JP2013144615A - 亜酸化銅粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐酸化性や保存安定性に優れた亜酸化銅粒子を提供すること。
【解決手段】本発明の亜酸化銅粒子は、炭素数6〜20の脂肪酸又は有機アミンの少なくとも一種によって表面処理されていることを特徴とする。この亜酸化銅粒子は、走査型電子顕微鏡観察による平均粒子径Dに対する結晶子径DCの比率D/DCが1〜10であることが好適である。この亜酸化銅粒子は、水溶性銅化合物、水及びアルコールを含み、かつ銅以外に金属を含まない反応液と、ヒドラジン又はその誘導体からなる還元剤とを混合して亜酸化銅粒子を生成させ;次いで前記反応液に、炭素数6〜20の脂肪酸又は有機アミンの少なくとも一種を添加して、亜酸化銅粒子の表面に該脂肪酸又は該有機アミンを付着させることで好適に製造される。
【選択図】図2

Description

本発明は、亜酸化銅粒子及びその製造方法に関する。
基板上に導電膜を形成する方法としては、スパッタリング法や真空蒸着法等の真空薄膜形成法、電解めっき法や無電解めっき法等のめっき法などが知られている。これらの方法のうち、スパッタリング法や真空蒸着法等の真空薄膜形成法は、その実施に真空チャンバが必要となり、装置が複雑化するという不都合や、製造速度を高めにくいといった不都合がある。電解めっき法や無電解めっき法によれば、比較的大面積の基板に容易に薄膜を形成することが可能であるが、基板の表面に導電化処理を施す必要があるという不都合や、廃液の環境負荷が大きく、その処理に多大な経費が必要であるという不都合がある。
このような状況のもと、金属粒子のインクやペースト等の導電性分散体の塗布によって導電膜を形成する方法が注目されている。この方法によれば、複雑な装置を用いることなく、比較的低コストで導電膜を高速生産することができる。この方法で微細なパターンの導電膜を形成しようとする場合、導電性分散体を構成する金属粒子として微粒のものを用いる必要がある。しかし、金属粒子を微粒にすると、表面活性が高まることに起因して経時変化により表面が酸化されやすくなったり、粒子どうしの凝集が起こりやすくなったりして、導電性分散体の製造の歩留りが低下してしまう。
金属粒子を微粒化することに起因する凝集の問題を解決することを目的として、金属粒子よりも凝集の起こりにくい粒子である金属酸化物の粒子を含む分散体を用い、これを塗布して膜を形成し、その膜を還元雰囲気下に焼成することで導電膜を形成することが提案されている。例えば特許文献1においては、亜酸化銅粒子分散液を用いて塗膜を形成し、該塗膜を加熱処理することで銅薄膜を形成している。
特開2008−257935号公報
しかし、特許文献1に記載の亜酸化銅粒子分散液は、これを長期保存した場合、微粒であることに起因して粒子表面の酸化が進行しやすく、安定性に欠けるものであった。また、亜酸化銅は、その表面活性が高いことから、水中に溶解しやすく、更に溶解後に再析出して、粒径の増大を招きやすい。これらを防止するために、亜酸化銅粒子の表面に保護膜を形成することが考えられるが、該保護膜は、亜酸化銅粒子を原料として導体膜を形成する場合に、該導体膜中に残存しやすく、そのことに起因して該導体膜の導電性を十分に高められないことがある。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る亜酸化銅粒子及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、炭素数6〜20の有機酸又は有機アミンの少なくとも一種によって表面処理されていることを特徴とする亜酸化銅粒子を提供するものである。
また本発明は、水溶性銅化合物、水及びアルコールを含み、かつ銅以外に金属を含まない反応液と、ヒドラジン又はその誘導体からなる還元剤とを混合して亜酸化銅粒子を生成させ、
次いで前記反応液に、炭素数6〜20の有機酸又は有機アミンを少なくとも一種添加して、亜酸化銅粒子の表面に該有機酸又は該有機アミンの少なくとも一種を付着させる工程を有する亜酸化銅粒子の製造方法を提供するものである。
更に本発明は、水溶性銅化合物、水及びアルコールを含み、かつ銅以外に金属を含まない反応液と、ヒドラジン又はその誘導体からなる還元剤とを混合して亜酸化銅粒子を生成させ、
次いで前記反応液に、炭素数6〜20の有機酸又は有機アミンを少なくとも一種添加して、亜酸化銅粒子の表面に該有機酸又は該有機アミンの少なくとも一種を付着させ、
前記有機酸又は前記有機アミンが少なくとも一種付着した亜酸化銅粒子と液媒体とを混合して分散体を調製し、
前記分散体を基板に塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を熱処理して、該塗膜に含まれる亜酸化銅粒子を銅に還元するとともに前記有機酸又は前記有機アミンを除去して、銅からなる導体膜を形成する、導体膜の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、耐酸化性や保存安定性に優れた亜酸化銅粒子及びその製造方法が提供される。また、本発明の製造方法においては、本発明の亜酸化銅粒子を合成する際に残留不純物として残りにくい原料を用いている。そのことから本発明の亜酸化銅粒子は、不純物等の残存が少なく、導電性の高い導体膜を製造することができる。
図1は表面処理を行っていない対照の亜酸化銅粒子のスラリーの保存前での状態を示す走査型電子顕微鏡像である。 図2(a)ないし(d)は、実施例1ないし4で得られた亜酸化銅粒子のスラリーを35℃で3日間保存した後の状態を示す走査型電子顕微鏡像である。 図3(a)及び(b)は、比較例1及び2で得られた亜酸化銅粒子のスラリーを35℃で3日間保存した後の状態を示す走査型電子顕微鏡像である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の亜酸化銅粒子は、特定の表面処理を施されていることによって特徴付けられる。この表面処理は、炭素数6〜20の有機酸又は有機アミン(以下、これらを総称して「表面処理剤」ともいう。)を用いることで行われる。有機酸及び有機アミンは、これらのうちのどちらか一方を用いてもよく、あるいは両者を併用してもよい。この表面処理剤を用いた表面処理を行うことで、本発明の亜酸化銅粒子は耐酸化性や保存安定性が向上し、長期にわたって保存した後であっても、容易に銅に還元することができる。また、亜酸化銅粒子の溶解・再析出も起こりにくい。更に、この表面処理剤を用いることで、本発明の亜酸化銅粒子を原料として導体膜を製造すると、該導体膜中に該表面処理剤が残存しにくくなるという利点もある。
表面処理に用いられる有機酸としては、炭素数が上述した範囲内である限りその種類に特に制限はなく、例えば飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸等も用いることもできる。飽和脂肪酸としては、例えばオクタン酸(C8)、デカン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)などを用いることができる。不飽和脂肪酸としては、例えばオレイン酸(C18)、アラキドン酸(C20)などを用いることができる。これらの有機酸は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの有機酸のうち、特に表面溶解析出(酸化・還元)を抑制する点から、炭素数が8〜20、特に10〜20、とりわけ10〜18のものを用いることが好ましい。特に好ましい有機酸はオレイン酸等の直鎖不飽和脂肪酸である。
一方、表面処理に用いられる有機アミンとしては、モノアミン、ジアミン、トリアミンのいずれを用いることもできる。また有機アミンとして、例えば飽和脂肪族アミン及び不飽和脂肪族アミンを用いることができる。有機アミンの例としては、飽和脂肪族モノアミンであるデシルアミン(C10)、ヘキサデシルアミン(C16)、オクタデシルアミン(C18)などが挙げられる。別の例として、不飽和脂肪族モノアミンであるオレイルアミン(C18)や不飽和脂肪族トリアミンであるトリアリルアミン(C9)などが挙げられる。これらの有機アミンは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの有機アミンのうち、特にオレイルアミン等の不飽和脂肪族モノアミンは酸化、還元等から表面を保護する点から、炭素数が8〜20、特に10〜20、とりわけ10〜18のものを用いることが好ましい。
後述する亜酸化銅粒子の好適な製造方法から明らかなように、表面処理剤は、好適には亜酸化銅粒子の表面全域を被覆している。そのため、亜酸化銅粒子自体の粒径が小さくなると、被覆量は表面積と伴に増加する。亜酸化銅粒子に対する表面処理剤の付着量の割合は、好ましくは0.05〜10質量%であり、更に好ましくは2〜5質量%である。表面処理剤の付着量は、本発明の亜酸化銅粒子を全量焼成処理して発生する二酸化炭素の量の測定から算出される。
本発明の亜酸化銅粒子は、上述の表面処理剤によって表面処理されていることに加えて、亜酸化銅自身が高結晶性であることが好適である。亜酸化銅自身が高結晶性であることによって、耐酸化性や保存安定性が一層向上するからである。亜酸化銅粒子の結晶性は、該粒子の走査型電子顕微鏡観察による平均粒子径Dと、結晶子径DCとの比率を尺度として評価することができる。この比率D/DCが1に近づくほど、亜酸化銅粒子はその結晶性が高いと評価することができる。本発明においては、この比率D/DCが好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜5である。
前記の平均粒子径Dは、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア Mac-View(株式会社マウンテック製)を用いて走査型電子顕微鏡画像のHeywood径から求められた一次粒子径から算出することができる。一方、前記のDCは、X線回折装置Ultima IV(株式会社リガク製)を用いて測定し(条件:X-ray CuKα、40kV、20mA、測定範囲20°≦θ≦100°)、同じくリガク製の解析ソフトウェアPDXLを用いて求められた結晶子径から算出することができる。
比率D/DCは上述のとおりであるところ、亜酸化銅粒子の平均粒子径Dそのものは、好ましくは10〜200nmであり、更に好ましくは20〜100nmである。このように本発明の亜酸化銅粒子は微粒であることが好ましい。このような微粒の亜酸化銅粒子を用いることで、微細な電気回路の配線を容易に形成することができる。なお、微粒であることは、耐酸化性や保存安定性にマイナスに作用するが、特定の表面処理剤によって処理された本発明の亜酸化銅粒子によれば、酸化や保存安定性の低下を効果的に防止することができる。
本発明の亜酸化銅粒子の形状に特に制限はないが、後述する好適な方法によって製造される場合には、略六面体の形状の亜酸化銅粒子が得られる。この略六面体の亜酸化銅粒子は、結晶性の高いものとなる。
次に、本発明の亜酸化銅粒子の好適な製造方法について説明する。本製造方法は、(i)亜酸化銅粒子の製造工程と、(ii)生成した亜酸化銅粒子の表面処理工程とに大別される。以下、それぞれの工程について説明する。
(i)の亜酸化銅粒子の製造工程においては、水溶性銅化合物、水及びアルコールを含む反応液を調製する。水溶性銅化合物は、亜酸化銅粒子の銅源となるものである。アルコールは、亜酸化銅粒子の合成中に生じることのある発泡を抑制する消泡剤の目的で用いられる。
水溶性銅化合物としては、二価の銅の水溶性化合物を用いることが好ましい。そのような化合物としては例えば酢酸銅、硫酸銅、硝酸銅及びそれらの水和物が挙げられる。これらの水溶性銅化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。反応液に含まれる銅の濃度は、0.01〜0.1質量%、特に0.02〜0.05質量%とすることが好ましい。
アルコールとしては、例えば炭素数が1〜5、特に1又は2である水溶性の一価アルコールを用いることが好ましい。そのようなアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソブタノールなどが挙げられる。これらのアルコールはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。反応液に含まれるアルコールの濃度は、10〜30質量%、特に15〜25質量%とすることが好ましい。
上述の反応液は、銅以外の金属元素を含んでいないものである。つまり上述の反応液は、金属として銅のみを含むものである。これによって、目的とする亜酸化銅粒子の結晶性を一層高くすることができる。同様の理由によって、上述の反応液は、銅以外の無機イオンを含んでいないことも好ましい。この観点から、先に述べた銅源としての水溶性銅化合物は、有機酸の塩である酢酸銅であることが好ましい。
このようにして調製された反応液と還元剤とを混合して反応液中の二価の銅イオンを一価の銅に還元して亜酸化銅を生成させる。還元剤としては、ヒドラジン又はその誘導体を用いることが、二価の銅イオンを一価の銅に首尾よく還元させることができ、しかも結晶性が高く、かつ微粒の亜酸化銅粒子を容易に得られる点から好ましい。ヒドラジン誘導体としては、抱水ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、無水ヒドラジンなどを用いることができる。
還元剤の使用量は、反応液中に存在する二価の銅イオンの量に対して1〜5当量、特に1.5〜3.5当量であることが、二価の銅イオンを一価の銅に首尾よく還元させることができ、しかも結晶性が高く、かつ微粒の亜酸化銅粒子を容易に得られる点から好ましい。
反応液と還元剤との混合は、反応液中に還元剤を添加することで行ってもよく、あるいはその逆に還元剤に中に反応液を添加することで行ってもよい。また反応液と還元剤とを同時に混合してもよい。二価の銅の一価の銅への還元の制御のしやすさの点からは、反応液中に還元剤を添加することが好ましい。この場合、還元剤は反応液中に一括して添加してもよく、あるいは所定の時間にわたって逐次的に添加してもよい。還元は、好ましくは20〜50℃、更に好ましくは15〜30℃に制御した状態において行うことができる。
還元剤の作用によって二価の銅から一価の銅への還元が生じ、反応液中に亜酸化銅粒子が生成する。還元剤の添加完了後は、反応系内を安定化させる目的で所定時間エージングすることが好ましい。このようにして生成した亜酸化銅粒子は、好適には、上述の範囲の平均粒子径Dを有する微粒のものとなり、かつ高結晶性を有するものとなる。
このようにして亜酸化銅粒子が生成したら、次に上述した(ii)の工程である亜酸化銅粒子の表面処理を行う。この表面処理は、(i)の工程の引き続きで行ってもよく、あるいは(i)の工程で得られた亜酸化銅粒子を一旦反応液から分離して、該粒子を水洗した後に行ってもよい。外界との接触による亜酸化銅粒子の変質を防止する観点からは、(i)の工程の引き続きで表面処理を行うことが好ましい。
表面処理は、(i)の工程で亜酸化銅粒子が生成した反応液中に、所定量の表面処理剤を添加し、液を攪拌することで行われる。この操作によって、亜酸化銅粒子の表面に表面処理剤が付着し、該表面処理剤による保護膜が亜酸化銅粒子の表面に形成される。表面処理剤の添加量は、液中に存在する亜酸化銅粒子の質量に対して、0.05〜10質量%とすることが好ましく、2〜5質量%とすることが更に好ましい。
表面処理剤による表面処理は、亜酸化銅粒子が含まれている液を、好ましくは20〜50℃、更に好ましくは15〜30℃に温度制御した状態において行うことができる。一般に室温(20〜25℃)で表面処理することで、満足すべき結果が得られる。
このようにして、亜酸化銅粒子の表面処理が行われたら、水や有機溶媒を用いたデカンテーションを繰り返して洗浄を行い、該亜酸化銅粒子をスラリーの状態で保存することが好ましい。こうすることで、表面処理剤による表面処理の効果と相まって、亜酸化銅粒子の酸化や保存安定性の低下を一層効果的に防止することができる。
亜酸化銅粒子のスラリーを用いる場合には、具体的な用途に適した溶媒と置換する操作を行った後、メディアミル等の分散装置を用いた分散処理を行い、また必要に応じ粗大粒子を濾過によって除去する。その後、液体分の配合比の調整の目的及び亜酸化銅粒子の濃度調整の目的で、所定量の水及び/又は有機溶媒からなる液媒体、並びにその他の成分を添加して、例えばインクやペースト等を始めとする各種の分散体を調製する。
このようにして得られた本発明の亜酸化銅粒子を含む分散体は、例えばインクジェット印刷用インク、マイクロディスペンサ用インク、グラビア印刷用インク、スクリーン印刷用インク及びその他の用途へのペースト等として好適に用いられる。
本発明の亜酸化銅粒子を含む分散体は、例えば基板上に塗布されることで塗膜となり、該塗膜を熱処理することで、導電性を有する銅薄膜となる。本発明の亜酸化銅粒子が微粒である場合には、微細なパターンの銅薄膜を形成することができる。このような微細なパターンの銅薄膜は、電気回路の配線として好適なものである。
本発明の亜酸化銅粒子を含む分散体又はインクやペーストを塗布する方法は、これらの粘度や、亜酸化銅粒子の粒径に応じて適切な方法が選択される。そのような方法としては、例えばインクジェット印刷、マイクロディスペンサ法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレー塗布法、バーコーティング法、ロールコーティング法が挙げられる。塗膜の厚みは、目的とする銅薄膜の具体的な用途に応じて好ましくは0.1〜100μm、更に好ましくは1〜30μmの範囲で適切に調整できる。
塗膜の形成後には、亜酸化銅を金属銅に還元するのに十分な温度で熱処理する。この熱処理によって、銅からなる導体膜が生成する。熱処理は例えば非酸化性雰囲気下で行うことができる。非酸化性雰囲気は、水素や一酸化炭素等の還元雰囲気、及びアルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素等の不活性雰囲気を包含する。特に還元雰囲気下で行うことが有利である。還元雰囲気及び不活性雰囲気のいずれの場合であっても、加熱に先立ち加熱炉内を一旦真空吸引して酸素を除去した後に、還元雰囲気又は不活性雰囲気とすることが好ましい。また不活性雰囲気下で一旦熱処理した後に、還元雰囲気下で熱処理すると、得られる銅薄膜が一層緻密になるので好ましい。
熱処理の温度は、150〜400℃、特に180〜250℃とすることが好ましい。熱処理においては、この温度範囲を10分〜3時間、特に30分〜1時間保持することが好ましい。
上述の熱処理を行うことで、亜酸化銅が銅に還元されて、目的とする銅の導体膜が形成される。また熱処理にとって、亜酸化銅粒子の表面に付着していた表面処理剤が首尾よく除去され、導体膜中での残存量を極力低下させることができるので、該導体膜の導電性の低下が効果的に防止される。
塗布の対象となる基板としては、無機物及び有機物のいずれを用いてもよい。無機物の基板としては、例えばガラス、シリコンやゲルマニウム等の半導体、ガリウム−ヒ素やインジウム−アンチモン等の化合物半導体などからなる基板が挙げられる。有機物の基板としては、ポリイミド、ポリエステル、アラミド、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などからなる基板が挙げられる。これらの基板における被塗布面には、予めコロナ放電処理等の表面活性化処理を施しておいてもよい。あるいは、被塗布面に各種のカップリング剤を塗布しておいてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
(1)亜酸化銅粒子の生成工程
1.2Lビーカーに、純水600g、酢酸銅一水和物(日本化学産業株式会社製)284g、メタノール(和光純薬工業株式会社製)257gを加え、スクリュー翼を用いて十分に攪拌した。次にヒドラジン一水和物(和光純薬工業株式会社製)27gを添加し、更に攪拌することで亜酸化銅微粒子のスラリーを得た。
〔溶解防止性〕
得られた亜酸化銅粒子を純水に分散させて10%のスラリーとした。このスラリーを、35℃で3日間保存した。保存後の亜酸化銅粒子の状態を走査型電子顕微鏡観察した。対照として、表面処理を行っていない亜酸化銅粒子のスラリーの保存前での状態を観察した。その結果を図1に示す。
(2)亜酸化銅粒子の表面処理工程
このようにして得られた亜酸化銅粒子のスラリーにオクタン酸を添加して室温で更に攪拌を行い、亜酸化銅粒子を表面処理した。オクタン酸の添加量は、スラリー中に含まれる亜酸化銅粒子に対して5%とした。
(3)評価
このようにして得られた亜酸化銅粒子を限外濾過によって分離した後、走査型電子顕微鏡観察して、上述の方法で平均粒子径Dを求めた。なお、SEM観察の結果、得られた亜酸化銅粒子は略六面体の形状であることが確認された。更に、上述の方法で結晶子径DCを求めた。また上述の方法で粒子の溶解防止性を評価した。これらの結果を以下の表1及び図2に示す。
〔実施例2ないし4〕
実施例1で用いたオクタン酸に代えて、デカン酸(実施例2)、オレイン酸(実施例3)、オレイルアミン(実施例4)を用いた。これ以外は実施例1と同様にして亜酸化銅粒子を得た。得られた亜酸化銅粒子について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を以下の表1及び図2に示す。
〔比較例1及び2〕
実施例1で用いたオクタン酸に代えて、プロピオン酸(比較例1)、しゅう酸(比較例2)を用いた。これ以外は実施例1と同様にして亜酸化銅粒子を得た。得られた亜酸化銅粒子について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を以下の表1及び図3に示す。
図1〜図3の対比から明らかなように、各実施例で得られた、表面処理された亜酸化銅粒子は、保存後における粒子の溶解が効果的に防止されることが判る。

Claims (5)

  1. 炭素数6〜20の有機酸又は有機アミンの少なくとも一種によって表面処理されていることを特徴とする亜酸化銅粒子。
  2. 走査型電子顕微鏡観察による平均粒子径Dと、結晶子径DCとの比率D/DCが1〜10である請求項1に記載の亜酸化銅粒子。
  3. 走査型電子顕微鏡観察による平均粒子径Dが10〜200nmである請求項1又は2に記載の亜酸化銅粒子。
  4. 水溶性銅化合物、水及びアルコールを含み、かつ銅以外に金属を含まない反応液と、ヒドラジン又はその誘導体からなる還元剤とを混合して亜酸化銅粒子を生成させ、
    次いで前記反応液に、炭素数6〜20の有機酸又は有機アミンを少なくとも一種添加して、亜酸化銅粒子の表面に該有機酸又は該有機アミンの少なくとも一種を付着させる工程を有する亜酸化銅粒子の製造方法。
  5. 水溶性銅化合物、水及びアルコールを含み、かつ銅以外に金属を含まない反応液と、ヒドラジン又はその誘導体からなる還元剤とを混合して亜酸化銅粒子を生成させ、
    次いで前記反応液に、炭素数6〜20の有機酸又は有機アミンを少なくとも一種添加して、亜酸化銅粒子の表面に該有機酸又は該有機アミンの少なくとも一種を付着させ、
    前記有機酸又は前記有機アミンの少なくとも一種が付着した亜酸化銅粒子と液媒体とを混合して分散体を調製し、
    前記分散体を基板に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を熱処理して、該塗膜に含まれる亜酸化銅粒子を銅に還元するとともに前記有機酸又は前記有機アミンを除去して、銅からなる導体膜を形成する、導体膜の製造方法。
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