対の側には、波長変換層130が配置されている。この波長変換層は、アップコンバージョン型波長変換物質(例えば、無機系半導体粒子など)を含有している。そして、波長変換層130の基材110とは反対側の表面には、いわゆるモスアイ構造と称される凹凸パターン132が設けられている。この凹凸パターンの凸部の底面の円換算平均直径は、20〜300nmである。なお、図1においては、基材110に対して誘電積層膜120が形成された側(図1に示す上方)が光線の入射側である。つまり、図1に示す実施形態に係る熱線遮断フィルムは、誘電積層膜120の側から太陽光等の光線が入射するように配置されて用いられる。
図1に示す実施形態に係る熱線遮断フィルム10によれば、熱線反射層である誘電積層膜120の側(図1に示す上方)から太陽光等の光線が入射したときに、誘電積層膜120で反射されずに透過した熱線(赤外線)が、アップコンバージョン型波長変換物質によって可視光領域の波長へと変換される。その結果、熱的作用が低減されてフィルムの熱割れが抑制され、高効率の熱線遮断性を有する熱線遮断フィルムを得ることができる。
以下、本発明とその構成要素、および本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用する。
《基材》
本発明に係る基材(「支持体」とも称する)110としては、透明の有機材料で形成されたものであれば特に限定されない。
例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、さらには前記樹脂が2層以上積層されてなる樹脂フィルム等が挙げられる。製造コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
基材の厚さは、5〜200μm程度が好ましく、さらに好ましくは15〜150μmである。
また、本発明に係る基材の、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率は好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。基材の透過率がかような範囲内の値であると、熱線遮断フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を50%以上にするという点で有利であり、好ましい。
また、上記樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点からは延伸フィルムが好ましい。
本発明に用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸;MD)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸;TD)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、本発明に用いられる基材は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された基材は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
本発明に係る基材には、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明において、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂およびゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
《誘電積層膜》
本発明に係る熱線遮断フィルム10においては、基材110の一方の面に誘電積層膜120が配置される。この誘電積層膜120は、屈折率が相互に異なる2層以上の屈折率層から構成される熱線反射ユニット126を2つ以上含む。ここで、図1に示す実施形態における熱線反射ユニット126は、屈折率の異なる2つの屈折率層(すなわち、低屈折率層122および高屈折率層124)が交互に合計15層積層された構成となっている(両最外層は低屈折率層122)。ただし、かような構成のみには限定されず、屈折率の異なるさらに他の屈折率層(例えば、中屈折率層)も含めた3種以上の屈折率層が繰り返し積層されることで誘電積層膜を構成してもよい。本実施形態の説明では、屈折率が相互に異なる2層以上の層のうち、相対的に屈折率が高い層を「高屈折率層」と称し、相対的に屈折率が低い層を「低屈折率層」と称するものとする。
熱線遮断フィルムの反射タイプにおいては、高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率の差が大きいほど、少ない層数で熱線(赤外)反射率を高くすることができるという観点からは好ましい。ただし、本発明では、高屈折率層と低屈折率層とから構成される熱線反射ユニットの少なくとも2つ以上で、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましい。この屈折率差は、さらに好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.4以上である。
熱線反射ユニットの数は、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差によるが、好ましくは40ユニット以下(低屈折率層および高屈折率層の交互積層構造の場合には計80層以下)、より好ましくは20ユニット以下(低屈折率層および高屈折率層の交互積層構造の場合には計40層以下)であり、さらに好ましくは10ユニット以下(低屈折率層および高屈折率層の交互積層構造の場合には計20層以下)である。
なお、本発明において、屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
基材上に、屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所株式会社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止し、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
本発明における高屈折率層の好ましい屈折率は1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率は1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
本発明の熱線遮断フィルムにおいて、誘電積層膜を構成する屈折率層のうち、基材に隣接する層が低屈折率層であり、最表層(基材から最も遠い層)も低屈折率層であることが好ましい。
本発明における誘電積層膜を構成する屈折率層のうち、少なくとも1つが金属酸化物粒子および水溶性高分子を含有することが好ましく、すべての屈折率層が金属酸化物粒子および水溶性高分子を含有することが特に好ましい。以下、屈折率層に含まれる材料について、説明する。
〔金属酸化物粒子〕
金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどの粒子が挙げられる。
屈折率層における金属酸化物粒子の含有量は、それぞれの屈折率層の全量100質量%に対して、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは60〜90質量%である。屈折率層における金属酸化物粒子の含有量が50質量%以上であれば、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差を大きくすることが容易となる。一方、屈折率層における金属酸化物粒子の含有量が95質量%以下であれば、膜の柔軟性が得られ、熱線遮断フィルムを形成することが容易となる。
本発明に係る高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、ジルコンが挙げられる。本発明において、屈折率を調整するために、高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子は1種であっても2種以上を併用してもよい。
本発明では、透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層は、チタン、ジルコニア等の高屈折率を有する金属酸化物粒子、すなわち、酸化チタン粒子、酸化ジルコニア粒子を含有することが好ましい。また、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を含有することがより好ましい。また、複数種の酸化チタン粒子を混合してもよい。
本発明の高屈折率層に含まれる金属酸化物粒子は、その平均粒径(個数平均)が3〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであることがより好ましい。なお、本明細書中、金属酸化物粒子の平均粒径(個数平均)は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
また、高屈折率層に含まれる金属酸化物粒子は、体積平均粒径が50nm以下であることが好ましく、1〜45nmであることがより好ましく、5〜40nmであるのがさらに好ましい。体積平均粒径が50nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
ここでいう体積平均粒径とは、媒体中に分散された一次粒子または二次粒子の体積平均粒径であり、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法等により測定できる。
具体的には、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径を算出する。
高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子として好ましい酸化チタン粒子としては、酸化チタンゾルの表面を変性して水または有機溶剤等に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。
水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合、酸化チタン粒子のその他の製造方法については、例えば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、またはWO2007/039953号明細書の段落番号0011〜0023に記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。 本発明に係る高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、二酸化ケイ素を用いることが好ましく、コロイダルシリカを用いることが特に好ましい。
本発明の低屈折率層に含まれる金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径(個数平均)が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
本発明で用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、例えば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号パンフレットなどに記載されているものである。
このようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、日産化学工業(株)から販売されているスノーテックスシリーズ(スノーテックスOS、OXS、S、OS、20、30、40、O、N、C等)が挙げられる。
コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理された物であってもよい。
〔水溶性高分子〕
屈折率層に水溶性高分子が含まれる場合、当該水溶性高分子は、バインダーとして機能する。
本発明において用いることができる水溶性高分子としては、特に反応性官能基を有するポリマー、無機ポリマー、増粘多糖類およびゼラチンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係る水溶性高分子でいう「水溶性」とは、水媒体に対し30質量%以上溶解する高分子化合物であり、好ましくは40質量%以上である。
以下、各水溶性高分子の詳細について説明する。
(反応性官能基を有するポリマー)
本発明において用いることができる水溶性高分子の1つとしては、反応性官能基を有するポリマーが挙げられ、これを必須に含有することが好ましい。
かようなポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体およびそれらの塩が挙げられる。なかでも、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類およびそれを含有する共重合体が挙げられる。
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000〜200,000が好ましく、3,000〜40,000がより好ましい。なお、水溶性高分子の重量平均分子量は、以下の測定方法により測定される。
(水溶性高分子の重量平均分子量の測定方法)
GPC−LALLS法により以下の条件で測定する。
1)GPC
装置:Waters製244型ゲル浸透クロマトグラフ
カラム:東ソー(株)製TSK−gel−GMPWXL(内径8mm、長さ30cm、2本)
溶媒:0.1M−トリス緩衝液(pH7.9)
流速:0.5ml/分
温度:23℃
試料濃度:0.040%
ろ過:東ソー(株)製0.45μmマイショリディスクW−25−5
注入量:0.2ml
検出感度(示差屈折率検出器):4倍
2)LALLS
装置:Chromatrix製KMX−6型低角度レーザー光散乱光度計
温度:23℃
波長:633nm
第2ビリアル係数×濃度:0mol/g
屈折率濃度変化(dn/dc):0.159ml/g
フィルター:MILLIPORE製0.45μmフィルターHAWP01300
ゲイン:800mV。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体および特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種以上を併用することもできる。
本発明において、反応性官能基を有するポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。反応性官能基を有するポリマーがポリビニルアルコールの場合には、後述するホウ酸およびその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
上述した反応性官能基を有するポリマーが用いられる場合、その添加量は、金属酸化物粒子100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、3〜10質量部がさらに好ましい。
(無機ポリマー)
本発明において用いることができる水溶性高分子の一つとしては、ジルコニウム原子含有化合物あるいはアルミニウム原子含有化合物等の無機ポリマーを用いることが好ましい。
本発明に適用可能なジルコニウム原子を含む化合物は、酸化ジルコニウムを除くものであるが、その具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウム等が挙げられる。
これらの化合物のなかでも、塩化ジルコニル、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、ステアリン酸ジルコニルが好ましく、更に好ましくは、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニルであり、特に好ましくは、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルである。上記化合物の具体的商品名としては、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZA−20(酢酸ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZC−2(塩化ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZN(硝酸ジルコニル)等が挙げられる。
上記ジルコニウム原子を含む無機ポリマーのうちの代表的な化合物の構造式を下記に示す。
ただし、s、tは1以上の整数を表す。
ジルコニル原子を含む無機ポリマーは、単独で用いてもよいし、異なる2種類以上の化合物を併用してもよい。
また、本発明で用いることのできる分子内にアルミニウム原子を含む化合物には、酸化アルミニウムは含まず、その具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等が挙げられる。
これらのなかでも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。上記化合物の具体的商品名としては、多木化学製のポリ塩化アルミニウム(PAC)であるタキバイン#1500、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、(株)理研グリーン製のピュラケムWTが挙げられ、各種グレードのものが入手可能である。
下記に、タキバイン#1500の構造式を示す。
ただし、s、t、uは1以上の整数を表す。
上述した無機ポリマーが用いられる場合、その添加量は、金属酸化物粒子100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、2〜50質量部がさらに好ましい。
(増粘多糖類)
本発明においては、水溶性高分子として、増粘多糖類を用いることも好ましい。
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類および合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり、低温時の粘度と高温時との粘度差を助長する特性を備えている。さらに、本発明に係る増粘多糖類を、金属酸化物微粒子を含む塗布液に添加することにより、粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加により15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、さらに好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸およびアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化物粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
本発明においては、さらに、2種以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。 屈折率層に増粘多糖類が用いられる場合における増粘多糖類の含有量は、屈折率層の全量100質量%に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。ただし、その他の水溶性高分子やエマルジョン樹脂等と併用する場合には、3質量%以上含有すればよい。増粘多糖類がこの程度の量で含まれれば、塗膜乾燥時における膜面の乱れやこれに伴う透明性の低下が防止されうる。一方、増粘多糖類の含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物粒子の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差を大きくすることが容易になる。
(ゼラチン)
本発明に係るゼラチンとしては、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチンおよびゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応しうる基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。
以上、水溶性高分子の好ましい形態について説明したが、各屈折率層において、金属酸化物粒子(F)とバインダーである水溶性高分子(B)との質量比(F/B)は、0.5〜20の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10である。
(硬化剤)
本発明において、屈折率層がバインダーとして水溶性高分子を含む場合には、当該水溶性高分子を硬化させるための硬化剤を屈折率層に添加することが好ましい。
本発明に適用可能な硬化剤としては、水溶性高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限はない。水溶性高分子がポリビニルアルコールである場合には、ホウ酸およびその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性高分子と反応しうる基を有する化合物あるいは水溶性高分子が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性高分子の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
ホウ酸またはその塩とは、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩を意味し、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でもよいし、また、2種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂との混合水溶液である。
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性高分子1g当たり1〜600mgが好ましい。
〔界面活性剤〕
誘電積層膜を構成する屈折率層の少なくとも1つ(好ましくはすべて)には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤種としてはアニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれを使用することもできる。特にアセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤およびフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
本発明に係る屈折率層が界面活性剤を含む場合の界面活性剤の添加量は、屈折率層の全量100質量%に対して、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。
〔その他の添加剤〕
屈折率層は、以下のようなその他の添加剤を含んでもよい。
(アミノ酸)
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよいが、等電点が6.5以下のアミノ酸であることが好ましい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、等電点が6.5以下のいずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
本発明に適用可能なアミノ酸に関する詳しい解説は、化学大辞典1 縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
本発明において、好ましいアミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン等を挙げることができ、水溶液として使用するためには、等電点における溶解度が、水100に対し、3g以上が好ましく、たとえば、グリシン、アラニン、セリン、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが好ましく用いられ、金属酸化物粒子が、バインダーと緩やかな水素結合を有する観点から、水酸基を有する、セリン、ヒドロキシプロリンを用いることがさらに好ましい。
本発明において、アミノ酸の添加量としては、屈折率層に含まれる金属酸化物粒子100質量%に対して、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。
〔リチウム化合物〕
本発明に適用可能なリチウム化合物としては、特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、オロト酸リチウム、クエン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、塩化リチウム、水素化リチウム、水酸化リチウム、臭化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、ステアリン酸リチウム、リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化トリエトキシアルミニウムリチウム、タンタル酸リチウム、次亜塩素酸リチウム、酸化リチウム、炭化リチウム、窒化リチウム、ニオブ酸リチウム、硫化リチウム、ホウ酸リチウム、LiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等が挙げられ、その中でも水酸化リチウムが好ましい。
本発明において、リチウム化合物の添加量としては、屈折率層に含まれる金属酸化物粒子100質量%に対して、好ましくは0.5〜5質量%であり、より好ましくは1〜3質量%である。
(エマルジョン樹脂)
本発明でいうエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを、分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を用いて乳化重合させた樹脂微粒子である。
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
本発明に係るエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10,000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
本発明に係る熱線反射ユニットを構成する屈折率層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報および同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
《波長変換層》
本発明の熱線遮断フィルムは、アップコンバージョン型波長変換物質を含有する波長変換層を有するものである。図1に示す実施形態において、かような波長変換層130は基材110の誘電積層膜120とは反対側の面に形成されている。
(波長変換物質)
本発明において、「アップコンバージョン型波長変換物質」とは、赤外線を吸収し、より波長の短い光(例えば、可視光)へと変換して放出する特性を有する波長変換物質である。このような物質自体は広く知られており、本発明においても従来公知のいかなる材料も用いられうる。
特に、熱線遮断性を向上させるという観点からは、波長変換物質が吸収する赤外線の波長は850nmを超えて2500nm以下であることが好ましく、850nmを超えて1400nm以下であることがより好ましい。また、波長変換物質が放出する、赤外線よりも波長の短い光の波長は、400nmを超えて850nm以下であることが好ましく、500nmを超えて700nm以下であることがより好ましい。
従来、熱線遮断フィルムで使用されていたITOやWO等の赤外吸収物質では、赤外線を吸収して熱に変換することから、フィルムの熱割れとの両立が技術的に困難であった。これに対し、本発明では、赤外線をより短波長側の光に変換するアップコンバージョン型波長変換物質を利用することで、赤外線の吸収による熱の発生を抑えることができ、熱割れとの両立が可能となったものである。
アップコンバージョン型波長変換物質としては、例えば無機系の半導体粒子、ローダミン、ベンゾチアジアゾール等の発光性有機化合物等が挙げられる。これらのなかでも、無機系の半導体粒子が好ましい。これにより、長波長の側の光を短波長側に波長変換させる効率を向上させることができる。
無機系の半導体粒子としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、窒化ガリウム(GaN)、酸化イットリウム(Y)、イットリウム・バナデート(VYO)、リン化インジウム(InP)等が挙げられる。これらのなかでも、酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、酸化イットリウム(Y)、イットリウム・バナデート(VYO)およびリン化インジウム(InP)の中から選ばれる1種以上が好ましい。これらは、赤外線を吸収し、可視領域で発光する物質として実績があり、これらにより、光の変換効率を向上することができる。
上述したようなアップコンバージョン型波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)は、希土類元素を含有する(ドープしている)ことが好ましい。これにより、励起発光波長帯をより好ましい波長領域に調節することができる。
前記希土類元素としては、例えば原子番号57から71までのランタノイド元素と、スカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)とからなる17元素を、1種または2種以上組み合わせて用いることができるが、特にユーロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)の1種または2種以上を組み合わせたものが好ましい。これらの希土類元素は、特に優れた波長変換機能を有するものであるため、無機系の半導体粒子中に含まれる希土類元素として好適である。このように、アップコンバージョン型波長変換物質(無機系の半導体粒子)が希土類元素を有することにより、発光波長等の発光特性の制御が可能となる。
また、アップコンバージョン型波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)は、2種類以上の希土類元素を含んでいるのが好ましい。半導体粒子中に2種類以上の希土類元素が含まれていると、それぞれでエネルギーの異なる励起状態を有することになり、相互にエネルギーの授受が行われることとなる。その結果、半導体粒子は、より多くの光量を吸収することができるようになり、発光特性が向上するのである。
また、アップコンバージョン型波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)は、さらにアルカリ金属元素を含むものであってもよい。これにより、さらにアップコンバージョン型波長変換物質の発光特性の向上を図ることができる。
前記アルカリ金属元素は、それ単独で半導体材料に作用させるよりも、希土類元素とともに相乗的に作用させることが好ましい。すなわち、アップコンバージョン型波長変換物質(無機系の半導体粒子)に希土類元素とアルカリ金属元素とを添加することにより、これらの元素を単独で含む場合に比べて、相対的に優れた波長変換機能と、高い発光特性(発光効率)とを併せ持つことが可能となる。これは、アルカリ金属元素が、希土類元素由来の発光を阻害する失活部位を中和する機能を有するためである。この機能により、この種のアップコンバージョン型波長変換物質は、より小さい粒子サイズでも発光を示すと考えられる。
前記アルカリ金属元素としては、長周期元素周期表で第1族に属する元素であれば特に限定されないが、リチウム(Li)およびナトリウム(Na)が好ましく用いられ、リチウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属元素は、アップコンバージョン型波長変換物質(無機系の半導体粒子)内に取り込まれることで、発光失活の原因をブロックするため、アップコンバージョン型波長変換物質の発光特性の向上に大きく寄与するものである。また、リチウムがより好ましく用いられるのは、ナトリウムよりもイオン半径が小さく、アップコンバージョン型波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)の結晶内により取り込まれやすいため、より発光失活を防ぐ効果があるためである。
アルカリ金属元素の含有量は、特に限定されないが、希土類元素の含有量100質量%に対して1〜20質量%程度であるのが好ましく、3〜15重量%程度であるのがより好ましい。アルカリ金属元素の含有量を前記範囲内とすることにより、前述した効果がより顕著なものとなり、希土類元素における波長変換機能の発現を阻害する虞も低減される。
アップコンバージョン型波長変換物質(無機系の半導体粒子)に希土類元素等をドープする方法としては、例えばゾルゲル法やソルボサーマル法等の液相法、火炎法やスパッタリング法等の気相法等が挙げられる。
また、アップコンバージョン型波長変換物質として無機系の半導体粒子を用いる場合は、前記無機系の半導体粒子およびこの無機系の半導体粒子と異なる無機化合物の粒子を含む複合粒子であることが好ましい。これにより、アップコンバージョン型波長変換物質の耐久性をより向上させることができる。
ここで、上述した複合粒子の形態としては、前記無機化合物の粒子と前記無機系の半導体粒子とが混合されている場合、前記無機系の半導体粒子と前記無機化合物とが表面で付着している場合、前記無機系の半導体粒子が前記無機化合物の粒子中に含まれる場合、前記無機系の半導体粒子の周囲を前記無機化合物の粒子で被覆している場合等が挙げられる。これらのなかでも、前記無機系の半導体粒子の周囲を前記無機化合物の粒子で被覆している場合が好ましい。これにより、波長変換物質の耐久性をより向上させることができる。
前記無機化合物の粒子としては、ZnO、SiO、ZnS、GaN、CdS、GaP、CdS、ZrO、YVO、Yの粒子が挙げられる。これらのなかでも、シリカ(SiO)およびジルコニア(ZrO)の少なくとも1つの粒子が好ましい。これにより、波長変換物質の耐久性や、発光量子収率等の発光特性を向上することができる。
アップコンバージョン型波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)の平均粒径は、特に限定されないが、1〜100nmが好ましく、特に1〜50nmが好ましい。平均粒径が前記範囲内であると、量子サイズ効果等により、波長変換特性である吸収・発光特性が向上する。また樹脂への分散性が向上し、樹脂に粒子を高充填し波長変換特性を向上できるばかりか、可視光領域で透明な樹脂組成物を得ることができる。
前記平均粒径は、例えば動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、透明分散液の状態で評価することができる。また、電界放射型透過型電子顕微鏡(FE−TEM、日立製作所製、HF−2200)を用いた場合、粒子の粒径を粉末の状態で評価することができる。
(バインダー)
波長変換層130において、アップコンバージョン型波長変換物質は、バインダーによって固定化されていることが好ましい。例えば、バインダーが後述する樹脂の場合、樹脂はバインダーの機能とともにベース樹脂となり、波長変換層の基本の構成になる。
このようなバインダーとしては、樹脂、カップリング剤、上述したアップコンバージョン型波長変換物質とは異なる無機材料(具体的にはシリカ、ジルコニア、ガラス、石英等)等を用いることができる。これらのなかでも樹脂が好ましく、バインダーとして樹脂を用いることで波長変換層の形成を容易にすることができる。このようなバインダーは透明であることが好ましく、これにより波長変換物質の吸収波長以外の波長を充分に透過させることが可能となる。
バインダーに用いられる樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂等が挙げられる。これらを用いることにより、樹脂組成物の光透過性をより高めることができる。硬化性樹脂タイプが好ましいが、特に生産性、硬度、平滑性、透明性の観点から、紫外線硬化樹脂が好ましい。
紫外線硬化樹脂としては、硬化によって透明な樹脂組成物を形成するものであれば特に制限なく使用でき、特に好ましくは、硬度、平滑性、透明性の観点からアクリル系樹脂および光重合開始剤を含む重合性組成物が用いられる。
アクリル系樹脂を構成するモノマーとしては、ラジカル反応性不飽和結合を有するアクリレート化合物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーが挙げられる。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどのオキセタン類等が挙げられる。上記のようなモノマーの任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している樹脂であれば特に制限なく用いられうる。
光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、1種または2種以上の組み合わせとして使用することができる。
本発明に係るアクリル系樹脂は、硬度、平滑性、透明性の観点から、国際公開2008/035669号に記載されているような表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むことが好ましい。ここで、光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また、感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。また重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。ここで、反応性シリカ粒子の平均粒径としては、0.001〜0.1μmの平均粒径であることが好ましい。平均粒径をこのような範囲にすることにより、透明性、平滑性、硬度をバランスよく満たすことができる。
また、本発明に係るアクリル系樹脂には、屈折率を調整できるという点で、含フッ素ビニルモノマーを用いることもできる。含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学工業株式会社製)やR−2020(商品名、ダイキン工業株式会社製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。
波長変換層130におけるアップコンバージョン型波長変換物質の含有量は特に限定されないが、波長変換層130全体の10〜70体積%が好ましく、特に40〜60体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に樹脂組成物の成形性を確保することができ、かつ、樹脂組成物中において波長変換物質の充填性が確保されるため、波長変換物質が規則的に均一に配列しやすくなる。その結果、樹脂組成物を層状に成形した場合、層の透明性を向上することができ、赤外線の吸収を均一にして、熱線遮断性を向上することができる。
上述したようなバインダーに樹脂を用いた波長変換層は、波長変換物質およびバインダー(樹脂)(および必要に応じて硬化剤等の添加剤)を溶媒中に含む組成物(塗布液)を、例えばドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等により塗布し、加熱や紫外線照射によって硬化させることで形成されうる。なお、溶媒としては、従来公知のものが適宜採用されうる。
波長変換層130の厚さは、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、特に5〜50μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に波長を変換した後の光の透過性と、850nmを超えて2500nm以下である波長の光の変換に優れる。また、波長変換層130は組成の異なる2層以上が積層されてなる構成を有していてもよい。さらに、他の波長変換物質を含んで構成される波長変換層との併用や積層も可能である。例えば、紫外線や可視光を吸収して長波長側に発光する蛍光タイプの波長変換物質を含有する層との積層等の形態が挙げられる。
なお、波長変換層130には、必要に応じて、酸化防止剤、可塑剤、マット剤、熱可塑性樹脂等の添加剤を加えることができる。
(凹凸パターン)
本発明においては、図1に示すように、波長変換層130の露出表面に凸部の底面の円換算平均直径が20〜300nmの凹凸パターンが設けられていることが好ましい。図2は、図1に示す凹凸パターン132の拡大斜視図である。この凹凸パターン132を構成する凸部の底面の円換算直径(図2に示すD)の平均値(円換算平均直径)は20〜300nmである。かような凹凸パターン132を設けることで、波長変換層130に入射する、太陽光等の入射側とは反対側(例えば、室内側)からの光は全波長にわたって界面反射を抑えて取り込むことが可能となり、例えば屋外からの視認性が良化する。一方、波長変換層130で波長変換されて太陽光等の入射側とは反対側(例えば、室内側)に向かって放出された光のうち、臨界角よりも外側の光は全反射によって戻されることで、発光による例えば室内からの視認性の劣化を抑制することができる。
凹凸パターン132を構成する凸部の底面の円換算平均直径Dが20nm以上であれば、凹凸パターンを容易に形成することができる。また、凹凸パターン132を構成する凸部の底面の円換算平均直径Dが300nm以下であれば、波長変換層130で波長変換されて放出された光による視認性の劣化を十分に抑制することができる。凹凸パターン132を構成する凸部の底面の円換算平均直径Dは50〜250nmであることがより好ましい。
凹凸パターン132を構成する凸部の高さ(図2に示すH)は、100〜1000nmであることが好ましい。凸部の高さHが100nm以上であれば、入射する太陽光の界面反射を十分に抑えることができる。また、凸部の高さHが1000nm以下であれば、凹凸パターンの強度を十分に確保することができる。凸部の高さHは200〜800nmであることがより好ましい。凸部の高さHは、原子間力顕微鏡、共焦点顕微鏡、レーザー顕微鏡等の各種顕微鏡を用いて測定することができる。なお、凸部の形状は特に制限されないが、三角柱、四角柱、六角柱、円柱、三角錐、四角錐、六角錐、円錐、半球、多面体、釣鐘等が挙げられる。
凹凸パターンを構成する凸部の間隔(ピッチ;図2に示すP)は、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましい。また、凹凸パターンは周期的な構造であってもよく、また、ランダムな構造であってもよい。凹凸パターンが周期的な構造である場合、凹凸パターンの面内周期は、300nm〜50μmであることが好ましい。凹凸パターンの面内周期を前記範囲内とすることにより、凹凸パターンの表面で光が反射される確率を特に低下させ、凹凸パターンの反射防止機能を特に高めることができる。
凸部の底面の円換算平均直径や凹凸パターンを構成する凸部の間隔は、例えば、走査型プローブ顕微鏡により測定できる。
具体的には、走査型プローブ顕微鏡により凹凸形状を測定し、凹凸のない平滑部の同じ高さで凸部を切り取った時の凸部の底面の面積を求め、それと同面積となる円の直径を底面の円換算直径として求めることができる。また、任意の凸部とその凸部から最も近くにある隣接凸部との底面間の距離を求めて凸部の間隔とする。
凸部の底面の円換算平均直径、凸部の間隔は、それぞれ50個以上の凸部について求めた平均値とする。
波長変換層130の表面に凹凸パターンを形成する方法としては、ドット状のマスクを設けてウェットまたはドライエッチングする方法や、インプリント法などが挙げられるが、作業が煩雑でないインプリント法が好ましく利用されうる。
インプリント法としては、従来公知の方法が利用されうるが、例えば、微細凹凸構造を表面に有するモールドの表面に硬化性樹脂層を塗布し、硬化処理した後にモールドから剥離する方法や、微細凹凸構造を表面に有するモールドの表面に硬化性樹脂層を塗布して部分的に硬化処理した後、部分硬化した樹脂層に基材を貼り合わせて硬化性樹脂層をさらに硬化させモールドから剥離する方法などが利用されうる。硬化処理としては、熱処理や紫外線照射処理などが挙げられる。
図1に示す実施形態において、波長変換層130は基材110の誘電積層膜120とは反対側の面に形成されている。ただし、本発明に係る波長変換層130は、誘電積層膜120に対して光線の入射側とは反対の側に配置されていればよい。例えば、基材110と誘電積層膜120との間に、波長変換層130が配置されても、本願発明の作用効果は奏される。また、基材110が波長変換層130を兼ねることもできる(図3を参照)。この場合、上述した基材110の構成材料(樹脂)中に、アップコンバージョン型波長変換物質を分散させることでかような構成の熱線遮断フィルムを作製することが可能である。さらに、上述したいずれの配置形態であっても、波長変換層130の誘電積層膜120とは反対側の面には、所定の凹凸パターンを設けることが好ましい。
ただし、本発明の作用効果をより一層発現させるという観点、および、凹凸パターンの形成がより容易であるという観点からは、図1に示すように、基材110とは別の層として構成される波長変換層130が、基材110に対して誘電積層膜120とは反対の側に配置される形態が好ましい。
≪熱線遮断フィルムの製造方法≫
本発明の熱線遮断フィルムの製造方法としては、種々の方法を採用しうる。本発明に係る製造方法は、熱線遮断フィルムを構成する層の少なくとも1つを、水系塗布液を用いて形成する工程を含むことが好ましい。特に、本発明の熱線遮断フィルムは、屈折率の異なる2層以上の屈折率層から構成される熱線反射ユニットを有するものであるが、この熱線反射ユニットを構成する屈折率層を、水系の高屈折率層用塗布液および水系の低屈折率層用塗布液を交互に湿式塗布、乾燥して熱線反射ユニットを形成する工程を含むことが好ましい。かような構成とすることにより、製造コストを低減させることができ、大面積化が可能であり、柔軟性があり、かつ可視光透過率が高い熱線遮断フィルムを得ることができる。
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
塗布液の粘度をかような範囲に制御するには、例えば、塗布液に含まれる溶媒や水溶性高分子の量(濃度)を調節すればよい。一例として、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液における水溶性高分子の濃度は、0.3〜3.0質量%であることが好ましく、0.35〜2.0質量%であることがより好ましい。
塗布および乾燥方法としては、水系の高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30℃以上に加温して塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件である。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
≪熱線遮断フィルムの用途≫
本発明に係る熱線遮断フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的などに用いられる。
特に、本発明に係る熱線遮断フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
本発明に係る熱線遮断フィルムを窓ガラスなどに貼り合わせる場合には、熱線遮断フィルムが窓ガラス等に対して日光(熱線)入射面側に配置され、かつ、熱線遮断フィルムにおける誘電積層膜が日光(熱線)入射面側に配置されるように設置する。また、熱線遮断フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき、耐久性の観点から好ましい。さらに、本発明に係る熱線遮断フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があるため、好ましい。
本発明に係る熱線遮断フィルムを接着剤を介して貼り合わせる場合に、適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。さらに粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系およびエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《熱線遮断フィルムの作製》
以下の手法により、実施例および比較例の熱線遮断フィルムを作製した。作製した熱線遮断フィルム1〜21の主要構成を下記の表1に示す。
(高屈折率層用塗布液1の調製)
〈酸化チタン分散液1の調製〉
体積平均粒径が35nmのルチル型酸化チタン微粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾル28.9部、14.8質量%のピコリン酸水溶液5.41部、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液3.92部を、混合、分散して酸化チタン分散液1を調製した。
次いで、純水10.3部に、増粘多糖類として1.0質量%の酸処理ゼラチン(等電点:9.5、平均分子量:2万)140.3部、14.8質量%のピコリン酸水溶液17.3部、ホウ酸の5.5質量%水溶液2.58部を、それぞれ添加、混合した。その後、上記で調製した酸化チタン分散液1 38.2部を添加、混合し、さらに、フッ素系カチオン性界面活性剤としてサーフロンS221(AGCセイミケミカル株式会社製)0.067部を添加し、最後に純水で223部に仕上げて、高屈折率層用塗布液1を調製した。なお、高屈折率層用塗布液1における界面活性剤であるサーフロンS221の含有量は0.03質量%であった。
(低屈折率層用塗布液1の調製)
〈酸化ケイ素分散液1の調製〉
ポリ塩化アルミニウム(多木化学株式会社製、タキバイン#1500、下記の表1には「PAC」と略記)の23.5質量%水溶液9.18部、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、スノーテックスOS)の水溶液(SiO濃度10質量%)510部、ホウ酸の5.5質量%水溶液103.4部、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液4.75部を、混合、分散し、純水で1000部に仕上げて、酸化ケイ素分散液1を調製した。
次いで、純水17.6部に、タマリンドシードガムの1.0質量%水溶液26.2部、ポリビニルアルコール(PVA217、株式会社クラレ製)の5.0質量%水溶液3.43部、ピコリン酸の2.1質量%水溶液0.06部を添加、混合した。その後、上記で調製した酸化ケイ素分散液1 96.5部を添加、混合し、さらに、フッ素系カチオン性界面活性剤としてサーフロンS221 0.045部を添加し、最後に純水で150部に仕上げて、低屈折率層用塗布液1を調製した。なお、低屈折率層用塗布液1における界面活性剤であるサーフロンS221の含有量は0.03質量%であった。
(最表層用塗布液の調製)
前記低屈折率層用塗布液1の調製において、フッ素系カチオン性界面活性剤であるサーフロンS221の塗布液全質量に対する添加量(0.03質量%)を0.06質量%に変更した以外は同様にして、最表層用塗布液を調製した。
(波長変換物質の調製)
〈半導体粒子Aの調製〉
硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO・6HO)、硝酸エルビウム六水和物(Er(NO・6HO)、硝酸イッテルビウム六水和物(Yb(NO・6HO)、および硝酸リチウム(LiNO)を、蒸留水100mLに溶解させた。この際、各化合物の添加量は、亜鉛イオン濃度が0.1Mとなり、亜鉛イオン:エルビウムイオン:イットリビウムイオン:リチウムイオン=97:0.2:1.3:1.0(モル比)となるように調整した。得られた溶液を温度80℃に保ちながら、そこに3当量のクエン酸を加え、その後、水酸化アンモニウムでpH7となるように中和した。この溶液を2時間撹拌して、目的の半導体粒子Aの分散液を得た。得られた分散液を、火炎法にて燃焼・乾燥させて、アップコンバージョン型波長変換物質である半導体粒子Aを調製した。なお、燃焼時の炉の温度は1100℃とし、キャリアガスには酸素を使用した。上記の操作の繰り返しで得た半導体粒子A 3.0gを大気下900℃で30分間焼成した後、エタノール100gに混合し、ジルコニアビーズを用いて分散処理を行い、半導体粒子Aが分散した透明な分散液(分散液A)を得た。電子顕微鏡で半導体粒子Aの平均粒径を確認したところ、23nmであった。
〈半導体粒子Bの調製〉
硝酸イットリウム六水和物(Y(NO・6HO)、硝酸ホルミウム六水和物(Ho(NO・6HO)、硝酸イッテルビウム六水和物(Yb(NO・6HO)、および硝酸リチウム(LiNO)を、蒸留水100mLに溶解させた。この際、各化合物の添加量は、イットリウムイオン濃度が0.1Mとなり、イットリウムイオン:ホルミウムイオン:イッテルビウムイオン:リチウムイオン=97:0.2:1.3:1.0(モル比)となるように調整した。得られた溶液を温度80℃に保ちながら、そこに3当量のクエン酸を加え、その後、水酸化アンモニウムでpH7となるように中和した。この溶液を2時間撹拌して、目的の半導体粒子Bの分散液を得た。得られた分散液を、火炎法にて燃焼・乾燥させて、アップコンバージョン型波長変換物質である半導体粒子Bを調製した。なお、燃焼時の炉の温度は1100℃とし、キャリアガスには酸素を使用した。上記の操作の繰り返しで得た半導体粒子B 3.0gを大気下900℃で30分間焼成した後、エタノール100gに混合し、ジルコニアビーズを用いて分散処理を行い、半導体粒子Bが分散した透明な分散液(分散液B)を得た。電子顕微鏡で半導体粒子Bの平均粒径を確認したところ、48nmであった。
〈半導体粒子Cの調製〉
硝酸イットリウム六水和物(Y(NO・6HO)、硝酸イッテルビウム六水和物(Yb(NO・6HO)、酢酸ツリウムx水和物(Tm(CHCOO)・xHO)
を、蒸留水100mLに溶解させた。この際、各化合物の添加量は、イットリウムイオン濃度が0.1Mとなり、イットリウムイオン:イッテルビウム:ツリウムイオン=30:58:2(モル比)となるように調整した。得られた溶液を温度80℃に保ちながら、そこに3当量のクエン酸を加え、その後、水酸化アンモニウムでpH7となるように中和した。この溶液を2時間撹拌して、目的の半導体粒子Cの分散液を得た。得られた分散液を、火炎法にて燃焼・乾燥させて、アップコンバージョン型波長変換物質である半導体粒子Cを調製した。なお、燃焼時の炉の温度は1100℃とし、キャリアガスには酸素を使用した。上記の操作の繰り返しで得た半導体粒子C 3.0gを大気下900℃で30分間焼成した後、エタノール100gに混合し、ジルコニアビーズを用いて分散処理を行い、半導体粒子Cが分散した透明な分散液(分散液C)を得た。電子顕微鏡で半導体粒子Cの平均粒径を確認したところ、34nmであった。
〈半導体粒子Dの調製〉
溶液の撹拌時間を2時間から1時間にしたこと以外は、上述した半導体粒子Aの調製と同様の方法によりアップコンバージョン型波長変換物質である半導体粒子Dを調製し、これが分散した透明な分散液(分散液D)を得た。電子顕微鏡で半導体粒子Dの平均粒径を確認したところ、236nmであった。
〈半導体粒子Eの調製〉
硝酸イットリウム六水和物(Y(NO・6HO)、および硝酸エルビウム六水和物(Er(NO・6HO)を、蒸留水100mLに溶解させた。この際、各化合物の添加量は、イットリウムイオン濃度が0.1Mとなり、イットリウムイオン:エルビウムイオン=99:1(モル比)となるように調整した。得られた溶液を温度80℃に保ちながら、そこに3当量のクエン酸を加え、その後、水酸化アンモニウムでpH7となるように中和した。この溶液を2時間撹拌して、目的の半導体粒子Eの分散液を得た。得られた分散液を、火炎法にて燃焼・乾燥させて、アップコンバージョン型波長変換物質である半導体粒子Eを調製した。なお、燃焼時の炉の温度は1100℃とし、キャリアガスには酸素を使用した。上記の操作の繰り返しで得た半導体粒子E 3.0gを大気下900℃で30分間焼成した後、エタノール100gに混合し、ジルコニアビーズを用いて分散処理を行い、半導体粒子Eが分散した透明な分散液(分散液E)を得た。電子顕微鏡で半導体粒子Eの平均粒径を確認したところ、43nmであった。
(波長変換層用塗布液1の調製)
日本合成化学株式会社製 UV−7600B(UV硬化型ハードコート材)100質量部に、光重合開始剤イルガキュア184(BASFジャパン株式会社製)5質量部、および上記で得られた分散液A(乾燥後の塗膜における固形分含有率で40質量%)になるように添加し、溶剤としてメチルエチルケトンで希釈して、固形分濃度30質量%の波長変換層用塗布液1を調製した。
(波長変換層用塗布液2の調製)
分散液Aに代えて、酸化インジウム錫(ITO)粉末(住友金属鉱山株式会社製、超微粒子ITO)を用いた以外は、波長変換層用塗布液1と同様にして波長変換層用塗布液2を調製した。
・熱線遮断フィルム1の作製
(誘電積層膜の形成)
まず、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、A4300:両面易接着層付き)を基材として準備した。
次いで、15層同時塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用いて、上記で調製した低屈折率層用塗布液1および高屈折率層用塗布液1、並びに最表層用塗布液を45℃に保温しながら同時重層塗布した。この際、層構成としては、低屈折率層用塗布液1および高屈折率層用塗布液1を低屈折率層用塗布液1が基材に接するように交互に7層ずつ計14層積層し、その上に最表層用塗布液をさらに積層した。
その後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、基材上に15層からなる誘電積層膜を形成して、熱線反射積層体フィルム1を作製した。
(波長変換層の形成)
上記で作製した熱線反射積層体フィルム1を構成する基材の、誘電積層膜を形成したのとは反対側の面に、上記で調製した波長変換層用塗布液1をワイヤーバーで塗布した。この際、塗布、乾燥後の塗膜の平均膜厚が4μmとなるように塗布量を調整した。次いで、空気雰囲気下で、UV硬化装置(アイグラフィックス株式会社製、高圧水銀ランプ使用)にて、硬化条件;400mJ/cmで硬化を行い、その後乾燥条件;80℃、3分で乾燥して波長変換層を形成して、熱線遮断フィルム1を作製した。
・熱線遮断フィルム2の作製
アップコンバージョン型波長変換物質として、半導体粒子Aに代えて下記の構造を有する色素を用いた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム2を作製した。
・熱線遮断フィルム3の作製
アップコンバージョン型波長変換物質として、半導体粒子Aに代えて半導体粒子Bを用いた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム3を作製した。
・熱線遮断フィルム4の作製
アップコンバージョン型波長変換物質として、半導体粒子Aに代えて半導体粒子Cを用いた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム4を作製した。
・熱線遮断フィルム5の作製
アップコンバージョン型波長変換物質として、半導体粒子Aに代えて半導体粒子Dを用いた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム5を作製した。
・熱線遮断フィルム6の作製
アップコンバージョン型波長変換物質として、半導体粒子Aに代えて半導体粒子Eを用いた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム6を作製した。
・熱線遮断フィルム7の作製
(レーザー干渉露光によるモールド1の作製)
石英ガラス基板(厚み1.2mm、70mm角)にレジストをスピンコートで塗布した。この際。レジスト材料としては、露光部分のレジストを除去するポジ型レジストを用いた。
液浸露光光学系を用いて、レジストに微細なパターンを描画した。液浸露光光学系は、紫外線レーザー(波長266nm) を使用して、石英ガラス基板の法線方向に対する傾き15度で2つの光束を照射してレジストに第1の干渉縞を形成し、第1の露光を行った。レーザー光源としては「コヒーレント社製MBD266」を用いた。次に、石英ガラス基板を90度回転させ、第1の干渉縞に直交する第2の干渉縞を形成して、第2の露光を行った。第1の露光および第2の露光で、干渉縞の明るい部分が交差した部分のみが残るように現像を行った。以上のプロセスで、石英ガラス基板上に、底面の円換算直径が250nm、深さ500nmのホールが間隔250nmで規則正しく並んだレジストを形成した。ドライエッチングで石英ガラスに描画サイズ50mm角の微細なホール構造(底面の円換算直径が250nm、深さ500nm、間隔250nm)を形成し、モールド母型を得た。
母型からNi電鋳により、直径150nm、ピッチ150nm 、高さ500nmの突起(ピラー)が並んだ金型を作成した。金型を使って、熱インプリントの手法により、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に直径150nm、ピッチ150nm 、高さ500nmのホールが2次元に配列した表面凹凸構造を持つモールド1を作製した。なお、凹凸形状および間隔は、走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、S−image)を用いて測定した。
基材の表面に波長変換層用塗布液1をワイヤーバーで塗布した後、上記で作製したモールド1をラミネートし、モールド1の側からUV硬化を行った以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム7を作製した。
・熱線遮断フィルム8の作製
(レーザー干渉露光によるモールド2の作製)
モールド1を作製したのと同様の手法により、条件を変更してポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に直径450nm、ピッチ450nm 、高さ1500nmのホールが2次元に配列した表面凹凸構造を持つモールド2を作製した。
モールド1に代えてモールド2を用いた以外は、熱線遮断フィルム7と同様にして熱線遮断フィルム8を作製した。
・熱線遮断フィルム9の作製
低屈折率層用塗布液1および高屈折率層用塗布液1の積層数を7層ずつ計14層から10層ずつ計20層に変えた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム9を作製した。
・熱線遮断フィルム10の作製
低屈折率層用塗布液1および高屈折率層用塗布液1の積層数を7層ずつ計14層から3層ずつ計6層に変えた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム10を作製した。
・熱線遮断フィルム11の作製
低屈折率層用塗布液1および高屈折率層用塗布液1の同時重層塗布に代えて、厚さ10nmのZnO−2.0質量%Ga層(誘電体層:第1層)、厚さ12nmの銀薄膜層(金属薄膜層:第2層)、厚さ10nmのZnO−2.0質量%Ga層(誘電体層:第3層)、および厚さ12nmの銀薄膜層(金属薄膜層:第4層)を、この順に、6.65×10−3Pa(5×10−5torr)の真空下でのスパッタリング法により基材の表面に積層することにより誘電積層膜を形成した以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム11を作製した。
・熱線遮断フィルム12の作製
誘電積層膜の形成前に、基材の一方の表面に波長変換層を形成し、次いで、形成された波長変換層の露出表面上に誘電積層膜を形成した以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして、基材/波長変換層/誘電積層膜の構成を有する熱線遮断フィルム12を作製した。
・熱線遮断フィルム13(比較例)の作製
波長変換層を形成しなかった以外は、熱線遮断フィルム11と同様にして熱線遮断フィルム13を作製した。
・熱線遮断フィルム14(比較例)の作製
波長変換層を形成しなかった以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム14を作製した。言い換えれば、熱線遮断フィルム1の作製時に得られた熱線反射積層体フィルム1を熱線遮断フィルム14とした。
・熱線遮断フィルム15(比較例)の作製
誘電積層膜を形成しなかった以外は、熱線遮断フィルム12と同様にして熱線遮断フィルム15を作製した。言い換えれば、基材と波長変換層(半導体粒子A含有)との積層体を熱線遮断フィルム15とした。
・熱線遮断フィルム16(比較例)の作製
熱線反射積層体フィルム1の誘電積層膜の露出表面上に波長変換層を形成した以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして、基材/誘電積層膜/波長変換層の構成を有する熱線遮断フィルム16を作製した。
・熱線遮断フィルム17(比較例)の作製
低屈折率層用塗布液1および高屈折率層用塗布液1の積層数を7層ずつ計14層から1層ずつ計2層に変えた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム17を作製した。
・熱線遮断フィルム18(比較例)の作製
アップコンバージョン型波長変換物質である半導体粒子Aに代えて、ダウンコンバージョン型波長変換物質であるルミライトナノR−Y202(シンロイヒ株式会社製)を用いた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム18を作製した。
・熱線遮断フィルム19(比較例)の作製
波長変換層用塗布液1に代えて、波長変換層用塗布液2を用いた以外は、熱線遮断フィルム15と同様にして熱線遮断フィルム19を作製した。言い換えれば、基材と波長変換層(ITO含有)との積層体を熱線遮断フィルム19とした。
・熱線遮断フィルム20(比較例)の作製
波長変換層用塗布液1に代えて、波長変換層用塗布液2を用いた以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム20を作製した。
・熱線遮断フィルム21(比較例)の作製
誘電積層膜に代えて、厚さ150nmの銀薄膜層を6.65×10−3Pa(5×10−5torr)の真空下でのスパッタリング法で形成した以外は、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム21を作製した。
《熱線遮断フィルムの評価》
上記で作製した実施例および比較例の熱線遮断フィルムについて、下記の特性値の測定および性能評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(熱貫流率)
熱線遮断フィルムの熱貫流率(U値)をJIS R3107に従い算出した。
(ヘイズ値の測定)
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)によりヘイズ値を測定し、透明性の目安とした。
(熱割れ防止性の評価)
幅200mm、長さ300mm、厚さ1.5mmのガラス板の上に熱線遮断フィルムをアクリル接着剤で貼り付けて、熱割れ防止性評価用試料を得た。そして、厚さ30mmの発泡ポリスチレンで作製した上面、底面が開口した箱(高さ150mm、幅240mm、長さ340mm)を準備し、この箱の開口部に、これらの試料を載置し、箱内部のガラス試料表面(フィルム表面側)の温度を熱電対で測定しつつ、8月の晴天の日に太陽光に曝露した。その後、試料表面の温度を観測し、最高温度を測定した。同様にしてガラス板のみのときの表面(最高)温度も測定し、試料の表面温度との差を熱割れ性の目安とした。温度差が小さいほど熱割れ防止性が優れていることを意味する。判定は、次の基準に従った。△までは、実害はなく許容できるレベルである。
○:0.5℃未満
△:0.5以上、1.0℃未満
×:1.0℃以上
表1に示す結果から明らかなように、上記測定・評価性能において、本発明の熱線遮断フィルムに係る試料は、比較例に比べて優れていることが分かる。
10 熱線遮断フィルム、
110 基材、
120 誘電積層膜、
122 低屈折率層、
124 高屈折率層、
126 熱線反射ユニット、
130 波長変換層、
132 凹凸パターン。

Claims (7)

  1. 屈折率が相互に異なる2層以上の屈折率層から構成される熱線反射ユニットを2つ以上含む誘電積層膜と、
    アップコンバージョン型波長変換物質を含有する波長変換層と、
    を有し、
    前記波長変換層が前記誘電積層膜に対して光線の入射側とは反対の側に配置されている、熱線遮断フィルム。
  2. 基材をさらに有し、
    前記誘電積層膜が前記基材の一方の面側に配置され、
    前記波長変換層が前記基材の他方の面側に配置される、請求項1に記載の熱線遮断フィルム。
  3. 前記波長変換物質が、850nmを超えて2500nm以下の波長の光を吸収し、400nmを超えて850nm以下の波長の光を発光する物質である、請求項1または2に記載の熱線遮断フィルム。
  4. 前記波長変換物質が、希土類元素またはアルカリ金属元素を含む半導体粒子であり、かつ、1〜100nmの平均粒径を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱線遮断フィルム。
  5. 前記波長変換層の前記誘電積層膜とは反対側の面に、凸部の底面の円換算平均直径が20〜300nmの凹凸パターンが設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱線遮断フィルム。
  6. 前記屈折率層の少なくとも1つが、金属酸化物粒子および水溶性高分子を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱線遮断フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱線遮断フィルムの製造方法であって、当該熱線遮断フィルムを構成する層の少なくとも1つを、水系塗布液を用いて形成する工程を含む、製造方法。
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