JP2012007503A - キャニスタ - Google Patents

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Junpei Omichi
順平 大道
Naoki Matsuzawa
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Abstract

【課題】比較的高濃度な蒸発燃料を吸着保持することになるチャージポート付近の吸着材の劣化を抑制したキャニスタを提供する。
【解決手段】内部に吸着材層36が形成されたインナカートリッジ28をパージポート9に連結するとともに、第1ケーシング2内の吸着材層15のうちチャージポート8側端部に位置する吸着材14にインナカートリッジ28を埋没させる。パージ時の脱離空気が蒸発燃料とともにインナカートリッジ28内に流入すると、そのインナカートリッジ28内の吸着材層36を構成する吸着材35が蒸発燃料を吸着して発熱し、その熱によってインナカートリッジ28の外周側に位置する吸着材14が温められる。これにより、パージ効率が向上して吸着材14の劣化が抑制される。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動車の燃料タンクから蒸発した燃料を吸着し、その燃料をエンジン稼働時に燃焼させる蒸発燃料処理装置のキャニスタに関する。
周知のように、ガソリンを燃料として使用する自動車では、燃料タンク内の蒸発燃料が大気に放出されるのを抑制するために蒸発燃料処理装置が付帯している。
この蒸発燃料処理装置は、例えば特許文献1に記載されているように、停車時等に燃料タンクから発生する蒸発燃料をキャニスタ内の吸着材(活性炭)に吸着(チャージまたは担持)させ、エンジン稼働時にキャニスタを通して吸気を行うことにより、大気ポートから導入した大気によってキャニスタ内をパージし、吸着した蒸発燃料を脱離させてエンジン内で燃焼させる仕組みになっている。このパージによる蒸発燃料の脱離によって吸着材の性能が復活して蒸発燃料を良好に且つ繰り返し吸着することが可能になる。
特開2006−138290号公報
ところで、キャニスタ内において吸着材に吸着された蒸発燃料の濃度は蒸発燃料導入部(チャージポート)側に向かって高くなるような濃度勾配をもつ傾向にあり、蒸発燃料導入部の近傍に位置する吸着材には比較的高濃度の蒸発燃料が吸着保持されることになるが、一般に蒸発燃料導入部の近傍はパージ時の脱離空気が十分に通流しないためにパージ効率が悪く、蒸発燃料導入部の近傍に位置する吸着材にパージ後も蒸発燃料が残存してしまうことで、その吸着材の劣化が他の部位に位置する吸着材に対して相対的に早期に進行してしまう虞がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、特にパージ時において蒸発燃料導入部の近傍に位置する吸着材からの蒸発燃料の脱離を促進することで、その吸着材の劣化を抑制するようにしたキャニスタを提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、蒸発燃料および脱離空気の流路を形成するケーシングのうち蒸発燃料および脱離空気の通流方向一端側に蒸発燃料導入部および蒸発燃料排出部が、上記ケーシングのうち蒸発燃料および脱離空気の通流方向他端側に大気導入部がそれぞれ形成されたキャニスタにおいて、上記ケーシング内に吸着材を充填することによって構成され、上記ケーシング内における蒸発燃料および脱離空気の流路の一部となる第1の吸着材層と、上記ケーシング内に設けられ、一端部が上記蒸発燃料排出部に連通するとともに他端部が開口した内筒体と、上記ケーシング内において上記内筒体に他端側から外挿された有底筒状の外筒体と、上記外筒体の内周面と内筒体の外周面との間に吸着材を充填することによって構成され、上記ケーシング内において大気導入部から蒸発燃料排出部に向かう脱離空気の流路のうち上記第1の吸着材層よりも下流側の一部となる第2の吸着材層と、を備えていて、上記第1の吸着材層のうち上記蒸発燃料排出部および蒸発燃料導入部側の端部に上記外筒体のうち少なくとも底壁側の一部が埋没していることを特徴としている。
したがって、請求項1に記載の発明では、エンジン稼働時にキャニスタを通して吸気が行われると、上記大気導入部から導入された大気が脱離空気として上記蒸発燃料排出部側へ向かって流れる過程で、上記第1の吸着材層から蒸発燃料が脱離し、その蒸発燃料が脱離空気とともに上記第2の吸着材層に流入することになる。
そして、上記第2の吸着材層へ蒸発燃料が流入すると、その蒸発燃料が上記第2の吸着材層に吸着されることにより、その第2の吸着材層が発熱し、その熱が上記第1の吸着材層のうち上記蒸発燃料導入部付近の部分に上記外筒体を通して伝わることで、上記第1の吸着材層が温められることになる。その結果、上記第1の吸着材層のうち特に蒸発燃料導入部の近傍に位置する吸着材からの蒸発燃料の脱離を促進することができる。
この場合、請求項2に記載の発明のように、上記第2の吸着材層を、上記第1の吸着材層を構成する吸着材よりも蒸発燃料の吸着保持力が低い吸着材をもって構成すると、例えば停車時等に上記第2の吸着材層から上記第1の吸着材層への蒸発燃料の移動が促進されることになり、上記第2の吸着材層を構成する吸着材の性能復活性または再生性を高める上で望ましい。
また、パージ時において、上記第1の吸着材層のうち上記蒸発燃料導入部付近に位置する吸着材への伝熱の効率を高める上では、請求項3に記載の発明のように、上記外筒体が、上記ケーシングを構成する材料よりも熱伝導率の高い材料をもって形成されていることが望ましい。
ここで、請求項4に記載の発明のように、蒸発燃料および脱離空気の通流方向が車両装着状態で水平方向を指向するように設定されている場合には、第1の吸着材層を構成する吸着材が吸着保持する蒸発燃料が、重力の影響によって下方側に向かって高くなる濃度勾配をもつ傾向にある。そのため、同じく請求項4に記載の発明のように、上記外筒体が上記ケーシングのうち車両装着状態で上記蒸発燃料導入部よりも下方側となる位置に設けられていることが、第1の吸着材層のパージ効率をより高める上で望ましい。
一方、請求項1〜4に記載した発明において、キャニスタの組立容易性を考慮した場合には、請求項5に記載の発明のように、上記外筒体の開口端において上記第2の吸着材層をバックアップする通気性の蓋体を有していて、その蓋体が上記外筒体と内筒体とを一体に連結することにより、第2の吸着材層を収容したインナカートリッジが形成されていることが望ましい。こうすることにより、上記ケーシングに上記インナカートリッジを組み付けるだけで所期の目的を達成できるようになるから、キャニスタの構造を簡素化してその組立容易性を向上させることができる。
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明によれば、特にパージ時において蒸発燃料導入部の近傍に位置する吸着材からの蒸発燃料の脱離を促進し、その吸着材の劣化を抑制することができる。
本発明の第1の実施の形態を示すキャニスタの縦断面図。 図1のA−A線に沿った断面図。 図1においてパージ時の脱離空気の流れを示す図。 本発明の第2の実施の形態としてキャニスタの縦断面を示す図。 図2のC−C線に沿った断面図。
図1〜3は本発明に係るキャニスタの好適な第1の実施の形態を示す図であり、そのうち図1はキャニスタの縦断面を示す図であって、車両の停車時等における蒸発燃料の流れを示す図、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3は図1においてパージ時の脱離空気の流れを示す図である。なお、図2では、後述する各吸着材層15,18および各リブ21,24を便宜上省略している。
図1,2に示すキャニスタ1は、それぞれに例えばポリアミド樹脂等の樹脂材料にて略角筒状に形成された大小二つのケーシング、すなわち第1ケーシング2および第2ケーシング3を並べて隔壁状のリブ4を介して相互に一体化したものであって、図2の上方側を上側に向けて車両に装着されることになる。
両ケーシング2,3はそれぞれのケーシング2,3の底壁部として機能するカバープレート5を共有していて、このカバープレート5が事後的に溶着等の手段により接合・一体化されることで両ケーシング2,3が密閉されている。これにより、両ケーシング2,3の内部空間が相互に隔離されているとともに、後述する蒸発燃料および脱離(パージ)空気の通流方向において両ケーシング2,3が直列関係となるように底部側の狭隘な連通路6を介して相互に連通している。つまり、両ケーシング2,3がそれぞれの断面積に相当する所定の流路を形成している。なお、図1から明らかなように、両ケーシング2,3は同図の上端側に向かってその断面積が漸次小さくなる緩やかなテーパ状のものとして形成されている。
第1ケーシング2のうち反カバープレート5側の端部には、それぞれに所定容積のチャンバ部として機能する大小二つの膨出部7a,7bが形成されている。両膨出部7a,7bはともに略矩形状のものであって、車両装着時の上下方向に直交する図2の左右方向で並列に設けられている。そして、両膨出部7a,7bのうち第2ケーシング3側に位置する相対的に小さな膨出部7aには、第1ケーシング2を車両装着時の上下方向で二等分する図2の仮想線Bよりも上方側に、図示外の燃料タンクから蒸発燃料を導入するための蒸発燃料導入部としてチャージポート8が開口形成されている。また、両膨出部7a,7bのうち反第2ケーシング3側に位置する相対的に大きな膨出部7bには、図2の仮想線Bよりも下方側に、蒸発燃料をエンジンの吸気系に戻すための蒸発燃料排出部としてパージポート9が開口形成されている。
他方、第2ケーシング3のうち反カバープレート5側の端部にも所定容積のチャンバ部として機能する膨出部10が形成されている。この膨出部10も正面視略矩形状を呈しており、その膨出部10の略中央部には大気を導入するための大気導入部として大気ポート11が開口形成されている。
第1ケーシング2の軸方向両端部には、通気性部材である不織布あるいはウレタン等をもってシート状に形成された所定厚みのスクリーン12,13がそれぞれ設けられていて、それら両スクリーン12,13間に活性炭からなる粒状の吸着材14がフルに且つ満遍なく充填されている。これにより、両端面にスクリーン12,13が介在した吸着材層15が第1の吸着材層として形成されている。
他方、第2ケーシング3では、同じく通気性部材である不織布あるいはウレタン等をもってシート状に形成された所定厚みのスクリーン16,17を介して、活性炭からなる粒状の吸着材14がフルに且つ満遍なく充填されていて、これをもって両端面にスクリーン16,17が介在した吸着材層18を形成している。以上により、両ケーシング2,3内に設けられた吸着材層15,18のそれぞれが、両ケーシング2,3内における蒸発燃料および脱離空気の流路の一部を構成することになるとともに、相対的に容積の大きな吸着材層15を有する第1ケーシング2が主室として機能し、相対的に容積の小さな吸着材層18を有する第2ケーシング3が副室として機能することになる。
第1ケーシング2内では、通気性を有しながらも剛性のある例えば樹脂製の多孔板状のグリッド19をカバープレート5側のスクリーン13と重ねて配置してあり、そのスクリーン13がグリッド19にてバックアップされている。また、グリッド19とそれに対向するカバープレート5側の端壁内面との間には圧縮コイルスプリング20が介装され、吸着材層15を構成している吸着材14全体を適度な弾性力で弾性付勢して当該吸着材14全体を圧締保持している。なお、図1中で上側のスクリーン12は、グリッド19と同等の機能を有する複数のリブ21によってバックアップされている。
このような構造は、第2ケーシング3側についても全く同様であって、通気性を有しながらも剛性のある例えば樹脂製の多孔板状のグリッドを符号22で、グリッド22とそれに対向するカバープレート5側の端壁内面との間に介装された圧縮コイルスプリングを符号23で、図1中で上側のスクリーン17をバックアップする複数のリブを符号24でそれぞれ示している。
このように、両ケーシング2,3内のそれぞれの吸着材層15,18の両側にスクリーン12,13,16,17やグリッド19,22等が存在することにより、各ポート8,9,11側、あるいは連通路6側への吸着材14の漏れ出しが未然に防止されている。同時に、両吸着材層15,18を形成している吸着材14に圧縮コイルスプリング20,23の弾性力が加わることにより、両ケーシング2,3内での吸着材の無用な移動あるいはいわゆる踊り現象が阻止されている。
そして、キャニスタ1は、吸着材層15として機能する第1ケーシング2の内部空間と同じく吸着材層18として機能する第2ケーシング3の内部空間とを、それぞれのケーシング長が長手方向でオーバーラップするように並べて配置し、双方のケーシング2,3の他端部同士を連通路6にて連通させたものと理解することができる。その結果、後述するように、連通路6を通して両ケーシング2,3の吸着材層15,8同士の間で行われる蒸発燃料および脱離空気の流動が略U字状のものとなる。
ただし、両ケーシング2,3内の吸着材層15,18同士が直列の関係にさえなれば、両ケーシング2,3の他端同士を突き合わせるようにして、それら両ケーシング2,3を同一軸線上に配置するようにしてもよい。
ここで、第1ケーシング2の各リブ21は、第1ケーシング2のうち両ポート8,9側の端壁内面から所定距離だけ離間した位置に吸着材層15を保持することで、その吸着材層15と第1ケーシング2のうち両ポート8,9側の端壁内面との間に吸着材14が充填されていない気室25を形成している。
気室25は、第1ケーシング2のうち両ポート8,9側の端壁内面から突出された仕切壁26により、チャージポート8側の膨出部7aに連通するチャージポート側空間25aとパージポート9側の膨出部7bに連通するパージポート側空間25bとに仕切られている。なお、仕切壁26の先端と吸着材層15との間には所定の隙間が設けられていて、チャージポート側空間25aとパージポート側空間25bとは相互に直接連通している。
また、第1ケーシング2のうちパージポート9側の膨出部7bには、パージポート9に直接連通する円筒状のボス部27が第1ケーシング2内に向けて突設されていて、そのボス部27にインナカートリッジ28が圧入固定されている。つまり、ボス部27はインナカートリッジ28の取付部として機能している。
インナカートリッジ28のケーシング29は、一端がボス部27に圧入固定されているとともに他端が開口する円筒状の内筒体たる内筒部30と、その内筒部30に他端側から外挿された有底円筒状の外筒体たる外筒部31と、を有するいわゆる二重筒構造のものであって、通気性を有する蓋体として外筒部31の開口端に形成された多孔板状のグリッド部32により、内筒部30の軸方向中間部と外筒部31の開口端部とが連結されている。これにより、内筒部30と外筒部31およびグリッド部32がケーシング29として一体化されている。また、インナカートリッジ28のケーシング29は、第1,第2ケーシング2,3を構成する樹脂材料よりも熱伝導率が高い材料、ここでは金属材料であるアルミニウム合金をもって形成されている。
外筒部31の内周面と内筒部30の外周面との間の環状空間のうち軸方向両端部には、通気性部材である不織布あるいはウレタン等をもってシート状に形成された所定厚みのフィルター(またはスクリーン)33,34がそれぞれ設けられていて、それら両フィルター33,34間に活性炭からなる粒状の吸着材35がフルに且つ満遍なく充填されている。これにより、両端面にフィルター33,34が介在した吸着材層36がケーシング29内に第2の吸着材層として形成されている。
吸着材層36のうち外筒部31の開口端側に設けられたフィルター33は通気性を有しながらも剛性のあるグリッド部32によってバックアップされている一方、吸着材層36のうち外筒部31の底壁側に設けられた比較的肉厚なフィルター34の自己弾性力により、吸着材層36を形成している吸着材35全体を適度に弾性付勢して当該吸着材35全体を圧締保持している。なお、インナカートリッジ28内の吸着材層36を形成している吸着材35全体を他の吸着材層15,18と同様に圧縮コイルスプリングによって圧締保持するように構成することも勿論可能である。
また、インナカートリッジ28内の吸着材層36は、他の吸着材層15,18を構成する吸着材14とは性能が異なる吸着材35をもって構成されている。具体的には、第1,第2ケーシング2,3内の吸着材層15,16を構成している吸着材14は共に同一のものであるのに対して、インナカートリッジ28内の吸着材層36を構成している吸着材35は他の吸着材層15,16を構成している吸着材14よりも蒸発燃料の吸着保持力が低い(小さい)もの、すなわち一旦吸着した蒸発燃料が時間の経過とともに脱離しやすいものが使用されている。
さらに、ケーシング29のうち内筒部30の開口端は、吸着材層36のうち外筒部31の底壁側に設けられたフィルター34の略中央部に形成された凹部34aに挿入されている。その結果、後述するように、吸着材層36と内筒部30との間で行われる脱離空気の流動が略U字状のものとなる。
そして、第1ケーシング2側の吸着材層15のうちチャージポート8およびパージポート9側の端部に位置する吸着材14に外筒部31の大部分が埋没し、その外筒部31の外周面が吸着材14に直接接触しているとともに、当該外筒部31の開口端がグリッド部32を通じて気室25のパージポート側空間25bに連通している。なお、吸着材層15のうちスクリーン12にはインナカートリッジ28挿入用の貫通穴12aが形成されていて、インナカートリッジ28の外筒部31はこの貫通穴12aを通して吸着材層15に挿入されている。
これにより、第1ケーシング2側の吸着材層15が、気室25のパージポート側空間25bおよびインナカートリッジ28側の吸着材層36を介してパージポート9に連通することになる。つまり、インナカートリッジ28側の吸着材層36は、大気ポート11からパージポート9に向かう後述する脱離空気の通流方向で他の吸着材層15,18よりも下流側に位置している。
したがって、以上のように構成されたキャニスタ1によれば、図1に示すように、車両の停車時等においては図示外の燃料タンクから発生する蒸発燃料がチャージポート8から第1ケーシング2内に導入され、第1ケーシング2側の吸着材層15を構成している吸着材14のほか、第2ケーシング3側の吸着材層18を構成している吸着材14によって吸着される。
より具体的には、第1ケーシング2側の吸着材層15で吸着しきれなかった蒸発燃料は、その吸着材層15のグリッド19を通過し、さらに連通路6にてU字状に流れの向きを変えることで第2ケーシング3側の吸着材層18に流入して、その吸着材層18を構成している吸着材14に吸着される。このとき、図示は省略しているが、パージポート9とエンジンの吸気系との間に介装された周知のパージコントロールバルブは閉止状態にあり、インナカートリッジ28内には蒸発燃料が流入しないことから、そのインナカートリッジ28内の吸着材層36を構成する吸着材35には蒸発燃料が吸着されない。
その一方、エンジン稼働時(パージ時)には図示外のパージコントロールバルブが開かれ、図3に示すように、図示外のエンジンがパージポート9を通して吸気を行うことになる。これにより大気ポート11から空気(大気)が導入され、その導入された空気が脱離空気として第2ケーシング3と第1ケーシング2およびインナカートリッジ28を通過してパージポート9から図示外のエンジンの吸気系に導かれる。この脱離空気の流れにより、第2ケーシング3側の吸着材層18を構成している吸着材14のほか、第1ケーシング2側の吸着材層15を構成している吸着材14がいわゆるパージされ、吸着材14に吸着されている蒸発燃料が脱離空気とともにエンジン側に吸気されて燃焼処理される。そして、このパージによる蒸発燃料の脱離によって第1,第2ケーシング2,3側の吸着材層15,18を構成している吸着材14の性能が復活して再生されることになる。
ここで、車両の停車時等に第1,第2ケーシング2,3内の吸着材層15,18を構成する吸着材14が吸着保持する蒸発燃料の濃度は、蒸発燃料の通流方向上流側、すなわちチャージポート8側に向かって高くなる傾向にあることは先に述べた通りである。これに加え、第1,第2ケーシング2,3内の蒸発燃料は、重力の影響により、時間の経過に伴って下方に拡散・移動することになるため、図2にハッチングにて示すように、第1ケーシング2内の吸着材層15のうち蒸発燃料の通流方向上流側であって且つ仮想線Bよりも下方側の高濃度燃料吸着領域Zに位置する吸着材14が他の部分よりも高濃度の蒸発燃料を吸着保持することになる。そして、このように高濃度の蒸発燃料が吸着した吸着材14にはパージ後においても蒸発燃料が残存しやすく、その吸着材14が比較的早期に劣化してしまう虞があることも先に述べた通りである。
その対策として本実施の形態では、吸着保持する蒸発燃料の濃度が他の部位と比較して高濃度となる高濃度燃料吸着領域Zにインナカートリッジ28を配置し、当該インナカートリッジ28の容積分だけ高濃度燃料吸着領域Zの容積を小さくするとともに、エンジン稼働時(パージ時)にインナカートリッジ28内の吸着材層36を構成する吸着材35へ蒸発燃料を吸着させ、その吸着材35を発熱させることにより、高濃度燃料吸着領域Zに位置する吸着材14を加熱して蒸発燃料の脱離を促進するようにしている。
具体的には、図3に示すように、大気ポート11から第2ケーシング3内の吸着材層18および連通路6を経て第1ケーシング2内の吸着材層15に進入した脱離空気は、インナカートリッジ28の外周側を通過した上で、第1,第2ケーシング2,3内の吸着材層15,18を構成する吸着材14から脱離した蒸発燃料とともに気室25のパージポート側空間25bに進入する。さらに、その脱離空気は気室25のパージポート側空間25bにて略U字状に流れの向きを変え、インナカートリッジ28のケーシング29のうちグリッド部32を通してインナカートリッジ28内の吸着材層36へ蒸発燃料とともに進入する。
そして、インナカートリッジ28内の吸着材層36を構成している吸着材35に脱離空気とともに流れる蒸発燃料の一部が吸着されるとともに、その吸着材35に吸着されなかった蒸発燃料が脱離空気とともに外筒部31の底部にて略U字状に流れの向きを変え、内筒部30およびパージポート9を通して図示外のエンジンの吸気系に導入される。
一方、インナカートリッジ28内の吸着材層36を構成している吸着材35に蒸発燃料が吸着されると、その吸着材35はいわゆる凝縮熱によって発熱し、その熱がインナカートリッジ28のケーシング29のうち外筒部31を通じて第1ケーシング2側の吸着材層15を構成する吸着材14に伝達される。このようにして高濃度燃料吸着領域Zに位置する吸着材14が温められることにより、その吸着材14からの蒸発燃料の脱離が促進されることになる。
なお、インナカートリッジ28内の吸着材層36を構成する吸着材35は、上述したように蒸発燃料の吸着保持力が比較的低いものであるから、その吸着材35が吸着保持する蒸発燃料は、車両の停車時等において時間の経過とともに吸着材35から脱離して第1ケーシング2側の吸着材層15に移動または拡散し、その吸着材層15にて吸着保持されることになる。これにより、インナーカートリッジ28内の吸着材層36を構成する吸着材35の性能が復活し、次回のエンジン稼働時(パージ時)にも所期の性能を発揮するようになる。
したがって、本実施の形態によれば、車両のエンジン稼働時(パージ時)において、比較的高濃度な蒸発燃料を吸着保持するチャージポート8付近の吸着材14からの蒸発燃料の脱離を促進することができるから、その吸着材14のパージ効率が向上し、蒸発燃料の残存による当該吸着材14の劣化を抑制することができる。
図4,5は本発明の第2の実施の形態を示す図であって、そのうち図4はキャニスタの縦断面図、図5は図4のC−C線に沿った断面図である。なお、図4では、各吸着材層15,18および各リブ21,24を便宜上省略している。また、図4,5において上述した第1の実施の形態と共通する部分には同一の符号を付してある。
図4,5に示す第2の実施の形態は、インナカートリッジ37のケーシング38のうち外筒部40を略有底角筒状に形成したものである。より具体的には、外筒部40は、図5に示す断面上において、比較的高濃度の蒸発燃料が吸着材14に吸着保持されている高濃度燃料吸着領域Zの略中央部に車両装着時の上下方向で偏平な矩形状のものとして形成されている。そして、インナカートリッジ37のケーシング38のうち内筒部39が円筒状を呈していて、その内筒部39の開口端がフィルター43の凹部43aに挿入されている点、内筒部39と外筒部40とをグリッド部41が連結している点、およびインナカートリッジ37のケーシング38内に設けられた一対のフィルター42,43間に吸着材35を充填することで吸着材層44が形成されている点は、いずれも上述した第1の実施の形態と同様である。
したがって、この第2の実施の形態では、外筒部40を略有底角筒状に形成し、その容積および表面積を上述した第1の実施の形態のものよりも大きくしていることから、高濃度燃料吸着領域Zの容積がより一層小さくなるとともに、高濃度燃料吸着領域Zに位置する吸着材14をより効果的に温めることができるようになり、吸着材14の劣化をより一層抑制できるようになる。
1…キャニスタ
2…第1ケーシング
3…第2ケーシング
8…チャージポート(蒸発燃料導入部)
9…パージポート(蒸発燃料排出部)
11…大気ポート(大気導入部)
14…吸着材(第1の吸着材層を構成する吸着材)
15…吸着材層(第1の吸着材層)
28…インナカートリッジ
30…内筒部(内筒体)
31…外筒部(外筒体)
32…グリッド部(蓋体)
35…吸着材(第2の吸着材層を構成する吸着材)
36…吸着材層(第2の吸着材層)
37…インナカートリッジ
39…内筒部(内筒体)
40…外筒部(外筒体)
41…グリッド部(蓋体)
44…吸着材層(第2の吸着材層)

Claims (5)

  1. 蒸発燃料および脱離空気の流路を形成するケーシングのうち蒸発燃料および脱離空気の通流方向一端側に蒸発燃料導入部および蒸発燃料排出部が、上記ケーシングのうち蒸発燃料および脱離空気の通流方向他端側に大気導入部がそれぞれ形成されたキャニスタにおいて、
    上記ケーシング内に吸着材を充填することによって構成され、上記ケーシング内における蒸発燃料および脱離空気の流路の一部となる第1の吸着材層と、
    上記ケーシング内に設けられ、一端部が上記蒸発燃料排出部に連通するとともに他端部が開口した内筒体と、
    上記ケーシング内において上記内筒体に他端側から外挿された有底筒状の外筒体と、
    上記外筒体の内周面と内筒体の外周面との間に吸着材を充填することによって構成され、上記ケーシング内において大気導入部から蒸発燃料排出部に向かう脱離空気の流路のうち上記第1の吸着材層よりも下流側の一部となる第2の吸着材層と、
    を備えていて、
    上記第1の吸着材層のうち上記蒸発燃料排出部および蒸発燃料導入部側の端部に上記外筒体のうち少なくとも底壁側の一部が埋没していることを特徴とするキャニスタ。
  2. 上記第2の吸着材層は、上記第1の吸着材層を構成する吸着材よりも蒸発燃料の吸着保持力が低い吸着材をもって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のキャニスタ。
  3. 上記外筒体は、上記ケーシングを構成する材料よりも熱伝導率の高い材料をもって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキャニスタ。
  4. 蒸発燃料および脱離空気の通流方向が車両装着状態で水平方向を指向するように設定されているとともに、上記外筒体は、上記ケーシングのうち車両装着状態で上記蒸発燃料導入部よりも下方側となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキャニスタ。
  5. 上記外筒体の開口端において上記第2の吸着材層をバックアップする通気性の蓋体を有していて、その蓋体が上記外筒体と内筒体とを一体に連結することにより、第2の吸着材層を収容したインナカートリッジが形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のキャニスタ。
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