JP4912266B2 - ハイブリッド駆動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンに接続された入力部材と、車輪に接続された出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、少なくとも4つの回転要素を有し、前記入力部材、前記出力部材、前記第一回転電機、及び前記第二回転電機がそれぞれ異なる回転要素に接続された遊星歯車装置と、を備えたハイブリッド駆動装置に関する。
第一及び第二の2つの回転電機を備え、少なくとも4つの回転要素を有する遊星歯車装置のそれぞれ異なる回転要素に、入力部材、出力部材、第一回転電機、及び第二回転電機が接続された構成を有するハイブリッド駆動装置として、例えば、下記の特許文献1に記載の装置が既に知られている。このハイブリッド駆動装置は、入力部材の回転が遊星歯車装置の第一の回転要素に伝動され、入力部材の回転駆動力の反力受けとして働く一方の回転電機の回転が遊星歯車装置の第二の回転要素に伝動され、遊星歯車装置の第三の回転要素の回転が出力部材に伝動されるとともに、他方の回転電機の回転が当該第三の回転要素に伝動される3要素構造の駆動伝動状態において、減速比が異なる第一から第三の3つのモードを切り替え可能に備えている。この3要素構造の駆動伝動状態の各モードでは、入力部材の回転駆動力が、前記第一回転電機に接続された回転要素と前記第二回転電機に接続された回転要素とに分配される状態となっており、本願発明のスプリットモードに近似する駆動伝動状態となっている。
特開2006−347376号公報
上記のハイブリッド駆動装置では、3要素構造の駆動伝動状態で、車両の走行速度に応じて適切に減速比を切り替えることにより、特に高速走行時において、4要素構造の駆動伝動状態を用いる装置と比較してエネルギー効率を高めることができる構成となっている。しかし、上記のハイブリッド駆動装置であっても、一方の回転電機が入力部材の回転駆動力の反力受けとして働き、他方の回転電機がエンジンの回転駆動力をアシストするという3要素構造の性質上、一方の回転電機により発電された電力を、他方の回転電機が力行して消費する状態が常に生じていることになる。この状態では、一方の回転電機により発電する際や、発電した電力により他方の回転電機を力行させる際に、エネルギーが熱として消費されることによるエネルギー損失が発生することは避けられない。
上記のハイブリッド駆動装置では、中低速走行時などの車両の走行負荷の変動が多い走行状態では、車両の走行負荷の変動に応じて2つの回転電機の回転駆動力を制御することにより、エンジンを常に効率的な動作点で動作させることができるという利点が、上記のようなエネルギー損失を上回る。そのため、ハイブリッド駆動装置の全体としてはエネルギー効率を高めることができる。しかし、高速走行時のように、車両の走行負荷の変動が少ない走行状態では、車両の走行負荷の変動を回転電機の回転駆動力の制御により吸収する機会が少なくなる。そのため、3要素構造の駆動伝動状態による利点が少なくなり、上記のようなエネルギー損失の影響が相対的に大きくなる。したがって、4要素構造の駆動伝動状態ほどではないが、ハイブリッド駆動装置の全体としてのエネルギー効率が低くなり易いという問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、中低速走行時には2つの回転電機の回転駆動力を制御することによりエンジンを効率的な動作点で動作させることを可能としつつ、高速走行時には回転電機の動作によるエネルギー損失を抑制することにより、エネルギー効率を高めることが可能なハイブリッド駆動装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係るハイブリッド駆動装置の特徴構成は、エンジンに接続された入力部材と、車輪に接続された出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、少なくとも4つの回転要素を有し、前記入力部材、前記出力部材、前記第一回転電機、及び前記第二回転電機がそれぞれ異なる回転要素に接続された遊星歯車装置と、を備え、前記入力部材の回転駆動力が、前記第一回転電機に接続された回転要素と前記第二回転電機に接続された回転要素とに分配され、前記第一回転電機及び前記第二回転電機のいずれか一方が前記入力部材の回転駆動力の反力受けとなる2つのモードであって、前記入力部材の回転駆動力が前記出力部材に伝達される際のトルク変換比が互いに異なるスプリット第一モードとスプリット第二モードとを切り替え可能に備えるとともに、前記入力部材の回転速度に比例して、前記出力部材、前記第一回転電機、及び前記第二回転電機の回転速度が定まり、前記入力部材の回転速度が増速して前記出力部材に伝達されるパラレル増速モードを切り替え可能に備え
前記スプリット第一モードと前記スプリット第二モードとの間の切り替え、及び前記スプリット第二モードと前記パラレル増速モードとの間の切り替えに際して、それらのモード切り替えの際に係合する摩擦係合手段の両側の係合部材の回転速度が同じ状態で係合される同期切替が可能に構成されており、
前記遊星歯車装置は、複数の摩擦係合要素を備え、少なくとも2つの摩擦係合要素の係合状態で前記パラレル増速モードが実現され、
前記遊星歯車装置は、3つの回転要素をそれぞれ有する第一遊星歯車機構、第二遊星歯車機構、及び第三遊星歯車機構を組み合わせて構成され、
前記第一遊星歯車機構の一つの回転要素に前記入力部材が接続され、前記第三遊星歯車機構の一つの回転要素に前記出力部材が接続され、
前記スプリット第一モードと前記スプリット第二モードとで、前記第一回転電機及び前記第二回転電機のいずれか一方の前記反力受けとなる回転電機が交替し、
前記スプリット第一モードでは前記第一回転電機が前記反力受けとなり、前記スプリット第二モードでは前記第二回転電機が前記反力受けとなり、
前記スプリット第一モード及び前記スプリット第二モードで、少なくとも前記第一遊星歯車機構が、前記第一回転電機に接続された回転要素と前記第二回転電機に接続された回転要素とに前記入力部材の回転駆動力を分配する駆動力分配機構として機能し、
前記スプリット第一モードで、前記第三遊星歯車機構が、前記第二回転電機に接続された回転要素の回転速度を減速して前記出力部材に伝達し、
前記第一回転電機が前記第二遊星歯車機構の一つの回転要素に接続され、
前記スプリット第一モード及び前記スプリット第二モードで、前記第二遊星歯車機構が、前記第一回転電機の回転速度を減速して前記第一遊星歯車機構に伝達する点にある。
なお、本願では、「接続」とは、回転の伝達を直接的に行う構造を含むほか、1又は2以上の部材を介して回転の伝達を間接的に行う構造も含む。また、本願では、サンギヤ、キャリア、リングギヤの三つの回転要素を備えた遊星歯車機構に関し、当該遊星歯車機構単独で、若しくは複数の遊星歯車機構を組み合わせて得られる装置を「遊星歯車装置」と呼ぶ。また、本願では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
この特徴構成によれば、中低速走行時などの車両の走行負荷の変動が多い走行状態では、スプリット第一モード又はスプリット第二モードとすることにより、車両の走行負荷の変動に応じて2つの回転電機の回転駆動力を制御し、エンジンを常に効率的な動作点で動作させながら走行することができる。更にこのとき、入力部材(エンジン)の回転駆動力が出力部材に伝達される際のトルク変換比が互いに異なるスプリット第一モードとスプリット第二モードとを、車両の走行速度や走行負荷に応じて適宜切り替えて走行することにより、最大出力が比較的小さい回転電機を用いて十分な走行性能を得ることが可能になるとともに、回転電機の回転速度を比較的低く抑えることが可能となるため、装置のエネルギー効率を高めることができる。
また、高速走行時などの車両の走行負荷の変動が少ない走行状態では、パラレル増速モードに切り替えることにより、回転電機を動作させずにエンジンの回転駆動力を出力部材に伝達して走行することが可能となるので、回転電機の動作によるエネルギー損失を抑制することができる。更にこのとき、入力部材(エンジン)の回転速度を増速して出力部材に伝達するため、エンジンの回転速度を低く抑えることが可能となり、エンジンを高い効率で動作させることができる。よって、この場合にも、装置のエネルギー効率を高めることができる。したがって、この特徴構成によれば、全ての走行速度域において、エネルギー効率が高いハイブリッド駆動装置を実現することができる。
この構成によれば、第一回転電機及び第二回転電機のそれぞれの性能や遊星歯車装置に対する接続構造に応じて、スプリット第一モード及びスプリット第二モードのそれぞれに要求される走行性能を発揮できるように、第一回転電機及び第二回転電機に適切な役割を分担させることが可能となる。したがって、最大出力が比較的小さい回転電機を用いて十分な走行性能を得ることが可能になるとともに、回転電機のエネルギー効率を高めることが可能となる。
この構成によれば、スプリット第一モードとスプリット第二モードとの間のモード切り替え、及びスプリット第二モードとパラレル増速モードとの間のモード切り替えに際して、摩擦係合手段の係合による衝撃を非常に小さくすることができる。
この構成によれば、入力部材の回転速度に比例して、出力部材、第一回転電機、及び第二回転電機の回転速度が定まるような遊星歯車装置の各回転要素の接続状態を、比較的容易に実現することができる。
この構成によれば、スプリット第一モード及びスプリット第二モードにおいて、第一遊星歯車機構を中心として3要素構造の駆動伝動状態を形成することができる。したがって、これらのモードにおいて、車両の走行負荷の変動に応じて2つの回転電機の回転駆動力を制御し、エンジンを常に効率的な動作点で動作させながら走行することが可能となる。
この構成によれば、スプリット第一モードにおいて、比較的大きい回転駆動力を出力部材に伝達して走行することが可能となる。
この構成によれば、最大出力が比較的小さい第一回転電機を用いた場合であっても、十分な回転駆動力を第一遊星歯車機構に伝達することが可能となる。
また、前記第三遊星歯車機構の一つの回転要素が、ブレーキにより非回転部材に選択的に固定される選択固定回転要素であり、この選択固定回転要素と前記前記第一回転電機に接続された回転要素とを選択的に接続するクラッチを備える構成とすると好適である。
この構成によれば、いずれかのモードの実現のために非回転部材に固定される回転要素を、他のモードの実現のために有効に利用することができる。したがって、回転要素の数を少なく抑えることが可能となり、比較的小型のハイブリッド駆動装置とすることが可能となる。
なお本願では、「回転速度の順」は、高速側から低速側に向かう順、又は低速側から高速側に向かう順のいずれかであり、各遊星歯車装置の回転状態によりいずれともなり得るが、いずれの場合にも回転要素の順は変わらない。
1.第一の実施形態
まず、本発明の第一の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの構成を示すスケルトン図である。なお、この図1は、中心軸に対称な下半分の構成を省略して示している。また、図2は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hのシステム構成を示す模式図である。なお、図2において、二重の実線は回転駆動力の伝達経路を示し、二重の破線は電力の伝達経路を示し、白抜きの矢印は作動油の流れを示している。また、実線の矢印は各種情報の伝達経路を示している。これらの図に示すように、このハイブリッド駆動装置Hは、エンジンEに接続された入力軸Iと、車輪Wに接続された出力軸Oと、第一モータ・ジェネレータMG1と、第二モータ・ジェネレータMG2と、少なくとも4つの回転要素を有し、入力軸I、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2がそれぞれ異なる回転要素に接続された遊星歯車装置PGと、を備えている。また、このハイブリッド駆動装置Hでは、遊星歯車装置PGは、3つの回転要素をそれぞれ有する第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3を組み合わせて構成されている。そして、これらの構成は、車体に固定される非回転部材としての駆動装置ケースDc(以下、単に「ケースDc」という。)内に収納されている。なお、本実施形態においては、第一モータ・ジェネレータMG1が本発明における「第一回転電機」に相当し、第二モータ・ジェネレータMG2が本発明における「第二回転電機」に相当する。また、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。
1−1.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
図1及び図2に示すように、入力軸Iは、エンジンEに接続されている。ここで、エンジンEは、燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、入力軸IはエンジンEのクランクシャフト等の出力回転軸と一体的に接続されている。なお、入力軸Iが、エンジンEの出力回転軸との間にダンパやクラッチ等を介して接続された構成としても好適である。出力軸Oは、ディファレンシャル装置17等を介して車輪Wに回転駆動力を伝達可能に接続されている。本例では、入力軸Iと出力軸Oとは同一軸線上に配置されている。
図1に示すように、第一モータ・ジェネレータMG1は、ケースDcに固定されたステータSt1と、このステータSt1の径方向内側に回転自在に支持されたロータRo1と、を有している。この第一モータ・ジェネレータMG1のロータRo1は、第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2と一体回転するように接続されている。また、第二モータ・ジェネレータMG2は、ケースDcに固定されたステータSt2と、このステータSt2の径方向内側に回転自在に支持されたロータRo2と、を有している。この第二モータ・ジェネレータMG2のロータRo2は、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1と一体回転するように接続されている。第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2は、図2に示すように、それぞれインバータ12を介して蓄電装置としてのバッテリ11に電気的に接続されている。なお、バッテリ11は蓄電装置の一例であり、キャパシタなどの他の蓄電装置を用い、或いは複数種類の蓄電装置を併用することも可能である。そして、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2は、それぞれ電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能を果すことが可能とされている。
本実施形態においては、第一モータ・ジェネレータMG1と第二モータ・ジェネレータMG2の機能が、後述するスプリット低速モードとスプリット高速モードとで交替する構成となっている。すなわち、スプリット低速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとなって主にジェネレータとして機能し、第二モータ・ジェネレータMG2が主にモータとして機能する。一方、スプリット高速モードでは、第二モータ・ジェネレータMG2が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとなって主にジェネレータとして機能し、第一モータ・ジェネレータMG1が主にモータとして機能する。ここで、ジェネレータとして機能する方のモータ・ジェネレータMG1、MG2は、エンジンEの回転駆動力により発電を行い、バッテリ11を充電し、或いはモータとして機能する方のモータ・ジェネレータMG1、MG2を駆動するための電力を供給する。一方、モータとして機能する方のモータ・ジェネレータMG1、MG2は、主に車両の走行用の駆動力を補助するために力行するが、車両の減速のための回生制動時等にはジェネレータとして機能する。これら第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の動作は、制御装置ECUから制御指令に従ってインバータ12を介して行われる。
遊星歯車装置PGは、ここでは、3つの回転要素をそれぞれ有する第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3を組み合わせて構成されている。そして、これらの各遊星歯車機構PG1〜PG3のそれぞれ異なる回転要素に、入力軸I、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2が接続されている。ここでは、第一遊星歯車機構PG1の一つの回転要素に入力軸Iが接続され、第三遊星歯車機構PG3の一つの回転要素に出力軸Oが接続されている。以下、各遊星歯車機構PG1〜PG3のそれぞれの構成について詳細に説明する。
図1に示すように、第一遊星歯車機構PG1は、入力軸I及び出力軸Oと同軸状に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、第一遊星歯車機構PG1は、複数対のピニオンギヤを支持するキャリアca1と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs1及びリングギヤr1とを回転要素として有している。キャリアca1は、第二モータ・ジェネレータMG2のロータRo2及び第三遊星歯車機構PG3のサンギヤs3と一体回転するように接続されている。リングギヤr1は、入力軸Iと一体回転するように接続されている。サンギヤs1は、第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2と一体回転するように接続されているとともに、第一クラッチC1を介して第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3と選択的に接続される。後述するように、第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2には第一モータ・ジェネレータMG1が接続されている。これにより、第一遊星歯車機構PG1は、スプリット低速モード及びスプリット高速モードにおいて、入力軸Iの回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素であるキャリアca1とに分配する駆動力分配機構として機能する。なお、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である、第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2には、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2を介して入力軸Iの回転駆動力が伝達される。本実施形態においては、この第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1、リングギヤr1、サンギヤs1が、それぞれ第一遊星歯車機構PG1の「第一回転要素e1」、「第二回転要素e2」、「第三回転要素e3」に相当する。
第二遊星歯車機構PG2は、入力軸I及び出力軸Oと同軸状に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、第二遊星歯車機構PG2は、複数対のピニオンギヤを支持するキャリアca2と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs2及びリングギヤr2とを回転要素として有している。サンギヤs2は、ケースDcに固定されている。リングギヤr2は、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1と一体回転するように接続されているとともに、第一クラッチC1を介して第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3と選択的に接続される。キャリアca2は、第一モータ・ジェネレータMG1のロータRo1と一体回転するように接続されているとともに、第二クラッチC2を介して第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3と選択的に接続される。本実施形態においては、この第二遊星歯車機構PG2のサンギヤs2、リングギヤr2、キャリアca2が、それぞれ第二遊星歯車機構PG2の「第一回転要素e1」、「第二回転要素e2」、「第三回転要素e3」に相当する。
第三遊星歯車機構PG3は、入力軸I及び出力軸Oと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、第三遊星歯車機構PG3は、複数のピニオンギヤを支持するキャリアca3と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs3及びリングギヤr3とを回転要素として有している。サンギヤs3は、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1及び第二モータ・ジェネレータMG2のロータRo2と一体回転するように接続されている。キャリアca3は、出力軸Oと一体回転するように接続されているとともに、第一クラッチC1を介して第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2と選択的に接続される。リングギヤr3は、ブレーキB1によりケースDcに選択的に固定されるとともに、第二クラッチC2を介して第二遊星歯車機構PGのキャリアca2に選択的に接続される。本実施形態においては、この第三遊星歯車機構PG3のサンギヤs3、キャリアca3、リングギヤr3が、それぞれ第三遊星歯車機構PG3の「第一回転要素e1」、「第二回転要素e2」、「第三回転要素e3」に相当する。また、リングギヤr3が、第三遊星歯車機構PG3の「選択固定回転要素」に相当する。
上記のとおり、このハイブリッド駆動装置Hは、摩擦係合要素として、第一クラッチC1、第二クラッチC2、及びブレーキB1を備えている。これらの摩擦係合要素としては、いずれも油圧により動作する多板式クラッチや多板式ブレーキを用いることができる。図2では、各摩擦係合要素は遊星歯車装置PGに含まれることとして図示を省略しているが、この図に示すように、これらの摩擦係合要素(すなわち遊星歯車装置PG)に供給される油圧は、制御装置ECUからの制御指令により動作する油圧制御装置13により制御される。この油圧制御装置13への作動油の供給は、エンジンEの動作中は機械式オイルポンプ14により行われ、エンジンEの停止中は電動オイルポンプ15により行われる。ここで、機械式オイルポンプ14は、入力軸Iの回転駆動力により駆動される。また、電動オイルポンプ15は、電動オイルポンプ用インバータ16を介して供給されるバッテリ11からの電力(供給経路は図示省略)により駆動される。
1−2.ハイブリッド駆動装置の制御システムの構成
図2に示すように、制御装置ECUは、車両の各部に設けられたセンサSe1〜Se7で取得される情報を用いて、エンジンE、第一モータ・ジェネレータMG1、第二モータ・ジェネレータMG2、油圧制御装置13を介して遊星歯車装置PGの各摩擦係合要素C1、C2、B1(図1参照)、並びに電動オイルポンプ15等の動作制御を行う。これらのセンサとして、本例では、第一モータ・ジェネレータ回転センサSe1、第二モータ・ジェネレータ回転センサSe2、エンジン回転センサSe3、バッテリ状態検出センサSe4、車速センサSe5、アクセル操作検出センサSe6、及びブレーキ操作検出センサSe7が設けられている。
ここで、第一モータ・ジェネレータ回転センサSe1は、第一モータ・ジェネレータMG1のロータRo1の回転速度を検出するためのセンサである。第二モータ・ジェネレータ回転センサSe2は、第二モータ・ジェネレータMG2のロータRo2の回転速度を検出するためのセンサである。エンジン回転センサSe3は、エンジンEの出力回転軸の回転速度を検出するためのセンサである。ここで、入力軸IはエンジンEの出力回転軸と一体回転するので、このエンジン回転センサSe3により検出されるエンジンEの回転速度は入力軸Iの回転速度と一致する。バッテリ状態検出センサSe4は、バッテリ11の充電量等の状態を検出するためのセンサである。車速センサSe5は、車速を検出するために出力軸Oの回転速度を検出するためのセンサである。アクセル操作検出センサSe6は、アクセルペダル18の操作量を検出するためのセンサである。ブレーキ操作検出センサSe7は、図示しないホイールブレーキに連動するブレーキペダル19の操作量を検出するためのセンサである。
また、制御装置ECUは、エンジン制御手段31、モータ・ジェネレータ制御手段32、バッテリ状態検出手段33、モータ・ジェネレータ回転検出手段34、車速検出手段35、切替制御手段36、電動オイルポンプ制御手段37、エンジン回転検出手段38、モード選択手段39、及び要求駆動力検出手段40を備えている。制御装置ECUにおけるこれらの各手段は、CPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア(プログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。
エンジン制御手段31は、エンジンEの動作開始、停止、回転速度制御、出力トルク制御等の動作制御を行う。モータ・ジェネレータ制御手段32は、インバータ12を介して、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度制御、出力トルク制御等の動作制御を行う。バッテリ状態検出手段33は、バッテリ状態検出センサSe4の出力に基づいて、バッテリ11の充電量等の状態を検出する。モータ・ジェネレータ回転検出手段34は、第一モータ・ジェネレータ回転センサSe1、及び第二モータ・ジェネレータ回転センサSe2の出力に基づいて、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度を検出する。車速検出手段35は、車速センサSe5からの出力に基づいて車速を検出する。切替制御手段36は、油圧制御装置13の動作を制御することにより、ハイブリッド駆動装置Hの各摩擦係合要素C1、C2、B1(図1参照)のそれぞれの係合又は解放(係合解除)を行い、ハイブリッド駆動装置Hの動作モードを切り替える制御を行う。電動オイルポンプ制御手段37は、電動オイルポンプ用インバータ16を介して電動オイルポンプ15の動作制御を行う。エンジン回転検出手段38は、エンジン回転センサSe3からの出力に基づいて、エンジンEの出力回転軸及び入力軸Iの回転速度を検出する。
モード選択手段39は、車速及び要求駆動力などの走行条件に応じて、所定の制御マップに従い適切な動作モードの選択を行う。すなわち、モード選択手段39は、車速の情報を車速検出手段35から取得するとともに、要求駆動力の情報を要求駆動力検出手段40から取得する。そして、モード選択手段39は、所定の制御マップに従って、取得された車速及び要求駆動力に応じて規定された動作モードを選択する。ここで、選択される動作モードとしては、後述するように、スプリット低速モード、スプリット高速モード、及びパラレル増速モードの3つのモードがある。なお、モード選択の際に参照される走行条件としては、車速及び要求駆動力の他にも、バッテリ充電量、冷却水温度、油温等の各種条件を用いても好適である。要求駆動力検出手段40は、アクセル操作検出センサSe6及びブレーキ操作検出センサSe7からの出力に基づいて、運転者による要求駆動力を演算して取得する。
1−3.ハイブリッド駆動装置の動作モード
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hにより実現可能な動作モードについて説明する。図3は、各動作モードでの複数の摩擦係合要素C1、C2、B1の作動状態を示す作動表である。この図において、「Lo」はスプリット低速モード、「Hi」はスプリット高速モードをそれぞれ示している。また、「OD」はパラレル増速モードを示している。そして、この図において、「○」は各摩擦係合要素が係合状態にあることを示しており、「無印」は、各摩擦係合要素が解放(係合解除)状態にあることを示している。
また、図4〜図6は、遊星歯車装置PGの速度線図を示しており、図4はスプリット低速モードでの速度線図、図5はスプリット高速モードでの速度線図、図6はパラレル増速モードでの速度線図をそれぞれ示している。これらの速度線図において、縦軸は、各回転要素の回転速度に対応している。すなわち、縦軸に対応して記載している「0」は回転速度がゼロであることを示しており、上側が正、下側が負である。そして、並列配置された複数本の縦線のそれぞれが、遊星歯車装置PGを構成する第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3の各回転要素に対応している。すなわち、各縦線の上側に記載されている「ca1」、「r1」、「s1」はそれぞれ第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1、リングギヤr1、サンギヤs1に対応し、「s2」、「r2」、「ca2」はそれぞれ第二遊星歯車機構PG2のサンギヤs2、リングギヤr2、キャリアca2に対応し、「s3」、「ca3」、「r3」はそれぞれ第三遊星歯車機構PG3のサンギヤs3、キャリアca3、リングギヤr3に対応している。
また、各回転要素に対応する縦線の間隔は、第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3のそれぞれのギヤ比に対応している。図4〜図6の下部には、各遊星歯車機構PG1、PG2、PG3のギヤ比(サンギヤとリングギヤとの歯数比=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)をλ1、λ2、λ3として示している。そして、図4〜図6において、直線L1は第一遊星歯車機構PG1の動作状態を示し、直線L2は第二遊星歯車機構PG2の動作状態を示し、直線L3は第三遊星歯車機構PG3の動作状態を示している。これらの速度線図上において、「○」は第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度、「□」は第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度、「△」は入力軸I(エンジンE)の回転速度、「☆」は出力軸Oの回転速度、「×」は非回転部材としてのケースDcへの固定状態をそれぞれ示している。
図3〜図6に示すように、このハイブリッド駆動装置Hは、スプリット低速モード、スプリット高速モード、及びパラレル増速モードの3つの動作モードを切り替え可能に備えた構成となっている。ここで、スプリット低速モード及びスプリット高速モードは、いずれも、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のキャリアca1とに分配する状態となるスプリットモードである。このスプリットモードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2のいずれか一方が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとなる。そして、スプリット低速モードとスプリット高速モードとは、入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される際のトルク変換比が互いに異なっている。ここで、トルク変換比とは、入力軸Iのトルクを分母とし、入力軸Iのトルクのうちで出力軸Oに伝達されるトルク(以下単に「出力軸Oのトルク」という。)を分子とするトルクの比である(トルク変換比=〔出力軸Oのトルク〕/〔入力軸Iのトルク〕)。本実施形態においては、スプリット低速モードが本発明におけるスプリット第一モードに相当し、スプリット高速モードが本発明におけるスプリット第二モードに相当する。一方、パラレル増速モードは、入力軸Iの回転速度に比例して、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まり、入力軸Iの回転速度が増速して出力軸Oに伝達されるモードである。
これらの動作モードは、モード選択手段39により選択され、選択された動作モードへの切り替えは、制御装置ECUからの制御指令により各摩擦係合要素C1、C2、B1が係合又は解放されることにより行われる。なお、この際、制御装置ECUは、モータ・ジェネレータ制御手段32による第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度及び出力トルクの制御、エンジン制御手段31によるエンジンEの回転速度及び出力トルクの制御等も行う。以下、各動作モードでのハイブリッド駆動装置Hの動作状態について詳細に説明する。
1−4.スプリット低速モード
スプリット低速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のキャリアca1とに分配しつつ、後述するスプリット高速モードよりも大きいトルク変換比で入力軸Iの回転駆動力を出力軸Oに伝達するモードである。このスプリット低速モードでは、第一遊星歯車機構PG1が、入力軸Iの回転駆動力を分配する駆動力分配機構として機能し、第一モータ・ジェネレータMG1が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとして機能する。また、第二遊星歯車機構PG2は、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を減速して第一遊星歯車機構PG1に伝達する。すなわち、第二遊星歯車機構PG2は、第一モータ・ジェネレータMG1の出力トルクを増幅して第一遊星歯車機構PG1に伝達するトルク増幅機構として機能する。また、第三遊星歯車機構PG3は、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力が分配されるとともに第二モータ・ジェネレータMG2に接続されている第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1の回転速度を、減速して出力軸Oに伝達する。このような構成を実現するため、図3に示すように、スプリット低速モード(Lo)では、ブレーキB1が係合状態とされることで第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3がケースDcに固定される。以下、スプリット低速モードでの各遊星歯車機構PG1〜PG3の動作及び機能について、図4に示す速度線図に基づいて詳細に説明する。
スプリット低速モードでは、第一遊星歯車機構PG1は、図4に直線L1として示すように、回転速度の順で中間となるリングギヤr1が入力軸I(エンジンE)と一体的に回転し、このリングギヤr1に伝達された入力軸Iの回転駆動力が回転速度の順で一方端となるサンギヤs1及び他方端となるキャリアca1に分配される。そして、サンギヤs1に分配された回転駆動力は、第二遊星歯車機構PG2を介して第一モータ・ジェネレータMG1に伝達される。また、キャリアca1に分配された回転駆動力は、第二モータ・ジェネレータMG2に伝達されるとともに、第三遊星歯車機構PG3を介して出力軸Oに伝達される。この際、エンジンEは、高い効率で排ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うよう)に維持されるよう制御されつつ正方向の回転駆動力(エンジントルクTE)を出力し、この回転駆動力が入力軸Iを介してリングギヤr1に伝達される。
また、第一モータ・ジェネレータMG1は、負方向の回転駆動力(MG1トルクT1)を出力することにより、第二遊星歯車機構PG2を介して、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力を第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1に伝達する。この際、図4に直線L2として示すように、第二遊星歯車機構PG2は、回転速度の順で一方端となるサンギヤs2がケースDcに固定され、他方端となるキャリアca2に第一モータ・ジェネレータMG1が接続されている。このため、回転速度の順で中間となるリングギヤr2に、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度が減速されて伝達される。したがって、第二遊星歯車機構PG2は、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力を増幅して、リングギヤr2と一体回転する第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1に伝達する。ここで、第二遊星歯車機構PG2のギヤ比がλ2(λ2<1)である場合、第二遊星歯車機構PG2によって第一モータ・ジェネレータMG1が出力するMG1トルクは、1/(1−λ2)倍に増幅される。この増幅された第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力が、入力軸Iの回転駆動力の反力となる。このスプリット低速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1は、正回転(回転速度が正)しつつ負方向の回転駆動力を発生する状態となり、ジェネレータとして機能して発電を行う。
一方、第二モータ・ジェネレータMG2は、正方向の回転駆動力(MG2トルクT2)を出力することにより、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1から第三遊星歯車機構PG3を介して出力軸Oに伝達される入力軸I(エンジンE)の回転駆動力に対するアシストを行う。この際、図4に直線L3として示すように、第三遊星歯車機構PG3は、回転速度の順で一方端となるサンギヤs3に第二モータ・ジェネレータMG2及び第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1が接続され、他方端となるリングギヤr3がブレーキB1によりケースDcに固定される。このため、回転速度の順で中間となるキャリアca3に接続された出力軸Oには、サンギヤs3の回転速度が減速されて伝達される。したがって、第三遊星歯車機構PG3は、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1からサンギヤs3に伝達された入力軸Iの回転駆動力及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力を、増幅して出力軸Oに伝達する。このスプリット低速モードでは、第二モータ・ジェネレータMG2は、正回転(回転速度が正)しつつ正方向の回転駆動力を発生する状態となり、モータとして機能して力行する。
スプリット低速モードでは、入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される際のトルク変換比は、以下のようになる。すなわち、図4の下部に示すように、第一遊星歯車機構PG1、第三遊星歯車機構PG3のギヤ比(=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)がそれぞれλ1、λ3(λ1<1、λ3<1)である場合、出力軸Oに伝達される入力軸IのトルクをTOとすると、トルクTOは以下の式(1)により求まる。
TO=TE×{(1−λ1)×(1+λ3)}/λ3・・・(1)
よって、例えば、λ1=0.5、λ3=0.5であった場合、TO=1.5TEとなる。すなわち、この場合、スプリット低速モードでのトルク変換比(=〔出力軸Oのトルク〕/〔入力軸Iのトルク〕)は1.5となり、入力軸IのトルクTEは、1.5倍されて出力軸Oに伝達される。また、出力軸Oには、第二モータ・ジェネレータMG2が出力するMG2トルクT2も、第三遊星歯車機構PG3によって(1+λ3)/λ3倍に増幅されて伝達される。なお、各遊星歯車機構PG1、PG2、PG3のギヤ比λ1、λ2、λ3は、エンジンE、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の特性や車両重量等を考慮して適宜設定することができる。
以上に説明したように、スプリット低速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力、すなわちエンジントルクTEを増幅して出力軸Oに伝達することができるため、車速が比較的低い状態で使用される低速用のモードとなる。具体的には、スプリット低速モードは、出力軸Oの回転速度がゼロの状態(車両の発進時)から、出力軸Oの回転速度が第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2の回転速度に一致する状態となるまでの間で使用される。すなわち、スプリット低速モードでは、エンジンEの回転速度を一定とした場合、出力軸Oの回転速度がゼロの状態から、第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度を上昇させるとともに、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を下降させることにより、出力軸Oの回転速度を次第に上昇させて車両を発進させる。そして、出力軸Oの回転速度が上昇し、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2の回転速度と一致した際に、制御装置ECUは、第一クラッチC1を係合するとともに、ブレーキB1を解放する。これにより、スプリット低速モードから後述するスプリット高速モードに切り替えられる。このモード切り替えは、この際に係合する第一クラッチC1の両側の係合部材の回転速度が同じ状態で係合される同期切替となっている。ここで、第一クラッチC1の両側の係合部材の一方は、第一クラッチC1の入力側回転部材である第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2であり、当該係合部材の他方は第一クラッチC1の出力側回転部材である第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3及び出力軸Oである。なお、制御装置ECUは、スプリット低速モードからスプリット高速モードへの切り替え後には、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の機能を入れ替え、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2のそれぞれの回転駆動力の出力方向も変更する。
1−5.スプリット高速モード
スプリット高速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のキャリアca1とに分配しつつ、上記のスプリット低速モードよりも小さいトルク変換比で入力軸Iの回転駆動力を出力軸Oに伝達するモードである。このスプリット高速モードでは、第一遊星歯車機構PG1及び第三遊星歯車機構PG3が、入力軸Iの回転駆動力を分配する駆動力分配機構として機能し、第二モータ・ジェネレータMG2が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとして機能する。また、第二遊星歯車機構PG2は、スプリット低速モードと同様に、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を減速して第一遊星歯車機構PG1に伝達する。このような構成を実現するため、図3に示すように、スプリット高速モード(Hi)では、第一クラッチC1が係合状態とされることで、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2と第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3とが一体回転するように接続される。以下、スプリット高速モードでの各遊星歯車機構PG1〜PG3の動作及び機能について、図5に示す速度線図に基づいて詳細に説明する。
スプリット高速モードでは、第一遊星歯車機構PG1は、図5に直線L1として示すように、回転速度の順で中間となるリングギヤr1が入力軸I(エンジンE)と一体的に回転し、このリングギヤr1に伝達された入力軸Iの回転駆動力が回転速度の順で一方端となるサンギヤs1及び他方端となるキャリアca1に分配される。また、このスプリット高速モードでは、第一クラッチC1が係合状態とされることで、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2と第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3とが一体回転するように接続される。これにより、第三遊星歯車機構PG3は、図5に直線L3として示すように、第一遊星歯車機構PG1と一体的に動作する状態となり、第一遊星歯車機構PG1と第三遊星歯車機構PG3とは、速度線図上で同一直線状となる。したがって、サンギヤs1に分配された回転駆動力は、当該サンギヤs1と一体回転する第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3を介して出力軸Oに伝達される。また、キャリアca1に分配された回転駆動力は、第二モータ・ジェネレータMG2に伝達される。この際、エンジンEは、高い効率で排ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うよう)に維持されるよう制御されつつ正方向の回転駆動力(エンジントルクTE)を出力し、この回転駆動力が入力軸Iを介して第一遊星歯車機構PG1のリングギヤr1に伝達される。
また、第一モータ・ジェネレータMG1は、正方向の回転駆動力(MG1トルクT1)を出力することにより、第二遊星歯車機構PG2を介して、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3から出力軸Oに伝達される入力軸I(エンジンE)の回転駆動力に対するアシストを行う。この際、図5に直線L2として示すように、第二遊星歯車機構PG2は、回転速度の順で一方端となるサンギヤs2がケースDcに固定され、他方端となるキャリアca2に第一モータ・ジェネレータMG1が接続されている。このため、回転速度の順で中間となるリングギヤr2に、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度が減速されて伝達される。したがって、スプリット高速モードにおいても、第二遊星歯車機構PG2は、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力を増幅して、リングギヤr2と一体回転する第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1に伝達する。そして、スプリット高速モードでは、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1と出力軸Oとは一体回転することから、増幅された第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力は、出力軸Oに直接的に伝達される。ここで、第二遊星歯車機構PG2のギヤ比がλ2(λ2<1)である場合、第二遊星歯車機構PG2によって第一モータ・ジェネレータMG1が出力するMG1トルクは、1/(1−λ2)倍に増幅される。このスプリット高速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1は、正回転(回転速度が正)しつつ正方向の回転駆動力を発生する状態となり、モータとして機能して力行する。
一方、第二モータ・ジェネレータMG2は、負方向の回転駆動力(MG2トルクT2)を出力することにより、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力を第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1に伝達する。よって、このスプリット高速モードでは、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1と一体回転する第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力が、そのまま入力軸Iの回転駆動力の反力となる。この際、第二モータ・ジェネレータMG2は、正回転(回転速度が正)しつつ負方向の回転駆動力を発生する状態となり、ジェネレータとして機能して発電を行う。このように、スプリット低速モードとスプリット高速モードとでは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力受けとなるモータ・ジェネレータMG1、MG2が交替する。
スプリット高速モードでは、入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される際のトルク変換比は、以下のようになる。すなわち、図5の下部に示すように、第一遊星歯車機構PG1のギヤ比(=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)がλ1(λ1<1)である場合、出力軸Oに伝達される入力軸IのトルクをTOとすると、トルクTOは以下の式(2)により求まる。
TO=TE×λ1・・・(2)
よって、例えば、λ1=0.5であった場合、TO=0.5TEとなる。すなわち、この場合、スプリット高速モードでのトルク変換比(=〔出力軸Oのトルク〕/〔入力軸Iのトルク〕)は0.5となり、入力軸IのトルクTEは、0.5倍されて出力軸Oに伝達される。また、出力軸Oには、第一モータ・ジェネレータMG1が出力するMG1トルクT1も、上記のとおり、第二遊星歯車機構PG2によって1/(1−λ2)倍に増幅されて伝達される。
以上に説明したように、スプリット高速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力、すなわちエンジントルクTEを減少させて出力軸Oに伝達するモードであり、出力軸Oの回転速度に対してエンジンEの回転速度を低く抑えることができるため、車速が比較的高い状態で使用される高速用のモードとなる。具体的には、スプリット高速モードは、スプリット低速モードで次第に出力軸Oの回転速度が上昇し、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2の回転速度と一致してスプリット高速モードに切り替えられた状態から、更に出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が下降し、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3の回転速度が第二遊星歯車機構PGのキャリアca2の回転速度に一致する状態となるまでの間で使用される。すなわち、スプリット高速モードでは、エンジンEの回転速度を一定とした場合、スプリット低速モードから切り替えられた後、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を上昇させることにより、出力軸Oの回転速度を上昇させる。またこの際、反力受けとしての第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度を下降させる。そして、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3の回転速度が第二遊星歯車機構PGのキャリアca2の回転速度に一致し、図6に示すように、速度線図上で全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が同一直線状となった際に、制御装置ECUは、第一クラッチC1を係合状態としたまま、第二クラッチC2を係合する。これにより、スプリット高速モードから後述するパラレル増速モードに切り替えられる。このモード切り替えは、この際に係合する第二クラッチC2の両側の係合部材の回転速度が同じ状態で係合される同期切替となっている。ここで、第二クラッチC2の両側の係合部材の一方は、第二クラッチC2の入力側回転部材である第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2であり、当該係合部材の他方は第二クラッチC2の出力側回転部材である第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3である。なお、制御装置ECUは、スプリット高速モードからパラレル増速モードへの切り替え後には、基本的に、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は回転駆動力を出力しない状態とする。
1−6.パラレル増速モード
パラレル増速モードは、入力軸Iの回転速度に比例して、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まり、入力軸Iの回転速度が増速して出力軸Oに伝達されるモードである。このパラレル増速モードでは、第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3が一体的に動作する状態となり、図6に示すように、速度線図上で全ての遊星歯車機構PG1〜PG3を表す線が同一直線状となる。このように、全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が一体的に動作する状態となることにより、パラレル増速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方又は双方を動作させずに、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を出力軸Oに伝達して走行することが可能となる。また、この際、入力軸I(エンジンE)の回転速度を増速して出力軸Oに伝達するため、エンジンEの回転速度を低く抑えることも可能となる。このような構成を実現するため、図3に示すように、パラレル増速モード(OD)は、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の2つが係合状態とされることで実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合状態とされることによって第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第二遊星歯車機構PG2のリングギヤr2と第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3とが一体回転するように接続され、第二クラッチC2が係合状態とされることによって第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2と第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3とが一体回転するように接続される。以下、パラレル増速モードでの各遊星歯車機構PG1〜PG3の動作及び機能について、図5に示す速度線図に基づいて詳細に説明する。
パラレル増速モードでは、図6に直線L1、L2、及びL3として示すように、速度線図上で第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3のそれぞれを表す線が同一直線状となり、遊星歯車装置PGを構成する全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が一体的に動作する状態となる。そして、このパラレル増速モードでは、遊星歯車装置PGは、全部で5個の回転要素を有する状態となる。また、この遊星歯車装置PGの5個の回転要素は、図6における左側から回転速度の順に、第二モータ・ジェネレータMG2と一体回転する回転要素であるキャリアca1及びサンギヤs3、ケースDcに固定された回転要素であるサンギヤs2、入力軸Iと一体回転する回転要素であるリングギヤr1、出力軸Oと一体回転する回転要素であるサンギヤs1、リングギヤr2及びキャリアca3、第一モータ・ジェネレータMG1と一体回転する回転要素であるキャリアca2及びリングギヤr3となっている。このように、遊星歯車装置PGの全体が一体的に動作する状態で、一つの回転要素であるサンギヤs2がケースDcに固定されていることにより、入力軸I(エンジンE)の回転速度に応じて、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まる。また、回転速度の順で、ケースDcに固定される回転要素(s2)と出力軸Oに接続された回転要素との間に、入力軸Iに接続された回転要素が設けられていることにより、入力軸I(エンジンE)の回転速度が増速して出力軸Oに伝達される。
この際、エンジンEは、車速及び要求駆動力に応じて、適切な回転速度及び回転駆動力(エンジントルクTE)を出力するように制御される。また、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、基本的には、入力軸I(エンジンE)の回転速度に応じて定まる回転速度で回転しつつ、回転駆動力を出力しない状態に制御される。すなわち、このパラレル増速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、基本的には、モータ及びジェネレータのいずれとしても機能せず、力行も発電も行わない。但し、要求駆動力に対して、エンジンEの回転駆動力が不足する場合などには、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方又は双方をモータとして力行させることも可能である。また、バッテリ11の充電量が不足した場合などには、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方又は双方をジェネレータとして発電させることも可能である。或いは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方をジェネレータとして発電させ、当該発電により得た電力を用いて他方をモータとして力行させることも可能である。
以上に説明したように、パラレル増速モードは、遊星歯車装置PGを構成する全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が一体的に動作することにより、入力軸Iの回転速度に比例して、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まる状態になるとともに、入力軸I(エンジンE)の回転速度が増速されて出力軸Oに伝達されるモードである。したがって、このパラレル増速モードは、車速が高い状態であって、要求駆動力が小さく、またその変化も少ない状況で使用される、スプリット高速モードよりも更に高速域に適したモードである。すなわち、このパラレル増速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2を動作させずに入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を出力軸Oに伝達して走行することができる。したがって、要求駆動力の変化が少ない状況において、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の動作によるエネルギー損失を抑制することができる。また、このとき、入力軸I(エンジンE)の回転速度を増速して出力軸Oに伝達するため、出力軸Oに伝達されるエンジントルクTEは小さくなるが、エンジンEの回転速度を低く抑えることが可能となる。したがって、エンジンを高い効率で動作させることができる。このパラレル増速モードは、スプリット高速モードで出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が下降し、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3の回転速度が第二遊星歯車機構PGのキャリアca2の回転速度に一致してパラレル増速モードに切り替えられた状態よりも、出力軸Oの回転速度が高い領域で使用される。
2.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの構成を示すスケルトン図である。なお、この図7は、図1と同様に、中心軸に対称な下半分の構成を省略して示している。このハイブリッド駆動装置Hは、スプリット低速モード、スプリット高速モード、及びパラレル増速モードの3つの動作モードを切り替え可能に備えている点で、上記第一の実施形態と同様であるが、これらの各モードを実現可能とするための装置の具体的構成が異なっている。以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて、上記第一の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hのシステム構成は図2と同様であるのでその点についての説明は省略する。また、その他の構成についても、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
2−1.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
図7に示すように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、遊星歯車装置PGを構成する第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3の具体的構成が、上記第一の実施形態と異なっている。以下、各遊星歯車機構PG1〜PG3のそれぞれの構成について詳細に説明する。
図7に示すように、第一遊星歯車機構PG1は、入力軸I及び出力軸Oと同軸状に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、第一遊星歯車機構PG1は、複数対のピニオンギヤを支持するキャリアca1と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs1及びリングギヤr1とを回転要素として有している。キャリアca1は、第二モータ・ジェネレータMG2のロータRo2及び第三遊星歯車機構PG3のサンギヤs3と一体回転するように接続されている。リングギヤr1は、入力軸Iと一体回転するように接続されている。サンギヤs1は、第一モータ・ジェネレータMG1のロータRo1と一体回転するように接続されているとともに、第一クラッチC1を介して第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2と選択的に接続される。これにより、第一遊星歯車機構PG1は、スプリット低速モード及びスプリット高速モードにおいて、入力軸Iの回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素であるサンギヤs1と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素であるキャリアca1とに分配する駆動力分配機構として機能する。本実施形態においては、この第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1、リングギヤr1、サンギヤs1が、それぞれ第一遊星歯車機構PG1の「第一回転要素e1」、「第二回転要素e2」、「第三回転要素e3」に相当する。
第二遊星歯車機構PG2は、入力軸I及び出力軸Oと同軸状に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、第二遊星歯車機構PG2は、複数対のピニオンギヤを支持するキャリアca2と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs2及びリングギヤr2とを回転要素として有している。サンギヤs2は、ケースDcに固定されている。リングギヤr2は、第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3及び出力軸Oと一体回転するように接続されている。キャリアca2は、第一クラッチC1を介して第一モータ・ジェネレータMG1のロータRo1及び第一遊星歯車装置PG1のサンギヤs1と選択的に接続されるとともに、第二クラッチC2を介して第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3と選択的に接続される。本実施形態においては、この第二遊星歯車機構PG2のサンギヤs2、リングギヤr2、キャリアca2が、それぞれ第二遊星歯車機構PG2の「第一回転要素e1」、「第二回転要素e2」、「第三回転要素e3」に相当する。
第三遊星歯車機構PG3は、入力軸I及び出力軸Oと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、第三遊星歯車機構PG3は、複数のピニオンギヤを支持するキャリアca3と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs3及びリングギヤr3とを回転要素として有している。サンギヤs3は、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1及び第二モータ・ジェネレータMG2のロータRo2と一体回転するように接続されている。キャリアca3は、出力軸O及び第二遊星歯車装置PG2のリングギヤr2と一体回転するように接続されている。リングギヤr3は、ブレーキB1によりケースDcに選択的に固定されるとともに、第二クラッチC2を介して第二遊星歯車機構PGのキャリアca2に選択的に接続される。本実施形態においては、この第三遊星歯車機構PG3のサンギヤs3、キャリアca3、リングギヤr3が、それぞれ第三遊星歯車機構PG3の「第一回転要素e1」、「第二回転要素e2」、「第三回転要素e3」に相当する。また、リングギヤr3が、第三遊星歯車機構PG3の「選択固定回転要素」に相当する。
2−2.ハイブリッド駆動装置の動作モード
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hにより実現可能な動作モードについて説明する。このハイブリッド駆動装置Hにおける、各動作モードでの複数の摩擦係合要素C1、C2、B1の作動状態を示す作動表は、図3と同一である。図8〜図10は、遊星歯車装置PGの速度線図を示しており、図8はスプリット低速モードでの速度線図、図9はスプリット高速モードでの速度線図、図10はパラレル増速モードでの速度線図をそれぞれ示している。これらの速度線図の記載方式は、上記第一の実施形態に係る図4〜図6と同様である。
図3及び図8〜図10に示すように、このハイブリッド駆動装置Hは、上記第一の実施形態と同様に、スプリット低速モード、スプリット高速モード、及びパラレル増速モードの3つの動作モードを切り替え可能に備えた構成となっている。ここで、スプリット低速モード及びスプリット高速モードは、いずれも、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のサンギヤs1と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のキャリアca1とに分配する状態となるスプリットモードである。このスプリットモードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2のいずれか一方が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとなる。そして、スプリット低速モードとスプリット高速モードとは、入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される際のトルク変換比(=〔出力軸Oのトルク〕/〔入力軸Iのトルク〕)が互いに異なっている。本実施形態においても、スプリット低速モードが本発明におけるスプリット第一モードに相当し、スプリット高速モードが本発明におけるスプリット第二モードに相当する。一方、パラレル増速モードは、入力軸Iの回転速度に比例して、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まり、入力軸Iの回転速度が増速して出力軸Oに伝達されるモードである。以下、各動作モードでのハイブリッド駆動装置Hの動作状態について詳細に説明する。
2−3.スプリット低速モード
スプリット低速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のサンギヤs1と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のキャリアca1とに分配しつつ、後述するスプリット高速モードよりも大きいトルク変換比で入力軸Iの回転駆動力を出力軸Oに伝達するモードである。このスプリット低速モードでは、第一遊星歯車機構PG1が、入力軸Iの回転駆動力を分配する駆動力分配機構として機能し、第一モータ・ジェネレータMG1が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとして機能する。また、第三遊星歯車機構PG3は、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力が分配されるとともに第二モータ・ジェネレータMG2に接続されている第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1の回転速度を、減速して出力軸Oに伝達する。一方、このスプリット低速モードでは、第二遊星歯車機構PG2は、特に機能しない。このような構成を実現するため、図3に示すように、スプリット低速モード(Lo)では、ブレーキB1が係合状態とされることで第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3がケースDcに固定される。以下、スプリット低速モードでの各遊星歯車機構PG1〜PG3の動作及び機能について、図8に示す速度線図に基づいて詳細に説明する。
スプリット低速モードでは、第一遊星歯車機構PG1は、図8に直線L1として示すように、回転速度の順で中間となるリングギヤr1が入力軸I(エンジンE)と一体的に回転し、このリングギヤr1に伝達された入力軸Iの回転駆動力が回転速度の順で一方端となるサンギヤs1及び他方端となるキャリアca1に分配される。そして、サンギヤs1に分配された回転駆動力は、第一モータ・ジェネレータMG1に伝達される。また、キャリアca1に分配された回転駆動力は、第二モータ・ジェネレータMG2に伝達されるとともに、第三遊星歯車機構PG3を介して出力軸Oに伝達される。この際、エンジンEは、高い効率で排ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うよう)に維持されるよう制御されつつ正方向の回転駆動力(エンジントルクTE)を出力し、この回転駆動力が入力軸Iを介してリングギヤr1に伝達される。
また、第一モータ・ジェネレータMG1は、負方向の回転駆動力(MG1トルクT1)を出力することにより、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力を第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1に伝達する。よって、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1と一体回転する第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力が、そのまま入力軸Iの回転駆動力の反力となる。このスプリット低速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1は、正回転(回転速度が正)しつつ負方向の回転駆動力を発生する状態となり、ジェネレータとして機能して発電を行う。
一方、第二モータ・ジェネレータMG2は、正方向の回転駆動力(MG2トルクT2)を出力することにより、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1から第三遊星歯車機構PG3を介して出力軸Oに伝達される入力軸I(エンジンE)の回転駆動力に対するアシストを行う。この際、図8に直線L3として示すように、第三遊星歯車機構PG3は、回転速度の順で一方端となるサンギヤs3に第二モータ・ジェネレータMG2及び第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1が接続され、他方端となるリングギヤr3がブレーキB1によりケースDcに固定される。このため、回転速度の順で中間となるキャリアca3に接続された出力軸Oには、サンギヤs3の回転速度が減速されて伝達される。したがって、第三遊星歯車機構PG3は、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1からサンギヤs3に伝達された入力軸Iの回転駆動力及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力を、増幅して出力軸Oに伝達する。このスプリット低速モードでは、第二モータ・ジェネレータMG2は、正回転(回転速度が正)しつつ正方向の回転駆動力を発生する状態となり、モータとして機能して力行する。
スプリット低速モードでは、入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される際のトルク変換比は、以下のようになる。すなわち、図8の下部に示すように、第一遊星歯車機構PG1、第三遊星歯車機構PG3のギヤ比(=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)がそれぞれλ1、λ3(λ1<1、λ3<1)である場合、出力軸Oに伝達される入力軸IのトルクをTOとすると、トルクTOは上記第一の実施形態と同様に、以下の式(1)により求まる。
TO=TE×{(1−λ1)×(1+λ3)}/λ3・・・(1)
よって、例えば、λ1=0.3、λ3=0.5であった場合、TO=2.1TEとなる。すなわち、この場合、スプリット低速モードでのトルク変換比(=〔出力軸Oのトルク〕/〔入力軸Iのトルク〕)は2.1となり、入力軸IのトルクTEは、2.1倍されて出力軸Oに伝達される。また、出力軸Oには、第二モータ・ジェネレータMG2が出力するMG2トルクT2も、第三遊星歯車機構PG3によって(1+λ3)/λ3倍に増幅されて伝達される。なお、各遊星歯車機構PG1、PG2、PG3のギヤ比λ1、λ2、λ3は、エンジンE、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の特性や車両重量等を考慮して適宜設定することができる。
以上に説明したように、スプリット低速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力、すなわちエンジントルクTEを増幅して出力軸Oに伝達することができるため、車速が比較的低い状態で使用される低速用のモードとなる。具体的には、スプリット低速モードは、出力軸Oの回転速度がゼロの状態(車両の発進時)から、第二遊星歯車装置PG2のキャリアca2の回転速度が第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1の回転速度に一致する状態となるまでの間で使用される。すなわち、スプリット低速モードでは、エンジンEの回転速度を一定とした場合、出力軸Oの回転速度がゼロの状態から、第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度を上昇させるとともに、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を下降させることにより、出力軸Oの回転速度を次第に上昇させて車両を発進させる。そして、出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度が下降し、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1の回転速度と第二遊星歯車装置PG2のキャリアca2の回転速度とが一致した際に、制御装置ECUは、第一クラッチC1を係合するとともに、ブレーキB1を解放する。これにより、スプリット低速モードから後述するスプリット高速モードに切り替えられる。このモード切り替えは、この際に係合する第一クラッチC1の両側の係合部材の回転速度が同じ状態で係合される同期切替となっている。ここで、第一クラッチC1の両側の係合部材の一方は、第一クラッチC1の入力側回転部材である第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第一モータ・ジェネレータMG1であり、当該係合部材の他方は第一クラッチC1の出力側回転部材である第二遊星歯車装置PG2のキャリアca2である。なお、制御装置ECUは、スプリット低速モードからスプリット高速モードへの切り替え後には、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の機能を入れ替え、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2のそれぞれの回転駆動力の出力方向も変更する。
2−4.スプリット高速モード
スプリット高速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のサンギヤs1と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のキャリアca1とに分配しつつ、上記のスプリット低速モードよりも小さいトルク変換比で入力軸Iの回転駆動力を出力軸Oに伝達するモードである。本実施形態においては、このスプリット高速モードでも、第一遊星歯車機構PG1が、入力軸Iの回転駆動力を分配する駆動力分配機構として機能する。そして、第二モータ・ジェネレータMG2が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとして機能する。また、第二遊星歯車機構PG2は、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力が分配されるとともに第一モータ・ジェネレータMG1に接続されている第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1の回転速度を、減速して出力軸Oに伝達する。一方、このスプリット高速モードでは、第三遊星歯車機構PG3は、特に機能しない。このような構成を実現するため、図3に示すように、スプリット高速モード(Hi)では、第一クラッチC1が係合状態とされることで、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第一モータ・ジェネレータMG1と第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2とが一体回転するように接続される。以下、スプリット高速モードでの各遊星歯車機構PG1〜PG3の動作及び機能について、図9に示す速度線図に基づいて詳細に説明する。
スプリット高速モードでは、第一遊星歯車機構PG1は、図9に直線L1として示すように、回転速度の順で中間となるリングギヤr1が入力軸I(エンジンE)と一体的に回転し、このリングギヤr1に伝達された入力軸Iの回転駆動力が回転速度の順で一方端となるサンギヤs1及び他方端となるキャリアca1に分配される。そして、サンギヤs1に分配された回転駆動力は、第一モータ・ジェネレータMG1に伝達されるとともに、第二遊星歯車機構PG2を介して出力軸Oに伝達される。また、キャリアca1に分配された回転駆動力は、第二モータ・ジェネレータMG2に伝達される。この際、エンジンEは、高い効率で排ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うよう)に維持されるよう制御されつつ正方向の回転駆動力(エンジントルクTE)を出力し、この回転駆動力が入力軸Iを介してリングギヤr1に伝達される。
また、第一モータ・ジェネレータMG1は、正方向の回転駆動力(MG1トルクT1)を出力することにより、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1から第二遊星歯車機構PG2を介して出力軸Oに伝達される入力軸I(エンジンE)の回転駆動力に対するアシストを行う。この際、図9に直線L2として示すように、第二遊星歯車機構PG2は、回転速度の順で一方端となるキャリアca2に第一モータ・ジェネレータMG1及び第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1が接続され、他方端となるサンギヤs2がケースDcに固定されている。このため、回転速度の順で中間となるリングギヤr2に接続された出力軸Oには、キャリアca2の回転速度が減速されて伝達される。したがって、第二遊星歯車機構PG2は、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1からキャリアca2に伝達された入力軸Iの回転駆動力及び第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力を、増幅して出力軸Oに伝達する。このスプリット高速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1は、正回転(回転速度が正)しつつ正方向の回転駆動力を発生する状態となり、モータとして機能して力行する。
一方、第二モータ・ジェネレータMG2は、負方向の回転駆動力(MG2トルクT2)を出力することにより、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力を第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1に伝達する。よって、このスプリット高速モードでは、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1と一体回転する第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力が、そのまま入力軸Iの回転駆動力の反力となる。この際、第二モータ・ジェネレータMG2は、正回転(回転速度が正)しつつ負方向の回転駆動力を発生する状態となり、ジェネレータとして機能して発電を行う。このように、スプリット低速モードとスプリット高速モードとでは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力受けとなるモータ・ジェネレータMG1、MG2が交替する。
スプリット高速モードでは、入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される際のトルク変換比は、以下のようになる。すなわち、図9の下部に示すように、第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2のギヤ比(=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)がλ1、λ2(λ1<1、λ2<1)である場合、出力軸Oに伝達される入力軸IのトルクをTOとすると、トルクTOは以下の式(3)により求まる。
TO=TE×λ1/(1−λ2)・・・(3)
よって、例えば、λ1=0.3、λ2=0.4であった場合、TO=0.5TEとなる。すなわち、この場合、スプリット高速モードでのトルク変換比(=〔出力軸Oのトルク〕/〔入力軸Iのトルク〕)は0.5となり、入力軸IのトルクTEは、0.5倍されて出力軸Oに伝達される。また、出力軸Oには、第一モータ・ジェネレータMG1が出力するMG1トルクT1も、上記のとおり、第二遊星歯車機構PG2によって1/(1−λ2)倍に増幅されて伝達される。
以上に説明したように、スプリット高速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力、すなわちエンジントルクTEを減少させて出力軸Oに伝達するモードであり、出力軸Oの回転速度に対してエンジンEの回転速度を低く抑えることができるため、車速が比較的高い状態で使用される高速用のモードとなる。具体的には、スプリット高速モードは、スプリット低速モードで次第に出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度が下降し、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1の回転速度と第二遊星歯車装置PG2のキャリアca2の回転速度とが一致してスプリット高速モードに切り替えられた状態から、更に出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が下降し、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3の回転速度が第二遊星歯車機構PGのキャリアca2の回転速度に一致する状態となるまでの間で使用される。すなわち、スプリット高速モードでは、エンジンEの回転速度を一定とした場合、スプリット低速モードから切り替えられた後、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を上昇させることにより、出力軸Oの回転速度を上昇させる。またこの際、反力受けとしての第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度を下降させる。そして、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3の回転速度が第二遊星歯車機構PGのキャリアca2の回転速度に一致し、図10に示すように、速度線図上で全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が同一直線状となった際に、制御装置ECUは、第一クラッチC1を係合状態としたまま、第二クラッチC2を係合する。これにより、スプリット高速モードから後述するパラレル増速モードに切り替えられる。このモード切り替えは、この際に係合する第二クラッチC2の両側の係合部材の回転速度が同じ状態で係合される同期切替となっている。ここで、第二クラッチC2の両側の係合部材の一方は、第二クラッチC2の入力側回転部材である第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2であり、当該係合部材の他方は第二クラッチC2の出力側回転部材である第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3である。なお、制御装置ECUは、スプリット高速モードからパラレル増速モードへの切り替え後には、基本的に、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は回転駆動力を出力しない状態とする。
2−5.パラレル増速モード
パラレル増速モードは、入力軸Iの回転速度に比例して、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まり、入力軸Iの回転速度が増速して出力軸Oに伝達されるモードである。このパラレル増速モードでは、第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3が一体的に動作する状態となり、図10に示すように、速度線図上で全ての遊星歯車機構PG1〜PG3を表す線が同一直線状となる。このように、全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が一体的に動作する状態となることにより、パラレル増速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方又は双方を動作させずに、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を出力軸Oに伝達して走行することが可能となる。また、この際、入力軸I(エンジンE)の回転速度を増速して出力軸Oに伝達するため、エンジンEの回転速度を低く抑えることも可能となる。このような構成を実現するため、図3に示すように、パラレル増速モード(OD)は、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の2つが係合状態とされることで実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合状態とされることによって第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1及び第一モータ・ジェネレータMG1と第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2とが一体回転するように接続され、第二クラッチC2が係合状態とされることによって第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2と第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3とが一体回転するように接続される。以下、パラレル増速モードでの各遊星歯車機構PG1〜PG3の動作及び機能について、図10に示す速度線図に基づいて詳細に説明する。
パラレル増速モードでは、図10に直線L1、L2、及びL3として示すように、速度線図上で第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3のそれぞれを表す線が同一直線状となり、遊星歯車装置PGを構成する全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が一体的に動作する状態となる。そして、このパラレル増速モードでは、遊星歯車装置PGは、全部で5個の回転要素を有する状態となる。また、この遊星歯車装置PGの5個の回転要素は、図10における左側から回転速度の順に、第二モータ・ジェネレータMG2と一体回転する回転要素であるキャリアca1及びサンギヤs3、ケースDcに固定された回転要素であるサンギヤs2、入力軸Iと一体回転する回転要素であるリングギヤr1、出力軸Oと一体回転する回転要素であるリングギヤr2及びキャリアca3、第一モータ・ジェネレータMG1と一体回転する回転要素であるサンギヤs1、キャリアca2及びリングギヤr3となっている。このように、遊星歯車装置PGの全体が一体的に動作する状態で、一つの回転要素であるサンギヤs2がケースDcに固定されていることにより、入力軸I(エンジンE)の回転速度に応じて、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まる。また、回転速度の順で、ケースDcに固定される回転要素(s2)と出力軸Oに接続された回転要素との間に、入力軸Iに接続された回転要素が設けられていることにより、入力軸I(エンジンE)の回転速度が増速して出力軸Oに伝達される。
この際、エンジンEは、車速及び要求駆動力に応じて、適切な回転速度及び回転駆動力(エンジントルクTE)を出力するように制御される。また、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、基本的には、入力軸I(エンジンE)の回転速度に応じて定まる回転速度で回転しつつ、回転駆動力を出力しない状態に制御される。すなわち、このパラレル増速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、基本的には、モータ及びジェネレータのいずれとしても機能せず、力行も発電も行わない。但し、要求駆動力に対して、エンジンEの回転駆動力が不足する場合などには、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方又は双方をモータとして力行させることも可能である。また、バッテリ11の充電量が不足した場合などには、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方又は双方をジェネレータとして発電させることも可能である。或いは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方をジェネレータとして発電させ、当該発電により得た電力を用いて他方をモータとして力行させることも可能である。
以上に説明したように、パラレル増速モードは、遊星歯車装置PGを構成する全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が一体的に動作することにより、入力軸Iの回転速度に比例して、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まる状態になるとともに、入力軸I(エンジンE)の回転速度が増速されて出力軸Oに伝達されるモードである。したがって、このパラレル増速モードは、車速が高い状態であって、要求駆動力が小さく、またその変化も少ない状況で使用される、スプリット高速モードよりも更に高速域に適したモードである。すなわち、このパラレル増速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2を動作させずに入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を出力軸Oに伝達して走行することができる。したがって、要求駆動力の変化が少ない状況において、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の動作によるエネルギー損失を抑制することができる。また、このとき、入力軸I(エンジンE)の回転速度を増速して出力軸Oに伝達するため、出力軸Oに伝達されるエンジントルクTEは小さくなるが、エンジンEの回転速度を低く抑えることが可能となる。したがって、エンジンを高い効率で動作させることができる。このパラレル増速モードは、スプリット高速モードで出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が下降し、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3の回転速度が第二遊星歯車機構PGのキャリアca2の回転速度に一致してパラレル増速モードに切り替えられた状態よりも、出力軸Oの回転速度が高い領域で使用される。
3.第三の実施形態
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。図11は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの構成を示すスケルトン図である。なお、この図11は、図1と同様に、中心軸に対称な下半分の構成を省略して示している。このハイブリッド駆動装置Hは、スプリット低速モード、スプリット高速モード、及びパラレル増速モードの3つの動作モードを切り替え可能に備えている点で、上記第一及び第二の実施形態と同様であるが、これらの各モードを実現可能とするための装置の具体的構成が異なっている。以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて、上記第一の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hのシステム構成は図2と同様であるのでその点についての説明は省略する。また、その他の構成についても、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
3−1.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
図11に示すように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、遊星歯車装置PGを構成する第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3の具体的構成が、上記第一の実施形態と異なっている。以下、各遊星歯車機構PG1〜PG3のそれぞれの構成について詳細に説明する。
図11に示すように、第一遊星歯車機構PG1は、入力軸I及び出力軸Oと同軸状に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、第一遊星歯車機構PG1は、複数対のピニオンギヤを支持するキャリアca1と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs1及びリングギヤr1とを回転要素として有している。キャリアca1は、第二モータ・ジェネレータMG2のロータRo2及び第三遊星歯車機構PG3のサンギヤs3と一体回転するように接続されている。リングギヤr1は、入力軸Iと一体回転するように接続されている。サンギヤs1は、第一モータ・ジェネレータMG1のロータRo1及び第二遊星歯車装置PG2のキャリアca2と一体回転するように接続されているとともに、クラッチC1を介して第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3と選択的に接続される。これにより、第一遊星歯車機構PG1は、スプリット低速モード及びスプリット高速モードにおいて、入力軸Iの回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素であるサンギヤs1と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素であるキャリアca1とに分配する駆動力分配機構として機能する。本実施形態においては、この第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1、リングギヤr1、サンギヤs1が、それぞれ第一遊星歯車機構PG1の「第一回転要素e1」、「第二回転要素e2」、「第三回転要素e3」に相当する。
第二遊星歯車機構PG2は、入力軸I及び出力軸Oと同軸状に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、第二遊星歯車機構PG2は、複数対のピニオンギヤを支持するキャリアca2と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs2及びリングギヤr2とを回転要素として有している。サンギヤs2は、第二ブレーキB2を介してケースDcに選択的に固定される。リングギヤr2は、第三遊星歯車機構PG3のキャリアca3及び出力軸Oと一体回転するように接続されている。キャリアca2は、第一モータ・ジェネレータMG1のロータRo1及び第一遊星歯車装置PG1のサンギヤs1と一体回転するように接続されているとともに、クラッチC1を介して第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3と選択的に接続される。本実施形態においては、この第二遊星歯車機構PG2のサンギヤs2、リングギヤr2、キャリアca2が、それぞれ第二遊星歯車機構PG2の「第一回転要素e1」、「第二回転要素e2」、「第三回転要素e3」に相当する。
第三遊星歯車機構PG3は、入力軸I及び出力軸Oと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、第三遊星歯車機構PG3は、複数のピニオンギヤを支持するキャリアca3と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs3及びリングギヤr3とを回転要素として有している。サンギヤs3は、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1及び第二モータ・ジェネレータMG2のロータRo2と一体回転するように接続されている。キャリアca3は、出力軸O及び第二遊星歯車装置PG2のリングギヤr2と一体回転するように接続されている。リングギヤr3は、第一ブレーキB1によりケースDcに選択的に固定されるとともに、クラッチC1を介して第二遊星歯車機構PGのキャリアca2に選択的に接続される。本実施形態においては、この第三遊星歯車機構PG3のサンギヤs3、キャリアca3、リングギヤr3が、それぞれ第三遊星歯車機構PG3の「第一回転要素e1」、「第二回転要素e2」、「第三回転要素e3」に相当する。また、リングギヤr3が、第三遊星歯車機構PG3の「選択固定回転要素」に相当する。以上のように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの構成によれば、上記第一及び第二の実施形態の構成と比べて、一般的にクラッチよりも体積が小さいブレーキの数を増やして第一ブレーキB1及び第二ブレーキB2の2つとし、クラッチの数を減らして一つとしているため、更なる装置の小型化を図ることが可能となっている。
3−2.ハイブリッド駆動装置の動作モード
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hにより実現可能な動作モードについて説明する。図12は、各動作モードでの複数の摩擦係合要素C1、B1、B2の作動状態を示す作動表である。図13〜図15は、遊星歯車装置PGの速度線図を示しており、図13はスプリット低速モードでの速度線図、図14はスプリット高速モードでの速度線図、図15はパラレル増速モードでの速度線図をそれぞれ示している。これらの速度線図の記載方式は、上記第一の実施形態に係る図4〜図6と同様である。
図12〜図15に示すように、このハイブリッド駆動装置Hは、上記第一及び第二の実施形態と同様に、スプリット低速モード、スプリット高速モード、及びパラレル増速モードの3つの動作モードを切り替え可能に備えた構成となっている。ここで、スプリット低速モード及びスプリット高速モードは、いずれも、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のサンギヤs1と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のキャリアca1とに分配する状態となるスプリットモードである。このスプリットモードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2のいずれか一方が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとなる。そして、スプリット低速モードとスプリット高速モードとは、入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される際のトルク変換比(=〔出力軸Oのトルク〕/〔入力軸Iのトルク〕)が互いに異なっている。本実施形態においても、スプリット低速モードが本発明におけるスプリット第一モードに相当し、スプリット高速モードが本発明におけるスプリット第二モードに相当する。一方、パラレル増速モードは、入力軸Iの回転速度に比例して、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まり、入力軸Iの回転速度が増速して出力軸Oに伝達されるモードである。以下、各動作モードでのハイブリッド駆動装置Hの動作状態について詳細に説明する。
3−3.スプリット低速モード
スプリット低速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のサンギヤs1と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のキャリアca1とに分配しつつ、後述するスプリット高速モードよりも大きいトルク変換比で入力軸Iの回転駆動力を出力軸Oに伝達するモードである。このスプリット低速モードでは、第一遊星歯車機構PG1が、入力軸Iの回転駆動力を分配する駆動力分配機構として機能し、第一モータ・ジェネレータMG1が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとして機能する。また、第三遊星歯車機構PG3は、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力が分配されるとともに第二モータ・ジェネレータMG2に接続されている第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1の回転速度を、減速して出力軸Oに伝達する。一方、このスプリット低速モードでは、第二遊星歯車機構PG2は、特に機能しない。このような構成を実現するため、図12に示すように、スプリット低速モード(Lo)では、第一ブレーキB1が係合状態とされることで第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3がケースDcに固定される。以下、スプリット低速モードでの各遊星歯車機構PG1〜PG3の動作及び機能について、図13に示す速度線図に基づいて詳細に説明する。
スプリット低速モードでは、第一遊星歯車機構PG1は、図13に直線L1として示すように、回転速度の順で中間となるリングギヤr1が入力軸I(エンジンE)と一体的に回転し、このリングギヤr1に伝達された入力軸Iの回転駆動力が回転速度の順で一方端となるサンギヤs1及び他方端となるキャリアca1に分配される。そして、サンギヤs1に分配された回転駆動力は、第一モータ・ジェネレータMG1に伝達される。また、キャリアca1に分配された回転駆動力は、第二モータ・ジェネレータMG2に伝達されるとともに、第三遊星歯車機構PG3を介して出力軸Oに伝達される。この際、エンジンEは、高い効率で排ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うよう)に維持されるよう制御されつつ正方向の回転駆動力(エンジントルクTE)を出力し、この回転駆動力が入力軸Iを介してリングギヤr1に伝達される。
また、第一モータ・ジェネレータMG1は、負方向の回転駆動力(MG1トルクT1)を出力することにより、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力を第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1に伝達する。よって、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1と一体回転する第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力が、そのまま入力軸Iの回転駆動力の反力となる。このスプリット低速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1は、正回転(回転速度が正)しつつ負方向の回転駆動力を発生する状態となり、ジェネレータとして機能して発電を行う。
一方、第二モータ・ジェネレータMG2は、正方向の回転駆動力(MG2トルクT2)を出力することにより、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1から第三遊星歯車機構PG3を介して出力軸Oに伝達される入力軸I(エンジンE)の回転駆動力に対するアシストを行う。この際、図13に直線L3として示すように、第三遊星歯車機構PG3は、回転速度の順で一方端となるサンギヤs3に第二モータ・ジェネレータMG2及び第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1が接続され、他方端となるリングギヤr3が第一ブレーキB1によりケースDcに固定される。このため、回転速度の順で中間となるキャリアca3に接続された出力軸Oには、サンギヤs3の回転速度が減速されて伝達される。したがって、第三遊星歯車機構PG3は、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1からサンギヤs3に伝達された入力軸Iの回転駆動力及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力を、増幅して出力軸Oに伝達する。このスプリット低速モードでは、第二モータ・ジェネレータMG2は、正回転(回転速度が正)しつつ正方向の回転駆動力を発生する状態となり、モータとして機能して力行する。
スプリット低速モードでは、入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される際のトルク変換比は、以下のようになる。すなわち、図13の下部に示すように、第一遊星歯車機構PG1、第三遊星歯車機構PG3のギヤ比(=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)がそれぞれλ1、λ3(λ1<1、λ3<1)である場合、出力軸Oに伝達される入力軸IのトルクをTOとすると、トルクTOは上記第一及び第二の実施形態と同様に、以下の式(1)により求まる。
TO=TE×{(1−λ1)×(1+λ3)}/λ3・・・(1)
よって、例えば、λ1=0.3、λ3=0.5であった場合、TO=2.1TEとなる。すなわち、この場合、スプリット低速モードでのトルク変換比(=〔出力軸Oのトルク〕/〔入力軸Iのトルク〕)は2.1となり、入力軸IのトルクTEは、2.1倍されて出力軸Oに伝達される。また、出力軸Oには、第二モータ・ジェネレータMG2が出力するMG2トルクT2も、第三遊星歯車機構PG3によって(1+λ3)/λ3倍に増幅されて伝達される。なお、各遊星歯車機構PG1、PG2、PG3のギヤ比λ1、λ2、λ3は、エンジンE、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の特性や車両重量等を考慮して適宜設定することができる。
以上に説明したように、スプリット低速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力、すなわちエンジントルクTEを増幅して出力軸Oに伝達することができるため、車速が比較的低い状態で使用される低速用のモードとなる。具体的には、スプリット低速モードは、出力軸Oの回転速度がゼロの状態(車両の発進時)から、第二遊星歯車装置PG2のサンギヤs2の回転速度がゼロになるまでの間で使用される。すなわち、スプリット低速モードでは、エンジンEの回転速度を一定とした場合、出力軸Oの回転速度がゼロの状態から、第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度を上昇させるとともに、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を下降させることにより、出力軸Oの回転速度を次第に上昇させて車両を発進させる。そして、出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度が下降し、第二遊星歯車装置PG2のサンギヤs2の回転速度がゼロになった際に、制御装置ECUは、第二ブレーキB2を係合するとともに、第一ブレーキB1を解放する。これにより、スプリット低速モードから後述するスプリット高速モードに切り替えられる。このモード切り替えは、この際に係合する第二ブレーキB2の両側の係合部材の回転速度が同じ状態で係合される同期切替となっている。ここで、第二ブレーキB2の両側の係合部材の一方は、回転部材である第二遊星歯車機構PG2のサンギヤs2であり、当該係合部材の他方は非回転部材であるケースDcである。なお、制御装置ECUは、スプリット低速モードからスプリット高速モードへの切り替え後には、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の機能を入れ替え、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2のそれぞれの回転駆動力の出力方向も変更する。
3−4.スプリット高速モード
スプリット高速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を、第一モータ・ジェネレータMG1に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のサンギヤs1と、第二モータ・ジェネレータMG2に接続された回転要素である第一遊星歯車装置PG1のキャリアca1とに分配しつつ、上記のスプリット低速モードよりも小さいトルク変換比で入力軸Iの回転駆動力を出力軸Oに伝達するモードである。本実施形態においては、このスプリット高速モードでも、第一遊星歯車機構PG1が、入力軸Iの回転駆動力を分配する駆動力分配機構として機能する。そして、第二モータ・ジェネレータMG2が入力軸Iの回転駆動力の反力受けとして機能する。また、第二遊星歯車機構PG2は、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力が分配されるとともに第一モータ・ジェネレータMG1に接続されている第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1の回転速度を、減速して出力軸Oに伝達する。一方、このスプリット高速モードでは、第三遊星歯車機構PG3は、特に機能しない。このような構成を実現するため、図12に示すように、スプリット高速モード(Hi)では、第二ブレーキB2が係合状態とされることで、第二遊星歯車機構PG2のサンギヤs2がケースDcに固定される。以下、スプリット高速モードでの各遊星歯車機構PG1〜PG3の動作及び機能について、図14に示す速度線図に基づいて詳細に説明する。
スプリット高速モードでは、第一遊星歯車機構PG1は、図14に直線L1として示すように、回転速度の順で中間となるリングギヤr1が入力軸I(エンジンE)と一体的に回転し、このリングギヤr1に伝達された入力軸Iの回転駆動力が回転速度の順で一方端となるサンギヤs1及び他方端となるキャリアca1に分配される。そして、サンギヤs1に分配された回転駆動力は、第一モータ・ジェネレータMG1に伝達されるとともに、第二遊星歯車機構PG2を介して出力軸Oに伝達される。また、キャリアca1に分配された回転駆動力は、第二モータ・ジェネレータMG2に伝達される。この際、エンジンEは、高い効率で排ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うよう)に維持されるよう制御されつつ正方向の回転駆動力(エンジントルクTE)を出力し、この回転駆動力が入力軸Iを介してリングギヤr1に伝達される。
また、第一モータ・ジェネレータMG1は、正方向の回転駆動力(MG1トルクT1)を出力することにより、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1から第二遊星歯車機構PG2を介して出力軸Oに伝達される入力軸I(エンジンE)の回転駆動力に対するアシストを行う。この際、図14に直線L2として示すように、第二遊星歯車機構PG2は、回転速度の順で一方端となるキャリアca2に第一モータ・ジェネレータMG1及び第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1が接続され、他方端となるサンギヤs2がケースDcに固定されている。このため、回転速度の順で中間となるリングギヤr2に接続された出力軸Oには、キャリアca2の回転速度が減速されて伝達される。したがって、第二遊星歯車機構PG2は、第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1からキャリアca2に伝達された入力軸Iの回転駆動力及び第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力を、増幅して出力軸Oに伝達する。このスプリット高速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1は、正回転(回転速度が正)しつつ正方向の回転駆動力を発生する状態となり、モータとして機能して力行する。
一方、第二モータ・ジェネレータMG2は、負方向の回転駆動力(MG2トルクT2)を出力することにより、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力を第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1に伝達する。よって、このスプリット高速モードでは、第一遊星歯車機構PG1のキャリアca1と一体回転する第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力が、そのまま入力軸Iの回転駆動力の反力となる。この際、第二モータ・ジェネレータMG2は、正回転(回転速度が正)しつつ負方向の回転駆動力を発生する状態となり、ジェネレータとして機能して発電を行う。このように、スプリット低速モードとスプリット高速モードとでは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力受けとなるモータ・ジェネレータMG1、MG2が交替する。
スプリット高速モードでは、入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される際のトルク変換比は、以下のようになる。すなわち、図14の下部に示すように、第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2のギヤ比(=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)がλ1、λ2(λ1<1、λ2<1)である場合、出力軸Oに伝達される入力軸IのトルクをTOとすると、トルクTOは上記第二の実施形態と同様に、以下の式(3)により求まる。
TO=TE×λ1/(1−λ2)・・・(3)
よって、例えば、λ1=0.3、λ2=0.4であった場合、TO=0.5TEとなる。すなわち、この場合、スプリット高速モードでのトルク変換比(=〔出力軸Oのトルク〕/〔入力軸Iのトルク〕)は0.5となり、入力軸IのトルクTEは、0.5倍されて出力軸Oに伝達される。また、出力軸Oには、第一モータ・ジェネレータMG1が出力するMG1トルクT1も、上記のとおり、第二遊星歯車機構PG2によって1/(1−λ2)倍に増幅されて伝達される。
以上に説明したように、スプリット高速モードは、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力、すなわちエンジントルクTEを減少させて出力軸Oに伝達するモードであり、出力軸Oの回転速度に対してエンジンEの回転速度を低く抑えることができるため、車速が比較的高い状態で使用される高速用のモードとなる。具体的には、スプリット高速モードは、スプリット低速モードで次第に出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度が下降し、第二遊星歯車装置PG2のサンギヤs2の回転速度がゼロになってスプリット高速モードに切り替えられた状態から、更に出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が下降し、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3の回転速度が第二遊星歯車機構PGのキャリアca2の回転速度に一致する状態となるまでの間で使用される。すなわち、スプリット高速モードでは、エンジンEの回転速度を一定とした場合、スプリット低速モードから切り替えられた後、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を上昇させることにより、出力軸Oの回転速度を上昇させる。またこの際、反力受けとしての第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度を下降させる。そして、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3の回転速度が第二遊星歯車機構PGのキャリアca2の回転速度に一致し、図15に示すように、速度線図上で全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が同一直線状となった際に、制御装置ECUは、第二ブレーキB2を係合状態としたまま、クラッチC1を係合する。これにより、スプリット高速モードから後述するパラレル増速モードに切り替えられる。このモード切り替えは、この際に係合するクラッチC1の両側の係合部材の回転速度が同じ状態で係合される同期切替となっている。ここで、クラッチC1の両側の係合部材の一方は、クラッチC1の入力側回転部材である第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2であり、当該係合部材の他方はクラッチC1の出力側回転部材である第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3である。なお、制御装置ECUは、スプリット高速モードからパラレル増速モードへの切り替え後には、基本的に、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は回転駆動力を出力しない状態とする。
3−5.パラレル増速モード
パラレル増速モードは、入力軸Iの回転速度に比例して、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まり、入力軸Iの回転速度が増速して出力軸Oに伝達されるモードである。このパラレル増速モードでは、第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3が一体的に動作する状態となり、図15に示すように、速度線図上で全ての遊星歯車機構PG1〜PG3を表す線が同一直線状となる。このように、全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が一体的に動作する状態となることにより、パラレル増速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方又は双方を動作させずに、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を出力軸Oに伝達して走行することが可能となる。また、この際、入力軸I(エンジンE)の回転速度を増速して出力軸Oに伝達するため、エンジンEの回転速度を低く抑えることも可能となる。このような構成を実現するため、図12に示すように、パラレル増速モード(OD)は、クラッチC1及び第二ブレーキB2の2つが係合状態とされることで実現される。すなわち、クラッチC1が係合状態とされることによって第一遊星歯車機構PG1のサンギヤs1、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二遊星歯車機構PG2のキャリアca2と、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3とが一体回転するように接続され、第二ブレーキB2が係合状態とされることによって第二遊星歯車機構PG2のサンギヤs2がケースDcに固定される。以下、パラレル増速モードでの各遊星歯車機構PG1〜PG3の動作及び機能について、図15に示す速度線図に基づいて詳細に説明する。
パラレル増速モードでは、図15に直線L1、L2、及びL3として示すように、速度線図上で第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3のそれぞれを表す線が同一直線状となり、遊星歯車装置PGを構成する全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が一体的に動作する状態となる。そして、このパラレル増速モードでは、遊星歯車装置PGは、全部で5個の回転要素を有する状態となる。また、この遊星歯車装置PGの5個の回転要素は、図15における左側から回転速度の順に、第二モータ・ジェネレータMG2と一体回転する回転要素であるキャリアca1及びサンギヤs3、第二ブレーキB2によりケースDcに固定された回転要素であるサンギヤs2、入力軸Iと一体回転する回転要素であるリングギヤr1、出力軸Oと一体回転する回転要素であるリングギヤr2及びキャリアca3、第一モータ・ジェネレータMG1と一体回転する回転要素であるサンギヤs1、キャリアca2及びリングギヤr3となっている。このように、遊星歯車装置PGの全体が一体的に動作する状態で、一つの回転要素であるサンギヤs2がケースDcに固定されていることにより、入力軸I(エンジンE)の回転速度に応じて、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まる。また、回転速度の順で、ケースDcに固定される回転要素(s2)と出力軸Oに接続された回転要素との間に、入力軸Iに接続された回転要素が設けられていることにより、入力軸I(エンジンE)の回転速度が増速して出力軸Oに伝達される。
この際、エンジンEは、車速及び要求駆動力に応じて、適切な回転速度及び回転駆動力(エンジントルクTE)を出力するように制御される。また、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、基本的には、入力軸I(エンジンE)の回転速度に応じて定まる回転速度で回転しつつ、回転駆動力を出力しない状態に制御される。すなわち、このパラレル増速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、基本的には、モータ及びジェネレータのいずれとしても機能せず、力行も発電も行わない。但し、要求駆動力に対して、エンジンEの回転駆動力が不足する場合などには、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方又は双方をモータとして力行させることも可能である。また、バッテリ11の充電量が不足した場合などには、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方又は双方をジェネレータとして発電させることも可能である。或いは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の一方をジェネレータとして発電させ、当該発電により得た電力を用いて他方をモータとして力行させることも可能である。
以上に説明したように、パラレル増速モードは、遊星歯車装置PGを構成する全ての遊星歯車機構PG1〜PG3が一体的に動作することにより、入力軸Iの回転速度に比例して、出力軸O、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が定まる状態になるとともに、入力軸I(エンジンE)の回転速度が増速されて出力軸Oに伝達されるモードである。したがって、このパラレル増速モードは、車速が高い状態であって、要求駆動力が小さく、またその変化も少ない状況で使用される、スプリット高速モードよりも更に高速域に適したモードである。すなわち、このパラレル増速モードでは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2を動作させずに入力軸I(エンジンE)の回転駆動力を出力軸Oに伝達して走行することができる。したがって、要求駆動力の変化が少ない状況において、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の動作によるエネルギー損失を抑制することができる。また、このとき、入力軸I(エンジンE)の回転速度を増速して出力軸Oに伝達するため、出力軸Oに伝達されるエンジントルクTEは小さくなるが、エンジンEの回転速度を低く抑えることが可能となる。したがって、エンジンを高い効率で動作させることができる。このパラレル増速モードは、スプリット高速モードで出力軸Oの回転速度が上昇するとともに第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度が下降し、第三遊星歯車機構PG3のリングギヤr3の回転速度が第二遊星歯車機構PGのキャリアca2の回転速度に一致してパラレル増速モードに切り替えられた状態よりも、出力軸Oの回転速度が高い領域で使用される。
4.その他の実施形態
(1)上記の各実施形態では、ハイブリッド駆動装置Hが、スプリット低速モード、スプリット高速モード、及びパラレル増速モードの3つの動作モードを切り替え可能に備えた構成について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、前記3つのモードに加えて、更に他のモードを切り替え可能に備えた構成としても好適である。
(2)上記の各実施形態では、遊星歯車装置PGが第一から第三の3つの遊星歯車機構PG1〜PG3を組み合わせて構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、遊星歯車装置PGが4つ以上の遊星歯車機構を組み合わせて構成されたものとすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(3)上記の各実施形態では、スプリット低速モードとスプリット高速モードとで、入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力受けとなるモータ・ジェネレータMG1、MG2が交替する構成について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2のいずれか一方が、スプリット低速モード及びスプリット高速モードの両方で入力軸I(エンジンE)の回転駆動力の反力受けとなる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(4)また、上記の各実施形態において説明した遊星歯車装置PG及びこれを構成する第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、及び第三遊星歯車機構PG3の構成、並びにこれらの各回転要素に対する摩擦係合要素の配置構成は単なる例示であり、上記以外の構成によっても本発明の構成を実現することが可能な全ての構成が、本発明の適用範囲に含まれる。
本発明は、エンジンと2つの回転電機とを駆動力源として備えたハイブリッド車両に好適に利用することができる。
本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のスケルトン図 第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のシステム構成を示す模式図 第一の実施形態に係る作動表を示す図 第一の実施形態に係るスプリット低速モードでの速度線図 第一の実施形態に係るスプリット高速モードでの速度線図 第一の実施形態に係るパラレル増速モードでの速度線図 本発明の第二の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のスケルトン図 第二の実施形態に係るスプリット低速モードでの速度線図 第二の実施形態に係るスプリット高速モードでの速度線図 第二の実施形態に係るパラレル増速モードでの速度線図 本発明の第三の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のスケルトン図 第三の実施形態に係る作動表を示す図 第三の実施形態に係るスプリット低速モードでの速度線図 第三の実施形態に係るスプリット高速モードでの速度線図 第三の実施形態に係るパラレル増速モードでの速度線図
符号の説明
H:ハイブリッド駆動装置
E:エンジン
I:入力軸(入力部材)
O:出力軸(出力部材)
MG1:第一モータ・ジェネレータ(第一回転電機)
MG2:第二モータ・ジェネレータ(第二回転電機)
PG:遊星歯車装置
PG1:第一遊星歯車機構
PG2:第二遊星歯車機構
PG3:第三遊星歯車機構
r3:リングギヤ(選択固定回転要素)
e1:第一回転要素
e2:第二回転要素
e3:第三回転要素
C1:第一クラッチ(クラッチ)
C2:第二クラッチ
B1:ブレーキ(第一ブレーキ)
B2:第二ブレーキ
Dc:ケース(非回転部材)
W:車輪

Claims (2)

  1. エンジンに接続された入力部材と、車輪に接続された出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、少なくとも4つの回転要素を有し、前記入力部材、前記出力部材、前記第一回転電機、及び前記第二回転電機がそれぞれ異なる回転要素に接続された遊星歯車装置と、を備えたハイブリッド駆動装置であって、
    前記入力部材の回転駆動力が、前記第一回転電機に接続された回転要素と前記第二回転電機に接続された回転要素とに分配され、前記第一回転電機及び前記第二回転電機のいずれか一方が前記入力部材の回転駆動力の反力受けとなる2つのモードであって、前記入力部材の回転駆動力が前記出力部材に伝達される際のトルク変換比が互いに異なるスプリット第一モードとスプリット第二モードとを切り替え可能に備えるとともに、
    前記入力部材の回転速度に比例して、前記出力部材、前記第一回転電機、及び前記第二回転電機の回転速度が定まり、前記入力部材の回転速度が増速して前記出力部材に伝達されるパラレル増速モードを切り替え可能に備え
    前記スプリット第一モードと前記スプリット第二モードとの間の切り替え、及び前記スプリット第二モードと前記パラレル増速モードとの間の切り替えに際して、それらのモード切り替えの際に係合する摩擦係合手段の両側の係合部材の回転速度が同じ状態で係合される同期切替が可能に構成されており、
    前記遊星歯車装置は、複数の摩擦係合要素を備え、少なくとも2つの摩擦係合要素の係合状態で前記パラレル増速モードが実現され、
    前記遊星歯車装置は、3つの回転要素をそれぞれ有する第一遊星歯車機構、第二遊星歯車機構、及び第三遊星歯車機構を組み合わせて構成され、
    前記第一遊星歯車機構の一つの回転要素に前記入力部材が接続され、前記第三遊星歯車機構の一つの回転要素に前記出力部材が接続され、
    前記スプリット第一モードと前記スプリット第二モードとで、前記第一回転電機及び前記第二回転電機のいずれか一方の前記反力受けとなる回転電機が交替し、
    前記スプリット第一モードでは前記第一回転電機が前記反力受けとなり、前記スプリット第二モードでは前記第二回転電機が前記反力受けとなり、
    前記スプリット第一モード及び前記スプリット第二モードで、少なくとも前記第一遊星歯車機構が、前記第一回転電機に接続された回転要素と前記第二回転電機に接続された回転要素とに前記入力部材の回転駆動力を分配する駆動力分配機構として機能し、
    前記スプリット第一モードで、前記第三遊星歯車機構が、前記第二回転電機に接続された回転要素の回転速度を減速して前記出力部材に伝達し、
    前記第一回転電機が前記第二遊星歯車機構の一つの回転要素に接続され、
    前記スプリット第一モード及び前記スプリット第二モードで、前記第二遊星歯車機構が、前記第一回転電機の回転速度を減速して前記第一遊星歯車機構に伝達するハイブリッド駆動装置。
  2. 前記第三遊星歯車機構の一つの回転要素が、ブレーキにより非回転部材に選択的に固定される選択固定回転要素であり、この選択固定回転要素と前記前記第一回転電機に接続された回転要素とを選択的に接続するクラッチを備える請求項に記載のハイブリッド駆動装置。
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