ここで、好適には、電気パス量が第1電動機によって回生(発電)され、回生された電力を利用して第2電動機によって駆動輪に伝達されるパワーに対応し、機械パス量が流体伝動装置を介して駆動輪に伝達されるパワーに対応している。
また、好適には、燃費とは単位燃料消費量あたりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量あたりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両全体としての燃料消費量(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。
また、好適には、車両用駆動装置は、前記第1電動機および前記第2電動機の各々と電力授受可能に接続された蓄電装置を備えており、その第1電動機が発電した電力からその蓄電装置に充電される電力を差し引いた残部を第2電動機に供給してその第2電動機を駆動する。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド車両8の駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、駆動装置10は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の車両に採用されるものであり、駆動源として機能するエンジン12と、そのエンジン12のクランク軸14に連結された流体伝動装置として機能するトルクコンバータ16と、そのトルクコンバータ16と駆動輪17との間に介挿されてトルクコンバータ16に連結されたタービン軸20の回転を変速させて出力軸34に出力する自動変速機18と、トルクコンバータ16の入力側回転部材であるポンプ翼車16pに連結された第1電動機MG1と、トルクコンバータ16の出力側回転部材であるタービン翼車16tに連結されたタービン軸20に連結されている第2電動機MG2とを備えている。また、軸方向においてエンジン12と反対側には、カウンタギヤ対22が設けられている。カウンタギヤ対22は、タービン軸20に設けられているカウンタドライブギヤ22aと、自動変速機18の入力軸24に設けられているカウンタドリブンギヤ22bとから成り、タービン軸20と自動変速機18とを動力伝達可能に連結している。
トルクコンバータ16は、エンジン12からの動力が入力される入力側回転部材であるポンプ翼車16pと、駆動輪17へ動力を出力する出力側回転部材であるタービン翼車16tと、ステータ翼車16sと、一方向クラッチF0とを備えた流体伝動装置である。そのポンプ翼車16pすなわちポンプインペラは、エンジン12のクランク軸14と第1電動機MG1とに連結されており、そのエンジン12により回転駆動されることによってトルクコンバータ16内の作動油の流動による流体流を発生させる。タービン翼車16tすなわちタービンランナは、タービン軸20およびカウンタギヤ対22を介して自動変速機18の入力軸24に連結されており、上記ポンプ翼車16pからの流体流を受けて回転させられる。ステータ翼車16sは、上記ポンプ翼車16pからタービン翼車16tへの流体流中に配設され、一方向クラッチF0によってクランク軸14の正回転方向(エンジン12作動時のクランク軸14の回転方向)に回転可能且つ負回転方向に回転不能に支持されている。図1から判るように本実施例では、エンジン12と第1電動機MG1とポンプ翼車16pとは直列に連結されているので、ポンプ翼車16pの回転速度Np(以下、ポンプ回転速度Npという)は第1電動機MG1の回転速度Nmg1(以下、第1電動機回転速度Nmg1という)およびエンジン12の回転速度Ne(以下、エンジン回転速度Neという)と同じである。また、タービン翼車16tと第2電動機MG2とは直結されているので、タービン翼車16tの回転速度Nt(以下、タービン回転速度Ntという)は第2電動機MG2の回転速度Nmg2(以下、第2電動機回転速度Nmg2という)と同じである。
また、トルクコンバータ16は、上記ポンプ翼車16pとタービン翼車16tとの間を選択的に連結するロックアップクラッチLCを備えている。このロックアップクラッチLCは、油圧制御回路35(図5参照)からの作動油で作動し、完全係合状態(ロックアップオン状態)、スリップ状態、および解放状態(ロックアップオフ状態)の何れか1の状態に制御される。ロックアップクラッチLCがロックアップオフとされた場合には、上記のようにクランク軸14とタービン軸20との間のトルク伝達がトルクコンバータ16内の作動油を介して行われる。そして、ロックアップクラッチLCがロックアップオンとされた場合には、ロックアップクラッチLCがポンプ翼車16pとタービン翼車16tとを機械的に直結するので、エンジン12のクランク軸14とタービン軸20とが相互に一体的に連結されて、それらクランク軸14とタービン軸20との間のトルク伝達がトルクコンバータ16内の作動油を介さずに直接的に行われる。
第1電動機MG1は、エンジン12のクランク軸14に例えば脈動を吸収するダンパ等を介して直列に連結されており、トルクコンバータ16のポンプ翼車16pに直接連結されている。要するに、第1電動機MG1はエンジン12とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路に連結されている。また、第2電動機MG2は、トルクコンバータ16と駆動輪17との間の動力伝達経路上に連結されており、詳細には、カウンタギヤ対22や自動変速機18等を介して間接的に駆動輪17に連結されていると共に、タービン軸20を介して出力側回転部材であるタービン翼車16tに連結されている。第1電動機MG1および第2電動機MG2は、駆動トルクを発生させる電動モータとしての機能と回生トルクを発生させる発電機としての機能とが選択的に得られるように構成された回転機であって、例えば交流同期型のモータジェネレータにより構成される。また、バッテリである蓄電装置36(図5参照)と電動機MG1、MG2を制御する為のインバータ38(図5参照)とが駆動装置10に設けられており、その蓄電装置36と第1電動機MG1と第2電動機MG2とは相互に電力授受可能に接続されている。上記第1電動機MG1および第2電動機MG2はそれぞれ、その駆動によってクランク軸14およびタービン軸20に正回転方向の駆動トルクを付与することができる。また、第1電動機MG1および第2電動機MG2はそれぞれ、その発電(回生)によってクランク軸14およびタービン軸20に負回転方向の負荷トルクすなわち制動トルク(回生トルク)を付与すると共に、車両に設けられた蓄電装置36をインバータ38を介して充電することができる。なお、上記クランク軸14およびタービン軸20の正回転方向とは、エンジン12の駆動時におけるクランク軸14の回転方向であり、上記負回転方向とはその正回転方向とは逆向きの回転方向である。
自動変速機18は、回転軸心CL2に平行な回転軸心CL2を中心に配置され、トルクコンバータ16と駆動輪17との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機である。具体的に、自動変速機18は、非回転部材であるトランスミッションケース26内に、第1遊星歯車装置30、第2遊星歯車装置32および複数の油圧式摩擦係合装置C1、C2、B1、B2を備えた公知の遊星歯車式多段変速機である。自動変速機18は、入力軸24に入力されたエンジン12の動力を出力軸34から駆動輪17に向けて出力する。そして、この自動変速機18においては、公知の各油圧式摩擦係合装置(クラッチC1、C2、ブレーキB1、B2)が図2に示す所定の作動表に従って油圧制御回路35からの作動油でそれぞれ係合又は解放されることにより、自動変速機18の変速比γat(=変速機入力回転速度Natin/出力軸34の回転速度Nout)がそれぞれ異なる複数の変速段が択一的に成立させられる。図2において、「○」は係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ示している。また、この自動変速機18の自動変速制御は、例えば図3に示すような例えば車速Vとアクセル開度Accから構成される、予め記憶されたアップシフト線およびダウンシフト線を有する公知の関係(変速線図、変速マップ)に従って実行される。
以上のように構成された駆動装置10においては、車両の走行状態に応じて、エンジン12の動力により車両を走行させるエンジン走行と第2電動機MG2の動力により車両を走行させるモータ走行とが切り換えられて作動させられるようになっている。上記エンジン走行とモータ走行との切り換えは、例えば図3に示すような前記変速線図と同様の二次元座標内において予め定められて記憶されたエンジン走行領域およびモータ走行領域を有する公知の関係(駆動力源切換線図、駆動力源切換マップ)に従って実行される。このように、本実施例の車両はエンジン走行とモータ走行とが切り換えられるハイブリッド車両である。
なお、駆動装置10では、例えば、車両の走行状態がモータ走行領域に属していても蓄電装置36の充電状態(充電容量、充電残量)SOC(state of charge)が所定値以下である場合にはエンジン走行が行われる。また、車両の急発進時や急加速時などにはエンジン12および第2電動機MG2の両方の出力が用いられて車両が走行させられる等の制御が適宜行われる。また、一般的に、エンジン12は比較的低回転高負荷領域で運転させた方が効率が良く、第2電動機MG2は比較的高回転低負荷領域で運転させた方が効率が良い。その為、図3に示されるように、モータ走行領域においてモータ走行する際にはエンジン走行するときと比較して同じ走行状態でもより低車速側のギヤ段が用いられるように、モータ走行時とエンジン走行時とでは異なる変速線が設定されている。
図4は、車両用駆動装置10を制御するための制御装置である電子制御装置40の概略構成と、その電子制御装置40に対する入出力信号とを説明するための図である。図4において、電子制御装置40は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御、自動変速機18の変速制御、および電動機MG1、MG2の出力制御、およびロックアップクラッチLCのトルク容量制御などを実行する。具体的に、電子制御装置40は、相互に連携した複数のECU、すなわち、駆動装置10の走行全体を制御するHVECUと、第1電動機MG1および第2電動機MG2の駆動制御を行うMGECUと、エンジン12の駆動制御を行うエンジンECUと、自動変速機18の変速制御を行う変速機ECUとを含んで構成されている。なお、これらは必ずしも別個に構成される必要はなく、1つのECUで構成されていても構わない。
また、図4に示すように、電子制御装置40には、エンジン回転速度センサ42からエンジン回転速度Neを表す信号、第1電動機回転速度センサ44から第1電動機回転速度Nmg1を表す信号、タービン回転速度センサ46からタービン回転速度Ntを表す信号、第2電動機回転速度センサ48から第2電動機回転速度Nmg2を表す信号、車速センサ50から車速Vに対応する出力軸34の回転速度である変速機出力回転速度Noutを表す信号、ステータ回転速度センサ51からステータ回転速度Nsを表す信号、アクセル開度センサ52からアクセル開度Accを表す信号、油温センサ56からトルクコンバータ16および自動変速機18などを作動させる為の作動油の温度である作動油温THoilを表す信号、バッテリセンサ58から蓄電装置36のバッテリ温度THbat、バッテリ充放電電流Ibat、バッテリ電圧Vbat、およびそれらに基づいて決定される蓄電装置36の充電容量SOCを表す信号、シフトポジションセンサ59からシフトポジションPshを表す信号などがそれぞれ供給される。また、電子制御装置40からは、第1電動機MG1の駆動電流、第2電動機MG2の駆動電流、エンジン12の電子スロットル弁の開度θth(以下、スロットル弁開度θthという)、自動変速機18が有するクラッチC1、C2を係合させる各クラッチ油圧、自動変速機18が有するブレーキB1、B2を係合させる各ブレーキ油圧、ロックアップクラッチLCを係合させるロックアップクラッチ油圧PLUなどを表す各種出力信号(例えばエンジン出力制御信号、電動機出力制御信号、油圧制御信号など)が各装置(例えばエンジン12、インバータ38、油圧制御回路35など)にそれぞれ供給される。
図5は、電子制御装置40の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5において、変速制御部70は、例えば図3に示すような予め記憶されたアップシフト線およびダウンシフト線を有する公知の関係(変速線図、変速マップ)から、実際のアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて自動変速機18の変速判断を行い変速制御を実行する。
エンジン動作点制御部72は、例えばエンジン走行時において、第1電動機MG1を制御することによりエンジン12の動作点を、エンジン12の燃料消費率が最小となる動作点に移動することで、燃費悪化を抑制する。
図6は、第1電動機MG1を制御することによりエンジン動作点を燃料消費率が最小となる動作点P03に変更した状態を示している。図6において、破線L01は、トルクコンバータ16の速度比e(=Nt/Np)に応じてポンプ翼車16pに生じる入力側負荷トルクであるポンプトルクTpを示している。ポンプトルクTpは、ある一定のタービン回転速度Ntの下では、破線L01で示すようにエンジン回転速度Neとの関係になる。その破線L01で示すポンプトルクTpとエンジン回転速度Ne(=Np)との関係は、上記速度比eの関数であるトルクコンバータ16の容量係数Cを用いて表せば、「Tp=C×Ne2」という式が成立する関係である。従って、図6に示すように、ポンプトルクTpはエンジン回転速度Neが高いほど大きくなる。
また、図6の実線L02は、必要エンジンパワーPe*すなわちエンジン出力Pe(単位は例えばkW)の目標値である目標エンジン出力Pe*をある一定値としエンジン出力Peがその目標エンジン出力Pe*に収束するように制御されたときのエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を示す等パワー曲線である。図6にはエンジン動作点がその等パワー曲線(実線L02)上で任意に設定される例が示されている。図6において、ポンプトルクTpとエンジン回転速度Neとの関係が破線L01で示され且つエンジン出力Peが実線L02で示す目標エンジン出力Pe*にされる場合には、第1電動機MG1の出力トルクTmg1(以下、第1電動機トルクTmg1という)が発生させられないとすればエンジン動作点は点P01になる。
一方、第1電動機MG1を発電動作させ第1電動機トルクTmg1を負回転方向に発生させればエンジン動作点を変更することができる。例えば図6に示すように、第1電動機トルクTmg1をT01だけ発生させた場合には、エンジン動作点を点P02に変更することができる。要するに、本実施例の車両用駆動装置10では、エンジントルクTeと第1電動機トルクTmg1との和がポンプトルクTpと釣り合うように、すなわち「Tp=Te+Tmg1(図6のTmg1は負の値)」という関係が成立するように、第1電動機トルクTmg1が調節されることで、エンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されることなく任意に変化させることが可能である。このように第1電動機MG1を発電動作させる場合には、その第1電動機MG1によって発電された電力は蓄電装置36に充電されてもよいが、基本的には第2電動機MG2に供給されて第2電動機MG2が駆動される。すなわち、車両用駆動装置10は、エンジン12と駆動輪26との間において、第1電動機MG1によって回生された電力を第2電動機MG2に供給して電気的に動力(単位は例えばkW)が伝達される電気パスと、トルクコンバータ16を介して機械的に動力が伝達される機械パスという互いに並列である2つの動力伝達経路を備えている。
また、図6において、エンジン最少燃料消費率線LFLは、エンジン12の燃料消費率が最小となるように予め実験的に定められたエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を表すエンジン12の動作曲線であり、言い換えれば、エンジン12の燃費向上に最適な動作点である燃費最適点の連なりである。従って、このエンジン最少燃料消費率線LFL上でエンジン12を作動させることで燃費が向上することとなる。エンジン動作点制御部72は、図6に示すような予め定められたエンジン最少燃料消費率線LFL上で目標エンジン出力Pe*が達成されるエンジン動作点P03を目標エンジン動作点として逐次決定する。なお、目標エンジン出力(必要エンジンパワー)Pe*は、運転者が車両に対して要求する出力であり、運転者の出力要求に対応できるように予め実験的に定められた関係からアクセル開度Accと車速Vとに基づいて逐次決定されるものであり、例えばその目標エンジン出力Pe*はアクセル開度Accが大きいほど大きく決定される。そして、エンジン動作点制御部72は、第1電動機MG1を制御することにより、エンジン動作点を決定された燃費最適点P03に変更する。
エンジン始動制御部74は、例えば第2電動機MG2によるモータ走行時において、エンジン12を始動させる判断が為されると、エンジン12のクランク軸14に連結された第1電動機MG1によってエンジン回転速度Neを自立運転可能な回転速度まで引き上げる。そして、エンジン回転速度Neが前記自立運転可能な回転速度に到達すると、エンジン12を点火させてエンジン12を始動させる。すなわち、エンジン始動制御部74は、第1電動機MG1をエンジン12のスタータモータとして機能させる。
ところで、本実施例のハイブリッド車両8の駆動装置10において、エンジン12と駆動輪17との間の動力伝達経路上でトルク変動が発生する。例えばエンジン始動時において第1電動機MG1によってエンジン回転速度Neを自立運転可能な回転速度まで引き上げる際、エンジン12のピストンとシリンダの間の摩擦抵抗やシリンダ内の空気の周期的な圧縮、膨張などに起因してトルク変動が発生する。また、エンジン12の初爆や完爆後においてもエンジン12の爆発変動などに起因してトルク振動すなわちトルク変動が発生する。これに対して、本実施例の駆動装置10では、第1電動機MG1および第2電動機MG2を用いてそのトルク変動を低減する制振制御を実施することができる。しかしながら、前記制振制御を実施するに際して、第1電動機MG1および第2電動機MG2が出力する制振トルクをどのように分担するかについて最適な制御方法が提案されていなかった。そこで、本実施例では、第1電動機MG1および第2電動機MG2による制振制御の制振トルクの分担を適宜設定することによって、効率のよい制振制御を実行する。以下、本発明の要部である制振制御部76を中心に説明する。
制振制御部76は、エンジン始動制御中であるか否か、エンジン停止中であるか否か、アクセルペダルのオン・オフ切換操作が為された否か、アクセルペダルの急踏み込みによる急加速操作が為された否か等に基づいて、トルク変動の発生を判断する。そして、制振制御部76は、トルク変動の発生を判断すると、第1電動機MG1および第2電動機MG2を用いて、発生した変動トルクとは逆位相の制振トルクを付与することで、トルク変動を抑制する。
制振制御部76は、例えばエンジン回転速度Neの指令値Ne*と実際のエンジン回転速度Neとの差分である回転変動量ΔNe(Ne*-Ne)を逐次算出しており、予め求められて記憶されている前記回転変動量ΔNeと変動トルクとの関係マップに基づいてトルクコンバータ16の入力側回転部材であるポンプ翼車16pに伝達される変動トルクTvibを算出する。そして、算出された変動トルクTvibを相殺する制振トルクTcontを第1電動機MG1および第2電動機MG2から出力する。
ここで、本実施例の駆動装置10においては、エンジン12から発生するトルク変動は、トルクコンバータ16を介してタービン軸20側に伝達される。なお、タービン軸20側に伝達される変動トルクTvib'は、下式(1)で算出される。式(1)において、Cは容量係数を示しており、速度比e(=Nt/Np)に応じて変化する。従って、変動トルクTvibはトルクコンバータ16の特性に応じて変化する。
Tvib'=τ×(Ne*-Ne)2・・・(1)
例えば、ポンプ翼車16pの回転速度Npとタービン翼車16tの回転速度Ntとの比である速度比e(=Nt/Np)が小さくなると、タービントルクTtとポンプトルクTpとの比であるトルク比t(=Tt/Tp)および容量係数Cが大きくなる。すなわち、トルクコンバータ16のトルク増幅が大きくなる。従って、エンジン21で発生したトルク変動がトルクコンバータ16の入力されると、トルクコンバータ16の流体伝動時にトルク変動減衰(吸収)効果があるものの、トルク増幅機能の効果が大きいのでトルク増幅されてタービン軸20に伝達されてしまう。一方、トルクコンバータ16の速度比eが大きい場合、トルク比tおよび容量係数Cが小さくなるので、エンジン12で発生したトルク変動がトルクコンバータ16に入力されると、トルクコンバータ16によるトルク増幅が殆どなく、トルクコンバータ16の流体伝動時のトルク変動減衰作用によって減衰されてタービン軸20に伝達される。これを踏まえて、制振制御部76は、制振制御において第1電動機MG1および第2電動機MG2の制振トルクTcontの割合を速度比eに応じて変更する。
制振制御部76は、速度比eが小さい場合、第1電動機MG1による制振トルクTcont1の割合を高くする。速度比eが小さい場合、トルクtが大きくなるため、ポンプ翼車16pに入力される変動トルクTvibがトルクコンバータ16を介して増幅されてタービン軸20に出力(Tvib')される。従って、例えば第2電動機MG2によって制振制御を実施する場合、必要となる制振トルクTcont2が大きくなるので、このような場合には、第1電動機MG1による制振制御すなわち制振トルクTcont1の割合を高めることで効率よくトルク変動が低減される。このように、速度比eが大きい場合、トルクコンバータ16のポンプ翼車16pに連結されている第1電動機MG1による制振制御(制振トルクTcont1)の割合を高めることで、トルク増幅される前に変動トルクTvibを第1電動機MG1によって低減する。これより、トルク変動が効率よく低減される。
制振制御部76は、速度比eが大きい場合、第2電動機MG2による制振トルクTcont2の割合を高くする。速度比eが大きい場合、トルク比tが小さくなるので、トルクコンバータ16のトルク増幅作用が小さくなり、トルクコンバータ16の流体伝動時に生じるトルク変動減衰作用の効果が大きくなる。従って、変動トルクTvibがトルクコンバータ16を介して減衰されてタービン軸20に出力される。このような場合には、第2電動機MG2の制振トルクTcont2も小さくて済むので、制振制御部70は、第2電動機MG2の制振制御(すなわち制振トルクTcont2)を割合を高めて制振制御を実行する。
また、制振制御部76は、エンジン停止時乃至エンジン始動制御時(エンジン自立運転前)において、蓄電装置36の充電容量SOCやバッテリ温度THbatに基づいて決定される入出力可能電力によって出力可能な走行パワーPと、運転者の車速Vやアクセル開度Accに基づいて決定される要求走行パワーP*との差分(=P−P*)が小さいほど、第1電動機MG1による制振制御(すなわち制振トルクTcont1)の割合を高くする。エンジン停止乃至エンジン始動制御時(エンジン自立運転前)においては、第2電動機MG2によって車両が駆動される。従って、入出力可能電力による走行パワーPと、運転者の要求走行パワーP*との差分(=P−P*)が小さくなると、第2電動機MG2によって出力可能な制振トルクTcont2が小さくなる。このような場合には、制振制御部76は、第1電動機MG1による制振制御の割合を高めることで、トルク変動を効率よく抑制する。
また、制振制御部76は、蓄電装置36の充電容量SOCやバッテリ温度THbatに基づいて設定される入出力可能電力による出力可能な走行パワーPが小さいほど、第1電動機MG1による制振制御の割合を高くする。前記入出力可能電力による出力可能な走行パワーPが小さくなると、第2電動機MG2によって出力可能な制振トルクTcont2も制限される。従って、前記走行パワーPが小さくなると、第1電動機MG1による制振トルクTcont1の割合を高めることで、トルク変動を効率よく抑制する。
また、制振制御部76は、トルクコンバータ16に設けられているロックアップクラッチLCで生じる差回転Nlc(=Np-Nt)を逐次算出し、その差回転Nlcに応じて第1電動機MG1による制振制御の割合を変更する。例えば、差回転Nlcが小さくなるほど第1電動機MG1の制振制御の割合を高くする。
図7は、速度比eと制振制御実施時における第1電動機MG1および第2電動機MG2の制振トルクTcontの分担比fとの関係を示している。図7に示す分担比fは、制振制御実施時における第1電動機MG1の制振トルクTcont1と第2電動機MG2の制振トルクTcont2との割合を示している。例えば分担比が1.0である場合には、第1電動機MG1の制振トルクTcont1のみで制振制御を実施し、第2電動機MG2から出力される制振トルクTcont2は零であることを示している。また、分担比が0である場合には、第2電動機MG2の制振トルクTcont2のみで制振制御を実施し、第1電動機MG1から出力される制振トルクTcont1は零であることを示している。
図7の実線で示すように、速度比eが零である場合、分担比が1.0となっている。すなわち、第1電動機MG1の制振トルクTcont1のみによって制振制御が為される。なお、速度比eが零である場合、トルク比tが最大となるので、第1電動機MG1による制振制御が効果的である。また、速度比eが増加するほど、分担比fが低下している。すなわち、速度比eが大きくなるほど、第2電動機MG2による制振制御(制振トルクTcont2)の割合が大きくなる。なお、図7では、速度比eが所定値を超えると、分担比fが零を超える値に収束しているが、分担比fは零まで低下しても構わない。
図7の破線は、前記入出力可能電力により出力可能の走行パワーPと、運転者の要求走行パワーP*との差分(=P−P*)が小さい場合に対応している。前記差分が小さくなると、実線で示す差分がそれよりも大きい場合に比較して、分担比fが高い値とされている。前述したように、前記差分が小さい状態では、第2電動機MG2によって出力可能な制振トルクTcont2は小さくなる。これに対して、分担比fを高くして、第1電動機MG1による制振トルクTcont1の割合を高くすることで、第1電動機MG1からの制振トルクTcontによってトルク変動が効果的に低減される。
図8は、電子制御装置40の要部すなわち第1電動機MG1および第2電動機MG2によって効率よく制振制御を実施する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。なお、図8のフローチャートは、エンジン始動制御時における制振制御を説明するものであり、図8の各ステップ(SA1〜SA5)は、何れも制振制御部76に対応している。
図8において、ステップSA1(以下、ステップを省略)において、エンジン始動制御中であるか否かが判断される。この判断は、例えばエンジン12を始動させる指令が出力されて第1電動機MG1によってエンジン回転速度Neを引き上げる制御を実行中であれば肯定される。SA1が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。SA1が肯定される場合、SA2に進み、トルク変動が生じたか否かが判断される。トルク変動は、例えばエンジン始動制御時であることに基づいて肯定的に判断される。或いは、例えばエンジン回転速度Neを引き上げる際のエンジン回転速度Neの指令値Ne*と、実際のエンジン回転速度Neとの差分(Ne−Ne*)である入力回転変動を逐次検出し、その差分が予め設定されている閾値を超えた場合にトルク変動が発生したものと判断する。SA2が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。
SA2が肯定される場合、SA3に進み、速度比e(=タービン回転速度Nt/ポンプ回転速度Np)が算出される。また、SA3において、蓄電装置36の入出力可能電力に基づく出力可能な走行パワーPと、要求走行パワーP*と、それらの差分(P-P*)が算出される。そして、SA4では、SA3で算出された速度比eおよび図7に示す速度比eと分担比fとの関係マップに基づいて分担比fが算出される。このとき、SA3において算出された出力可能な走行パワーPや、出力可能な走行パワーPと要求走行パワーP*との差分(P-P*)をさらに考慮して分担比fが最適な値に設定される。SA5では、SA4で決定された分担比に応じて第1電動機MG1の制振トルクTcont1および第2電動機MG2の制振トルクTcont2を出力する指令が出力される。
図9は、電子制御装置40による制御作動の作動状態を示すタイムチャートであり、具体的には、エンジン始動時の制振制御についての作動状態が示されている。t1時点において、エンジン12を始動させる判断が為されると、第1電動機MG1によるエンジン回転速度Neの引き上げが開始される。これより、t1時点乃至t2時点においてエンジン回転速度Neが上昇している。この第1電動機MG1によってエンジン回転速度Neを引き上げる過渡期において、図9に示すように、エンジン12のトルク変動がポンプ翼車16p(ポンプインペラ)に伝達される。なお、エンジン始動時のトルク変動は、エンジン12のピストンとシリンダ間の摩擦抵抗やシリンダ内の空気の圧縮、膨張に起因して発生する。
図9において、実線が速度比eが小さい状態を示し、破線が速度比eが大きい状態を示している。速度比eが小さい状態では、トルク比tが大きくなるため、実線で示すように、ポンプ翼車16pのトルク変動が増幅されてタービン翼車16t(タービンランナ)に伝達される。一方、速度比eが大きい状態では、トルク比tが小さくなるため、破線で示すように、ポンプ翼車16pのトルク変動が減衰されてタービン翼車16tに伝達される。また、図9では、速度比eが小さい場合において、実線で示すように分担比を1.0、すなわち第1電動機MG1の制振トルクTcont1で制振制御を実行している。これより、出力軸34側に伝達されるトルク変動(出力軸トルク変動)が効果的に低減される。また、速度比eが大きい場合には、破線で示すように分担比を零、すなわち第2電動機MG2の制振トルクTcont2で制振制御を実行している。このような場合には、トルク変動が減衰されるので、第2電動機MG2の制振トルクTcont2も小さくて済み、第2電動機MG2の制振トルクTcont2によって出力軸34側に伝達されるトルク変動(出力軸トルク変動)が効果的に減衰される。
ここで、図8に示すフローチャートは、エンジン始動制御時に発生するトルク変動を低減する制振制御を説明するものであったが、制振制御は、エンジン駆動時であっても実行することができる。制振制御部76は、エンジン駆動中にトルク変動の発生を検出すると、制振制御において第1電動機MG1が出力可能な余裕トルクTrest1および第2電動機MG2が出力可能な余裕トルクTrest2をそれぞれ算出する。
第1電動機MG1の余裕トルクTrest1は、第1電動機MG1の予め第1電動機回転速度Nmg1に応じて定格的に設定されている最大トルクT1maxに、第1電動機MG1が出力しているトルクTmg1との差分(=T1max-Tmg1)で算出される。また、蓄電装置36の入出力可能電力が制限されている場合には、最大トルクT1maxがさらに制限されるので、それに応じて余裕トルクTrest1がさらに制限される。なお、第1電動機MG1が出力しているトルクTmg1は、図6に示したエンジン動作点を例えば燃費最適点P03とするために出力される回生トルクである。
第2電動機MG2の余裕トルクTrest2は、第2電動機MG2の予め第2電動機回転速度Nmg2に応じて定格的に設定されている最大トルクT2maxに、走行用に出力されている走行トルクTmg2との差分(=T2max-Tmg2)で算出される。また、蓄電装置36の入出力可能電力が制限されている場合には、それに応じて余裕トルクTrest2がさらに制限される。
制振制御部76は、さらに制振制御に必要な制振トルクTcontを算出する。この制振トルクTcontは、例えばエンジン回転速度Neの指令値Ne*と実際のエンジン回転速度Neとの差分(Ne-Ne*)から予め求められて記憶されている前記差分と制振トルクTcontとの関係マップ等によって求められる。そして、制振制御部76は、現在の速度比eから算出される分担比fより、第1電動機MG1および第2電動機MG2が出力すべき制振トルクTcont1、Tcont2をそれぞれ算出し、前記算出された第1電動機MG1の余裕トルクTrest1および第2電動機MG2の余裕トルクTrest2によって制振トルクTcont1,Tcont2を出力可能か否かを判断する。ここで、制振トルクTcont1が第1電動機MG1の余裕トルクTrest1を超える場合、もしくは制振トルクTcont2が第2電動機MG2の余裕トルクTrest2を超える場合、制振制御によってトルク変動を十分に低減することが困難となる。
そこで、制振制御部76は、制振制御に必要とされる制振トルクTcontが前記第1電動機MG1および前記第2電動機MG2によって確保できる制振トルクTcontを超える場合、すなわち制振制御に必要とされる制振トルクTcontが第1電動機MG1および第2電動機MG2の余裕トルクTrest1,Trest2で対応できない場合、電気パス量を小さくする。図6に示すように、例えばエンジン動作点が燃費最適点P03で運転中に、トルク変動が発生し、且つ、第1電動機MG1の余裕トルクTrest1および第2電動機MG2の余裕トルクTrest2では十分な制振制御が実行できないと判断されると、第1電動機MG1のトルクTmg1を低下させ、例えばエンジン動作点を点P02に変更する。これより、第1電動機MG1のトルクTmg1が低下するので、第1電動機MG1の余裕トルクTrest1大きくなり、制振制御を実行可能な制振トルクTcont1が確保される。また、電気パス量が小さくなると、機械パス量が増加するので、第2電動機MG2が出力するトルクTmg2も低下し、第2電動機MG2の余裕トルクTrest2も増加する。これより、第2電動機MG2についても余裕トルクTrest2が大きくなるので、制振トルクTcontが確保される。
ところで、電気パス量が小さくなると、第1電動機MG1のトルクTmg1(発電トルク、回生トルク)が小さくなるので、第1電動機MG1の回転速度Nmg1が上昇する。従って、第1電動機MG1の動作点が高回転側に移動することとなるので、第1電動機MG1の最大トルクT1maxが低下する。一般に、電動機は高回転速度側に移動するに従って、最大トルクが低下するためである。従って、最大トルクT1maxが低下するので、第1電動機MG1の余裕トルクTrest1も低下する可能性が生じる。これより、制振制御部76は、制振トルクTcontを確保できるように、第1電動機MG1の回転速度Nmg1が高いほど、電気パス量の低減量を小さくする。
図10は、電気パス量を低減した際の第1電動機MG1の制振トルクTcont1の影響を示している。なお、図10において矢印が第1電動機MG1の出力すべき制振トルクTcont1の大きさを示している。図10の「○」で示すエンジン12を図6の燃費最適点P03で運転させた場合において、走行時のトルクTmg1に矢印で示す制振トルクTcont1を加えた値が、第1電動機MG1の定格的に設定されている最大トルクT1maxを超える場合には、十分な制振制御が困難となる。このような場合には、電気パス量を低減し、例えばエンジン12の動作点を図6の動作点P02に変更することで、第1電動機MG1の運転点を図10の「●」で示す状態とする。これより、第1電動機MG1のトルクTmg1と制振トルクTcont1を加えた値が最大トルクT1maxの範囲内となり、制振トルクTcont1の確保が可能となる。従って、制振制御によって動力伝達経路上で発生するトルク変動を低減することができる。なお、第1電動機MG1の回転速度Nmg1が上昇するのは、電気パス量の減少に従って、第1電動機MG1のトルクTmg1(回生トルク)が減少するためである。
また、さらに電気パス量を小さくして、第1電動機MG1を図10の「□」で示す運転点に変更しても制振トルクTcont1の確保が可能となる。しかしながら、さらに電気パス量を小さくして、第1電動機MG1を図10の「■」で示す運転点まで変更すると、第1電動機MG1の回転速度Nmg1の増加に伴って最大トルクT1maxが低下するため、走行による第1電動機MG1のトルクTmg1と制振トルクTcont1との和が最大トルクT1maxを超えてしまう。これより、制振制御部76は、第1電動機MG1の制振トルクTcont1が余裕トルクTrest1を超えない範囲で電気パス量が小さくする。なお、図10は、第1電動機MG1について説明が為されているが、第2電動機MG2についても同様である。
図11は、電子制御装置40の要部すなわち第1電動機MG1および第2電動機MG2によって効率よく制振制御を実施する制御作動を説明する他のフローチャートであって、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。なお、図11のフローチャートは、エンジン駆動時における制振制御を説明するものであり、図11の各ステップ(SB1〜SB6)は、何れも制振制御部76に対応している。
図11において、ステップSB1(以下、ステップを省略)において、エンジン駆動中であるか否かが判断される。SB1が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。SB1が肯定される場合、SB2に進み、トルク変動が生じたか否かが判断される。SB2が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。SB2が肯定される場合、SB3において、速度比e(=タービン回転速度Nt/ポンプ回転速度Np)、その速度比eに基づく分担比fが算出される。さらに、第1電動機MG1の余裕トルクTrest1(=第1電動機MG1の最大トルクT1max-第1電動機MG1の回生トルクTmg1)、および第2電動機MG2の余裕トルクTrest2(最大トルクT2max-走行トルクTmg2)が算出される。
SB4では、SB3で算出された各余裕トルクTrest1、Trest2によって必要とされる制振トルクTcontを確保できるか否かが判断される。SB4が肯定される場合にはSB5に進み、SB4が否定される場合にはSB6に進む。SB6では、SB5において制振トルクTcontの確保が困難と判断されたことに従い、電気パス量を低減することで、各電動機の余裕トルクを増加させて制振トルクTcontを確保させる。そして、SB5において、第1電動機MG1および第2電動機MG2の制振トルクTcont1,Tcont2を出力する指令が出力される。
上述のように、本実施例によれば、トルクコンバータ16の速度比eが大きい場合、トルクコンバータ16のトルク比tが小さいので、トルクコンバータ16の流体によるトルク変動吸収作用によってエンジン12からのトルク変動が減衰される。従ってトルクコンバータ16のタービン翼車16tには、減衰されて振幅の小さいトルク変動が出力されるので、第2電動機MG2による制振制御の割合を大きくしてもトルク変動を低減することができる。一方、トルクコンバータ16の速度比eが小さい場合には、トルクコンバータ16のトルク比tが大きくなるので、エンジン12からのトルク変動がトルクコンバータ16のトルク増幅作用によって増幅してタービン翼車16t側に出力される。従って、第2電動機MG2では増幅されたトルク変動の制振が困難であるため、第1電動機MG1による制振制御の割合を大きくし、トルクコンバータ16によってトルク増幅される前に第1電動機MG1によって制振することで、トルク変動を低減することができる。このように、トルクコンバータ16の速度比eが大きくなるほど、第2電動機MG2による制振制御の割合を大きくすることで、効率よく制振効果を得ることができる。
また、本実施例によれば、例えば、電気パスによる第1電動機MG1のトルクTmg1が大きく、制振制御に必要なトルクTcont1を上乗せすると、第1電動機MG1の最大トルクT1maxを超える場合には、制振トルクTcontの確保が困難となる。このような場合には、電気パス量を小さくすることで、電気パスによる第1電動機MG1のトルクTmg1が小さくため、その分だけ第1電動機MG1の出力可能な余裕トルクT1restが大きくなる。従って、第1電動機MG1において制振制御に必要な制振トルクTcont1を確保することができる。同様に、第2電動機MG2についても電気パス量が小さくなることで、第2電動機MG2の出力可能な余裕トルクTrest2が増加し、制振制御に必要な制振トルクTcontを確保することができる。
また、本実施例によれば、電気パス量が低減されると、第1電動機MG1の回転速度Nmg1が上昇する。ここで、第1電動機MG1の回転速度Nmg1が高いほど、第1電動機MG1の最大トルクT1maxが減少することから、第1電動機MG1の回転速度Nmg1が高い場合には、電気パス量の低減量を小さくして第1電動機MG1の回転速度Nmg1の上昇を抑制することで、第1電動機MG1の最大トルクT1maxの低下を抑制する。これより、第1電動機MG1の制振トルクTcont1の確保が可能となる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例において、図10は第1電動機MG1について説明が為されているが、第2電動機MG2についても図10に示すような関係に基づいて第1電動機MG1と同様の制御を実施しても構わない。
また、前述の実施例では、第1電動機MG1または第2電動機MG2の余裕トルクTrest1,Trest2が制振トルクTcont1,Tcont2を超えると、電気パス量を低減したが、この電気パス量を低減する前に分担比fを変更するステップを追加しても構わない。具体的には、電気パス量を低減しなくとも分担比fを変更するのみで制振トルクTcontを確保できるのであれば、その分担比fを変更する制御を優先して実施しても構わない。
また、前述の実施例では、ロックアップクラッチLCの差回転Nlc(=Np-Nt)が小さくなるほど、第1電動機MG1の制振制御の割合を高くするものとしたが、差回転Nlcが大きくなるほど第1電動機MG1の制振制御の割合を高くするものとしても構わない。
また、ポンプ翼車16pと第1電動機MG1とは直接連結されているが、歯車機構等を介して間接的に連結されていても構わない。また、タービン翼車16tと第2電動機MG2とは直接連結されているが、歯車機構等を介して間接的に連結されていても構わない。
また、前述の実施例では、流体伝動装置としてトルクコンバータ16が使用されているが、トルクコンバータ16に限定されず、流体伝動装置として流体継ぎ手が使用されても構わない。
また、前述の実施例では、トルクコンバータ16の速度比eが大きいほど、第2電動機MG2による制振制御の割合を大きくし、さらに、制振制御に必要とされる制振トルクTcontが、第1電動機MG1および第2電動機によって確保できる制振トルクTrest1,Trest2を超える場合には、電気パス量を小さくするものであったが、制振制御に必要とされる制振トルクTcontが、第1電動機MG1および第2電動機MG2によって確保できる制振トルクTrest1,Trest2を超える場合には、トルクコンバータ16の速度比eに応じて第2電動機MG2による制振制御の割合を変更することなく、電気パス量を小さくするものであっても構わない。このようにした場合であっても電気パス量を小さくするため、第1電動機MG1および第2電動機MG2によって確保できる制振トルクTrest1,Trest2が大きくなるので、制振制御の実施が可能となる。
また、前述の実施例では、第2電動機MG2が、エンジン12と駆動輪17との動力伝達経路上に連結されていたが、本発明を、第2電動機MG2が駆動輪17と異なる駆動輪(例えば後輪)に連結されているe−4WD形式の車両に適用しても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。