JP2015177968A - 癒着防止剤及び癒着防止剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】癒着防止効果が高く、ハンドリング性に優れた癒着防止剤を提供することを目的とする。【解決手段】人工タンパク質(A)及び水を含む癒着防止剤であって、(A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV(2)、VPGVG(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ペプチド鎖(Y’)を有し、(A)中に含まれる下記アミノ酸配列(X’)の合計個数が1〜20個であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2である癒着防止剤。アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の全アミノ酸の個数のうち20〜40%がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。ペプチド鎖(Y’):アミノ酸配列(X)とアミノ酸配列(X’)とが合計2〜200個結合したポリペプチド鎖。【選択図】図1

Description

本発明は、癒着防止剤及び癒着防止剤組成物に関する。
従来、癒着防止膜として、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース及び酸化再生セルロールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアニオン性多糖類からなるフィルム(特許文献1)が用いられており、科研製薬(株)製のセプラフィルム(登録商標)が市販されている。
癒着防止膜は手術後に腹腔内の臓器に貼り付けられ、臓器同士の癒着を防止する目的で使用される。癒着を引き起こした場合、各臓器の根本的な機能に障害を起こし、生命の危機にさらされるなどの予後の不良を引き起こす原因となる。
しかしながら、セプラフィルムを癒着防止膜として使用した場合、癒着防止効果が50%前後と十分ではない。また、癒着防止膜が使用される腹腔内は凹凸のある構造を有しており、フィルムが貼り付け時に破れるなどハンドリング性が悪く、使用に際しては熟練を要する欠点がある。
特開2007−277579号公報
本発明は、癒着防止効果が高く、ハンドリング性に優れた癒着防止剤及び癒着防止剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねてきた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の癒着防止剤は、人工タンパク質(A)及び水を含む癒着防止剤であって、(A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV(2)、VPGVG(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ペプチド鎖(Y’)を有し、(A)中に含まれる下記アミノ酸配列(X’)の合計個数が1〜20個であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2である癒着防止剤である。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の全アミノ酸の個数のうち20〜40%がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
ペプチド鎖(Y’):アミノ酸配列(X)とアミノ酸配列(X’)とが合計2〜200個結合したポリペプチド鎖。
本発明の癒着防止剤は、癒着防止効果が高く、ハンドリング性に優れる。
実施例1〜5で得た人工タンパク質(A1)〜(A4)及び(A1)組成物のMC3T3−E1細胞に対する細胞接着率とプレート表面のコーティング量との関係を示すグラフである。
本発明の癒着防止剤は、人工タンパク質(A)及び水を含む癒着防止剤であって、(A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ペプチド鎖(Y’)を有し、(A)中に含まれる下記アミノ酸配列(X’)の合計個数が1〜20個であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2である癒着防止剤である。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の全アミノ酸の個数のうち20〜40%がそれぞれリシン(K)又はアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列。
ペプチド鎖(Y’):アミノ酸配列(X)とアミノ酸配列(X’)とが合計2〜200個結合したポリペプチド鎖。
「癒着防止剤」とは、手術により損傷を受けた臓器が、他の臓器と癒着することを防止するために、損傷を受けた臓器に塗布又は貼り付けされる医療機器を意味する。
本発明において、人工タンパク質(A)は、動物由来成分を排除するために、人工的に製造されるものである。製造方法としては、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等が挙げられる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」又は「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。
有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、人工タンパク質(A)を製造できるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点及び分子量の大きいタンパク質を生産する場合における生産性の観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
本発明において、ポリペプチド鎖(Y)として、具体的には(GVGVP)配列(Y1)、(PGVGV)配列(Y2)、(VPGVG)配列(Y3)、(GVPGV)配列(Y4)、(VGVPG)配列(Y5)、(GPP)配列(Y6)、(GAP)配列(Y7)及び(GAHGPAGPK)配列(Y8)で表されるポリペプチド鎖等が挙げられる。(なお、a〜hはそれぞれアミノ酸配列(X)の連続する個数であり、2〜200の整数である。)
人工タンパク質(A)1分子中にポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、上記ポリペプチド鎖を1種有してもよく、2種以上有してもよい。
また、人工タンパク質(A)中にアミノ酸配列(X)が同種類のポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、上記(X)の連続する個数は、(Y)ごとに同一でも異なっていてもよい。すなわち、上記a〜hが同じポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよく、a〜hが異なるポリペプチド鎖(Y)を複数有してもいい。
ポリペプチド鎖(Y)を構成するアミノ酸配列(X)としては、細胞との親和性及び細胞非接着性の観点から、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)、GVPGV配列(4)及びVGVPG配列(5)が好ましく、さらに好ましくはGVGVP配列(1)及びVPGVG配列(3)である。
ポリペプチド鎖(Y)としては、癒着防止性、溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間の観点の観点から、(GVGVP)配列(Y1)、(PGVGV)配列(Y2)、(VPGVG)配列(Y3)、(GVPGV)配列(Y4)及び(VGVPG)配列(Y5)が好ましく、さらに好ましくは(GVGVP)配列(Y1)及び(VPGVG)配列(Y3)である。
本発明において、ポリペプチド鎖(Y’)は、アミノ酸(X)と下記アミノ酸配列(X’)とが合計2〜200個結合したポリペプチド鎖である。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の全アミノ酸の個数のうち20〜40%がそれぞれK又はRで置換されたアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’)としては、GVGVP配列(1)中のアミノ酸がリシン(K)で置換されたアミノ酸配列(X’1){GKGVP配列(8)、GVGKP配列(9)及びGKGKP配列(10)等}、VPGVG配列(3)中のアミノ酸がリシン(K)で置換されたアミノ酸配列(X’2){KPGVG配列(11)、VPGKG配列(12)及びKPGKG配列(13)等}等が挙げられる。
また、アミノ酸配列(X’)としては、溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間の観点から、GKGVP配列(8)、GVGKP配列(9)、GKGKP配列(10)、KPGVG配列(11)、VPGKG配列(12)及びKPGKG配列(13)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列が好ましく、さらに好ましくはGKGVP配列(8)及びKPGVG配列(11)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
人工タンパク質(A)はポリペプチド鎖(Y)及び/又はポリペプチド鎖(Y’)を有することにより、体温付近でゲル化することが可能となる。したがって、本発明の人工タンパク質(A)及び水を含む癒着防止剤を、臓器等に塗布することにより、癒着防止膜を形成し、臓器同士の癒着を防止することができる。また、貼付時に液状であるので、破れることがない。
人工タンパク質(A)1分子中に含まれる上記アミノ酸配列(X’)の合計個数は、1〜20個であり、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間の観点から、好ましくは3〜18個である。
人工タンパク質(A)において、(A)1分子中のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数は、溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間の観点から、50〜200個が好ましく、特に好ましくは90〜150個である。
本発明において、人工タンパク質(A)の疎水性度は0.2〜1.2であるが、溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間の観点から、0.5〜1.2が好ましく、さらに好ましくは0.5〜0.8であり、次にさらに好ましくは0.55〜0.75であり、特に好ましくは0.6〜0.72である。
(A)の疎水性度は、(A)分子の疎水性の度合いを示すものであり、(A)分子を構成するそれぞれのアミノ酸の数(Mα)、それぞれのアミノ酸の疎水性度(Nα)及び(A)1分子中のアミノ酸の総数を、下記数式に当てはめることにより算出することができる。なお、それぞれのアミノ酸の疎水性度は、非特許文献(アルバート・L.レーニンジャー、デビット・L.ネルソン、レ−ニンジャ−の新生化学 上、廣川書店、2010年9月、p.346−347)に記載されている下記の数値を用いる。
疎水性度=Σ(Mα×Nα)/(MT)
Mα:(A)1分子中のそれぞれのアミノ酸の数
Nα:各アミノ酸の疎水性度
MT:(A)1分子中のアミノ酸の総数
A(アラニン):1.8
R(アルギニン):−4.5
N(アスパラギン):−3.5
D(アスパラギン酸):−3.5
C(システイン):2.5
Q(グルタミン):−3.5
E(グルタミン酸):−3.5
G(グリシン):−0.4
H(ヒスチジン):−3.2
I(イソロイシン):4.5
L(ロイシン):3.8
K(リシン):−3.9
M(メチオニン):1.9
F(フェニルアラニン):2.8
P(プロリン):−1.6
S(セリン):−0.8
T(トレオニン):−0.7
W(トリプトファン):−0.9
Y(チロシン):−1.3
V(バリン):4.2
例えば、(A)が(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)である場合、(A)の疎水性度={16(Gの数)×(−0.4)+15(Vの数)×4.2+8(Pの数)×(−1.6)+1(Kの数)×(−3.9)}/40(アミノ酸の総数)=1.00である。
本発明においては、上記ポリペプチド鎖(Y)及び/又はポリペプチド鎖(Y’)を有し、且つ(A)の疎水性度が上記範囲内であることにより、溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間の観点が向上する。
(A)は配列(X)を有する場合、細胞との親和性および細胞非接着性は高いが、疎水性度が上記範囲外となり、溶解性(特に水への溶解性)の低下及びゲル化時間が増加する場合がある。その場合、アミノ酸配列(X)中のアミノ酸の一部をK又はRで置換することにより、疎水性度を小さくすることができ、溶解性(特に水への溶解性)の向上及びゲル化時間を短縮でき、癒着防止膜として有用になる。
本発明において、人工タンパク質(A)は、ゲル化時間の観点から、さらにGAGAGS配列(7)を有することが好ましい。(A)がGAGAGS配列(7)を有している場合、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間観点から、GAGAGS配列(7)が2〜10個連続して結合したポリペプチド鎖(S)を有していることが好ましい。
ポリペプチド鎖(S)において、GAGAGS配列(7)が連続する数は、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間観点から、2〜10個が好ましく、さらに好ましくは2〜8個であり、次にさらに好ましくは2〜6個であり、特に好ましくは2〜4個である。
(A)において、ポリペプチド鎖(S)を有する際、(A)1分子中に(S)を1つ以上有すればよいが、ゲル化時間の観点から、2〜20個が好ましく、さらに好ましくは5〜18個である。
人工タンパク質(A)において、ポリペプチド鎖(Y)、ポリペプチド鎖(Y’)及びポリペプチド鎖(S)を合計2個以上有する場合は、ポリペプチド鎖とポリペプチド鎖との間に、介在アミノ酸配列(Z)を有していてもいい。(Z)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、(Y)、(Y’)又は(S)では無いペプチド配列である。(Z)を構成するアミノ酸の数は、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間観点のから、1〜10個が好ましく、さらに好ましくは1〜5個であり、特に好ましくは1〜3個である。(Z)として、具体的には、VAAGY配列(14)、GAAGY配列(15)及びLGP配列等が挙げられる。
人工タンパク質(A)中の両末端の各ポリペプチド鎖(Y)、ポリペプチド鎖(Y’)及びポリペプチド鎖(S)のN及び/又はC末端には、末端アミノ酸配列(T)を有していてもいい。(T)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、(Y)、(Y’)又は(S)では無いペプチド配列である。(T)を構成するアミノ酸の数は、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは5〜40個であり、特に好ましくは10〜35個である。
(T)として、具体的には、MDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(16)等が挙げられる。
人工タンパク質(A)は、上記(T)以外に、発現させた(A)の精製または検出を容易にするために、(A)のN及び/又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV−Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu−Gluタグ、Ha.11タグ、KT3タグ、マルトース結合タンパク質、HQタグ、Mycタグ、HAタグ及びFLAGタグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおける人工タンパク質(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
人工タンパク質(A)1分子中のポリペプチド鎖(Y)及びポリペプチド鎖(Y’)の合計含有量(重量%)は、溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間観点から、(A)の分子量を基準として、40〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは50〜70重量%である。
人工タンパク質(A)中のポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含有量は、アミノ酸配列決定によって求めることができる。具体的には、下記の測定法によって求めることができる。
<ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含有量の測定法>
津製作所社製ペプチドシーケンサー(プロテインシーケンサ)PPSQ−33Aを用いて、アミノ酸配列を決定する。決定したアミノ酸配列から、下記数式(1)によりポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含量を求める。
ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含有量=Σ(γ×β)/Σ(α×β)×100 (1)
α:人工タンパク質(A)中の各アミノ酸の数
β:各アミノ酸の分子量
γ:ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)中の各アミノ酸の個数
人工タンパク質(A)1分子中のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量(重量%)は、溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間観点から、(A)の分子量を基準として40〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは50〜70重量%である。
人工タンパク質(A)1分子中のGAGAGS配列(7)の個数とポリペプチド鎖(Y)及びポリペプチド鎖(Y’)を構成するアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数との比率(GAGAGS配列(7)の個数:ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)を構成するアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数)は、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間観点から、1:2〜1:20が好ましく、さらに好ましくは1:2〜1:10である。
本発明において、(A)がGAGAGS配列(7)を有していると、ゲル化時間がさらに良好になる。特に、GAGAGS配列(7)とアミノ酸配列(X)及び(X’)との比が上記範囲であることで、溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間のバランスがとれる。
人工タンパク質(A)の分子質量は、溶解性(特に水への溶解性)及びゲル化時間観点から、15〜200kDaが好ましく、さらに好ましくは60〜80kDaである。この範囲であると、(A)が分解されるまでの時間が適度である。
なお、人工タンパク質(A)の分子質量は、SDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により、測定サンプルを分離し、泳動距離を標準物質と比較する方法によって求められる。
好ましい人工タンパク質(A)の一部を以下に例示する。
(1)アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(1)の人工タンパク質(A1−1)
アミノ酸配列(X)としてGVGVP配列(1)を有し、アミノ酸配列(X’)としてGKGVP配列(8)を有する人工タンパク質(A1)であり、さらに好ましくは、(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(19)であるポリペプチド鎖(Y’1−1)及び(GAGAGS)配列(17)であるポリペプチド鎖(S1−1)を有する人工タンパク質(A1−1)、ポリペプチド鎖(Y’1−1)及び(GAGAGS)配列(18)であるポリペプチド鎖(S1−2)を有する人工タンパク質(A1−2)、並びにポリペプチド鎖(Y’1−1)、ポリペプチド鎖(S1−1)及びポリペプチド鎖(S1−2)を有する人工タンパク質(A1−3)である。具体的には、下記人工タンパク質が挙げられる。
(i)GAGAGS配列(7)が4個連続した(GAGAGS)配列(17)のポリペプチド鎖(S1−1)を12個及びGVGVP配列(1)が8個連続したポリペプチド鎖(Y1−1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(19)(Y’1−1)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、GAGAGS配列(7)が2個連続した(GAGAGS)配列(18)のポリペプチド鎖(S1−2)1個が化学結合した構造を有する分子質量が約70kDaの配列(21)の人工タンパク質(SELP8K、疎水性度0.618)
(ii)GAGAGS配列(7)が2個連続した(GAGAGS)配列(18)のポリペプチド鎖(S1−2)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(19)のポリペプチド鎖(Y’1−1)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約77kDaの配列(22)の人工タンパク質(SELP0K、疎水性度0.718)
(iii)GAGAGS配列(7)が2個連続した(GAGAGS)2配列(18)のポリペプチド鎖(S1−2)を16個、及びGVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y1−1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1−2)を8個有し、これらが{(S1−2)(Y’1−2)(S1−2)}の順で化学結合してなる分子質量が約71kDaの配列(23)の人工タンパク質(SELP415K、疎水性度0.693)
(iv)GAGAGS配列(7)が2個連続した(GAGAGS)2配列(18)のポリペプチド鎖(S1−2)を6個、GVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y1−1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1−2)を6個、及びGAGAGS配列(7)が4個連続した(GAGAGS)配列(17)のポリペプチド鎖(S1−1)を6個有し、これらが{(S1−2)(Y’1−2)(S1−1)}の順で化学結合してなる分子質量が約65kDaの配列(24)の人工タンパク質(SELP815K、疎水性度0.607)
人工タンパク質(A)は、細胞非接着性の観点から、下記細胞接着率が0〜20%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜20%であり、次にさらに好ましくは10〜20%である。
細胞接着率:1cm当たり2.5μgの人工タンパク質(A)を有する基材を作製し、基材にMC3T3−E1細胞を播種したとき、基材に接着するMC3T3−E1細胞の割合。
細胞接着率は、疎水性度を高くすることによって高くすることができる。また、人工タンパク質(A)のアミノ酸配列中に細胞接着性のアミノ酸配列{RGD配列等}を組み込む等により、高くすることができる。
なお、「細胞接着性」とは、特定の最小アミノ酸配列が細胞のインテグリンレセプターに認識され、細胞が基材に接着しやすくなる性質を意味する(大阪府立母子医療センター雑誌、第8巻 第1号、58〜66頁、1992年)。
細胞接着性のアミノ酸配列としては、例えば、「病態生理、第9巻 第7号、527〜535頁、1990年」や「大阪府立母子医療センター雑誌、第8巻 第1号、58〜66頁、1992年」に記載されているもの等が用いられる。
細胞接着率は、具体的には、下記測定法により測定される。
<細胞接着率の測定方法>
(1)細胞接着率測定用プレートの作成
人工タンパク質(A)1mgを0.02Mリン酸緩衝液(pH7.2、99.5重量%塩化ナトリウムを0.85重量%含有する:以下、PBSと記載)1mLに溶解し、さらに、PBSで希釈して、溶液(D1)〜(D4){溶液(D1)〜(D4)中の人工タンパク質(A)の濃度(μg/mL);(D1):0.01、(D2):1、(D3):10、(D4):100}を作製する。この溶液(D1)〜(D4)を96穴のポリスチレンプレート(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)中の8穴ずつにそれぞれ50μL/穴で投入し、室温(約25℃)で2時間放置する。アスピレーターを用いて溶液を除去した後、PBSで100μL/穴で2回洗浄し、さらに脱イオン水100μL/穴で洗浄して、基材の表面にポリペプチドを有する細胞接着率測定用プレート(P1)〜(P5)を作成する。
(2)コーティング量の測定
次に、細胞接着率測定用プレート(P1)〜(P5)の表面のポリペプチドによるコーティング量を測定する。Micro BCATM protein assay kit(THERMO Fisher Scientific社製)に付属のReagent A溶液:Reagent B溶液:Reagent C溶液=25:24:1の混合液(C)を得る。細胞接着測定用プレート(P1)〜(P5)の各ウェルに混合液(C)を100μL加え、37℃で2時間静置する。
2時間後に、ビシンコニン酸(BCA)とCu+とからなるキレートの生成量を、450nm(対照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて測定し、あらかじめウシ血清アルブミンにより作成した検量線からコーティング量(μg/cm)を得る。
(3)細胞の接着及び細胞接着率の測定
血清を含まないDMEM培地を50μL/穴でプレート(P1)〜(P5)にそれぞれ添加し、37℃インキュベーター内に1時間保存する。1時間後、MC3T3−E1細胞を104cells/50μL/穴で添加し、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター中にて2時間放置して培養する。
培養終了後、アスピレーターを用いて培地を除去し、生理食塩水を細胞に直接当たらないように注意しながら100μL/穴で添加し、アスピレーターを用いて生理食塩水を除去する。次にPBSを50μL/穴で添加し、さらにテトラカラーワン(生化学工業株式会社)を10μL/穴で添加して、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター中に4時間放置する。
4時間後に、ホルマザン生成量(X)を、450nm(参照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて測定し、それぞれ8穴分の平均データとする。
人工タンパク質(A)の代わりにフィブロネクチンを用いて比較用細胞接着率測定用プレートを作成し、上記と同様の実験を行う。比較用のプレートに播種したすべての細胞が接着したことを、顕微鏡観察で確認し、ホルマザン生成量(X0)を測定する。(X0)が細胞接着率100%であるとして、(X)及び(X0)を下記式に当てはめ、プレート(P1)〜(P5)の細胞接着率を算出する。
細胞接着率(%)=(X)/(X0)×100
得られた細胞接着率と、プレート表面のコーティング量をプロットし、近似直線を描き、コーティング量が2.5(μg/cm)のときの細胞接着率を、上記の細胞接着率とする。
本発明の癒着防止剤は、人工タンパク質(A)及び水を含む癒着防止剤である。
水としては、滅菌されたものであれば特に限定するものではなく、滅菌方法としては、0.2μm以下の孔径を持つ精密ろ過膜を通した水、限外ろ過膜を通した水、逆浸透膜を通した水及びオートクレーブで121℃20分加熱して過熱滅菌したイオン交換水等が挙げられる。
水は、緩衝成分を含んだ緩衝液としてもいい。
緩衝成分としては、リン酸等有機酸やグッドバッファー等が挙げられる。
本発明の癒着防止剤中の人工タンパク質(A)の含有量は、溶解性及びゲル化時間の観点から、5〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜20重量%である。
癒着防止剤中の水の含有量は、ゲル化時間の観点から、70〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは80〜90重量%である。
癒着防止剤中の緩衝成分の含有量は、ゲル化時間の観点から、0〜50mMが好ましく、さらに好ましくは0〜10mMである。
本発明において、癒着防止剤中にはさらに塩(例えばナトリウム塩等)を含んでいても良い。
ゲル化の観点から、塩の濃度は、0〜0.8重量%が好ましく、さらに好ましくは0.7〜0.6重量%である。
本発明の癒着防止剤の37℃でのゲル化時間は、ハンドリング性の観点から、500分以内が好ましく、さらに好ましくは5〜500分であり、特に好ましくは15〜200分である。
ゲル化時間は、癒着防止剤中の人工タンパク質(A)の濃度を高くしたり、人工タンパク質(A)中のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数に対するGAGAGS配列(7)の比率を大きくすることにより短くすることができる。
ゲル化時間は、具体的には、下記測定法により測定される。
<ゲル化時間の測定>
癒着防止剤100μLをマイクロチュブ(2mL)に量りとり、37℃のインキュベーターに放置する。5分おきに、マイクロチューブを180度傾けて、癒着防止剤が垂れるかを確認する。癒着防止剤が垂れなくなった時間をゲル化時間とする。
本発明の癒着防止剤組成物は、癒着防止剤のほかに、添加物質を含んでいても良い。
添加物質としては、ゲル化時間を調整する観点や癒着防止性向上の観点から、増粘物質、架橋剤及び/又は抗炎症剤が好ましい。
増粘物質として、アルギン酸、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース及びこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。これらのうち、癒着防止剤組成物のゲル化時間の調整及び安全性の観点から、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース及びこれらのアルカリ金属塩が好ましい。
増粘物質の粘度としては、癒着防止剤組成物のゲル化時間を調整する観点から、150〜800cpのものが好ましく、さらに好ましくは300〜400cpである。
本発明の癒着防止剤組成物において、増粘物質の含有量としては、フィルム形成の観点及びゲル化時間を調整する観点から、癒着防止剤の重量に基づいて、好ましくは0.25〜4重量%であり、さらに好ましくは0.5〜1重量%である。
架橋剤として、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル及びカルボジイミドなどが挙げられる。これらのうち、癒着防止剤組成物のゲル化時間の調整及び安全性の観点から、グルタルアルデヒドが好ましい。
抗炎症剤として、ステロイド系抗炎症剤、酸性抗炎症剤又は塩基性抗炎症剤などが挙げられる。
癒着防止剤のゲル化時間は、下記測定法によって測定する。
本発明の癒着防止剤組成物の製造方法としては、室温で癒着防止剤溶液と添加物質溶液とを混合するなどが挙げられる。
本発明の癒着防止剤及び癒着防止剤組成物は、外科的手術後に臓器同士、器官同士又は臓器若しくは器官と医療用器具との癒着を防止するために使用される。特に、複雑な臓器や器官の外科的手術や内視鏡手術などに好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
○人工タンパク質(A1)含有癒着防止剤(1)の作製
特表平3−502935号公報中の実施例記載の方法に準じて、遺伝子組換え大腸菌により製造し、カラムクロマトグラフィーにて精製し、GAGAGS配列(7)が4個連続した(GAGAGS)配列(17)のポリペプチド鎖(S1−1)を12個及びGVGVP配列(1)が8個連続したポリペプチド鎖(Y1−1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(19)(Y’1−1)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、GAGAGS配列(7)が2個連続した(GAGAGS)配列(18)のポリペプチド鎖(S1−2)1個が化学結合した構造を有する分子質量が約70kDaの配列(21)の人工タンパク質(SELP8K)(A1)を得た。
人工タンパク質(A1)を癒着防止剤の重量に基づいてそれぞれ5、20、30重量%の濃度となるようにPBS:脱イオン水=7:3に溶解し、それぞれ癒着防止剤(1−1、1−2、1−3)を作製した。
<実施例2>
○人工タンパク質(A2)含有癒着防止剤(2)の作製
実施例1と同様にして、GAGAGS配列(7)が2個連続した(GAGAGS)配列(18)のポリペプチド鎖(S1−2)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(19)のポリペプチド鎖(Y’1−1)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約77kDaの配列(22)の人工タンパク質(SELP0K)(A2)を作製した。
人工タンパク質(A2)を癒着防止剤の重量に基づいてそれぞれ5、20、30重量%の濃度となるようにPBS:脱イオン水=7:3に溶解し、それぞれ癒着防止剤(2−1、2−2、2−3)を作製した。
<実施例3>
○人工タンパク質(A3)含有癒着防止剤(3)の作製
実施例1と同様にして、GAGAGS配列(7)が2個連続した(GAGAGS)配列(18)のポリペプチド鎖(S1−2)を16個、及びGVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y11)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1−2)を8個有し、これらが{(S1−2)(Y’1−2)(S1−2)}の順で化学結合してなる分子質量が約71kDaの配列(23)の人工タンパク質(SELP415K)(A3)を作製した。
人工タンパク質(A3)を癒着防止剤の重量に基づいてそれぞれ5、20、30重量%の濃度となるようにPBS:脱イオン水=7:3に溶解し、それぞれ癒着防止剤(3−1、3−2、3−3)を作製した。
<実施例4>
○人工タンパク質(A4)含有癒着防止剤(4)の作製
実施例1と同様にして、GAGAGS配列(7)が2個連続した(GAGAGS)配列(18)のポリペプチド鎖(S1−2)を6個、GVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y11)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1−2)を6個、及びGAGAGS配列(7)が4個連続した(GAGAGS)配列(17)のポリペプチド鎖(S1−1)を6個有し、これらが{(S1−2)(Y’1−2)(S1−1)}の順で化学結合してなる分子質量が約65kDaの配列(24)の人工タンパク質(SELP815K)(A4)を作製した。
人工タンパク質(A4)を癒着防止剤の重量に基づいてそれぞれ5、20、30重量%の濃度となるようにPBS:脱イオン水=7:3に溶解し、それぞれ癒着防止剤(4−1、4−2、4−3)を作製した。
<実施例5>
○人工タンパク質(A1)含有癒着防止剤組成物(5)の作製
実施例1と同様にして得られた人工タンパク質(A1)を癒着防止剤の重量に基づいて20重量%の濃度となるようにPBS:脱イオン水=7:3に溶解し、次いで、この溶液に粘度300〜400cpのアルギン酸ナトリウムを癒着防止剤の重量に基づいてそれぞれ0.25、1、4重量%の濃度となるように溶解し、癒着防止剤組成物(5−1、5−2、5−3)を作製した。
<比較例1>
セプラフィルム(科研薬社製)を比較用の癒着防止剤として用いた。
<評価:癒着防止能の測定>
ラットを開腹し、盲腸を取り出した。ラット盲腸先端部位9点(直径約1mm)をハンダゴテで焼灼した。癒着防止剤(1)〜(4)及び癒着防止剤組成物(5)100μlを焼灼部位に塗布した。また、ラット盲腸末端部も同様に焼灼し、セプラフィルムを貼り付けた。その後、閉腹した。なお、癒着防止剤1種に対して3つの試験体を作成した。
7日間後、再び開腹し、癒着度合いを評価した。癒着の評価は以下の基準で評価し、3つの試験体のそれぞれの評価結果及び3つの平均を表1に示す。
グレード1:癒着なし
グレード2:容易に剥離可能な軽度の癒着
グレード3:軽度の牽引に耐えうる程度の癒着
グレード4:重度の癒着で剥離により一部の損傷を伴う(強い脂肪の癒着)
グレード5:強い臓器の癒着
<細胞接着率の測定>
(1)細胞接着率測定用プレートの作成
実施例1〜4で得た人工タンパク質(A1)〜(A4)について、それぞれ1mgを0.02Mリン酸緩衝液(pH7.2、99.5重量%塩化ナトリウムを0.85重量%含有する:以下、PBSと記載)1mLに溶解し、さらに、PBSで希釈して、それぞれ溶液(D1)〜(D4){溶液(D1)〜(D4)中の人工タンパク質(A)の濃度(μg/mL);(D1):0.01、(D2):1、(D3):10、(D4):100}を作製した。この溶液(D1)〜(D4)を96穴のポリスチレンプレート(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)中の8穴ずつにそれぞれ50μL/穴で投入し、室温(約25℃)で2時間放置する。アスピレーターを用いて溶液を除去した後、PBSで100μL/穴で2回洗浄し、さらに脱イオン水100μL/穴で洗浄して、アスピレーターを用いて脱イオン水を除去して、基材の表面にポリペプチドを有する細胞接着率測定用プレート(P1)〜(P4)を作成した。また、(A1)を実施例5で得た人工タンパク質(A1)組成物に置き換えた以外は前記基材の表面にポリペプチドを有する細胞接着率測定用プレートと同様にして(P5)を作成した。
(2)コーティング量の測定
次に、細胞接着率測定用プレート(P1)〜(P5)の表面のポリペプチドによるコーティング量を測定した。Micro BCATM protein assay kit(THERMO Fisher Scientific社製)に付属のReagent A溶液:Reagent B溶液:Reagent C溶液=25:24:1の混合液(C)を得た。細胞接着測定用プレート(P1)〜(P5)の各ウェルに混合液(C)を100μL加え、37℃で2時間静置した。
2時間後に、ビシンコニン酸(BCA)とCu+とからなるキレートの生成量を、450nm(対照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて測定し、あらかじめウシ血清アルブミンにより作成した検量線からコーティング量(μg/cm)を得た。
(3)細胞の接着及び細胞接着率の測定
血清を含まないDMEM培地を50μL/穴でプレート(P1)〜(P5)にそれぞれ添加し、37℃インキュベーター内に1時間保存する。1時間後、MC3T3−E1細胞(DSファーマバイオメディカル(株)製)を104cells/50μL/穴で添加し、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター中にて2時間放置して培養した。
培養終了後、アスピレーターを用いて培地を除去し、生理食塩水を細胞に直接当たらないように注意しながら100μL/穴で添加し、アスピレーターを用いて生理食塩水を除去した。次にPBSを50μL/穴で添加し、さらにテトラカラーワン(生化学工業株式会社)を10μL/穴で添加して、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター中に4時間放置した。
4時間後に、ホルマザン生成量(X)を、450nm(参照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて測定し、それぞれ8穴分の平均データとした。
人工タンパク質(A)の代わりにフィブロネクチン(和光純薬工業(株)製、品名「フィブロネクチン溶液」)を用いて比較用細胞接着率測定用プレートを作成し、上記と同様の実験を行った。比較用のプレートに播種したすべての細胞が接着したことを、顕微鏡観察で確認し、ホルマザン生成量(X0)を測定した。(X0)が細胞接着率100%であるとして、(X)及び(X0)を下記式に当てはめ、プレート(P1)〜(P5)の細胞接着率を算出した。
細胞接着率(%)=(X)/(X0)×100
得られた細胞接着率と、プレート表面のコーティング量をプロット(図1)し、近似直線を描き、コーティング量が2.5(μg/cm)のときの細胞接着率を、上記の細胞接着率とした。結果を表2に示す。
<ゲル化時間の測定>
実施例1〜5で得た癒着防止剤(1)〜(4)及び癒着防止剤組成物(5)をそれぞれ100μL、マイクロチュブ(2mL)に量りとり、37℃のインキュベーターに入れた。5分おきに、マイクロチューブを180度傾けて、癒着防止剤が垂れるかを確認した。癒着防止剤が垂れなくなった時間をゲル化時間とした。1つの癒着防止剤について、3つのサンプルを作成し、実験を行った。3つのサンプルのゲル化時間及び平均値を表3に示す。
Figure 2015177968
Figure 2015177968
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表1の結果から、本発明の癒着防止剤は、比較例のセプラフィルムと比較して、癒着防止効果が高いことが分かる。特に、ゲル化時間が500分以内の実施例1、2及び4の癒着防止剤は、癒着グレードが1.333以下と極めて癒着防止効果が高いことが分かる。また、本発明の癒着防止剤は、作製直後は溶液状であり、時間経過によりゲル化するものであるので、患部に塗布しやすく、ハンドリング性に優れる。実施例5の癒着防止剤組成物は、添加剤を0.25〜4重量%加えることにより、簡単にゲル化時間を調整することができ、0.2重量%以下ではゲル化時間に変化はないことがわかる。
本発明の癒着防止膜は、癒着防止効果が高く、ハンドリング性が高いので、外科的手術後に臓器同士、器官同士又は臓器若しくは器官と医療用器具との癒着を防止するために使用することができる。特に、複雑な臓器や器官の外科的手術や内視鏡手術などに好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. 人工タンパク質(A)及び水を含む癒着防止剤であって、
    (A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV(2)、VPGVG(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ペプチド鎖(Y’)を有し、
    (A)中に含まれる下記アミノ酸配列(X’)の合計個数が1〜20個であり、
    (A)の疎水性度が0.2〜1.2である癒着防止剤。
    アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の全アミノ酸の個数のうち20〜40%がそれぞれリシン又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
    ペプチド鎖(Y’):アミノ酸配列(X)とアミノ酸配列(X’)とが合計2〜200個結合したポリペプチド鎖。
  2. 人工タンパク質(A)が、さらにGAGAGS配列(7)が2〜50個連続して結合したポリペプチド鎖(S)を有する請求項1に記載の癒着防止剤。
  3. 人工タンパク質(A)1分子中の、GAGAGS配列(7)の個数とアミノ酸配列(X)及び下記アミノ酸配列(X’)の合計個数との比率(GAGAGS配列(7):アミノ酸配列(X)及び(X’)の合計)が、1:2〜1:20である請求項1又は2に記載の癒着防止剤。
  4. 人工タンパク質(A)のSDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子量が15〜200kDaである請求項1〜3のいずれかに記載の癒着防止剤。
  5. 人工タンパク質(A)が、GVGVP配列(1)であるアミノ酸配列(X)と、GVGVP配列(1)中のアミノ酸がリシンで置換されたアミノ酸配列(X’1)とを有する人工タンパク質(A1)である請求項1〜4のいずれかに記載の癒着防止剤。
  6. 人工タンパク質(A)が、(GAGAGS)配列(17)であるポリペプチド鎖(S1−1)と(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(19)であるポリペプチド鎖(Y’1−1)とを有する人工タンパク質(A11)である請求項1〜5のいずれかに記載の癒着防止剤。
  7. 人工タンパク質(A)の下記細胞接着率が0〜20%である請求項1〜6のいずれかに記載の癒着防止剤。
    細胞接着率:1cm当たり2.5μgの人工タンパク質(A)を有する基材を作成し、基材にMC3T3−E1細胞を播種したとき、基材に接着するMC3T3−E1細胞の割合。
  8. 癒着防止剤が、癒着防止剤中の人工タンパク質(A)の含有量が5〜30重量%であり、水の含有量が70〜95重量%である請求項1〜7のいずれかに記載の癒着防止剤。
  9. 37℃で500分以内にゲル化する請求項1〜8のいずれかに記載の癒着防止剤。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の癒着防止剤と、添加物質とを含む癒着防止剤組成物。
  11. 添加物質が、増粘物質、架橋剤及び/又は抗炎症剤である請求項10に記載の癒着防止剤組成物。
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