JP2013169580A - 溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン及び溶接止端部の超音波衝撃処理方法 - Google Patents

溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン及び溶接止端部の超音波衝撃処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 超音波衝撃処理を行うことにより、溶接止端部があった領域に応力集中が生じることを抑制する。
【解決手段】 打撃痕が形成されたとした時点での、打撃痕における仮想ピン430の軸440との接触点480と、R2終端部490と、の間の水平方向の距離である打撃後軸心接触部・R2終端部間距離Aが1.2mmを上回るようにする。仮想ピン430が仮想溶接ビード410及び仮想金属材420に接触した時点での、仮想ピン430と、仮想溶接ビード410及び仮想金属材420と、の間の領域の面積であるピン先端空間Bが0.2mm2以下になるようにする。打撃痕240の領域のうち、第2の露出面310bが当たった領域における弾性応力集中係数Kt(R2)を、第1の露出面310aが当たった領域における弾性応力集中係数Kt(R1)で割った値である応力集中係数比Cが1.75を下回るようにする。
【選択図】 図4

Description

本発明は、溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン及び溶接止端部の超音波衝撃処理方法に関し、特に、溶接止端部に対して超音波衝撃処理を施すために用いて好適なものである。
従来から、各種の構造物等の溶接止端部に対して超音波衝撃処理(Ultrasonic Impact Treatment:UIT)を施すことが行われている。超音波衝撃処理では、超音波衝撃処理装置の先端に取り付けられたピンを、装置の超音波振動する端面からそのピンの軸方向に振動が伝わる状態で、溶接部止端部に当てることにより、当該ピンから溶接止端部周辺に衝撃を与える。この際、ピンは処理中に振動して打撃を与えるピンの軸方向にのみ自由度を与えられている。溶接止端部とは、母材である金属材と溶接ビードとの、当該金属材の表面における境界の部分を指す。この溶接止端部は、構造物の疲労破壊の起点となる箇所である。
そこで、溶接止端部に超音波衝撃処理を施すことにより、溶接止端部に塑性変形を生じさせ、溶接止端部に圧縮残留応力を導入する。溶接止端部に超音波衝撃処理を行うと、溶接止端部の近傍に、圧縮降伏応力の5割以上の高い圧縮残留応力場を形成することができる。よって、溶接止端部の疲労特性を向上させることができる。
以上のような溶接止端部に超音波衝撃処理を施す技術として特許文献1に記載の技術がある。
特許文献1には、先端部の曲率半径が1.0[mm]以上2.0[mm]以下であるピンを用いて溶接止端部に対して超音波衝撃処理を施し、溶接止端部の溶接方向に垂直な断面に、曲率半径が1.5[mm]以上2.5[mm]未満の凹形状を形成する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術では、先端部の曲率半径を小さくすることにより、溶接止端部に折れ込み疵が発生することを防止しながら、溶接止端部に圧縮残留応力を導入することができる。
特開2007−283355号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ピンの先端部の曲率半径が小さい。このため、溶接止端部の応力集中の低減効果が限定的であり、また、溶接が施された金属部材に対して荷負荷が作用したり、熱処理が施されたり、超音波衝撃処理により溶接止端部付近に導入された圧縮残留応力が低下したりすると、溶接止端部の応力集中が耐疲労性能を支配することになる。このため、溶接止端部付近を起点として疲労き裂が発生する虞がある。
そこで、このような溶接止端部付近における応力集中を緩和させるために、ピンの先端部の曲率半径を大きくして、止端半径を大きくすることが考えられる。
しかしながら、ピンの先端部の曲率半径を大きくすると、ピンの先端部と、その軸方向に沿ってストレートに延在する胴部とのつなぎ目が滑らかにならない虞がある。このため、溶接が施された金属材に対して荷負荷が作用したり、熱処理が施されたり、超音波衝撃処理により溶接止端部付近に導入された圧縮残留応力が低下したりすると、溶接止端部付近の領域のうち、前記つなぎ目が当たった領域で成形された部位の応力集中が大きくなる。よって、前記つなぎ目付近で打撃した部位を起点として疲労き裂が発生する虞がある。また、ピンの先端部の曲率半径を大きくすると、溶接止端部付近を変形させる体積が大きくなり、折れ込み疵を作りやすくなる。このため、超音波衝撃処理を完了するのに多くの時間を要することになり、超音波衝撃処理の処理効率が低下する虞や欠陥を作ってしまうことがある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、超音波衝撃処理を行うことにより、溶接止端部があった領域に応力集中が生じることを抑制することを目的とする。
本発明の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピンの第1の例は、軸対称の形状を有するピンであって、母材となる金属材と、フランク角α[°]が10[°]≦α≦45[°]である溶接ビードとの、当該金属材の表面における境界の部分である溶接止端部を狙い位置として超音波衝撃を与えるための溶接止端部の超音波衝撃処理用ピンであって、前記超音波衝撃を与えるに際して前記溶接止端部付近に当たる先端部と、前記先端部に繋がる胴部と、を有前記先端部と前記胴部は一体で形成され、前記先端部は、その先端から、それぞれ曲率半径R1[mm]、R2[mm]の曲率で外方に湾曲した第1の露出面と第2の露出面とを有し、前記先端部の基端の形状は、直径D[mm]の円であり、前記胴部の先端面は、前記先端部の基端面と同じであり、前記胴部は、前記先端部の基端から前記超音波衝撃処理用ピンの軸に沿って真っすぐに延設された、底面の直径がD[mm]である円柱形状の部分を有し、前記超音波衝撃処理用ピンの全長L[mm]は、25[mm]≦Lであり、前記曲率半径R1[mm]は、2.0[mm]≦R1≦4.0[mm]であり、前記曲率半径R2[mm]は、0.5[mm]≦R2<R1[mm]であり、前記フランク角α[°]は、前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにして、前記超音波衝撃処理用ピンが、前記溶接ビード及び前記金属材と接触したときの、前記溶接止端部と、前記金属材及び前記超音波衝撃処理用ピンの接触点と、前記溶接ビード及び前記超音波衝撃処理用ピンの接触点と、の3点により定まる前記溶接止端部回りの角度のうち小さい方の角度θ[°]の補角となる角度であり、前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにすると共に、前記金属材の表面と前記超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記超音波衝撃処理用ピンが、前記溶接ビード及び前記金属材と接触したときに、前記超音波衝撃処理用ピンの軸を含み、且つ、前記溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向に沿う方向の断面における、前記超音波衝撃処理用ピンと、前記溶接ビード及び前記金属材と、の間の面積であるピン先端空間B[mm2]が、B≦0.2[mm2]であり、前記超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、前記第2の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数を、前記第1の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数で割った値である応力集中係数比C[−]が、C≦1.75[−]であることを特徴とする。
本発明の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピンの第2の例は、非軸対称の形状を有するピンであって、母材となる金属材と、フランク角α[°]が10[°]≦α≦45[°]である溶接ビードとの、当該金属材の表面における境界の部分である溶接止端部を狙い位置として超音波衝撃を与えるための溶接止端部の超音波衝撃処理用ピンであって、前記超音波衝撃を与えるに際して前記溶接止端部付近に当たる先端部と、前記先端部に繋がる連結部と、前記連結部に繋がる胴部と、を有し、前記先端部と前記連結部と前記胴部は一体で形成され、前記先端部は、前記超音波衝撃処理用ピンの軸に対して垂直な方向である第1の方向において、その先端から、それぞれ曲率半径R1[mm]、R2[mm]の曲率で外方に湾曲した第1の露出面及び第2の露出面と、前記軸と前記第1の方向とに対して垂直な方向である第2の方向において、その先端から、それぞれ曲率半径R3[mm]、R4[mm]の曲率で外方に湾曲した第3の露出面及び第4の露出面と、を有し、前記連結部の先端面は、前記先端部の基端面と同じであり、前記連結部は、前記先端部の基端から、前記第1の方向における幅が基端に位置するほど広くなると共に、前記第2の方向における両側端の幅が前記先端部の基端面の前記第2の方向における幅と同じになるように延設された露出面を有し、前記連結部の基端の形状は、直径D[mm]の円であり、前記胴部の先端面は、前記連結部の基端面と同じであり、前記胴部は、前記連結部の基端から前記超音波衝撃処理用ピンの軸に沿って真っすぐに延設された、底面の直径がD[mm]である円柱形状の部分を有し、前記超音波衝撃処理用ピンの全長L[mm]は、前記連結部の軸方向の長さをm[mm]として、25[mm]+m[mm]≦Lであり、前記曲率半径R1[mm]は、2.0[mm]≦R1≦4.0[mm]であり、前記曲率半径R2[mm]は、0.5[mm]≦R2<R1[mm]であり、前記曲率半径R4[mm]は、R4≧0.1×R3[mm]であり、前記曲率半径R3[mm]は、R3<4×D及びR1≦0.5×R3を満足し、前記超音波衝撃処理用ピンの軸方向及び前記第1の方向に沿って前記超音波衝撃処理用ピンを切ったときの、前記超音波衝撃処理用ピンの軸と、前記連結部の前記第1の方向における両端面とのなす角度である傾斜角φは、0[°]<φ≦100[°]であり、前記フランク角α[°]は、前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにして、前記超音波衝撃処理用ピンが、前記溶接ビード及び前記金属材と接触したときの、前記溶接止端部と、前記金属材及び前記超音波衝撃処理用ピンの接触点と、前記溶接ビード及び前記超音波衝撃処理用ピンの接触点と、の3点により定まる前記溶接止端部回りの角度のうち小さい方の角度θ[°]の補角となる角度であり、前記超音波衝撃処理用ピンの前記第2の方向が前記溶接止端部の形成されている方向に沿うようにして、前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにすると共に、前記金属材の表面と前記超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記超音波衝撃処理用ピンが、前記溶接ビード及び前記金属材と接触したときに、前記超音波衝撃処理用ピンの軸を含み、且つ、前記溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向に沿う方向の断面における、前記超音波衝撃処理用ピンと、前記溶接ビード及び前記金属材と、の間の面積であるピン先端空間B[mm2]が、B≦0.2[mm2]であり、前記超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、前記第2の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数を、前記第1の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数で割った値である応力集中係数比C[−]が、C≦1.75[−]であることを特徴とする。
本発明の溶接止端部の超音波衝撃処理方法の第1の例は、前記第1の例の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピンに振動を発生させ、前記超音波衝撃処理用ピンにより溶接止端部を狙い位置として超音波衝撃を与える溶接止端部の超音波衝撃処理方法であって、前記第1の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r1が、0.8R1≦r1≦1.2R1[mm]であり、前記第2の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r2が、0.4[mm]≦r2<R1であり、前記金属板の表面からの深さdが、d≧0.1[mm]である凹形状の打撃痕を、前記溶接止端部が形成されている方向に沿って連続的に形成し、前記第2の露出面の形状は、前記溶接止端部の位置と異なる領域に転写されるようにすることを特徴とする。
本発明の溶接止端部の超音波衝撃処理方法の第2の例は、前記第2の例の溶接止端部の超音波衝撃用ピンに振動を発生させ、前記超音波衝撃用ピンにより溶接止端部を狙い位置として超音波衝撃を与える溶接止端部の超音波衝撃処理方法であって、前記第1の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r3が、0.8R1≦r3≦1.2R1[mm]であり、前記第3の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r4が、0.8R3≦r4≦1.2R3[mm]であり、前記第2の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r5が、0.4[mm]≦r5<R1であり、前記金属板の表面からの深さdが、d≧0.1[mm]である凹形状の打撃痕を、前記溶接止端部が形成されている方向に沿って連続的に形成し、前記第2の露出面の形状は、前記溶接止端部の位置と異なる領域に転写されるようにすることを特徴とする。
本発明によれば、先端から曲率半径R1[mm]、R2[mm]の曲率で外方に湾曲した第1の露出面と第2の露出面を有する超音波衝撃用ピンを採用する。よって、先端が単一の曲率半径を有する超音波衝撃用ピンに比べて、先端部の基端のつなぎ目を滑らかにすることができると共に、先端の面積を小さくすることができる。よって、超音波衝撃処理を行うことにより、溶接止端部があった領域に応力集中が生じることを抑制することができると共に超音波衝撃処理の処理効率を向上させることができる。
第1の実施形態を示し、超音波衝撃装置の構成の一例を示す図である。 第1の実施形態を示し、超音波衝撃装置により超音波衝撃が与える前・超音波衝撃が与えられている途中・超音波衝撃が与えられた後の溶接止端部付近の一例を示す俯瞰図である。 第1の実施形態を示し、超音波衝撃処理用ピンの構成の一例を示す図である。 第1の実施形態を示し、溶接止端部付近のピンの様子の一例を示す図である。 第1の実施形態を示し、打撃後軸心接触部・R2終端部間距離A、ピン先端空間B、及び応力集中係数比Cと、曲率半径R2との関係の一例を示す図である。 第1の実施形態を示し、超音波衝撃処理により形成された打撃痕の様子の一例を示す図である。 実施例1を示し、試験片に対して行った超音波衝撃処理の条件と、超音波衝撃処理を行った試験片の疲労試験破断回数を示す図である。 隅肉十字継手の各部位の記号を示す図である。 第2の実施形態を示し、超音波衝撃処理用ピンの構成の一例を示す図である。 第2の実施形態を示し、超音波衝撃処理用ピンの変形例を示す図である。 実施例2を示し、試験片に対して行った超音波衝撃処理の条件と、その結果を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、超音波衝撃装置100の構成の一例を示す図である。具体的に図1は、超音波衝撃装置100を、その軸の方向に沿って切ったときの断面の一例を示す図である。尚、各図では、必要に応じて、説明に必要な部分のみを簡略化して示している。
超音波衝撃装置100は、母材となる鋼板等の金属材と溶接ビードとの、当該金属材の表面における境界の部分である溶接止端部を狙い位置として、当該溶接止端部付近(溶接止端部を含むその周辺の領域)に対して超音波衝撃を与えるものである。
超音波衝撃装置100は、トランスデューサー110と、トランスデューサー110の前面に設けられたウエーブガイド120と、超音波衝撃処理用ピン130と、ウエーブガイド120の先端に設けられ、超音波衝撃処理用ピン130を支持するホルダー140と、ホルダー140を支持する支持体150と、後端にハンドル160を有するケース170と、ケーブル180とを有している。
ケーブル180を介して外部から供給された電気エネルギーは、トランスデューサー110により超音波領域の機械的振動に変換される。トランスデューサー110で発生した超音波振動は、トランスデューサー110に接続されているウエーブガイド120を伝播する。
この超音波振動は、ウエーブガイド120の先端から、ウエーブガイド120に取り付けられ、ホルダー140で支持されており、軸方向のめ自由度が与えられる超音波衝撃処理用ピン130に伝わる。これにより、超音波衝撃処理用ピン130が振動する。この超音波衝撃処理用ピン130の先端を、溶接止端部の方向に向けて、超音波衝撃処理用ピン130から溶接止端部付近に超音波衝撃(機械的振動)を与える。例えば、ウエーブガイド先端振幅が10[μm]〜60[μm]、周波数が10[kHz]〜60[kHz]、の超音波振動となる。
尚、超音波衝撃装置は、例えば、特開2006−55899号公報に記載されており、公知の技術で実現できるので、ここでは概略のみを説明し、詳細な説明を省略する。また、超音波衝撃装置は、図1に示したものに限定されず、前述した条件の超音波衝撃を溶接止端部付近に与えられるものであれば、どのようなものであってもよい。
図2は、超音波衝撃装置により超音波衝撃が与える前(図2(a))・超音波衝撃が与えられている途中(図2(b))・超音波衝撃が与えられた後(図2(c))の溶接止端部付近の一例を示す俯瞰図である。
図2(a)に示すように、母材となる金属材210とその他の金属材とを溶接することにより溶接ビード220が形成される。前述したように、金属材210と溶接ビード220との、金属材210の表面における境界が溶接止端部230である。
超音波衝撃処理用ピン130の軸が溶接止端部230の方向を向くようにして、軸方向(図2(b)に示す両矢印の方向)に超音波衝撃処理用ピン130の先端を、被処理材となる溶接止端部230付近に当てて、溶接止端部230付近を超音波衝撃により打撃を与えると、溶接止端部230付近に凹形状の打撃痕(溝)240が形成される。図2(b)に示す例では、図2(b)に示す白抜きの矢印の方向に超音波衝撃処理用ピン130(超音波衝撃装置100)を(相対的に)移動させて、溶接止端部230付近に凹形状の打撃痕240を形成するようにしている。このように、超音波衝撃により形成される凹形状の打撃痕240は、溶接方向に沿って連続的に形成される。尚、必要に応じて、超音波衝撃処理用ピン130(超音波衝撃装置100)を、図2(b)に示す白抜きの矢印の方向だけではなく、その反対の方向にも移動させて(すなわち、往復運動させながら)凹形状の打撃痕240を形成する。尚、以下の説明では、必要に応じて「凹形状の打撃痕」を「打撃痕」と略称する。
図3は、超音波衝撃処理用ピン130の構成の一例を示す図である。具体的に図3(a)は、超音波衝撃処理用ピン130を、その軸に垂直な方向から見た図である。また、図3(b)は、図3(a)に示す超音波衝撃処理用ピン130の先端部付近を拡大して示す図である。尚、以下の説明では、「超音波衝撃処理用ピン」を必要に応じて「ピン」と略称する。
本実施形態では、ピン130は、軸対称の形状を有している(ピン130の軸は、図3(a)に示す軸300である)。
ピン130は、先端部310と胴部320とを備える。
先端部310は、ピン130の先端から、それぞれ曲率半径R1[mm]、R2[mm]の曲率で外方に湾曲した2つの露出面310a、310bを有し、その基端の形状が直径D[mm]の円の部分を有する。図3(b)に示すように、曲率半径R1[mm]の曲率で外方に湾曲した第1の露出面310aは、仮想二点鎖線よりも先端側の領域の露出面であり、曲率半径R2[mm]の曲率で外方に湾曲した第2の露出面310bは、仮想二点鎖線と仮想破線との間の領域の露出面である。
胴部320は、その先端面が先端部310の基端面と同じであり、先端部310の基端から軸300に沿って真っすぐに延設された、底面の直径がD[mm]である円柱形状を有する部分である。
これら先端部310と胴部320は、金属系の材料により一体で形成されている。ピン130のHRC(ロックウェル硬さ)は、50以上であるのが好ましく、60以上であるのがより好ましい。
以上のように本実施形態では、ピン130の先端は、二重曲率を有している。
図4は、溶接止端部付近のピンの様子の一例を示す図である。具体的に、図4(a)は、打撃痕が形成される直前の溶接止端部付近のピンの様子の一例を示し、図4(b)は、打撃痕が形成された時点の溶接止端部付近のピンの様子の一例を示す図である。これら図4(a)、図4(b)は、仮想のピン430の軸を含み、且つ、仮想の溶接止端部450が形成されている方向(溶接方向、溶接ビード410の長手方向)に垂直な方向に沿うように切ったときの、仮想の溶接ビード410・仮想の金属材420・仮想のピン430の断面を示す図である。尚、以下の説明では、「仮想の溶接ビード410、仮想の金属材420、仮想のピン430、仮想の溶接止端部450」を、それぞれ「仮想溶接ビード410、仮想金属材420、仮想ピン430、仮想溶接止端部450」と称する。
仮想溶接ビード410とは、仮想溶接止端部450が形成されている方向に垂直な方向における断面の形状及び大きさが、前記仮想の溶接止端部が形成されている方向において同一であり、且つ、その表面が平面であると仮定した溶接ビードである。
仮想金属材420とは、金属材210の仕様と同一の寸法を有すると仮定した金属材である。
仮想ピン430とは、ピン130の仕様と同一の寸法を有すると仮定したピンである。
仮想溶接止端部450とは、仮想金属材420と、仮想溶接ビード410との、仮想金属材420の表面における境界の部分である。
まず、本実施形態では、超音波衝撃処理が行われていない状態で、仮想ピン430の軸440が、仮想溶接止端部450の方向を向き、且つ、仮想金属材420の表面と、仮想ピン430の軸440とのなす角度が、θ/2[°]となるように、仮想ピン430が、仮想金属材420及び仮想溶接ビード410に接触するとしたときに、打撃後軸心接触部・R2終端部間距離A[mm]、ピン先端空間B[mm2]、応力集中係数比C[−]が、それぞれ以下の(1)式、(2)式、(3)式を満足するようにする。ここで、角度θ[°]は、仮想溶接止端部450と、仮想金属材420及び仮想ピン430の接触点460と、仮想溶接ビード410及び仮想ピン430の接触点470と、の3点により定まる仮想溶接止端部450回わりの角度のうち小さい方の角度である。
A>1.2[mm] ・・・(1)
図4に示すように、αは、フランク角であり、角度θ[°]の補角となる。
B≦0.2[mm2] ・・・(2)
C≦1.75[−] ・・・(3)
ここで、打撃後軸心接触部・R2終端部間距離Aは、図4(b)に示すように、打撃痕が形成されたとした時点で、仮想ピン430の軸440の方向と、仮想溶接止端部450が形成される方向に垂直な方向とに沿って切ったときの、打撃痕における仮想ピン430の軸440との接触点480と、仮想ピン430の第2の露出面310bの基端のうち母材(仮想金属材420)側に位置する点(先端部310と胴部320との境界のうち母材側の端に位置する点)であるR2終端部490と、の間の水平方向の距離である。
ピン先端空間Bは、図4(a)に示すように、仮想ピン430が仮想溶接ビード410及び仮想金属材420に接触した時点で、仮想ピン430の軸440の方向と、仮想溶接止端部450が形成される方向に垂直な方向とに沿って切ったときに、仮想ピン430と、仮想溶接ビード410及び仮想金属材420と、の間に生じる領域の面積である。図4において斜線で示している領域が、ピン先端空間Bである。
応力集中係数比Cは、超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、仮想ピン430の第2の露出面310bが当たる領域における弾性応力集中係数Kt(R2)を、超音波衝撃処理により形成される打撃痕240の領域のうち、仮想ピン430の第1の露出面310aが当たる領域における弾性応力集中係数Kt(R1)で割った値である。
また、先端部310の曲率半径R1[mm]、R2[mm]が、それぞれ以下の(5)式、(6)式を満足するようにする。
2.0[mm]≦R1≦4.0[mm] ・・・(5)
0.5[mm]≦R2<R1[mm]・・・(6)
また、ピン130の全長L[mm]が、以下の(7)式を満足するようにする。
25[mm]≦L ・・・(7)
そして、以上の(1)式〜(7)式の条件を満たす仕様のピン130を用いて、以下の(8)式を満足するフランク角α[°]を有する溶接ビード220に対して超音波衝撃処理を行うものとする。
10[°]≦α≦45[°] ・・・(8)
以下に(1)式〜(7)式を採用する根拠を説明する。
まず、打撃後軸心接触部・R2終端部間距離Aが1.2[mm]以下になると、相対的に小さい曲率半径R2の曲率で外方に湾曲している第2の露出面310b(先端部310の基端付近の領域)が、溶接止端部230の位置に近くなり過ぎる。このような状態で超音波衝撃処理を行うと、溶接止端部230の近傍に応力集中が生じる虞がある。すなわち、第2の露出面310bを出来るだけ溶接止端部230から遠ざけるようにする。以上のことから(1)式の条件が導かれる。
次に、ピン先端空間Bが0.2[mm2]を超えると、ピン130と、金属材210及び溶接ビード220との間の空間が大きくなるため、打撃痕240に折れ込み疵が発生する虞がある。このことから(2)式の条件が導かれる。
次に、応力集中係数比Cは、超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、第2の露出面310bが当たることにより形成される領域の応力集中が、第1の露出面301aが当たることにより形成された領域の応力集中に対してどれだけ大きいのかを示すものである。応力集中係数比は、公知の弾性応力集中係数の推定式に、ピン130の形状・大きさを定めるパラメータと、溶接部の形状・大きさを定めるパラメータを代入することにより計算することができる。
超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、第2の露出面310bが当たることにより形成される領域は、第1の露出面310aが当たることにより形成された領域よりも、母材(仮想の金属材420)側に位置する。このため、超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、第2の露出面310bが当たることにより形成される領域は、溶接止端部に比べれば、き裂が生じにくい。とは言え、応力集中係数比Cが1.75を上回ると、超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、第2の露出面310bが当たることにより形成される領域の応力集中が大きくなり過ぎるため、当該領域からき裂が発生する虞がある。以上のことから(3)式の条件が導かれる。
図5に、打撃後軸心接触部・R2終端部間距離A、ピン先端空間B、及び応力集中係数比Cと、曲率半径R2との関係の一例を示す。図5では、ピン130の直径Dを4[mm]、曲率半径R1が4[mm]であるときの関係を例に挙げて示している。
次に、先端部310の第1の露出面310aの曲率半径R1が2.0[mm]未満になると、溶接止端部の半径が通常の溶接で得られる溶接止端部の半径に近くなるため、超音波衝撃処理により形成される打撃痕における応力集中の低減効果が小さくなる。一方、先端部310の第1の露出面310aの曲率半径R1が4.0[mm]を上回ると、ピン130による溶接止端部230付近への打撃面積が大きくなり、超音波衝撃処理の処理効率が低下すると共に折れ込み疵が発生し易くなる。また、先端部310の曲率半径R1が4.0[mm]を上回ると、先端部310と胴部320との境界の角度が鋭くなり過ぎる。このため、超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、この境界が当たった部位における応力集中が、先端部310が当たった部位における応力集中に比べ大きくなる。以上のことから(5)式の条件が導かれる。
次に、先端部310の第2の露出面310bの曲率半径R2が0.5[mm]未満になると、超音波衝撃処理に際し、先端部310と胴部320との境界が、溶接止端部230付近に位置する。このため、溶接止端部230付近に欠陥がある場合には、超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、この境界が当たる領域における応力集中のため、この欠陥を起点として疲労破壊が起こる虞がある。また、先端部310の第2の露出面310bの曲率半径R2が0.5[mm]未満になると、超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、第2の露出面310bが当たることにより形成される領域の応力集中が大きくなる。このような観点から、先端部310の第2の露出面310bの曲率半径R2は、1[mm]以上であることがより好ましい。一方、先端部310の第2の露出面310bの曲率半径R2がR1[mm]を上回ると、先端部310の第1の露出面310aを確保することができない。また、先端部310の第2の露出面310bの曲率半径R2がR1[mm]になると、先端部310が単一の曲率となってしまう。以上のことから(6)式の条件が導かれる。
次に、ピン130の全長Lが25[mm]未満であると、ピン130の摺動部が小さくなるため、ピン130をホルダー140で支持することが困難になったり、超音波衝撃処理を行っているときにピン130の軸300がぶれ易くなったりする。以上のことから(7)式の条件が導かれる。
尚、ピン130の全長Lの最大寸法は、ピン材料の密度や太さとも関係し、ピン130がウエーブガイド120の先端と被処理材との間で超音波振動による衝撃振動が励起される範囲で決定される。
また、ピン130の直径Dは、以上のピン130の形状の条件を満たし、且つ、ピン130が共振する範囲で適宜決定することができる。
次に、フランク角αが10[°]未満になると、溶接止端部230を狙い位置とするのが困難になる。一方、フランク角αが45[°]を上回ると、(仮にピン先端空間Bが(2)式の条件を満足しても打撃痕の深さが深くなるため、)打撃痕240に折れ込み疵が発生し易くなる。以上のことから(7)式の条件が導かれる。
図6は、超音波衝撃処理により形成された打撃痕240の様子の一例を示す図である。具体的に図6は、超音波衝撃処理により形成された打撃痕240の付近を、溶接止端部230が形成されている方向(溶接方向)に垂直な方向で切った断面図である。図6を参照しながら、超音波衝撃処理により形成された打撃痕240の形状を説明する。
超音波衝撃処理により形成された打撃痕240の、溶接止端部230があった領域は、第1の露出面310aの形状が転写された形状を有する。第1の露出面310aの形状が転写された領域の曲率半径r1は、以下の(8a)式を満足するようにする。
0.8R1≦r1≦1.2R1[mm] ・・・(8a)
打撃痕240がこのような範囲の曲率半径r1を有していれば、ピン130の軸300がぶれずに超音波衝撃処理が行われることになり、折れ込み疵の発生を防止することができる。
また、第2の露出面310bの形状が転写された領域の曲率半径r2は、以下の(8b)式を満足するようにする。
0.4[mm]≦r2<R1 ・・・(8b)
さらに、第2の露出面310bの形状は、溶接止端部230の位置に転写されないようにする。このようにしないと、先端部310と胴部320との境界が、溶接止端部230付近に位置するため、溶接止端部230付近に欠陥がある場合には、この欠陥を起点として疲労破壊が起こる虞があるからである。
また、打撃痕240の母材である金属材210の表面からの深さ(板厚方向の長さ)dは、以下の(9)式を満足するようにする。尚、以下の説明では、「打撃痕240の母材である金属材210の表面からの深さd」を必要に応じて「打撃痕240の深さd」と称する。
d≧0.1[mm] ・・・(9)
打撃痕240の深さdがこのような範囲であれば、溶接止端部230付近に、金属材210の降伏応力の6割以上の圧縮残留応力を安定して付与することができるからである。
尚、図4に示したように、仮想溶接ビード410、仮想金属材420、仮想ピン430、仮想溶接止端部450を用いれば、実際に溶接を行わなくても(机上の計算で)ピン130の設計をすることができるので好ましい。しかしながら、仮想のものではなく実際のものを使用してピン130の設計をしてもよい。
(実施例1)
次に、本発明の実施例1(第1の実施形態の実施例)を説明する。
本実施例では、以下に示す溶接材料を用いて、以下に示す鋼板を溶接し、リブ高さが50[mm]の隅肉十字継手を作製し、この隅肉十字継手を100[mm]幅で切断した。このようにして得られた複数の隅肉十字継手(試験片)に対して図7に示す条件で超音波衝撃処理を行った。その後、超音波衝撃処理を行った試験片に対して、同一の条件の疲労試験を行い、試験片が破断するまでの疲労試験の実施回数(疲労試験破断回数)を調査した。
溶接材料:JIS Z3313 T49J0T1−1CA−UH5相当SF−1
鋼材:JIS G3106 SM490B(厚み=16[mm])
図7は、試験片に対して行った超音波衝撃処理の条件と、超音波衝撃処理を行った試験片の疲労試験により得られた疲労試験破断回数を示す図である。
疲労試験は、応力範囲が200[MPa]で、応力比が0.1、周波数が10[Hz]の軸力による繰り返し負荷で行った。
図7において、「記号」は、各試験片を識別するものである。
また、本実施例では、隅肉十字継手を形成しているので、弾性応力集中係数Kt(ρ)は、以下の(10)式で表される。応力集中係数比Cは、弾性応力集中係数Kt(R2)を弾性応力集中係数Kt(R1)で割った値(=Kt(R2)/Kt(R1))である。
図8は、(10)式の記号の意味を示す図である。尚、(10)式は、「辻勇,非荷重伝達型すみ肉溶接継手の応力集中係数の推定式,西部造船学会会報,(1990)」に示されているものである。尚、弾性応力集中係数は、継手に応じた推定式から計算することができる。例えば、突合せ継手における弾性応力集中係数については、「後川,中山ら,溶接継手の応力集中係数,IHI技報,(1983)」に示されている推定式を用いることにより求めることができる。
Figure 2013169580
図7に示すように、前述した(1)式〜(7)式を満足するように超音波衝撃処理を行うことにより疲労試験破断回数が200万回以上となった。よって、超音波衝撃処理により、溶接止端部230があった領域に応力集中が生じることを抑制することができ、溶接止端部230を起点とした疲労き裂の発生を抑制することができることが分かる。また、先端を単一の曲率にする場合よりも、先端の面積を小さくすることができるので、超音波処理衝撃処理の処理効率を向上させることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。前述した第1の実施形態では、超音波衝撃処理用ピン130が軸対称の形状を有する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、超音波衝撃処理用ピンが非軸対称の形状を有する場合について説明する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、超音波衝撃処理用ピンの形状が異なる。よって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図8に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図9は、超音波衝撃処理用ピン900の構成の一例を示す図である。具体的に図9(a)、超音波衝撃処理用ピン900を、その軸に垂直なy方向から見た図であり、図9(b)は、超音波衝撃処理用ピン900を、その軸に垂直なx方向から見た図である。また、図9(c)の左図、右図は、それぞれ図9(a)、図9(b)に示す超音波衝撃処理用ピン900の先端部付近を拡大して示す図である。尚、本実施形態の説明でも、第1の実施形態と同様に、「超音波衝撃処理用ピン」を必要に応じて「ピン」と略称する。
前述したように、本実施形態のピン900は、非軸対称の形状を有している(ピン900の軸は図9(a)、図9(b)に示す軸910である)。
ピン900は、先端部920と連結部930と胴部940とを備える。
先端部920は、軸910に対して垂直な方向である第1の方向(x方向)において、ピン900の先端から、それぞれ曲率半径R1[mm]、R2[mm]の曲率で外方に湾曲した2つの露出面920a、920bと、軸910と第1の方向とに対して垂直な方向である第2の方向(y方向)において、ピン900の先端から、それぞれ曲率半径R3[mm]、R4[mm]の曲率で外方に湾曲した2つの露出面920c、920dと、を有し、その基端の第1の方向(x方向)の長さがt[mm]である部分を有する(図9(c)の左図を参照)。尚、以下の説明では、「先端部920の基端の第1の方向(x方向)の長さ」を必要に応じて「先端部呼び厚み」と称する。
図9(c)に示すように、x方向において、曲率半径R1[mm]の曲率で外方に湾曲した第1の露出面920aは、仮想二点鎖線よりも先端側の領域の露出面であり、曲率半径R2[mm]の曲率で外方に湾曲した第2の露出面920bは、仮想二点鎖線と仮想破線との間の領域の露出面である。このように、y方向から見た先端部920は、軸300に垂直な方向から見た先端部310と同じ形状を有する(図3を参照)。
図9(c)に示すように、y方向において、曲率半径R3[mm]の曲率で外方に湾曲した第3の露出面920cは、仮想二点鎖線よりも先端側の領域の露出面であり、曲率半径R4[mm]の曲率で外方に湾曲した第4の露出面920dは、仮想二点鎖線と仮想破線との間の領域の露出面である。
連結部930は、その先端面が先端部920の基端面と同じであり、且つ、先端部920の基端から、第1の方向(x方向)における幅が基端に位置するほど広くなると共に、第2の方向(y方向)における両側端(x方向の中心の位置における両端)の幅が先端部920の基端面の第2の方向(y方向)における幅と同じになるように延設された露出面930aを有し、且つ、その基端の形状が直径D[mm]の円の部分を有する。
胴部940は、その先端面が連結部930の基端面と同じであり、連結部930の基端から軸910に沿って真っすぐに延設された、底面の直径がD[mm]である円柱形状を有する部分である。
これら先端部920、連結部930、及び胴部940は、金属系の材料により一体で形成されている。ピン900のHRC(ロックウェル硬さ)は、50以上であるのが好ましく、60以上であるのがより好ましい。
以上のように本実施形態では、ピン900の先端は、第1の方向(x方向)及び第2の方向(y方向)のそれぞれにおいて二重曲率を有している。尚、ピン900の概形は、マイナスドライバーの形状である。
ピン900の軸方向が溶接止端部230の方向を向くようにして、軸方向(図2(b)に示す両矢印の方向)にピン900の先端を溶接止端部230(付近)に当て超音波衝撃による振動を発生させると、ピン900のy方向が溶接方向(図2(b)に示す白抜きの矢印の方向)を向くようにピン900が回動し、その状態で、溶接止端部230付近に超音波衝撃が与えられる。その後は、第1の実施形態と同様に、図2(b)に示す白抜きの矢印の方向にピン900(超音波衝撃装置)を(相対的に)移動させると、溶接止端部230付近に凹形状の打撃痕(溝)が連続的に形成される。
したがって、本実施形態においても、超音波衝撃処理を行っているときに溶接止端部付近に当たっているピンの様子は、図4に示したようになる。すなわち、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した(1)式〜(5)式、及び(7)式を満足するようにする。
また、(7)式に代えて、以下の(11)式を満足するようにする。
25[mm]+m[mm]≦L ・・・(11)
mは、連結部930の軸910方向の長さである(図9(c)を参照)。連結部920をホルダー140で保持することができないので、ピン130の全長Lの下限値を、(7)式に示す値(=25[mm])に、連結部930の軸910方向の長さmを加算した値とする。
尚、ピン900の全長Lの最大寸法は、ピン材料の密度や太さとも関係し、ピン900がウエーブガイド120の先端と被処理材との間で共振する範囲で決定される。
更に、本実施形態では、傾斜角φ[°]、先端部920の第4の露出面920dの曲率半径R4[mm]、先端部920の第3の露出面920cの曲率半径R3[mm]が、それぞれ(12)式、(13)式、(14)・(15)式を満足するようにする。
0[°]<φ≦100[°] ・・・(12)
4≧0.1×R3[mm] ・・・(13)
3<4×D ・・・(14)
1≦0.5×R3 ・・・(15)
ここで、傾斜角φは、軸910方向(z方向)及び第1の方向(x方向)に沿ってピン900を切ったときの、ピン900の軸910と、連結部930の第1の方向(x方向)における両端面とのなす角度φ1、φ2の和である。この傾斜角φが一定でない場合、傾斜角φは、軸910方向(z方向)及び第1の方向(x方向)に沿ってピン900を切ったときの、ピン900の軸910と、連結部930の第1の方向(x方向)における両端面とのなす角度の和のうち最小の角度となる。
図10は、超音波衝撃処理用ピン1000の変形例を示す図である。具体的に図10は、超音波衝撃処理用ピン1000を、その軸1010に垂直なy方向から見た図(図9(a)に対応する図)である。図10に示すピン1000は、図9に示すピン900に対し、連結部930、1030の形状が異なる。
図10に示す連結部1030も、図9に示す連結部930と同様に、その先端面が先端部920の基端面と同じであり、且つ、先端部902の基端から、第1の方向(x方向)における幅が基端に位置するほど広くなると共に、第2の方向(y方向)における両側端の幅が先端部920の基端面の第2の方向(y方向)における幅と同じになるように延設された露出面を有し、且つ、その基端の形状が直径D[mm]の円の部分を有する。
ただし、図9に示す連結部930の第1の方向(x方向)における両端の面は平面であるのに対し、図10に示す連結部1030では、第1の方向(x方向)における両端の面は曲面である。このような連結部1030を有するピン1000の傾斜角φは、軸1010方向(z方向)及び第1の方向(x方向)に沿ってピン1000を切ったときの、ピン1000の軸1010と、連結部1030の第1の方向(x方向)における両端面とのなす角度の和のうち最小の角度となる。すなわち、ピン1000の傾斜角φは、軸1010方向(z方向)及び第1の方向(x方向)に沿ってピン1000を切ったときの、ピン1000の軸1010と、連結部1030の第1の方向(x方向)における両端面の領域のうちの最も先端側の微小領域に対する接線1040a、1040bと、のなす角度の和となる。
以下に、(12)式〜(15)式を採用する根拠を説明する。
まず、傾斜角φが100[°]を超えると、ピン900のy方向が溶接方向を向くようにピン900が回動し難くなり、超音波衝撃処理により溶接止端部付近に形成される打撃痕の幅が不連続になり易くなる。一方、傾斜角φが0[°]になると、超音波衝撃処理の最中にピン900の先端が潰れやすくなる。以上のことから(12)式の条件が導かれる。ただし、超音波衝撃処理の最中にピン800の先端が潰れることを確実に防止するためには、傾斜角φの下限値を30[°]にするのがより好ましい。
次に、先端部920の曲率半径R4が先端部920の曲率半径R3の0.1倍未満(R4<0.1×R3)になると、超音波衝撃処理の最中に、先端部920の第4の露出面920dが引っ掛かり易くなり、ピン900の滑らかな移動が阻害される。よって、(13)式の条件が導かれる。
次に、先端部920の曲率半径R3がピン900の直径Dの4倍以上になると、ピン900による溶接止端部230付近への打撃面積が大きくなり、超音波衝撃処理の処理効率が低下する。また、先端部920の曲率半径R3が大きく、平らになりすぎると処理時の超音波衝撃装置(打撃装置)の垂直度を厳密に保持しないと逆に処理溝深さにむらが出来てしまうため好ましくない。以上のことから(14)式の条件が導かれる。
また、先端部920の曲率半径R1が、先端部920の曲率半径R3の0.5倍を上回ると、ピン900のy方向が溶接方向を向くようにピン900が回動し難くなる。よって、(15)式の条件が導かれる。
ピン900の直径Dは、以上のピン900の形状の条件を満たし、且つ、ピン900が共振する範囲で適宜決定することができる。また、本実施形態では、先端部920と胴部940との間に連結部830を形成し、先端部920の形状のみを調整することにより、ピン900の直径Dを第1の実施形態のピン130の直径Dよりも太くすることができる。これにより、ピン900の剛性を高めることができ、ピン900の先端部920の被処理材との接触部の面積が大きくなることから必要となるより大きな打撃力にも耐えることができるようになり、ピン900の耐久性も向上させることができる。
ただし、過度にピン900の直径Dを大きくするとホルダー140とピン900との接触面積が大きくなるため、摩擦によりピンの回転動作の抵抗が大きくなることや、溶接止端が直線的ではない場合、打撃時のピンの回転による追従性が低下することがあるため、ピン900の直径Dは、10[mm]以下程度が望ましい。
また、前述したように、先端部920の曲率半径R1が、先端部920の曲率半径R3の0.5倍以下(先端部920の曲率半径R3が先端部920の曲率半径R1の2倍以上)になるようにすると、同じ条件で超音波衝撃処理を行った場合、溶接止端部230付近に形成される打撃痕の表面の走査方向(溶接方向)における粗さを、第1の実施形態のピン130を用いて形成した打撃痕の走査方向における粗さよりも小さくすることができる。これにより、走査方向において連続する複数の打撃痕の境界の領域における応力集中をより小さくすることができる。
そして、超音波衝撃処理により形成された打撃痕の、溶接止端部230があった領域は、第1の露出面920a及び第3の露出面920cの形状が転写された形状を有する。これら第1、第3の露出面920a、920cの形状が転写された領域の曲率半径r3、r4は、それぞれ以下の(16a)式、(16b)式を満足するようにする。
0.8R1≦r3≦1.2R1[mm] ・・・(16a)
0.8R3≦r4≦1.2R3[mm] ・・・(16b)
打撃痕がこのような範囲の曲率半径r2、r3を有していれば、ピン900の軸910がぶれずに超音波衝撃処理が行われることになり、折れ込み疵の発生を防止することができる。
また、第2の露出面920bの形状が転写された領域の曲率半径r5は、以下の(16c)式を満足するようにする。
0.4[mm]≦r5<R1 ・・・(16c)
さらに、第2の露出面920bの形状は、溶接止端部230の位置に転写されないようにする。このようにしないと、先端部920と連結部930との境界が、溶接止端部230付近に位置するため、溶接止端部230付近に欠陥がある場合には、この欠陥を起点として疲労破壊が起こる虞があるからである。
また、第4の露出面920dの形状は、被処理材に転写されないようにするのが好ましい。第4の露出面920dが被処理材に当たると、第4の露出面920dが被処理材に引っ掛かり、ピン900の滑らかな移動が阻害されるからである。
また、打撃痕の母材である金属材210の表面からの深さ(板厚方向の長さ)dは、第1の実施形態と同様に、以下の(17)式を満足するようにする。
d≧0.1[mm] ・・・(17)
打撃痕の深さdがこのような範囲であれば、溶接止端部230付近に、金属材210の降伏応力の6割以上の圧縮残留応力を安定して付与することができるからである。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2(第2の実施形態の実施例)を説明する。
本実施例でも、実施例1と同じ試験片を作製し、作製した試験片に対して図11に示す条件で超音波衝撃処理を行った。
図11は、試験片に対して行った超音波衝撃処理の条件と、その結果を示す図である。
図11において、「記号」は、各試験片を識別するものである。また、「対応軸対称ピン」は、図7に示した実施例1のピンの記号を示す。図11において、「記号」の欄に示されているピンと、その「記号」の欄と同一の行に位置する「対応軸対称ピン」の欄に示されているピンとは相互に対応するピンであることを示す。
本実施例のピンと、当該ピンに対応する実施例1のピンとでは、フランク角α、ピンの全長L、曲率半径R1、R2、溶接止端部・接触点間距離A、ピン先端空間B、及び応力集中係数比Cの値が同じになる。また、先端部呼び厚みtは、図7に示すピンの直径Dに略対応するものである。よって、本実施例のピンの先端部呼び厚みtと、当該ピンに対応する実施例1のピンの直径Dが、同じになる。
また、「作業性」の欄に付されている「○」は、ピン900の滑らかな移動が阻害されずに超音波衝撃処理を最後まで実施できたことを示す。一方、「作業性」の欄が「空欄」になっているのは、ピン900の滑らかな移動が阻害されて、超音波衝撃処理が途中で停止したり、不連続な打撃痕が形成されたりしたことを示す。
図11に示すように、前述した(1)式〜(5)式、(8)式、及び(12)式〜(17)式を満足するように超音波衝撃処理を行うことにより、ピン900の滑らかな移動が阻害されずに超音波衝撃処理を最後まで実施できる。このようにすることによって、本実施例のピンでは、実施例1のピンよりも、打撃痕の表面の走査方向における粗さを滑らかにすることができる。よって、本実施例のピンを使用した方が、当該ピンに対応する実施例1のピンを使用した場合よりも、疲労試験破断回数を大きくすることができる。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
100 超音波衝撃装置
130 超音波衝撃処理用ピン
210 金属材
220 溶接ビード
230 溶接止端部
240 打撃痕
300 ピンの軸
310 先端部
320 胴部
410 仮想の溶接ビード
420 仮想の金属材
430 仮想のピン
440 仮想のピンの軸
450 仮想の溶接止端部
460 仮想の金属材及び仮想のピンの接触点
470 仮想の溶接ビード及び仮想のピンの接触点
900、1000 超音波衝撃処理用ピン
910 ピンの軸
920 先端部
930、1030 連結部
940 胴部

Claims (10)

  1. 軸対称の形状を有するピンであって、母材となる金属材と、フランク角α[°]が10[°]≦α≦45[°]である溶接ビードとの、当該金属材の表面における境界の部分である溶接止端部を狙い位置として超音波衝撃を与えるための溶接止端部の超音波衝撃処理用ピンであって、
    前記超音波衝撃を与えるに際して前記溶接止端部付近に当たる先端部と、前記先端部に繋がる胴部と、を有し、
    前記先端部と前記胴部は一体で形成され、
    前記先端部は、その先端から、それぞれ曲率半径R1[mm]、R2[mm]の曲率で外方に湾曲した第1の露出面と第2の露出面とを有し、
    前記先端部の基端の形状は、直径D[mm]の円であり、
    前記胴部の先端面は、前記先端部の基端面と同じであり、
    前記胴部は、前記先端部の基端から前記超音波衝撃処理用ピンの軸に沿って真っすぐに延設された、底面の直径がD[mm]である円柱形状の部分を有し、
    前記超音波衝撃処理用ピンの全長L[mm]は、25[mm]≦Lであり、
    前記曲率半径R1[mm]は、2.0[mm]≦R1≦4.0[mm]であり、
    前記曲率半径R2[mm]は、0.5[mm]≦R2<R1[mm]であり、
    前記フランク角α[°]は、前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにして、前記超音波衝撃処理用ピンが、前記溶接ビード及び前記金属材と接触したときの、前記溶接止端部と、前記金属材及び前記超音波衝撃処理用ピンの接触点と、前記溶接ビード及び前記超音波衝撃処理用ピンの接触点と、の3点により定まる前記溶接止端部回りの角度のうち小さい方の角度θ[°]の補角となる角度であり、
    前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにすると共に、前記金属材の表面と前記超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記超音波衝撃処理用ピンが、前記溶接ビード及び前記金属材と接触したときに、
    前記超音波衝撃処理用ピンの軸を含み、且つ、前記溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向に沿う方向の断面における、前記超音波衝撃処理用ピンと、前記溶接ビード及び前記金属材と、の間の面積であるピン先端空間B[mm2]が、B≦0.2[mm2]であり、
    前記超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、前記第2の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数を、前記第1の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数で割った値である応力集中係数比C[−]が、C≦1.75[−]であることを特徴とする溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン。
  2. 前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにすると共に、前記金属材の表面と前記超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記超音波衝撃処理用ピンにより前記超音波衝撃処理を行って打撃痕が形成されたときに、
    前記超音波衝撃処理用ピンの軸を含み、且つ、前記溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向に沿う方向の断面における、前記打撃痕の前記超音波衝撃処理用ピンの軸との接触点と、前記超音波衝撃処理用ピンの前記第2の露出面の基端のうち前記金属材側に位置する点であるR2終端部と、の間の水平方向の距離である打撃後軸心接触部・R2終端部間距離A[mm]が、A>1.2[mm]であることを特徴とする請求項1に記載の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン。
  3. 前記ピン先端空間B[mm2]は、仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸が仮想の溶接止端部の方向を向くようにすると共に、仮想の金属材の表面と前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンが、仮想の溶接ビード及び前記仮想の金属材と接触したときの、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸の方向と、前記仮想の溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向とにより定まる断面における、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンと、前記仮想の溶接ビード及び前記仮想の金属材と、の間の面積であり、
    前記応力集中係数比C[−]は、前記超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの前記第2の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数を、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの前記第1の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数で割った値であり、
    前記仮想の超音波衝撃処理用ピンは、前記超音波衝撃処理用ピンの仕様と同一の寸法を有すると仮定した超音波衝撃処理用ピンであり、
    前記仮想の溶接ビードは、前記仮想の溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向における断面の形状及び大きさが、前記仮想の溶接止端部が形成されている方向において同一であり、且つ、その表面が平面であると仮定した溶接ビードであり、
    前記仮想の金属材は、前記金属材の仕様と同一の寸法を有すると仮定した金属材であり、
    前記仮想の溶接止端部は、前記仮想の金属材と、前記仮想の溶接ビードとの、当該仮想の金属材の表面における境界の部分であることを特徴とする請求項2に記載の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン。
  4. 前記打撃後軸心接触部・R2終端部間距離A[mm]は、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸が前記仮想の溶接止端部の方向を向くようにすると共に、前記仮想の金属材の表面と前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンにより前記超音波衝撃処理を行って打撃痕が形成されたとしたときの、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸を含み、且つ、前記仮想の溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向に沿う方向の断面における、前記打撃痕の前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸との接触点と、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの前記第2の露出面の基端に位置する前記仮想の金属材側の点であるR2終端部と、の間の水平方向の距離であることを特徴とする請求項3に記載の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン。
  5. 非軸対称の形状を有するピンであって、母材となる金属材と、フランク角α[°]が10[°]≦α≦45[°]である溶接ビードとの、当該金属材の表面における境界の部分である溶接止端部を狙い位置として超音波衝撃を与えるための溶接止端部の超音波衝撃処理用ピンであって、
    前記超音波衝撃を与えるに際して前記溶接止端部付近に当たる先端部と、前記先端部に繋がる連結部と、前記連結部に繋がる胴部と、を有し、
    前記先端部と前記連結部と前記胴部は一体で形成され、
    前記先端部は、前記超音波衝撃処理用ピンの軸に対して垂直な方向である第1の方向において、その先端から、それぞれ曲率半径R1[mm]、R2[mm]の曲率で外方に湾曲した第1の露出面及び第2の露出面と、前記軸と前記第1の方向とに対して垂直な方向である第2の方向において、その先端から、それぞれ曲率半径R3[mm]、R4[mm]の曲率で外方に湾曲した第3の露出面及び第4の露出面と、を有し、
    前記連結部の先端面は、前記先端部の基端面と同じであり、
    前記連結部は、前記先端部の基端から、前記第1の方向における幅が基端に位置するほど広くなると共に、前記第2の方向における両側端の幅が前記先端部の基端面の前記第2の方向における幅と同じになるように延設された露出面を有し、
    前記連結部の基端の形状は、直径D[mm]の円であり、
    前記胴部の先端面は、前記連結部の基端面と同じであり、
    前記胴部は、前記連結部の基端から前記超音波衝撃処理用ピンの軸に沿って真っすぐに延設された、底面の直径がD[mm]である円柱形状の部分を有し、
    前記超音波衝撃処理用ピンの全長L[mm]は、前記連結部の軸方向の長さをm[mm]として、25[mm]+m[mm]≦Lであり、
    前記曲率半径R1[mm]は、2.0[mm]≦R1≦4.0[mm]であり、
    前記曲率半径R2[mm]は、0.5[mm]≦R2<R1[mm]であり、
    前記曲率半径R4[mm]は、R4≧0.1×R3[mm]であり、
    前記曲率半径R3[mm]は、R3<4×D及びR1≦0.5×R3を満足し、
    前記超音波衝撃処理用ピンの軸方向及び前記第1の方向に沿って前記超音波衝撃処理用ピンを切ったときの、前記超音波衝撃処理用ピンの軸と、前記連結部の前記第1の方向における両端面とのなす角度である傾斜角φは、0[°]<φ≦100[°]であり、
    前記フランク角α[°]は、前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにして、前記超音波衝撃処理用ピンが、前記溶接ビード及び前記金属材と接触したときの、前記溶接止端部と、前記金属材及び前記超音波衝撃処理用ピンの接触点と、前記溶接ビード及び前記超音波衝撃処理用ピンの接触点と、の3点により定まる前記溶接止端部回りの角度のうち小さい方の角度θ[°]の補角となる角度であり、
    前記超音波衝撃処理用ピンの前記第2の方向が前記溶接止端部の形成されている方向に沿うようにして、前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにすると共に、前記金属材の表面と前記超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記超音波衝撃処理用ピンが、前記溶接ビード及び前記金属材と接触したときに、
    前記超音波衝撃処理用ピンの軸を含み、且つ、前記溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向に沿う方向の断面における、前記超音波衝撃処理用ピンと、前記溶接ビード及び前記金属材と、の間の面積であるピン先端空間B[mm2]が、B≦0.2[mm2]であり、
    前記超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、前記第2の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数を、前記第1の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数で割った値である応力集中係数比C[−]が、C≦1.75[−]であることを特徴とする溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン。
  6. 前記超音波衝撃処理用ピンの前記第2の方向が前記溶接止端部の形成されている方向に沿うようにして、前記超音波衝撃処理用ピンの軸が前記溶接止端部の方向を向くようにすると共に、前記金属材の表面と前記超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記超音波衝撃処理用ピンにより前記超音波衝撃処理を行って打撃痕が形成されたときに、
    前記超音波衝撃処理用ピンの軸を含み、且つ、前記溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向に沿う方向の断面における、前記打撃痕の前記超音波衝撃処理用ピンの軸との接触点と、前記超音波衝撃処理用ピンの前記第2の露出面の基端のうち前記金属材側に位置する点であるR2終端部と、の間の水平方向の距離である打撃後軸心接触部・R2終端部間距離A[mm]が、A>1.2[mm]であることを特徴とする請求項5に記載の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン。
  7. 前記ピン先端空間B[mm2]は、仮想の超音波衝撃処理用ピンの前記第2の方向が仮想の溶接止端部の形成されている方向に沿うようにして、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸が前記仮想の溶接止端部の方向を向くようにすると共に、仮想の金属材の表面と前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンが、仮想の溶接ビード及び前記仮想の金属材と接触したときの、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸の方向と、前記仮想の溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向とにより定まる断面における、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンと、前記仮想の溶接ビード及び前記仮想の金属材と、の間の面積であり、
    前記応力集中係数比C[−]は、前記超音波衝撃処理により形成される打撃痕の領域のうち、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの前記第2の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数を、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの前記第1の露出面が当たる領域における弾性応力集中係数で割った値であり、
    前記仮想の超音波衝撃処理用ピンは、前記超音波衝撃処理用ピンの仕様と同一の寸法を有すると仮定した超音波衝撃処理用ピンであり、
    前記仮想の溶接ビードは、前記仮想の溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向における断面の形状及び大きさが、前記仮想の溶接止端部が形成されている方向において同一であり、且つ、その表面が平面であると仮定した溶接ビードであり、
    前記仮想の金属材は、前記金属材の仕様と同一の寸法を有すると仮定した金属材であり、
    前記仮想の溶接止端部は、前記仮想の金属材と、前記仮想の溶接ビードとの、当該仮想の金属材の表面における境界の部分であることを特徴とする請求項6に記載の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン。
  8. 前記打撃後軸心接触部・R2終端部間距離A[mm]は、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの前記第2の方向が仮想の溶接止端部の形成されている方向に沿うようにして、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸が前記仮想の溶接止端部の方向を向くようにすると共に、前記仮想の金属材の表面と前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸とのなす角度がθ/2[°]となるようにして、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンにより前記超音波衝撃処理を行って打撃痕が形成されたとしたときの、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸を含み、且つ、前記仮想の溶接止端部が形成されている方向に垂直な方向に沿う方向の断面における、前記打撃痕の前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの軸との接触点と、前記仮想の超音波衝撃処理用ピンの前記第2の露出面の基端に位置する前記仮想の金属材側の点であるR2終端部と、の間の水平方向の距離であることを特徴とする請求項7に記載の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピン。
  9. 請求項1〜4の何れか1項に記載の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピンに振動を発生させ、前記超音波衝撃処理用ピンにより溶接止端部を狙い位置として超音波衝撃を与える溶接止端部の超音波衝撃処理方法であって、
    前記第1の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r1が、0.8R1≦r1≦1.2R1[mm]であり、
    前記第2の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r2が、0.4[mm]≦r2<R1であり、
    前記金属板の表面からの深さdが、d≧0.1[mm]である凹形状の打撃痕を、前記溶接止端部が形成されている方向に沿って連続的に形成し、
    前記第2の露出面の形状は、前記溶接止端部の位置と異なる領域に転写されるようにすることを特徴とする溶接止端部の超音波衝撃処理方法。
  10. 請求項5〜8の何れか1項に記載の溶接止端部の超音波衝撃処理用ピンに振動を発生させ、前記超音波衝撃処理用ピンにより溶接止端部を狙い位置として超音波衝撃を与える溶接止端部の超音波衝撃処理方法であって、
    前記第1の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r3が、0.8R1≦r3≦1.2R1[mm]であり、
    前記第3の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r4が、0.8R3≦r4≦1.2R3[mm]であり、
    前記第2の露出面の形状が転写される領域の曲率半径r5が、0.4[mm]≦r5<R1であり、
    前記金属板の表面からの深さdが、d≧0.1[mm]である凹形状の打撃痕を、前記溶接止端部が形成されている方向に沿って連続的に形成し、
    前記第2の露出面の形状は、前記溶接止端部の位置と異なる領域に転写されるようにすることを特徴とする溶接止端部の超音波衝撃処理方法。
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