JP2013144780A - へキサフルオロイソプロパノール基を含むポリスルホンおよびその合成方法 - Google Patents

へキサフルオロイソプロパノール基を含むポリスルホンおよびその合成方法 Download PDF

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Kazuhiro Yamanaka
一広 山中
Makoto Matsuura
誠 松浦
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    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G75/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing sulfur with or without nitrogen, oxygen, or carbon in the main chain of the macromolecule
    • C08G75/20Polysulfones
    • C08G75/23Polyethersulfones

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Abstract

【課題】分離膜材料に有用な、従来のポリスルホンに比較して低吸水性および撥水性に優れた、ポリスルホンを提供する。
【解決手段】式(1)
Figure 2013144780

式中、Aは、単結合、2,2−ビス(フェノキシ)プロパン結合またはビス−オキシジフェニル結合で表され、ヘキサフルオロプロパノール基を導入したポリスルホンである。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヘキサフルオロイソプロパノール基(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル基、−C(CFOH、以下、HFIP基と呼ぶことがある)を含む、新規なポリスルホン(以下、HFIP基含有ポリスルホンと呼ぶことがある)およびその合成方法に関する。
ポリスルホンは、耐熱性、耐薬品性、強度等に優れていることから、エンジニアリングプラスチックとして広く使用され、例えば、以下の式で表される繰り返し単位を含むポリスルホンが知られている。
Figure 2013144780
また、ポリスルホンは、気体分離膜、濾過膜または血液浄化膜等の分離膜の素材として使われることが多い。
例えば、特許文献1には、海水等の淡水化のための逆浸透膜、または限外濾過膜、精密濾過膜に有用なカルボン酸基含有ポリスルホンが開示され、特許文献2にはポリスルホン複合半透膜が開示されている。
気体分離膜においては、処理量を増やすために大きな気体透過量を得ること、および分離したガスに高選択性を得ることの両立が求められ、濾過膜または血液浄化膜においては、ファウリング(目詰まり)の防止、即ち、耐ファウリング性、および表面親水化等が求められており、このような高機能化を目的として、素材であるポリスルホンの芳香環に種々の官能基を導入することが行われている。
例えば、特許文献1には、カルボキシル基(−COOH)を含むポリスルホン、特許文献2には、スルホン酸基(−SOH)を含むポリスルホン、非特許文献1には、四級アンモニウム基を含むポリスルホンが開示され、また、当該四級アンモニウム基の導入方法が開示されている。
特許文献3および特許文献4には、HFIP基含有芳香族ポリアミドが、逆浸透膜に有用であることが開示されている。また、HFIP基を含有させた効果により、従来の逆浸透膜の課題であった耐ファウリング性および次亜塩素酸耐性が改善されると記載されている。
特許文献3および特許文献4に記載のHFIP基含有ポリアミドは、原料であるHFIP基含有アミン化合物(求核性モノマー)と酸クロリド化合物(求電子性モノマー)との界面重合によって得られるものである。しかしながら、界面重合の際に、所望する縮合反応によるアミド結合を形成する以外に、副反応としてHFIP基と酸クロリドとの反応によるエステル結合の形成が起こり、所望のHFIP基含有ポリアミドが得られ難いという問題があった。HFIP基と酸クロリドとの反応によるエステル結合の形成が起こるため、分離膜とした際、HFIP基の導入効果である、耐ファウリング性および次亜塩素酸耐性が発現し難くなる。
特許文献5に、HFIP基を樹脂骨格に導入する一般的な効果として、フッ素が有する低吸水性、撥水性、高透明性または低屈折率性等の特性が発現すること、レジストとするに有用な、水酸基による基板との密着性向上、アルカリ現像液への溶解性が増すことが記載されている。分離膜、特に気体分離膜にHFIP基を導入する効果として、低吸水性および撥水性による耐水性、シリコーンやエポキシ樹脂等の他材料との接着性向上が期待される。
特開昭63−101425号公報 特開昭61−4505号公報 WO/2010/096563 特表2012−516788号公報 特開昭2008−150534号公報
S. Nakao et al.,Desalination,vol. 70,p191,1988
本発明は、分離膜用材料として広く使用されているHFIPを含まない従来のポリスルホンに、低吸水性および撥水性を賦与することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、HFIP基を含まないポリスルホン樹脂とヘキサフルオロアセトン((CFC=O、以下、HFAと呼ぶことがある)を直接反応させて、HFIP基を導入することで、HFIP基を含む新規ポリスルホンを得ることができ、前記課題を解決し、本発明に至った。
即ち、本発明は、以下の発明1〜5よりなる。
[発明1]
式(1):
Figure 2013144780
(式中、Aは、単結合、
Figure 2013144780
または
Figure 2013144780
のいずれかであり、
aおよびbは、それぞれ独立に、0〜2の整数であり、1≦a+b≦4である。)
で表される繰り返し単位を含む、ポリスルホン。
[発明2]
式(2):
Figure 2013144780
(式中、Aは、単結合、
Figure 2013144780
または
Figure 2013144780
のいずれかである。)
で表される繰り返し単位を含む、発明1のポリスルホン。
[発明3]
式(3):
Figure 2013144780
(式中、Aは、単結合、
Figure 2013144780
または
Figure 2013144780
のいずれかである。)
で表される繰り返し単位を含むポリスルホンと、ヘキサフルオロアセトンを反応させる工程を含む、発明1のポリスルホンの合成方法。
[発明4]
発明1または発明2のポリスルホンを含む膜。
[発明5]
膜が非対称膜であることを特徴とする、発明4の膜。
本発明により、HFIP基を含有する新規ポリスルホンおよびその合成方法が得られた。本発明の新規ポリスルホンおよびそのポリスルホン合成方法は、既にスーパーエンジニアリングプラスチックとして広く使用されている従来のポリスルホン(HFIP基を含まない汎用のポリスルホン)と、HFAとを反応させて、ポリスルホンにHFIP基を導入するものである。HFIP基を含まない汎用のポリスルホンにHFAを反応させてHFIP基を導入する、本発明のHFIP基を含むポリスルホンこのような合成方法により得られた、本発明のHFIP基を含むポリスルホンは、HFIP基に導入したことによる低吸水性および撥水性を有し、さらに次亜塩素酸耐性を有する。
以下、本発明のポリスルホンおよびその合成方法について詳細に説明する。尚、以下の記述において、原料化合物であるHFIP基を含まないポリスルホンを「原料ポリスルホン」と呼び、目的生成物である、その繰り返し単位にHFIP基を含有するポリスルホンを「HFIP基含有ポリスルホン」と呼ぶことがある。
1. HFIP基含有ポリスルホン
1−1.式(1)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスチレン
本発明のHFIP基含有ポリスルホンは、式(1):
Figure 2013144780
(式中、Aは、単結合、
Figure 2013144780
または
Figure 2013144780
のいずれかであり、
aおよびbは、それぞれ独立に、0〜2の整数であり、1≦a+b≦4である。)
で表される繰り返し単位を含む。
具体的には、本発明の式(1)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホンとしては、以下の式(4)〜(6)で表される繰り返し単位を少なくとも一つ含む、HFIP基含有ポリスルホンが例示される。
Figure 2013144780
(式(4)〜(6)中、aおよびbは、それぞれ独立に、0〜2の整数であり、1≦a+b≦4である。)
1−2.式(2)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスチレン
本発明の式(1)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスチレンの特に好適な例として、式(2):
Figure 2013144780
(式中、Aは、単結合、
Figure 2013144780
または
Figure 2013144780
のいずれかである。)
で表される繰り返し単位を含む、HFIP基含有ポリスルホンが挙げられる。
具体的には、本発明の式(2)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホンは、以下の式(7)〜(9)で表される繰り返し単位を少なくとも一つ含むHFIP基含有ポリスルホンである。
Figure 2013144780
2.HFIP基含有ポリスルホンの合成方法
本発明の式(1)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホンの合成方法は、式(3):
Figure 2013144780
(式中、Aは、単結合、
Figure 2013144780
または
Figure 2013144780
のいずれかである。)
で表される繰り返し単位を含む、原料ポリスルホンと、ヘキサフルオロアセトンを反応させることを特徴とする。
例えば、式(4)〜(9)で表されるポリスルホンは、式(3)で表される繰り返し単位を含む原料ポリスルホン、即ち、以下の式(10)〜(12)で表される繰り返し単位を少なくとも一つ含む原料ポリスルホンの芳香環の水素原子を、Li化剤を用いてリチウムに置換した後に、HFAと反応させ、前記リチウムをHFIP基と置換させることで得られる。
Figure 2013144780
尚、式(10)〜(12)で表される繰り返し単位を含む原料ポリスルホンは、各々ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社より、商品名ユーデルポリスルホン、品番P−1700およびP−3500が、住友化学株式会社より、商品名、ビクトレックス、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社より、商品名レーデルが市販され、本発明の方法に使用される。
以下、式(1)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホンの合成方法を例にとって説明する。
本発明の合成方法における反応式を以下に示す。
Figure 2013144780
本反応において、式(3)で表される繰り返し単位を含む原料化合物であるポリスルホンを有機溶媒に溶解させた溶液に、Li化試薬であるノルマルブチルリチウム(n−BuLi)を加えることで、当該原料ポリスルホンをリチウム化して、式(13)で表される繰り返し単位を含むポリスルホンを合成するこることが可能である。
使用する有機溶媒は原料であるポリスルホンを溶解できる溶媒を用いればよい。例えば、テトラヒドロフラン(THF)またはn−メチルピロリドン(NMP)等の極性溶媒を挙げることができる。反応の際、原料ポリスルホンと極性溶媒は、質量比で表して、原料ポリスルホン:極性溶媒=10〜40:60〜90の範囲内で用いることが好ましく、反応におけるハンドリングがよい。反応温度はLi化試薬が失活しない低温で行い、好ましくは、−70℃以上、20℃以下である。
式(13)で表される繰り返し単位を含むポリスルホンを選択率よく得るための、リチウム化剤の使用量は、原料であるポリスルホン中のスルホニル基1モルに対して、前記Li化剤中のLiのモル数が0.1以上、3以下であることが好ましく、特に好ましくは0.5以上、2.5以下である。尚、Li化剤としては、n−BuLi以外に、フェニルリチウム、ターシャリブチルリチウム(t−BuLi)を用いることができるが、入手しやすく扱いやすいことから、n−BuLiを用いることが好ましい。
前記反応式に示すように、HFAと、式(13)で表される繰り返し単位を含むポリスルホンの芳香環に結合するLiが置換反応して、HFIP基がポリスルホン中に導入される。Li化剤の量を調整することで、式(13)で表わされる繰り返し単位を含むポリスルホン中の芳香環に結合するLi基の数を調整することができ、次反応において導入されるHFIP基の数を調整することが可能である。即ち、導入の際のLi化剤の使用量を調整することで、式(1)で表される繰り返し単位中のaおよびbの値を調整することができる。
次いで、式(13)で表わされる繰り返し単位を含むポリスルホンに、気体であるHFAを反応液に接触溶解させてHFAを付加させて、式(1)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホンを得る過程の反応を行う。本反応においては、副生物が生成する懸念がないことから、使用するHFAの量は、式(13)で表される繰り返し単位を含むポリスルホン中の芳香環に結合するLiの量に対し過剰に使用することが好ましい。
HFAを接触溶解させた後、式(13)で表される繰り返し単位を含むポリスルホンへのHFAの付加反応を速やかに進行させるための反応温度は、好ましくは―70℃〜室温(20℃)、さらに好ましくは―60℃〜−30℃である。
最後に、反応液に、水、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール等のアルコール、およびこれらの混合液を貧溶媒として加えることで析出した、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリスルホンからなる沈殿を得、減圧乾燥することで、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリスルホンを得ることが可能である。
式(1)で表される繰り返し単位を含むポリスルホンの分子量は、重量平均分子量で表わして、10000以上、400000以下であることが好ましく、特に30000以上、200000以下の範囲が好ましい。重量平均分子量が10000より低いと得られる分離膜の強度が乏しく、重量平均分子量が400000より高いと、分離膜として使用するため式(1)で表される繰り返し単位を含むポリスルホンを成膜する鎖に、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリスルホンの溶液の粘度が高すぎてハンドリング性が悪くなり好ましくない。
3.HFIP基含有ポリスルホンを用いた膜
本発明のHFIP基含有ポリスルホン樹脂は、気体分離膜、濾過膜または血液浄化膜等の分離膜に使用可能であり、当該ポリスルホン樹脂を用いた分離膜も本発明の範疇に属し、当該ポリスルホン樹脂の分離膜としての使用方法も本発明の範疇に属する。当該分離膜は、分離を行う緻密な細孔を有する表面とそれを支えるそれより大きな孔を有する基体からなる非対称膜であることが好ましい。このような非対称膜としては、例えば、Loeb−Sourirajan膜が挙げられ、実施形態はシート状と中空糸状に大別される。
例えば、本発明の式(1)で表される繰り返し単位を含む、HFIP基含有ポリスルホンを、有機溶媒に溶解させ樹脂溶液とし、樹脂溶液を吐出口から、凝固液を満たした凝固浴中に吐出させ、シート状または中空糸状とする。尚、中空糸状とする場合は、吐出口を二重構造として、外側を前記樹脂溶液、内側を空気、または水等の貧溶媒とし共に吐出する。
前記樹脂溶液の吐出口から凝固浴までの距離の調整、環境温度の調整、有機溶媒または凝固液の種類の選択、凝固浴の温度の調整により、孔径、孔径分布、厚みを制御して非対称構造を形成し、非対称膜とする。
前記有機溶媒は、本発明のHFIP基含有ポリスルホンを溶解すればよく、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチル−2−ピロリドン、ラクトンであるγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンを例示することができる。凝固液は貧溶媒である水または親水性の溶媒を用いることが好ましく、水、または水と有機溶剤を混合させた貧溶媒が好適に使用され、具体的には、40質量%以上、好ましくは50質量%以上の水と、残部アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトンまたはジエチルケトンとを混合させた溶媒を例示することができる。
凝固液中で凝固したシート状または中空糸状の膜は、必要に応じて加熱乾燥させる。その際の加熱温度は、膜を溶融もしくは軟化させないために、HFIP基置換ポリスルホンのガラス転移温度以下であることが好ましい。
有機溶媒に対する溶解性、非対称膜構造の制御、非対称膜に分離膜としての性能を得る目的で、本発明のHFIP基含有ポリスルホンに種々の官能基を導入してもよい。例えば、特許文献1に記載の方法でカルボキシル基(−COOH)を、特許文献2に記載の方法でスルホン酸基(−SOH)を、非特許文献1に記載の方法で四級アンモニウム基を導入することができる。
また、非対称膜の親水性を改良する目的で、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたはポリビニルピロリドン等の親水性高分子とブレンドし、膜の材料とすることができる。
また、本発明のHFIP基含有ポリスルホンは、非対称膜の機械的強度または物性を調整する目的、ガス分離膜として用いた際の耐可塑性を高める目的で、エポキシ化合物とブレンドし、膜の材料とすることもできる。
エポキシ化合物としては、エポキシ化合物以外の樹脂とエピクロロヒドリンと接触させることによりエポキシ変性させたエポキシ化合物が挙げられる。他の樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、フェノールトリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂またはアミノトリアジン変性フェノール樹脂化合物を例示することができる。
このようなエポキシ化合物は、大日本インキ工業株式会社より、ビスフェノールA型の商品名エピクロン840、旭電化工業株式会社より、ビスフェノールF型の商品名アデカレジンEP−4901、大日本インキ工業株式会社より、クレゾールノボラック型の商品名、エピクロンN−600シリーズ、ジシクロペンタジエン型のエピクロン商品名HP−7200シリーズ、日産化学工業株式会社よりトリアジン型の商品名TEPICシリーズ(商品名、製)、四国化成工業株式会社製より、シアヌル酸型の商品名DA−MGICが製造市販されており、本発明のHFIP基含有ポリスルホンとブレンドし膜材料として使用される。
また、本発明のHFIP基を含有するポリスルホンからなる膜は、従来のHFIP基を含まないポリスルホンに比較して、吸水率が低く、かつ接触角が高いことから、分離膜素材として親水性を調節することが可能であり、非対称膜への応用も可能である。
本発明のHFIP基を含有するポリスルホンからなる膜は、気体分離膜、濾過膜、血液浄化膜等の分離膜に応用可能であり、分離膜の撥水性、吸水性または次亜塩素酸耐性等を調節することができる。即ち、HFIP基を含まない汎用のポリスルホンにHFAを反応させてHFIP基を導入する、本発明のHFIP基を含むポリスルホン合成方法により得られた、本発明のHFIP基を含むポリスルホンは、HFIP基に導入したことにより低吸水率および撥水性を有し、さらに次亜塩素酸耐性を有する。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜3にて、本発明のヘキサフルオロイソプロパノール基(−C(CFOH)、HFIP基)を含むポリスルホンを合成し、NMRでの同定、分子量、5%質量減少温度の測定、熱膨張係数、接触角および吸水率の測定を行った。使用機器および測定方法を表1に示す。
Figure 2013144780
[HFIP基含有ポリスルホンの合成]
まず、下記に示すとおり、式(11)で表される原料ポリスルホンから、式(8)で表されるHFIP基含有ポリスルホンの合成を行った。
Figure 2013144780
具体的には、窒素雰囲気下の容積1Lの三口フラスコ中に、式(11)で表される原料ポリスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製、商品名、PSU)を17.64g採取し、テトラヒドロフランを600ml加えて、室温で攪拌し溶解した後、−50℃に冷却した。冷却後、リチウム化剤、n−BuLi 56mlを添加し、−50℃にて1時間攪拌した後、ヘキサフルオロアセトン(HFA)14.7gをさらに加え、−50℃にてさらに2時間攪拌した。得られた反応液を、貧溶媒としての、質量比1:1のメタノールと水との混合液に加え、析出した沈殿生成物を濾過後80℃にて減圧乾燥後し、27.39gの白色粉体を得た。収率は92%で、GPC測定から求めた重量平均分子量は63000であった。下記のNMR測定結果から、式(8)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホンであることが分かった。また、TG−DTA測定から求めた5%質量減少温度は360℃であった。
H-NMR(CDCl3, TMS) δ1.67 (6H, s), 6.48 (1H, s), 6.95 (2H, d, J = 8.8Hz), 6.98(2H, d, J = 10.0Hz), 7.25 (2H, s), 7.45 (2H, s), 7.84 (2H, d, J = 9.0Hz)
19F-NMR(CDCl3, CCl3F) δ -74.7 (12F, s)
実施例1
合成した式(8)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホン10gを、n−メチルピロリドン23gに溶解させた。得られた溶液をガラス基板上にスピンコーターにて塗布被覆した後、160℃にて3分間、加熱した。室温(20℃)まで冷却した後、ガラス基板上から剥がし、厚み24μmの無色透明な膜を得た。表1に示した熱機械測定装置で測定したガラス転移温度は120℃および熱膨張係数は98ppm/℃であった。また、吸水率は0.2質量%および接触角は85度であった。
実施例2
合成した式(8)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホン10gを、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと呼ぶことがある)23gに溶解させた。得られた溶液をガラス基板に貼り付けた濾紙上に、バーコーターを用いて厚み30μmになるように成膜した。15分静置後、水に浸漬し、濾紙ごと膜を、ガラス基板より剥がした。得られた膜の濾紙膜に貼り付いていた逆の面は白色で光沢のある非対称膜が得られた。
実施例3
合成した式(8)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホン1gを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液50g(活性塩素5%以上)に混合し、室温で17時間撹拌した。撹拌後、ろ過、水洗し、80℃にて減圧乾燥後し、0.95gの白色粉体を得た。得られた白色粉体のNMR測定、フーリエ変換赤外分光光度(FT−IR)により、フーリエ変換を用いた赤外光の各波長における強度分布スペクトル測定を実施したところ、式(8)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホンのNMR測定、FT−IR測定結果とほぼ一致したことから、式(8)で表される繰り返し単位を含むHFIP基含有ポリスルホンは充分な次亜塩素酸耐性を示すことがわかった。
比較例1
HFIP基を含まない、式(11)で表される原料ポリスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製、商品名、PSU)10gを、NMP23gに溶解させた。次いで、実施例1と同様の手順で無色透明な厚み30μmの膜を得た。熱機械測定装置で測定したガラス転移温度は135℃、および熱膨張係数は73ppm/℃であった。吸水率は0.6質量%、接触角は77度であった。
[接触角および吸水性の評価]
実施例1のHFIP基含有ポリスルホン、および比較例1の本発明の範疇にないポリスルホンの接触角および吸水率の測定を行った結果を、表2に示す。
Figure 2013144780
表2に示すように、実施例1のHFIP基含有ポリスルホン膜は、比較例1の膜に比べて、低い吸水率、高い後退接触角を示す結果となった。このことは、ポリスルホン骨格がHFIP基を含有することで、撥水性が高くなったことによる。

Claims (5)

  1. 式(1):
    Figure 2013144780
    (式中、Aは、単結合、
    Figure 2013144780
    または
    Figure 2013144780
    のいずれかであり、
    aおよびbは、それぞれ独立に、0〜2の整数であり、1≦a+b≦4である。)
    で表される繰り返し単位を含む、ポリスルホン。
  2. 式(2):
    Figure 2013144780
    (式中、Aは、単結合、
    Figure 2013144780
    または
    Figure 2013144780
    のいずれかである。)
    で表される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリスルホン。
  3. 式(3)
    Figure 2013144780
    (式中、Aは、単結合、
    Figure 2013144780
    または
    Figure 2013144780
    のいずれかである。)
    で表される繰り返し単位を含むポリスルホンと、ヘキサフルオロアセトンを反応させる工程を含む、請求項1に記載のポリスルホンの合成方法。
  4. 請求項1または請求項2に記載のポリスルホンを含む膜。
  5. 膜が非対称膜であることを特徴とする、請求項4に記載の膜。
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