JP6496484B2 - 創傷治癒剤 - Google Patents

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本発明は、創傷治癒剤に関する。
熱傷、採皮創、皮膚剥削創及び外傷性皮膚欠損創や、褥瘡性皮膚潰瘍及び糖尿病性皮膚潰瘍等の創傷を治癒するためには、創傷部を適度な湿潤環境に保ち、細胞増殖を促す環境を作り出す必要がある。そのために患部に適応される創傷被覆材として、従来、ガーゼ及び脱脂綿等が用いられている。これらは、滲出液の吸収が早い反面、細菌に感染しやすく、また、創面が乾燥してしまうと取り外す際に痛みや出血等を伴うという問題がある。また、創面を乾燥させないために、創傷被覆材と軟膏等を併用することも行われているが、滲出液の吸収が不充分となり、創面が過度に湿った状態になってしまう問題がある。
また、ガーゼ、脱脂綿及び軟膏等に代わり、適度な湿潤環境を維持するために、カルボキシメチルセルロース(CMC)ゲル(特許文献1)等の湿潤環境維持を目的とした創傷被覆材が用いられる場合がある。しかしながら、CMCゲルは滲出液等によりゲル構造を保持することが難しく、創傷部から脱離したり、菌感染の温床になる問題がある。
一方で、湿潤環境を保つだけでなく、肉芽組織形成や上皮化を促進する創傷治癒剤として、コラーゲンスポンジ(特許文献2)が知られている。コラーゲンスポンジは生体適合性が良いなどの特徴を有するものの、湿潤環境維持に乏しく、細菌に感染しやすい、細菌が増殖しやすい、滲出液により劣化する、及び材料が入手困難である等の問題がある。
また、従来の創傷治癒剤を用いた場合、肉芽組織が形成されても、その後肉芽組織の線維化が進まず、不良肉芽や過剰肉芽となる場合がある。また、肉芽組織の線維化を促進させる剤は知られていない。
特開平06−009373号公報 特開平10−080438号公報
本発明は、菌増殖を抑制し、かつ肉芽組織形成や上皮化を促進し、さらに肉芽組織の線維化を促進する創傷治癒剤を提供することを目的とする。
本発明の創傷治癒剤は、GAGAGS配列(1)並びに下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質(A)と水とを含む創傷治癒剤であって、(A)の円二色性スペクトル法によるβシート構造率が25〜60%であり、創傷治癒剤の下記複素せん断弾性率が1×104〜1×108Paである創傷治癒剤である。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)中の1〜2個のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
複素せん断弾性率:創傷治癒剤を37℃で75時間、レオメーター(10rpm)にて複素せん断弾性率を測定し、10分おきに値を観測し、複素せん断弾性率の変化量が1%以内になったときの値。
本発明の創傷治癒剤は、菌増殖抑制作用があり、肉芽組織形成や上皮化促進作用に優れ、肉芽組織の線維化促進作用に優れているという効果を奏する。
本発明において、タンパク質(A)は、天然物からの抽出、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等によって得られる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」又は「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。天然物からの抽出、有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、タンパク質(A)を得られるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
本発明の創傷治癒剤は、GAGAGS配列(1)並びに下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質(A)と水とを含む創傷治癒剤であって、(A)の円二色性スペクトル法によるβシート構造率が25〜60%であり、創傷治癒剤の下記複素せん断弾性率が1×104〜1×108Paである創傷治癒剤である。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)中の1〜2個のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
複素せん断弾性率:創傷治癒剤を37℃で75時間、レオメーター(10rpm)にて複素せん断弾性率を測定し、10分おきに値を観測し、複素せん断弾性率の変化量が1%以内になったときの値。
本発明において、βシート構造率が上記範囲であることで、タンパク質(A)中のアミノ酸配列(X)及び/又はアミノ酸配列(X’)が効率よく細胞と相互作用し、肉芽組織形成作用や上皮化促進作用に優れる。さらに、長期的にゲル構造を保持することができる。また、創傷治癒剤の複素せん断弾性率が上記範囲であることで、形成された肉芽組織の線維化促進作用に優れる。また、本発明の創傷治癒剤は、時間の経過及び熱等の刺激を加える等によりゲル化するので、創傷に適用した際にゲル化し、創傷部を密閉することができ、菌の増殖を抑制することができる。また、ゲル化物は、湿潤環境を維持し、細胞の増殖を促すことができる。
本発明のタンパク質(A)は、(A)の円二色性スペクトル法によるβシート構造率が25〜60%であるタンパク質である。タンパク質の配列が同じでも、タンパク質の作製方法、タンパク質の精製方法、タンパク質を溶解させる溶媒のpH及び溶媒の極性等によりβシート構造率は異なる。
βシート構造率は、ゲル化能維持の観点から、25.5〜60%が好ましく、さらに好ましくは30〜60%、特に好ましくは35〜60%である。
βシート構造率は、(A)を硫安沈殿、限外濾過、アフィニティクロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィー等により、リフォールディングすることによって増加させることができる。また、変性剤や熱等で変性させることによって低下させることができる。
(A)の円二色性スペクトル法によるβシート構造率は、下記測定法によって測定する。
<βシート構造率の測定方法>
タンパク質を0.3mg/mlとなるように脱イオン水(4℃)に溶解し、タンパク質の水溶液を作製する。作製した(A)の水溶液を円二色性スペクトル測定器(日本分光株式会社製、「J−820」)にて測定し(測定温度:4℃)、二次構造解析プログラム(JWSSE型−480型:日本分光株式会社製)にてβシート構造率を算出する。
タンパク質(A)は、1分子中にアミノ酸配列(X)又は(X’)を少なくとも1個有していればよいが、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、(A)中のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量(質量%)は、(A)の分子質量を基準として35〜95質量%が好ましく、さらに好ましくは50〜90質量%である。
また、タンパク質(A)1分子中のGAGAGS配列(1)の含有量(質量%)は、βシート構造率を適度にする観点から、(A)の分子質量を基準として、5〜65質量%が好ましく、さらに好ましくは10〜50質量%である。
タンパク質(A)中のGAGAGS配列(1)の含有量と、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
<GAGAGS配列(1)の含有量と、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量の測定法>
特定のアミノ酸残基で切断出来る切断方法から2種類以上を用いて、タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてGAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量を算出する。
GAGAGS配列(1)の含有量(質量%)=[{GAGAGS配列(1)の分子質量}×{GAGAGS配列(1)の数}]/{(A)の分子質量}×100
アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量(質量%)=[{アミノ酸配列(X)の分子質量}×{アミノ酸配列(X)の数}+{アミノ酸配列(X’)の分子質量}×{アミノ酸配列(X’)の数}]/{(A)の分子質量}×100
タンパク質(A)において、全アミノ酸数のうちGAGAGS配列(1)が占める割合[{(A)中のGAGAGS配列(1)の数×6}/(A)の全アミノ酸数×100]は、βシート構造率を適度にする観点から、5〜55%が好ましく、さらに好ましくは10〜55%であり、特に好ましくは20〜55%である。
タンパク質(A)における全アミノ酸数のうちGAGAGS配列(1)が占める割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求める。
<GAGAGS配列(1)が占める割合>
特定のアミノ酸残基で切断出来る切断方法の2種類以上を用いて、タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてGAGAGS配列(1)の占める割合を算出する。
GAGAGS配列(1)の占める割合(%)=[{GAGAGS配列(1)の数×6}/{(A)中の全アミノ酸の数}×100
タンパク質(A)は、GAGAGS配列(1)を有するが、βシート構造率を適度にする観点から、GAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S)を有することが好ましい。
ポリペプチド鎖(S)において、GAGAGS配列(1)が連続する個数は、βシート構造率を適度にする観点から、2〜100個が好ましく、さらに好ましくは2〜50個であり、特に好ましくは2〜10個である。
本発明において、タンパク質(A)は、アミノ酸配列(X)を少なくとも1個及び/又はアミノ酸配列(X’)を少なくとも1個有するものである。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の1〜2個のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X)としては、細胞との相互作用のしやすさ(細胞親和性)及び(A)がゲル化する観点から、VPGVG配列(2)及び/又はGVGVP配列(3)が好ましい。
アミノ酸配列(X’)として、具体的には、GKGVP配列(7)、GKGKP配列(8)、GKGRP配列(9)及びGRGRP配列(10)等が挙げられる。
アミノ酸配列(X’)は、細胞親和性及び(A)がゲル化する観点から、GKGVP配列(7)、GKGKP配列(8)及びGRGRP配列(10)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列が好ましく、さらに好ましくはGKGVP配列(7)及び/又はGKGKP配列(8)である。
タンパク質(A)は、細胞親和性及び(A)がゲル化する観点から、アミノ酸配列(X)の1種が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)及び/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有することが好ましい。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)において、(Y)中の全アミノ酸数の0.1〜20%のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
ポリペプチド鎖(Y)は、具体的には、(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列及び(GAHGPAGPK)d配列である。(なお、b〜dは、それぞれ、アミノ酸配列(X)の連続する個数であり、2〜200の整数である)。
タンパク質(A)1分子中に、ポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列及び(GAHGPAGPK)d配列からなる群から選ばれる1種を有してもよく、2種以上を有してもいい。
また、タンパク質(A)中にポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、上記(X)の連続する個数は、(Y)ごとに同一でも異なっていてもよい。すなわち、(X)の連続する個数b〜dが同じポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよく、b〜dが異なるポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよい。
ポリペプチド鎖(Y)としては、細胞親和性、(A)がゲル化する及びβシート構造率を適度にする観点から、(VPGVG)b配列及び/又は(GVGVP)c配列が好ましい。
ポリペプチド鎖(Y)は、アミノ酸配列(X)が2〜200個連続した(上記b〜dが2〜200)ポリペプチド鎖であるが、細胞親和性、(A)がゲル化する及びβシート構造率を適度にする観点から、連続する個数は2〜100個(上記b〜dが2〜100)が好ましく、さらに好ましくは2〜50個(上記b〜dが2〜50)、特に好ましくは2〜40個(b〜dが2〜40個)である。
また、ポリペプチド鎖(Y’)は、(Y)における全アミノ酸数の0.1〜20%のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、具体的には、アミノ酸配列(X)が連続したポリペプチド鎖(Y)において、アミノ酸配列(X)の一部又は全部がアミノ酸配列(X’)に置き換わったポリペプチド鎖が含まれる。
ポリペプチド鎖(Y’)において、(Y)中の全アミノ酸数のうちリシン又はアルギニンで置換された合計割合は、(A)の水への溶解性、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、0.5〜10%が好ましく、さらに好ましくは1〜5%である。
ポリペプチド鎖(Y’)であるかどうかは、タンパク質(A)の配列中の全てのK及びRを、他のアミノ酸(G、A、V、P又はH)に置きかえたときに、ポリペプチド鎖(Y)となるかによって判断する。
タンパク質(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数は、(A)の水への溶解性、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは1〜80個であり、特に好ましくは1〜60個である。
タンパク質(A)中に、(X)の種類及び/又は連続する個数が異なる(Y)を有している場合は、それぞれを1個として数え、(Y)の個数はその合計である。(Y’)も同様である。
タンパク質(A)が、ポリペプチド鎖(Y)、ポリペプチド鎖(Y’)、GAGAGS配列(1)及びポリペプチド鎖(S)を合計2個以上有する場合は、ポリペプチド鎖とポリペプチド鎖との間に、介在アミノ酸配列(Z)を有していてもいい。(Z)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及び(X’)では無いペプチド配列である。(Z)を構成するアミノ酸の数は、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、1〜30個が好ましく、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個である。(Z)として、具体的には、VAAGY配列(11)、GAAGY配列(12)及びLGP配列等が挙げられる。
(A)中の(Z)の含有量(質量%)は、(A)の分子質量を基準として、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、0〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは0〜10質量%である。
(A)は、GAGAGS、(X)、(X’)、(Z)以外にも、両末端に末端アミノ酸配列(T)を有していてもよい。(A)の両末端の構造が、(Y)に(T)が結合した構造であることが好ましい。(T)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及び(X’)では無いペプチド配列である。(T)を構成するアミノ酸の数は、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは1〜50個、特に好ましくは1〜40個である。(T)として、具体的には、MDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(13)等が挙げられる。
(A)中の(T)の含有量(質量%)は、(A)の分子質量を基準として、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、0〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0〜5質量%である。
タンパク質(A)は、上記(T)以外に、発現させた(A)の精製又は検出を容易にするために、(A)のN又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV−Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu−Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおけるタンパク質(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
タンパク質(A)において、ポリペプチド鎖(Y)及び/又は(Y’)並びにGAGAGS配列(1)及び/又はポリペプチド鎖(S)を含む場合、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、ポリペプチド鎖(Y)又は(Y’)とGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(S)とが交互に化学結合していることが好ましい。
また、GAGAGS配列(1)の数と、アミノ酸配列(X)及び(X’)の数との比[配列(1):{(X)及び(X’)}]は、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、1:1〜1:12が好ましく、さらに好ましくは1:1〜1:6であり、次にさらに好ましくは1:1〜1:4である。
タンパク質(A)のSDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子質量は、細胞親和性及びβシート構造率を適度にする観点から、15〜200kDaが好ましく、さらに好ましくは30〜150kDaであり、特に好ましくは40〜120kDaである。
好ましいタンパク質(A)の一部を以下に例示する。
(A1)アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(3)であるタンパク質
(A11)GVGVP配列(3)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y1)中のアミノ酸がK(リシン)で置換されたポリペプチド鎖(Y’1)とGAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)とを有するタンパク質
(A11−1)GVGVP配列(3)が8個連続したポリペプチド鎖(Y11)の1個のアミノ酸がKで置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)(Y’11)と、GAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)を有するタンパク質
(A11−1−1)GAGAGS配列(1)が4個連続した(GAGAGS)4配列(5)と(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)4配列(5)を12個及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、(GAGAGS)2配列(14)が化学結合した分子質量が約80kDaの配列(27)のタンパク質(SELP8K)
(ii)(GAGAGS)2配列(14)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約82kDaの配列(15)のタンパク質(SELP0K)
(A12)GVGVP配列(3)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y1)とGAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)8配列(16)及び(GVGVP)8配列(17)をそれぞれ12個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約90kDaの配列(18)のタンパク質(SELP3)
(ii)(GAGAGS)8配列(16)及び(GVGVP)40配列(19)をそれぞれ5個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約110kDaの配列(20)のタンパク質(SELP6.1)
(iii)(GAGAGS)6配列(21)及び(GVGVP)2配列(22)をそれぞれ29個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約120kDaの配列(23)のタンパク質(SLP4.1)
(A2)アミノ酸配列(X)がVPGVG配列(2)であるタンパク質
(A21)VPGVG配列(2)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y2)とGAGAGS配列(1)を有するタンパク質
(i)GAGAGS配列(1)、(VPGVG)4配列(24)及び(VPGVG)8配列(25)をそれぞれ40個有し、これらが配列(24)、配列(1)、配列(25)の順に結合したブロックが40個化学結合してなる構造を有する分子質量約200kDaの配列(26)のタンパク質(ELP1.1)
本発明の創傷治癒剤は、上記タンパク質(A)及び水を含むものである。
創傷治癒剤中のタンパク質(A)の含有量(重量%)は、(A)の水への溶解性、(A)がゲル化する観点及び創傷への適用のしやすさの観点から、創傷治癒剤の重量を基準として、5〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜40重量%である。
創傷治癒剤中の水の含有量(重量%)は、(A)の水への溶解性、(A)がゲル化する観点及び創傷への適用のしやすさの観点から、創傷治癒剤の重量を基準として、60〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは60〜90重量%であり、特に好ましくは60〜85重量%である。
創傷治癒剤中の水としては、滅菌されたものであれば特に限定するものではない。滅菌方法としては、0.2μm以下の孔径を持つ精密ろ過膜を通した水、限外ろ過膜を通した水、逆浸透膜を通した水及びオートクレーブで121℃20分加熱して過熱滅菌した脱イオン水等が挙げられる。
本発明の創傷治癒剤は、タンパク質(A)及び水以外に無機塩及び/又はリン酸(塩)を含んでもいい。
無機塩として、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩は無機塩に含まない。
創傷治癒剤中の無機塩の含有量(重量%)は、人間の体液と浸透圧を同等にする観点及び複素せん断弾性率を適度にするという観点から、創傷治癒剤の重量を基準として0.4〜1.3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.2重量%、特に好ましくは0.6〜1.1重量%である。
リン酸(塩)は、リン酸及び/又はリン酸塩を意味する。
リン酸(塩)としては、リン酸及びリン酸塩が挙げられる。
塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。
創傷治癒剤中のリン酸(塩)の含有量(重量%)は、創傷治癒の観点から、創傷治癒剤の重量を基準として0.10〜0.30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.12〜0.28重量%、特に好ましくは0.14〜0.26重量%である。
創傷治癒剤のpHは、(A)の安定性及び創傷治癒の観点から、5〜9が好ましく、さらに好ましくは6〜8.5である。
この範囲であれば、創傷治癒剤中のタンパク質(A)が変性することなく、βシート構造率を維持でき、創傷治癒剤を用いて菌増殖を抑制し、肉芽組織形成や上皮化を促進し、拘縮抑制をすることができる。
本発明の創傷治癒剤は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。1例を下記に示す。
(1)本発明のタンパク質(A)及び水を4〜25℃で混合し、創傷治癒剤とする。水中には必要により塩及び/又はリン酸(塩)を含んでもいい。また、タンパク質(A)を水に溶解させた後、必要により塩及び/又はリン酸(塩)を含むようにしてもよい。
本発明の創傷治癒剤の下記複素せん断弾性率は1×104〜1×108Paであるが、菌増殖抑制、皮膚への追随性の観点から、1×105〜1×107Paが好ましく、さらに好ましくは5×105〜5×106Paである。
複素せん断弾性率は、(A)を溶解させる溶媒のイオン強度を高く(無機塩濃度を高く)したり、創傷治癒剤中のタンパク質(A)の濃度を上昇させることで大きくすることができる。
複素せん断弾性率:創傷治癒剤を37℃で75時間、レオメーター(10rpm)にて複素せん断弾性率を測定し、10分おきに値を観測し、複素せん断弾性率の変化量が1%以内になったときの値。
複素せん断弾性率は下記測定法により求めることができる。
<複素せん断弾性率の測定方法>
創傷治癒剤を37℃で75時間、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント社製、回転数:10rpm)にて複素せん断弾性率を測定し、10分おきに値を観測する。複素せん断弾性率の変化量が1%以内になったときの値を複素せん断弾性率とする。
創傷治癒剤の患部への適用方法としては、菌増殖抑制、肉芽組織形成、上皮化促進及び拘縮抑制の観点から、患部の欠損部分を埋めるように注入することが好ましい。
患部への適用方法の一例を示す。
(1)患部に創傷治癒剤を投与する。
(2)投与後、創傷治癒剤が患部から流出しないように、適当なドレッシングで被覆する。
上記(2)で使用するドレッシングの材質としては、特に限定されないが、ポリウレタン、シリコーン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体及びナイロン等が挙げられる。
ドレッシングの形状としては、創傷治癒剤を投与後に、創傷治癒剤が患部から流出しないように被覆できれば制限なく使用できるが、フィルム状が好ましい。
本発明の創傷治癒剤は、菌増殖抑制の観点から、タンパク質(A)及び水等を混合した直後は溶液状であるが、時間の経過、熱等の刺激を加える等により流動性が低くなりゲル化することが好ましい。
創傷治癒剤をゲル化させる温度は、創傷治癒剤を短時間でゲル化させる観点から、創傷治癒剤を25℃〜80℃が好ましい。80℃以下であると、組織再生用材料の機能を低下させずにゲル化させることができ、また、ゲル化までの時間が適度である。
また、創傷治癒剤を使用する場合、適用時の創傷治癒剤の温度は、タンパク質(A)の熱安定性及びハンドリング性の観点から、4〜80℃が好ましく、さらに好ましくは4〜60℃、次にさらに好ましくは25〜50℃、特に好ましくは30〜40℃である。
以下に実施例として本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特記しない限り部は重量部を意味する。
<製造例1>
[タンパク質(A1−1)の作製]
○SELP8Kタンパク質(A1)の生産
特許第4088341号公報の実施例記載の方法に準じて、SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345を作製した。
作製したプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションし、SELP8K生産株を得た。以下、このSELP8K生産株を用いて、配列(27)のタンパク質(A)であるSELP8Kタンパク質(A1)を生産する方法を示す。
○SELP8Kタンパク質(A1)の培養
30℃で生育させたSELP8K生産株の一夜培養液を使用して、250mlフラスコ中のLB培地50mlに接種した。カナマイシンを最終濃度50μg/mlとなるように加え、該培養液を30℃で攪拌しながら(200rpm)インキュベートした。培養液が濁度OD600=0.8(吸光度計UV1700:島津製作所製を使用)となった時に、40mlを42℃に前もって温めたフラスコに移し、同じ温度で約2時間培養した。培養した培養液を氷上で冷却し、培養液の濁度OD600を測定し、遠心分離にて大腸菌を集菌した。
○タンパク質(A1−1)の精製
集菌した大腸菌を、下記1:菌体溶解、2:遠心分離による不溶性細片の除去、3:硫安沈殿、4:限外濾過、5:陰イオン交換クロマトグラフィー、6:限外濾過、7:凍結乾燥を行うことにより大腸菌バイオマスから精製した。このようにして、分子質量が約80kDaの配列(27)のタンパク質(A)である精製したタンパク質(A1−1)を得た。
1:菌体溶解
集菌した大腸菌100gに対して、脱イオン水200gを加えて、高圧ホモジナイザー(55MPa)にて菌体溶解し、溶解した菌体を含む菌体溶解液を得た。その後、菌体溶解液を氷酢酸にてpH4.0に調整した。
2:遠心分離による不溶性細片の除去
さらに菌体溶解液を遠心分離(6300rpm、4℃、30分間)して、上清を回収した。
3:硫安沈殿
回収した上清に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8〜12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解した。溶解した液に対して、同様に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8〜12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解し、溶液を得た。
4:限外濾過
3で得た溶液を分子質量30,000カットの限外濾過装置(ホロファーバー:GEヘルスケア製)に供した。3で得た溶液に対して、10倍量の脱イオン水を用いて、限外濾過を実施し、限外濾過後のタンパク質を得た。
5:陰イオン交換クロマトグラフィー
限外濾過後のタンパク質を10mM酢酸ナトリウム緩衝液に溶解して20g/Lとし、陰イオン交換カラムHiPrepSP XL16/10(GEヘルスケア社製)をセットしたAKTAPrime(アマシャム社製)に供した。溶出液として500mM 10mM酢酸ナトリウム緩衝液を用いて、溶出画分を回収した。
6:限外濾過
5で得た溶液を上記「4:限外濾過」と同様にして処理し、限外濾過後のタンパク質を得た。
7:凍結乾燥
タンパク質を脱イオン水に溶解して10g/Lとし、水位が15mm以下となるようにステンレス製のバットに入れる。その後、凍結乾燥機(日本テクノサービス社製)に入れて、−40℃、8時間かけて凍結させる。凍結後、真空度が8Pa以下、−20℃で、70時間かけて1次乾燥、真空度が8Pa以下、10℃で、24時間かけて2次乾燥させ、精製したタンパク質(A1−1)を得た。
○タンパク質(A1−1)の同定
得られたタンパク質(A1−1)を下記の手順で同定した。
抗ラビットSELP8K抗体及びC末端配列の6×Hisタグに対する抗ラビット6×His抗体(Roland社製)を用いたウエスタンブロットにより分析した。見かけ分子質量80kDaのタンパク質バンドが、各抗体に抗体反応性を示した。また得られたタンパク質をアミノ分析供した結果、該生成物が、グリシン(43.7重量%),アラニン(12.3重量%),セリン(5.3重量%),プロリン(11.7重量%)及びバリン(21.2重量%)に富むものであった。また、該生成物はリシンを1.5重量%含んでいた。下記の表1は、精製された生成物の組成と、合成遺伝子配列から推測された予測理論組成との相関関係を示す。
したがって、タンパク質(A1−1)はGVGVP配列(3)が8個連続したポリペプチド鎖(Y)であり、(Y)中のVのうち1個がKに置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)のポリペプチド鎖(Y’11)を13個及びGAGAGS配列(1)が4個連続した(GAGAGS)4配列(5)のポリペプチド鎖(Y11)を12個有し、これらが交互に化学結合してなる配列(27)のタンパク質であることを確認した。
Figure 0006496484
<ウエスタンブロット法>
ウエスタンブロット用サンプル20μLに3×SDS処理バッファ(150mM Tris HCl(pH6.8)、300mM ジチオスレイトール、6重量% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.3重量% ブロモフェノールブルー、及び30重量% グリセロールを含む)10μLを添加して95℃5分間加温し、泳動用試料を調製した。この泳動用試料15μLを用いてSDS−PAGEを行った。泳動後のゲルをPVDFメンブレンにトランスファーし、これをブロッキングバッファ(20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、0.1重量% Tween20、及び5重量% スキムミルクを含む)に浸漬して1時間室温で振蕩することによりメンブレンのブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、メンブレンをTBS−T(20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、及び0.1重量% Tween20を含む)で2分間洗浄した。次に、メンブレンを一次抗体溶液(一次抗体:抗His−tag抗体(Rockland社製)をTBS−Tで500分の1に希釈した溶液)に浸漬し、4℃で一晩静置して抗体反応を行った。反応後、このメンブレンをTBS−Tで5分間、4回洗浄した後、一次抗体に結合可能であり且つ標識酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた二次抗体の溶液(二次抗体:ECL anti−mouse IgG HRP linked F(ab’)2 fragment(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)をTBS−Tで2000分の1に希釈した溶液)にメンブレンを浸漬し、30分間室温で静置して抗体反応を行った。反応後、メンブレンをTBS−Tで5分間、4回洗浄した後、ECL−Advance Western Blotting Detection Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により酵素反応を行った。ルミノメーターForECL(アマシャム社製)を用いて、高感度インスタント黒白フィルム(富士フイルム株式会社製)に感光させ、バンドを可視化した。肉眼でバンドが確認できない場合、分解吸収され、無くなったと判断した。
○βシート構造率の測定
得られたタンパク質(A1−1)について、下記手順でβシート構造率を測定した。
タンパク質(A1−1)を0.3mg/mlとなるように脱イオン水(4℃)に溶解し、タンパク質(A1−1)水溶液を作製した。作製したタンパク質(A1−1)水溶液を円二色性スペクトル測定器(日本分光:J−820)にて測定し(測定温度:4℃)、二次構造解析プログラム(JWSSE型−480:日本分光株式会社製)にてβシート構造率を算出した。結果を表2に示す。
<製造例2>
製造例1の「タンパク質(A1−1)の作製」において、「タンパク質(A1−1)の精製」の「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」と「6:限外濾過」との間に、下記「5−2:リフォールディング(大希釈法)」を行う以外は同様にして、タンパク質(A1−2)を作製し、βシート構造率を測定した。結果を表2に示す。
5−2:リフォールディング(大希釈法)
陰イオン交換クロマトグラフィーの溶出画分をタンパク質変性剤である10Mウレア溶液にて、6Mウレア溶液となるように調製し、12時間、4℃で静置した。調製した溶液を透析膜(Viskase Companies,Inc.社製)に投入し、溶出画分の10倍容量の脱イオン水にて12時間、透析した。その後、脱イオン水を捨て、新たに溶出画分の10倍容量の脱イオン水にて12時間、透析した。この操作を残り3回、計5回繰り返した後、透析膜中の溶液を回収した。
<比較製造例1>
製造例1の「タンパク質(A1−1)の作製」において、「タンパク質(A1−1)の精製」の「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」を実施しない以外は同様にして、タンパク質(A1−3)を作製し、βシート構造率を測定した。結果を表2に示す。
<比較製造2>
製造例1の「タンパク質(A1−1)の作製」において、「タンパク質(A1−1)の精製」の「3:硫安沈殿、4:限外濾過、5:陰イオン交換クロマトグラフィー」を実施せず、上記「5’:アフィニティクロマトグラフィー」行う以外は同様にして、タンパク質(A1−4)を作製し、βシート構造率を測定した。結果を表2に示す。
5’:アフィニティクロマトグラフィー
「2:遠心分離による不溶性細片の除去」後のタンパク質(A1−1)を、His−tagを用いたアフィニティクロマトグラフィー(クロンテック社製、TALON(登録商標)Single Step Columns)にて精製し、溶出画分を回収した。
<実施例1>
タンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、20重量%となるように調整した創傷治癒剤(1)を作製した。
<実施例2>
タンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:13g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、20重量%となるように調整した創傷治癒剤(2)を作製した。
<実施例3>
タンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:4.8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、20重量%となるように調整した創傷治癒剤(3)を作製した。
<実施例4>
タンパク質(A1−2)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、20重量%となるように調整した創傷治癒剤(4)を作製した。
<実施例5>
タンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、30重量%となるように調整した創傷治癒剤(5)を作製した。
<実施例6>
タンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、40重量%となるように調整した創傷治癒剤(6)を作製した。
<実施例7>
タンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、15重量%となるように調整した創傷治癒剤(7)を作製した。
<比較例1>
タンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:21.3g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、20重量%となるように調整した創傷治癒剤(8)を作製した。
<比較例2>
タンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:0.8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、20重量%となるように調整した創傷治癒剤(9)を作製した。
<比較例3>
タンパク質(A1−3)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、20重量%となるように調整した創傷治癒剤(10)を作製した。
<比較例4>
タンパク質(A1−4)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:0.8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、20重量%となるように調整した創傷治癒剤(11)を作製した。
<比較例5>
タンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、10重量%となるように調整した創傷治癒剤(12)を作製した。
<比較例6>
タンパク質(A1−4)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し、20重量%となるように調整した創傷治癒剤(13)を作製した。
○複素せん断弾性率の測定
創傷治癒剤(1)〜(13)を37℃で75時間、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント社製、回転数:10rpm)にて複素せん断弾性率を測定し、10分おきに値を観測した。複素せん断弾性率の変化量が1%以内になったときの値を複素せん断弾性率とした。
<評価1>
(タンパク質(A)のゲル化能評価)
創傷治癒剤(1)〜(13)を37℃で静置し、ゲル化するまでの時間を測定した。ゲル化をしたかどうかの確認は、創傷治癒剤(100μL)が入ったプラスティックチューブ容器(エッペンドルフチューブ、1.5mL)を5分毎に転倒し、溶液が垂れない場合はゲル化しているとし、溶液が垂れる場合もしくはゲル化するまでに300分を超える場合はゲル化しないと判断した。結果を表2に示す。
<評価2>
(健常モルモットを用いた全層欠損層モデルでの治療試験)
健常モルモット♀ std Hartley(日本エスエルシー社製)7週齢を麻酔下で除毛し、消毒したモルモット背部皮膚に脂肪層が完全に露出した創面10×10mmの全層皮膚欠損創を作製し、止血、乾燥した後、創傷治癒剤(1)〜(13)を各々、注入し、ポリウレタンフィルムを貼付した。その後、各創傷部の上にガーゼをのせて、ナイロン糸で創傷部周囲と固定した。治療期間5、10日目に検体を擬死させ、創傷部を含む皮膚を採取し、病理標本(HE染色)を作製した。それぞれの創傷治癒剤について、病理標本を1種類につき11個作製した。
作製した治療期間5日目の病理標本用いて、パニキュラス(筋様膜)からの肉芽組織高をマイクロルーラーを使用して測定した。評価結果は表2に示す。
なお、評価結果は、病理標本11個の平均値である。
また、治療期間10日目の病理標本用いて、正常組織から伸長した上皮化長をマイクロルーラーを使用して測定した。評価結果は表2に示す。
なお、評価結果は、病理標本11個の平均値である。
<評価3>
(健常モルモットを用いた全層欠損層モデルでの菌増殖抑制試験)
健常モルモット♀ std Hartley(日本エスエルシー社製)7週齢を麻酔下で除毛し、消毒したモルモット背部皮膚に脂肪層が完全に露出した創面10×10mmの全層皮膚欠損創を作製し、止血、乾燥した後、緑膿菌106個/1創傷部となるように播種し、創傷治癒剤(1)〜(13)を各々、注入し、ポリウレタンフィルムを貼付した。その後、各創傷部の上にガーゼをのせて、ナイロン糸で創傷部周囲と固定した。治療期間3日目に検体を擬死させ、創傷部を含む皮膚を採取し、細菌コロニー法にて細菌数を測定した。評価結果は表2に示す。
<評価4>
(健常モルモットを用いた全層欠損層モデルでの肉芽組織の線維化スコアリング試験)
評価2において、治療期間14日目で検体を擬死させる以外は同様にして、それぞれの創傷治癒剤(1)〜(13)について、病理標本を1種類につき13個作製した。作製した病理標本について、形成された肉芽組織の中でも新生血管及び線維芽細胞に富み、膠原線維の再生を伴う部分(線維性肉芽組織)を、以下の5段階の評価基準で評価し、点数化した。結果を表2に示す。なお、評価結果は、病理標本13個の平均値である。
1点:欠損部に対して全く肉芽組織が形成していない状態又は肉芽組織が形成された部分の面積内、線維性肉芽組織が0%
2点:肉芽組織が形成された部分の面積内、線維性肉芽組織が0%より大きく25%未満
3点:肉芽組織が形成された部分の面積内、線維性肉芽組織が25%以上50%未満
4点:肉芽組織が形成された部分の面積内、線維性肉芽組織が50%以上75%未満
5点:肉芽組織が形成された部分の面積内、線維性肉芽組織が75%以上
Figure 0006496484
表2の結果から、本発明の創傷治癒剤は、肉芽組織形成、上皮化、菌増殖抑制及び線維化に優れた効果を発揮することが分かる。また、複素せん断弾性率は、線維化促進作用にとって非常に重要な因子であることが分かる。
本発明の創傷治癒剤は、肉芽組織形成、上皮化促進作用及び線維化促進作用に優れている。したがって、熱傷、採皮創、皮膚剥削創及び外傷性皮膚欠損創等の疾患ないし創傷による患部を治癒する創傷治癒剤として有効である。

Claims (2)

  1. GAGAGS配列(1)並びに下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質(A)と水と無機塩とを含む創傷治癒剤であって、無機塩の含有量が創傷治癒剤の重量に基づいて 0.4〜1.3重量%であり、タンパク質(A)が配列表の配列番号27のタンパク質であり、(A)の円二色性スペクトル法によるβシート構造率が25〜60%であり、創傷治癒剤の下記複素せん断弾性率が1×10〜1×10Paである創傷治癒剤。
    アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
    アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)中の1〜2個のアミノ酸がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
    複素せん断弾性率:創傷治癒剤を37℃で75時間、レオメーター(10rpm)にて複素せん断弾性率を測定し、10分おきに値を観測し、複素せん断弾性率の変化量が1%以内になったときの値。
  2. 創傷治癒剤の重量を基準として、タンパク質(A)が5〜40重量%、水が60〜95重量%である請求項1に記載の創傷治癒剤。
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