本発明において、好適には、前記電気経路において伝達可能な動力の量が小さい場合には、大きい場合よりも、前記自動変速機をアップシフトすることとは、前記伝達可能な動力の量が小さい場合には、大きい場合に用いられる前記自動変速機の変速制御用の変速線に対して低車速側へ変更された変速線を用いることである。つまり、前記伝達可能な動力の量が小さい場合には、大きい場合よりも、前記自動変速機の変速制御用の変速線を低車速側へ変更することである。これにより、前記電気経路において伝達可能な動力の量が小さい場合には、大きい場合よりも前記自動変速機を早めにアップシフトしたり、高車速側ギヤ段をより長く維持することができる。
また、好適には、燃費とは単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。
また、好適には、回転機器の動作点とは、その回転機器の回転速度及び出力トルクなどで示されるその回転機器の動作状態を示す動作点である。例えば、前記エンジンの動作点とは、そのエンジンの回転速度及び出力トルクなどで示されるそのエンジンの動作状態を示す動作点である。言い換えれば、そのエンジンの回転速度を示す軸とそのエンジンの出力トルクを示す軸との2次元座標内における1点で示されるエンジンの動作状態である。
また、好適には、前記第1電動機のトルクを調節すること、すなわち前記電気経路において伝達される動力(電力)を調節することは、前記電気経路又は前記機械経路の動力伝達比率を調節することである。
また、好適には、前記電気経路は、前記第1電動機が発電した電力の全部又は一部が前記第2電動機に供給されることにより動力伝達が電気的になされる動力伝達経路である。
図1は、本発明の一実施例の車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、車両用駆動装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の車両に好適に採用されるものであり、内燃機関であるエンジン12と、そのエンジン12のクランク軸14に連結されたトルクコンバータ(流体伝動装置)16と、そのトルクコンバータ16の出力側に連結された自動変速機18と、エンジン12とトルクコンバータ16との間に配設されてクランク軸14(換言すればトルクコンバータ16の入力側)に連結された第1電動機MG1と、トルクコンバータ16と自動変速機18との間に配設されて自動変速機18の入力軸20に連結された第2電動機MG2とを備えている。
トルクコンバータ16は、エンジン12からの動力が入力される入力側回転要素であるポンプ翼車16pと、駆動輪26へ動力を出力する出力側回転要素であるタービン翼車16tと、ステータ翼車16sと、一方向クラッチF1とを備えた流体伝動装置である。そのポンプ翼車16pすなわちポンプインペラは、エンジン12のクランク軸14と第1電動機MG1とに連結されており、そのエンジン12により回転駆動されることによってトルクコンバータ16内の作動油の流動による流体流を発生させる。タービン翼車16tすなわちタービンランナは、自動変速機18の入力軸20に連結されており、上記ポンプ翼車16pからの流体流を受けて回転させられる。従って、この入力軸20は、トルクコンバータ16の出力軸すなわちタービン軸としても機能するものである。また、トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16pとタービン翼車16tとの間を選択的に連結するロックアップクラッチLCを備えている。このロックアップクラッチLCが完全係合状態とされた場合には、クランク軸14と入力軸20との間のトルク伝達がトルクコンバータ16内の作動油を介さずに直接的に行われる。図1から判るように本実施例では、エンジン12と第1電動機MG1とポンプ翼車16pとは直列に連結されているので、ポンプ翼車16pの回転速度Np(以下、ポンプ回転速度Npという)は第1電動機MG1の回転速度Nmg1(以下、第1電動機回転速度Nmg1という)及びエンジン12の回転速度Ne(以下、エンジン回転速度Neという)と同じである。また、タービン翼車16tと第2電動機MG2と自動変速機18の入力軸20とは直列に連結されているので、タービン翼車16tの回転速度Nt(以下、タービン回転速度Ntという)は第2電動機MG2の回転速度Nmg2(以下、第2電動機回転速度Nmg2という)及び入力軸20の回転速度Natin(以下、変速機入力回転速度Natinという)と同じである。
第1電動機MG1は、エンジン12のクランク軸14に例えば脈動を吸収するダンパ等を介して直列に連結されており、トルクコンバータ16のポンプ翼車16pに直接連結されている。要するに、第1電動機MG1はエンジン12とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路に連結されている。また、第2電動機MG2は、トルクコンバータ16と駆動輪26との間の動力伝達経路に連結されており、詳細には、自動変速機18等を介して間接的に駆動輪26に連結されている。第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、駆動トルクを発生させる電動モータとしての機能と回生トルクを発生させる発電機としての機能とが選択的に得られるように構成された回転機であって、例えば交流同期型のモータジェネレータにより構成される。また、バッテリである蓄電装置36と電動機MG1,MG2を制御する為のインバータ38とが車両用駆動装置10に設けられており(図3参照)、その蓄電装置36と第1電動機MG1と第2電動機MG2とは相互に電力授受可能に接続されている。上記第1電動機MG1及び第2電動機MG2はそれぞれ、その駆動によってクランク軸14及び入力軸20に正回転方向の駆動トルクを付与することができる。また、第1電動機MG1及び第2電動機MG2はそれぞれ、その発電(回生)によってクランク軸14及び入力軸20に負回転方向の負荷トルクすなわち制動トルクを付与すると共に、車両に設けられた蓄電装置36をインバータ38を介して充電することができる。尚、上記クランク軸14及び入力軸20の正回転方向とは、エンジン12の駆動時におけるクランク軸14の回転方向であり、上記負回転方向とはその正回転方向とは逆向きの回転方向である。
自動変速機18は、トルクコンバータ16と駆動輪26との間に介装されて、トルクコンバータ16のタービン翼車16tと駆動輪26との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機である。具体的に、自動変速機18は、非回転部材であるトランスミッションケース24内に、第1遊星歯車装置30、第2遊星歯車装置32、第3遊星歯車装置34、及び複数の油圧式摩擦係合装置C1,C2,B1,B2,B3を備えた公知の遊星歯車式多段変速機である。自動変速機18は、入力回転部材である入力軸20に入力されたエンジン12の動力を、出力回転部材である出力歯車22から駆動輪26に向けて出力する。そして、この自動変速機18においては、公知の各油圧式摩擦係合装置(クラッチC1、C2、ブレーキB1、B2、B3)が図2に示す所定の作動表に従って油圧制御回路90(図3参照)からの作動油でそれぞれ係合又は解放されることにより、自動変速機18の変速比γat(=変速機入力回転速度Natin/出力歯車22の回転速度Nout)がそれぞれ異なる複数のギヤ段(変速段)が択一的に成立させられる。図2において、「○」は係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ示している。また、この自動変速機18の自動変速制御は、予め記憶されたアップシフト線及びダウンシフト線を有する公知の関係(変速線図、変速マップ)に従って実行される。
以上のように構成された車両用駆動装置10においては、車両の走行状態に応じて、エンジン12の動力により車両を走行させるエンジン走行と第2電動機MG2の動力により車両を走行させるモータ走行とが切り換えられて作動させられるようになっている。上記エンジン走行とモータ走行との切り換えは、車両の走行状態が前記変速線図と同様の二次元座標内において設定されたエンジン走行領域及びモータ走行領域のどちらに属するかに基づいて行われる。
尚、車両用駆動装置10では、例えば車両の走行状態がモータ走行領域に属していても蓄電装置36の充電状態(充電容量、充電残量)SOC(state of charge)が所定値以下である場合にはエンジン走行が行われる。また、車両の急発進時や急加速時などにはエンジン12及び第2電動機MG2の両方の出力が用いられて車両が走行させられる等の制御が適宜行われる。
図3は、車両用駆動装置10を制御する為の電子制御装置40における入出力信号を説明する為の図であり、その電子制御装置40に備えられた制御機能の要部を説明する為の機能ブロック線図である。図3において、電子制御装置40は、車両用駆動装置10の制御装置として機能を有するものであって、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御、自動変速機18の変速制御、及び電動機MG1、MG2の出力制御などを実行する。また、電子制御装置40には、車両に設けられた図3に示す各センサ(例えば各回転速度センサ42,44,46,48,50、アクセル開度センサ52、油温センサ54、バッテリセンサ56、電動機温度センサ58,59など)による検出値に基づく各種信号(例えばエンジン回転速度Ne,第1電動機回転速度Nmg1,タービン回転速度Nt,第2電動機回転速度Nmg2,車速Vに対応する出力歯車22の回転速度である変速機出力回転速度Nout、アクセル開度Acc、トルクコンバータ16及び自動変速機18などを作動させる為の作動油の温度である作動油温THoil、蓄電装置36の充電容量SOC、第1電動機MG1の温度である第1電動機温度THmg1,第2電動機MG2の温度である第2電動機温度THmg2など)が供給される。また、電子制御装置40からは、車両に設けられた各装置(例えばエンジン12、インバータ38、油圧制御回路90など)に各種指令信号(例えばエンジン制御指令信号Se、電動機制御指令信号Sm、油圧制御指令信号Spなど)が供給される。
図4は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2が作動させられていない状態においてエンジン12の動作点(以下、エンジン動作点という)がどのように定まるかを説明する為の図である。図4に示すように、トルクコンバータ16の速度比e(=Nt/Np)に応じてポンプ翼車16pに生じる入力側負荷トルクであるポンプトルクTpは、ある一定のタービン回転速度Ntの下では、例えば破線L01で示すようなエンジン回転速度Neとの関係になる。その破線L01で示すポンプトルクTpとエンジン回転速度Ne(=Np)との関係は、速度比eの関数であるトルクコンバータ16の容量係数τを用いて表せば、「Tp=τ×Ne2」という式が成立する関係である。従って、図4に示すように、エンジン回転速度Neが高いほどトルクコンバータ16の速度比eが小さくなり、ポンプトルクTpはエンジン回転速度Neが高いほど大きくなる。一方で、エンジン12の出力トルクTe(以下、エンジントルクTeという)は、エンジン12の電子スロットル弁のある一定のスロットル弁開度θTHの下では、エンジン回転速度Neとの関係が例えば実線L02で示すようになり、その実線L02は破線L01と交差する。そして、破線L01と実線L02との交点P01がエンジントルクTeとポンプトルクTpとが釣り合う点を示しており、その交点P01がエンジン動作点になる。すなわち、エンジン動作点は、タービン回転速度Ntとスロットル弁開度θTHとに基づいて成り行きで決まる。これに対し、本実施例では、第1電動機MG1の出力制御を行うことにより、エンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されることなく任意に変化させることが可能である。このことを図5を用いて説明することができる。
図5は、第1電動機MG1を制御することによりエンジン動作点が任意に変化させられることを説明する為の図である。図5では図4と共通の符号は相互に同じものを示しており、図4と同じタービン回転速度Ntを前提としている。図5の実線L03は、必要エンジンパワーPe*すなわちエンジン出力Pe(単位は例えばkW)の目標値である目標エンジン出力Pe*をある一定値としエンジン出力Peがその目標エンジン出力Pe*に収束するように制御されたときのエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を示す等パワー曲線である。図5にはエンジン動作点がその等パワー曲線(実線L03)上で任意に設定される例が示されている。図5において、ポンプトルクTpとエンジン回転速度Neとの関係が破線L01で示され且つエンジン出力Peが実線L03で示す目標エンジン出力Pe*にされる場合には、第1電動機MG1の出力トルクTmg1(以下、第1電動機トルクTmg1という)が発生させられないとすればエンジン動作点は点P02になり、第1電動機MG1を発電動作させ第1電動機トルクTmg1を負回転方向にTG03だけ発生させればエンジン動作点は点P03になり、更に第1電動機トルクTmg1の絶対値を引き上げて第1電動機トルクTmg1を負回転方向にTG04だけ発生させればエンジン動作点は点P04になる。要するに、本実施例の車両用駆動装置10では、エンジントルクTeと第1電動機トルクTmg1との和がポンプトルクTpと釣り合うように、すなわち「Tp=Te+Tmg1(図5のTmg1は負の値)」という関係が成立するように、第1電動機トルクTmg1が調節されることで、エンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されることなく任意に変化させることが可能である。このように第1電動機MG1を発電動作させる場合には、その第1電動機MG1によって発電された電力は蓄電装置36に充電されても良いが、基本的には第2電動機MG2に供給されて第2電動機MG2が駆動される。すなわち、車両用駆動装置10は、エンジン12と駆動輪26との間において、第1電動機MG1と第2電動機MG2との間での電力授受により電気的に動力(単位は例えばkW)が伝達される電気経路と、トルクコンバータ16を介して機械的に動力が伝達される機械経路という互いに並列である2つの動力伝達経路を備えている。そして、上述したように第1電動機トルクTmg1の調節によりエンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されることなく連続的に変更できるので、第1電動機MG1と第2電動機MG2とトルクコンバータ16とは全体として、実質的に変速比(=Ne/Nt)を無段階に変化させる無段変速動作を行うことができ、無段変速機60を構成していると言える。
図6は、ある一定の目標エンジン出力Pe*の下でエンジン動作点が変化させられる場合の、前記電気経路と前記機械経路とのそれぞれにおいて伝達される動力の割合(伝達比率)を説明する為の概念図である。図6において、電気伝達とは、エンジン12からの動力が電気的に伝達されることであるので上記電気経路における動力伝達を意味しており、流体伝達とは、エンジン12からの動力がトルクコンバータ16内の流体(作動油)により伝達されることであるので上記機械経路における動力伝達を意味している。前述の図5において、エンジン回転速度Neが低くなる程すなわちトルクコンバータ16の速度比eが大きくなる程第1電動機トルクTmg1が負回転方向に絶対値として大きくなるように第1電動機MG1の出力制御がなされるので、図6に示すように、速度比eが1に向けて大きくなる程、前記電気伝達による動力の伝達比率RTOPELが大きくなる一方で前記流体伝達による動力の伝達比率RTOPMCが小さくなり、具体的には、速度比eが1に近付く程前記電気伝達による動力の伝達比率RTOPELは100%に近付くことになる。この速度比eに対する上記伝達比率RTOPEL,RTOPMCの変化傾向は目標エンジン出力Pe*又はタービン回転速度Ntに拘らず同じである。
次に、第1電動機MG1と第2電動機MG2とトルクコンバータ16とから構成された無段変速機60における動力伝達効率(=出力された動力/入力された動力;明細書全体を通して単に伝達効率ともいう)について説明する。先ず、トルクコンバータ16単体の伝達効率ηMCすなわち前記機械経路の伝達効率ηMCについて図7を用いて説明する。図7のように、速度比eが小さい側のトルクコンバータ領域では、トルクコンバータ16の伝達効率ηMCは所定の速度比eにて極大値をとり、速度比eが零では伝達効率ηMCも零となる。そして、速度比eが大きい側のカップリング領域では、上記伝達効率ηMCは速度比eが大きくなる程高くなり、トルクコンバータ領域及びカップリング領域の全体で見れば、伝達効率ηMCは速度比eが1に近いところで最も高くなる。このトルクコンバータ16の伝達効率ηMCに前記電気経路の伝達効率ηELと図6に示した伝達比率RTOPEL,RTOPMCとを加味すれば、前記電気経路と前記機械経路とにおいてエンジン12からの動力が伝達されるときの合成伝達効率ηCVTすなわち無段変速機60全体の伝達効率ηCVTを求めることができる。
図8は、前記電気経路の伝達効率ηELを一定と仮定した場合に、上記合成伝達効率ηCVTとトルクコンバータ16の速度比eとの関係を示した図である。図8において前記機械経路(流体伝達)の伝達効率ηMCを示す一点鎖線は図7のものと同じである。図8に実線で示すように、前記電気経路(電気伝達)の伝達効率ηELは上記機械経路(流体伝達)の伝達効率ηMCと比較して、トルクコンバータ16の速度比eが変化しても殆ど変化しない。そして、エンジン12からの動力が速度比eに応じて図6に示すような伝達比率RTOPEL,RTOPMCで前記機械経路と前記電気経路との各々にて伝達される場合には、合成伝達効率ηCVTは、速度比eに対して破線で示すように変化する。図8における点P02,P03,P04はそれぞれ図5の点P02,P03,P04を図8の座標系に表したものであり、図8によれば、3つの点P02,P03,P04のうち合成伝達効率ηCVTは、点P04が示す速度比eにて最高になる。尚、図8において、点P02が示す速度比eよりも低い速度比eの範囲では、破線で示す合成伝達効率ηCVTは機械経路の伝達効率ηMCを下回って著しく低下するが、それは、第1電動機MG1と第2電動機MG2との間の電気的な動力伝達状態が、第1電動機MG1が電力を消費すると共に第2電動機MG2が発電する動力循環状態、言い換えれば第2電動機MG2から第1電動機MG1へ動力が電気的に伝達される動力循環状態となるからである。
上述したように、車両用駆動装置10では、第1電動機トルクTmg1の調節によりエンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されることなく連続的に変更できるので、本実施例では、この機能すなわち無段変速機60の無段変速機能を利用して、効率良くエンジン12を作動させ、更には、エンジン12を含む車両用駆動装置10全体で効率の良い運転がなされる制御が実行される。その制御機能の要部について、以下に説明する。
図3に戻り、その図3に示すように電子制御装置40は、動作モード判断手段すなわち動作モード判断部70と、エンジン動作点制御手段すなわちエンジン動作点制御部72とを備えている。
動作モード判断部70は、所定のシステム最適動作モードが選択されているか否かを判断する。例えば、運転者がシステム最適動作モードを選択する際にオンに切り替えられる動作モードスイッチがオンである場合には、動作モード判断部70はシステム最適動作モードが選択されていると判断する。そのシステム最適動作モードとは、エンジン12だけを効率良く作動させるのではなく、エンジン12と無段変速機60との全体で効率向上を図る動作モードであり、例えば燃費向上を極めて優先させたい場合に選択される。そのシステム最適動作モードは、上記動作モードスイッチの切換ではなく、例えばアクセル開度Accが殆ど変動しないような場合に自動的に選択されても差し支えない。
エンジン動作点制御部72は、前記エンジン走行中において、第1電動機トルクTmg1を調節することでエンジン動作点を制御するエンジン動作点制御を実行する。その第1電動機トルクTmg1を調節する際、詳細には前述した図5に示すように、エンジントルクTeと第1電動機トルクTmg1との和が、トルクコンバータ16のポンプトルクTpと釣り合うように、第1電動機トルクTmg1を調節する。エンジン動作点制御部72は、前記エンジン動作点制御では基本的に第1電動機MG1を発電作動させるので、前記動力循環状態を除き第1電動機トルクTmg1は負の値である。前記エンジン動作点制御について具体的に説明すれば、エンジン動作点制御部72は、先ず、図9に示すような予め定められたエンジン最少燃料消費率線LFL上で目標エンジン出力Pe*が達成されるエンジン動作点P05を目標エンジン動作点として逐次決定する。ここで、図9は、ある一定のタービン回転速度Ntの下で図5と同じ座標系において、エンジン最少燃料消費率線LFL上の動作点を目標エンジン動作点としたときの第1電動機トルクTmg1及びポンプトルクTpを表した図であり、図9における破線L01及び実線L03は図5のものと同じである。また、前記エンジン最少燃料消費率線LFLは、エンジン12の燃料消費率が最小となるように予め実験的に定められたエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を表すエンジン12の動作曲線であり、言い換えれば、エンジン12の燃費向上に最適な動作点である燃費最適点の連なりである。また、目標エンジン出力(必要エンジンパワー)Pe*は、運転者が車両に対して要求する出力であり、運転者の出力要求に対応できるように予め実験的に定められた関係からアクセル開度Accと車速Vとに基づいてエンジン動作点制御部72により逐次決定されるものであり、例えばその目標エンジン出力Pe*はアクセル開度Accが大きいほど大きく決定される。更に、蓄電装置36の充電残量SOCが所定の下限値以下に低下した場合には蓄電装置36へ充電すべき充電要求がなされ、目標エンジン出力Pe*は、その充電要求に基づく電力(要求充電電力)が前記アクセル開度Accと車速Vとに基づく算出値に加算されるのが好ましい。
エンジン動作点制御部72は、上述のようにエンジン最少燃料消費率線LFL上に目標エンジン動作点(点P05)を定めると、図9に示すように、その点P05が示すエンジン回転速度Neに基づいてポンプトルクTpを算出し、そのポンプトルクTpと点P05が示すエンジントルクTeとに基づいて第1電動機トルクTmg1を算出する。そして、点P05が示すエンジン回転速度Neとタービン回転速度Ntとからトルクコンバータ16の速度比eを算出する。
エンジン動作点制御部72は、前記エンジン最少燃料消費率線LFL上の目標エンジン動作点(点P05)に基づくポンプトルクTpと第1電動機トルクTmg1とを算出すると、前記機械経路に伝達される機械経路出力及び前記電気経路に伝達される電気経路出力から前記機械経路の伝達比率RTOPMC及び前記電気経路の伝達比率RTOPELがそれぞれ求まるので、前述した図8に示すように、予め実験的に求められ設定された速度比eと前記機械経路の伝達効率ηMCとの関係、及び、予め実験的に求められ設定された速度比eと前記電気経路の伝達効率ηELとの関係から、速度比eと上記伝達比率RTOPEL,RTOPMCとに基づいて合成伝達効率ηCVTを算出できる。すなわち、エンジン動作点制御部72は合成伝達効率ηCVTを逐次算出する。図8における点P02と点P05とは、それぞれ、トルクコンバータ16の流体特性から成り行きで決まるエンジン動作点に対応する図9における点P02と、エンジン動作点制御によりエンジン最少燃料消費率線LFL上の目標エンジン動作点に移動させられたエンジン動作点に対応する図9におけるP05とを図8の座標系に表したものである。
そして、その合成伝達効率ηCVTの算出と共に、エンジン動作点制御部72は、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeで示されるエンジン動作点とエンジン効率ηENGとの予め実験的に求められ定められた関係(エンジン効率マップ)から、前記エンジン最少燃料消費率線LFL上の目標エンジン動作点(点P05)が示すエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとに基づいてエンジン効率ηENGを逐次算出する。更に、エンジン動作点制御部72は、その算出した合成伝達効率ηCVTとエンジン効率ηENGとの積として得られる合成効率ηTOTALすなわち総合効率ηTOTALを逐次算出する。エンジン効率ηENGとは、エンジン12への供給燃料が完全に燃焼した場合の低位発熱量のうち仕事に変換される熱量の割合である。
ここで、エンジン動作点制御部72は、前記エンジン動作点制御では、動作モード判断部70の判断に応じて、その制御内容を切り替える。具体的に、エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていると判断された場合には、合成伝達効率ηCVTとエンジン効率ηENGとの積である総合効率ηTOTALが大きくなる側にエンジン動作点をずらす。
例えばエンジン動作点制御部72は、上記のように総合効率ηTOTALが大きくなる側に目標エンジン動作点をずらす場合には、目標エンジン出力Pe*を示す等パワー曲線(例えば図9の実線L03)上で目標エンジン動作点を徐々にずらしつつ、その目標エンジン動作点をずらす毎にその目標エンジン動作点に基づき第1電動機トルクTmg1更には総合効率ηTOTALを逐次算出する。そして、その総合効率ηTOTALが極大(好ましくは、最大)となった目標エンジン動作点を最終的な目標エンジン動作点として決定する。
一方、エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていないと判断された場合には、上述したように総合効率ηTOTALが大きくなる側に目標エンジン動作点をエンジン最少燃料消費率線LFL上からずらすということはせず、エンジン最少燃料消費率線LFL上の目標エンジン動作点(図9の点P05)を最終的な目標エンジン動作点として決定する。
エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていると判断された場合にもシステム最適動作モードが選択されていないと判断された場合にも、前記最終的な目標エンジン動作点を決定すると、その最終的な目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとをそれぞれ、目標値である目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*として逐次設定し、それと共に、その最終的な目標エンジン動作点に対応する第1電動機トルクTmg1と第1電動機回転速度Nmg1(=エンジン回転速度Ne)とをそれぞれ、目標値である目標第1電動機トルクTmg1*と目標第1電動機回転速度Nmg1*として逐次設定する。そして、エンジン動作点制御部72は、実際のエンジントルクTeが目標エンジントルクTe*に一致するように例えば追従するように、スロットル弁開度θTHを調節してエンジン12の出力制御を行い、それと共に、実際の第1電動機トルクTmg1が目標第1電動機トルクTmg1*に一致する(追従する)ように且つ実際の第1電動機回転速度Nmg1が目標第1電動機回転速度Nmg1*に一致する(追従する)ように、第1電動機MG1を制御する。以上のようにして、エンジン動作点制御部72は前記エンジン動作点制御を実行する。
尚、実際の第1電動機回転速度Nmg1が目標第1電動機回転速度Nmg1*に一致するようにすることは、実際のエンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Ne*に一致するようにすることである。
また、エンジン動作点制御部72は、前記エンジン動作点制御では、第2電動機MG2の出力トルクTmg2(以下、第2電動機トルクTmg2という)を駆動輪26に伝達する。その際、エンジン動作点制御部72は、基本的には、第1電動機MG1が発電した電力をそのまま第2電動機MG2に供給して第2電動機MG2を駆動するが、前記充電要求がなされた場合には、その充電要求により蓄電装置36に充電される要求充電電力分だけ目標エンジン出力Pe*を大きく算出し、第1電動機MG1が発電した電力から蓄電装置36に充電される電力を差し引いた残部を第2電動機MG2に供給して第2電動機MG2を駆動する。このように前記エンジン動作点制御では、第1電動機MG1が発電した電力の全部又は一部が第2電動機MG2で消費されるので、第2電動機トルクTmg2は第1電動機トルクTmg1に応じたトルクであり、第2電動機MG2での消費電力が抑えられれば第1電動機トルクTmg1が間接的に抑えられる関係にある。従って、前記エンジン動作点制御では、第1電動機トルクTmg1を調節することとは、前記電気経路において伝達される動力を調節することであり、第2電動機トルクTmg2を調節することであるとも言える。
図10は、電子制御装置40の制御作動の要部、すなわち、無段変速機60の無段変速動作を利用してエンジン動作点を決定する制御作動を説明する為のフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図10に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。図10において、ステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1〜SA3及びSA5〜SA11はエンジン動作点制御部72に対応しており、SA4は動作モード判断部70に対応する。
先ず、SA1においては、目標エンジン出力(必要エンジンパワー)Pe*が、予め定められた関係からアクセル開度Accと車速Vとに基づいて算出される。この目標エンジン出力Pe*は、蓄電装置36へ充電される場合にはその充電電力分だけ大きく算出されても良いし、また、蓄電装置36から放電される場合にはその放電電力分だけ小さく算出されても良い。更にSA1では、図9に示すような前記エンジン最少燃料消費率線LFL上で上記算出された目標エンジン出力Pe*が達成されるエンジン動作点(例えば図9の点P05)が目標エンジン動作点として決定される。SA1の次はSA2に移る。
SA2においては、図9に例示したようにして、SA1で決定された目標エンジン動作点(例えば点P05)に基づいて第1電動機トルクTmg1が算出され決定される。すなわち、その目標エンジン動作点に対応した前記電気経路に伝達される電気経路出力(単位は例えばkW)が、第1電動機トルクTmg1と第1電動機回転速度Nmg1(=エンジン回転速度Ne)とに基づいて算出される。そして、その目標エンジン動作点に対応した前記機械経路に伝達される機械経路出力(単位は例えばkW)が、ポンプトルクTpとポンプ回転速度Np(=エンジン回転速度Ne)とに基づいて算出される。SA2の次はSA3に移る。
SA3においては、前記SA1で決定された目標エンジン動作点に基づく合成伝達効率ηCVTが、図8に示すような前記機械経路の伝達効率ηMC及び前記電気経路の伝達効率ηELの各々と速度比eとの関係から、タービン回転速度センサ52により検出されるタービン回転速度Ntと上記目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neと前記SA2で算出された前記電気経路出力及び前記機械経路出力とに基づいて算出される。それと共に、前記SA1で決定された目標エンジン動作点に基づくエンジン効率ηENGが算出される。そして、その合成伝達効率ηCVTとそのエンジン効率ηENGとの積が総合効率(合成効率)ηTOTALとして算出される。SA3の次はSA4に移る。
SA4においては、前記システム最適動作モードが選択されているか否かが判断される。このSA4の判断が肯定された場合、すなわち、前記システム最適動作モードが選択されている場合には、SA5に移る。一方、このSA4の判断が否定された場合には、SA11に移る。
SA5においては、目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neが所定の変化量ΔNeだけ増加されて新たな目標エンジン動作点が決定される。この目標エンジン動作点の段階的な変更は、前記SA1算出された目標エンジン出力Pe*が変化しないように行われる。従って、目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neの変更と共に、目標エンジン動作点が示すエンジントルクTeも変更される。尚、SA5における変更前の目標エンジン動作点を前回の目標エンジン動作点と呼び、変更後の目標エンジン動作点を今回の目標エンジン動作点と呼ぶ。SA5の次はSA6に移る。
SA6においては、前記SA2と同様にして、今回の目標エンジン動作点に基づいて第1電動機トルクTmg1が算出され、その今回の目標エンジン動作点に対応する前記電気経路出力及び前記機械経路出力が算出される。SA6の次はSA7に移る。
SA7においては、前記SA3と同様にして、今回の目標エンジン動作点に基づく合成伝達効率ηCVTが算出されると共に、その今回の目標エンジン動作点に基づくエンジン効率ηENGが算出される。そして、その合成伝達効率ηCVTとそのエンジン効率ηENGとの積が総合効率(合成効率)ηTOTAL(今回合成効率という)として算出される。尚、前回の目標エンジン動作点に基づく総合効率(合成効率)ηTOTALである前回合成効率は、SA8での判断の為に予め記憶されている。SA7の次はSA8に移る。
SA8においては、前回合成効率の方が今回合成効率よりも大きいか否かが判断される。このSA8の判断が肯定された場合、すなわち、前回合成効率の方が今回合成効率よりも大きい場合には、SA9に移る。一方、このSA8の判断が否定された場合には、SA5に移る。
SA9においては、目標エンジン動作点が、前回の目標エンジン動作点に戻される。すなわち、前記SA5で決定された今回の目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neが前記所定の変化量ΔNeだけ減少されて新たな目標エンジン動作点が決定される。このとき、SA5と同様に、目標エンジン出力Pe*が変化しないように、目標エンジン動作点が示すエンジントルクTeも変更される、すなわち前回のものに戻される。SA9の次はSA10に移る。
SA10においては、前記SA2と同様にして、前記SA9にて新たに決定された目標エンジン動作点に基づいて第1電動機トルクTmg1が算出され、そのSA9にて新たに決定された目標エンジン動作点に対応する前記電気経路出力及び前記機械経路出力が算出される。SA10の次はSA11に移る。
SA11においては、実際のエンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeが示すエンジン12の実際の動作点が、最終的に決定された目標エンジン動作点に一致するように例えば追従するように、エンジン12及び第1電動機MG1の出力制御が行われる。そして、第2電動機トルクTmg2が駆動輪26に伝達される。このとき、第1電動機MG1が発電した電力はそのまま第2電動機MG2に供給されて第2電動機MG2が駆動されるが、蓄電装置36に充電される場合には、その第1電動機MG1が発電した電力から蓄電装置36に充電される電力を差し引いた残部が第2電動機MG2に供給されて第2電動機MG2が駆動される。
本実施例では次のような効果(A1)乃至(A4)がある。(A1)本実施例によれば、第1電動機MG1と第2電動機MG2とトルクコンバータ16とが全体として無段変速機60を構成しており、エンジン動作点制御部72は、前記エンジン走行中において、第1電動機トルクTmg1を調節することでエンジン動作点を制御する前記エンジン動作点制御を実行する。そして、そのエンジン動作点制御では、第2電動機トルクTmg2を駆動輪26に伝達する。従って、第1電動機トルクTmg1(基本的に回生トルク)を調節することにより無段変速機60の無段変速動作を行うことができ、その無段変速機60の無段変速動作により、エンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されずに制御することが可能であるので、例えばエンジン12を燃費向上に最適な動作点(燃費最適点)で駆動することが可能であり、車両の燃費向上を図ることが可能である。
(A2)また、本実施例によれば、エンジン動作点制御部72は、図5に示すように、エンジントルクTeと第1電動機トルクTmg1との和が、トルクコンバータ16の入力側負荷トルクであるポンプトルクTpと釣り合うように、第1電動機トルクTmg1を調節する。従って、トルクコンバータ16の特性に基づいて容易に第1電動機トルクTmg1を調節することができる。
(A3)また、本実施例によれば、エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていると判断された場合には、合成伝達効率ηCVTとエンジン効率ηENGとの積である総合効率ηTOTALが大きくなる側にエンジン動作点をずらす。従って、そのエンジン動作点が上記総合効率ηTOTALに応じて変更されない場合と比較して、車両用駆動装置10全体として効率アップが図られ、車両の燃費を向上させることが可能である。
(A4)また、本実施例によれば、エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていないと判断された場合には、エンジン動作点がエンジン最少燃料消費率線LFLに沿うように且つ目標エンジン出力Pe*が達成されるようにエンジン動作点を制御する。従って、前記無段変速機60の無段変速動作により、エンジン12の燃料消費率上昇を抑えることが可能である。
このように、本実施例の車両用駆動装置10では、第1電動機トルクTmg1を調節することにより、エンジン12の動力を伝達する伝達経路として前記電気経路と前記機械経路とを併用し、エンジン動作点制御を実行するので、車両の燃費向上を図ることができる。ここで、本実施例の車両用駆動装置10は、自動変速機18を備えているので、自動変速機18の変速によってトルクコンバータ16の速度比eが変化して、自動変速機18のギヤ段毎にポンプトルクTpとエンジン回転速度Neとの関係を表す曲線が変化する。
図11は、ある一定の車速Vの下で図9と同じ座標系において、エンジン最少燃料消費率線LFL上の動作点P05を目標エンジン動作点としたときの第1電動機トルクTmg1及びポンプトルクTpを自動変速機18のギヤ段毎に表した図であり、図11における実線L03、エンジン最少燃料消費率線LFL、及び点P05(点P05Low,点P05Hi)は図9のものと同じである。図11において、破線L04及び一点鎖線L05は何れもポンプトルクTpとエンジン回転速度Neとの関係を表す曲線であるが、破線L04は、一点鎖線L05よりも自動変速機18のギヤ段が高車速側ギヤ段である場合を表している。同一のエンジン回転速度Neでの比較において、自動変速機18のギヤ段が高車速側である程タービン回転速度Ntが低くなってトルクコンバータ16の速度比eが小さくなるので、容量係数τは破線L04の方が一点鎖線L05の方よりも大きくなる。よって、ポンプトルクTpは、破線L04の方が一点鎖線L05の方よりも大きくなる。また、目標エンジン動作点P05では、破線L04に対応する速度比e1の方が一点鎖線L05に対応する速度比e2よりも小さくされる。つまり、高車速側ギヤ段である場合の目標エンジン動作点P05Hiに対応する速度比e1の方が低車速側ギヤ段である場合の目標エンジン動作点P05Lowに対応する速度比e2よりも小さくされる。速度比eが大きい程合成伝達効率ηCVTが高くなる傾向があることから(例えば図8参照)、目標エンジン動作点P05Lowにおける合成伝達効率ηCVTの方が目標エンジン動作点P05Hiにおける合成伝達効率ηCVTよりも高くなり易い。従って、同一の目標エンジン動作点P05とする場合、破線L04に対応する高車速側ギヤ段に変速するよりも、一点鎖線L05に対応する低車速側ギヤ段に変速する方が合成伝達効率ηCVTをより高くすることができ、延いては、エンジン効率ηENGを含めた総合効率ηTOTALをより高くすることができる。その為、本実施例では、自動変速機18の自動変速制御に用いられる変速マップにおいて、例えば自動変速機18ができるだけ低車速側ギヤ段とされ易いような変速線(すなわち速度比eが大きくされ易いような変速線)として、隣接するギヤ段間における低車速側ギヤ段領域ができるだけ高車速側に広くされた(すなわち各変速線ができるだけ高車速側とされた)ベース変速線(ベースアップシフト線及びベースダウンシフト線)が予め定められている。これにより、例えば速度比eが比較的大きなところ(例えば0.95付近)でアップシフトされ、アップシフト後は速度比eが比較的小さなところ(例えば0.35付近)とされる。尚、変速線は変速点の連なりであり、変速点例えば変速を判断する変速点車速と同意である。
ところで、図11からも明らかなように、低車速側ギヤ段(一点鎖線L05)にて目標エンジン出力Pe*(実線L03)が得られる成り行きの点PLowを目標エンジン動作点P05Lowに制御する場合の方が、高車速側ギヤ段(破線L04)にて目標エンジン出力Pe*(実線L03)が得られる成り行きの点PHiを目標エンジン動作点P05Hiに制御する場合より、第1電動機トルクTmg1が大きくされている。すなわち、前記電気経路(電気パス)において伝達される動力(すなわち電気パス量)が大きくされている。一方で、目標エンジン動作点P05に制御する際、何らかの理由で電気パス量が制限を受ける可能性が有る。つまり、電気経路において伝達可能な動力の量すなわち電気経路にて伝達することが可能な最大の電気パス量である電気経路の出力伝達容量が制限される(低下される)可能性が有る。そうすると、目標エンジン動作点P05Hiに制御する際に第1電動機トルクTmg1を必要な分だけ出力できなくなり、エンジン動作点を目標エンジン動作点に持って行けない可能性が有る。このようなことは、必要な第1電動機トルクTmg1が大きくされる低車速側ギヤ段の方が顕著に表れるので、電気経路の出力伝達容量が制限されるときには、同一の目標エンジン動作点P05とする場合、破線L04に対応する高車速側ギヤ段とした方が低車速側ギヤ段とするよりも却って総合効率ηTOTALが高くなる可能性が有る。すなわち、上記ベース変速線を一律に用いた自動変速機18の変速制御では、必ずしも総合効率ηTOTALが高くなるとは限らない。
そこで、本実施例の電子制御装置40は、電気経路の出力伝達容量が小さい場合には、大きい場合よりも、自動変速機18をアップシフトする。例えば、電子制御装置40は、電気経路の出力伝達容量が小さい場合には、大きい場合に用いられる変速線に対して低車速側へ変更された変速線を用いて、大きい場合よりも自動変速機18を早めにアップシフトしたり、高車速側ギヤ段をより長く維持する。
より具体的には、図3に戻り、変速制御手段すなわち変速制御部74は、例えば変速マップからアクセル開度Acc及び車速Vに基づいて自動変速機18のギヤ段を判断し、その判断したギヤ段となるように自動変速機18の変速制御を実行する。
伝達容量制限判定手段すなわち伝達容量制限判定部76は、電気経路の出力伝達容量に制限が発生しているか否か、すなわち電気経路の出力伝達容量が小さくされたか否かを判定する。ここで、本実施例の車両では、基本的には無段変速機60の無段変速機能が実現できるような電気経路の出力伝達容量となるように電気系が構築されている。しかしながら、電気系の一部を構築する第1電動機MG1及び第2電動機MG2の内の少なくとも一方の電動機Mが、出力制限を受けない各電動機温度として予め定められた各所定温度範囲を超えて高温となったり或いはその所定温度範囲を下回って低温となったりすると出力制限を受ける。そして、電動機Mが電動機温度に起因する出力制限を受けると、伝達可能な最大の電気パス量が低下させられ、電気経路の出力伝達容量が制限されることになる。また、電気系の一部を構築する電動機Mの出力制御に関わる機器(例えばインバータ38、蓄電装置36のバッテリ電圧を昇圧する電気回路等)が正常に作動していないと、電動機Mが出力制限を受ける。そして、電動機Mが上記機器の作動に起因する出力制限を受けると、伝達可能な最大の電気パス量が低下させられ、電気経路の出力伝達容量が制限されることになる。伝達容量制限判定部76は、第1電動機温度THmg1及び第2電動機温度THmg2の各電動機温度の少なくとも一方が各所定温度範囲を外れているか否かに基づいて、電気経路の出力伝達容量に制限が発生しているか否かを判定する。また、伝達容量制限判定部76は、電動機Mの出力制御に関わる機器が正常に作動していないことに基づいて、電気経路の出力伝達容量に制限が発生しているか否かを判定する。
ギヤ段比較手段すなわちギヤ段比較部78は、伝達容量制限判定部76により電気経路の出力伝達容量に制限が発生していると判定された場合には、総合効率ηTOTALがより高くなる自動変速機18のギヤ段を選択する。具体的には、制限を受けた電気経路の出力伝達容量では目標エンジン動作点を維持する為の制御に必要な第1電動機トルクTmg1を出し切れない場合には、その制限に応じてエンジン動作点が目標エンジン動作点からずれる(移動する)。或いは、当初は目標エンジン動作点からずれていなくても車速Vの変化に伴ってずれたり、車速Vの変化に伴ってずれが更に大きくなる可能性が有る。その為、ギヤ段比較部78は、そのずれたエンジン動作点におけるエンジン効率ηENGをエンジン効率マップから求める。或いは、ギヤ段比較部78は、例えば図12に示すような電気経路の出力伝達容量とエンジン12の燃料消費量との予め定められた関係(燃料消費量マップ)から、制限を受けた実際の電気経路の出力伝達容量に基づいてエンジン12の燃料消費量を求めても良い。この図12に示す燃料消費量マップは、電気経路の出力伝達容量が制限される程その出力伝達容量が低下させられてエンジン動作点が燃費最適点から離れ易くなることを予め実験的に求められて反映させた関係であり、各ギヤ段毎に予め定められている。エンジン12の燃料消費量は、その値が小さい程エンジン効率ηENGが高くなる関係にあり、エンジン効率ηENGの裏返しと見ることができる。従って、燃料消費量マップは、エンジン効率マップに対応するものであると言える。また、実際の電気経路の出力伝達容量は、例えば電動機Mの温度が所定温度範囲を外れる程電動機Mが出力制限を受けることに応じて低下させられたり、電動機Mの出力制御に関わる機器の作動に起因する電動機Mの出力制限に応じて低下させられる。
ギヤ段比較部78は、現在のギヤ段において、目標エンジン動作点からずれたエンジン動作点における合成伝達効率ηCVTを算出し、その合成伝達効率ηCVTと上記算出したエンジン効率ηENGとに基づいて総合効率ηTOTALを逐次算出する。また、ギヤ段比較部78は、自動変速機18をアップシフトした場合に目標エンジン動作点を維持する為の制御にて実現できるエンジン動作点において、エンジン効率ηENGと合成伝達効率ηCVTとを算出し、それらエンジン効率ηENGと合成伝達効率ηCVTとに基づいて総合効率ηTOTALを算出する。そして、ギヤ段比較部78は、総合効率ηTOTALが高い方のギヤ段を選択する。つまり、総合効率ηTOTALが有利(得)となる方のギヤ段が選択される。尚、エンジン効率ηENGに替えてエンジン12の燃料消費量に基づいて総合効率ηTOTALを逐次算出しても良い。
変速点設定手段すなわち変速点設定部80は、伝達容量制限判定部76により電気経路の出力伝達容量に制限が発生していないと判定された場合には、変速制御部74による自動変速機18の変速制御に用いられる変速線(変速点)として、前記ベース変速線を選択(設定)する。一方で、変速点設定部80は、伝達容量制限判定部76により電気経路の出力伝達容量に制限が発生していると判定され、ギヤ段比較部78によりアップシフト側のギヤ段が選択された場合には、そのアップシフト側のギヤ段が実現されるように、変速制御部74による自動変速機18の変速制御に用いられる変速線として、前記ベース変速線を低車速側へ変更した変速線を設定する。
このように、電気経路の出力伝達容量に制限が発生している場合には、リアルタイムに演算して変速線を設定したが、これに替えて、電気経路の出力伝達容量に制限が発生している場合に用いる変速線として、予め実験的に(或いはシミュレーションにて)求められた変速線を選択するようにしても良い。図13は、ベース変速線と電気経路の出力伝達容量に制限が発生している場合に用いる変速線との設定例を、あるギヤ段間のアップシフト線にて示す図である。図13において、実線はベースアップシフト線であり、破線はそのベースアップシフト線を低車速側へ変更した出力伝達容量制限時アップシフト線である。
図14は、電子制御装置40の制御作動の要部、すなわち、電気経路の出力伝達容量に応じて自動変速機18を変速する制御作動を説明する為のフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図14に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。図14において、ステップ(以下、「ステップ」を省略する)SB1は伝達容量制限判定部76に対応し、SB2及びSB3はギヤ段比較部78に対応し、SB4及びSB5は変速点設定部80に対応する。
先ず、SB1においては、例えば電気経路の出力伝達容量に制限が発生しているか否かが判断される。つまり、電動機Mが高温や低温で出力制限を受けたり、何らかの事情で電気経路の出力伝達容量が制約を受けている状態であるか否かが判断される。このSB1の判断が肯定された場合、すなわち電気経路の出力伝達容量に制限が発生している場合には、SB2に移る。一方で、このSB1の判断が否定された場合には、SB5に移る。
SB2においては、例えば電気経路の出力伝達容量の制限に応じてエンジン動作点が目標エンジン動作点からずれる可能性が有る為、現在のギヤ段におけるエンジン動作点においてエンジン12の燃料消費量が図12に示すような燃料消費量マップから実際の電気経路の出力伝達容量に基づいて求められる。
SB3においては、例えば現在のギヤ段におけるエンジン動作点において、合成伝達効率ηCVTが算出され、その合成伝達効率ηCVTと上記SB2にて求められたエンジン12の燃料消費量とに基づいて総合効率ηTOTALが逐次算出される。また、自動変速機18をアップシフトした場合のギヤ段におけるエンジン動作点において、エンジン12の燃料消費量と合成伝達効率ηCVTとが算出され、それらエンジン12の燃料消費量と合成伝達効率ηCVTとに基づいて総合効率ηTOTALが算出される。そして、総合効率ηTOTALが高い方のギヤ段が選択される。
SB4においては、例えば上記SB3にてアップシフト側のギヤ段が選択された場合には、そのアップシフト側のギヤ段が実現されるように、前記ベース変速線を低車速側へ変更した変速線が設定される。上記SB2−SB4ではリアルタイムに演算されて変速線が設定されたが、このSB2−SB4に替えて、例えば図13の破線に示すような、予め定められた電気経路の出力伝達容量に制限が発生している場合に用いる変速線が設定されても良い。尚、上記SB3にて現在のギヤ段が選択された場合には、予め定められた前記ベース変速線が設定される。
SB5においては、例えば自動変速機18の変速制御に用いられる変速線として、図13の実線に示すような、予め定められた前記ベース変速線が選択(設定)される。
上述のように、本実施例によれば、電気経路の出力伝達容量が小さい場合には、大きい場合よりも、自動変速機18がアップシフトされる。このようにすれば、電動機M単体だけを考慮すれば通常は電動機Mが熱的に厳しい場合は自動変速機18をダウンシフトすることで電動機Mを比較的高回転低トルク域で駆動させることに対して、本実施例の車両用駆動装置10においては、自動変速機18をアップシフトした方が電気パス量を減少させることができ、電気経路の出力伝達容量が制限された状態に対処することができる。すなわち、電気経路の出力伝達容量に応じて自動変速機18を変速することができる。
また、本実施例によれば、前記電気経路の出力伝達容量が小さい場合は、電動機Mにおいて電動機温度に起因する出力制限が有る場合であり、前記電気経路の出力伝達容量が大きい場合は、電動機Mにおいて電動機温度に起因する出力制限が無い場合である。このようにすれば、本実施例の車両用駆動装置10においては、自動変速機18をアップシフトした方が電気パス量を減少させることができ、電動機温度に起因して電動機Mが出力制限された状態に対処することができる。すなわち、自動変速機18をアップシフトした方が、電動機Mが熱的に有利になる。
また、本実施例によれば、前記電気経路の出力伝達容量が小さい場合は、電動機Mの出力制御に関わる機器の作動に起因する電動機Mの出力制限が有る場合であり、前記電気経路の出力伝達容量が大きい場合は、電動機Mの出力制御に関わる機器の作動に起因する電動機Mの出力制限が無い場合である。このようにすれば、本実施例の車両用駆動装置10においては、自動変速機18をアップシフトした方が電気パス量を減少させることができ、電動機Mの出力制御に関わる機器の作動に起因して電動機Mが出力制限された状態に対処することができる。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
例えば、前述の実施例では、前記電気経路の出力伝達容量が小さい場合と大きい場合とを、電動機Mの出力制限が有る場合と無い場合とですなわち電気経路の出力伝達容量の制限が有る(発生している)場合と無い(発生していない)場合とで切り分けたが、これに限らない。例えば、前記電気経路の出力伝達容量が小さい場合と大きい場合とを、電動機Mの出力制限が大きい場合と小さい場合とですなわち電気経路の出力伝達容量の制限が大きい場合と小さい場合とで切り分けても良い。また、電気経路の出力伝達容量の制限が一定以上ある場合に、電気経路の出力伝達容量の制限が有るとしても良い。このようにしても本発明は適用され得る。
また、前述の図13の実施例では、電気経路の出力伝達容量の制限が無い場合に設定されるベース変速線と、その出力伝達容量の制限がある場合に設定される変速線であってベース変速線に対して低車速側に変更された変速線とを例示したが、これに限らない。例えば、電気経路の出力伝達容量の制限がある場合に設定される変速線として、その出力伝達容量の制限に応じて連続的に低車速側に変更された変速線が設定されても良いし、その出力伝達容量の制限に応じて段階的に低車速側に変更された複数種類の変速線が設定されても良い。
また、前述の実施例では、電気経路の出力伝達容量が小さい場合には、大きい場合よりも、自動変速機18をアップシフトするものであったが、各ギヤ段における合成伝達効率ηCVTによっては、自動変速機18をダウンシフトする態様も考えられる。
また、前述の実施例において、インバータ38や蓄電装置36の温度に起因して電動機Mが出力制限を受けることで、電気経路の出力伝達容量が制限されることも考えられる。
また、前述の実施例では、エンジン最少燃料消費率線LFL上で目標エンジン出力Pe*が達成されるエンジン動作点或いは総合効率ηTOTALが極大となるエンジン動作点を目標エンジン動作点として設定するエンジン動作点制御を基本の制御として、本発明を適用したが、これに限らない。例えば、図9に点P05として示すように、目標エンジン動作点はエンジン最少燃料消費率線LFL上に設定されるが、エンジン最少燃料消費率線LFLから外れて設定されることも考え得る。要は、前記電気経路において伝達される動力を調節することで実エンジン動作点を目標エンジン動作点に制御するものに本発明は適用され得る。
また、前述の実施例では、前記電気経路において伝達される動力として第1電動機トルクTmg1を例示したが、第1電動機回転速度Nmg1や第1電動機MG1の出力(電力)を用いても良い。また、電気パスにおいて第1電動機MG1と電力授受を行う第2電動機MG2の出力(電力)や第2電動機トルクTmg2、第2電動機回転速度Nmg2等を用いても良い。
また、前述の実施例において、自動変速機18は遊星歯車式多段変速機であるが、これに限らない。例えば、自動変速機18は、公知の同期噛合型平行2軸式自動変速機等の他の有段変速機、公知のベルト式無段変速機等の無段変速機(CVT)であっても良い。
また、前述の実施例では、第2電動機MG2は自動変速機18を介して駆動輪26に間接的に連結されているが、これに限らない。例えば、第2電動機MG2が出力歯車22に連結されることで、第2電動機MG2は動力伝達が遮断されることなく駆動輪26と一対一の関係で回転させられても良い(すなわち第2電動機MG2は駆動輪26に直接的に連結されても良い)。また、第2電動機MG2は駆動輪26に組み込まれるホイールインモータであっても良い。その場合には、左右の駆動輪26を合わせて合計2機の第2電動機MG2が設けられる。
また、前述の実施例では、第2電動機MG2はエンジン12が間接的に連結された駆動輪26に連結されているが、これに限らない。例えば、エンジン12及び第1電動機MG1は図1の通り駆動輪26に連結されている一方で、第2電動機MG2はその駆動輪26とは別の車輪に直接又は間接的に連結されていても良い。そのように第2電動機MG2が駆動輪26とは別の車輪に連結されておればその車輪も駆動輪に含まれる。要するに、エンジン12からの動力で駆動される駆動輪と第2電動機MG2からの動力で駆動される駆動輪とは、別個の車輪であっても差し支えないということである。
また、前述の実施例で説明した前記エンジン動作点制御すなわち無段変速機60の無段変速動作において、第1電動機トルクTmg1が調節されるが、その第1電動機トルクTmg1は、直接調節されても良いし、第2電動機トルクTmg2の調節すなわち第2電動機MG2の出力の調節により、結果的に言い換えれば間接的に調節されても良い。
また、前述の実施例において、前記電気経路では、第1電動機MG1と第2電動機MG2との間での電力授受により動力伝達が電気的になされるが、例えば第1電動機MG1が発電した電力が蓄電装置36を経由せずに第2電動機MG2に直接供給されても良いし、第1電動機MG1が発電した電力が蓄電装置36に一旦充電されその蓄電装置36から第2電動機MG2に供給される等して、その第1電動機MG1が発電した電力が第2電動機MG2に間接的に供給されても良い。また、第2電動機MG2は、蓄電装置36からの電力供給と共に第1電動機MG1が発電した電力の供給を受けて、駆動されても良い。尚、前記動力循環時に第1電動機MG1が力行する場合における第1電動機MG1への電力供給に関しても同様である。
また、前述の実施例において、第1電動機MG1はトルクコンバータ16のポンプ翼車16pに直接連結されているが、変速機、クラッチ、又は電動ベルト等を介してポンプ翼車16pに間接的に連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、車両用駆動装置10は蓄電装置36を備えているが、その蓄電装置36は無くても差し支えない。
また、前述の実施例において、車両は前記モータ走行を行うことが可能であるが、車両走行は常に前記エンジン走行でなされても差し支えない。
また、前述の実施例において、トルクコンバータ16はロックアップクラッチLCを備えているが、無段変速機60の無段変速動作ではそのロックアップクラッチLCは解放されているので、ロックアップクラッチLCは無くても差し支えない。また、流体伝動装置としてトルクコンバータ16が設けられているが、トルク増幅作用を利用する態様でなければ、トルクコンバータ16に替えて、トルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などの他の流体伝動装置が設けられていても差し支えない。
また、前述の実施例において、図10のフローチャートでは、SA3の次にSA4に移るが、それら両ステップの実行順序は何れが先でも良く、例えばそのフローチャートは、SA2の次にSA4に移り、SA4の判断が肯定された場合にSA3に移り、SA3の次にSA5に移るものであっても良い。また、図10のフローチャートのSA5では、目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neが所定の変化量ΔNeだけ増加されて新たな目標エンジン動作点が決定されるが、そのエンジン回転速度Neが所定の変化量ΔNeだけ減少されて新たな目標エンジン動作点が決定されても良い。その場合には、図10のSA9では、そのSA5で決定された今回の目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neが前記所定の変化量ΔNeだけ増加されて新たな目標エンジン動作点が決定される。また、図10のフローチャートにおいて、SA3からSA10までのステップを備えず、SA2の次にSA11が実行されるフローチャートも考え得る。
また、前述の実施例において、エンジン動作点制御部72は、システム最適動作モードが選択されている場合には、総合効率ηTOTALが大きくなる側にエンジン動作点をずらすが、その総合効率ηTOTALに替えて、前記電気経路と前記機械経路とにおいてエンジン12からの動力が伝達されるときの動力伝達損失LSSCVTとエンジン損失LSSENGとを合計した合計損失LSSTOTALに基づいて、エンジン動作点をずらすものであっても良い。具体的には、その合計損失LSSTOTALが小さくなる側に、エンジン動作点をずらすものであっても良い。そのようにすれば、エンジン動作点が上記合計損失LSSTOTALに応じて変更されない場合と比較して、車両用駆動装置10全体として効率アップすなわちその合計損失LSSTOTALの低減が図られ、車両の燃費を向上させることが可能である。上記動力伝達損失LSSCVTは、無段変速機60に入力される動力すなわちエンジン出力Peと前記合成伝達効率ηCVTとに基づいて算出でき、上記エンジン損失LSSENGは、エンジン12への供給燃料が完全に燃焼した場合の単位時間当たりの低位発熱量である完全燃焼時エンジン出力PeCMPと前記エンジン効率ηENGとに基づいて算出できる。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。