JP2024053336A - 筋収縮能回復促進材料 - Google Patents

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正和 石川
伸生 安達
佳一郎 井上
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Abstract

【課題】筋収縮能回復能が高い筋収縮能回復促進材料を提供する。【解決手段】タンパク質(A)を含む、筋組織損傷部位における筋収縮能回復促進材料であって、前記タンパク質(A)は、ポリペプチド鎖(Y)及び前記ポリペプチド鎖(S)が、交互にそれぞれ4本以上直接化学結合したポリペプチド鎖(YS)と、前記タンパク質(A)の両末端に形成された末端アミノ酸配列(T)とを有し、前記ポリペプチド鎖(Y)は、ポリペプチド鎖(y)及び/又はポリペプチド鎖(y’)を含み、前記タンパク質(A)中の前記ポリペプチド鎖(y)と前記ポリペプチド鎖(y’)との合計個数は4~100個である、筋収縮能回復促進材料とする。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年10月15日に第36回日本整形外科学会基礎学術集会にて口演
本発明は、筋収縮能回復促進材料に関する。
ヒトを含む健全な哺乳動物の筋(筋肉、筋組織) は、酷使、外傷、感染、および血液循環の喪失を含む多様な理由から損傷を受ける。一般的な筋組織は再生能力を有しており、損傷した筋組織は、速やかに再生され、肥大化する。しかし、酷使の繰り返しや重度の外傷等では正常な組織再生がされず、瘢痕組織(結合組織)によって置き換わるが、この瘢痕組織は収縮性を欠くため、再生組織は機収縮機能を失い、筋機能の喪失が引き起こされる(特許文献1,2、非特許文献1)。
従来の治療法として安静、冷却、圧迫、挙上などの保存療法やマッサージ、超音波、高圧酸素送達などが挙げられるが、これらの治療は、有効性が限られており筋組織損傷に対する有効な治療法は確立されていない。
また、筋組織を修復するだけでは、損傷前に有していた筋収縮能の回復までは担保できず、筋組織の再生を促進するだけでなく、筋収縮能の回復促進が出来る、筋組織損傷部位における筋収縮能回復促進用の基材が求められていた。
WO2013/039244号 WO2018/230535号
愛知県理学療法学会誌第28巻第2号2016年12月P43~47
本発明は、筋収縮能回復能が高い筋収縮能回復促進材料を提供することを目的とする。
本発明の筋収縮能回復促進材料は、タンパク質(A)を含む、筋組織損傷部位における筋収縮能回復促進材料であって、前記タンパク質(A)は、ポリペプチド鎖(Y)及び前記ポリペプチド鎖(S)が、交互にそれぞれ4本以上直接化学結合したポリペプチド鎖(YS)と、前記タンパク質(A)の両末端に形成された末端アミノ酸配列(T)とを有し、前記ポリペプチド鎖(Y)は、ポリペプチド鎖(y)及び/又はポリペプチド鎖(y’)を含み、前記タンパク質(A)中の前記ポリペプチド鎖(y)と前記ポリペプチド鎖(y’)との合計個数が4~100個であり、前記ポリペプチド鎖(y)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列であるVPGVG配列(1)、配列番号4に示されるアミノ酸配列であるGVGVP配列(4)、GPP配列、GAP配列及び配列番号3に示されるアミノ酸配列であるGAHGPAGPK配列(3)のうち少なくとも1つのアミノ酸配列(X)が2~200個連続したポリペプチド鎖であり、前記ポリペプチド鎖(y’)は、前記アミノ酸配列(X)中の60%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換された前記アミノ酸配列(X’)を含み、かつ、前記ポリペプチド鎖(y)中の5%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、1つの前記ポリペプチド鎖(y’)において置換された前記リシン及び前記アルギニンの合計個数が1~100個であり、前記ポリペプチド鎖(S)は、配列番号2に示されるアミノ酸配列であるGAGAGS配列(2)が2~50個連続して結合したポリペプチド鎖であり、前記末端アミノ酸配列(T)は、前記アミノ酸配列(X)、アミノ酸配列(X’)及びGAGAGS配列(2)のいずれも含まないポリペプチド鎖であり、前記ポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)の疎水性度がそれぞれ-0.4以上であり、前記末端アミノ酸配列(T)の疎水性度が-1.7~-0.5であり、前記タンパク質(A)を構成するアミノ酸から、前記末端アミノ酸配列(T)を構成するアミノ酸を除いたアミノ酸数を基準として、前記ポリペプチド鎖(YS)を構成するアミノ酸の個数の割合が、80~100%である。
本発明の筋収縮能回復促進材料は、筋収縮能回復能に優れ、正常な筋組織修復を実現できる。
本発明の筋収縮能回復促進材料は、タンパク質(A)を含む、筋組織損傷部位における筋収縮能回復促進材料であって、前記タンパク質(A)は、ポリペプチド鎖(Y)及び前記ポリペプチド鎖(S)が、交互にそれぞれ4本以上直接化学結合したポリペプチド鎖(YS)と、前記タンパク質(A)の両末端に形成された末端アミノ酸配列(T)とを有し、前記ポリペプチド鎖(Y)は、ポリペプチド鎖(y)及び/又はポリペプチド鎖(y’)を含み、前記タンパク質(A)中の前記ポリペプチド鎖(y)と前記ポリペプチド鎖(y’)との合計個数が4~100個であり、前記ポリペプチド鎖(y)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列であるVPGVG配列(1)、配列番号4に示されるアミノ酸配列であるGVGVP配列(4)、GPP配列、GAP配列及び配列番号3に示されるアミノ酸配列であるGAHGPAGPK配列(3)のうち少なくとも1つのアミノ酸配列(X)が2~200個連続したポリペプチド鎖であり、前記ポリペプチド鎖(y’)は、前記アミノ酸配列(X)中の60%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換された前記アミノ酸配列(X’)を含み、かつ、前記ポリペプチド鎖(y)中の5%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、1つの前記ポリペプチド鎖(y’)において置換された前記リシン及び前記アルギニンの合計個数が1~100個であり、前記ポリペプチド鎖(S)は、配列番号2に示されるアミノ酸配列であるGAGAGS配列(2)が2~50個連続して結合したポリペプチド鎖であり、前記末端アミノ酸配列(T)は、前記アミノ酸配列(X)、アミノ酸配列(X’)及びGAGAGS配列(2)のいずれも含まないポリペプチド鎖であり、前記ポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)の疎水性度がそれぞれ-0.4以上であり、前記末端アミノ酸配列(T)の疎水性度が-1.7~-0.5であり、前記タンパク質(A)を構成するアミノ酸から、前記末端アミノ酸配列(T)を構成するアミノ酸を除いたアミノ酸数を基準として、前記ポリペプチド鎖(YS)を構成するアミノ酸の個数の割合が、80~100%である。
以下、本発明の筋収縮能回復促進材料は、タンパク質(A)について詳述する。
タンパク質(A)は、ポリペプチド鎖(Y)及びポリペプチド鎖(S)が、交互にそれぞれ4本以上直接化学結合したポリペプチド鎖(YS)と、タンパク質(A)の両末端に形成された末端アミノ酸配列(T)とを有する。
ポリペプチド鎖(YS)には、後述のGAGAGS配列(2)、アミノ酸配列(X)、アミノ酸配列(X’)、介在アミノ酸配列(Z)、又は末端アミノ酸配列(T)が結合してもよい。
ポリペプチド鎖(Y)は、ポリペプチド鎖(y)及び/又はポリペプチド鎖(y’)を含む。そのため、後に詳述するゲル内の適度な湿潤環境を保つことができる。
ポリペプチド鎖(y)を構成するアミノ酸配列(X)の種類は1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
アミノ酸配列(X)としては、後に詳述するゲル内の適度な湿潤環境を保ち、筋収縮能回復能を向上させる観点から、VPGVG配列(1)及びGVGVP配列(4)が好ましい。
ポリペプチド鎖(y)としては、具体的には、(VPGVG)配列、(GVGVP)配列及び(GAHGPAGPK)配列等が挙げられる。なお、b~dは、それぞれ、アミノ酸配列(X)の連続する個数であり、2~200の整数である。
タンパク質(A)1分子中に、ポリペプチド鎖(y)を複数有する場合は、ポリペプチド鎖(y)は同一でも異なっていても良く、(VPGVG)配列、(GVGVP)配列及び(GAHGPAGPK)配列からなる群から選ばれる1種を有してもよく、2種以上を有しても良い。
また、タンパク質(A)中にポリペプチド鎖(y)を複数有する場合は、アミノ酸配列(X)の連続する個数は、ポリペプチド鎖(y)ごとに同一でも異なっていてもよい。すなわち、アミノ酸配列(X)の連続する個数b~dが同じポリペプチド鎖(y)を複数有してもよく、b~dが異なるポリペプチド鎖(y)を複数有してもよい。
ポリペプチド鎖(y)としては、後に詳述するゲル内の適度な湿潤環境を保つ観点から、(VPGVG)配列及び(GVGVP)配列が好ましい。
ポリペプチド鎖(y)は、アミノ酸配列(X)が2~200個連続した(上記b~dが2~200)ポリペプチド鎖であるが、ゲル内の適度な湿潤環境を保つ観点から、アミノ酸配列(X)が連続する個数は2~100個(上記b~dが2~100)が好ましく、更に好ましくは2~50個(上記b~dが2~50)、特に好ましくは2~40個(b~dが2~40)である。
ポリペプチド鎖(y’)は、アミノ酸配列(X)中の60%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換された前記アミノ酸配列(X’)を含み、かつ、ポリペプチド鎖(y)中の5%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、1つのポリペプチド鎖(y’)において置換されたリシン及びアルギニンの合計個数が1~100個である。
ポリペプチド鎖(y’)であるかどうかは、タンパク質(A)の配列中の全てのリシン(K)及びアルギニン(R)を、他のアミノ酸[グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、プロリン(P)又はヒスチジン(H)]に置きかえたときに、ポリペプチド鎖(y)となるかによって判断する。
ポリペプチド鎖(y’)において、置換されたリシン及び/又はアルギニンの割合は、後に詳述するゲル内の適度な湿潤環境を保つ観点から、1つのポリペプチド鎖(y’)のアミノ酸数に対し、0.06%~5%であることが好ましく、0.5~5%が更に好ましく、特に好ましくは1~5%である。
更に、ポリペプチド鎖(y’)を構成するアミノ酸配列(X)及び/又はアミノ酸配列(X’)の種類は、それぞれ1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
アミノ酸配列(X’)として、具体的には、配列番号7に示されるアミノ酸配列であるGKGVP配列(7)、配列番号8に示されるアミノ酸配列であるGKGKP配列(8)、配列番号9に示されるアミノ酸配列であるGKGRP配列(9)及び配列番号10に示されるアミノ酸配列であるGRGRP配列(10)等が挙げられる。
アミノ酸配列(X’)は、筋組織損傷部を適度な湿潤環境を保つ観点から、GKGVP配列(7)、GKGKP配列(8)及びGRGRP配列(10)からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列が好ましく、更に好ましくはGKGVP配列(7)及びGKGKP配列(8)である。
タンパク質(A)1分子中のポリペプチド鎖(y)とポリペプチド鎖(y’)との合計個数は、4~100個である。また、これらの合計個数は、4~80個であることが好ましく、4~60個であることがより好ましい。
タンパク質(A)1分子中のポリペプチド鎖(y)とポリペプチド鎖(y’)との合計個数が上記範囲であると、後に詳述するゲル内の適度な湿潤環境を保つことができる。
なお、タンパク質(A)中に、アミノ酸配列(X)の種類及び/又は連続する個数が異なるポリペプチド鎖(y)を有している場合は、それぞれを1個として数え、ポリペプチド鎖(y)の個数はその合計である。ポリペプチド鎖(y’)についても同様である。
本発明の筋収縮能回復促進材料では、タンパク質(A)に含まれるアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、タンパク質(A)の全アミノ酸数を基準として50~70%であることが好ましい。
上記の割合が、50%以上の場合は、後に詳述するゲル化性能が向上し、70%以下であると水溶性が向上する。
上記の割合は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、52.5~67.5%が好ましく、更に好ましくは55~65%である。
上記の割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
<タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対するアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合の測定法>
特定のアミノ酸残基で切断出来る切断方法から2種類以上を用いて、タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてタンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数及び全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数の合計個数の割合を算出する。
タンパク質(A)を構成する全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数及びタンパク質(A)を構成する全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数の合計数の割合(%)=[{アミノ酸配列(X)の数}×{アミノ酸配列(X)中のアミノ酸数}+{アミノ酸配列(X’)の数}×{アミノ酸(X’)中のアミノ酸数}]/{タンパク質(A)中の全アミノ酸数}×100
ポリペプチド鎖(S)は、配列番号2に示されるアミノ酸配列であるGAGAGS配列(2)が2~50個連続して結合したポリペプチド鎖である。
ポリペプチド鎖(S)は、後に詳述するタンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合を所定の範囲にすることができ、及び、ゲル内の適度な湿潤環境を保ち、筋収縮能回復能を向上させることができる。
ポリペプチド鎖(S)において、GAGAGS配列(2)が連続する個数は、ゲル内の適度な湿潤環境を保つ観点から、2~40個が好ましく、更に好ましくは2~30個であり、特に好ましくは2~10個である。
タンパク質(A)において、タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(2)中のアミノ酸数の割合[{タンパク質(A)中のGAGAGS配列(2)の数×6}/{タンパク質(A)中の全アミノ酸数}×100]は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、5~50%が好ましく、更に好ましくは10~47.5%であり、特に好ましくは20~45%である。
タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(2)中のアミノ酸数の割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求める。
<タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(2)中のアミノ酸数の割合>
特定のアミノ酸残基で切断出来る切断方法の2種類以上を用いて、タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてタンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(2)中のアミノ酸数の割合を算出する。
タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(2)中のアミノ酸数の割合(%)=[{GAGAGS配列(2)の数×6}/{タンパク質(A)中の全アミノ酸の数}]×100
タンパク質(A)では、ポリペプチド鎖(y)とポリペプチド鎖(y’)との間、ポリペプチド鎖(y)とポリペプチド鎖(S)との間、及び、ポリペプチド鎖(y’)とポリペプチド鎖(S)との間、ポリペプチド鎖(Y)と「ポリペプチド鎖(S)を構成しないGAGAGS配列(2)」との間、ポリペプチド鎖(S)と「ポリペプチド鎖(S)を構成しないGAGAGS配列(2)」との間、ポリペプチド鎖(Y)と「ポリペプチド鎖(Y)を構成しないアミノ酸配列(X)」との間、ポリペプチド鎖(S)と「ポリペプチド鎖(Y)を構成しないアミノ酸配列(X)」との間、ポリペプチド鎖(Y)と「ポリペプチド鎖(Y)を構成しないアミノ酸配列(X’)」との間、ポリペプチド鎖(S)と「ポリペプチド鎖(Y)を構成しないアミノ酸配列(X’)」との間等に、介在アミノ酸配列(Z)が存在していてもよい。
介在アミノ酸配列(Z)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(2)、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)ではないペプチド配列である。介在アミノ酸配列(Z)を構成するアミノ酸の数は、後に詳述するゲル内の適度な湿潤環境を保つ観点から、1~30個が好ましく、更に好ましくは1~15個、特に好ましくは1~10個である。介在アミノ酸配列(Z)として、具体的には、配列番号11に示されるアミノ酸配列であるVAAGY配列(11)、配列番号12に示されるアミノ酸配列であるGAAGY配列(12)及びLGP配列等が挙げられる。
タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全ての介在アミノ酸配列(Z)中のアミノ酸数の割合[Σ{(介在アミノ酸配列(Z)中のアミノ酸の数)×(介在アミノ酸配列(Z)の数)}/{タンパク質(A)中の全アミノ酸数}×100]は、後に詳述するゲル内の適度な湿潤環境を保つ観点から、0~25%が好ましく、更に好ましくは0~22.5%であり、特に好ましくは0.01~15%である。
タンパク質(A)の両末端には、末端アミノ酸配列(T)が形成されている。
タンパク質(A)の末端の構造としては、GAGAGS配列(2)[ポリペプチド鎖(S)を構成しないGAGAGS配列(2)を含む]、アミノ酸配列(X)[ポリペプチド鎖(Y)を構成しないアミノ酸配列(X)を含む]及びアミノ酸配列(X’)[ポリペプチド鎖(Y)を構成しないアミノ酸配列(X’)を含む]に、末端アミノ酸配列(T)が結合した構造である。
末端アミノ酸配列(T)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(2)、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)のいずれも含まないポリペプチド鎖である。
末端アミノ酸配列(T)を構成するアミノ酸の数は、生体内での分解性の観点から、1~100個が好ましく、更に好ましくは1~50個、特に好ましくは1~40個である。末端アミノ酸配列(T)として、具体的には、配列番号13に示されるアミノ酸配列であるMDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(13)、配列番号40に示されるアミノ酸配列であるMDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPMGAGS配列(40)、配列番号41に示されるアミノ酸配列であるGAGAMDPGRYQDLRS配列(41)等が挙げられる。
タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する末端アミノ酸配列(T)のアミノ酸数の割合は、生体内での分解性の観点から、25%以下が好ましく、更に好ましくは22.5%以下であり、特に好ましくは0.01~15%である。
タンパク質(A)は、後述の通り、生物工学的手法により細菌を用いて製造することがある。このような場合、発現させたタンパク質(A)の精製又は検出を容易にするために、タンパク質(A)は末端アミノ酸配列(T)の内の末端側に、N又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、E2タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV-Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu-Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i-1)グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GTS) (ii-1)グルタチオン
(i-2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii-2)アミロース
(i-3)HQタグ (ii-3)ニッケル
(i-4)Mycタグ (ii-4)抗Myc抗体
(i-5)HAタグ (ii-5)抗HA抗体
(i-6)FLAGタグ (ii-6)抗FLAG抗体
(i-7)6×Hisタグ (ii-7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおけるタンパク質(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
タンパク質(A)において、タンパク質(A)を構成する全ての介在アミノ酸配列(Z)中のアミノ酸数、タンパク質(A)を構成する全ての末端アミノ酸配列(T)中のアミノ酸数及び精製タグのアミノ酸数の合計数の割合は、生体内での分解性の観点から、タンパク質(A)中の全アミノ酸数を基準として、0~25%が好ましく、更に好ましくは0~22.5%であり、特に好ましくは0.01~15%である。
タンパク質(A)において、ポリペプチド鎖(y)及び/又はポリペプチド鎖(y’)並びにポリペプチド鎖(S)を含む場合、欠損面を適度な湿潤環境を保つ観点から、ポリペプチド鎖(y)又はポリペプチド鎖(y’)とポリペプチド鎖(S)とが交互に化学結合していることが好ましい。
GAGAGS配列(2)の個数と、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数との比(GAGAGS配列(2):アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計)は、タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合を適度にする観点から、1:1~1:20が好ましく、1:1~1:6が更に好ましく、1:1~1:5が特に好ましく、1:1~1:4がとりわけ好ましく、1:1.5~1:4が最も好ましい。
好ましいタンパク質(A)の一部を以下に例示する。
(A1):アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(4)であるタンパク質
(A11):GVGVP配列(4)が2~200個連続したアミノ酸配列中の1個のアミノ酸がリシン(K)で置換されたポリペプチド鎖(y’1)を有するタンパク質
(A111)ポリペプチド鎖(y’1)とGAGAGS配列(2)が2~200個連続したポリペプチド鎖(S1)とを有するタンパク質
(A111-1):GVGVP配列(4)が8個連続した配列番号14に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)配列(14)のポリペプチド鎖(y11)の1個のアミノ酸がリシン(K)で置換された配列番号6に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)であるペプチド鎖(y’11)と、GAGAGS配列(2)が2~200個連続したポリペプチド鎖(S1)を有するタンパク質
(A111-1-1):GAGAGS配列(2)が4個連続した配列番号5に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(5)であるポリペプチド鎖(S1-1)と(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)配列(5)を12個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、配列番号15に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(15)が化学結合したタンパク質[分子質量が約80kDaの配列番号16に示されるアミノ酸配列である配列(16)のタンパク質(SELP8K)、分子質量が約70kDaの配列番号34に示されるアミノ酸配列である配列(34)のタンパク質、分子質量が約70kDaの配列番号35に示されるアミノ酸配列である配列(35)のタンパク質]
(ii)(GAGAGS)配列(5)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)をそれぞれ4個有し、これらが交互に化学結合してなる分子質量が約30kDaの配列番号29に示されるアミノ酸配列である配列(29)のタンパク質(SELP8K4)
(iii)(GAGAGS)配列(5)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)をそれぞれ30個有し、これらが交互に化学結合してなる分子質量が約153kDaの配列番号32に示されるアミノ酸配列である配列(32)のタンパク質
(A111-1-2):GAGAGS配列(2)が2個連続した配列番号15に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(15)であるポリペプチド鎖(S1-2)と(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)配列(15)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約82kDaの配列番号17に示されるアミノ酸配列である配列(17)のタンパク質(SELP0K)
(A111-1-3):GAGAGS配列(2)が6個連続した配列番号27に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(27)と(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)配列(27)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)をそれぞれ15個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約92kDaの配列番号31に示されるアミノ酸配列である配列(31)のタンパク質
(A111-2):GVGVP配列(4)が12個連続したポリペプチド鎖の1個のアミノ酸がリシン(K)で置換された配列番号18に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(18)(y’12)と、GAGAGS配列(2)が2~200個連続したポリペプチド鎖(S1)を有するタンパク質
(A111-2-1):GAGAGS配列(2)が4個連続した配列番号19に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(19)と(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(18)とを有するタンパク質
(i)(GAGAGS)配列(19)を12個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(18)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、(GAGAGS)配列(15)が化学結合した分子質量が約105kDaの配列番号20に示されるアミノ酸配列である配列(20)のタンパク質
(ii)(GAGAGS)配列(19)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(21)をそれぞれ13個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約91kDaの配列番号30に示されるアミノ酸配列である配列(30)のタンパク質
(A2):アミノ酸配列(X)がVPGVG配列(1)であるタンパク質
(A21):VPGVG配列(1)が2~200個連続したポリペプチド鎖(y2)とGAGAGS配列(2)を有するタンパク質
(i)GAGAGS配列(2)、配列番号24に示されるアミノ酸配列である(VPGVG)配列(24)及び配列番号25に示されるアミノ酸配列である(VPGVG)配列(25)をそれぞれ40個有し、これらが(VPGVG)配列(24)、GAGAGS配列(2)、(VPGVG)配列(25)の順に結合したブロックが40個化学結合してなる構造を有する分子質量約200kDaの配列番号26に示されるアミノ酸配列である配列(26)のタンパク質(ELP1.1)
(A3):GVGVP配列(4)が2~200個連続したポリペプチド鎖(y1)とGAGAGS配列(2)が2~200個連続したポリペプチド鎖(S1)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)配列番号21に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(21)及び配列番号22に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)40配列(22)をそれぞれ5個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約110kDaの配列番号23に示されるアミノ酸配列である配列(23)のタンパク質(SELP6.1)
(ii)(GAGAGS)配列(27)及び配列番号28に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)配列(28)をそれぞれ29個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約100kDaの配列番号33に示されるアミノ酸配列である配列(33)のタンパク質
これらの中では、配列(16)のタンパク質(SELP8K)、配列(30)のタンパク質、配列(31)のタンパク質、配列(32)のタンパク質、配列(33)のタンパク質、配列(34)のタンパク質又は配列(35)のタンパク質であることが好ましく、配列(16)のタンパク質(SELP8K)、配列(30)のタンパク質、配列(32)のタンパク質又は配列(35)のタンパク質であることが更に好ましい。
また、タンパク質(A)は、配列(16)のタンパク質、配列(30)のタンパク質、配列(31)のタンパク質、配列(32)のタンパク質、配列(33)のタンパク質、配列(34)のタンパク質又は配列(35)のタンパク質のアミノ酸配列と相同性が70%以上であるアミノ酸配列を有するタンパク質であっても良い。
さらに、タンパク質(A)は、配列(16)のタンパク質(SELP8K)、配列(30)のタンパク質、配列(32)のタンパク質又は配列(35)のタンパク質のアミノ酸配列と相同性が70%以上であるアミノ酸配列を有するタンパク質であることが好ましい。
また、この相同性は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
本発明におけるタンパク質(A)は、円二色性スペクトル法により求められるタンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計割合が60~85%であることが好ましい。タンパク質の配列が同じでも、タンパク質の作製方法、タンパク質の精製方法、タンパク質を溶解させる溶媒のpH及び溶媒の極性等により、タンパク質中のβターン構造とランダムコイル構造との合計割合は異なる。
βターン構造とランダムコイル構造との合計割合が60%以上であると、水溶性が向上する。また、85%以下であると、後に詳述するゲル化性能が向上する。
タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計割合は、欠損面を適度な湿潤環境を保ち、筋組織の再生を促進させる観点から、更に好ましくは65~80%であり、特に好ましくは70~80%である。
上記割合を制御する方法としては特に限定されないが、以下の方法により増加又は低下させることができる。
上記割合を増加させる場合には、例えば、タンパク質(A)を例えば、単独のタンパク質(A)を過剰量の緩衝液で希釈してからリフォールディングさせる希釈リフォールディング法(大希釈法)が挙げられる。
また、上記割合を低下させる場合には、例えば、タンパク質(A)を変性剤や熱等により変性させる方法が挙げられる。
タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計割合は、下記測定法によって求める。
<タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合の測定方法>
タンパク質を0.3mg/mlとなるように脱イオン水(4℃)に溶解し、タンパク質の水溶液を作製する。作製したタンパク質の水溶液を円二色性スペクトル測定器(日本分光株式会社製、「J-820」)にて測定し(測定温度:4℃)、二次構造解析プログラム(JWSSE型:日本分光株式会社製)にてβターン構造の割合とランダムコイル構造の割合とを算出し、これらの合計をβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合とする。
タンパク質(A)のSDS-PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子質量は、生体内での分解性の観点から、15~200kDaが好ましく、更に好ましくは30~150kDaであり、特に好ましくは70~120kDaである。
本発明において、タンパク質(A)の疎水性度は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、0.2~1.2であることが好ましく、更に好ましくは0.4~1.0であり、特に好ましくは0.42~0.80であり、最も好ましくは0.50~0.80である。
タンパク質(A)の疎水性度は、タンパク質(A)分子の疎水性の度合いを示すものであり、タンパク質(A)分子を構成するそれぞれのアミノ酸残基の数(Mα)、それぞれのアミノ酸の疎水性度(Nα)及びタンパク質(A)1分子中のアミノ酸残基の総数(M)を、下記数式に当てはめることにより算出することができる。なお、それぞれのアミノ酸の疎水性度は、非特許文献(アルバート・L.レーニンジャー、デビット・L.ネルソン、レ-ニンジャ-の新生化学 上、廣川書店、2010年9月、p.346-347)に記載されている下記の数値を用いる。
疎水性度=Σ(Mα×Nα)/(M
α:人工タンパク質(A)1分子中のそれぞれのアミノ酸残基の数
α:各アミノ酸の疎水性度
:人工タンパク質(A)1分子中のアミノ酸残基の総数
A(アラニン):1.8
R(アルギニン):-4.5
N(アスパラギン):-3.5
D(アスパラギン酸):-3.5
C(システイン):2.5
Q(グルタミン):-3.5
E(グルタミン酸):-3.5
G(グリシン):-0.4
H(ヒスチジン):-3.2
I(イソロイシン):4.5
L(ロイシン):3.8
K(リシン):-3.9
M(メチオニン):1.9
F(フェニルアラニン):2.8
P(プロリン):-1.6
S(セリン):-0.8
T(トレオニン):-0.7
W(トリプトファン):-0.9
Y(チロシン):-1.3
V(バリン):4.2
例えば、人工タンパク質(A)が(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)である場合、人工タンパク質(A)の疎水性度={16(Gの数)×(-0.4)+15(Vの数)×4.2+8(Pの数)×(-1.6)+1(Kの数)×(-3.9)}/40(アミノ酸残基の総数)=1.0である。
また、ポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)の疎水性度は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、それぞれ-0.4以上であり、-0.4~1.5であることが好ましい。
末端アミノ酸配列(T)の疎水性度は、筋収縮能回復能を向上させる観点から-1.7~-0.5である。
タンパク質(A)を構成する全てのポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)から計算される疎水性度[全てのポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)を構成する全てのアミノ酸残基に基づく疎水性度]は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、0.4~1.0であることが好ましく、0.5~1.0であることが更に好ましい。
タンパク質(A)を構成する全ての末端アミノ酸配列(T)から計算される疎水性度[全ての末端アミノ酸配列(T)を構成する全てのアミノ酸残基に基づく疎水性度]は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、-1.0~-0.5であることが好ましく、-0.9~-0.5であることが更に好ましく、-0.9~-0.7であることが特に好ましい。
全てのポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)から計算される疎水性度が正の値で、全ての末端アミノ酸配列(T)から計算される疎水性度が負の値である場合、「タンパク質(A)を構成する全てのポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)から計算される疎水性度」/「タンパク質(A)を構成する全ての末端アミノ酸配列(T)から計算される疎水性度」の計算値は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、-1.5~-0.5であることが好ましく、-1.0~-0.6であることが更に好ましく、-1.0~-0.7であることが更に好ましく、-1.0~-0.8であることが特に好ましい。
筋収縮能回復能を向上させる観点から、タンパク質(A)は、タンパク質(A)を構成するアミノ酸から、末端アミノ酸配列(T)を構成するアミノ酸を除いたアミノ酸数を基準として、前記ポリペプチド鎖(YS)を構成するアミノ酸の個数の割合が、80~100%である。
上記の割合は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、85~100%であることが好ましく、90~100%であることが更に好ましく、95~100%であることが特に好ましく、99~100%であることが最も好ましい。
本発明の筋収縮能回復促進材料は、上記のようなアミノ酸配列からなるタンパク質(A)を含むものであることから、生体内の酵素により分解されるため、生分解性に優れている。
本発明において、タンパク質(A)は、天然物からの抽出、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等によって得られる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法、及び、「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。天然物からの抽出、有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、タンパク質(A)を得られるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
本発明の筋収縮能回復促進材料は、前記のタンパク質(A)以外に水、無機塩及び/又はリン酸(塩)を含んでいても良い。
無機塩としては、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等が挙げられる。なお、本明細書においてリン酸(塩)は無機塩に含まない。
筋収縮能回復促進材料中の無機塩の含有量(重量%)は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、筋収縮能回復促進材料の重量を基準として0~3重量%が好ましく、更に好ましくは0~1重量%、特に好ましくは0.001~0.5重量%である。
リン酸(塩)は、リン酸及び/又はリン酸塩を意味する。
リン酸塩としては、リン酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。
筋収縮能回復促進材料中のリン酸(塩)の含有量は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、筋収縮能回復促進材料の重量を基準として0.001~2重量%が好ましく、更に好ましくは0.001~0.5重量%、特に好ましくは0.001~0.05重量%である。
本発明の筋収縮能回復促進材料が含有するタンパク質(A)の重量割合は、筋収縮能回復能を向上させる観点から、筋収縮能回復促進材料の重量を基準として、5~25重量%であることが好ましく、10~20重量%であることが更に好ましい。
本発明の筋収縮能回復促進材料の使用方法としては、以下の方法等が挙げられる。
(1)本発明の筋収縮能回復促進材料は、4~40℃(好ましくは20~40℃)にすることで、ゲル化させることができる。
このゲル化させた筋収縮能回復促進材料を、切開等により露出させた筋組織損傷部位(骨格筋等)に投与することで、筋組織損傷部位における筋組織の再生を促すことができる。なお、筋収縮能回復促進材料投与後は、コラーゲン膜や患者の筋膜膜等により、切開部を縫合・封鎖することができる。
(2)本発明の筋収縮能回復促進材料を、注射により筋組織損傷部位(骨格筋等)に投与することで、筋収縮能回復促進材料が患者の体温によりゲル化し、上記の(1)と同様に、筋組織損傷部位における筋組織の再生を促すことができる。
これらの方法は、本発明の筋組織損傷部位の治療方法でもある。
本発明の筋収縮能回復促進材料は、外傷により正常な組織再生が阻害され、筋収縮能が回復困難となった筋組織損傷に用いることができる。
また、外傷により正常な組織再生が阻害され、筋収縮能が回復困難となった筋組織損傷に対する上記筋収縮能回復促進材料の使用は、本発明の筋収縮能回復促進材料の使用でもある。
上記のタンパク質(A)を含む「外傷により正常な組織再生が阻害され、筋収縮能が回復困難となった筋組織損傷用」の筋収縮能回復促進材料も、発明の材料である。
また、上記筋収縮能回復促進材料は、筋挫傷用の筋収縮能回復促進材料として有用である。
以下に実施例として本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
<製造例1:SELP8Kの作製>
○SELP8Kの生産
特許第4088341号公報の実施例記載の方法に準じて、SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345を作製した。
作製したプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションし、SELP8K生産株を得た。以下、このSELP8K生産株を用いて、配列(16)を有するタンパク質(A)を生産する方法を示す。
○SELP8K生産株の培養
30℃で生育させたSELP8K生産株の一夜培養液を使用して、250mlフラスコ中のLB培地50mlに接種した。カナマイシンを最終濃度50μg/mlとなるように加え、該培養液を30℃で攪拌しながら(200rpm)培養した。培養液が濁度OD600=0.8(吸光度計UV1700:(株)島津製作所製を使用)となった時に、40mlを42℃に前もって温めたフラスコに移し、同じ温度で約2時間培養した。培養した培養液を氷上で冷却し、培養液の濁度OD600を測定し、遠心分離にて大腸菌を集菌した。
○SELP8Kの精製
集菌した大腸菌を用い、下記1:菌体溶解、2:遠心分離による不溶性細片の除去、3:硫安沈殿、4:限外濾過、5:陰イオン交換クロマトグラフィー、6:限外濾過、7:凍結乾燥により大腸菌バイオマスからタンパク質を精製した。このようにして、分子質量が約80kDaの配列(16)を有するタンパク質の精製物である製造例1に係るタンパク質(A)(SELP8K)を得た。
1:菌体溶解
集菌した大腸菌100gに対して、脱イオン水200gを加えて、高圧ホモジナイザー(55MPa)にて菌体溶解し、溶解した菌体を含む菌体溶解液を得た。その後、菌体溶解液を氷酢酸にてpH4.0に調整した。
2:遠心分離による不溶性細片の除去
更に菌体溶解液を遠心分離(6300rpm、4℃、30分間)して、上清を回収した。
3:硫安沈殿
回収した上清に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8~12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解した。溶解した液に対して、同様に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8~12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解し、溶液を得た。
4:限外濾過
「3:硫安沈殿」で得た溶液を分子質量30,000Daカットの限外濾過装置(ホロファーバー:GEヘルスケア社製)に供した。「3:硫安沈殿」で得た溶液に対して、10倍量の脱イオン水を用いて、限外濾過を実施し、限外濾過後のタンパク質を得た。
5:陰イオン交換クロマトグラフィー
限外濾過後のタンパク質を10mM酢酸ナトリウム緩衝液に溶解して20g/Lとし、陰イオン交換カラムHiPrepSP XL16/10(GEヘルスケア社製)をセットしたAKTAPrime(GEヘルスケア社製)に供した。溶出液として500mM 10mM酢酸ナトリウム緩衝液を用いて、溶出画分を回収した。
6:限外濾過
「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」で得た溶液を上記「4:限外濾過」と同様にして処理し、限外濾過後のタンパク質を得た。
7:凍結乾燥
タンパク質を脱イオン水に溶解して5g/Lとし、水位が15mm以下となるようにステンレス製のバットに入れた。その後、凍結乾燥機(日本テクノサービス(株)製)に入れて、-40℃、16時間かけて凍結させた。凍結後、真空度が8Pa以下、-20℃で、90時間かけて1次乾燥、真空度が8Pa以下、20℃で、24時間かけて2次乾燥させた。このようにして、製造例1に係るタンパク質(A-1)(SELP8K)を得た。
○SELP8Kの同定
製造例1に係るタンパク質(A-1)を下記の手順で同定した。
ラビット抗SELP8K抗体及びC末端配列の6×Hisタグに対するラビット抗6×His抗体(Roland社製)を用いたウエスタンブロット法により分析した。ウエスタンブロット法の手順は下記の通りとした。見かけ分子質量80kDaの位置に、各抗体に抗体反応性を示すバンドが見られた。
また、アミノ酸分析システム(Prominence島津製作所製)を用いたアミノ酸組成分析より得られた製造例1に係るタンパク質(A-1)のアミノ酸の組成物率(実測値)と、合成遺伝子配列から推測されるSELP8Kのアミノ酸の組成物率(理論値)を表1に示す。
これらから、製造例1に係るタンパク質(A)はGVGVP配列(4)が8個連続したポリペプチド鎖(y)中のバリン(V)のうち1個がリシン(K)に置換された(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)のポリペプチド鎖(y’2)を13個及びGAGAGS配列(2)が4個連続した(GAGAGS)配列(5)のポリペプチド鎖(S1-1)を12個有し、これらが交互に化学結合してなる配列(16)を有するタンパク質(SELP8K)であることを確認した。
Figure 2024053336000001
<ウエスタンブロット法>
ウエスタンブロット用サンプル20μLに3×SDS処理バッファ[150mM Tris HCl(pH6.8)、300mM ジチオスレイトール、6% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.3% ブロモフェノールブルー、及び30% グリセロールを含む]10μLを添加して95℃で5分間加温し、泳動用試料を調製した。この泳動用試料15μLを用いてSDS-PAGEを行った。泳動後のゲルをフッ化ポリビニリデンメンブレンにトランスファー(以下、「メンブレン」と略記)し、これをブロッキングバッファ[20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、0.1% Tween20、及び5% スキムミルクを含む]に浸漬して1時間室温で振蕩することによりメンブレンのブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、メンブレンをTBS-T[20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、及び0.1% Tween20を含む]で2分間洗浄した。次に、メンブレンを一次抗体溶液(一次抗体:抗SELP8K抗体及び抗His-tag抗体(Rockland社製)をTBS-Tで500分の1に希釈した溶液)に浸漬し、4℃で一晩静置して抗体反応を行った。反応後、このメンブレンをTBS-Tで5分間、4回洗浄した後、一次抗体に結合可能であり且つ標識酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた二次抗体の溶液(二次抗体:ECL anti-rabbit IgG HRP linked F(ab’)2 fragment(GEヘルスケア社製)をTBS-Tで2000分の1に希釈した溶液)にメンブレンを浸漬し、30分間室温で静置して抗体反応を行った。反応後、メンブレンをTBS-Tで5分間、4回洗浄した後、ECL-Advance Western Blotting Detection Kit(GEヘルスケア社製)により酵素反応を行った。ルミノメーターForECL(GEヘルスケア社製)を用いて、高感度インスタント黒白フィルム(富士フイルム株式会社製)に感光させ、バンドを可視化した。
○βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合の測定
製造例1に係るタンパク質(A)を用いて下記の手順でβターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した。
<βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合の測定>
製造例1に係るタンパク質(A-1)を0.3mg/mlとなるように脱イオン水(4℃)に溶解し、製造例1に係るタンパク質(A)水溶液を作製した。作製した製造例1に係るタンパク質(A-1)水溶液を円二色性スペクトル測定器(日本分光:J-820)にて測定し(測定温度:4℃)、二次構造解析プログラム(JWSSE型:日本分光株式会社製)を用いて、βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を算出した。結果を表2に示す。
<製造例2>
製造例1の「SELP8Kの作製」において、「SELP8Kの精製」の「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」と「6:限外濾過」との間に、下記「5-1:リフォールディング(大希釈法)」を行う以外は同様にして、製造例2に係るタンパク質(A-2)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
5-1:リフォールディング(大希釈法)
陰イオン交換クロマトグラフィーの溶出画分をタンパク質変性剤である10Mウレア溶液にて、6Mウレア溶液となるように調製し、12時間、4℃で静置した。調製した溶液を透析膜(Viskase Companies,Inc.社製)に投入し、溶出画分の10倍容量の脱イオン水にて12時間、透析した。その後、脱イオン水を捨て、新たに溶出画分の3倍容量の脱イオン水にて12時間、透析した。溶出画分の3倍容量の脱イオン水による透析を残り5回繰り返した後、透析膜中の溶液を回収した。
<製造例3>
製造例1の「SELP8Kの作製」において、「SELP8Kの精製」の「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」に代えて下記「5’:アフィニティクロマトグラフィー」とする以外は同様にして、製造例3に係るタンパク質(A-3)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
5’:アフィニティクロマトグラフィー
「4:限外濾過」後のタンパク質を、His-tagを用いたアフィニティクロマトグラフィー(GEヘルスケア社製、Ni Sepharose 6 Fast Flow)にて精製し、溶出画分を回収した。
<製造例4>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号30で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-1」を用いる以外は同様にして、分子質量が約91kDaの配列(30)の製造例4に係るタンパク質(A-4)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<製造例5>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号31で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-2」を用いる以外は同様にして、分子質量が約92kDaの配列(31)の製造例5に係るタンパク質(A-5)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<製造例6>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号32で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-3」を用いる以外は同様にして、分子質量が約153kDaの配列(32)の製造例6に係るタンパク質(A-6)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<製造例7>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号33で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-4」を用いる以外は同様にして、分子質量が約100kDaの配列(33)の製造例7に係るタンパク質(A-7)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<製造例8>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号34で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-5」を用いる以外は同様にして、分子質量が約70kDaの配列(34)の製造例8に係るタンパク質(A-8)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<製造例9>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号35で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-6」を用いる以外は同様にして、分子質量が約70kDaの配列(35)の製造例9に係るタンパク質(A-9)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<比較製造例1>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号36で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-7」を用いる以外は同様にして、分子質量が約43kDaの配列(36)の比較製造例1に係るタンパク質(A’-1)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<比較製造例2>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号37で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-8」を用いる以外は同様にして、分子質量が約16kDaの配列(37)の比較製造例2に係るタンパク質(A’-2)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<比較製造例3>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号38で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-9」を用いる以外は同様にして、分子質量が約111kDaの配列(38)の比較製造例3に係るタンパク質(A’-3)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<比較製造例4>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「配列番号39で示されるアミノ酸配列であるタンパク質をコードしたpPT0450-10」を用いる以外は同様にして、分子質量が約70kDaの配列(39)の比較製造例4に係るタンパク質(A’-4)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造との合計割合を測定した。結果を表2に示す。
<実施例1~11及び比較例1~4:筋収縮能回復促進材料及び比較用の筋収縮能回復促進材料の作成>
筋収縮能回復促進材料におけるタンパク質(A)の濃度が、表2に示す割合(重量%)となるように、各製造例及び各比較製造例に係るタンパク質と、リン酸緩衝生理食塩水(以降、PBSと略記することがある。pH:7.2)とを混合し、タンパク質をPBSに溶解させて、各実施例に係る筋収縮能回復促進材料及び各比較例に係る筋収縮能回復促進材料を作製した。
<筋収縮能回復促進材料を用いた筋組織損傷部位における筋組織再生試験>
各実施例に係る筋収縮能回復促進材料、又は、各比較例に係る筋収縮能回復促進材料を、以下の方法により、SDラット(雄、12週齢)を用いた筋組織損傷モデルに適用した。
麻酔下のSDラットの前脛骨部を切開し、前脛骨筋筋腹中央部に、長さ6mm、幅4mm、深さ5mmの前脛骨筋切離損傷モデルを作製した。
作製した損傷部に、各筋収縮能回復促進材料を50μL投与し、切開した前脛骨部を縫合糸で縫合した。
4週間後に十分に深い麻酔をラットに行った後、
トランスデューサーロードセル(LVS-1KA;共和電業製)を使用して総腓骨電気刺激時の前脛骨筋の筋収縮力を以下の方法で測定した。
ラットを仰臥位にて両足を固定して前外側皮膚切開し、前脛骨筋と総腓骨神経に電気刺激装置(SEN2201 日本光電製)をセットして、まず、視覚的に前脛骨筋の収縮が見られた最小の電圧を閾値としてその10倍の電圧を刺激電圧して定めた。その後、筋収縮能のうち瞬発力を評価するため単刺激(1Hz)と持久力を評価するため周期刺激(50Hz)を与えたときの前脛骨筋の最大収縮力を測定した。個体間の差を抑えるため、反対側の健常足側にて同様の試験を行った時の最大収縮力に対する比率(%)にて評価を行った。
<評価項目1:単刺激時の最大収縮力>
閾値の10倍の電圧の刺激を1Hzの単刺激を与えた時の最大収縮力を測定し、反対の健常足側の最大収縮力に対する割合(%)を算出した。試験は6匹のラットを用いて試験し、その収縮力の平均値を表2に示す。
<評価項目2:周期刺激時の最大収縮力>
閾値の10倍の電圧の刺激を50Hzの周期刺激を与えた時の最大収縮力を測定し、反対の健常足側の最大収縮力に対する割合(%)を算出した。試験は6匹のラットを用いて試験し、そのスコアの平均値を表2に示す。
Figure 2024053336000002
評価の結果、実施例では、筋収縮力が高く、良好な結果であった。
本発明の筋収縮能回復促進材料は、筋組織損傷の再生治療において、筋組織損傷部位に充填することで、筋組織の再生を促進するだけでなく、筋収縮能の回復促進が出来るため、筋組織損傷部位における筋収縮能回復促進用の基材として有用である。

Claims (5)

  1. タンパク質(A)を含む、筋組織損傷部位における筋収縮能回復促進材料であって、
    前記タンパク質(A)は、ポリペプチド鎖(Y)及び前記ポリペプチド鎖(S)が、交互にそれぞれ4本以上直接化学結合したポリペプチド鎖(YS)と、前記タンパク質(A)の両末端に形成された末端アミノ酸配列(T)とを有し、
    前記ポリペプチド鎖(Y)は、ポリペプチド鎖(y)及び/又はポリペプチド鎖(y’)を含み、
    前記タンパク質(A)中の前記ポリペプチド鎖(y)と前記ポリペプチド鎖(y’)との合計個数は4~100個であり、
    前記ポリペプチド鎖(y)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列であるVPGVG配列(1)、配列番号4に示されるアミノ酸配列であるGVGVP配列(4)、GPP配列、GAP配列及び配列番号3に示されるアミノ酸配列であるGAHGPAGPK配列(3)のうち少なくとも1つのアミノ酸配列(X)が2~200個連続したポリペプチド鎖であり、
    前記ポリペプチド鎖(y’)は、前記アミノ酸配列(X)中の60%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換された前記アミノ酸配列(X’)を含み、かつ、前記ポリペプチド鎖(y)中の5%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、1つの前記ポリペプチド鎖(y’)において置換された前記リシン及び前記アルギニンの合計個数は1~100個であり、
    前記ポリペプチド鎖(S)は、配列番号2に示されるアミノ酸配列であるGAGAGS配列(2)が2~50個連続して結合したポリペプチド鎖であり、
    前記末端アミノ酸配列(T)は、前記アミノ酸配列(X)、アミノ酸配列(X’)及びGAGAGS配列(2)のいずれも含まないポリペプチド鎖であり、
    前記ポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)の疎水性度はそれぞれ-0.4以上であり、
    前記末端アミノ酸配列(T)の疎水性度は-1.7~-0.5であり、
    前記タンパク質(A)を構成するアミノ酸から、前記末端アミノ酸配列(T)を構成するアミノ酸を除いたアミノ酸数を基準として、前記ポリペプチド鎖(YS)を構成するアミノ酸の個数の割合は、80~100%である筋収縮能回復促進材料。
  2. 前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X)及び前記アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合は前記タンパク質(A)の全アミノ酸数を基準として50~70%である請求項1に記載の筋収縮能回復促進材料。
  3. 前記タンパク質(A)は、配列番号5に示される(GAGAGS)配列(5)であるポリペプチド鎖(S1-1)、及び、配列番号6に示される(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(6)であるポリペプチド鎖(y’11)を有するタンパク質である請求項1又は2に記載の筋収縮能回復促進材料。
  4. 前記タンパク質(A)のSDS-PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子質量は15~200kDaである請求項1又は2に記載の筋収縮能回復促進材料。
  5. 前記タンパク質(A)は、配列番号16に示されるアミノ酸配列、配列番号30に示されるアミノ酸配列、配列番号31に示されるアミノ酸配列、配列番号32に示されるアミノ酸配列、配列番号33に示されるアミノ酸配列、配列番号34に示されるアミノ酸配列、配列番号35に示されるアミノ酸配列、又は、これらのアミノ酸配列との相同性が70%以上であるアミノ酸配列を有する請求項1に記載の筋収縮能回復促進材料。
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