JP2009051773A - 細胞接着能を有するhsp70ファミリータンパク質 - Google Patents

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Abstract

【課題】細胞接着能に優れる器材コーティングタンパク質、及びコーディング剤を提供する。
【解決手段】大腸菌で発現可能なタンパク質に細胞接着配列を付加することにより細胞接着能を有する器材コート用タンパク質を供給する。
【選択図】図1

Description

本発明は、細胞培養用の容器や担体等(以下、器材とする)への吸着能及び細胞接着能を有するHSP70ファミリータンパク質由来の新規なタンパク質に関する。より詳しくは、細胞培養等に用いられるプラスチック等の樹脂性容器ないしプレートへの吸着能を有し、且つ前記容器やプレート上で培養する細胞に対する接着能を有するタンパク質に関する。更には、該タンパク質を含有する細胞接着用コート剤、医療用コーティング剤及び該タンパク質でコーティングされた細胞培養用器材に関する。
近年、動物細胞培養技術が注目を集めており、特に動物組織より直接分離した初代細胞などはその有用性の高さから盛んに研究されるようになっている。その中でも、幹細胞は再生医療などの観点から特に注目を集めている。これらの細胞のうち、血球系以外の細胞は、シャーレ等のプラスチック表面に接着しつつ増殖する担体依存性であることが知られている。このような細胞の多くは、培養容器等の表面との接着を媒介する成分(例えば、コラーゲン)で培養容器のプラスチック表面をあらかじめコーティングしていないと正常に接着して増殖できない。コラーゲンはウシやブタなどの生体から分離・精製され供給されることがほとんどであり、品質が安定しないことが多く、また近年、狂牛病や種々の疾病の流行などにより、プリオンやウイルスなどの混入が懸念されている現状もある。また、ポリLリジンなどのペプチドなども使われるが、コーティング能力や細胞接着能力は十分ではない。このような理由から、十分な培養容器ないしプレートへの吸着能力を有し、且つ細胞接着能力を有する大量生産可能な代替物質が求められている。
コラーゲンなどのタンパク質はプラスチックに吸着しやすい性質と細胞と親和性を示す性質があることが分かっている。コラーゲンの細胞親和性に関しては、様々な研究があり、1984年にE. Ruoslahtiにより細胞接着活性部位としてテトラペプチドRGDS配列(R:アルギニン、G:グリシン、D:アスパラギン酸、S:セリン)が報告されている。その後、セリンがV(Val)、T(Thr)、A(Ala)などで代用できることが分かり、RGDが最小単位とされた。この配列はフィブロネクチンだけでなく、ビトロネクチン、テネシン、ラミニン、コラーゲン、オステオポンチン、トロンボポンジン、フォンビルブラント因子など10種類の細胞接着性糖タンパク質に共通な細胞接着活性部位でとして知られるようになっている(非特許文献1)。RGD配列の受容体は細胞表面のインテグリンファミリーであることも明らかとなっている。
また、その後の研究で、コラーゲンのRGD配列の他に、同じくコラーゲン中のPHSRN配列がインテグリンα5β1との相互作用の点で、LDV配列とREDV配列がインテグリンα4β1との相互作用の点で重要であることが明らかとなっている。
しかしながら、今まで、コラーゲンの接着配列として知られるRGD配列を利用した細胞接着用コート剤の開発が進められてきたがあまり芳しい効果が得られていないのが現状である。それは、コーティングの能力と細胞接着の能力をうまく融合させることができなかったことに一部由来していると思われる。すなわち、コーティング剤にうまくRGD配列を付加できたとしても、器材の表面に効果的に接着配列を提示できなかったり、コーティングの効率が極端に低いなどの理由などにより、うまく細胞接着能を発揮できなかった例が多かったものと推察される。
一方、特許文献1には、大腸菌のHSP70ファミリータンパク質の1つであるDnaKの改変体が高いブロッキング能を有することが記載され、免疫アッセイに用いるブロッキング用タンパク質を作製した実験が例示されている。この報告によると、DnaKの基質結合ドメインは親水性部分(C末端側)と疎水性部分(N末端側)に分かれており、疎水性部分をさらに疎水性にすることにより疎水性部分がよりプラスチック表面へ吸着しやすくなるため、ブロッキング能が高まることが述べられている。既に、DnaK384−607の立体構造は明らかとなっている。特に、DnaKタンパク質の419から607アミノ酸までを含むフラグメントは最もブロッキング能が高いことが分かっている(DnaK 419−607)。また、この改変によって、タンパク質分子がより均一に同じ方向を向いて配向しやすくなることも述べられている。このタンパク質は大腸菌で大量生産できるため、プリオンなどの混入の心配が無く、代替BSAとして有用であると考えられる。しかし、引用文献1はDnaKを利用した培養細胞の器材への接着媒介に関しては何ら触れられておらず、その有効性は未知であった。
WO/2005/003155
上述するように、本発明の目的は大腸菌等の組換え体で大量生産できる、優れた細胞接着能を有する代替タンパク質、当該タンパク質を含有する細胞培養用器材のコート剤及び当該タンパク質でコーティングされた培養器材を提供することである。
かかる現状の下、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、十分な細胞吸着能及び器材への吸着能を有する新規なタンパク質を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は以下の構成により成る。
項1. 細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質。
項2. 細胞接着配列がRGD配列、PHSRN配列、LDV配列及びREDV配列から成る群から選ばれる一種以上である、項1に記載のタンパク質。
項3. HSP70ファミリータンパク質が、HSPファミリータンパク質の基質結合ドメインである項1又は2に記載のタンパク質。
項4. HSP70ファミリータンパク質がDnaKタンパク質である項1〜3のいずれかに記載のタンパク質。
項5. HSP70ファミリータンパク質がDnaKの基質結合ドメインであることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載のタンパク質。
項6. DnaKの基質結合ドメインが欠損、挿入、及び/又は置換を受けていることを特徴とする項5に記載のタンパク質。
項7. DnaKタンパク質のN末端から387番目のアミノ酸配列の全部又は一部が除去されていることを特徴とする、項5に記載のタンパク質。
項8. DnaKタンパク質の少なくともN末端から387番目以上、多くとも418番目までのアミノ酸配列が除去されていることを特徴とする項5に記載のタンパク質。
項9. DnaKタンパク質の419〜607番目までのアミノ酸配列からなる項5に記載のタンパク質。
項10. 項1〜9に記載のタンパク質を含有することを特徴とする器材表面のコート剤。
項11. 項1〜9に記載のタンパク質を含有することを特徴とする細胞培養用もしくは医療用コート剤。
項12. 項1〜9の何れかに記載のタンパク質によってコーティングされたことを特徴とする細胞培養用器材。
本発明の新規タンパク質は、細胞培養用の容器や担体などへの優れた吸着能を有し、且つ優れた細胞接着能を有する。よって、本発明の新規タンパク質を細胞培養器材にコーティングすることにより、細胞、特に担体依存性の細胞を容易に前記器材上で培養することができる。また、本発明の新規タンパク質は、大腸菌などを用いた大量且つ安定した生産が可能であり、さらに動物由来の成分タンパク質とは異なり、プリオンなどによる汚染を完全に否定できるという点からも有用である。
以下、本発明を詳説する。
HSP70ファミリータンパク質
HSP70ファミリータンパク質とは、シャペロンタンパク質としても知られるHSP70ファミリーに属する一群のタンパク質をいう。HSPファミリータンパク質は、熱ショックなどによって変性したタンパク質をDnaJやGrpEと協調して正常に巻き戻す(リフォールディングする)役割を果たしていることが明らかにされている。HSPファミリータンパク質は、ATPaseドメインと基質結合ドメインを有する。HSP70ファミリータンパク質は、プラスチック等の器材に吸着する性質を有する。その機構は基質結合ドメインに存在する疎水性部分よってプラスチック等の器材表面に吸着し、親水性部分がその上にかぶさるような形態をとることによって安定的に器材に吸着すると考えられる。このように、HSPファミリータンパク質が器材表面に吸着する際、当該タンパク質は親水性部分を露呈する配向性があると考えられる。
本発明においてHSP70ファミリータンパク質とは、上記のようにプラスチック等の器材表面への吸着能を有するHSP70ファミリーに属するタンパク質であり、前記吸着能を有する限りにおいて、天然のHSPファミリータンパク質だけでなく、さらにアミノ酸配列に置換、付加、欠失等の変異を有する改変体も含まれる。上述するように、HSP70ファミリータンパク質は、疎水性の比較的強い配列部分によって器材に吸着すると考えられるため、疎水性部分を保持していることが好ましい。また、基質結合ドメインのβシート構造部分に変異を加えることでβシート部分の疎水性を向上させ、器材への吸着能を向上させたものも好適使用することができる。このような改変は、例えばβシートのN末端の一部を除去することで、βシートのより疎水的な部分を露出させることや、βシート上の親水性アミノ酸を疎水性アミノ酸に置換することによって行うことができる。
HSP70ファミリーに属するタンパク質としては、例えば大腸菌のDnaK、酵母細胞質に存在するSsa1p、酵母ミトコンドリアに存在するSsc1p、酵母小胞体に存在するKar2p、哺乳類細胞質に存在するHSP70、哺乳類小胞体に存在するBip、哺乳類ミトコンドリアに存在するmHsp70、および熱ショックの有無に関わらず恒常的に発現しているHSP70のホモログ(相当タンパク質)であるHSC70などを挙げることができる。この他にもHSP70ファミリーには数多くのホモログが知られており、これらは上述する器材への吸着能を有する限り、いずれのHSP70ファミリータンパク質を用いてもよい。
ヒトのHSP70はショウジョウバエのものとアミノ酸レベルで73%と大変高いホモロジーを示し、大腸菌との間においても47%という比較的高いホモロジーが報告されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 6455−6459 (1985))。また、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸の分布に関しても類似していることが分かっている。特に基質結合ドメインに関しては、N末端側のβシート構造と、C末端側のαへリックス構造が高度に保存されていることが示唆されている(J. Biol. Chem.,277: 41060−41069 (2002))。このような構造的な類似性からも、本発明のHSP70ファミリータンパク質としては、HSP70ファミリータンパク質のいずれをも用いることができると考えられる。好ましいHSPファミリータンパク質は大腸菌由来のDnaKタンパク質であり、より好ましくは、DnaKタンパク質の基質結合ドメインである。
DnaKタンパク質は、638個のアミノ酸から構成され、1〜385番目のアミノ酸より構成されるATPaseドメインと386〜638番目のアミノ酸より構成される基質結合ドメインからなる。DnaKの384〜607番目のアミノ酸配列の立体構造を図1に示す。配列番号1にDnaKのアミノ酸配列を、また配列番号2にその遺伝子配列を示す。DnaKの基質結合ドメインはN末端側に疎水性の強い部分があるため、DnaKの基質結合ドメインは、N末端側を下側に、C末端側を上側にしてプラスチック表面に吸着していると考えられる。DnaKタンパク質の中でも、ATP結合ドメイン全体と基質結合ドメインの一部を除いた部分配列であるDnaK419−607はプラスチックなどの器材表面に対する高い吸着力を有する。また特に、DnaK419−607ではその配向性が顕著である。よって、DnaKタンパク質由来のタンパク質の中でもDnaK419−607を用いることが好ましい。また、DnaKタンパク質及びその一部のフラグメント(例えば、基質結合ドメイン)のアミノ酸配列に変異を加えることによって得られるさらに器材吸着性の向上したDnaKタンパク質由来のタンパク質を用いることもできる。例えば特許文献1では、基質結合ドメインのN末端側のドメインの親水性のアミノ酸(アスパラギン酸)を疎水性アミノ酸(バリン)に置き換えた変異体(DnaK 384−607(D479V, D481V)で更にプラスチック表面への吸着能が向上することが報告されている。
細胞接着配列
本発明において細胞接着配列とは、細胞との接着能を有するアミノ酸配列を意味し、細胞と接着する性質を有する限り如何なるアミノ酸配列であってもよく、糖鎖などによって修飾されていてもよい。好ましくは、フィブロネクチン由来のRGD(Arg−Gly−Asp)配列やPHSRN(Pro−His−Ser−Arg−Asn)配列、LDV(Leu−Asp−Val)配列、REDV(Arg−Glu−Asp−Val)配列などが用いられ、より好ましくはコラーゲンの細胞接着シグナルでもあるRGD配列が好適に用いられる。
細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質
本発明の細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質とは、前記細胞接着配列とHSP70ファミリータンパク質とを組み合せることによって得られる、細胞への接着能及び器材への吸着能を有し、細胞の培養基への接着を媒介するタンパク質である。ここで、HSP70ファミリータンパク質は、上述するように、一部のアミノ酸を欠失する等の変異を有していてもよい。細胞接着配列は、細胞接着能を有する限りHSP70ファミリータンパク質のどの領域に存在してもよい。細胞接着配列がHSP70ファミリータンパク質中に含まれる場合、タンパク質の立体構造を破壊しないように特定のアミノ酸を置換して、細胞接着配列を形成することができる。また、細胞接着配列を既存のHSPファミリータンパク質を構成するアミノ酸配列に挿入することもできる。好ましくは、細胞接着配列はHSPファミリー由来タンパク質の親水性ドメインに存在する。更に好ましくは、HSP70ファミリータンパク質、特にDnaKの基質結合ドメインに細胞接着配列を、親水性の強い、すなわち器材をコーティングした場合に細胞接着面となる、C末端側に融合させるのが好ましい。
融合の手段としては、細胞接着配列をコードする配列からなるDNA断片をHSP70ファミリータンパク質遺伝子のC末端側にフレームが繋がるように挿入することが最も好適に用いられる。細胞接着配列の前後には、スペーサーとなる配列を挿入しても良い。スペーサー配列としては特に限定されないが、一般的にグリシンやセリンなどの電荷のないものが好適に用いられる。
細胞接着配列は単一の配列のみを単独で用いることもできるが、同一又は異なる細胞接着配列を2つ以上組み合わせてもよく、複数のコピーをHSP70ファミリー由来タンパク質に導入しても良い。細胞接着配列の繰り返し回数は、1〜10回程度が好ましく、より好ましくは1〜6回である。同一又は異なる細胞接着配列が2つ以上含まれる場合、各細胞接着配列は連続的に導入されても、間にスペーサー配列を有してもよい。また、異なる接着配列を有するコーティングタンパク質を調製した後、使用する段階で混合して用いても良い。
HSP70ファミリータンパク質は、前後に余分な配列を含んでも良い。部分配列を発現させる際は、当然N末端側に開始コドンに相当するメチオニンンが必須であるし、制限酵素配列でベクターに遺伝子を挿入するような場合は、制限酵素配列に相当するアミノ酸が挿入される。更には、精製のためにタグ配列を付加しなくてはならない場合も多い。例えば実施例で用いたDnaKタンパク質は、DnaKタンパク質のN末端側にヒスチジンタグ(ヒスチジンを6回繰り返した配列)を融合し、ニッケルキレートカラムを用いて簡便に精製を行い、評価を行っている。このN末端のヒスチジンタグは、DnaK419−607のプラスチック表面のブロッキング効果に影響を及ぼさないことが特許文献1に記載されている。
様々な条件を検討した結果、実施例に示すように、C末端側にRGD配列を付加するように改変されたDnaK419−607タンパク質を用いてコートされたポリスチレン容器は、RGD配列を融合していないDnaK419−607タンパク質を用いてコートされたポリスチレン容器を用いたものに比べ高い細胞接着能を示すことが明らかとなった。
本発明の細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質は、細胞接着配列及びHSP70ファミリータンパク質のアミノ酸配列ないし塩基配列を基に、公知の遺伝子組み換え技術を用いて容易に製造可能である。当該タンパク質の発現の宿主としては、特に限定されないが、大腸菌が最も好適に用いられる。特にDnaKタンパク質は大腸菌に由来するタンパク質であり、大腸菌を宿主として用いることで大量発現が可能であることが確かめられている。
細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質の精製は、タンパク質の一般的な精製方法に従えばよく、特に限定されない。精製用のタグを融合させて発現させても良い。タグの種類は特に限定されないが、ヒスチジンタグなどの比較的分子量の小さなタグが好適に用いることができる。
精製は、場合によって粗精製でもよい。例えば、熱処理などを挙げることができる。HSP70ファミリータンパク質は熱ショックタンパク質として知られており、70℃以上の温度でも変性しにくい性質を有していることから、加温処理によっても凝集しないことを利用して精製することが可能である。
精製したタンパク質は、水や緩衝液、細胞培養用の培地などに溶解して用いることができる。緩衝液、および細胞培養用の培地は特に種類は限定されない。器材をコーティングするときの妨げとなるため、溶液は、別のタンパク質成分を含まないことが好ましい。
また本発明は、本発明の細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質由来のタンパク質を含む細胞培養用器材コート剤である。本発明のコート剤は、2種以上の細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質由来のタンパク質の組み合せを含んでもよく、当該タンパク質の器材吸着能及び細胞接着能を阻害しない範囲で適宜他の成分を含んでもよい。
本発明の細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質由来のタンパク質を適用する器材としては、細胞や生体に悪影響を及ぼさないものであれば制限無く使用でき、特に限定されないが、プラスチックなど疎水的な表面を持つ器材のコーティングに好適に用いることができる。特に、ポリスチレンやポリプロピレン製の器材のコーティングに用いると良い。本発明の細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質を用いて培養用器材や医療用器具をコーティングする場合、通常0.1μg/ml〜5mg/ml、好ましくは10μg/ml〜5mg/mlである。
本発明は、上に記載したHSP70ファミリータンパク質を含有する細胞培養用もしくは医療用コート剤である。当該コート剤は、粉末、もしくは溶液として供給される。
細胞培養用としては、通常の培養時による表面コートが必要な細胞の培養時に用いることができる。適応可能な細胞としては、主に接着性の細胞を挙げることができる。特に、近年、研究が盛んとなっている初代細胞の培養、特に幹細胞の培養にも用いることができる。哺乳動物由来の細胞としては、皮膚に関与する細胞(上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞等)、血管に関与する細胞(血管内皮細胞、平滑筋細胞及び線維芽細胞等)、筋肉に関与する細胞(筋肉細胞等)、脂肪に関与する細胞(脂肪細胞等)、神経に関与する細胞(神経細胞等)、肝臓に関与する細胞(肝実質細胞等)、膵臓に関与する細胞(膵ラ島細胞等)、腎臓に関与する細胞(腎上皮細胞、近位尿細管上皮細胞及びメサンギウム細胞等)、肺・気管支に関与する細胞(上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞等)、目に関与する細胞(視細胞、角膜上皮細胞及び角膜内皮細胞等)、前立腺に関与する細胞(上皮細胞、間質細胞及び平滑筋細胞等)、骨に関与する細胞(骨芽細胞、骨細胞及び破骨細胞等)、軟骨に関与する細胞(軟骨芽細胞及び軟骨細胞等)、歯に関与する細胞(歯根膜細胞及び骨芽細胞等)、血液に関与する細胞(白血球及び赤血球等)、及び幹細胞{例えば、骨髄未分化間葉系幹細胞、骨格筋幹細胞、造血系幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞(oval cell、small hepatocyte等)、脂肪組織幹細胞、胚性幹(ES)細胞、表皮幹細胞、腸管幹細胞、精子幹細胞、胚生殖幹細胞、膵臓幹細胞(膵管上皮幹細胞等)、白血球系幹細胞、リンパ球系幹細胞、角膜系幹細胞、前駆細胞(脂肪前駆細胞、血管内皮前駆細胞、軟骨前駆細胞、リンパ球系前駆細胞、NK前駆細胞等)等}等を挙げることができる。さらに好ましくは、リンパ球系細胞を除く、接着して増殖する性質を有する上記細胞を挙げることができる。
医療用コート剤としては、細胞保存用バッグやカテーテル、インプラントなどの表面のコーティングに用いるものが挙げられる。
さらに、本発明は、上記タンパク質を含有する試薬・キットにも関する。
さらに本発明は、本発明の細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質由来のタンパク質でコーティングされた細胞培養用器具及び医療用器具に関する。
以下に本発明の実施例を挙げることにより、本発明による効果をより一層明瞭なものとする。ただし、これらの実施例によって本発明の範囲は限定されるものではない。
実施例1: RGD配列を含むDnaKフラグメントのクローニング、発現
DnaKフラグメントは大腸菌K−12株より抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCR法を用いて目的遺伝子断片を増幅し、クローニングした。遺伝子のPCR増幅には東洋紡製のKOD−Plus−を用いた。具体的にDnaK 419−607の増幅には、50μlの反応液中、反応用バッファー、1mM MgSO、配列番号3および4、3および5、3および6、3および7、3および8、もしくは3および9に示すプライマーを15pmole、ポリメーラーゼ1unitおよび大腸菌DNA 100ngとなるように調製し、94℃・2分間の後、94℃・15秒、55℃・30秒、68℃・1分のサイクルを25回行った。増幅したDNA断片は制限酵素BamHIにて消化し、pQE30のBamHI−SmaIサイトへクローニングした(KOD −Plus−によって増幅されたDNA断片は平滑化されているため、増幅断片の下流側についてはそのまま使用した)。クローニングした遺伝子の配列はシーケンス解析により確認した。このベクターにクローニングすることにより目的タンパク質のN末端に6×His配列(Hisタグ)を付加することができる。このようにして、発現プラスミドpQE−DnaK419−607(配列番号3・4のプライマーで調製)、C末端にRGD(Lys−Gly−Asp)配列を有するpQE−DnaK419−607−RGD(配列番号3・5のプライマーで調製)、C末端にRGD配列を3回繰り返して含むpQE−DnaK419−607−RGD×3(配列番号3・6のプライマーで調製)、及びPHSRN(Pro−His−Ser−Arg−Asn)配列を含むpQE−DnaK419−607−PHSRN(配列番号3・7のプライマーで調製)、LDV(Leu−Asp−Val)配列を含むpQE−DnaK419−607−LDV(配列番号3・8のプライマーで調製)、およびREDV(Arg−Glu−Asp−Val)配列を含むpQE−DnaK419−607−REDV(配列番号3・9のプライマーで調製)を調製した。
タンパク質の発現・精製は、遺伝子を導入したJM109をLB培地にて、37℃、16時間振とう培養し、菌体を遠心分離法により回収し、20mM Tris−HCl(pH7.0) へ懸濁、超音波破砕を行った後、15,000r.p.m.にて10分間微量高速遠心機を用いて遠心して得られた上清を用いて行った。具体的には、HIS−Select HC Nickel Affinity Gel (SIGMA社製)を用いて、精製し、最終的に20mM Tris−HCl(pH7.0) に対して一晩透析し、実験に用いた。タンパク質濃度の測定は、紫外吸収(A215nm、A225nm)を指標として、以下の計算式に基づき行った。
・蛋白質濃度(μg/ml)=(215nmでの吸収−225nmでの吸収)×144
実施例2:細胞接着能の確認
細胞接着活性配列であるRGD配列をC末端に組込んだDnaK419−607(DnaK419−607+RGD)を細胞の足場として用いて、細胞接着能の評価を行った。具体的には、DnaK419−607+RGDを96 microwell plateにコーティングした後、NIH3T3細胞を蒔種し、その接着能を検鏡、およびMTTアッセイ法(正確にはMTTではなくWST−8を使用)にて生細胞数を比較した。まず、DnaK419−607及びDnaK419−607+RGDを2mg/mL,200μg/mL,20μg/mL,2μg/mLとなるように20mM Tris−HCl(pH 7.0)で希釈し、96 well plate (nunc社製,材質:ポリスチレン)に分注し、4℃で5時間静置した後、PBS(−)200 μLでウェルを3回洗浄した。その後、各ウェルにNIH3T3細胞懸濁液を100 μl(5×10cells/well)加え、5%CO,37℃の条件下で24時間培養した。培地は、5%牛胎児血清を添加したDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium、Sigma社製)を用いた。24時間細胞培養後、プレートのウェル内の培養液を捨て、各ウェルをPBS(−)200 μLで3回洗浄した後、DMEMで5倍希釈したWST−8キット(キシダ化学株式会社製)を各ウェルに50μlずつ添加した。その後、5%CO,37℃の条件下で4時間呈色を行い、その後0.1mol/L HClを10μL添加して反応を停止させ、マイクロプレートリーダーを用いて、450nmの吸光度を測定した。
24時間培養後のNIH3T3細胞の位相差顕微鏡による観察像を図2に示す。写真より、DnaK419−607+RGDはDnaK419−607に比べて、低濃度でコーティングした場合においても明らかに細胞の接着数は多く、また伸展していることが明らかである。
また、MTTアッセイにおいては、2mg/mL DnaK419−607+RGDをコーティングすることで、コントロールに比べて値は約11倍に増加した(図3)。また、200μg/mL,20μg/mLではそれぞれ、約8倍、約4倍に増加した。このことからも、DnaK419−607+RGDは細胞足場として有用であるのではないかと考えられる。
また、C末端にRGD配列を3回繰り返して含むDnaK419−607+RGD×3、及びPHSRN配列を含むDnaK419−607+PHSRN、DEV配列を含むDnaK419−607+DEV、およびREVD配列を含むDnaK419−607+REDVに関してもほぼ同様な有意な傾向が得られた。また、コラーゲンとの比較も行い、同等、もしくはそれ以上の効果を得ることができた。
本発明により、細胞接着能を向上させた器材コーティング用のタンパク質を、より大量に、大腸菌を用いて生産することができるようになり、従来の家畜等の動物から分離する方法と比べ、使用にあたりプリオンやウイルス等の混入を憂慮する必要が無くなることからも、産業界に大きく寄与することが期待される。
DnaK384−607の立体構造を示す図 RGD配列を付加したDnaK419−607の細胞接着試験結果(MTTアッセイ) RGD配列を付加したDnaK419−607の細胞接着試験結果(顕微鏡観察)

Claims (12)

  1. 細胞接着配列を有するHSP70ファミリータンパク質。
  2. 細胞接着配列がRGD配列、PHSRN配列、LDV配列及びREDV配列から成る群から選ばれる一種以上である、請求項1に記載のタンパク質。
  3. HSP70ファミリータンパク質が、HSPファミリータンパク質の基質結合ドメインである請求項1又は2に記載のタンパク質。
  4. HSP70ファミリータンパク質がDnaKタンパク質である請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質。
  5. HSP70ファミリータンパク質がDnaKの基質結合ドメインであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質。
  6. DnaKの基質結合ドメインが欠損、挿入、及び/又は置換を受けていることを特徴とする請求項5に記載のタンパク質。
  7. DnaKタンパク質のN末端から387番目のアミノ酸配列の全部又は一部が除去されていることを特徴とする、請求項5に記載のタンパク質。
  8. DnaKタンパク質の少なくともN末端から387番目以上、多くとも418番目までのアミノ酸配列が除去されていることを特徴とする請求項5に記載のタンパク質。
  9. DnaKタンパク質の419〜607番目までのアミノ酸配列からなる請求項5に記載のタンパク質。
  10. 請求項1〜9に記載のタンパク質を含有することを特徴とする器材表面のコート剤。
  11. 請求項1〜9に記載のタンパク質を含有することを特徴とする細胞培養用もしくは医療用コート剤。
  12. 請求項1〜9の何れかに記載のタンパク質によってコーティングされたことを特徴とする細胞培養用器材。
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