JP2013140767A - 開閉器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】駆動機構部11により接点相互が接離可能に設けられた一対の接触子4、5と、開極時に上記接点相互の間に生じるアーク6を消弧するための消弧グリッド7と、上記一対の接触子の少なくとも一方における上記アークの進行方向に上記一方の接触子と同電位で設けられ、表面の少なくとも一部に上記アークの進行方向と交差する方向に所定の間隔で複数の凹凸が繰り返し配設されたアーク転流部(アークランナ80)と、を備えたことを特徴としている。
【選択図】図1
Description
また、特許文献2のような技術においては、直流小電流の場合でも遮断性能を高めることができるとはいうものの、直流電流が低くなるほど転流の確率が低くなり、必ずしも遮断性能的に信頼性が十分とは言い難かった。
図1は本発明の実施の形態1に係る開閉器の開極状態における消弧室部分の要部構成を概略的に示す側面図である。図において、開閉器は、絶縁物からなるケース1a及びカバー1bによって構成された筐体1の両端部に、外部の電力回路と接続される端子部2及び3が設けられ、中央部に消弧室Aが設けられている。消弧室Aには、端子部2と一体的に形成され、所定部に固定接点4aが設けられた固定接触子4と、固定接点4aに接離する可動接点5aを有し、回転軸5bのまわりに回動するように設けられた可動接触子5と、この可動接触子5の先端と対向するように固定接触子4の上方に配置され、開極時に固定接点4aと可動接点5aの間に発生するアーク6を取り込み冷却するための、複数枚の消弧板を所定間隔を保持して重ねられた消弧グリッド7と、固定接触子4における固定接点4aよりもアーク6の進行方向側に設けられ、表面にアーク進行方向と交差する方向に形成された複数の溝による凹凸部8が設けられたアーク転流部としてのアークランナ80などが設けられている。
なお、本発明の転流効果を検証するために、図2に示すような要素モデルを用いてアーク6がアークランナ80に強制的に接触する状況を作り、アーク6の発弧から100ms以内に転流する確率と転流までに要する時間を調査した。図2において、要素モデルは平行に設けられた電極12、13に接点12A、13Aが対向するように設け、一方の電極12の延長線上にアークランナ80を同電位に設ける一方、接点12A、13Aの間に外部磁場14が図示の方向に作用するように構成されている。
(1)凹凸部8を構成する凸部における空間との界面近傍で電界集中が起き易くなり、電界集中が起きている箇所で電界に沿って電子が運動し易くなり、特に陰極の場合では実効仕事関数を低下させることができる。
(2)アークランナ80近傍のアーク空間からアークスポット面以外に流れていた暗電流などの電流が上記凸部に集約されるようになり、凸部近傍で局所的なジュール加熱が発生し、凸部近傍空間の導電率が上昇する。
(3)凹凸部8を構成する溝(凹部)による体積縮小により、アークランナ80の局所的な熱容量が低下し、アーク6に近接しているアークランナ80の凸部の温度が上昇し易くなる。このため、凸部からの金属蒸気の噴き出しが発生してアーク6がアークランナ80の凸部で持続的に発生し易くなる。また、陰極の場合では電極の実効仕事関数の低下による熱電子放出やアーク6の滞留による前記アーク6からの高頻度の高エネルギー粒子入射が2次電子放出を発生させ易くなっている。
また、本発明の構造によるとアークランナ80上のアークの走行性能も改善できる。次に、図2の要素モデルを用いてアークランナ80上を100ms以内に3cm以上走行する確率と3cm走行するまでに要する平均的な時間を調査した結果を表2に示す。
i)熱容量が低下することにより、アークランナの温度が上昇する。このため、熱電子放出に必要な実効仕事関数が低下する。
ii)アークランナの温度が上昇するため、沸点に達した箇所から金属蒸気が噴射される。この金属蒸気はアークを滞留させる効果を持つ。また、アークから高エネルギーのイオン粒子や中性粒子がアークランナへ入射し易くなり、2次電子放出も起こり易くなる。
iii)アークスポット面以外に流れている暗電流などの電流がアークランナの凹凸部8を構成する凸部の箇所に集約され、凸部近傍の空間で局所的にジュール加熱が起き易くなる。このため、凸部近傍の空間の導電率が上昇する。
iv)アークランナ界面で電界が強化される。このため、アークランナとアーク発生空間との間で電子の往来が起こり易くなる。
また、固定接触子4を陰極とする場合、アークランナ80の材料を固定接触子4に比べて、例えばアルカリ土類金属や、Ti、Al合金のような仕事関数の低いものなどを含む材料を用いて構成したり、表面にこれらの材料をメッキしたりすることで電子放出やイオン照射が起き易くなり、アークランナ、またはアークホーン上でアークスポットが形成され易くなり、さらに転流し易くなる。なお、固定接触子4を陰極とする場合には、アークランナ80よりも仕事関数の高い接点を用いて、アークランナ80の仕事関数を相対的に低くしてもよい。
上記のような諸効果により、開閉器を小型・軽量化したり、長寿命化することも可能となり、また、回路の安全性も向上させることができる。
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2に係る開閉器の開極状態における消弧室部分の要部構成を示す側面図、図4は図3に示された実施の形態2の別の変形例になる消弧室部分の固定接触子及びアークランナ付近の要部構成を示す側面図(a)及び平面図(b)である。なお、各図を通じて同一または相当する部材や部分については同一の符号を付すものとする。図において、凹凸部8を構成する溝からなる凹部の一部には誘電性の絶縁物15が配置されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
図5は本発明の実施の形態3に係る開閉器における固定接触子及びアークランナ付近の要部構成を示す側面図、図6は図5の変形例を示す側面図である。図において、アークランナ80は、凹凸部8が側面から見て三角が連なった鋸歯状に形成され、凸部、溝(凹部)共に三角形状に構成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
図7は本発明の実施の形態4に係る開閉器における固定接触子及びアークランナ付近の要部構成を示す斜視図、図8は図7の変形例を示す側面図、図9は図7の他の変形例を示す側面図である。上記実施の形態3ではアークランナ80表面の熱容量が過度に低くなった場合、アーク6(図示省略)が膠着し易くなるため、アーク6の走行性能も両立させるためには熱容量を下げることなく、電界を強化できることが好ましい。この実施の形態4はかかる課題に対応し得るようにしたものであり、図7の構造ではアークランナ80の凹凸部8を構成する溝状の凹部と、その脇に形成される凸部の形状を共にΛ形状にしたことを特徴としている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
図10は本発明の実施の形態5に係る開閉器におけるアークランナの表面のグレーティング状の凹凸部のパターン例を示す図である。この実施の形態5は、実施の形態1から4のアークランナ80表面の凹凸部8を構成する溝の形状パターンを図10(a)〜(j)に示すように変更したものである。
実施の形態6.
図11は本発明の実施の形態6に係る開閉器における固定接触子及びアークランナ付近の要部構成を示す平面図(a)及び側面図(b)である。図において、アークランナ80の幅は固定接触子4の固定接点4aが設けられている部分よりも細く形成され、アークランナ80全体の熱容量が低くなるように構成されている。
上記のように構成された実施の形態6によれば、アーク6(図示省略)がアークランナ80表面の凹凸部8に接触したときにアークランナ80の温度が速やかに上昇し、アーク6がアークランナ80上に転流し易くなる。
図12は本発明の実施の形態7に係る開閉器における固定接触子及びアークランナ付近の要部構成を示す側面図である。図において、溝8aを設けたアークランナ80の凸部8bの裏面部には細い切れ込み状の凹所8cが設けられている。
上記のように構成された実施の形態7によれば、凸部8bの裏面側に切れ込み状の凹所8cを設けたことにより、凸部8b近傍の熱容量が一層低下し、凸部8bの温度が更に上昇し易い形状となっている。このため、凸部8bからの熱電子や、金属蒸気を放出し易くなる。また、本構造ではアークスポットがアークランナ80に転流した際に、アークランナ80内を流れる電流Iが抑制され、固定接点4a側でアーク6に流れる電流に対して逆向きの電流が発生するようにもなる。すなわち、アーク6を固定接点4aから遠ざかる方向に電磁力が作用するようになり、アーク6の固定接点4aへの逆戻り現象が起きないようになるという効果も得られる。
図13は本発明の実施の形態8に係る開閉器における固定接触子及びアークランナ付近の要部構成を示す斜視図(a)とアークランナ80の形状のみを示した図(b)である。図において、アーク進行方向に向かって幅が細くなるテーパ溝が設けられ、磁性体で構成されたアークランナ80の表面にアーク進行方向と交差する凹凸部が設けられている。
上記のように構成された実施の形態8によれば、アークランナに形成されたテーパ溝によりアークのアークランナへの磁気吸引力が強化され、アークがアークランナの表面に接触しやすくなり、さらにアークの転流が起こりやすくなる効果が得られる。
なお、テーパ溝に代わって、アークランナにアーク進行方向に向かって幅が等しい溝を設けても前記磁気吸引力は生じるため、必ずしもテーパ溝でなくてもよい。
実施の形態9.
図14は本発明の実施の形態9に係る開閉器における固定接触子及びアークランナ付近の要部構成を示す側面図である。図において、アークランナ80はアーク進行方向に対して次第に高くなる上り方向の階段状の段部8sを有するように形成されている。
上記のような構造の実施の形態9によるとアーク6から見てアークランナ80の表面に階段状の段部8sが形成されており、段部8sの角部の箇所に熱と電界が集中するようになる。また、磁気駆動力などにより駆動されたアーク6はアークランナ80に接触し易く、アークランナ80の表面がアーク6に加熱されて転流し易くなり、さらにアークランナ80の奥でアーク6を維持し易くなる。
図15は本発明の実施の形態10に係る開閉器における固定接触子及びアークランナ付近の要部構成を示す側面図である。図において、アークランナ80表面の凹凸部8は、凸部8bがアーク進行方向に対して次第に高くなる上り方向の階段状に形成され、凹部を形成する溝8aはアーク進行方向に対して次第に深くなるように形成されている。
上記のように構成された実施の形態10によると、階段状の段差間に溝8aが設けられているので、熱容量を上昇させることなく熱と電界を集中させることができる。このため、開極時に発生したアークは速やかに転流しアークランナ80の奥で膠着し易くなる。
図16は本発明の実施の形態11に係る開閉器の開極状態における消弧室部分の要部構成を示す側面図、図17は図16に示されたアークホーン表面の凹凸部の変形例を示す斜視図である。図16において、可動接触子5の先端部に設けられているアーク転流部としてのアークホーン90の表面にはアーク進行方向と交差する方向に形成された複数の溝を有する凹凸部9が設けられている。なお、固定接触子4に設けられたアークランナ80の表面は図示の例では平面状であるが凹凸部8を設けても良い。その他の構成は実施の形態1と同様である。
なお、本書ではアークスポットを3cm以上走行させる場合で使用する部品をアークランナ80とし、アークスポットをアークの転流先となる部品に膠着させ留まらせるための部品をアークホーン90としている。この実施の形態11ではアークの転流先となる部品としてアークホーン90を用いたものである。
図18は本発明の実施の形態12に係る開閉器の開極状態における消弧室部分の要部構成を示す側面図である。なお、この実施の形態12は実施の形態11におけるアークホーン90を鉄などの磁性材料で構成した実施の形態11の第1の変形例に係るものであり、その他は実施の形態11と同様に構成されている。該構成の実施の形態12では、アークホーン90を鉄などの磁性材料で構成したことによりアークが磁性材料でなるアークホーン90に吸引され、誘導され易くなるという効果が期待できる。
なお、可動接触子5が陰極となる場合、アークホーン90には電子放出やイオン照射を促すために可動接触子5よりも仕事関数が低い材料で構成しても良い。
また、可動接触子5が陽極となる場合、アークホーン90には電子照射を促すために可動接触子5よりも仕事関数が高い材料で構成しても良い。
また、可動接点5aのアークホーン90が配置されている方向とは逆側にポリマー材料などのアブレーション効果がある材料を近接させてもよい。該可動接点5a近傍の空間が冷却されてアーク6が滞留し難くなるため、アークホーン90へ転流し易くなる。
図19は本発明の実施の形態13に係る開閉器の開極状態における消弧室部分の要部構成を示す側面図である。なお、この実施の形態13では回転軸5bから最も離れた可動接点5a箇所の回転軌道よりも回転軸5b側にグレーティング状の凹凸部9を設けたアークホーン90を配置したことを特徴としており、実施の形態11の第2の変形例に相当している。なお、この例では消弧グリッド7の上部に空間を開けて消弧板7aが開極時のアークホーン90に対向するように設けられている。その他の構成は実施の形態11と同様である。
図20は本発明の実施の形態14に係る開閉器の開極状態における消弧室部分の要部構成を示す側面図である。この実施の形態14は、可動接触子5、または可動接触子5と接している図示していない箇所と電気的に導体16で接続したアークホーン90にアーク進行方向に交差する溝を設け、アークホーン90をアーク6が滞留し易く消弧グリッド7に近接した位置に配置したことを特徴としており、実施の形態11の第3の変形例に相当している。この構造によるとアークホーン90をアーク6が滞留しやすい位置に配置できるため、アーク6が転流し易く、転流したアーク6を消弧グリッド7で効率よく冷却することができる。
図21は本発明の実施の形態15に係る開閉器の開極状態における消弧室部分の要部構成を示す側面図である。この実施の形態15は、固定接触子4に接触させて配置しているアークランナ80Aの表面にアーク進行方向と交差する溝を連続的にもつ凹凸部8Aを設け、図示していない可動接触子5と電気的に接している箇所と導体16で接続されたアークランナ80Bの表面にもまたアーク進行方向と交差する溝を連続的にもつ凹凸部8Bを設けていることを特徴としている。その他の構成は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
上記のように構成された実施の形態15においては、アーク6を速やかにアークランナ80A、80Bに転流させ、消弧グリッド7を配置している箇所まで走行させて消弧することができる。
図22は本発明の実施の形態16に係る開閉器の開極状態における消弧室部分の要部構成を示す側面図である。なお、実施の形態16は、上記実施の形態15の変形例に相当する。図において、固定接触子4には、アーク進行方向に交差する細溝による凹凸部9Aを設けたアークホーン90Aを近接させ、アーク進行方向と交差する溝を連続的に設けた凹凸部8Aを有するアークランナ80Aがアークホーン90Aに接触させて配置され、可動接触子5には、アーク進行方向に交差する細溝による凹凸部9Bを設けたアークホーン90Bを近接させ、アーク進行方向と交差する溝を連続的に設けた凹凸部8Bを有するアークランナ80Bがアークホーン90Bに接触させて配置されている。
図23は本発明の実施の形態17に係る開閉器の開極状態における消弧室部分の要部構成を示す側面図である。なお、実施の形態17は、上記実施の形態15の変形例に相当する。図において、固定接触子4と可動接触子5には、アーク進行方向に交差する細溝による凹凸部9Aを設けたアークランナ80A、80Bをそれぞれ接触子と同電位となるように接触させて配置し、アークランナの80A、80Bの少なくとも一部を開極時の一対の接触子が挟み込む空間の内側に配置している。それぞれの凹凸部8A、8Bを接触子間に配置している。
上記のように構成された実施の形態17においては、開極時に接点間に発生したアークは、アークランナ80A、80Bへのアーク転流性能をアークホーン90A、90Bを用いることなく転流を改善できる。
Claims (9)
- 駆動機構部により接点相互が接離可能に設けられた一対の接触子と、開極時に上記接点相互の間に生じるアークを消弧するための消弧グリッドと、上記一対の接触子の少なくとも一方における上記アークの進行方向に上記一方の接触子と同電位で設けられ、表面の少なくとも一部に上記アークの進行方向と交差する方向に所定の間隔で複数の凹凸が繰り返し配設されたアーク転流部と、を備えたことを特徴とする開閉器。
- 上記複数の凹凸の隣り合う凸部の間が凹所で隔てられていることを特徴とする請求項1に記載の開閉器。
- 上記アーク転流部に設けられた上記凹凸部の内の凸部の背面部に、該凸部の熱容量を小さくする凹所が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の開閉器。
- 上記アーク転流部に設けられた上記凹凸部の内の凹部に、誘電性の絶縁物を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の開閉器。
- 上記アーク転流部を磁性材料で構成したことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の開閉器。
- 直流回路における陰極側に配置される上記アーク転流部を、上記接触子に用いられる材料よりも仕事関数が低い材料で構成したことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の開閉器。
- 直流回路における陽極側に配置される上記アーク転流部を、上記接触子に用いられる材料よりも仕事関数が高い材料で構成したことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の開閉器。
- 上記アーク転流部として、上記接触子に用いられる材料よりも低沸点、あるいは比熱が小さな材料を用いたことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の開閉器。
- 上記アーク転流部として、上記接触子に用いられる材料よりも高沸点、あるいは比熱が大きな材料を用いたことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の開閉器。
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