JP2013154683A - ハイブリッド車両の駆動装置およびその制御方法 - Google Patents

ハイブリッド車両の駆動装置およびその制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】動力分割機構の作動状態を維持しつつハイブリッド車両を走行させる。
【解決手段】エンジンとモータジェネレータとは動力分割機構を介して連結される。キャリアにはエンジンが連結され、サンギヤにはモータジェネレータが連結され、リングギヤには駆動輪が連結される。また、2つの要素を締結するクラッチが設けられ、1つの要素を固定するクラッチが設けられる。これらのクラッチを解放することで、エンジン動力はモータジェネレータと駆動輪とに分割される(PS2モード)。PS2モードにおいて、SOCが上限値SH以上である場合には、モータジェネレータが負回転側に制御されて力行状態となる(S3)。一方、SOCが下限値SL以下である場合には、モータジェネレータが正回転側に制御されて回生状態となる(S6)。よって、バッテリの過充電や過放電を回避することができ、ハイブリッド車両の走行状態を継続することが可能となる。
【選択図】図13

Description

本発明は、動力分割機構を備えるハイブリッド車両の駆動装置およびその制御方法に関する。
遊星歯車列等からなる動力分割機構を備えたハイブリッド車両が開発されている(例えば、特許文献1参照)。動力分割機構の各回転要素には、それぞれエンジン、主に発電機として機能する発電用モータ(モータジェネレータ)、駆動輪が接続されている。また、駆動輪には主に電動機として機能する走行用モータが接続されている。そして、各回転要素の拘束を解くことにより、動力分割機構を介してエンジン動力を発電用モータと駆動輪とに分配することが可能となる。この動力分割機構を備えたハイブリッド車両においては、発電用モータの回転数を制御することにより、車速に関係なく効率の良い領域でエンジンを作動させることができ、ハイブリッド車両の燃費性能を向上させることが可能となる。
特開2000−16101号公報
ところで、動力分割機構の各回転要素の拘束を解いた場合には、発電用モータに対してギヤ比に応じたエンジントルクが分配されることから、発電用モータに作用するトルクを任意に調整することが不可能となっていた。したがって、各回転要素の拘束を解いた状態のまま、つまり動力分割機構を作動させた状態のまま走行を継続することは、発電用モータを力行状態や回生状態に固定することになる。ここで、駆動輪から走行用モータが切り離されていた場合や、そもそも走行用モータを備えていない場合には、発電用モータの発電電力を走行用モータで消費したり、発電用モータの消費電力を走行用モータで発電したりすることが困難となる。このような状況のもとで、動力分割機構を作動させたままハイブリッド車両を走行させることは、蓄電デバイスの過充電や過放電を招く要因となることから、ハイブリッド車両の走行継続が困難となっていた。
本発明の目的は、動力分割機構を作動させながらハイブリッド車両を継続して走行させることにある。
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、エンジンに連結される第1回転要素と、モータジェネレータに連結される第2回転要素と、駆動輪に連結される第3回転要素とを備える動力分割機構を有し、前記動力分割機構を介してエンジン動力を前記モータジェネレータと前記駆動輪とに伝達するハイブリッド車両の駆動装置であって、前記モータジェネレータに接続される蓄電デバイスの充電状態が所定値を下回る場合には、前記モータジェネレータを正回転側に制御する一方、前記充電状態が所定値を上回る場合には、前記モータジェネレータを負回転側に制御する制御手段を有することを特徴とする。
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記モータジェネレータの正回転側とは、前記エンジンのクランク軸の回転方向であることを特徴とする。
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記制御手段は、前記モータジェネレータを正回転側に制御する場合にエンジン動力を引き上げる一方、前記モータジェネレータを負回転側に制御する場合にエンジン動力を引き下げることを特徴とする。
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記回転要素のうち少なくとも2つの回転要素を締結する締結状態と、締結を解除する解放状態とに切り換えられる第1締結機構と、前記回転要素のうち1つの回転要素と固定部材とを締結する締結状態と、締結を解除する解放状態とに切り換えられる第2締結機構とを有し、前記制御手段は、前記第1および第2締結機構が解放されている状態のもとで、前記モータジェネレータを正回転側と負回転側とに制御することを特徴とする。
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記駆動輪にクラッチ機構を介して接続される走行用モータを有し、前記制御手段は、前記クラッチ機構が解放されている状態のもとで、前記モータジェネレータを正回転側と負回転側とに制御することを特徴とする。
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記第2回転要素は、前記モータジェネレータに連結される第1サンギヤと、前記第1サンギヤに噛み合う第1ギヤ部とこれの同軸上に設けられる第2ギヤ部とを備えるピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの第2ギヤ部に噛み合う第2サンギヤとによって構成されることを特徴とする。
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記第1回転要素は前記ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアであり、前記第3回転要素は前記ピニオンギヤの第1ギヤ部に噛み合うリングギヤであることを特徴とする。
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記制御手段は、前記モータジェネレータの目標回転数を制御下限回転数より高くかつ制御下限回転数近傍に設定することを特徴とする。
本発明のハイブリッド車両の駆動装置の制御方法は、エンジンに連結される第1回転要素と、モータジェネレータに連結される第2回転要素と、駆動輪に連結される第3回転要素とを備える動力分割機構を有し、前記動力分割機構を介してエンジン動力を前記モータジェネレータと前記駆動輪とに伝達するハイブリッド車両の駆動装置の制御方法であって、前記モータジェネレータに接続される蓄電デバイスの充電状態が所定値を下回る場合には、前記モータジェネレータを正回転側に制御する一方、前記充電状態が所定値を上回る場合には、前記モータジェネレータを負回転側に制御することを特徴とする。
本発明によれば、動力分割機構を介してエンジン動力をモータジェネレータと駆動輪とに伝達するハイブリッド車両の駆動装置において、蓄電デバイスの充電状態が所定値を下回る場合には、モータジェネレータを正回転側に制御する一方、充電状態が所定値を上回る場合には、モータジェネレータを負回転側に制御している。これにより、モータジェネレータを力行状態と回生状態とに制御することができるため、蓄電デバイスの過充電や過放電を抑制することが可能となる。したがって、動力分割機構を作動させながらハイブリッド車両を継続して走行させることが可能となる。
本発明の一実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置つまりパワーユニットを示す概略図である。 パワーユニットの制御系を示すブロック図である。 各走行モードにおけるクラッチ、モータジェネレータ、エンジンの作動状態を示す説明図である。 各走行モードの切換順序を示す説明図である。 (a)および(b)はシリーズモードにおけるパワーユニットの作動状態を示す概略図および共線図である。 (a)および(b)はEVモードにおけるパワーユニットの作動状態を示す概略図および共線図である。 (a)および(b)はPS1モードにおけるパワーユニットの作動状態を示す概略図および共線図である。 (a)および(b)はPS2モードにおけるパワーユニットの作動状態を示す概略図および共線図である。 (a)および(b)はOD1モードにおけるパワーユニットの作動状態を示す概略図および共線図である。 (a)および(b)はOD2モードにおけるパワーユニットの作動状態を示す概略図および共線図である。 (a)および(b)は直結モードにおけるパワーユニットの作動状態を示す概略図および共線図である。 高車速領域で参照されるモードマップの一例を示す説明図である。 PS2モードにおけるモータジェネレータおよびエンジンの制御手順を示すフローチャートである。 PS2モードにおける動力分割機構の作動状態を示す共線図である。 PS2モードにおける車速、SOC、エンジン回転数、モータ回転数の変動状況の一例を示すタイムチャートである。 本発明の他の実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置つまりパワーユニットを示す概略図である。 本発明の他の実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置つまりパワーユニットを示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置つまりパワーユニット10を示す概略図である。図1に示すように、ハイブリッド車両に搭載されるパワーユニット10は、動力源として内燃機関であるエンジン11を備えるとともに、動力源として2つのモータジェネレータM1,M2を備えている。
エンジン11とモータジェネレータM2との間には、遊星歯車列によって構成される動力分割機構12が設けられている。動力分割機構12は、エンジン11のクランク軸13にダンパ機構14を介して連結されるキャリア(第1回転要素)15と、キャリア15に回転自在に支持されるピニオンギヤ(第2回転要素)16とを有している。ピニオンギヤ16には第1ギヤ部16aおよび第2ギヤ部16bが形成されており、第1ギヤ部16aと第2ギヤ部16bとは同軸上に配置されている。第1ギヤ部16aには第1サンギヤ(第2回転要素)17が噛み合っており、第2ギヤ部16bには第2サンギヤ(第2回転要素)18が噛み合っている。第1サンギヤ17にはモータ出力軸19を介してモータジェネレータM2のロータ20aが連結されており、第2サンギヤ18には中空軸21を介してシンクロハブ22が固定されている。また、ピニオンギヤ16の第1ギヤ部16aにはリングギヤ(第3回転要素)23が噛み合っており、リングギヤ23には中空軸24を介してスプライン歯25が固定されている。さらに、パワーユニット10のケース(固定部材)26にはスプライン歯27が固定されている。図1に示すように、シンクロハブ22の一端側にはスプライン歯25が配置されており、シンクロハブ22の他端側にはスプライン歯27が配置されている。すなわち、シンクロハブ22の両端には、シンクロハブ22を挟むようにスプライン歯25,27が配置されている。
なお、前述したように、動力分割機構12の第2回転要素は、モータジェネレータM2に連結される第1サンギヤ17と、第1サンギヤ17に噛み合う第1ギヤ部16aとこれの同軸上に設けられる第2ギヤ部16bとを備えるピニオンギヤ16と、ピニオンギヤ16の第2ギヤ部16bに噛み合う第2サンギヤ18によって構成されている。すなわち、本明細書において、回転要素とは複数の歯車からなる回転機構をも含む意味である。
図1に示すように、シンクロハブ22の外周部には、軸方向に移動自在にシンクロスリーブ30が噛み合っている。シンクロスリーブ30にはフォーク部材31が装着されており、フォーク部材31はアクチュエータ32の伸縮ロッド32aに連結されている。シンクロスリーブ30を矢印a方向に移動させることにより、シンクロスリーブ30をスプライン歯25に噛み合わせることが可能となる。これにより、シンクロスリーブ30を介して第2サンギヤ18とリングギヤ23とを締結することが可能となる。一方、シンクロスリーブ30を矢印b方向に移動させることにより、シンクロスリーブ30をスプライン歯27に噛み合わせることが可能となる。これにより、シンクロスリーブ30を介して第2サンギヤ18とケース26とを締結することが可能となる。また、シンクロスリーブ30を図1に示す中立位置に移動させることにより、シンクロスリーブ30はシンクロハブ22だけに噛み合った状態となる。
これらのシンクロハブ22、スプライン歯25およびシンクロスリーブ30によって、第2サンギヤ18とリングギヤ23とを締結する締結状態と、締結を解除する解放状態とに切り換えられるクラッチ(第1締結機構)CL3が構成されている。また、シンクロハブ22、スプライン歯27およびシンクロスリーブ30によって、第2サンギヤ18とケース26とを締結する締結状態と、締結を解除する解放状態とに切り換えられるクラッチ(第2締結機構)CL4が構成されている。このように、クラッチCL3,CL4は共用される1つのシンクロスリーブ30を有しており、アクチュエータ32によってシンクロスリーブ30をスライドさせることにより、双方のクラッチCL3,CL4の作動状態を切り換えることができる。すなわち、シンクロスリーブ30を矢印a方向の第1締結位置に移動させることにより、クラッチCL3を締結状態に切り換えることができ、クラッチCL4を解放状態に切り換えることができる。また、シンクロスリーブ30を図1に示す中立位置に移動させることにより、クラッチCL3,CL4を共に解放状態に切り換えることができる。さらに、シンクロスリーブ30を矢印b方向の第2締結位置に移動させることにより、クラッチCL4を締結状態に切り換えることができ、クラッチCL3を解放状態に切り換えることができる。
図1に示すように、リングギヤ23とスプライン歯25とを連結する中空軸24には駆動ギヤ33が固定されており、この駆動ギヤ33に噛み合う従動ギヤ34が中空軸24に平行となる前輪出力軸35に回転自在に支持されている。従動ギヤ34にはスプライン歯36が固定されており、このスプライン歯36に隣接するシンクロハブ37が前輪出力軸35に固定されている。また、シンクロハブ37の外周部には、軸方向に移動自在にシンクロスリーブ38が噛み合っている。シンクロスリーブ38にはフォーク部材39が装着されており、フォーク部材39はアクチュエータ40の伸縮ロッド40aに連結されている。アクチュエータ40によってシンクロスリーブ38を矢印a方向に移動させることにより、シンクロスリーブ38をスプライン歯36に噛み合わせることが可能となる。これにより、シンクロスリーブ38を介してリングギヤ23と前輪出力軸35とを連結することが可能となる。一方、シンクロスリーブ38を図1に示す中立位置に移動させることにより、シンクロスリーブ38をシンクロハブ37だけに噛み合わせることができ、前輪出力軸35からリングギヤ23を切り離すことが可能となる。このように、前輪出力軸35と従動ギヤ34との間には、シンクロハブ37、スプライン歯36およびシンクロスリーブ38からなるクラッチCL1が設けられている。なお、前輪出力軸35の一端部にはデファレンシャル機構41が接続されており、前輪出力軸35はデファレンシャル機構41を介して前輪(駆動輪)42fに連結されている。すなわち、第3回転要素であるリングギヤ23には、クラッチCL1、前輪出力軸35、デファレンシャル機構41等を介して駆動輪42fが連結されている。
また、前輪出力軸35の他端部には従動ギヤ43が固定されており、この従動ギヤ43に噛み合う駆動ギヤ44が前輪出力軸35に平行となる中空軸45に固定されている。中空軸45にはシンクロハブ46が固定されており、このシンクロハブ46に隣接するスプライン歯47が、走行用モータであるモータジェネレータM1のモータ出力軸48に固定されている。また、シンクロハブ46の外周部には、軸方向に移動自在にシンクロスリーブ49が噛み合っている。シンクロスリーブ49にはフォーク部材50が装着されており、フォーク部材50はアクチュエータ51の伸縮ロッド51aに連結されている。アクチュエータ51によってシンクロスリーブ49を矢印a方向に移動させることにより、シンクロスリーブ49をスプライン歯47に噛み合わせることが可能となる。これにより、シンクロスリーブ49を介してモータジェネレータM1のロータ52aを前輪出力軸35に連結することが可能となる。一方、シンクロスリーブ49を図1に示す中立位置に移動させることにより、シンクロスリーブ49をシンクロハブ46だけに噛み合わせることができ、前輪出力軸35からモータジェネレータM1を切り離すことが可能となる。このように、モータジェネレータM1と駆動ギヤ44との間には、シンクロハブ46、スプライン歯47およびシンクロスリーブ49からなるクラッチ(クラッチ機構)CL2が設けられている。なお、前輪出力軸35の一端部には駆動ギヤ60が固定されており、この駆動ギヤ60に噛み合う従動ギヤ61が前輪出力軸35に平行となる後輪出力軸62に固定されている。モータジェネレータM1の中心を貫通して後方に延びる後輪出力軸62には、トランスファクラッチ63等を介して後輪(駆動輪)42rに連結されている。このように、駆動輪42f,42rにはクラッチCL2を介してモータジェネレータM1が接続されている。
続いて、図2はパワーユニット10の制御系を示すブロック図である。図2に示すパワーユニット10の制御系によって、本発明の一実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置の制御方法が実行されている。図2に示すように、モータジェネレータM1のステータ52bにはインバータ64が接続されており、モータジェネレータM2のステータ20bにはインバータ65が接続されている。また、双方のインバータ64,65には、通電ライン66,67を介して蓄電デバイスであるバッテリ68が接続されている。ハイブリッド車両には、電動機および発電機として機能するモータジェネレータM1,M2のトルクや回転数(回転速度)を制御するモータ制御ユニット(制御手段)70が設けられている。モータ制御ユニット70は、後述する車両制御ユニット73からのモータ動力要求値に基づいて制御信号を設定し、このモータ動力要求値が得られるようにインバータ64,65に制御信号を出力する。また、ハイブリッド車両には、バッテリ68の充電状態SOC、電流、電圧、温度等を監視するバッテリ制御ユニット71が設けられている。さらに、ハイブリッド車両には、エンジン11のトルクや回転数(回転速度)を制御するエンジン制御ユニット(制御手段)72が設けられている。エンジン制御ユニット72は、車両制御ユニット73からのエンジン動力要求値に基づいて制御信号を設定し、このエンジン動力要求値が得られるように図示しないスロットルバルブやインジェクタ等に制御信号を出力する。
そして、各制御ユニット70〜72を統括的に制御するとともに、アクチュエータ32,40,51やトランスファクラッチ63等を制御するため、ハイブリッド車両には車両制御ユニット(制御手段)73が設けられている。車両制御ユニット73には、セレクトレバーの操作状況を検出するインヒビタスイッチ74、アクセルペダルの操作状況を検出するアクセルペダルセンサ75、ブレーキペダルの操作状況を検出するブレーキペダルセンサ76、車速を検出する車速センサ77等が接続されている。車両制御ユニット73は、各種センサ74〜77からの情報に基づいて車両状態(運転手の要求駆動力や車速等)を判定し、所定のモードマップを参照して車両状態に応じた走行モードを設定する。そして、車両制御ユニット73は、車両状態および走行モードに応じたエンジン動力やモータ動力を設定し、各制御ユニット70〜72やアクチュエータ32,40,51等に対して制御信号を出力する。なお、各制御ユニット70〜73は、通信ネットワーク78を介して相互に接続されている。また、各制御ユニット70〜73は、制御信号等を演算するCPU、制御プログラム、演算式およびマップデータ等を格納するROM、一時的にデータを格納するRAM等によって構成されている。
続いて、車両状態に応じて設定される各走行モードについて説明する。図3は各走行モードにおけるクラッチCL1〜CL4、モータジェネレータM1,M2、エンジン11の作動状態を示す説明図である。図4は各走行モードの切換順序を示す説明図である。図5(a)および(b)はシリーズモードにおけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。図6(a)および(b)はEVモードにおけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。図7(a)および(b)はPS1モードにおけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。図8(a)および(b)はPS2モードにおけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。図9(a)および(b)はOD1モードにおけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。図10(a)および(b)はOD2モードにおけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。図11(a)および(b)は直結モードにおけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。なお、図5(a)〜図11(a)の概略図においては、ダンパ機構14、後輪出力軸62、トランスファクラッチ63を省いて図示している。また、図5(b)〜図11(b)の共線図において、符号Sαは第1サンギヤ17を示し、符号Sβは第2サンギヤ18を示し、符号Cはキャリア15を示し、符号Rはリングギヤ23を示している。
図3および図4に示すように、図示するハイブリッド車両には、走行モードとして、シリーズモード、EVモード、PS1モード、PS2モード、OD1モード、OD2モードおよび直結モードの7つの走行モードが設定されている。図3および図5に示すように、シリーズモードにおいては、クラッチCL2,CL3が締結される一方、クラッチCL1,CL4が解放される。これにより、前輪出力軸35にモータジェネレータM1が接続される一方、前輪出力軸35から動力分割機構12のリングギヤ23が切り離される。また、第2サンギヤ18とリングギヤ23とが締結されることから、動力分割機構12を介してエンジン11とモータジェネレータM2とは直結された状態となる。このシリーズモードは、例えば要求駆動力の大きな低車速領域での走行モードとなっている。シリーズモードを設定することにより、エンジン動力によってモータジェネレータM2を発電させながら、モータジェネレータM1のモータ動力を用いた走行が可能となる。これにより、モータジェネレータM1に多くの電力を供給することができ、大きなモータトルクを得ることが可能となる。なお、シリーズモードにおいては、前輪出力軸35からリングギヤ23が切り離されることから、停車時においてもモータジェネレータM2による発電が可能となっている。また、シリーズモードでの走行中に要求駆動力が低下した場合には、モータジェネレータM2の発電を停止させるEVモードに切り換えられる。図3および図6に示すように、シリーズモードからEVモードに切り換える際には、クラッチCL3が解放されるとともにエンジン11およびモータジェネレータM2が停止される。このEVモードを設定することにより、要求駆動力が低下した場合にエンジン11を停止させることができ、ハイブリッド車両の燃費性能を向上させることが可能となる。
図3および図7に示すように、パワースプリットモードとも言われるPS1モードにおいては、クラッチCL1,CL2が締結される一方、クラッチCL3,CL4が解放される。これにより、前輪出力軸35にモータジェネレータM1が接続されるとともに、前輪出力軸35に動力分割機構12のリングギヤ23が接続される。また、第2サンギヤ18およびリングギヤ23の拘束が解かれることから、動力分割機構12を介してエンジン動力をリングギヤ23とモータジェネレータM2とに分配することでき、モータジェネレータM2の回転数を制御することでリングギヤ23の無段変速が可能となる。このPS1モードは、例えば要求駆動力の大きな低中車速領域での走行モードとなっている。PS1モードを設定することにより、エンジン動力を無段変速させながら前輪出力軸35に伝達するとともに、モータジェネレータM1のモータ動力を前輪出力軸35に伝達しながら、ハイブリッド車両を走行させることが可能となる。続いて、PS1モードでの走行中に高車速領域に達した場合には、前輪出力軸35からモータジェネレータM1を切り離して走行するPS2モードに切り換えられる。図3および図8に示すように、PS1モードからPS2モードに切り換える際には、PS1モードの状態からクラッチCL2が解放されるとともにモータジェネレータM1が停止される。このPS2モードを設定することにより、高車速領域においてモータジェネレータM1を駆動輪42f,42rから切り離すことが可能となる。これにより、モータジェネレータM1の引きずり損失を解消することができ、ハイブリッド車両の燃費性能を向上させることが可能となる。
図3および図9に示すように、オーバードライブモードとも言われるOD1モードにおいては、クラッチCL1,CL2,CL4が締結される一方、クラッチCL3が解放される。これにより、前輪出力軸35にモータジェネレータM1が接続されるとともに、前輪出力軸35に動力分割機構12のリングギヤ23が接続される。また、第2サンギヤ18がケース26に固定されることから、エンジン動力を固定変速比で増速してリングギヤ23に伝達することが可能となる。このOD1モードは、例えば要求駆動力の小さな中車速領域での走行モードとなっている。OD1モードを設定することにより、エンジン動力を増速させながら前輪出力軸35に伝達するとともに、モータジェネレータM1のモータ動力を前輪出力軸35に伝達しながら、ハイブリッド車両を走行させることが可能となる。続いて、OD1モードでの走行中に高車速領域に達した場合には、前輪出力軸35からモータジェネレータM1を切り離して走行するOD2モードに切り換えられる。図3および図10に示すように、OD1モードからOD2モードに切り換える際には、OD1モードの状態からクラッチCL2が解放されるとともにモータジェネレータM1が停止される。このOD2モードを設定することにより、高車速領域においてモータジェネレータM1を駆動輪42f,42rから切り離すことが可能となる。これにより、モータジェネレータM1の引きずり損失を解消することができ、ハイブリッド車両の燃費性能を向上させることが可能となる。
図3および図11に示すように、直結モードにおいては、クラッチCL1,CL3が締結される一方、クラッチCL2,CL4が解放される。これにより、前輪出力軸35に動力分割機構12のリングギヤ23が接続される。また、第2サンギヤ18とリングギヤ23とが締結されることから、動力分割機構12を介してエンジン11とモータジェネレータM2とは直結された状態となる。この直結モードは、例えば要求駆動力の大きな高車速領域での走行モードとなっている。直結モードを設定することにより、前述したOD1モードやOD2モードよりも変速比を増大つまりダウンシフトさせることが可能となる。すなわち、直結モードにおいては、エンジン動力を等速で前輪出力軸35に伝達することができるため、大きな駆動力でハイブリッド車両を走行させることが可能となる。なお、高車速領域において実行される直結モードにおいては、前述したPS2モードやOD2モードと同様に、駆動輪42f,42rからモータジェネレータM1が切り離されるようになっている。
続いて、高車速領域で設定される走行モードについて説明する。図12は高車速領域で参照されるモードマップの一例を示す説明図である。図12に示すように、高車速領域(V1〜V2)において要求駆動力が小さい場合には、クラッチCL3を解放してクラッチCL4を締結することにより、変速比の小さなOD2モードが設定される。一方、高車速領域において要求駆動力が大きい場合には、クラッチCL4を解放してクラッチCL3を締結することにより、OD2モードよりも変速比の大きな直結モードが設定される。すなわち、要求駆動力の増加に伴ってダウンシフトを行うように、走行モードがOD2モードから直結モードに切り換えられる。なお、OD2モードと直結モードとでは変速比が離れることから、図12に示すように、OD2モードと直結モードとの間には無段変速可能なPS2モードが設定されている。このように、OD2モードと直結モードとの間に中間変速段として機能するPS2モードを設けることにより、エンジン11の急激な負荷変動を抑制するとともに、変速フィーリングを向上させることが可能となる。
ところで、PS2モードにおいては、クラッチCL3,CL4の解放によって動力分割機構12の拘束状態が解かれることから、以下の式(1)に示すように、エンジントルクがキャリア15から第1サンギヤ17とリングギヤ23とに分配される。なお、式(1)のTcとは、キャリア15に作用するトルクであり、エンジントルクに相当するトルクである。式(1)のTsとは、第1サンギヤ17に作用するトルクであり、モータジェネレータM2に作用するトルクである。式(1)のTrとは、リングギヤ23に作用するトルクであり、前輪出力軸35に出力されるトルクである。また、キャリア15に作用するトルクTcつまりエンジントルクは「+」であることから、以下の式(2)に示すように、第1サンギヤ17に作用するトルクも「+」となっている。なお、式(2)のαとは、第1サンギヤ17とリングギヤ23とのギヤ比である(α=サンギヤ歯数/リングギヤ歯数)。
Tc=Tr+Ts …(1)
Ts=α/(1+α)・Tc …(2)
また、式(1)を変形することにより、リングギヤ23から出力されるトルクTrは、以下の式(3)によって表される。そして、式(3)に各回転数を乗じて変形することにより、リングギヤ23から出力される動力は、以下の式(4)によって表される。なお、式(3)のNrとはリングギヤ23の回転数であり、式(3)のNcとはキャリア15の回転数であり、式(3)のNsとは第1サンギヤ17の回転数である。すなわち、第1サンギヤ17の回転数Nsが「+」である場合、つまりモータジェネレータM2が正回転側に回転する場合には、以下の式(5)に示すように、回生状態(発電状態)となるモータジェネレータM2によってエンジン動力Pcが消費される。一方、第1サンギヤ17の回転数Nsが「−」である場合、つまりモータジェネレータM2が負回転側に回転する場合には、以下の式(6)に示すように、力行状態(アシスト状態)となるモータジェネレータM2によってエンジン動力Pcがアシストされる。このように、PS2モードにおいては、モータジェネレータM2の回転方向によって、モータジェネレータM2が回生状態と力行状態とに制御されることになる。なお、式(3)のPrとはリングギヤ23の動力であり、式(3)のPcとはキャリア15の動力であり、式(3)のPsとは第1サンギヤ17の動力である。また、モータジェネレータM2が正回転側とは、エンジン作動時におけるクランク軸13の回転方向である。
Tr=Tc−Ts …(3)
Tr・Nr=Tc・Nc−Ts・Ns …(4)
Pr=Pc−Ps …(5)
Pr=Pc+Ps …(6)
このように、PS2モードにおいては、モータジェネレータM2の回生状態と力行状態とが、モータジェネレータM2の回転方向に応じて決定されることから、PS2モードを維持したまま長距離を走行することが困難であった。すなわち、一般的にPS2モードを維持して走行することは、モータジェネレータM2を正回転側の回生状態や負回転側の力行状態に保持することになるため、バッテリ68の過充電や過放電を招いてしまう要因となっていた。そこで、本発明のパワーユニット10は、PS2モードを実行する際に、モータジェネレータM2の回転方向を積極的に制御することにより、PS2モードを維持したままの長距離走行を可能としている。ここで、図13はPS2モードにおけるモータジェネレータM2およびエンジン11の制御手順を示すフローチャートである。また、図14はPS2モードにおける動力分割機構12の作動状態を示す共線図である。さらに、図15はPS2モードにおける車速、SOC、エンジン回転数、モータ回転数の変動状況の一例を示すタイムチャートである。
図13に示すように、ステップS1では、バッテリ68の充電状態SOCが読み込まれる。なお、充電状態SOCとは、バッテリ68の満充電時の蓄電量に対する現在の蓄電量を示す値である。続くステップS2では、充電状態SOCが所定の上限値(所定値)SH以上であるか否かが判定される。ステップS2において、充電状態SOCが上限値SH以上であると判定された場合、すなわちバッテリ68が十分に充電されていると判定された場合には、ステップS3に進み、モータジェネレータM2を負側の目標回転数(−Nm、例えば−200rpm)に向けて制御するモータ負回転制御が実行される。次いで、ステップS4に進み、車両制御ユニット73からエンジン制御ユニット72に出力されるエンジン動力要求値が引き下げられる。このように、バッテリ68が十分に充電されている場合には、図14に一点鎖線で示すように、モータジェネレータM2が負側の目標回転数(−Nm)に制御されてアシスト駆動されるとともに、車速を保持するようにエンジン回転数がNe2に引き下げられる。なお、アシスト駆動によるモータ動力の増加分を打ち消すようにエンジン動力が引き下げられるため、運転手に対して不要な違和感を与えることはない。
一方、ステップS2において、充電状態SOCが上限値SHを下回ると判定された場合には、ステップS5に進み、充電状態SOCが所定の下限値(所定値)SL以下であるか否かが判定される。ステップS5において、充電状態SOCが下限値SL以下であると判定された場合、すなわちバッテリ68が十分に充電されていないと判定された場合には、ステップS6に進み、モータジェネレータM2を正側の目標回転数(+Nm、例えば+200rpm)に向けて制御するモータ正回転制御が実行される。次いで、ステップS7に進み、車両制御ユニット73からエンジン制御ユニット72に出力されるエンジン動力要求値が引き上げられる。このように、バッテリ68が十分に充電されていない場合には、図14に二点鎖線で示すように、モータジェネレータM2が正側の目標回転数(+Nm)に制御されて回生駆動されるとともに、車速を保持するようにエンジン回転数がNe1に引き上げられる。なお、回生駆動によるモータ動力の減少分を打ち消すようにエンジン動力が引き上げられるため、運転手に対して不要な違和感を与えることはない。
なお、ステップS5において、充電状態SOCが下限値SLを上回ると判定された場合、すなわち充電状態SOCが上限値SHと下限値SLとの間に位置する場合には、充電状態SOCが上限値SHや下限値SLに達するまで現在の制御状態が維持される。すなわち、充電状態SOCが上下限値の範囲内(SH〜SL)である場合には、ステップS8において、モータジェネレータM2がモータ負回転制御またはモータ正回転制御に維持され、続くステップS9において、エンジン制御ユニット72に対するエンジン動力要求値が維持されることになる。
これまで説明したように、PS2モードにおいて、充電状態SOCが上限値SH以上である場合には、充電状態SOCが下限値SLに達するまでモータ負回転制御が実行される一方、充電状態SOCが下限値SL以下である場合には、充電状態SOCが上限値SHに達するまでモータ正回転制御が実行される。すなわち、図15に示すように、充電状態SOCが高い場合には、モータジェネレータM2を負側の目標回転数(−Nm)で制御することにより、モータジェネレータM2を力行状態に制御することができ、バッテリ68の充電状態SOCを徐々に低下させることが可能となる。一方、充電状態SOCが低い場合には、モータジェネレータM2を正側の目標回転数(+Nm)で制御することにより、モータジェネレータM2を回生状態に制御することができ、バッテリ68の充電状態SOCを徐々に上昇させることが可能となる。このように、モータジェネレータM2の回生と力行とを繰り返すことにより、バッテリ68の充電と放電とを繰り返すことができ、バッテリ68の過充電や過放電を回避しつつ、PS2モードによる走行を継続させることが可能となる。
特に、PS2モードにおいては、モータジェネレータM1が駆動輪42f,42rから切り離されることから、モータジェネレータM2での発電電力を別のモータジェネレータM1で消費したり、モータジェネレータM2での消費電力を別のモータジェネレータM1で発電したりすることが困難となる。このように、モータジェネレータM1を用いた電気エネルギーの循環が困難となるPS2モードにおいても、モータジェネレータM2の回転数を正回転側と負回転側とで制御することにより、バッテリ68の過充電や過放電を回避することが可能となるのである。なお、図15に示す場合には、モータ正回転制御やモータ負回転制御を実行する際に車速を一定に保持しているが、これに限られることはなく、運転手のアクセルペダル操作等に応じて車速が変動することは言うまでもない。
また、モータ正回転制御時の目標回転数(+Nm)やモータ負回転制御時の目標回転数(−Nm)は、バッテリ68の充放電量を抑制して劣化を防止する観点から、モータジェネレータM2を制御可能な範囲内で低い回転数であることが望ましい。すなわち、図14に示すように、モータ正回転制御時には、モータジェネレータM2の目標回転数(+Nm)を、所定の制御下限回転数(+NL)より高く(正側に大きく)、かつ制御下限回転数(+NL)の近傍に設定している。また、モータ負回転制御時には、モータジェネレータM2の目標回転数(−Nm)を、所定の制御下限回転数(−NL)より高く(負側に大きく)、かつ制御下限回転数(−NL)の近傍に設定している。ここで、制御下限回転数(+NL,−NL)とは、モータジェネレータM2の回転数制御を実施する際に、制御精度の観点からモータジェネレータM2に要求される最低限の回転数である。このように、モータジェネレータM2の目標回転数(+Nm,−Nm)を、所定の制御下限回転数(+NL,−NL)よりも高く設定することにより、モータジェネレータM2の回転数制御を精度良く実施することが可能となる。また、モータジェネレータM2の目標回転数(+Nm,−Nm)を、制御下限回転数(+NL,−NL)の近傍に設定することにより、モータジェネレータM2の制御精度を満たしつつ回転数を抑制することができる。これにより、モータジェネレータM2の発電電力や消費電力を抑制することができるため、バッテリ68の充放電量を抑制して劣化を防止することが可能となる。なお、モータジェネレータM2の目標回転数(+Nm,−Nm)を制御下限回転数(+NL,−NL)に設定しても良い。
また、前述の説明では、クラッチCL3によって、第2サンギヤ18とリングギヤ23とを締結しているが、これらの回転要素に限られることはなく、動力分割機構12を構成する3つ以上の回転要素を締結しても良く、動力分割機構12を構成する他の回転要素同士を締結しても良い。ここで、図16は本発明の他の実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置つまりパワーユニット80を示す概略図である。なお、図16において、図1に示す部材と同様の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。図16に示すように、エンジン11に連結されるキャリア15には、中空軸81を介してスプライン歯82が固定されている。このスプライン歯82はシンクロハブ22の一端側に配置されており、シンクロスリーブ30を矢印a方向に移動させることにより、シンクロスリーブ30をスプライン歯82に噛み合わせることが可能となる。このように、シンクロハブ22、スプライン歯82およびシンクロスリーブ30によって、第2サンギヤ18とキャリア15とを締結するクラッチ(第1締結機構)CL3を構成しても良い。また、前述の説明では、第2締結機構としてのクラッチCL4によって、第2サンギヤ18をケース26に固定しているが、これに限られることはなく、動力分割機構12を構成する他の回転要素をケース26に固定しても良い。
また、図17は本発明の他の実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置つまりパワーユニット90を示す概略図である。なお、図17において、図1に示す部材と同様の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。図17に示すように、エンジン11にダンパ機構14を介して連結される入力軸91には、キャリア15が連結されるとともにシンクロハブ92が連結されている。このシンクロハブ92の外周部には、軸方向に移動自在にシンクロスリーブ93が噛み合っている。シンクロスリーブ93をスプライン歯25に噛み合わせることにより、シンクロスリーブ93を介してキャリア15とリングギヤ23と連結することが可能となる。このように、シンクロハブ92、スプライン歯25およびシンクロスリーブ93によって、キャリア15とリングギヤ23とを締結するクラッチ(第1締結機構)CL3が構成されている。また、入力軸91の外側には中空軸94が回転自在に設けられており、この中空軸94の一端側には第1サンギヤ17が固定される一方、中空軸94の他端側には伝達ギヤ列95を介してモータジェネレータM2が連結されている。
また、モータジェネレータM1のモータ出力軸48には駆動ギヤ96が固定されており、この駆動ギヤ96に噛み合う従動ギヤ97が前輪出力軸35に回転自在に設けられている。さらに、従動ギヤ97にはスプライン歯98が固定されており、このスプライン歯98に隣接するシンクロハブ99が前輪出力軸35に固定されている。また、シンクロハブ99の外周部には、軸方向に移動自在にシンクロスリーブ100が噛み合っている。シンクロスリーブ100をスプライン歯98に噛み合わせることにより、シンクロスリーブ100を介してモータジェネレータM1を前輪出力軸35に連結することが可能となる。このように、シンクロハブ99、スプライン歯98およびシンクロスリーブ100によって、駆動輪42f,42rにモータジェネレータM1を接続するクラッチ(クラッチ機構)CL2が構成されている。
このような構成のパワーユニット90であっても、クラッチCL1を締結してクラッチCL2〜CL4を解放するPS2モードにおいては、前述したパワーユニット10と同様に、モータジェネレータM2の回転数と正回転側と負回転側とに制御することにより、バッテリ68の過充電や過放電を回避しつつ、PS2モードによる走行を継続させることが可能となる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、複合遊星歯車式の動力分割機構12を備えているが、動力分割機構12を構成する遊星歯車列としては、複合遊星歯車列に限られることはなく単一遊星歯車列であっても良い。例えば、図示する場合には、動力分割機構12に2つのサンギヤ17,18を組み込んでいるが、これに限られることはなく、1つのサンギヤを用いて動力分割機構12を構成しても良い。また、前述の説明では、リングギヤ23に駆動輪42f,42rを連結し、第1サンギヤ17にモータジェネレータM2を連結しているが、これに限られることはなく、リングギヤ23にモータジェネレータM2を連結し、第1サンギヤ17に駆動輪42f,42rを連結しても良い。また、図示する場合には、モータジェネレータM2以外に、主として走行用のモータジェネレータM1を備えているが、これに限られることはなく、モータジェネレータM1を省いてパワーユニット10,80を構成しても良い。
また、モータジェネレータM2の回転方向を判定する際に用いられる上限値SHや下限値SLは、予め設定された固定値であっても良く、例えばバッテリの状態に応じて変動する変動値であっても良い。また、図示する場合には、回転同期機能を備えたシンクロメッシュによってクラッチCL1〜CL4を構成しているが、これに限られることはなく、噛合クラッチであるドグクラッチによってクラッチCL1〜CL4を構成しても良い。さらに、クラッチCL1〜CL4としては、シンクロメッシュやドグクラッチ等の噛合クラッチに限られることはなく、摩擦クラッチによってクラッチCL1〜CL4を構成しても良い。また、蓄電デバイスとしてリチウムイオンバッテリ等のバッテリ68を搭載しているが、これに限られることはなく、蓄電デバイスとしてキャパシタを搭載しても良い。なお、図示するパワーユニット10,80,90は、四輪駆動用のパワーユニットであるが、これに限られることはなく、前輪駆動用や後輪駆動用のパワーユニットに対して本発明を適用しても良い。
10 パワーユニット(駆動装置)
11 エンジン
12 動力分割機構
13 クランク軸
15 キャリア(第1回転要素)
16 ピニオンギヤ(第2回転要素)
16a 第1ギヤ部
16b 第2ギヤ部
17 第1サンギヤ(第2回転要素)
18 第2サンギヤ(第2回転要素)
23 リングギヤ(第3回転要素)
26 ケース(固定部材)
42f 前輪(駆動輪)
42r 後輪(駆動輪)
68 バッテリ(蓄電デバイス)
70 モータ制御ユニット(制御手段)
72 エンジン制御ユニット(制御手段)
73 車両制御ユニット(制御手段)
80 パワーユニット(駆動装置)
M1 モータジェネレータ(走行用モータ)
M2 モータジェネレータ
CL2 クラッチ(クラッチ機構)
CL3 クラッチ(第1締結機構)
CL4 クラッチ(第2締結機構)

Claims (9)

  1. エンジンに連結される第1回転要素と、モータジェネレータに連結される第2回転要素と、駆動輪に連結される第3回転要素とを備える動力分割機構を有し、前記動力分割機構を介してエンジン動力を前記モータジェネレータと前記駆動輪とに伝達するハイブリッド車両の駆動装置であって、
    前記モータジェネレータに接続される蓄電デバイスの充電状態が所定値を下回る場合には、前記モータジェネレータを正回転側に制御する一方、前記充電状態が所定値を上回る場合には、前記モータジェネレータを負回転側に制御する制御手段を有することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
  2. 請求項1記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
    前記モータジェネレータの正回転側とは、前記エンジンのクランク軸の回転方向であることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
  3. 請求項1または2記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
    前記制御手段は、前記モータジェネレータを正回転側に制御する場合にエンジン動力を引き上げる一方、前記モータジェネレータを負回転側に制御する場合にエンジン動力を引き下げることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
    前記回転要素のうち少なくとも2つの回転要素を締結する締結状態と、締結を解除する解放状態とに切り換えられる第1締結機構と、
    前記回転要素のうち1つの回転要素と固定部材とを締結する締結状態と、締結を解除する解放状態とに切り換えられる第2締結機構とを有し、
    前記制御手段は、前記第1および第2締結機構が解放されている状態のもとで、前記モータジェネレータを正回転側と負回転側とに制御することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
    前記駆動輪にクラッチ機構を介して接続される走行用モータを有し、前記制御手段は、前記クラッチ機構が解放されている状態のもとで、前記モータジェネレータを正回転側と負回転側とに制御することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
    前記第2回転要素は、前記モータジェネレータに連結される第1サンギヤと、前記第1サンギヤに噛み合う第1ギヤ部とこれの同軸上に設けられる第2ギヤ部とを備えるピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの第2ギヤ部に噛み合う第2サンギヤとによって構成されることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
  7. 請求項6記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
    前記第1回転要素は前記ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアであり、前記第3回転要素は前記ピニオンギヤの第1ギヤ部に噛み合うリングギヤであることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
    前記制御手段は、前記モータジェネレータの目標回転数を制御下限回転数より高くかつ制御下限回転数近傍に設定することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
  9. エンジンに連結される第1回転要素と、モータジェネレータに連結される第2回転要素と、駆動輪に連結される第3回転要素とを備える動力分割機構を有し、前記動力分割機構を介してエンジン動力を前記モータジェネレータと前記駆動輪とに伝達するハイブリッド車両の駆動装置の制御方法であって、
    前記モータジェネレータに接続される蓄電デバイスの充電状態が所定値を下回る場合には、前記モータジェネレータを正回転側に制御する一方、前記充電状態が所定値を上回る場合には、前記モータジェネレータを負回転側に制御することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置の制御方法。
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