JP2013145119A - 放射性物質含有材の保管構造及び保管方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 放射性物質含有材を保管する空間の底面全面に底面遮水層10を敷設する。1日の保管作業で区画される収容空間3を放射線遮蔽壁体20で包囲し、収容空間3内に放射性物質含有材を満たした複数の袋体2を配列し、1日の保管作業後に、配列された袋体2の上面を被覆体30で覆う。合わせて側面を放射線遮蔽壁体20で塞ぎ、1日の保管作業ごとに袋体2が収容された収容空間3と外部空間とを隔離する。さらに袋体2の収容空間の上層において袋体2の保管作業を行っていき、所定段数まで積層完了した後、収容空間3全体と放射線遮蔽壁体20とを最外層の遮光型遮水シート40等で覆う。
【選択図】 図7
Description
大気中に放出された放射性セシウム(134Cs,137Cs)のうち、137Csは半減期が約30年の人工核種であり、長期的な保管体制が求められる。しかし、放射性物質含有材としての放射性セシウムに汚染された廃棄物を焼却した焼却灰は、復旧作業において絶え間なく発生している。これらを受け入れることのできる既存施設として、一般廃棄物最終処分場がある。また、下水等に放射性セシウムが含まれた場合、下水道処理場の副次産物である脱水汚泥等も回収して保管する必要がある。これらの場合にも、下水処理場内に確保された所定の保管場等において、本発明の放射性物質含有材の保管方法、構造が有効に機能する。
図3(a)は、図2の○で囲まれた部位(III(a))を拡大して示した部分拡大図である。同図に示したように、底面遮水層10の主構成の遮水シート11として、本実施例では、合成樹脂である高密度ポリエチレン(HDPE)シートが用いられている。シート厚としては耐久性を考慮して1.0〜3.0mm程度を使用することが好ましい。遮水シート11の材質としてはHDPE以外の合成樹脂として、中密度ポリエチレン(MDPE)や、低密度ポリエチレン(LDPE)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等を使用することができ、また、合成樹脂系以外にも加硫ゴム系のエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が使用できる。遮水シート11は所定幅のシートを長手方向に敷設しながら溶着していき、全面が遮水性を保持した耐久性のある平面状シートを形成する。
底面遮水層10の上面には、図1,図2,図6に示したように、たとえば1日を単位期間の工程で処分場内に搬入される袋体2の数量(容積)を1段に並べて保管可能な平面積を有する収容空間3を確保するように放射線遮断壁体20が構築されている。本実施例では、その収容空間3を区画する放射線遮断壁体20は、組み立て式の鋼製ネット22で作られた箱状壁体21内に、土砂25を密に詰めて充満させて所定寸法の直方体形状の壁体ユニットを現場製作し、複数の壁体ユニットを長手方向につなげたものからなる。この組み立て式箱状壁体21は、所定目合いの格子状鋼製ネット22と、その内面に沿って箱状をなす不織布24を取り付けた既製品(たとえば商品名「マックスシースリー」(太陽工業製))が好適である。箱状壁体21は、当初は、図4(a)に示したように、2枚の側面壁を構成するネット22aを繋ぎネット22bで複数箇所を連結した構造からなり、ネット22の内面には組み立て後に箱状をなす不織布24が折り畳んで取り付けられている。この不織布24は充満した土砂25がネット22の目合いからこぼれるのを防止する。本実施例では、1個の壁体ユニットは、土砂25が充満された状態で、図4(b)に示したように、各一辺Lが約1mの立方体区画が横方向に4個連なった横長の直方体形状からなる。壁体ユニット間は鋼製ネットの端部に設けられた連結部26を介して容易に直列方向、並列方向に連結できる。本実施例では、最小単位として、図6に示したように、1日に搬入される所定数の袋体を縦横方向に並べられるだけの平面積を確保するように設置され、さらに最終的には、図1,図2に示したように、箱状壁体21を断面方向から見て高さ4段に積層された袋体の外面を覆うような配置形状をなして収容空間3全体の側面、収容空間内の区画部分において長手方向に延長するように配列、積層され、放射線遮断壁体20が構築されている。なお、放射性物質含有材に対して壁体ユニットの立方体区画の土砂厚さ1m分で十分な放射線遮断効果が得られる。
たとえば放射性物質含有材としての各種廃棄物の焼却灰は、耐水性材料で梱包することが義務づけられている。この条件以外に、運搬が容易であること、積層時の安定性等を確実かつ容易に実現することが求められる。そこで、本発明では既製品のフレコンバッグ2を使用した。図5(a)は実施例で使用したフレコンバッグ2の概略斜視図である。このフレコンバッグ2の本体シートは、耐久性が高く、耐水性のあるポリエチレン製シートからなる。また、内側に保護マットを設けても良い。内側の保護マットは除去土壌に接し、除去土壌に含まれる礫や鋭角部を有する異物等で本体シートが破損するのを防止する役割を果たす。本体シートは、使用後の処理を考慮して耐久性・耐水性の高い材料として、繊維織物からなる基材に合成樹脂であるポリエチレン(PE)樹脂を被覆したものからなるが、被覆材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)等他の合成樹脂や、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴムからなるものであっても良いし、保管する放射性物質含有材の種類によっては、前記合成樹脂や合成ゴムのみからなるシートであっても良い。
被覆体30は、たとえば図6に示すように、1日に搬入された袋体2が収容空間3で配列された範囲を覆うとともに、最上段まで積層された袋体2の最上面を被覆するとともに、放射線遮蔽壁体20とで収容空間3と外部空間4とを隔離する役割を果たす。図3(b)は、1日の保管作業で収容空間3内に配列された部位(図2の○で囲まれた部位:III(b))を拡大して示した部分拡大図である。同図に示したように、配列された袋体2の上面を平坦な状態とするために鋼板31を敷設する。鋼板31は、厚さ5mm〜20mm程度のものを使用することが好ましく、本実施例では板厚12mmの鋼板31を、放射線遮蔽壁体20で区画され、1日の保管作業で配列された袋体2の上面に敷き詰めるようにした。さらに鋼板31の上面に覆土分離シート32としてPET製の織布を敷設し、その上部に積層する覆土層33の安定性を図っている。覆土厚は約15cmとした。覆土厚15cmで放射線遮蔽効果は86%程度が見込まれる。
被覆体30としては覆土の他、鋼板31、保護マット42、カバーシート40、放射線遮蔽シート45を適用することも好ましい(図2,図8参照)。また、これらから選択したものを積層させ被覆体30とすることもできる。被覆体30として、カバーシート40を使用する場合は、上述した遮光、遮水を目的としたHDPEやPVC等の合成樹脂や、繊維織物からなる基材に前記合成樹脂を被覆してからなるシートでもよい。また、放射線遮蔽シート45あるいは放射線吸着シートとして、ゼオライト粉末等の放射線吸着物質を樹脂やゴムに含有させた層を設けた放射性セシウムを吸着可能なシートや、鉛やタングステン、硫酸バリウムの粉末等の放射線遮蔽物質を樹脂やゴムに含有させた層を設けた放射性セシウムを遮蔽可能なシートを採用することも好ましい。
図1、図2に示した実施例では、被覆体30としての覆土層33,34への雨水等の影響を遮断するために被覆体30の一部としてカバーシート40となる遮水シート41を敷設している。遮水シート41はその接合部の遮水性も必要なことから、溶着による接合が可能で耐久性の高い遮光層一体型HDPEシート(厚さ1.5mm)を使用した。このカバーシート40は図2に示したように、覆土層(上面覆土33、法面覆土34)、保護マット42を覆い、さらに端部はコンクリートブロック43等により地面上に定着されている。保護マット42としては、保護マット12と同様のものを用いることができる。
図8は上述したカバーシート40に代えて、膜面構造屋根として、骨組構造のフレーム51に膜材52を張設した膜面構造屋根(テント屋根)50を採用した実施例を示している。雨水等はテント屋根50で完全に遮断されるため、袋体2が積層された収容空間3の上面と、側面に積層された放射線遮蔽壁体20としての箱状壁体21の全体面が、フェイルセーフを目的とした放射線遮蔽シート45で覆われている。それ以外の構成は、図1,図2に示した保管構造1と同様である。
本発明の放射性物質含有材の保管構造では、たとえば最終処分場等にたとえば1日を単位期間として、その間に搬入される放射性物質含有材が充満された袋体の数量に応じて収容空間を区画し、その上面を被覆することとした。その袋体の保管作業について、図6,図7,図9を参照して説明する。
図10(a)は、放射線遮蔽壁体20として、フェイルセーフのための壁体としてプレキャストコンクリート製L型擁壁28を設け、そのコンクリート製L型擁壁28で囲まれた空間で行われた保管作業によりできあがった保管構造を示している。この実施例においても、箱状壁体21を用いて外形位置に放射線遮蔽壁体を構築し、その内部で、たとえば1日を単位期間として、上述の場合と同様の袋体2の保管作業が行われ、保管された袋体2の周囲に箱状壁体21が配置される。さらに即日覆土として所定範囲に配列され保管された袋体2の上面を被覆体30としての鋼板31,覆土層33で覆う。ところで、袋体2が配列される収容空間3内は、図示したように、擁壁の底版28bの厚さ分が低くなる。この高さ分を調整するため、及び遮水シート11の上面が冠水した場合に袋体2と水の接触をできるだけ避けるための嵩上げ構造体として、L型擁壁28の底版厚に相当する厚さのパレット6を敷設しており、パレット6の材質としては合成樹脂製や木製のものが利用できる。また底版28bの内側にはU字溝7が設置されている。パレット6の下面には上述の保管構造1と同様に遮水シート11が敷設され、遮水シート11の端部は図示したように、U字溝7上に位置する抑え部材8で折り曲げ上げられ、L型擁壁28の壁体28aの内面に取り付けられた固定金具60の先端固定部60aに固定されている。
プレキャストコンクリートL型擁壁のようなコンクリート壁体は、壁厚15cmで放射線遮蔽効果は約90%確保できる。さらに図10(a)のフェイルセーフのための壁体としての放射線遮蔽壁体の遮蔽効果を高めるとともに、壁体の安定性を図るために、袋体2の外周に配置される箱状壁体21と同様の箱状壁体21を併用することも好ましい。図10(b)は、L型擁壁28の底版28b上に3段の箱状壁体21を積層した実施例を示している。この場合、固定金具60は、最下段の箱状壁体21を貫通させて箱状壁体21の内側面に突出させた支持ロッド61に固定することが好ましい。カバーシート40、遮水シート11の端辺は、図10(a)の場合と同様に中間固定部60bに定着すればよい。また、箱状壁体21を安定して積上げるために、支持ロッド61によって、コンクリート壁体と各箱状壁体21を各々連結することが好ましい。
2 袋体
2W 大型土嚢
3 収容空間
4 外部空間
10 底面遮水層
11,41 遮水シート
12,42 保護マット
13 覆土層
20 放射線遮蔽壁体
21 箱状壁体
25 土砂
30 被覆体
31 鋼板
33 覆土層
40 カバーシート
50 テント屋根(膜面構造屋根)
Claims (11)
- 放射性物質含有材を保管する空間の底面全面に敷設された底面遮水層と、単位期間の保管作業に応じて区画された収容空間を包囲するように構築された放射線遮蔽壁体と、前記収容空間内に配列された前記放射性物質含有材を満たした複数の袋体の上面を被覆するとともに、前記放射線遮蔽壁体とで収容空間全体と外部空間とを隔離する被覆体とを備え、該被覆体を中間層とした上層の収容空間で前記袋体の保管作業を行い、所定段数まで積層完了した状態の前記袋体と前記放射線遮蔽壁体とを最外層の被覆体で被覆してなることを特徴とする放射性物質含有材の保管構造。
- 前記底面遮水層は、遮水シートを基層とした請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記底面遮水層は、前記基層上に覆土層を積層した請求項2に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記放射線遮蔽壁体は、土砂を充満した箱状壁体を積層してなる請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記放射線遮蔽壁体は、土砂あるいは内容液を充満させた嚢状体である請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記放射線遮蔽壁体は、プレキャストコンクリート製壁体を設置してなる請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記放射線遮蔽壁体は、嚢状体あるいは箱状壁体と、プレキャストコンクリート製壁体とを組み合わせてなる請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記被覆体は、前記袋体の配列された上面に鋼板を敷設し、該鋼板上に覆土層を積層してなる請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記最外層の被覆体は、前記積層された袋体の最上面と前記放射線遮蔽壁体とを覆う遮水シートである請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記最外層の被覆体は、前記積層された袋体の最上面と前記放射線遮蔽壁体とを、その上部空間で覆う膜構造屋根である請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 放射性物質含有材を保管する空間の底面全面に底面遮水層を敷設し、単位期間の保管作業で区画された収容空間を放射線遮蔽壁体で包囲し、前記収容空間内に前記放射性物質含有材を満たした複数の袋体を配列し、単位期間の保管作業後に、前記配列された袋体の上面を被覆するとともに、側面を前記放射線遮蔽壁体で塞ぎ、単位期間の保管作業ごとに前記袋体が収容された収容空間と外部空間とを隔離し、さらに袋体の前記収容空間の上層において前記袋体の保管作業を行い、所定段数まで積層完了した後、前記収容空間全体と前記放射線遮蔽壁体とを最外層の被覆体で覆うようにしたことを特徴とする放射性物質含有材の保管方法。
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