JP2013139216A - 車両の後部車体構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】スペアタイヤ収納部での荷重の局所的な集中を抑えて強度を確保する。
【解決手段】車両後部のスペアタイヤ3の収納部4には、スペアタイヤ3のタイヤ部3aが支持される外周部13と、同外周部13よりも低位置とされてスペアタイヤ3のホイール部3bが収納可能かつ固定される中央部14と、外周部13と中央部14との間に設けられた段差部15とで構成される底壁12と、収納部4の中央部14から互いに間隔をおいて放射状に延びるように形成された補強用の複数のビード20,21,22とが備えられ、収納部4の下部後方に備えた牽引フック17を、補強部材16を介して中央部14と連結し、複数のビードのうち、車両前方側の一部のビード20,21は、段差部15で形成されず、段差部15の前後で分割された状態に形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両の後部のスペアタイヤ収納部の強度を向上させる技術に関する。
従来より、多くの自動車の後部には、スペアタイヤを収納する収納部が備えられている。スペアタイヤの収納部は、例えば自動車の後部フロアにスペアタイヤの形状に合わせて略円形の凹部を形成して構成されている。
そして、スペアタイヤ収納部の底板に、収納部自体の強度(剛性)を向上させるために、スペアタイヤの収納位置の中央部から放射状にリブが設けられている車両がある(特許文献1、2)。
また、スペアタイヤ収納部の後部下方には牽引フックが設けられており、この牽引フックから入力される荷重の一部をスペアタイヤの収納部に支持させる構造の車両がある(特許文献3)。具体的には、牽引フックが取り付けられるフックブラケットを車両前方に延ばし、スペアタイヤの中心部分が固定されるスペアタイヤの収納位置の中央部と牽引フックとの間をフックブラケットで連結して入力荷重を支持する構成としている。
更に、特許文献3のような構造に特許文献1、2のようなビードを組み合わせることで、牽引フックから入力される前後荷重をフックブラケットとビードを介して車両前方側の部材に効率よく伝達できるように構成したものがある。
特開2007−38839号公報 特開2009−96345号公報 特開平9−2336号公報
ところで、近年は、燃費向上等の目的のため、車体の軽量化が図られており、スペアタイヤ収納部においても板厚が薄肉化される傾向にある。
しかしながら、板厚を薄くすると軽量化の反面、ビードを形成しても充分に強度を確保できず牽引時の入力荷重に対して変形しやすくなるという問題が生じる。例えば、牽引により車両後方への引っ張り荷重が入力された場合には、車両前方側に延びるビード同士の間の部分に車幅(左右)方向での圧縮応力が作用するためビードとビードの間が車幅方向に縮むように座屈する虞が生じる。また、車両前方への圧縮荷重が入力された場合には、特定のビード(車幅方向中央部付近で車両前方側に延びるビード)に圧縮応力が集中してしまうためビード部分が途中で座屈してしまう虞が生じる。すなわち、薄肉化により局所的な変形や破損が生じ易くなるため、軽量化と強度確保の両立が難しかった。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車両後部のスペアタイヤの収納部において荷重の局所的な集中を抑制し、必要な強度を確保可能な自動車の後部車体構造を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、車両後部のフロアを下方に円形に凹ませてスペアタイヤを収納する収納部が形成され、当該収納部の下部後方に牽引フックを備える車両の後部車体構造であって、収納部には、スペアタイヤのタイヤ部が支持される外周部と、同外周部よりも低位置とされてスペアタイヤのホイール部が収納可能かつ固定される中央部と、外周部と中央部との間に設けられた段差部とで構成される底壁と、中央部から放射状に延びるように互いに間隔をおいて形成された補強用の複数のビードとが備えられ、牽引フックは、補強部材を介して収納部の中央部と連結され、複数のビードのうち、中央部から車両前方側に延びる少なくとも一部のビードは、段差部では形成されず段差部の前後で分割された状態に形成されていることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1において、ビードは、収納部の縁部を越えて径方向外方に延長されていることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、中央部から放射状に延びる複数のビードのうち、車両前方側に延びる一部のビードを段差部では形成せず、段差部の前後で分割された状態に形成されているので、牽引フックから収納部に車両後方側への引っ張り荷重が作用した場合には、車両前方側に延びる複数のビード間に発生する圧縮荷重に対して段差部が突っ張る働きをして、ビード間における座屈を抑制することができる。また牽引フックから収納部へ車両前方側への圧縮荷重が作用した場合には、車幅方向中央部近傍のビードに入力した荷重が段差部を介して複数のビードに伝達し、荷重を車両前方側に拡散させることで特定のビードへの荷重の集中を抑制することができる。
また、収納部に設けられた放射状の複数のビードを、スペアタイヤを支持するために形成されている段差部を利用して、牽引による前後荷重を分散、支持させる構造となっており、比較的簡易な構造で収納部の強度を確保することが可能となる。
このように、簡易な構成で牽引荷重による収納部の変形、破損を効率よく抑制することができるので、軽量化のためスペアタイヤ収納部を薄肉化したとしても十分に強度を確保することができ、軽量化と強度維持の両立が容易となる。
請求項2の発明によれば、ビードが収納部の縁部を越えて径方向外方に延長されているので、荷重の集中し易い縁部がビードによって補強され、収納部での縁部での変形、破損を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る車両の後部車体構造を示す上面図である。 図1に示す車両の後部車体の縦断面図である。 比較例の車両の後部車体構造を示す上面図である。 図3に示す車両の後部車体の縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の後部車体構造を示す上面図である。図2は、図1に示す車両の後部車体の縦断面図である。
図1、2に示すように、本実施形態の自動車(以下、車両1という)の後部の荷室のフロア2には、スペアタイヤ3を収納する収納部4が備えられている。スペアタイヤ3の収納部4は、スペアタイヤ3の形状に合わせてフロア2に略円形の凹部を形成して構成されており、車両の左右を前後方向に延びる一対のサイドフレーム5、6の間で、かつサイドフレーム5、6を左右に連結するクロスメンバ7の後方のフロア2に設けられている。
収納部4の中心CLには、ボルト10が立設しており、スペアタイヤ3の中心孔を通してナット11により締め付け、スペアタイヤ3を収納部4内に固定する構造となっている。
収納部4の底壁12には、外周部13より中央部14を下方に凹ませるように円弧状の段差15が設けられている。底壁12の外周部13はスペアタイヤ3のタイヤ部3aを支持し、底壁12の中央部14にはスペアタイヤ3のホイール部3bが収納可能となっている。
また、収納部4の底壁12の下面には、ボルト10の固定位置から車両後方端部まで延びるように補強部材16が設けられている。そして、補強部材16の後端部には、牽引用のフック17(牽引フック)が固定されている。
更に、収納部4の底壁12には、中央部14の補強部材16の近傍から径方向外方に向って放射状に延びるように、互いに間隔をおいて複数のビード20、21、22が備えられている。ビード20〜22は、底壁12を下方に数mm程度凹ませて形成されている。なお、本実施形態では、ビード20〜22が合計11個設けられており、そのうち車幅方向(車両左右方向)中央部近傍の3つのビード20、21は、設置スペースの制約上、車両後方側の端部が一体となっている。
特に、本実施形態では、車幅方向中央部近傍に設けられた、車両前方側の複数(本実施形態では5個)のビード20、21は、段差部15では形成されておらず、段差部15の前後で分割された状態に形成されている。
また、ビード20〜22の径方向外側の端部が収納部4の縁部25より径方向外方へ延長している。
以上のような構成により、車両1では、フック17から収納部4に入力される引張荷重および圧縮荷重をビード20,21および段差部15を介して車両前方側に効率よく分散することで、局所的な荷重の集中を抑制することが可能となる。
ここで、段差部15にビードが連続して形成されている比較例(従来構造)と上記本実施形態とを比較して、収納部4における荷重の作用の差異と本発明の効果について具体的に説明する。
図3は、比較例の車両30の車体後部構造を示す上面図である。
図3に示す比較例の車両30の収納部4は、上記本実施形態の収納部4に対して、中央部14の車両前方側に位置するビード20、21が、段差部15にも形成され、段差部15を横切るように車両前後方向に連続するよう形成されている点が異なる。また、収納部4の車両前方側のビード20、21が、収納部20の縁部25の手前までで前方への延出が終了するように前後長さが短く形成されている。なお、車両30では、車両前方側のビード21が段差部15にも形成されることから、ビード21を設置スペースの制約上4本から2本に少なくしている。
このような形状の従来例の車両30の収納部4では、フック17に車両後方への引張荷重が作用すると、補強部材16を介して収納部4の中央部14に荷重が作用し、補強部材16より車両前方側に位置するビード20、21が車両後方側に引っ張られる。このため、2本のビード21には、互いに車幅方向中央側に向かって変位する力が働き、ビード20とビード21との間に圧縮荷重が作用することとなる。そして、軽量化のために収納部4の底壁の板厚を薄くした場合、この圧縮荷重を支えきれず中央部14より車両前方側のビード20、21間で底壁12が車幅方向に圧縮するように座屈してしまう虞がある。
また、フック17から前方に向って圧縮荷重が作用した場合には、車幅方向中央部で前後方向に延びるビード20が補強部材16によって押されるためビード20に荷重が集中されることとなる。したがって、この場合も収納部4の底壁の板厚を薄くすると、ビード20が耐え切れず座屈してしまう虞がある。このように従来の構造では、局所的な荷重の集中が発生するため、板厚を薄くすると牽引荷重により簡単に収納部4が変形してしまうため、軽量化が難しかった。
また、車幅方向中央部のビード20の前端が縁部25より後方までしか延長されていないので、圧縮荷重がビード20の前方の縁部25近傍(図3中C部)に集中し、当該縁部25近傍が変形し易くなってしまう。
これに対し、本実施形態の収納部4では、中央部14から車両前方に延びる車両前方側のビード20、21が、段差部15には形成されておらず、段差部15の前後で分割された構造になっているので、収納部4の車両前方側の部位では、段差部15が略左右方向に延びるビードと同様の機能を果たしている。したがって、フック17より補強部材16を介して車両後方へ引張荷重が作用した際にビード20、21間に発生する圧縮荷重に対して、段差部15が突っ張る働きをして、ビード20、21間における底壁12の座屈を抑制することができる。
また、フック17より補強部材16を介して中央部14に車両前方へ向けて圧縮荷重が入力された場合には、車幅方向中央部のビード20に入力した荷重が段差部15を介して複数のビード21に伝達し、荷重を車両前方側に拡散させることでビード20への荷重の集中を抑制することができる。
更に、本実施形態では、ビード20、21、22の径方向外側の端部が収納部4の縁部25の外側まで延長されているので、圧縮荷重が縁部25に集中せず、縁部25の変形、破損を抑制することができる。
このように、本実施形態では、収納部4に設けられた放射状の複数のビード20、21を、スペアタイヤ3を収納するために形成されている段差部15を利用して荷重を分散、支持させる構造となっており、比較的簡易な構造で収納部14の強度を確保することが可能となる。
そして、このように簡易な構成で牽引によりフック17から収納部4に入力される引張荷重や圧縮荷重による収納部4の変形、破損を効率よく抑制することができるので、軽量化のため収納部4を薄肉化したとしても十分に強度を確保することができ、車両の軽量化と収納部4の強度維持とを容易に両立させることができる。
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。例えば収納部4の大きさに合わせてビード20〜22の設置本数を変更してもよい。本発明は、スペアタイヤの収納部の底壁に略左右方向に延びる段差を有する車両に広く適用することができる。
1 車両
2 フロア
3 スペアタイヤ
4 収納部
12 底壁
15 段差部
17 牽引フック
20、21、22 ビード
25 縁部

Claims (2)

  1. 車両後部のフロアを下方に円形に凹ませてスペアタイヤを収納する収納部が形成され、当該収納部の下部後方に牽引フックを備えた車両の後部車体構造であって、
    前記収納部には、前記スペアタイヤのタイヤ部が支持される外周部と、同外周部よりも低位置とされて前記スペアタイヤのホイール部が収納可能かつ固定される中央部と、前記外周部と前記中央部との間に設けられた段差部とで構成される底壁と、
    前記収納部の前記中央部から放射状に延びるように互いに間隔をおいて形成された補強用の複数のビードとが備えられ、
    前記牽引フックは、補強部材を介して前記収納部の前記中央部と連結され、
    前記複数のビードのうち、前記中央部から車両前方側に延びる少なくとも一部のビードは、前記段差部では形成されず、前記段差部の前後で分割された状態に形成されていることを特徴とする車両の後部車体構造。
  2. 前記ビードは、前記収納部の縁部を越えて径方向外方に延長されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の後部車体構造。
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