JP2010111317A - ハイブリッド駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】運転条件に応じた十分なトルクを補填して駆動軸に出力し、第2のモータの小型化を可能とするハイブリッド駆動装置を提供する。
【解決手段】エンジン1の動力は、プラネタリギヤ21によって電気駆動系統20と機械駆動系統30とに分配される。電気駆動系統20は、分配された動力で発電する第1のモータ22、および、電力で駆動され車輪3に動力を出力可能な第2のモータ24を備える。機械駆動系統30は、分配された動力で回転するポンプ11、ポンプ11とともに流体継手を構成するタービン12、ケース14内の流体を介してタービン12のトルクを増幅可能なステータ13、およびタービン12のトルクを出力する出力部16を備えたトルク増幅手段10を有する。出力部16をケース14に係止するロックアップクラッチ15を解放すると、機械駆動系統30の出力トルクが増幅され、車輪3に出力されるトルクを増大させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ハイブリッド駆動装置に関する。
従来、車両の駆動制御装置として、エンジンの動力を、速度比を変えて駆動軸に伝達するとともに、電力変換を伴って当該駆動軸に出力するハイブリッド駆動装置が知られている。(例えば、特許文献1など。)
従来のハイブリッド駆動装置の一例としては、エンジンの動力を、動力分配手段を用いて電気パスと機械パスとの二通りの伝達経路に分配し、両経路から併せて駆動軸に出力するハイブリッドシステムを採用したものが挙げられる。このハイブリッドシステムでは、電気パスにエンジンの動力が分配されると、この動力によって第1のモータが発電する。ここで生じた電力は、バッテリに蓄電されるか、インバータによる電力変換を経て、駆動軸に連動する第2のモータの駆動に用いられる。一方、残余のエンジンの動力は、機械パスを通じて機械的に出力され、駆動軸を直接回転させる。第2のモータは、エンジンの回転数によらず、車輪を駆動する駆動力としてのトルクを駆動軸に出力する。したがって、ハイブリッド駆動装置の利点は、運転条件に応じて動力分配の比率を適切に設定し、エンジンから機械的に取り出されるトルクに代えてまたは加えて、第2のモータのトルクを駆動軸に出力することで、所望のトルクを得るために必要なエンジンの動力出力を節減できるところにあった。
特開平8−308012号公報
しかしながら、一般に、第2のモータの出力可能なトルクの大きさは、当該第2のモータの体格によって決まる。また、第2のモータのトルクが大きくなると、当該第2のモータを駆動するためには、より大きな電流を変換可能な高容量のインバータが必要となる。このため、例えば大型のエンジンを搭載した車両に対応させるなど、性能の高いエンジンに対し従来のハイブリッド駆動装置を適用すると、電気パスを併用した状態で十分なトルクの出力が可能となるように構成することが前提である以上、第2のモータを大型化しインバータの容量を増大させることが不可避となってしまう。
よって、本発明の目的は、エンジンの動力を変換した電力にて駆動される第2のモータが出力するトルクを増大させることなく、運転条件に応じた十分なトルクを補填して駆動軸に出力し、第2のモータの小型化を可能とするハイブリッド駆動装置を提供するところにある。
請求項1に記載のハイブリッド駆動装置は、エンジンの動力の一部を利用した発電に用いられる第1のモータ、電力で駆動されて駆動軸への動力出力を行う第2のモータ、エンジンの動力を第1のモータと動力伝達軸とに分配する動力分配手段、そして、動力伝達軸に分配された動力を駆動軸に出力する際にトルク増幅を行うことが可能なトルク増幅手段を備えている。上述したように、第1および第2のモータは電気パスに設けられており、エンジンから動力分配手段を介して従来同様の電気パスに動力を分配する際、電気パスとは別に設けられた伝達経路、すなわち従来の機械パスに対応した経路にも、残余の動力が分配される。ここで、本発明のハイブリッド駆動装置によると、エンジンの残余の動力が分配される動力伝達軸を有する経路にトルク増幅手段を設けることにより、当該経路に分配される動力のトルクを増幅して駆動軸に出力することが可能な構成とした点で、従来の機械パスと異なっている。
したがって、エンジンの動力から第2のモータにて取り出されるトルクは必ずしも大きくする必要がなく、急加速時に例示されるような高トルクを必要とする高負荷の運転条件では、トルク増幅手段を用いて電気パスとは別経路からも大きなトルクを取り出して補填し、十分なトルクを駆動軸に出力することができる。このように、第2のモータのみに頼ることなく高効率で大きなトルクを出力することが可能となるため、当該第2のモータを小型化してハイブリッド駆動装置を構成することができる。
請求項2に記載のハイブリッド駆動装置によると、トルク増幅停止手段を備えているため、上述したトルク増幅手段の作動を停止させることができる。また、請求項3に記載のハイブリッド駆動装置では、トルク増幅停止手段によって、トルク増幅手段の作動を運転条件に応じて選択的に停止させることが可能となる。このようなトルク増幅停止手段を用い、必要なトルクが比較的小さい運転条件ではトルク増幅手段によるトルク増幅を行わないように構成すれば、必要時にのみトルク増幅による大きなトルクを補うことで、エンジンの動力からより効率よく所望のトルクを取り出して出力することが可能である。なお、請求項2以降に記載のトルク増幅停止手段は、もちろんトルク増幅手段を直接停止させるものであってもよいが、これに限られない種々の構成で具現化される。例えば、当該トルク増幅手段に動力伝達軸からエンジンの動力が伝達されないように、電気パスおよび動力伝達軸以外に他の伝達経路を設けて動力分配を行う構成であってもよい。
ここで、請求項4に記載のハイブリッド駆動装置が有するトルク増幅停止手段は、動力伝達軸と駆動軸とを直結することによりトルク増幅手段の作動を停止するためのロックアップクラッチとして、当該トルク増幅手段に設けられている。この構成は、ロックアップクラッチがトルク増幅手段の作動を停止した状態において、エンジンの動力の一部が電力変換を経て第2のモータで駆動軸に出力される電気パスと、残余の動力が動力伝達軸から駆動軸に機械的に出力される機械パスとにより、従来のハイブリッドシステムと同様に作動する。そして、ロックアップクラッチによる直結が運転条件に応じて解除されると、通常の運転条件における機械パスの動力伝達軸と駆動軸との間でトルク増幅手段が作動することにより、電気パスとは独立で大きなトルクを補填して駆動軸に出力することが可能となる。したがって、第2のモータを小型化したとしても、所望のトルクを駆動軸に出力することが可能となるようにハイブリッド駆動装置を構成することができる。
なお、請求項1から4では、エンジンからの動力が駆動軸に出力されるまでの伝達経路が「電気パス」「機械パス」という構成に限定されない記述をしたが、上述した本発明は、請求項5または6に示すように構成してもよい。すなわち、請求項5または6によると、電力変換を伴いエンジンの動力を駆動軸に出力する電気駆動系統、および、速度比を変えてエンジンの動力を当該駆動軸に伝達する機械駆動系統を有するハイブリッド駆動装置において、機械駆動系統の途中にトルク増幅手段を配置して本発明を構成することが例示されている。つまり、従来のハイブリッド駆動装置の「電気パス」を電気駆動系統とし、「機械パス」を機械駆動系統として、動力のトルクを増幅させて出力可能なトルク増幅手段を従来の「機械パス」の途中に配置すれば、電気パスから駆動軸に出力可能なトルクを増大させることを必要とせず、機械パスからも大きなトルクを補うことで十分なトルク出力を可能とするハイブリッド駆動装置を構成することができる。なお、請求項6の構成に対し、請求項2から4に示す構成のいずれかを採用して限定することもできる。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置の構成を図1−3に示す。
図1は、本実施形態の構成の概要を示す説明図であり、図2および図3は、本実施形態の概略構成をより具体的に示す構成図である。
図1に示すように、このハイブリッド駆動装置は、ガソリンを燃料として動力を入力する公知のエンジン1、動力を出力して車輪3を駆動する車輪側の駆動軸34、電力変換を伴って車輪側の駆動軸34に動力を出力する電気駆動系統20、速度比を変えて車輪側の駆動軸34に動力を伝達する機械駆動系統30、および、エンジン1の動力を電気駆動系統20と機械駆動系統30とに分配することが可能なプラネタリギヤ21を備える。このエンジン1は、吸気系から吸入した空気と燃料噴射弁から噴射されたガソリンとの混合気を燃焼室に吸入し、この混合気の爆発により押し下げられるピストンの運動をクランクシャフト29の回転運動に変換する。なお、上述した吸気系、燃料噴射弁、燃焼室およびピストンについては公知であるため、図示を省略する。
エンジン1のクランクシャフト29は、動力分配手段としてのプラネタリギヤ21に連結されている。図2および図3に示すように、プラネタリギヤ21は、クランクシャフト29の端部に結合されたキャリア25と、クランクシャフト29に軸心を貫かれて中空筒状に形成されたサンギヤ軸20inに結合されたサンギヤ26と、クランクシャフト29と同軸のリングギヤ軸30inに結合されたリングギヤ27と、キャリア25に回転軸を軸支されてサンギヤ26の周りを自転しながら公転する複数のピニオンギヤ28とを備えている。各ピニオンギヤ28は、サンギヤ26とリングギヤ27との間に配置されて両者と噛み合い、同一の軸心線に対して回転可能なキャリア25、サンギヤ26およびリングギヤ27の間で、回転の速度比を変えて動力を伝達するよう構成されている。
このプラネタリギヤ21では、サンギヤ26、リングギヤ27およびキャリア25にそれぞれ結合されたサンギヤ軸20in、リングギヤ軸30inおよびクランクシャフト29の3軸が動力の入出力軸とされ、3軸のうちいずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、残余の1軸に入出力される動力は決定された2軸へ入出力される動力に基づいて定まる。かかる構成により、プラネタリギヤ21は、クランクシャフト29から入力されるエンジン1の動力をサンギヤ軸20inとリングギヤ軸30inとに分配して出力する。図1によれば、サンギヤ軸20inは電気駆動系統20の入力軸であり、第1のモータ22の回転軸に相当する。また、リングギヤ軸30inは機械駆動系統30の入力軸であり、特許請求の範囲に記載の「動力伝達軸」に相当する。したがって、プラネタリギヤ21は、電気駆動系統20にエンジン1の動力の一部を入力し、機械駆動系統30にエンジン1の残余の動力を入力することで、特許請求の範囲に記載の「動力分配手段」として機能する。なお、上述したプラネタリギヤ21の3軸のうちいずれか2軸へ入出力される動力は、例えば、図示しない制御装置にて各ギヤの作動が制御されることにより、車両の運転状態に応じて決定されることが好ましい。
ここで、図1を参照して、本実施形態における電気駆動系統20および機械駆動系統30の構成を説明する。電気駆動系統20は、エンジン1の動力の一部により発電可能な第1のモータ22と、電力にて駆動され車輪側の駆動軸34に動力を出力可能な第2のモータ24とを備えている。本実施形態において、第1のモータ22および第2のモータ24は、発電機あるいは電動機として作動する公知の同期電動発電機であり、インバータ23を介して二次電池であるバッテリ2と電力のやりとりを行うように構成されている。本実施形態のインバータ23は、公知の三相電圧型インバータであり、第1のモータ22および第2のモータ24の一方で回生される電力を他方の駆動に利用できるように電力変換して出力する。また、インバータ23は、バッテリ2と第1のモータ22との間で、あるいは、バッテリ2と第2のモータ24との間でも、電力変換を行う。かかる構成により、バッテリ2は、第1のモータ22と第2のモータ24との電力収支で、生じた電力あるいは要求される電力によって充放電される。第2のモータ24は、その回転軸に相当する動力出力軸20outに動力を出力する。動力出力軸20outは、第2のモータ24の回転におけるトルクを、電気駆動系統20の出力トルクとして取り出す。
一方、機械駆動系統30は、その入力軸であるリングギヤ軸30inと、同軸の出力軸である動力出力軸30outとの間に、公知のトルクコンバータとして作動可能なトルク増幅手段10を備えている。つまり、機械駆動系統30の構成は、従来のハイブリッド駆動装置の「機械パス」の途中に、リングギヤ軸30inから入力されたトルクを増幅させて動力出力軸30outに出力可能なトルク増幅手段10を配置したものに相当する。
本実施形態のトルク増幅手段10は、流体トルクコンバータとして構成され、リングギヤ軸30inに結合されたケース14、ケース14と一体で回転するポンプ11、ポンプ11と対向して流体継手を構成するタービン12、ケース14内に満たされた作動流体の流れを整流するステータ13、タービン12の回転におけるトルクを動力出力軸30outに出力する出力部16を備えている。また、出力部16は、トルク増幅停止手段としてのロックアップクラッチ15を備えている。ロックアップクラッチ15は、出力部16に直結され、ケース14の内壁に対向して設けられている。図2および図3に示すように、ポンプ11とタービン12との間に配置されたステータ13は、ハイブリッド駆動装置を収容するハウジング19の内壁から延びて中空筒状に形成された固定軸18の外壁に、図示しない一方向クラッチを介して固定されている。かかる構成により、ステータ13は、ポンプ11と同一方向へのみ回転し、ポンプ11の回転速度に対するタービン12の回転速度の速度比が所定値以下の場合、ケース14内の作動流体を媒体としてポンプ11からタービン12に伝達される回転のトルクに加えて、タービン12の回転から受けた反力によるトルクをタービン12に出力する。このタービン12と一体で、動力出力軸30outとロックアップクラッチ15とに結合された出力部16が回転する。動力出力軸30outは、中空固定軸18の軸心を貫いてケース14外へ延び、出力部16を介して伝達されるタービン12のトルクを、機械駆動系統30の出力トルクとして取り出す。
ケース14内を流れる作動流体としての作動油は、エンジン1の動力で駆動される図示しないオイルポンプからポンプ11に供給されるとともに、ロックアップクラッチ15とケース14との間の空間にも導入される。ここで、ポンプ11側に導入された油圧は、ロックアップクラッチ15をケース14に締結させる方向に作用し、ロックアップクラッチ15とケース14との間の空間に導入された油圧は、ロックアップクラッチ15に対してケース14との締結を解放する方向に作用する。かかる構成により、ロックアップクラッチ15がケース14に締結されると、タービン12がポンプ11と一体で回転し、エンジン1から機械駆動系統30に分配された動力を機械的に動力出力軸30outへ出力するようになる。そして、ロックアップクラッチ15とケース14との締結が解除された場合にのみ、タービン12がポンプ11と独立して回転し、機械駆動系統30に分配された動力のトルクを増幅させて動力出力軸30outへ出力するようになる。つまり、ロックアップクラッチ15は、ケース14と出力部16とを機械的に連結させることにより、リングギヤ軸30inと動力出力軸30outとを直結してトルク増幅手段10の作動を停止させる機能を担う。なお、図2はロックアップクラッチ15の直結によりトルク増幅手段10の作動が停止している状態を示し、図3はロックアップクラッチ15の直結が解除されてトルク増幅手段10が作動可能となった状態を示している。
図1に示す電気駆動系統20の動力出力軸20outと機械駆動系統30の動力出力軸30outとは、模式的には別々の動力伝達経路からの出力軸となっているが、実際には図2および図3に示すとおり、同一軸として構成されている。この動力出力軸20outと動力出力軸30outとが、特許請求の範囲に記載の「駆動軸」に相当し、本実施形態においては、車輪側の駆動軸34に結合された動力伝達ギヤ32にチェーンベルト33を介して動力を伝達可能な動力取出ギヤ31の回転軸となっている。かかる構成により、電気駆動系統20と機械駆動系統30との双方から出力されたトルクを足し合わせて動力取り出しギヤ31を回転させるトルクとして出力し、動力伝達ギヤ32を介して車輪側の駆動軸34に伝達可能となっている。車輪側の駆動軸34は、この伝達されたトルクによって、図示しないディフェレンシャルギヤなどを介して車輪3を駆動する。したがって、本実施形態では、車輪側の駆動軸34もまた、動力出力軸20outおよび動力出力軸30outとともに、特許請求の範囲の「駆動軸」を構成する。
次に、上記の構成を備えた第1実施形態によるハイブリッド駆動装置の運転状態に応じた作動について説明する。
車両の発進時および低速走行時には、車輪側の駆動軸34の回転速度が小さく、かつ、車輪側の駆動軸34にある程度のトルクが出力されることが好ましい。そのため、あらかじめバッテリ2に蓄電された電力で第2のモータ24を駆動することにより、電気駆動系統20から出力されるトルクのみを車輪側の駆動軸34に出力して車輪3を駆動する。なお、第2のモータによる小さな動力のみで車両を低速走行させることが可能であるため、エンジン1の始動は必要としない。
車両の通常走行時には、車輪3の回転速度が大きく、エンジン1の回転速度に応じて動力出力軸30outに出力されるトルクの出力効率が良くなる。したがって、エンジン1を始動し、その動力で機械駆動系統30を介して車輪側の駆動軸34を回転させることが例示される。同時に、エンジン1の動力の一部をプラネタリギヤ21にて電気駆動系統20に分配し、第1のモータ22で電力を生じさせ、インバータ23を介して第2のモータ24の駆動に利用することで、電気駆動系統20と機械駆動系統30とから動力取出ギヤ31を介して車輪側の駆動軸34に出力されるトルクの和によって、車輪3を駆動することが好ましい。この状態では、機械駆動系統30に設けられたトルク増幅手段10において、ロックアップクラッチ15がケース14を係止しており、トルク増幅作用は停止している。
エンジン1を始動する際には、第1のモータ22をスターターとして利用することが例示される。具体的には、バッテリ2に蓄電された電力で第1のモータ22を駆動することによって、プラネタリギヤ21のサンギヤ26を回転させ、サンギヤ26の回転をピニオンギヤ28へ伝えてキャリア25に連結されたクランクシャフト29を回転させることで、エンジン1を始動することが可能である。また、エンジン1の駆動中は、プラネタリギヤ21を制御することにより、走行速度に応じて電気駆動系統20と機械駆動系統30とに振り分けられる動力の分配比率を適宜調節することがより好ましい。
車両の減速時や制動時には、車輪3が車輪側の駆動軸34、動力伝達ギヤ32、動力取出ギヤ31および動力出力軸30outを介して第2のモータ24を駆動させ、当該第2のモータ24は発電機として機能する。そして、第2のモータ24にて発電された電力によって、バッテリ2が蓄電される。なお、バッテリ2は、一定の充電状態を維持するように制御されることが好ましい。例えば、減速時や制動時以外でも、充電量が少なくなると、エンジン1の始動によって第1のモータ22が駆動されて電力を回生するようになり、生じた電力がバッテリ2に蓄電されることが例示される。
車両の加速時などの高負荷運転状態では、エンジン1の動力によるトルクと第2のモータ22のトルクとの双方によって動力出力軸20outおよび動力出力軸30outを含んでなる「駆動軸」を回転させ、大きなトルクにて車輪3を駆動する。通常運転時との違いは、第2のモータ24の駆動に備えてあらかじめバッテリ2に蓄電されてある電力を用い、エンジン1の回転により得られる大きなトルクに第2のモータ24のトルクを加えて、車輪側の駆動軸34に大きなトルクを出力することである。
ここで、ロックアップクラッチ15の直結によりトルク増幅手段10のトルク増幅作用が停止している図2の状態における加速は、従来のハイブリッド駆動装置でいう「電気パス」と「機械パス」とを併用した加速に相当する。このように加速を行う場合、エンジン1からクランクシャフト29に大きな動力が出力され、この大きな動力を電気駆動系統20と機械駆動系統30とに分配することが可能となる。しかしながら、第2のモータ24が出力可能とするトルクは、回転速度によらず当該第2のモータ24の体格に依存するため、第2のモータ24の回転速度が小さい状態では、エンジン1の出力の上昇に応じて第2のモータ24から車輪側の駆動軸34へ補填されるトルクは、エンジン1の出力がある大きさ以上になると、相対的に不十分となっていく。したがって、エンジン1の出力を上昇させると、第1のモータ22を高速で回転させて発電された電力の全てを第2のモータ24にて利用することができず、その結果、運転者の要求に見合った十分な大きさのトルクが得られず、緩やかな加速がなされることになる。
このような状態におけるエンジン1、第1のモータ22、およびリングギヤ軸30inの回転速度は、キャリア25、サンギヤ26、およびリングギヤ27の回転速度の共線図として図4に示されるとおりである。図4は、図2の状態におけるハイブリッド駆動装置の、入出力される動力とトルクとを示す概念図である。上向きの矢印は、エンジン1、トルク増幅手段10の出力部16、および第2のモータ24から出力されるトルクを表す。また、下向きの矢印は、図中に「MG1」と記載された第1のモータ22と「動力伝達軸」としてのリングギヤ軸30inとに分配される動力のトルクを表す。各トルクの大きさは、各矢印の太さによって示される。また、「駆動軸」としての車輪側の駆動軸34に出力されるトルクは、電気駆動系統20と機械駆動系統30とに対応する2本の矢印に分けて示され、実際には、図中に「T/C」と記載された出力部16のトルクと、図中に「MG2」と記載された第2のモータ24のトルクとの和として出力される。「動力伝達軸」の回転速度と「駆動軸」の回転速度とは、両者に対応する矢印を結ぶ点線で示すように、ほぼ一致している。
一方、急加速などの目的でさらに高負荷の運転状態とする場合には、図示しないオイルポンプの作動を制御することにより、ロックアップクラッチ15とケース14との間に作動油を導入することで、図3に示すように、ロックアップクラッチ15によるケース14と出力部16との連結を解放する。これによって、上述したトルク増幅手段10が作動し、リングギヤ軸30inと動力出力軸30outとの間でトルク増幅作用が加わる状態となる。かかる状態において、エンジン1、第1のモータ22、およびリングギヤ軸30inの回転速度は、キャリア25、サンギヤ26、およびリングギヤ27の回転速度の共線図として図5に示されるとおりである。図5中の各矢印は、それぞれ図4中の各矢印に対応し、図4と同様に、その太さによって各回転軸のトルクを表している。また、「動力伝達軸」の矢印はポンプ11の回転速度およびトルクに対応し、「T/C」と記載された「駆動軸」の矢印はタービン12の回転速度およびトルクに対応する。ここで、これらの矢印を結ぶ点線で示すとおり、ポンプ11とタービン12との速度比により、出力部16に連結された動力出力軸30outの回転速度は減速されて、図4の動力出力軸30outの回転速度と同一とされている。また、上述したトルク増幅手段10の作動により、ポンプ11のトルクが作動油およびステータ13を介したトルク増幅作用を経てタービン12に出力されるため、図5における出力部16のトルクは、図4における出力部16に比べて大きくなっている。
図5に示すように、本実施形態では、トルク増幅手段10を作動させることによって、第2のモータ24の回転速度が小さい状態でエンジン1の出力を上昇させる場合であっても、車輪3の回転数を直ちに上昇させるための大きなトルクを車輪側の駆動軸34に出力することが可能となる。具体的には、リングギヤ軸30inの回転速度上昇を許容することにより電気駆動系統20に分配される動力の割合を小さくして第1のモータ22の回転速度を抑えるとともに、機械駆動系統30に残余の大きな動力を分配し、トルク増幅手段10にて増幅されたトルクを動力出力軸30outに出力することができる。このため、たとえ動力出力軸20outに出力される第2のモータ24のトルクが小さくても、運転者の要求に見合った十分な大きさのトルクで車輪3を駆動して加速することができる。したがって、従来のハイブリッド駆動装置では「電気パス」のモータに頼ることで加速時に補っていたトルクを、本実施形態では、通常走行時に従来の「機械パス」として用いられる機械駆動系統30に設置されたトルク増幅手段10のトルク増幅作用によって得ることができる。このため、電気駆動系統20が備える第2のモータ24の最大トルクが相対的に小さい場合であっても、大きなトルクを出力することが可能なハイブリッド駆動装置を構成することができる。したがって、第2のモータ24の小型化および当該第2のモータ24を駆動するための電力変換を担うインバータ23の低規格化と、車輪側の駆動軸34に出力可能なトルクの向上とを、両立させることができる。
また、上述したように、本実施形態においては、トルク増幅手段10によるトルク増幅を行うか否かを、ロックアップクラッチ15の作動を制御して停止状態と作動状態との切り換えによって選択することで、一つの機械駆動系統30を二通りの動力伝達経路として使い分けることが可能となる。すなわち、従来のハイブリッド駆動装置における「機械パス」に相当する伝達経路を、運転状態に応じてトルク増幅可能な経路に切り換えて兼用することができるため、簡易な構成にて上述した効果を得ることができる。なお、本実施形態によるハイブリッド駆動装置は、第1のモータ22の回転速度が必要最小限に抑えられるように構成することで、上述した効果をより良好に発揮するものとなる。すなわち、本発明において、『動力分配手段は、第1のモータにおける発電に利用可能な所定の動力を上限として、当該第1のモータにエンジンの動力の一部を分配し、残余の動力を動力伝達軸に分配するよう構成される』ことが好ましい。
(第2実施形態)
第1実施形態では、トルク増幅手段およびトルク増幅停止手段を、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータにて構成したが、本発明のトルク増幅停止手段として、他の構成を採用してもよい。例えば、後述する第2実施形態に示すように、従来のハイブリッド駆動装置の「電気パス」および「機械パス」に相当する二通りの動力伝達経路とは別に、トルク増幅手段を有する動力伝達経路を新たに設け、所定の運転状態においてのみ当該「トルク増幅手段を有する動力伝達経路」にエンジンの動力を分配するように構成された動力分配手段をトルク増幅停止手段として採用してもよい。
ここで、図6を用いて、本発明の第2実施形態によるハイブリッド駆動装置の構成の概要を説明する。第2実施形態の基本的な構成およびその作動は、第1実施形態と実質的に同等であり、同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態のハイブリッド駆動装置は、二つの動力分配手段として、第1のプラネタリギヤ211および第2のプラネタリギヤ212を有する。クランクシャフト29に出力されるエンジン1の動力は、まず第1のプラネタリギヤ211にて第2のプラネタリギヤ212と第2の動力伝達軸400とに分配される。第2の動力伝達軸400は、従来の「機械パス」に相当し、分配されたエンジンの動力を機械的に車輪側の駆動軸34に伝達するための構成である。第2のプラネタリギヤ212に分配された動力は、電気パス200の入力軸としての電気パス入力軸200inと、トルク増幅パス300の入力軸としての第1の動力伝達軸300inとに分配される。電気パス200は、第1実施形態の電気駆動系統20と同一の構成を備えており、従来の「電気パス」に相当する。第1実施形態の電気駆動系統20と同様に、第1のモータ22は電気パス入力軸200inに分配された動力による発電を可能とする。また、第2のモータ24は電力にて駆動され、電気パス出力軸200outを介して車輪側の駆動軸34に動力を出力する。
一方、トルク増幅パス300は、第1実施形態の機械駆動系統30におけるトルク増幅手段10の作動時の状態(図3参照)に対応する構成であり、トルク増幅手段10と同様に作動してトルクを増幅させることが可能なトルク増幅手段100を備えている。第1実施形態と異なる点は、トルク増幅手段100がロックアップクラッチに例示されるようなトルク増幅停止手段を備えていないことである。図6に示すとおり、第2実施形態において、トルク増幅パス300の出力軸としての動力出力軸300outに結合された出力部160は、第1実施形態のトルク増幅手段10における出力部16(図1参照)からロックアップクラッチ15を除いた構成に相当する。かかる構成により、ポンプ11の回転速度に対するタービン12の回転速度の速度比が所定値以下である場合、第1の動力伝達軸300inに分配された動力のトルクがトルク増幅手段100にて増幅され、動力出力軸300outを介して車輪側の駆動軸34に大きなトルクが出力される。
上述したように、第2実施形態の電気パス出力軸200out、動力出力軸300out、および第2の動力伝達軸400は、それぞれが車輪側の駆動軸34にトルクを出力するよう構成されており、車輪側の駆動軸34は、これらの三軸から出力されるトルクの総和によって回転し、図示しないディフェレンシャルギヤ等を介して車輪3を駆動する。また、電気パス出力軸200out、動力出力軸300out、および第2の動力伝達軸400の三軸は、車輪側の駆動軸34とともに特許請求の範囲に記載の「駆動軸」を構成する。かかる第2実施形態の構成においては、第2のプラネタリギヤ212からトルク増幅パス300にエンジン1の動力が分配されるか否かによって、トルク増幅手段100が作動する状態と当該トルク増幅手段100の作動が停止される状態とを切り換えることを可能としている。このように、第2のプラネタリギヤ212を特許請求の範囲に記載の「トルク増幅停止手段」として構成することにより、上述した本発明の効果が奏される。つまり、第2実施形態では、第2のモータ24の最大トルクが小さい場合であっても、運転状態に応じてトルク増幅パス300に動力を分配することにより、車輪側の駆動軸34に大きなトルクを補填して出力することができる。
(他の実施形態)
上記実施形態は、動力分配手段としてプラネタリギヤを用い、トルク増幅手段として流体式トルクコンバータを用いて構成されているが、本発明の動力分配手段およびトルク増幅手段として、他の構成を採用してもよい。
また、上記第1実施形態では、動力伝達軸を一軸とし、上記第2実施形態では、動力伝達軸を互いに作動の異なる二軸として複数設けている。これに限らず、本発明においては、エンジンの動力が分配される軸の数、あるいは動力伝達経路の数は、任意とすることができる。
以上説明したように、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置の構成の概要を示す説明図である。 本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置のトルク増幅手段が停止した状態を示す模式図である。 本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置のトルク増幅手段が作動する状態を示す模式図である。 図2の状態におけるハイブリッド駆動装置の入出力される動力とトルクとを示す概念図である。 図3の状態におけるハイブリッド駆動装置の入出力される動力とトルクとを示す概念図である。 本発明の第2実施形態によるハイブリッド駆動装置の構成の概要を示す説明図である。
符号の説明
1:エンジン、2:バッテリ、3:車輪、10:トルク増幅手段、15:ロックアップクラッチ(トルク増幅停止手段)、20:電気駆動系統、20in:サンギヤ軸(電気駆動系統)、20out:動力出力軸(駆動軸)、21:プラネタリギヤ(動力分配手段)、22:第1のモータ、23:インバータ、24:第2のモータ、25:キャリア(動力分配手段)、26:サンギヤ(動力分配手段)、27:リングギヤ(動力分配手段)、29:クランクシャフト、30:機械駆動系統、30in:リングギヤ軸(動力伝達軸)、30out:動力出力軸(駆動軸)、34:車輪側の駆動軸(駆動軸)

Claims (6)

  1. エンジンの動力を、電力変換を伴って駆動軸に出力するとともに、速度比を変えて前記駆動軸に伝達するハイブリッド駆動装置であって、
    前記エンジンの動力の一部により発電可能な第1のモータと、
    電力にて駆動され前記駆動軸に動力を出力可能な第2のモータと、
    前記エンジンの動力を、前記第1のモータに分配するとともに、前記駆動軸に動力を伝達可能な動力伝達軸に分配する動力分配手段と、
    前記動力伝達軸に分配された動力のトルクを増幅させて前記駆動軸に出力可能なトルク増幅手段と、
    を備えることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
  2. 前記トルク増幅手段の作動を停止させることが可能なトルク増幅停止手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
  3. 前記トルク増幅停止手段は、前記トルク増幅手段の作動を運転条件に応じて選択的に停止可能であることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド駆動装置。
  4. 前記トルク増幅停止手段は、前記トルク増幅手段に設けられ、前記動力伝達軸と前記駆動軸とを直結することで前記トルク増幅手段の作動を停止させることを可能とするロックアップクラッチであることを特徴とする請求項2または3に記載のハイブリッド駆動装置。
  5. エンジンの動力を、電力変換を伴って駆動軸に出力する電気駆動系統と、
    前記エンジンの動力を、速度比を変えて前記駆動軸に伝達する機械駆動系統と、を有するハイブリッド駆動装置であって、
    動力のトルクを増幅させて出力することを可能とするトルク増幅手段を、前記機械駆動系統の途中に配置してなることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
  6. エンジンの動力を、電力変換を伴って駆動軸に出力する電気駆動系統と、
    前記エンジンの動力を、速度比を変えて前記駆動軸に伝達する機械駆動系統と、
    前記エンジンの動力を前記電気駆動系統と前記機械駆動系統とに分配することが可能な動力分配手段と、を有するハイブリッド駆動装置であって、
    前記電気駆動系統は、前記エンジンの動力の一部により発電可能な第1のモータと、電力にて駆動され前記駆動軸に動力を出力可能な第2のモータと、を備え、
    前記動力分配手段は、前記第1のモータと、前記機械駆動系統に動力を入力する動力伝達軸とに動力を伝達するように構成され、
    前記動力伝達軸から入力された動力のトルクを増幅させて出力することを可能とするトルク増幅手段を、前記機械駆動系統の途中に配置してなることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
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