JP2013217243A - トラップキャニスタ - Google Patents

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Abstract

【課題】吹き抜けの低減と圧損の低減とを両立することのできるトラップキャニスタを提供する。
【解決手段】トラップキャニスタ14は、蒸発燃料を吸着するメインキャニスタから排出された破過ガスに含まれる蒸発燃料を吸着する。一端が大気に開放されかつ他端から破過ガスを導入するトラップケース50内に、蒸発燃料を吸着及び脱離可能な吸着体74が充填された吸着室67を備える。吸着室67は、大気開放側の部分67bの通路断面積がガス導入側の部分67aの通路断面積よりも小さく形成されかつその通路断面積が徐々に変化する断面積徐変部67cを有する。吸着室67には、吸着体74の温度を調節する蓄熱体76が設けられる。
【選択図】図2

Description

本発明は、主として自動車等の車両に搭載され、蒸発燃料を吸着するキャニスタから排出された破過ガスに含まれる蒸発燃料を吸着するトラップキャニスタに関する。
従来、この種のトラップキャニスタは、一端が大気に開放されかつ他端から破過ガスを導入するトラップケース内に、蒸発燃料を吸着及び脱離可能な粒状の吸着体としての活性炭が充填された吸着室を備えている。また、吸着室は、破過ガスが流れる方向に延びる通路長さに亘って一定の通路断面積で形成されていた(例えば、特許文献1の段落[0081]、図9参照)。
特開2005−35812号公報
従来のトラップキャニスタによると、蒸発燃料を吸着するメインキャニスタから排出された破過ガスに含まれる蒸発燃料が吸着体に吸着された後に、エンジンの吸気負圧による脱離(パージ)が行われても、吸着体に蒸発燃料が残存していると、車両放置時に吸着成分(HC)が吸着体から脱離して車外(大気)に放出されるいわゆる吹き抜けを生じる。とくに、吸着体としての活性炭は、細孔径の広い分布範囲のうち、開口径の小さな細孔は、開口径の大きな細孔径より吸着性が高く、脱離時に蒸発燃料が脱離されにくい。そのため、開口径の小さな細孔に脱離しきれずに残された蒸発燃料の残存量(詳しくは、パージ後における蒸発燃料の残存量のことをいう)が多くなり、車両放置時に大気中に放出される蒸発燃料の吹き抜け量が多くなる。このような吹き抜けを低減するには、吸着室における通路長さLと通路断面積に相当する円面積の直径DとのL/D比を大きくするとよいことが知られている。L/D比が大きいほど、吸着・脱離能力が向上する反面、通気抵抗すなわち圧力損失(いわゆる圧損)が増加する。したがって、トラップキャニスタの吹き抜けの低減と圧損の低減(低圧損化)とを両立することが困難であった。また、吹き抜けの低減は、放置された車両から大気に放出される蒸発燃料(ガソリンベーパ(HC))の米国規制DBLの性能(いわゆるDBL性能)の向上につながる。
本発明が解決しようとする課題は、吹き抜けの低減と圧損の低減とを両立することのできるトラップキャニスタを提供することにある。
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とするトラップキャニスタにより解決することができる。
請求項1に記載されたトラップキャニスタによると、蒸発燃料を吸着するメインキャニスタから排出された破過ガスに含まれる蒸発燃料を吸着するトラップキャニスタであって、一端が大気に開放されかつ他端から破過ガスを導入するトラップケース内に、蒸発燃料を吸着及び脱離可能な粒状の吸着体が充填された吸着室を備え、吸着室は、大気開放側の部分の通路断面積がガス導入側の部分の通路断面積よりも小さく形成されかつその通路断面積が徐々に変化する断面積徐変部を有し、吸着室には、吸着体の温度を調節する温調手段が設けられ、吸着体は、メインキャニスタのガス出口側の吸着室に充填される粒状の吸着体に比べて、ASTM法によるブタンワーキングキャパシティが大きい高吸着能を有する吸着体である。
この構成によると、(1)吸着室の大気開放側の部分の通路断面積がガス導入側の部分の通路断面積よりも小さく形成されていることにより、大気開放側の部分の通路断面積を小さくすることで吸着体の吸着・脱離能力を向上し、これにともない増加する圧損を、ガス導入側の部分の通路断面積を大きくすることで抑制することができる。これにより、蒸発燃料の残存量を低減し、吹き抜けを低減しながら、圧損の増加を抑制することができる。
(2)また、吸着室が通路断面積が徐々に変化する断面積徐変部を有するため、ガスをガス導入側の部分から大気開放側の部分へスムーズに流すことができる。これにより、圧損を低減することができる。
(3)また、吸着室には、吸着体の温度を調節する温調手段が設けられている。したがって、温調手段により吸着体の温度を調節することによって、蒸発燃料の脱離量を向上し、蒸発燃料の残存量を低減できるため、吹き抜けを低減することができる。
(4)また、吸着体は、メインキャニスタのガス出口側の吸着室に充填される粒状の吸着体に比べて、ASTM法によるブタンワーキングキャパシティが大きい高吸着能を有する吸着体である。したがって、このような高吸着能を有する吸着体と温調手段とを併用することにより、高吸着能を有する吸着体を用いても、蒸発燃料の脱離量を向上し、蒸発燃料の残存量を低減できるため、吹き抜けを低減することができる。
(5)前記した(1)〜(4)の相乗効果によって、吹き抜けの低減と圧損の低減とを両立することができる。
請求項2に記載されたトラップキャニスタによると、吸着室の大気開放側の部分は、車両に対する搭載状態においてガス導入側の部分の天地方向の地側に対応する位置に配置されている。したがって、吸着室のガス導入側の部分及び断面積徐変部の天地方向の天側の吸着層で蒸発燃料の拡散による吸着層を増大することにより、吹き抜けを低減することができる。
請求項3に記載されたトラップキャニスタによると、吸着室のガスの流れ方向の中間部には、該吸着室を二分する空間層が設けられている。したがって、吸着室において、ガス導入側の部分から大気開放側の部分への蒸発燃料の拡散を空間層により遅延させることにより、吹き抜けを低減することができる。
請求項4に記載されたトラップキャニスタによると、温調手段は、吸着体の温度変化を潜熱により抑制する蓄熱体である。したがって、蓄熱体の潜熱により吸着体の温度変化を抑制することによって、蒸発燃料の残存量を低減し、吹き抜けを低減することができる。
請求項5に記載されたトラップキャニスタによると、蓄熱体は、吸着室に吸着体と混合状態で充填される粒状の蓄熱体であり、吸着体と蓄熱体との混合比が吸着室のガスの流れ方向で変更されている。したがって、粒状の吸着体と粒状の蓄熱体との混合比を吸着室のガスの流れ方向で変更することにより、吸着体の吸着・脱離性能を安定化することができる。
実施形態1にかかる蒸発燃料処理装置を示す断面図である。 トラップキャニスタを示す断面図である。 実施形態2にかかるトラップキャニスタを示す断面図である。 実施形態3にかかるトラップキャニスタを示す断面図である。 実施形態4にかかるトラップキャニスタを示す断面図である。 実施形態5にかかるトラップキャニスタを示す断面図である。 実施形態6にかかるトラップキャニスタを示す断面図である。 実施形態7にかかるトラップキャニスタを示す断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
[実施形態1]
実施形態1を説明する。本実施形態では、自動車等の車両に搭載される蒸発燃料処理装置について例示する。図1は蒸発燃料処理装置を示す断面図である。説明の都合上、図1の状態を基準としてメインキャニスタ及びトラップキャニスタの上下左右を定める。なお、車両に対するメインキャニスタ及びトラップキャニスタの搭載上の方向は適宜設定される。但し、トラップキャニスタの上下方向は、車両に対する搭載状態における天地方向に対応する。
図1に示すように、蒸発燃料処理装置10は、メインキャニスタ12とトラップキャニスタ14とを備えている。なお、メインキャニスタ12を説明した後でトラップキャニスタ14を説明する。
メインキャニスタ12を説明する。メインキャニスタ12はメインケース16を備えている。メインケース16は、樹脂製で、有底角筒状のメインケース本体17と、メインケース本体17の開口端面を閉鎖する蓋体18とにより構成されている。なお、本実施形態では、メインケース本体17の底壁側が左方へ向けられ、蓋体18が右方へ向けられている。メインケース本体17内は、隔壁19により上下2室に仕切られている。両室は、メインケース本体17と蓋体18との間に形成された連通路20によって相互に連通されている。これにより、上側の室と下側の室とを連通路20を介して連通するU字状のガス通路が形成されている。なお、メインケース本体17内で隔壁19により仕切られる2室は、相互に連通していればよく、上下方向に限らず、適当な方向に形成することができる。
前記メインケース本体17の底壁(左端壁)には、上側の室に連通するタンクポート22及びパージポート23と、下側の室に連通する接続ポート24とが形成されている。タンクポート22は、蒸発燃料通路26を介して燃料タンク27(詳しくはタンク内の気層部)に接続されている。また、パージポート23は、パージ通路30を介してエンジン31の吸気通路32に接続されている。また、吸気通路32には、吸入空気量を制御するスロットルバルブ33が設けられている。また、パージ通路30は、吸気通路32に対してスロットルバルブ33の下流側(例えば、サージタンク)に接続されている。また、パージ通路30には、その通路30を開閉するパージ制御弁34が設けられている。エンジン31の運転中に、図示しない電子制御装置(いわゆるECU)によりパージ制御弁34が制御されることによってパージ制御が行われる。なお、エンジン31は本明細書でいう「内燃機関」に相当する。また、接続ポート24は、後述する接続通路80を介してトラップキャニスタ14と接続されている。
前記上側の室の左端部は、仕切壁35によって、上下に二分すなわち前記タンクポート22に連通する部分と、前記パージポート23に連通する部分とに仕切られている。また、前記隔壁19及び仕切壁35で仕切れられた各部分の左端面には、フィルタ36がそれぞれ配置されている。また、隔壁19で仕切られた両室の開口端面(右端側の開口面)には、多孔板38がそれぞれ配置されている。多孔板38の内側面すなわち左側面には、フィルタ39がそれぞれ積層状に配置されている。また、各多孔板38と蓋体18との間には、コイルバネからなるバネ部材40がそれぞれ介装されている。バネ部材40は、多孔板38を左方へ付勢している。また、隔壁19で仕切られた上側の室における両フィルタ36,39の相互間が第1吸着室41となっており、その下側の室における両フィルタ36,39の相互間が第2吸着室42となっている。両フィルタ36,39は、例えば樹脂製の不織布、発泡ウレタン等により形成されている。また、前記メインケース本体17の底壁(左端壁)には、各フィルタ36を支持する多数のピン状の突起46が突出されている。これにより、メインケース本体17の底壁(左端壁)と各フィルタ39との間に各ポート側の空間部47がそれぞれ形成されている。
前記第1吸着室41及び前記第2吸着室42には、蒸発燃料中のブタン等の蒸発燃料を吸着及び脱離可能な粒状の吸着体44がそれぞれ充填されている。吸着体44としては、例えば粒状の活性炭を用いることができる。さらに、粒状の活性炭としては、破砕した活性炭(破砕炭)、粒状あるいは粉末状の活性炭をバインダともに造粒した造粒炭等を用いることができる。さらに、吸着体44としては、例えば、ASTM法によるブタンワーキングキャパシティ(以下、「BWC」という)が12g/dL未満の活性炭が用いられている。
次に、トラップキャニスタ14について説明する。トラップキャニスタ14は、前記メインキャニスタ12と別体で構成されている。図2はトラップキャニスタを示す断面図である。図2において、トラップキャニスタ14の上下方向は、車両に対する搭載状態における天地方向に対応する。
図2に示すように、トラップキャニスタ14はトラップケース50を備えている。トラップケース50は、樹脂製で、中空円筒状のトラップケース本体51と、トラップケース本体51の左右の両開口端面を閉鎖する左右の両蓋部材52,53とにより構成されている。トラップケース本体51の内部空間により軸方向(図2において左右方向)に延びるガス通路が形成されている。左側の蓋部材52には、トラップケース本体51の内部空間に連通する接続ポート55が同心状に形成されている。また、右側の蓋部材53には、トラップケース本体51の内部空間に連通する大気ポート56が同心状に形成されている。大気ポート56は大気に開放されている。
前記トラップケース本体51は、左部において大径をなす大径筒部51aと、右部において小径をなす小径筒部51bとを有する。大径筒部51aと小径筒部51bとは、上下方向に偏心して形成されており、車両に対する搭載状態において天地方向の地側に配置される下側の壁部57がストレート状に連続されている。すなわち、小径筒部51bが、車両に対する搭載状態において大径筒部51aの天地方向の地側に対応する位置に配置されている。トラップケース本体51の大径筒部51aと小径筒部51bとの間には、両筒部51a,51b間を連通しかつ通路断面積が徐々に変化するテーパ状のテーパ状筒部51cが形成されている。
前記トラップケース本体51の小径筒部51bの右端側の開口面には、フィルタ58が配置されている。フィルタ58は、例えば不織布により形成されている。また、前記右側の蓋部材53の内側面(左側面)には、フィルタ58を支持する多数のピン状の突起59が突出されている。これにより、右側の蓋部材53とフィルタ58との間に、大気ポート56側の空間部60が形成されている。また、トラップケース本体51の大径筒部51aの左端側の開口面には、多孔板62が配置されている。多孔板62の内側面すなわち右側面には、フィルタ63が積層状に配置されている。フィルタ63は、例えば発泡ウレタンにより形成されている。また、多孔板62と左側の蓋部材52との間には、コイルバネからなるバネ部材64が介装されている。バネ部材64は、多孔板62を右方へ付勢している。これにより、左側の蓋部材52と多孔板62との間に、接続ポート55側の空間部65が形成されている。また、トラップケース本体51の内部空間における両フィルタ58,63の相互間が吸着室67になっている。
前記トラップケース本体51の小径筒部51bとテーパ状筒部51cとの間には、両筒部51a,51b内を仕切る通気性を有する仕切部材69が配置されている。仕切部材69には、弾性を有する発泡樹脂製のフィルタ、例えば発泡ウレタンにより形成されたフィルタが用いられている。また、仕切部材69は、前記吸着室67を左右2室に分割している。左側の室が大径側の分室70とされているとともに、右側の室が小径側の分室72とされている。なお、仕切部材69は、必要に応じて設けられるものであり、省略することもできる。
前記吸着室67には、蒸発燃料中のブタン等の蒸発燃料を吸着及び脱離可能な粒状の吸着体74と、吸着体74の温度変化を潜熱により抑制する粒状の蓄熱体76とが混合状態で充填されている。吸着体74としては、例えば、粒状の活性炭を用いることができる。さらに、粒状の活性炭としては、破砕した活性炭(破砕炭)、粒状あるいは粉末状の活性炭をバインダともに造粒した造粒炭等を用いることができる。さらに、吸着体74としては、BWCが13g/dL以上の活性炭いわゆる高吸着能を有する活性炭が用いられている。吸着体74に用いられる高吸着能を有する活性炭は、一般的な活性炭(例えば、BWCが12g/dL未満の活性炭)と比べて、BWCが大きく、小さい細孔が多いため、蒸発燃料の残存成分との分子間力が強くなる。つまり、蒸発燃料の拡散量を低減でき、吹き抜け量を低減することができる。このため、吸着体74には、好ましくは、BWCが15g/dL以上の活性炭が良く、より好ましくは、BWCが17g/dL以上の活性炭が良い。また、吸着体74は、前記メインキャニスタ12(図1参照)のガス出口側の吸着室(第2吸着室42)に充填される粒状の吸着体44に比べて、BWCが大きい高吸着能を有する。なお、本明細書でいう「メインキャニスタ12のガス出口側の吸着室」とは、メインキャニスタ12の粒状の吸着体44が充填される吸着室41,42のうちで、接続ポート24(破過ガス出口側)に近い第2吸着室42のことをいう。
前記蓄熱体76は、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放熱を生じる相変化物質を有する潜熱蓄熱体であればよく、相変化物質、相変化物質を封入したマイクロカプセル、そのマイクロカプセル又は相変化物質を封入したペレット等を用いることができる。また、相変化物質としては、例えば、融点が22℃のヘプタデカン、融点が28℃のオクタデカン等のパラフィンを用いることができる。また、蓄熱体76の潜熱を利用して、蒸発燃料の吸着時の吸着体74の温度上昇を抑制することにより蒸発燃料の吸着を促進することができる一方、蒸発燃料の脱離時の吸着体74の温度低下を抑制することにより蒸発燃料の脱離を促進することができる。なお、蓄熱体76は本明細書でいう「温調手段」に相当する。
また、図1に示すように、前記したトラップキャニスタ14の接続ポート55と、前記メインキャニスタ12の接続ポート24とは接続通路80を介して接続されている。また、図2に示すように、吸着室67において、トラップケース本体51の大径筒部51a内に対応する部分をガス導入側の部分67aといい、同じく小径筒部51b内に対応する部分を大気開放側の部分67bといい、同じくテーパ状筒部51c内に対応する部分を断面積徐変部67cという。また、メインキャニスタ12の接続ポート24は本明細書でいう「破過ガス出口ポート」に相当する。また、トラップキャニスタ14の接続ポート55は本明細書でいう「ガス導入ポート」に相当する。
次に、前記蒸発燃料処理装置10(図1参照)の動作について説明する。給油時及び通常時(例えば駐車時)において、燃料タンク27内で発生した蒸発燃料を含む蒸発燃料ガスは、メインキャニスタ12のタンクポート22を介して第1吸着室41に導入される。蒸発燃料ガスは、第1吸着室41、連通路20、第2吸着室42を通る。その際、蒸発燃料ガス中の蒸発燃料は、第1吸着室41及び第2吸着室42の吸着体44に吸着される。そして、メインキャニスタ12から排出された破過ガスは、接続通路80を介してトラップキャニスタ14に導入される。破過ガスは、トラップキャニスタ14(図2参照)の吸着室67(詳しくは、ガス導入側の部分67a、断面積徐変部67c、大気開放側の部分67b)を通る。その際、破過ガス中の蒸発燃料は、吸着室67の吸着体74に吸着される。このとき、吸着室67の蓄熱体76の潜熱を利用して、蒸発燃料の吸着時の吸着体74の温度上昇が抑制されることにより、蒸発燃料の吸着が促進される。そして、最終的には、蒸発燃料を含まない空気あるいはほとんど含まない空気は、大気ポート56から大気に放出される。
また、パージ時(エンジン31の運転中のパージ制御時)において、電子制御装置(ECU)によりパージ制御弁34が開弁されると、エンジン31の吸気負圧がメインキャニスタ12のパージポート23を介して第1吸着室41に導入されることにより、大気中の空気が、前記蒸発燃料ガスの流れとは逆方向に流れる。このため、トラップキャニスタ14の吸着室67の吸着体74から蒸発燃料が脱離(パージ)される。このとき、吸着室67の蓄熱体76の潜熱を利用して、蒸発燃料の脱離時の吸着体74の温度低下が抑制されることにより、蒸発燃料の脱離が促進される。また、蒸発燃料を含んだガスが、メインキャニスタ12の第2吸着室42及び第1吸着室41を通ることにより、両吸着室42,41の吸着体44からも蒸発燃料が脱離された後、パージポート23からエンジン31の吸気通路32にパージされる。
前記したトラップキャニスタ14(図2参照)によると、次の作用・効果を得ることができる。
(1)吸着室67の大気開放側の部分67bの通路断面積がガス導入側の部分67aの通路断面積よりも小さく形成されていることにより、大気開放側の部分67bの通路断面積を小さくすることで吸着体74の吸着・脱離能力を向上し、これにともない増加する圧損を、ガス導入側の部分67aの通路断面積を大きくすることで抑制することができる。これにより、蒸発燃料の残存量を低減し、吹き抜けを低減しながら、圧損の増加を抑制することができる。すなわち、DBL性能を向上しながら、通気抵抗を抑制することができる。また、ガス導入側の部分67aの通路断面積を大きくし、トラップケース50の軸方向の長さを短縮することにより、車両に対する搭載性を向上することができる。
(2)また、吸着室67が通路断面積が徐々に変化する断面積徐変部67cを有するため、ガスをガス導入側の部分67aから大気開放側の部分67bへスムーズに流すことができる。これにより、圧損を低減することができる。
(3)また、吸着室67には、吸着体74の温度を調節する蓄熱体76が設けられている。したがって、蓄熱体76により吸着体74の温度を調節することによって、蒸発燃料の脱離量を向上し、蒸発燃料の残存量を低減できるため、吹き抜けを低減することができる。ひいては、DBL性能を向上することができる。
(4)また、吸着体74は、メインキャニスタ12(図1参照)のガス出口側の吸着室(第2吸着室42)に充填される粒状の吸着体44に比べて、BWCが大きい高吸着能を有する吸着体である。したがって、このような高吸着能を有する吸着体74と蓄熱体76とを併用することにより、高吸着能を有する吸着体74を用いても、蒸発燃料の脱離量を向上し、蒸発燃料の残存量を低減できるため、吹き抜けを低減することができる。ひいては、DBL性能を向上することができる。
(5)前記した(1)〜(4)の相乗効果によって、吹き抜けの低減と圧損の低減とを両立することができる。
また、吸着室67の大気開放側の部分67bは、車両に対する搭載状態においてガス導入側の部分67aの天地方向の地側に対応する位置に配置されている。したがって、吸着室67のガス導入側の部分67a及び断面積徐変部67cの天地方向の天側の吸着層で蒸発燃料の拡散による吸着層を増大することにより、吹き抜けを低減することができる。すなわち、メインキャニスタ12から吹き抜けてくる2g破過の蒸発燃料を、吸着室67のガス導入側の部分67a及び断面積徐変部の天側の吸着層で吸着することにより、DBL性能を向上することができる。なお、2g破過とは、メインキャニスタ12から吹き抜けてくる破過ガスの蒸発燃料が2g破過することをいう。
また、蓄熱体76の潜熱により吸着体74の温度変化を抑制することによって、蒸発燃料の残存量を低減し、吹き抜けを低減することができる。
[実施形態2]
実施形態2を説明する。本実施形態以降の実施形態は、前記実施形態1のトラップキャニスタ14に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図3はトラップキャニスタを示す断面図である。
図3に示すように、本実施形態では、前記実施形態1のトラップキャニスタ14(図2参照)における接続ポート55が、右側の蓋部材52の大気ポート56と同心状をなすように配置されている。したがって、接続ポート24から導入されたガスが大気ポート56に向かって一直線状に流れやすくなるため、吸着室67を流れるガスの圧損を低減することができる。
[実施形態3]
実施形態3を説明する。図4はトラップキャニスタを示す断面図である。
図4に示すように、本実施形態では、前記実施形態1のトラップキャニスタ14(図2参照)におけるトラップケース本体51の大径筒部51a、小径筒部51b、テーパ状筒部51c、接続ポート55、大気ポート56が同心状に配置されている。
[実施形態4]
実施形態4を説明する。図5はトラップキャニスタを示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態では、前記実施形態1のトラップキャニスタ14(図2参照)におけるトラップケース本体51のテーパ状筒部51cが吸着室67の軸方向の長さの全長に亘って形成されている。この場合、テーパ状筒部51c内が断面積徐変部67cに相当し、その大径側の筒部内がガス導入側の部分67aに相当し、同じく小径側の筒部内が大気開放側の部分67bに相当する。また、吸着室67が全体的に断面積徐変部になっている。また、仕切部材69が省略されているとともに、大径側の分室70及び小径側の分室72の区分けも省略されている。
[実施形態5]
実施形態5を説明する。図6はトラップキャニスタを示す断面図である。
図6に示すように、本実施形態では、前記実施形態3のトラップキャニスタ14(図4参照)における吸着室67のガスの流れ方向の中間部、すなわち大径側の分室70と小径側の分室72との間に、該吸着室67を二分する空間層82が設けられている。空間層82は、小径筒部51bの軸方向の長さを延長することによって形成されている。大径側の分室70と空間層82との間、及び、小径側の分室72と空間層82との間には、仕切部材69がそれぞれ配置されている。したがって、吸着室67において、ガス導入側の部分67a及び断面積徐変部67cから大気開放側の部分67bへの蒸発燃料の拡散を空間層82により遅延させることにより、吹き抜けを低減することができる。ひいては、DBL性能を向上することができる。
[実施形態6]
実施形態6を説明する。図7はトラップキャニスタを示す断面図である。
図7に示すように、本実施形態では、前記実施形態3のトラップキャニスタ14(図4参照)における吸着室67の吸着体74と蓄熱体76との混合比が吸着室67のガスの流れ方向で変更されている。例えば、大径側の分室70に充填する蓄熱体76に比べて、小径側の分室72に充填する蓄熱体76を相対的に少なくする。これにより、吸着体74の吸着・脱離性能を安定化することができる。なお、吸着体74と蓄熱体76との混合比は適宜設定することができる。
[実施形態7]
実施形態7を説明する。図8はトラップキャニスタを示す断面図である。
図8に示すように、本実施形態では、前記実施形態5(図6参照)のトラップキャニスタ14における吸着室67の両分室70,72における吸着体74と蓄熱体76との混合比が、前記実施形態6と同様に変更されている。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、トラップキャニスタ14の吸着室67は、円筒状に限らず、角筒状でもよい。また、メインキャニスタ12における吸着室67の数は、2室に限らず、1室又は3室以上でもよい。また、温調手段としては、蓄熱体76の他、電気ヒータを用いてもよい。また、蓄熱体76としては、粒状以外の形状の蓄熱体を用いてもよい。
10…蒸発燃料処理装置
12…メインキャニスタ
14…トラップキャニスタ
44…吸着体
50…トラップケース
67…吸着室
67a…ガス導入側の部分
67b…大気開放側の部分
67c…断面積徐変部
74…吸着体
76…蓄熱体(温調手段)
82…空間層

Claims (5)

  1. 蒸発燃料を吸着するメインキャニスタから排出された破過ガスに含まれる蒸発燃料を吸着するトラップキャニスタであって、
    一端が大気に開放されかつ他端から破過ガスを導入するトラップケース内に、蒸発燃料を吸着及び脱離可能な粒状の吸着体が充填された吸着室を備え、
    前記吸着室は、大気開放側の部分の通路断面積がガス導入側の部分の通路断面積よりも小さく形成されかつその通路断面積が徐々に変化する断面積徐変部を有し、
    前記吸着室には、前記吸着体の温度を調節する温調手段が設けられ、
    前記吸着体は、前記メインキャニスタのガス出口側の吸着室に充填される粒状の吸着体に比べて、ASTM法によるブタンワーキングキャパシティが大きい高吸着能を有する吸着体である
    ことを特徴とするトラップキャニスタ。
  2. 請求項1に記載のトラップキャニスタであって、
    前記吸着室の大気開放側の部分は、車両に対する搭載状態において前記ガス導入側の部分の天地方向の地側に対応する位置に配置されていることを特徴とするトラップキャニスタ。
  3. 請求項1又は2に記載のトラップキャニスタであって、
    前記吸着室のガスの流れ方向の中間部には、該吸着室を二分する空間層が設けられていることを特徴とするトラップキャニスタ。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載のトラップキャニスタであって、
    前記温調手段は、前記吸着体の温度変化を潜熱により抑制する蓄熱体であることを特徴とするトラップキャニスタ。
  5. 請求項4に記載のトラップキャニスタであって、
    前記蓄熱体は、前記吸着室に前記吸着体と混合状態で充填される粒状の蓄熱体であり、
    前記吸着体と前記蓄熱体との混合比が前記吸着室のガスの流れ方向で変更されていることを特徴とするトラップキャニスタ。
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