JP2013184091A - Vo2分散樹脂層及びその製造方法、積層体、並びにvo2含有組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のVO2分散樹脂層は、透光性樹脂中にVO2粒子が分散されたものである。VO2分散樹脂層中のVO2粒子の濃度cは60質量%以下であることが好ましい。VO2粒子の濃度c(質量%)と平均凝集径dm(nm)、及びVO2分散樹脂層の膜厚t(nm)とが、下記式(I)の関係を充足することが好ましい。
20≦ct/dm≦250・・・(I)
【選択図】なし
Description
なお、本明細書では以下、前記した相転移温度を境に赤外光の透過率が変化するVO2の特性を「調光特性」と称する。
本発明はまた、透光性基材上に強固に保持されるVO2分散樹脂層を備える積層体を提供することを目的とするものである。
上記の本発明のVO2分散樹脂層の製造に用いられるVO2含有組成物であって、
前記VO2粒子と、前記透光性樹脂と、当該透光性樹脂を可溶な有機溶剤とを含むものである。
前記VO2粒子と、前記透光性樹脂と、当該透光性樹脂を可溶な有機溶剤とを含むVO2含有組成物を用意する工程(2)と、
透光性基材上に、前記VO2含有組成物を塗布して塗膜を形成する工程(3)と、
前記有機溶媒を除去する工程(4)とを有するものである。
原料としてV2O5を用い、液相で前記VO2粒子を合成する工程(1)をさらに有することが好ましい。
本発明はまた、透光性基材を用いた場合に、透光性基材上に良好に保持されるVO2分散樹脂層を提供することができる。
本発明のVO2分散樹脂層は、透光性樹脂中にVO2粒子が分散されたものである。
ルチル型のVO2粒子は、転移温度以下では、単斜晶系(monoclinic)の構造を有するため、M型とも呼ばれる。
本発明の目的を損なわない範囲で、A型、あるいはB型などの他の結晶型のVO2粒子を含んでもよい。
製造容易性等を考慮すれば、VO2粒子の平均一次粒子径は20nm以上が好ましい。
本発明のVO2分散樹脂層におけるVO2粒子の濃度cは例えば、5〜60質量%が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい(後記[実施例]の項を参照)。濃度cが高いほど調光性能は高くなる傾向があるが、VO2粒子の平均凝集径dmが大きくなり可視光透過率が低下する傾向となる。VO2粒子は得られる範囲で高濃度かつ均一に分散されていることが最も好ましい。
本明細書において、VO2含有組成物におけるVO2粒子の平均分散径dpは、レーザー回折散乱式粒度分布計で測定されるメジアン径として求めるものとする。
平均一次粒子径が小さく、粒子径のばらつきを抑制するには、V2O5を原料として、液相でVO2を合成しながら粒子成長させる方法が特に好ましい。
V2O5を原料として、液相でVO2を合成しながら粒子成長させる方法としては、水熱合成法等が挙げられる(後記[実施例]の項を参照)。
該方法においては、必要に応じて、粒子成長の核となる微小なTiO2等の核粒子を添加することができる。該核粒子は1種又は2種以上添加することができる。
したがって、本発明によれば、所望の可視光透過率と調光特性を安定的に得ることが可能なVO2分散樹脂層を提供することができる。
本発明のVO2分散樹脂層ではまた、透光性樹脂がバインダとして機能するので、透光性基材上にVO2粒子が強固に保持される。
また、VO2粒子がバインダで被覆されることで、その酸化防止効果も得られると考えられる。
20≦ct/dm≦250・・・(I)、
60≦ct/dm≦110・・・(Ia)
ct/dmが過小では、所望の調光特性が得られなくなる恐れがある。
ct/dmを上記規定とすることで、所望の可視光透過率と調光特性を安定的に得ることができる。
VO2分散樹脂層の膜厚tが過小では、VO2粒子の量が不充分となる恐れがある。
VO2分散樹脂層の膜厚tが過大では、VO2粒子の量が多くなりすぎる、あるいは、均一成膜が難しく、VO2粒子の凝集が生じやすくなるなどの理由により、所望の可視光透過率が得られなくなる恐れがある。
本発明のVO2分散樹脂層の膜厚tは例えば、5000nm以下が好ましく、3000nm以下がより好ましく、2000nm以下が特に好ましい(後記[実施例]の項を参照)。
本発明のVO2分散樹脂層の膜厚tは例えば、1000nm以上が好ましい(後記[実施例]の項を参照)。
従来は、VO2粒子の表面をシランカップリング剤で処理して、親水化させることが好ましいとされている(例えば、特許文献2の段落0075及び0085を参照)。
本発明では、VO2分散樹脂層の成膜に際して、透光性樹脂を可溶する有機溶媒を用いる。そのため、VO2粒子としては粒子合成後にシランカップリング剤等による表面親水化処理が施されていないものを用いることが好ましい。この方が、VO2粒子と有機溶媒とのなじみが良く、VO2粒子が有機溶媒中に良好に分散され、均一なVO2分散樹脂層が得られやすい。これは、本発明者が見出した新規な知見である。
透光性樹脂としては、VO2粒子の分散性が向上することから、VO2粒子とのなじみが良いものが好ましく、エステル系樹脂等が好ましく用いられる。
後記[実施例]の項において示すように、本発明者は例えば、透光性樹脂としてエステル系樹脂を用いることで、分散剤等の添加なく、透光性樹脂中にVO2粒子を良好に分散させることに成功している。
VO2は主に赤外光に対して調光特性を発現する。具体的には、可視光透過率は温度によらずほぼ一定であるのに対し、赤外光の透過率は68℃未満では高く68℃以上では低い。
本発明のVO2分散樹脂層は例えば、夏期には太陽光を反射させて光及び熱を遮断し、冬期には太陽光を透過させて光及び熱を透過させる調光層として使用できる。
Tr(%)=(T(20℃)−T(80℃))/T(20℃)×100・・・(II)
(式中、T(80℃)は80℃における波長1500nmの光の透過率であり、T(20℃)は20℃における波長1500nmの光の透過率である。)
ここで、上記透過率は分光光度計で測定できる。
通常の光は波長30nm以下の範囲で大きな透過率の変化はないので、波長430nm、450nm、640nm、および670nmの光の透過率を測定する代わりに、簡易的に波長430〜450nmのいずれかの波長の光および640〜670nmのいずれかの波長の光の透過率を測定することで評価してもよい。
本発明の積層体は、透光性基材上に上記の本発明のVO2分散樹脂層を備えたものである。
透光性基材を用いることによって、VO2分散樹脂層の均一性などを確認する製品検査において光学検査が容易である。また積層体を窓ガラスなどの代替として用いることもできる。
例えば、透光性基材上に後記ペースト状等のVO2含有組成物を塗布し、有機溶媒の少なくとも一部を除去した後、他の塗布剤あるいはフィルム等を積層することができる。
例えば、VO2分散樹脂層上に、粘着層あるいは接着層を積層することができる。積層体の最表面に粘着層あるいは接着層を設けることで、この粘着層あるいは接着層を介して、他の材料にVO2分散樹脂層を容易に貼着することができる。
本発明のVO2含有組成物は、
上記の本発明のVO2分散樹脂層の製造に用いられ、VO2粒子と、透光性樹脂と、当該透光性樹脂を可溶な有機溶剤とを含むものである。
有機溶剤としては例えば、トルエン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン等のエーテル、メチルエチルケトン等のケトン、及び2−プロパノール等のアルコール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
VO2含有組成物は、塗工可能であれば、液状でもペースト状でもよい。
均一な塗布成膜が可能なことから、VO2含有組成物中のVO2粒子と透光性樹脂との総量の割合(固形分濃度)は例えば、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%が特に好ましい。
本発明のVO2分散樹脂層の製造方法は、
上記の本発明のVO2分散樹脂層の製造方法であって、
VO2粒子と、透光性樹脂と、この透光性樹脂を可溶な有機溶剤とを含むVO2含有組成物を用意する工程(2)と、
透光性基材上に、上記VO2含有組成物を塗布して塗膜を形成する工程(3)と、
有機溶媒を除去する工程(4)とを有するものである。
塗膜の膜厚は、VO2含有組成物の固形分濃度及び乾燥後に得られるVO2分散樹脂層の所望の膜厚に応じて設計される。
V2O5を原料として、液相でVO2粒子を合成する工程(1)をさらに有することが好ましい。
はじめに、バナジウムを含む化合物と水とを含む溶液を用意する。
例えば、五酸化二バナジウム(V2O5)と水とを混合し、上記溶液を調製することができる。なお、この「溶液」は、V2O5がイオン状態で溶解した溶液であっても、V2O5が溶解せず、懸濁した状態の懸濁溶液であってもよい。
なお、前記酸化剤、還元剤、及びpH調整剤の記載は一例に過ぎず、これら以外の物質を選定してもよい。
次に、工程(1−1)で用意した溶液中に、ルチル型結晶相を含むTiO2粒子を添加し、懸濁液を調製する。
ここで、TiO2粒子の一次平均粒径は、10〜500nm程度であることが好ましく、50〜100nm程度であることがより好ましい。TiO2粒子の一次平均粒径を50〜100nm程度にすることにより、最終的に得られるVO2粒子の一次平均粒径を有意に微細化することができ、例えば100〜200nmとすることができる。
特に、バナジウム源の質量から換算したVO2の量と添加するTiO2の量比(VO2:TiO2)は、10:90〜90:10の範囲であることが好ましく、この場合、最終的に得られるVO2粒子中に含まれるTiO2の質量(全粒子に対する質量)は、10〜90質量%程度となる。
バナジウム源の質量から換算したVO2の量と添加するTiO2の量比(VO2:TiO2)は、例えば2:1である。
物質群A:タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)およびリン(P)。
次に、工程(1−2)で調製した懸濁液を用いて、水熱反応処理を行う。
水熱反応処理には、通常の場合、オートクレーブのような水熱反応容器が使用される。
処理温度は通常、例えば200℃〜300℃の範囲である。本発明の方法では、前述の効果、すなわち、ルチル型結晶相を含むTiO2粒子が、ルチル型結晶相のVO2の種結晶として機能するため、280℃以下、250℃以下、あるいは220℃以下の比較的低い温度でも、良好な調光性を有するVO2粒子を再現性良く形成することができる。
処理時間は、懸濁液の量、処理温度、処理圧力、および懸濁液中のV2O5とTiO2の量比等によっても変化するが、おおよそ1時間〜7日の範囲であり、例えば24時間程度である。
工程(1−3)後、必要に応じて、得られたVO2粒子の表面に、コーティング処理または表面改質処理を行ってもよい。これにより、表面が保護および/または表面改質されたVO2粒子を得ることができる。また、VO2粒子の光学特性(調光特性)を制御することができる。コーティング処理または表面改質処理は例えば、シランカップリング剤を用いて実施することができる。
VO2含有組成物中のVO2粒子の平均分散径dpを上記範囲内とすることで、得られるVO2分散樹脂層中のVO2粒子の平均凝集径dmを、安定的に、可視光域の波長以下の20〜780nmとすることができる。
本発明のVO2分散樹脂層の製造方法では、用いる基材に制限がないため、基材として可撓性シートを用いることができる。そのため、Roll to Rollの連続生産が可能であり、生産性に優れている。
本発明のVO2分散樹脂層の製造方法では、大面積化も容易である。
本発明によればまた、透光性基材上に良好に保持されるVO2分散樹脂層及びその製造方法を提供することができる。
まず、五酸化バナジウム(V2O5)((株)和光純薬工業社製、試薬特級)、シュウ酸二水和物((COOH)2・2H2O)((株)和光純薬工業社製、試薬特級)、及び純水200mlを、室温(20〜25℃)にて1:2:300のモル比で混合及び攪拌して、水溶液を調製した。さらに、pH調整のため、この水溶液に1.5mlの硫酸を添加した。
合成例1で得られたルチル型VO2粒子31.6質量部、バインダとしてのエステル系樹脂4.3質量部、トルエン32質量部、及び、メチルエチルケトン(MEK)32質量部を、ビーズミルを用いて混合撹拌して、ペーストを調製した。さらに、このペースト5質量部、エステル系樹脂15質量部、及び、MEK5質量部を、ビーズミルを用いて混合撹拌し、塗膜形成用ペースト(VO2含有組成物)を調製した。
上記塗膜形成用ペーストの調製に際しては、材料をビーズミルを用いて混合撹拌することで、VO2粒子の一次粒子同士の凝集を低減させるようにした。
得られた塗膜形成用ペーストの固形分濃度は24.6質量%であり、固形分中のVO2粒子濃度cは25.7質量%であった。得られた塗膜形成用ペーストにおけるVO2粒子の平均分散径dpをレーザー回折散乱式粒度分布計を用いて求めたところ、579nmであった。
以上のようにして、透光性基材であるアクリルシート上にVO2分散樹脂層を備えた調光シート(積層体)を得た。
実施例1−1の主な製造条件を表1−1に示す。
濁度計(日本電子工業(株)製、HAZE METER NDH5000)を用いてJIS K7361−1に準拠した方法で測定した全光線透過率を可視光透過率とした。
実施例1−1において得られた調光シートは、20℃と80℃のいずれも可視光透過率に顕著な差は見られず、充分な透過率を有していた。20℃と80℃のいずれについても、可視光透過率は59.0%と良好であった。
加熱アタッチメント付分光光度計(日本分光社製「V−570型」、測定波長:190〜2500nm)を用いて、20℃及び80℃における調光シートの波長ごとの透過率(光透過スペクトル)を測定した。
波長450nmにおける透過率は、20℃及び80℃のいずれにおいても49%であった。また、波長650nmにおける透過率は、20℃及び80℃のいずれにおいても62%であった。実施例1−1において得られた調光シートは、780nmを超える波長の光については、20℃と80℃では光透過特性が大きく異なり、良好な調光性を発現するものであった。
波長1500nmの赤外光について、下記式(II)で表されるTrは43%であった。
Tr(%)=(T(20℃)−T(80℃))/T(20℃)×100・・・(II)
(式中、T(80℃)は80℃における波長1500nmの光の透過率であり、T(20℃)は20℃における波長1500nmの光の透過率である。)
ペースト中のVO2粒子の平均分散径dpと、得られるVO2分散樹脂層中のVO2粒子の平均凝集径dmとは通常一致しないが、表1−1には、参考値として、ペースト中のVO2粒子の平均分散径dpを用いて求めたct/dp値について示してある。
実施例1−1において得られた調光シートについて、光学顕微鏡観察を実施した。得られた光学顕微鏡写真を図3に示す。図中、黒く見える部分がVO2粒子である。
VO2分散樹脂層において、VO2粒子が、大きな凝集塊がなく、ほぼ均一に良好に分散されていることが確認された。
上面に開口部(縦100mm×横100mm)を有する合板(厚さ12mm)製の試験箱(縦100mm×横100mm×深さ150mm)を用意した。この試験箱の内部に、試験箱の開口部から15mm下の位置の温度を測定する第1の温度計と、内底面から15mm上の位置の温度を測定する第2の温度計とを設置した。試験箱の開口部を覆うように、縦100mm×横100mmに切断した調光シートを設置した。
実施例1−1において得られた調光シートは、表面温度が61.8℃であっても、試験箱内部の温度は27.8〜30.0℃に保たれており、約60℃の条件において、調光シートによって赤外光が良好に遮蔽されることが示された。
塗膜形成用ペーストにおける固形分濃度と固形分中のVO2粒子濃度、及びVO2分散樹脂層の膜厚tのうち少なくとも1つのファクターを変更した以外は、実施例1−1と同様にして、調光シートを作製し、同様に評価した。
実施例1−2〜1−6において、塗膜形成用ペーストにおけるVO2粒子の平均分散径dpをレーザー回折散乱式粒度分布計を用いて求めたところ、実施例1−1と同様、いずれも579nmであった。また、得られたVO2分散樹脂層におけるVO2粒子を光学顕微鏡で観察し、均一に分散していることを確認した。
実施例1−2〜1−6では、塗膜形成用ペーストにおける固形分濃度と固形分中のVO2粒子濃度を、実施例1−1と同等あるいはそれ以下とした。これらの例では、実施例1−1と同様に、VO2粒子が大きな凝集なく、ほぼ均一に良好に分散され、良好な可視光透過率を有する調光シートが得られた。
塗膜形成用ペーストにおける固形分濃度と固形分中のVO2粒子濃度が大きくなる程、全光線透過率は低下する傾向がある。
VO2分散樹脂層の膜厚tを6000nm以上と最も大きくした実施例1−3は、他の実施例に比して、全光線透過率が劣る結果となった。ただし、VO2分散樹脂層の膜厚を6000nm以上と最も大きくした実施例1−3の調光シートにおいても、VO2粒子は大きな凝集なく、ほぼ均一に分散されていた。実施例1−3の調光シートの光学顕微鏡写真を図4に示しておく。
塗膜形成用ペーストにおける固形分濃度と固形分中のVO2粒子濃度、及びVO2分散樹脂層の膜厚のうち少なくとも1つのファクターを変更した以外は、実施例1−1と同様にして、調光シートを作製し、同様に評価した。
実施例2−1〜2−4において、塗膜形成用ペーストにおけるVO2粒子の平均分散径dpをレーザー回折散乱式粒度分布計を用いて求めたところ、実施例1−1と同様、いずれも579nmであった。また、得られたVO2分散樹脂層におけるVO2粒子を光学顕微鏡で観察し、均一に分散していることを確認した。
実施例2−1〜2−4では、塗膜形成用ペーストにおける固形分中のVO2粒子濃度を、実施例1−1以上とした。
これらの例では、VO2粒子に多少の凝集は見られたが、VO2粒子が良好に分散され、実施例1−1と同様、良好な可視光透過率を有する調光シートが得られた。
20≦ct/dp≦250を充足する実施例2−1、2−3、2−4において、特に良好な結果が得られた。
実施例2−1、2−2、2−4で得られた調光シートの光学顕微鏡写真を図5〜図7に示す。
実施例3−1〜3−2では、合成例1で得られたVO2粒子を、シランカップリング剤(信越化学工業(株)社製KBM−603)の5質量%水溶液中に4時間浸漬させて、VO2粒子の表面を親水化処理した。その後、VO2粒子を回収し、110℃で1時間、乾燥処理を行った。
表面親水化処理後のVO2粒子を用い、塗膜形成用ペーストにおける固形分濃度と固形分中のVO2粒子濃度、及びVO2分散樹脂層の膜厚tのうち少なくとも1つのファクターを変更した以外は、実施例1−1と同様にして、調光シートを作製し、同様に評価した。
実施例3−1〜3−2において、塗膜形成用ペーストにおけるVO2粒子の平均分散径dpをレーザー回折散乱式粒度分布計を用いて求めたところ、実施例1−1と同様、いずれも579nmであった。また、得られたVO2分散樹脂層におけるVO2粒子を光学顕微鏡で観察し、均一に分散していることを確認した。
実施例3−1〜3−2においても、VO2粒子に多少の凝集は見られたが、VO2粒子が良好に分散され、実施例1−1と同様、良好な全光線透過率を有する調光シートが得られた。
なお、実施例3−1〜3−2では、VO2粒子に比較的大きな凝集が見られたが、後記比較例2に比べると、はるかに凝集のレベルは低く抑えられていた。
実施例1−1〜1−6、実施例2−1〜2−4、及び実施例3−1〜3−2の結果から、以下のことが言える。
20≦ct/dp≦250・・・(III)、
60≦ct/dp≦110・・・(IIIa)
理論上求められるVO2膜厚は、VO2分散樹脂層中のVO2粒子の量に対応する。図10には、VO2分散樹脂層中のVO2粒子の量が多くなる程、全光線透過率が低下する傾向があることが示されている。このことは、VO2分散樹脂層中において、VO2粒子は良好な調光特性が得られる範囲内で、なるべく低濃度で均一に分散されることが好ましいことを示している。
厚さ1mmのアクリルシート((株)クラレ社製コモグラス)をそのまま調光シートとし、実施例1−1と同様に評価した。
比較例1で得られた調光シートは、20℃と80℃における光学透過特性に差が認められず、波長1500nmにおけるTrは0%であった。
実施例1−1と同様に、赤外光照射試験を実施したところ、調光シートの表面温度が60℃に達してから60分後の、試験箱内部の調光シートから15mm下の温度(温度1)と、試験箱内部の内底面から15mm上の温度(温度2)とはいずれも、実施例1−1より高く、約60℃の条件における調光シートによる赤外光遮蔽効果は、実施例1−1より劣るものであった。
合成例1で得られたVO2粒子を、市販の透光性の接着テープ上に接着し、これを厚さ1mmのアクリルシート((株)クラレ社製コモグラス)に貼り付けたものを調光シートとし、実施例1−1と同様に評価した。
比較例2で得られた調光シートは、20℃と80℃では光透過特性が大きく異なり、調光性を発現するものであった。しかしながら、波長1500nmの赤外光について、下記式(II)で表されるTrは67%であった。
Tr(%)=(T(20℃)−T(80℃))/T(20℃)×100・・・(II)
(式中、T(80℃)は80℃における波長1500nmの光の透過率であり、T(20℃)は20℃における波長1500nmの光の透過率である。)
Claims (13)
- 透光性樹脂中にVO2粒子が分散されたVO2分散樹脂層。
- 前記VO2粒子の濃度cが60質量%以下である請求項1に記載のVO2分散樹脂層。
- 前記VO2粒子の濃度c(質量%)と平均凝集径dm(nm)、及び前記VO2分散樹脂層の膜厚t(nm)が、下記式(I)の関係を充足する請求項1又は2に記載のVO2分散樹脂層。
20≦ct/dm≦250・・・(I) - 前記透光性樹脂は、エステル系樹脂を含む請求項1〜3のいずれかに記載のVO2分散樹脂層。
- 波長1500nmの光について、下記式(II)で表されるTrが40%以上である請求項1〜4のいずれかに記載のVO2分散樹脂層。
Tr(%)=(T(20℃)−T(80℃))/T(20℃)×100・・・(II)
(式中、T(80℃)は80℃における波長1500nmの光の透過率であり、T(20℃)は20℃における波長1500nmの光の透過率である。) - 20℃と80℃における波長380〜780nmの光の透過率がいずれも50%以上である請求項1〜5のいずれかに記載のVO2分散樹脂層。
- 透光性基材上に請求項1〜6のいずれかに記載のVO2分散樹脂層を備えた積層体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のVO2分散樹脂層の製造に用いられるVO2含有組成物であって、
前記VO2粒子と、前記透光性樹脂と、当該透光性樹脂を可溶な有機溶剤とを含むVO2含有組成物。 - 請求項1〜6のいずれかに記載のVO2分散樹脂層の製造方法であって、
前記VO2粒子と、前記透光性樹脂と、当該透光性樹脂を可溶な有機溶剤とを含むVO2含有組成物を用意する工程(2)と、
透光性基材上に、前記VO2含有組成物を塗布して塗膜を形成する工程(3)と、
前記有機溶媒を除去する工程(4)とを有するVO2分散樹脂層の製造方法。 - V2O5を原料として、液相で前記VO2粒子を合成する工程(1)をさらに有する請求項9に記載のVO2分散樹脂層の製造方法。
- 工程(2)において、一次粒子径20〜200nmの前記VO2粒子と、前記透光性樹脂と、前記有機溶剤とを撹拌して、平均分散径dp20〜780nmの前記VO2粒子を含有するVO2含有組成物を調製する請求項9又は10に記載のVO2分散樹脂層の製造方法。
- 前記VO2粒子として、表面が親水化処理されていないものを用いる請求項9〜11のいずれかに記載のVO2分散樹脂層の製造方法。
- 工程(1)が、
バナジウムを含む化合物と水とを含む溶液を用意する工程(1−1)と、
前記溶液にルチル型結晶相を含むTiO2粒子を添加して、懸濁液を調製する工程(1−2)と、
前記懸濁液を水熱反応させて、ルチル型結晶相を含む前記VO2粒子を合成する工程(1−3)とを含む請求項10に記載のVO2分散樹脂層の製造方法。
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