JP2013208425A - 組織再生用ゲル、組織再生用タンパク質溶液及び組織再生用ゲルの製造方法 - Google Patents

組織再生用ゲル、組織再生用タンパク質溶液及び組織再生用ゲルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】肉芽組織形成性が優れている組織再生用ゲル及び組織再生用タンパク質溶液並びに肉芽組織形成性が優れている組織再生用ゲルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含む組織再生用ゲルであって、(A)が下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2である組織再生用ゲル。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)中の1〜2個のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
【選択図】なし

Description

本発明は、組織再生用ゲル、組織再生用タンパク質溶液及び組織再生用ゲルの製造方法に関する。
皮膚が欠損した場合、早期に皮膚欠損部を閉鎖し、創傷治癒する必要があり、早期に皮膚欠損部を閉鎖するための様々な創傷治癒方法が知られている。例えば、皮膚欠損部の湿潤環境を保って、創傷治癒を促進させるグラニュゲル(特許文献1)やイントラサイトゲル(特許文献2)のようなカルボキシメチルセルロースゲル製剤や、疑似真皮組織を再生させるコラーゲンスポンジ(人工真皮)(特許文献3)等が用いられている。しかしながら、これらは、あくまで湿潤環境を保ち、疑似真皮組織を作る細胞の足場となるだけであるため、人体の自然治癒力に依存した治療となる。したがって、積極的に組織再生を促すものではない。
一方、積極的に組織再生、特に組織再生の根幹である肉芽組織形成を促すために、細胞増殖因子(例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)等)を皮膚欠損部に塗布する治療も多用されている。しかしながら、bFGF等の細胞増殖因子は半減期が短いため、毎日塗布する必要があり、煩雑である。
そこで、細胞増殖因子を持続的に徐放するために、マイクロスフェアーの表面にbFGFを吸着させることで徐放させる手法やコラーゲンスポンジの表面にbFGFを静電的に吸着させることで徐放させる手法が提唱されている(特許文献4)。これらの方法では、ある程度の徐放性を持たせることは可能であるものの、bFGFがコーティング保護されていないので、浸出液等の体液と接触しやすく、浸出液中に含まれるプロテアーゼ等によって細胞増殖因子が分解されてしまう問題があり、bFGFが元来持っている治療効果を発揮できない場合がある。
これらのことから、浸出液等の体液と細胞増殖因子を接触させることがなく、より細胞増殖因子の徐放性に富んでおり、組織再生に優れた、特に組織再生の根幹である肉芽組織形成に優れた組織再生用材料が求められている。
特許第2664539号公報 特許第3485593号公報 特開平10−080438号公報 特開2007−68884号公報
本発明は、肉芽組織形成性が優れている組織再生用ゲル及び組織再生用タンパク質溶液並びに肉芽組織形成性が優れている組織再生用ゲルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含む組織再生用ゲルであって、(A)が下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2である組織再生用ゲル;タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含む組織再生用タンパク質溶液であって、(A)が下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2である組織再生用タンパク質溶液;この組織再生用タンパク質溶液を4〜80℃にする組織再生用ゲルの製造方法である。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)中の1〜2個のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
本発明の組織再生用ゲルは、肉芽組織形成性が優れている。
また、本発明の組織再生用タンパク質溶液は、肉芽組織形成性が優れている組織再生用ゲルを製造することができる。
また、本発明の方法により製造した組織再生用ゲルは、肉芽組織形成性が優れている。
本発明の組織再生用ゲルは、タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含む組織再生用ゲルであって、(A)が下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2である組織再生用ゲルである。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)中の1〜2個のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
本発明において、タンパク質(A)は、動物由来成分を排除するために、人工的に製造されるものが好ましく、製造方法としては、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等が挙げられる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」又は「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。
有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、タンパク質(A)を製造できるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点及び分子量の大きいタンパク質を生産する場合における生産性の観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
本発明において、タンパク質(A)はアミノ酸配列(X)及び/又はアミノ酸配列(X’)を有するので、細胞親和性が高い。また、(A)の細胞親和性が高いことで、後述するタンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含む組織再生用タンパク質溶液を作成し、患部に投与した際に、(A)が細胞と細胞増殖因子(B)とを接近させるので、肉芽組織形成性が高い。
アミノ酸配列(X)としては、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び肉芽組織形成性の観点から、VPGVG配列(2)及び/又はGVGVP配列(3)が好ましい。
アミノ酸配列(X’)としては、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び肉芽組織形成性の観点から、GKGVP配列(13)、GKGKP配列(14)、GKGRP配列(15)及びGRGRP配列(16)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列が好ましく、さらに好ましくはGKGVP配列(13)及びGKGKP配列(14)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
タンパク質(A)として、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び肉芽組織形成性の観点から、VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGKGVP配列(13)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列を有しているタンパク質が好ましい。
本発明において、タンパク質(A)は、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び肉芽組織形成性の観点から、アミノ酸配列(X)の1種が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)及び/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有することが好ましい。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)において、(Y)の全アミノ酸数の0.01〜15%のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
ポリペプチド鎖(Y)は、具体的には、(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列、(GPP)d配列、(GAP)e配列及び(GAHGPAGPK)f配列である。(なお、b〜fは、それぞれ、アミノ酸配列(X)の連続する個数であり、2〜200の整数である)。
タンパク質(A)1分子中に、ポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列、(GPP)d配列、(GAP)e配列及び(GAHGPAGPK)f配列からなる群から選ばれる1種を有してもよく、2種以上を有してもいい。
また、タンパク質(A)中にアミノ酸配列(X)が同種類のポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、上記(X)の連続する個数は、(Y)ごとに同一でも異なっていてもよい。すなわち、(X)の連続する個数b〜fが同じポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよく、(X)の連続する個数b〜fが異なるポリペプチド鎖(Y)を複数有してもいい。
ポリペプチド鎖(Y)としては、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び肉芽組織形成性の観点から、ポリペプチド鎖(Y)として(VPGVG)b配列及び/又は(GVGVP)c配列が好ましい。
(A)が、アミノ酸配列(X)の種類が異なるポリペプチド鎖(Y)を有する場合、ポリペプチド鎖(Y)としては、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び肉芽組織形成性の観点から、(GPP)d配列、(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列及び(GAHGPAGPK)f配列からなる群より選ばれる2種以上の配列であることが好ましく、特に好ましくは(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列及び(GAHGPAGPK)f配列からなる群より選ばれる2種以上の配列である。
ポリペプチド鎖(Y)は、アミノ酸配列(X)が2〜200個連続した(上記b〜fが2〜200)ポリペプチド鎖であるが、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む水溶液がゲル化する観点から、連続する個数は2〜50個(上記b〜fが2〜50)が好ましく、さらに好ましくは2〜30個(上記b〜fが2〜30)である。
また、ポリペプチド鎖(Y’)は、(Y)における全アミノ酸数の0.01〜15%のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖である。具体的には、アミノ酸配列(X)が連続したポリペプチド鎖(Y)において、アミノ酸配列(X)の一部又は全部が、アミノ酸配列(X’)に置き換わったポリペプチド鎖が含まれる。
ポリペプチド鎖(Y’)において、(Y)中の全アミノ酸数のうちリシン及びアルギニンで置換された合計割合は、肉芽組織形成性の観点、(A)の水への溶解性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む水溶液がゲル化する観点から、0.5〜10%が好ましく、さらに好ましくは1〜5%である。
ポリペプチド鎖(Y’)であるかどうかは、タンパク質(A)の配列中の全てのリシン及びアルギニンを、他のアミノ酸(G、A、V、P又はH)に置きかえたときに、ポリペプチド鎖(Y)となるかによって判断する。
ポリペプチド鎖(Y’)として、具体的には、(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)等が挙げられる。ポリペプチド鎖(Y’)として、肉芽組織形成性の観点、(A)の水への溶解性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む水溶液がゲル化する観点から、(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)が好ましい。
タンパク質(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数は、肉芽組織形成性の観点、(A)の水への溶解性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む水溶液がゲル化する観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは1〜80個であり、特に好ましくは1〜60個である。
タンパク質(A)中に、(X)の種類及び/又は連続する個数が異なる(Y)を有している場合は、それぞれを1個として数え、(Y)の個数はその合計である。(Y’)も同様である。
本発明において、タンパク質(A)の疎水性度は0.2〜1.2であるが、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点、(A)の水への溶解性の観点、(A)を含む溶液がゲル化する観点及び(A)の生体内分解吸収性の観点から、0.3〜1.2が好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.2であり、次にさらに好ましくは0.45〜1.2であり、特に好ましくは0.45〜0.75であり、最も好ましくは0.47〜0.72である。
(A)の疎水性度は、(A)分子の疎水性の度合いを示すものであり、(A)分子を構成するそれぞれのアミノ酸の数(Mα)、それぞれのアミノ酸の疎水性度(Nα)及び(A)1分子中のアミノ酸の総数を、下記数式に当てはめることにより算出することができる。なお、それぞれのアミノ酸の疎水性度は、非特許文献(レ−ニンジャ−の新生化学 上,p.346−347)に下記の数値が記載されている。
疎水性度=Σ(Mα×Nα)/(MT
Mα:(A)1分子中のそれぞれのアミノ酸の数
Nα:各アミノ酸の疎水性度
T:(A)1分子中のアミノ酸の総数
A(アラニン):1.8
R(アルギニン):−4.5
N(アスパラギン):−3.5
D(アスパラギン酸):−3.5
C(システイン):2.5
Q(グルタミン):−3.5
E(グルタミン酸):−3.5
G(グリシン):−0.4
H(ヒスチジン):−3.2
I(イソロイシン):4.5
L(ロイシン):3.8
K(リシン):−3.9
M(メチオニン):1.9
F(フェニルアラニン):2.8
P(プロリン):−1.6
S(セリン):−0.8
T(トレオニン):−0.7
W(トリプトファン):−0.9
Y(チロシン):−1.3
V(バリン):4.2
例えば、(A)が(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)である場合、(A)の疎水性度={16(Gの数)×(−0.4)+15(Vの数)×4.2+8(Pの数)×(−1.6)+1(Kの数)×(−3.9)}/40(アミノ酸の総数)=1.00である。
疎水性度が上記範囲内であることで、タンパク質(A)が生体内で適度な期間に分解・吸収され、(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含む組織再生用ゲルは、細胞増殖因子(B)を適度な量、長期間放出し続けることが可能であり、肉芽組織形成性に優れる。
タンパク質(A)は、アミノ酸配列(X)及び/又はアミノ酸配列(X’)を有し、且つ(A)の疎水性度が上記範囲内であることにより、タンパク質(A)が水に溶解し、また、この溶液をゲル化することができる。したがって、タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含む組織再生用ゲルとすることができる。さらに、本発明の組織再生用ゲルは、細胞増殖因子(B)をゲル中に包み込み、細胞増殖因子の分解を制御することができるので、肉芽組織形成性に優れる。
また、タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含む組織再生用タンパク質溶液がゲル化して組織再生用ゲルとなるので、患部に適用する際は溶液状であり、患部に適用後にゲル状とすることができるため、複雑な創傷部においても細胞増殖因子を創傷部に密着させることができる。
本発明において、タンパク質(A)は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む溶液がゲル化する観点から、さらにGAGAGS配列(1)を有していることが好ましい。(A)がGAGAGS配列(1)を有している場合、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む溶液がゲル化する観点から、GAGAGS配列(1)が2〜100個連続して結合したポリペプチド鎖(S)を有していることが好ましい。
ポリペプチド鎖(S)において、GAGAGS配列(1)が連続する数は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む溶液がゲル化する観点から、2〜100個が好ましく、さらに好ましくは2〜50個であり、次にさらに好ましくは3〜40個であり、特に好ましくは4〜30個である。
(A)において、ポリペプチド鎖(S)を有する際、(A)1分子中に(S)を1つ以上有すればよいが、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む溶液がゲル化する観点から、1〜20個が好ましく、さらに好ましくは3〜10個である。
タンパク質(A)において、アミノ酸配列(X)、アミノ酸配列(X’)、ポリペプチド鎖(Y)、ポリペプチド鎖(Y’)、GAGAGS配列(1)及びポリペプチド鎖(S)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列を合計2個以上有する場合は、これらの間に、介在アミノ酸配列(Z)を有していてもいい。(Z)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及び(X’)では無いペプチド配列である。(Z)を構成するアミノ酸の数は、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び細胞親和性の観点から、1〜30個が好ましく、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個である。(Z)として、具体的には、VAAGY配列(5)、GAAGY配列(6)及びLGP配列等が挙げられる。
タンパク質(A)は、アミノ酸配列(X)、アミノ酸配列(X’)、ポリペプチド鎖(Y)、ポリペプチド鎖(Y’)、GAGAGS配列(1)、ポリペプチド鎖(S)及び介在アミノ酸配列(Z)以外にも、片末端又は両末端に末端アミノ酸配列(T)を有していてもいい。(T)を有する場合は、(A)の両末端の構造が、(X)、(X’)、(Y)、(Y’)又は(S)に(T)が結合した構造であることが好ましい。(T)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及び(X’)では無いペプチド配列である。(T)を構成するアミノ酸の数は、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む溶液がゲル化する観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは1〜50個、特に好ましくは1〜40個である。(T)として、具体的には、MDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(7)等が挙げられる。
タンパク質(A)は、上記(T)以外に、発現させた(A)の精製または検出を容易にするために、(A)のN及び/又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV−Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu−Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおけるタンパク質(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
タンパク質(A)1分子中のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量(重量%)は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及びタンパク質(A)の水への溶解性の観点から、(A)の分子量を基準として5〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜95重量%であり、次にさらに好ましくは15〜75重量%である。
タンパク質(A)中のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
<アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の含有量の測定法>
特定のアミノ酸残基で切断出来る切断方法から2種類以上を用いて、タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量を算出する。
アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量(重量%)=[{アミノ酸配列(X)の分子量}×{アミノ酸配列(X)の数}+{アミノ酸配列(X’)の分子量}×{アミノ酸配列(X’)の数}]/{(A)の分子量}×100
タンパク質(A)1分子中の、GAGAGS配列(1)の個数とアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数との比率(GAGAGS配列(1)の個数:アミノ酸配列(X)及び(X’)の合計個数)は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び(A)を含む溶液がゲル化する観点から、8:1〜1:20が好ましく、さらに好ましくは3:1〜1:12であり、特に好ましくは3:1〜1:10である。
タンパク質(A)の分子質量は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点及び細胞増殖因子(B)を長期間持続的に徐放する観点から、15〜220kDaが好ましく、さらに好ましくは15〜100kDaである。この範囲であると、(A)が分解されるまでの時間が適度である。
なお、タンパク質(A)の分子質量は、SDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により、測定サンプルを分離し、泳動距離を標準物質と比較する方法によって求められる。
好ましいタンパク質(A)の一部を以下に例示する。
(1)アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(3)のタンパク質
(1−1)GVGVP配列(3)が連続したポリペプチド鎖(Y1)中の1個のアミノ酸がK(リシン)で置換されたポリペプチド鎖(Y’1)を有するタンパク質(A1)であり、さらに好ましくは、(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)及び(GAGAGS)4配列(9)を有するタンパク質(A11)、(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)及び(GAGAGS)2配列(10)を有するタンパク質(A12)、並びに(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)、(GAGAGS)4配列(9)及び(GAGAGS)2配列(10)を有するタンパク質(A13)である。
具体的には、GAGAGS配列(1)が4個連続した(GAGAGS)4配列(9)を12個及びGVGVP配列(3)が8個連続したポリペプチド鎖(Y11)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、GAGAGS配列(1)が2個連続した(GAGAGS)2配列(10)1個が化学結合した構造を有する分子質量が約80kDaの配列(11)のタンパク質(SELP8K、疎水性度0.62);(GAGAGS)2配列(10)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約82kDaの配列(12)のタンパク質(SELP0K、疎水性度0.72)等である。
(1−2)GVGVP配列(3)が連続したポリペプチド鎖(Y1)を有するタンパク質(A2)であり、さらに好ましくは、GVGVP配列(3)が2個連続した(GVGVP)2配列(24)及びGAGAGS配列(1)が6個連続した(GAGAGS)6配列(23)を有するタンパク質(A21)であり、具体的には、(GVGVP)2配列(24)と(GAGAGS)6配列(23)が結合したアミノ酸ブロック(L−1)が29個繰り返し化学結合した構造を有する分子質量が約93kDaの配列(18)のタンパク質(SLP4.1、疎水性度0.47)等である。
(1−3)GVGVP配列(3)が連続したポリペプチド鎖(Y1)中の2個のアミノ酸がK(リシン)で置換されたポリペプチド鎖(Y’13)を有するタンパク質(A3)であり、さらに好ましくは、GKGVP配列(13)が2個連続したポリペプチド鎖(Y’13)、GAGAGS配列(1)が6個結合したポリペプチド鎖(S12)及びGAGAGS配列(1)が10個結合したポリペプチド鎖(S13)を有するタンパク質(A31)である。
具体的には、ポリペプチド鎖(S12)にポリペプチド鎖(Y’13)が結合し、さらにポリペプチド鎖(S13)が結合したアミノ酸ブロック(L−2)が10個繰り返し化学結合した構造を有する分子質量が約73kDaの配列(20)のタンパク質(SLP4.2、疎水性度0.20)等である。
(1−4)GVGVP配列(3)1個とGAGAGS配列(1)が20個連続して結合したアミノ酸ブロック(L−3)が12個繰り返し化学結合した構造を有する分子質量が約160kDaの配列(21)のタンパク質(SLP4.1.2、疎水性度0.30)等である。
(2)アミノ酸配列(X)がVPGVG配列(2)のタンパク質
(2−1)VPGVG配列(2)が連続したポリペプチド鎖(Y2)を有するタンパク質(A4)であり、具体的には、VPGVG配列(2)が160個連続したポリペプチド鎖(Y21)を有する分子質量が約65kDaの配列(19)のタンパク質(ELP1、疎水性度1.20)である。
(2−2)VPGVG配列(2)が4個連続した(VPGVG)4配列(25)及びVPGVG配列(2)が8個連続した(VPGVG)8配列(26)を有するタンパク質(A5)であり、さらに好ましくは、(VPGVG)4配列(25)、(VPGVG)8配列(26)及びGAGAGS配列(1)を有するタンパク質(A51)であり、具体的には、ポリペプチド鎖(Y22)にGAGAGS配列(1)が結合し、さらにポリペプチド鎖(Y23)が結合したアミノ酸ブロック(L−4)が40個繰り返し化学結合した構造を有する分子質量が約220kDaの配列(17)のタンパク質(ELP1.1、疎水性度1.12)である。
上記好ましいタンパク質(A)のうち肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点及び細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点から、(GAGAGS)4配列(9)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)を有するタンパク質、(GAGAGS)2配列(10)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)を有するタンパク質、(GAGAGS)6配列(23)及び(GVGVP)2配列(24)を有するタンパク質、VPGVG配列が160個連続して化学結合した配列を有するタンパク質並びに(VPGVG)4配列(25)、(VPGVG)8配列(26)及びGAGAGS配列(1)を有するタンパク質が好ましく、さらに好ましくは(GAGAGS)4配列(9)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)を有するタンパク質、(GAGAGS)2配列(10)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)を有するタンパク質並びに(GAGAGS)6配列(23)及び(GVGVP)2配列(24)を有するタンパク質である。
本発明において細胞増殖因子(B)は、生体内において、特定の細胞の増殖や分化を促進させる内因性のタンパク質であり、細胞増殖因子として一般的に知られているものを制限なく利用できる。(B)として具体的には、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、EGF(上皮細胞増殖因子)、PDGF(血小板由来成長因子)、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)等が挙げられる。
細胞増殖因子(B)のうち、肉芽組織形成性の観点から、bFGFが好ましい。
本発明において、水としては、滅菌されたものであれば特に限定するものではなく、滅菌方法としては、0.2μm以下の孔径を持つ精密ろ過膜を通した水、限外ろ過膜を通した水、逆浸透膜を通した水及びオートクレーブで121℃20分加熱して高圧滅菌した脱イオン水等が挙げられる。
本発明の組織再生用ゲルにおいて、組織再生用ゲル中のタンパク質(A)の含有量は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点及び細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点から、組織再生用ゲルの重量を基準として、5〜35重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜30重量%であり、次にさらに好ましくは15〜30重量%である。
組織再生用ゲル中の細胞増殖因子(B)の含有量は、肉芽組織形成性の観点から、組織再生用ゲルの重量を基準として、0.0005〜1.5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜1重量%であり、次にさらに好ましくは0.005〜0.1重量%である。
組織再生用ゲル中の水の含有量(重量%)は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及びタンパク質(A)の溶解性の観点から、組織再生用ゲルの重量を基準として、63.5〜94.9995重量%が好ましく、64〜94.999重量%であり、次にさらに好ましくは67.4〜89.999重量%であり、特に好ましくは67.7〜89.999重量%であり、次に特に好ましくは69〜89.999重量%であり、さらに特に好ましくは69.6〜84.995重量%であり、最も好ましくは69.9〜84.995重量%である。
また、組織再生用ゲル中の(A)と(B)との重量比((A)の重量/(B)の重量)は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点及び細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点から、40000/1〜10/1が好ましく、さらに好ましくは8000/1〜50/1であり、次にさらに好ましくは3000/1〜150/1である。
組織再生用ゲル中には、上記タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水以外に無機塩及びリン酸(塩)を含んでもいい。
無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩は無機塩に含まない。
組織再生用ゲル中の塩の含有量(重量%)は、人間の体液と同等にするというの観点から、組織再生用ゲルの重量を基準として0〜1.3が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.3であり、次にさらに好ましくは0.7〜1.1であり、特に好ましくは0.85〜0.95である。
リン酸(塩)は、リン酸及び/又はリン酸塩を意味する。
組織再生用ゲル中のリン酸(塩)としては、リン酸及びリン酸塩が挙げられる。
塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。
組織再生用ゲル中のリン酸(塩)の含有量(重量%)は、肉芽組織形成性の観点から、組織再生用ゲルの重量を基準として0〜0.30が好ましく、さらに好ましくは0.10〜0.30であり、次にさらに好ましくは0.12〜0.28であり、特に好ましくは0.14〜0.26である。
本発明の組織再生用ゲルにおいて、タンパク質(A)が生体内で分解吸収されるまでの時間は、組織再生の観点から、8〜16週間であることが好ましく、さらに好ましくは9〜14週間である。
タンパク質(A)が生体内で分解吸収されるまでの時間は、(A)を一定量含む溶液を組織に注入し、一定期間経過後、組織を採取し、組織内のタンパク質(A)を抽出し、抽出物中にタンパク質(A)が検出されるかどうかで判断する。具体的には、下記組織抽出法を用いてウエスタンブロット用のサンプルを作成し、下記ウエスタンブロット法によりタンパク質(A)を検出する。
<組織抽出法>
タンパク質(A)を20重量%含む水溶液を0.05mL、モルモット皮下中に注入し、一定期間経過後、注入部の組織10gを採取し、メス等で細かく刻み、タンパク質抽出用試薬(PRO−PREP コスモバイオ株式会社)5mLを加えて、−20℃で10分間放置する。その後、この組織を含む溶液をホモジナーザーにて粉砕し、遠心分離(8000rpm、5分間)して上清を回収し、ウエスタンブロット用サンプルとする。
<ウエスタンブロット法>
ウエスタンブロット用サンプル20μLに3×SDS処理バッファ(150mM Tris HCl(pH6.8)、300mM ジチオスレイトール、6重量% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.3重量% ブロモフェノールブルー、及び30重量% グリセロールを含む)10μLを添加して95℃5分間加温し、泳動用試料を調製する。この泳動用試料15μLを用いてSDS−PAGEを行う。泳動後のゲルをポリフッ化ビニリデンメンブレンにトランスファーし、これをブロッキングバッファ(20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、0.1重量% Tween20、及び5重量% スキムミルクを含む)に浸漬して1時間室温で振蕩することによりメンブレンのブロッキング処理を行う。ブロッキング処理後、メンブレンをTBS−T(20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、及び0.1重量% Tween20を含む)で2分間洗浄する。次に、メンブレンを一次抗体溶液(一次抗体:抗His−tag抗体(Rockland社製)をTBS−Tで500分の1に希釈した溶液)に浸漬し、4℃で一晩静置して抗体反応を行う。反応後、このメンブレンをTBS−Tで5分間、4回洗浄した後、一次抗体に結合可能であり且つ標識酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた二次抗体の溶液(二次抗体:ECL anti−mouse IgG HRP linked F(ab’)2 fragment(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)をTBS−Tで2000分の1に希釈した溶液)にメンブレンを浸漬し、30分間室温で静置して抗体反応を行う。反応後、メンブレンをTBS−Tで5分間、4回洗浄した後、ECL−Advance Western Blotting Detection Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により酵素反応を行った。ルミノメーターForECL(アマシャム社製)を用いて、高感度インスタント黒白フィルム(富士フイルム株式会社製)に感光させ、バンドを可視化した。肉眼でバンドが確認できない場合、分解吸収され、無くなったと判断する。
組織再生用ゲルが生体内で分解吸収されるまでの時間は、タンパク質(A)の分子量及び(A)の疎水性度により調整することが可能である。分子量が低いタンパク質ほど、分解吸収されるまでの時間が短くなる。また、疎水性度が低いタンパク質ほど、分解吸収されるまでの時間が短くなる。
本発明の組織再生用ゲルの適用方法としては、特に限定はないが、下記に一例を示す。
(1)タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を所定量含む、後述する組織再生用タンパク質溶液を4〜25℃で作製する。組織再生用タンパク質溶液には、必要により無機塩及び/又はリン酸(塩)を含んでもよい。また、組織再生用タンパク質溶液は、必要により患部に投与する直前に温めてもよい。
(2)患部(創傷部等)に組織再生用タンパク質溶液を投与する。
(3)投与後、組織再生用タンパク質溶液が患部から流出しないように、適当なドレッシングで被覆する。
(4)時間の経過及び/又は体温等の熱により、患部内で、組織再生用タンパク質溶液が組織再生用ゲルとなる。
上記(3)で使用するドレッシングの材質としては、特に限定されないが、ポリウレタン、シリコーン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体及びナイロン等が挙げられる。
ドレッシングの形状としては、組織再生用タンパク質溶液を投与後に、組織再生用タンパク質溶液が患部から流出しないように被覆できれば制限なく使用できるが、フィルム状が好ましい。
本発明の組織再生用ゲルは、動物由来の血清等が含まれていないので、抗原性が低いと推察される。また、タンパク質(A)は、生物由来配列を有するので、生体適合性が高いと推察される。さらに、タンパク質(A)は大腸菌等の細菌により、安価に大量生産できるので、組織再生用ゲルを容易に入手できる。
細胞増殖因子(B)の徐放時間は、組織再生用ゲル(又は組織再生用タンパク質溶液)中のタンパク質(A)の濃度及びタンパク質(A)の生分解性によって調整することができる。具体的には、組織再生用ゲル(タンパク質溶液)中の(A)の濃度が低ければ時間が短くなり、濃度が高ければ時間を長くすることができる。また、組織再生用ゲル(タンパク質溶液)中の(A)が、生体内で分解吸収されるまでの時間が短いものであれば、徐放時間は短くなる。
本発明の組織再生用タンパク質溶液は、上記タンパク質(A)、上記細胞増殖因子(B)及び上記水を含む組織再生用タンパク質溶液である。
タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水として好ましもの、好ましい含有量は組織再生用ゲルと同様である。
また、(A)、(B)及び水以外に含んでもよい成分及びその量は、組織再生用ゲルと同様である。
本発明の組織再生用タンパク質溶液は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及び組織再生の観点から、タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水等を混合した直後は溶液状であるが、時間の経過、熱等の刺激を加える等により流動性が低くなり、ゲル化することが好ましい。
組織再生用タンパク質溶液をゲル化させる温度は、短時間でゲル化させる観点から、組織再生用タンパク質溶液の温度を25℃〜80℃にするのが好ましい。80℃以下であると、タンパク質(A)の機能を低下させずにゲル化させることができ、また、ゲル化までの時間が適度である。
また、組織再生用タンパク質溶液を使用する場合、適用時の組織再生用タンパク質溶液の温度は、タンパク質(A)と細胞増殖因子(B)の熱安定性及びハンドリング性の観点から、4〜80℃が好ましく、さらに好ましくは4〜60℃、次にさらに好ましくは25〜50℃、特に好ましくは30〜40℃である。
患部への投与方法としては、組織再生用タンパク質溶液又は組織再生用ゲルが患部(組織)に接触できれば特に制限はないが、患者への負担の観点から、患部を被覆することが好ましく、患部の欠損部分を埋めるように注入することが好ましい。
患部に適用する場合、組織再生用タンパク質溶液を患部に適用し、患部でゲル化させて組織再生用ゲルとしてもよく、組織再生用タンパク質溶液をゲル化させ、組織再生用ゲルとしてから適用してもよい。
肉芽組織形成性の観点及び患部への密着性の観点から、組織再生用タンパク質溶液を患部に適用することが好ましい。
組織再生用タンパク質溶液中のタンパク質(A)の含有量は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点、組織再生の観点及びタンパク質溶液がゲル化する観点から、組織再生用タンパク質溶液の重量を基準として、5〜35重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜30重量%であり、次にさらに好ましくは15〜30重量%である。
組織再生用タンパク質溶液中の細胞増殖因子(B)の含有量は、肉芽組織形成性の観点から、組織再生用タンパク質溶液の重量を基準として、0.0005〜1.5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜1重量%であり、次にさらに好ましくは0.005〜0.1重量%である。
また、組織再生用タンパク質溶液中の(A)と(B)との重量比((A)の重量/(B)の重量)は、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点及び細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点から、8000/1〜50/1が好ましく、さらに好ましくは3000/1〜150/1である。
組織再生用タンパク質溶液中の水の含有量(重量%)は、肉芽組織形成性の観点、細胞増殖因子(B)の分解されにくさの観点、細胞増殖因子(B)を持続的に徐放させる観点及びタンパク質(A)の溶解性の観点から、組織再生用タンパク質溶液の重量を基準として、63.5〜94.9995重量%が好ましく、64〜94.999重量%であり、次にさらに好ましくは68.3〜89.999重量%であり、特に好ましくは68.6〜89.999重量%であり、次に特に好ましくは69〜89.999重量%であり、さらに特に好ましくは69.6〜84.995重量%であり、最も好ましくは69.9〜84.995重量%である。
組織再生用タンパク質溶液のpHは、肉芽組織形成性の観点及び組織親和性の観点から、5〜9が好ましく、さらに好ましくは6〜8である。
本発明の組織再生用タンパク質溶液は、上記タンパク質(A)及び細胞増殖因子(B)を含んでいるので、熱傷、採皮創、皮膚剥削創及び外傷性皮膚欠損創等の疾患ないし創傷による創傷部の治癒を促進する組織再生用タンパク質溶液として有効である。
本発明の組織再生用ゲルの製造方法は、上記組織再生用タンパク質溶液を4〜80℃にして組織再生用ゲルを製造する方法である。
組織再生用タンパク質溶液は、短時間でゲル化させる観点から、25〜80℃の温度にすることが好ましい。80℃以下であると、タンパク質(A)の機能を低下させずにゲル化させることができ、また、ゲル化までの時間が適度である。
また、組織再生用タンパク質溶液の温度は、タンパク質(A)と細胞増殖因子(B)の熱安定性及びハンドリング性の観点から、4〜60℃が好ましく、さらに好ましくは25〜50℃であり、特に好ましくは30〜40℃である。
本発明のゲルの製造方法により得られたゲルは、組織再生用ゲルとして有用である。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、%は重量%を意味する。
<製造例1>
○SELP8Kの生産
特許第4088341号公報の実施例記載の方法に準じて、SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345を作製した。
作製したプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションし、SELP8K生産株を得た。
30℃で生育させたSELP8K生産株の一夜培養液を使用して、250mlフラスコ中のLB培地50mlに接種した。カナマイシンを最終濃度50μg/mlとなるように加え、該培養液を30℃で攪拌しながら(200rpm)培養した。培養液がOD600=0.8(吸光度計UV1700:島津製作所製を使用)となった時に、40mlを42℃に前もって温めたフラスコに移し、同じ温度で約2時間培養した。該培養体を氷上で冷却し、培養液のOD600を測定した。大腸菌を遠心分離で集めた。集菌した大腸菌からタンパク質を取り出すために、超音波破砕(4℃、30秒×10回)をして溶菌した。
この大腸菌により産生されたタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供した後、ポリフッ化ビニリデン膜にトランスファーした。その後、一次抗体に抗ラビットSELP8K抗体、2次抗体に抗ラビットIgG HRP標識抗体(GEヘルスケア社製)を用いたウエスタンブロット分析を行なった。該生成物の見かけ分子質量は約80kDaであった。よってSELP8K生産株は、見かけ分子量80,000の抗ラビットSELP8K抗体反応性を有するSELP8Kを生成したことが分かった。
○SELP8Kの精製
上記で得たSELP8Kを、菌体溶解、遠心分離による不溶性細片の除去、及びアフィニティークロマトグラフィーにより大腸菌バイオマスから精製した。このようにして、分子質量が約80kDaのタンパク質(A−1)(SELP8K)を得た。
○SELP8Kの同定
得られたタンパク質(A−1)を下記の手順で同定した。
抗ラビットSELP8K抗体及びC末端配列の6×Hisタグに対する抗ラビット6×His抗体(Roland社製)を用いたウエスタンブロットにより分析した。見かけ分子質量80,000のタンパク質バンドが、各抗体に抗体反応性を示した。また得られたタンパク質をアミノ分析供した結果、該生成物が、グリシン(43.7%)、アラニン(12.3%)、セリン(5.3%)、プロリン(11.7%)及びバリン(21.2%)に富むものであった。また、該生成物はリシンを1.5%含んでいた。下記の表1は、精製された生成物の組成と、合成遺伝子配列から推測された予測理論組成との相関関係を示す。
したがって、SELP8K(A−1)が(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)を13個及び(GAGAGS)4配列(9)を12個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、(GAGAGS)2配列(10)が化学結合した配列(11)のタンパク質であることを確認した。
Figure 2013208425
<製造例2>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「SELP0KをコードしたプラスミドpPT0364」を用いる以外は同様にして、分子質量が約82kDaの配列(12)のタンパク質(A−2)を得た。
<製造例3>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「SLP4.1をコードしたpSY1398−1」を用いる以外は同様にして、分子質量が約93kDaの配列(18)のタンパク質(A−3)を得た。
<製造例4>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「ELP1.1をコードしたプラスミドpPT0102−1」を用いる以外は同様にして、分子質量が約220kDaの配列(17)のタンパク質(A−4)を得た。
<製造例5>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「ELP1をコードしたプラスミドpPT0102」を用いる以外は同様にして、分子質量が約65kDaの配列(19)のタンパク質(A−5)を得た。
<製造例6>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「SLP4.1.2をコードしたプラスミドpPT0102」を用いる以外は同様にして、分子質量が約160kDaの配列(21)のタンパク質(A−6)を得た。
<比較製造例1>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「SLP4.1.3をコードしたプラスミドpPT0102」を用いる以外は同様にして、分子質量が約150kDaの配列(22)のタンパク質(A’−1)を得た。
<組織抽出法>
タンパク質(A−1)〜(A−6)及び(A’−1)をそれぞれ20重量%含む水溶液を0.05mLずつ、モルモット皮下中に注入し、8週間後、12週間後及び16週間後に、注入部の組織10gを採取し、メス等で細かく刻み、タンパク質抽出用試薬(PRO−PREP コスモバイオ株式会社)5mLを加えて、−20℃で10分間放置した。その後、組織を含む溶液をホモジナーザーにて粉砕し、遠心分離(8000rpm、5分間)して上清を回収し、ウエスタンブロット用サンプルとした。
<ウエスタンブロット法>
ウエスタンブロット用サンプル20μLに3×SDS処理バッファ(150mM Tris HCl(pH6.8)、300mM ジチオスレイトール、6重量% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.3重量% ブロモフェノールブルー、及び30重量% グリセロールを含む)10μLを添加して95℃5分間加温し、泳動用試料を調製した。この泳動用試料15μLを用いてSDS−PAGEを行った。泳動後のゲルをポリフッ化ビニリデンメンブレンにトランスファーし、これをブロッキングバッファ(20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、0.1重量% Tween20、及び5重量% スキムミルクを含む)に浸漬して1時間室温で振蕩することによりメンブレンのブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、メンブレンをTBS−T(20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、及び0.1重量% Tween20を含む)で2分間洗浄した。次に、メンブレンを一次抗体溶液(一次抗体:抗His−tag抗体(Rockland社製)をTBS−Tで500分の1に希釈した溶液)に浸漬し、4℃で一晩静置して抗体反応を行った。反応後、このメンブレンをTBS−Tで5分間、4回洗浄した後、一次抗体に結合可能であり且つ標識酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた二次抗体の溶液(二次抗体:ECL anti−mouse IgG HRP linked F(ab’)2 fragment(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)をTBS−Tで2000分の1に希釈した溶液)にメンブレンを浸漬し、30分間室温で静置して抗体反応を行った。反応後、メンブレンをTBS−Tで5分間、4回洗浄した後、ECL−Advance Western Blotting Detection Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により酵素反応を行った。ルミノメーターForECL(アマシャム社製)を用いて、高感度インスタント黒白フィルム(富士フイルム株式会社製)に感光させ、バンドを可視化した。肉眼でバンドが確認できる場合は、タンパク質が残っている(有)と判断し、肉眼でバンドが確認できない場合、分解吸収され、無くなった(無)と判断した。結果を表2に示す。
Figure 2013208425
表2の結果から、タンパク質(A)の残存有無は、タンパク質(A)の疎水性度と呼応しており、疎水性度が低いほど生分解性が高いことが分かる。これは、疎水性度が低い場合、生体内の酵素(プロテアーゼやエラスターゼ等)による分解を受けやすいためであると考えられる。
<組織再生用ゲルの製造>
<実施例1〜27>
タンパク質(A−1)又は(A−2)と、bFGFとを、PBSに溶解し、表3に記載の濃度に調整した組織再生用タンパク質溶液(Z1)〜(Z9)を作成した。組織再生用タンパク質溶液(Z1)〜(Z9)をそれぞれ25℃、37℃及び50℃で静置し、ゲル化するまでの時間を測定した。ゲル化したかの確認は、組織再生用タンパク質溶液が入ったプラスティックチューブ容器を転倒し、溶液が垂れない場合はゲル化しているとし、溶液が垂れる場合はゲル化してないと判断した。結果を表3に示す。
Figure 2013208425
表3の結果から、タンパク質(A)の濃度及び温度を変化させることで、組織再生用タンパク質溶液のゲル化時間をコントロールできることがわかる。また、組織再生用ゲルを容易に得られることが分かる。
<実施例28>
タンパク質(A−1)を20mgとbFGF(和光純薬工業社製)20μgとをPBS(NaCl 8.00 g/L、KCl 0.20g/L、Na2HPO4 1.44g/L、KH2PO4 0.24g/L、pH7.2)に溶解して100μLとし、組織再生用タンパク質溶液(X1)とした。溶液(X1)を、37℃で2時間放置し、ゲル化させゲル(1)とした。
<実施例29〜45>
実施例28において、タンパク質(A)種類及び量と、bFGFの量とを表4に記載のものに変更する以外は同様にして、タンパク質溶液(X2)〜(X18)を作成した。また、タンパク質溶液(X2)〜(X18)を37℃でゲル化するまで静置しゲル化させ、ゲル(2)〜(18)とした。
<比較例1>
実施例1において、タンパク質(A−1)に代えて、タンパク質(A’−1)を用いる以外は同様にして、タンパク質溶液(X19)及びゲル(19)を作成した。
<比較例2>
グラニュゲル(コンバテック社製)20mgに、bFGF20μgを練りこんで、ゲル(20)とした。
<比較例3>
20μgのbFGFをPBS100μLに溶解した。この溶液に、コラーゲンスポンジ(グンゼ社製、品名:ペルナック)20mgを浸して吸収させ、ゲル(21)を得た。
Figure 2013208425
○bFGF徐放試験
実施例28〜45及び比較例1〜3で得たゲル(1)〜(21)を、それぞれ37℃のPBS中に浸漬させ、1日、3日、5日、7日、14日、21日後にPBS中に放出されたbFGFを、ELISA法により定量して行った。含浸させたbFGFを100%とした時のbFGF放出量を表5に示す。
○bFGF分解抑制試験
実施例28〜45及び比較例1〜3で得たゲル(1)〜(21)を、それぞれプロテアーゼが入った37℃のPBS中に24時間浸漬させた。その後、ゲルを取り出し、プロテアーゼの入っていない37℃のPBS中に試験片を浸漬させ、6日後にPBS中に放出されたbFGFの量(β)を、ELISA法により定量した。bFGFの量(β)と「bFGF徐放試験」における7日目の放出量(α)とを用いて、下記式から、分解抑制率を算出した。結果を表6に示す。
分解抑制率(%)=(β)/(α)×100
Figure 2013208425
Figure 2013208425
表5の結果から、比較例2のゲル(20)は、放出量が1週間で100%に達しており、bFGFの徐放が早すぎることが分かる。また、比較例3のゲル(21)でも、3週間で90%程度放出されており、bFGFの徐放が早すぎることが分かる。
一方、実施例28〜44のゲル(1)〜(17)は、放出量が3週間で10〜71.1%程度であり、細胞増殖因子を長期間持続的に除法できることが分かる。特に、実施例28〜32、34、35、37、38、42及び43のゲルは、放出量が3週間で25〜40%程度であり、組織再生を促すのに適度な放出量であることもわかる。
また、表6の結果から、実施例28〜45は分解抑制率が高く、タンパク質(A)によって、bFGFの分解を抑制することが可能であることがわかる。また、分解抑制の効果が高いことは、長期的にbFGFを徐放することができる要因のひとつと考えられる。
また、表5の結果から、実施例45のゲル(18)は、放出量が2週間で100%であるが、表6の結果から、分解抑制率は高く、長期的にbFGFを徐放することができることがわかる。
<比較例4>
タンパク質(A−1)20mgをPBS(NaCl 8.00 g/L、KCl 0.20g/L、Na2HPO4 1.44g/L、KH2PO4 0.24g/L、pH7.2)に溶解して100μLとし、組織再生用タンパク質溶液(X22)とした。
○動物試験
(糖尿病マウスを用いたIV度褥瘡モデルでの治療実験)
(1)病理標本の作製(病理標本は、それぞれ9個作製した。)
(1−1)実施例28、34〜45、比較例1及び4で作成した組織再生用タンパク質溶液(X1)、(X7)〜(X19)及び(X22)の場合
遺伝的糖尿病マウス♀(日本クレア)8週齢を麻酔下で除毛し、大腿第三転子部の皮膚を圧迫(400g/8mm×2時間×4)し、褥瘡(直径8mm)を作製した。圧迫終了後5日目に壊死組織を除去し、組織再生用タンパク質溶液(X1)、(X7)〜(X19)及び(X22)をそれぞれ56μl注入し、ポリウレタンフィルムを貼付した。その後、創傷部の上にガーゼをあてて、シルキーテックス(アルケア社製)で固定した。治療期間14日目に検体を擬死させ、創傷部を含む皮膚を採取し、病理標本(HE染色)を作製した。
(1−2)比較例2で作成したゲル(20)の場合
組織再生用タンパク質溶液(X1)に変えて、比較例2のゲル(20)20.02mgを水100μLに溶解したものを56μl注入し、病理標本(HE染色)を作製した。
(1−3)比較例3で作成したゲル(21)の場合
比較例3で作成したゲル(21)を、直径8mmに加工したものをナイロン糸で創傷部に固定し、同様に病理標本を作製した。
(2)組織学的検査
作製した病理標本用いて、組織学的検査を実施した。
未熟な毛細血管と繊維芽細胞が一体となった良好な肉芽組織を肉芽組織とみなした。ガス嚢胞やコレステリン血漿を含む肉芽組織は、肉芽組織ではないものとみなした。肉芽組織の形成を、以下の5段階の評価基準で評価し、点数化した。なお、点数が高いほど、より肉芽組織形成が促進されており、組織再生用材料の肉芽組織形成促進作用が優れていることを示している。評価結果は表7に示す。
1点:欠損部に対して全く肉芽組織が形成していない状態
2点:欠損部の全面積中の肉芽組織形成面積率が0%より大きく25%未満
3点:欠損部の全面積中の肉芽組織形成面積率が25%以上50%未満
4点:欠損部の全面積中の肉芽組織形成面積率が50%以上75%未満
5点:欠損部の全面積中の肉芽組織形成面積率が75%以上
Figure 2013208425
表7の結果から、本発明の組織再生用ゲルを用いれば、肉芽組織形成性が高いことがわかる。
また、本発明の組織再生用ゲルの中でも、細胞増殖因子が分解されにくく、細胞増殖因子を長期間持続的に徐放することができるものの方が、細胞増殖因子を適度に作用させることができ、より肉芽組織形成を促進させる効果が高く、組織再生用ゲルとしてさらに優れることがわかる。
本発明の組織再生用ゲルは、熱傷、採皮創、皮膚剥削創及び外傷性皮膚欠損創等の疾患ないし創傷による組織を再生する組織再生用ゲルとして有効である。また、本発明の組織再生用タンパク質溶液は、熱傷、採皮創、皮膚剥削創及び外傷性皮膚欠損創等の疾患ないし創傷による組織を再生するタンパク質溶液として有効である。また、本発明のゲルの製造方法により得られたゲルは、熱傷、採皮創、皮膚剥削創及び外傷性皮膚欠損創等の疾患ないし創傷による組織を再生するゲルとして有効である。

Claims (11)

  1. タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含む組織再生用ゲルであって、
    (A)が下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2である組織再生用ゲル。
    アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
    アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)中の1〜2個のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
  2. タンパク質(A)が、アミノ酸配列(X)の1種が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)及び/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、
    (A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個である請求項1に記載の組織再生用ゲル。
    ポリペプチド鎖(Y’):(Y)において、(Y)の全アミノ酸数の0.1〜20%のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
  3. タンパク質(A)が、さらにGAGAGS配列(1)が2〜50個連続して結合したポリペプチド鎖(S)を有するタンパク質である請求項1又は2に記載の組織再生用ゲル。
  4. タンパク質(A)1分子中の、GAGAGS配列(1)の個数とアミノ酸配列(X)及び下記アミノ酸配列(X’)の合計個数との比率(配列(1):アミノ酸配列(X)及び(X’)の合計)が、8:1〜1:20である請求項3に記載の組織再生用ゲル。
  5. タンパク質(A)のSDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子質量が15〜220kDaである請求項1〜4のいずれかに記載の組織再生用ゲル。
  6. タンパク質(A)が、VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGKGVP配列(13)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列を有するタンパク質である請求項1〜5のいずれかに記載の組織再生用ゲル。
  7. タンパク質(A)が、(GAGAGS)4配列(9)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)を有するタンパク質、(GAGAGS)2配列(10)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(8)を有するタンパク質及び(GAGAGS)6配列(23)及び(GVGVP)2配列(24)を有するタンパク質である請求項1〜6のいずれかに記載の組織再生用ゲル。
  8. 組織再生用ゲルの重量を基準として、タンパク質(A)の含有量が5〜35重量%、細胞増殖因子(B)の含有量が0.0005〜1.5重量%、水の含有量が63.5〜94.9995重量%である請求項1〜7のいずれかに記載の組織再生用ゲル。
  9. タンパク質(A)、細胞増殖因子(B)及び水を含有する組織再生用タンパク質溶液であって、
    (A)が下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2である組織再生用タンパク質溶液。
    アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
    アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)中の1〜2個のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
  10. 組織再生用タンパク質溶液の重量を基準として、タンパク質(A)の含有量が5〜35重量%、細胞増殖因子(B)の含有量が0.0005〜1.5重量%、水の含有量が63.5〜94.9995重量%である請求項9に記載の組織再生用タンパク質溶液。
  11. 請求項9又は10に記載の組織再生用タンパク質溶液を4〜80℃にする組織再生用ゲルの製造方法。
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