本発明は、OA機器(複写機、パソコン等)、AV機器(テレビ、ビデオ等)、冷蔵庫や洗濯機等の家庭用電気製品、制御装置や発電機等の産業用電気・機械設備、自動車や車両等の輸送機器、及び、それらの電気機械製品の内部で使用されている電気・電子部品等に使用される金属材料の腐食試験方法及びその装置に関する。
以下、本発明の実施形態に係る大気腐食試験方法及び大気腐食試験装置について説明する。
前記大気腐食試験方法は、恒温恒湿槽に設置した被試験体の表面に塩化物イオンを含む塩分を供給する塩分付着工程と、この塩分付着工程の後に設けた乾湿循環工程とを含む。そして、乾湿循環工程は、恒温恒湿槽の内部を低い相対湿度に設定して被試験体の表面を乾燥する乾燥工程を設け、その後に乾燥工程よりも恒温恒湿槽の内部の相対湿度を高くした湿潤工程を設け、これらを複数回繰り返す工程であり、塩分付着工程における塩分の供給は、塩水の噴霧によって行い、上記の乾燥工程のうち1回目の乾燥工程は、塩分付着工程の後、上記の湿潤工程のうちの1回目の湿潤工程の前に設け、塩分付着工程と1回目の乾燥工程との間には、恒温恒湿槽の内部に噴霧した塩水の霧を除去する排気工程を設け、被試験体の表面への塩分の付着量は、塩水の噴霧量を調整して制御することを特徴とする。
ここで、1回目の乾燥工程は、塩分付着工程が終了した後の乾湿循環工程における最初の乾燥工程である。また、1回目の乾燥工程の直後に行う湿潤工程は、1回目の湿潤工程である。
前記大気腐食試験方法においては、乾燥工程は、塩分付着工程又は湿潤工程から恒温恒湿槽の内部の温度及び相対湿度をステップ状に変化させて開始することが望ましい。
前記大気腐食試験方法においては、塩水の噴霧量は、塩水の質量又は体積を計測して調整することが望ましい。
前記大気腐食試験方法においては、塩水の質量又は体積を経時的に計測し、あらかじめ設定した質量又は体積に達した時点で噴霧を停止する制御を行うことが望ましい。
前記大気腐食試験方法においては、塩分付着工程は、温度0〜60℃、相対湿度10〜98%の範囲から設定した1つの条件に保持された空間で行うことが望ましい。
前記大気腐食試験方法においては、乾湿循環工程の後、さらに、塩分付着工程を行い、その後、さらに、乾湿循環工程を行うことが望ましい。
前記大気腐食試験方法においては、乾湿循環工程とその後の塩分付着工程との間には、さらに、洗浄水によって被試験体の表面に付着した塩分を除去する洗浄工程を設けることが望ましい。
前記大気腐食試験方法においては、塩分付着工程及び乾湿循環工程をそれぞれ1回ずつ行う1サイクルを7日間に1回乃至1日間に1回の頻度で繰り返すことが望ましい。すなわち、1サイクルの期間が7〜1日であることが望ましい。
前記大気腐食試験方法においては、乾燥工程は、塩水の水分を除去した後、被試験体の表面に残存する塩分の質量を計測する工程を含むことが望ましい。
前記大気腐食試験装置は、被試験体を設置するための恒温恒湿槽と、この恒温恒湿槽に供給する塩水を貯留する塩水貯留部と、塩水の霧を発生させる塩霧供給部と、恒温恒湿槽の内部から霧を回収して排気する排気部と、塩水の霧の供給量を測定する流量測定部、又は被試験体に付着した塩水の量を測定する塩分付着量測定部と、流量測定部又は塩分付着量測定部の信号に基づいて塩水の霧の供給量を調整する制御部とを備えたことを特徴とする。
前記大気腐食試験装置は、さらに、洗浄水を被試験体に散布する洗浄ノズルと、被試験体の表面に付着した洗浄水を除去する温風乾燥部とを備えることが望ましい。
前記大気腐食試験装置においては、排気部は、恒温恒湿槽の内部の温度及び相対湿度をステップ状に変化させる機能を有することが望ましい。
前記大気腐食試験装置は、さらに、塩水貯留部と塩霧発生部との間に霧の供給量を調整する開閉弁を設けることが望ましい。
前記大気腐食試験装置においては、制御部は、塩分付着量測定部の信号に基づいて開閉弁を制御することが望ましい。
以下、本発明の詳細について実施例を用いて説明する。
図7は、大気腐食試験方法の一連の工程を自動で実施する装置の構成を示したものである。
大気腐食試験装置1は、恒温恒湿槽110と、ポンプ115と、塩水タンク120(塩水貯留部)と、塩水ノズル125(塩霧供給部)と、排気部130と、洗浄水タンク140と、洗浄水ノズル145と、温風乾燥部150とを含む構成である。恒温恒湿槽110の内部には、被試験体160を設置可能な空間が設けられている。本図は、恒温恒湿槽110の内部に被試験体160を設置した状態を示している。また、恒温恒湿槽110の内部には、塩水ノズル125と、洗浄水ノズル145と、温風乾燥部150とが設けられている。
恒温恒湿槽110は、槽内の温度と湿度とを独立に制御でき、かつ、温度と湿度とを組み合わせた複数の条件を連続的に変化させるプログラム機能を有する。また、外気を導入しながら温度及び湿度を制御できる機能を有する。
排気部130は、恒温恒湿槽110の内部から霧状の塩水を除去する。排気部130としては、除去した霧状の塩水を回収し、空気のみを外部に排出するものを使用した。また、排気部130は、恒温恒湿槽110の内部に滞留する空気を強制的に恒温恒湿槽110の外部に排出するとともに、塩霧(霧状の塩水)を回収する。塩霧の回収は、じゃま板、メッシュ状のフィルタ、サイクロン等を用いて行う。
温風乾燥部150は、被試験体160に温風を吹き付け、残留した洗浄水を除去する。
被試験体160は、耐食性を評価する対象となる材料であり、評価面を上向きにして設置する。本実施例においては、形状が70×70×1mmの亜鉛めっき鋼板を用いた。
塩水は、塩水タンク120に貯えられ、ポンプ115の動力により塩水ノズル125から塩水の霧(塩霧)として恒温恒湿槽110の内部に設置した被試験体160に供給されるようになっている。この構成により、被試験体160に塩分を付着させることができる。
塩水としては、濃度3.5%の人工海水を用いた。人工海水は、アクアマリン(登録商標、八洲薬品(株)製)を水に溶解したものである。
人工海水の成分(水溶液20L(リットル)中の各試薬量)は、NaCl:490.68g、MgCl2・6H2O:222.23g、Na2SO4:81.88g、CaCl2・2H2O:30.70g、KCl:13.89g、NaHCO3:4.02g、KBr:2.01g、H3BO3:0.54g、NaF:0.06g、SrCl2・6H2O:0.85gである。
洗浄水としては、純水を使用した。洗浄水タンク140に貯留した洗浄水を、洗浄水ノズル145を介して被試験体160に散布することにより、被試験体160の表面に付着した塩分を除去する。
以下、大気腐食試験の工程について説明する。
図8は、大気腐食試験方法の工程を示したものである。
本図において、大気腐食試験方法は、塩分付着工程210と、排気工程215と、乾湿繰り返し工程220(乾湿循環工程)と、洗浄工程230とから構成されている。さらに、塩分付着工程210は、噴霧準備工程211と噴霧工程212とから構成され、乾湿繰り返し工程220は、乾燥工程221と湿潤工程222とを所定のサイクルで繰り返す工程である。
本実施例の大気腐食試験方法においては、塩分付着工程210、乾湿繰り返し工程220及び洗浄工程230を所定のサイクルで繰り返した。具体的には、乾湿繰り返し工程220を4週間行い、その中で、週2回の頻度で塩分付着工程210と洗浄工程230とを行った。言い換えると、1回目の塩分付着工程210の後、約3日間の乾湿繰り返し工程220を行い、その後、洗浄工程230を行い、2回目の塩分付着工程210、約3日間の乾湿繰り返し工程220を行い、さらに、2回目の洗浄工程230を行い、3回目の塩分付着工程210、約3日間の乾湿繰り返し工程220を行い、これらを繰り返した、ということができる。
噴霧準備工程211においては、恒温恒湿槽110を稼働して恒温恒湿槽110内の温湿度を一定にした。本実施例においては、温湿度を温度が40℃±1℃、相対湿度が35%RH±3%とした。事前の検討により、稼働開始から20分ほどで温湿度が一定になったため、余裕をみて、それよりも長い30分以上稼働した。
噴霧工程212においては、塩水ノズル125により、塩水の霧を発生させて被試験体160に塩分を付着させた。事前の検討により、付着塩分量は噴霧時間に比例して大きくなることが判っており、本実施例においては、噴霧時間を1m2当たり1g(1グラム)の塩分を試験片に付着させることができる12分とした。噴霧工程212の直後は、恒温恒湿槽110内に塩水の霧が残留して被試験体160に付着し続ける。
残留した塩水の霧の付着は、付着塩分量のばらつきの原因となるため、噴霧工程212の後は、速やかに排気部130を稼働する排気工程215を実施し、恒温恒湿槽110内に残留した塩水の霧を除去した。ここで、被試験体160の1つを回収し、付着した塩分の粒子を観察した結果、塩分の粒子の大きさは平均で25μmであった。また、速やかに排気部130を稼働することにより、恒温恒湿槽110の内部の温度及び相対湿度をステップ状に変化させることができる。
続く乾湿繰り返し工程220においては、塩分を付着した被試験体160に対して、乾燥工程221と、湿潤工程222とを繰り返した。本実施例においては、1サイクルあたり時間を8h(hour)とした。
すなわち、乾燥工程221は、温度を60℃、相対湿度を35%、保持時間を3hとし、湿潤工程222は、温度を40℃、相対湿度を95%、保持時間を3hとした。さらに、乾燥工程221から湿潤工程222への移行時間、湿潤工程222から乾燥工程221への移行時間をそれぞれ1hとした。
ここで、1回目の乾燥工程221は、塩分付着工程210が終了した後の乾湿循環工程220における最初の乾燥工程である。そして、1回目の乾燥工程221の直後に行う湿潤工程222は、1回目の湿潤工程である。
本実施例の腐食試験方法による試験結果を実環境での腐食の結果と比較し、腐食形態が一致していることを確認した。
図9は、大気腐食試験方法を洗浄工程のみを手動で行い、他の工程を装置内で実施する半自動装置の構成を示したものである。
大気腐食試験装置1は、恒温恒湿槽110と、ポンプ115と、塩水タンク120(塩水貯留部)と、塩水ノズル125(塩霧供給部)と、排気部130とを含む構成である。実施例1と異なる点は、洗浄水タンク140と、洗浄水ノズル145と、温風乾燥部150とを設けていない点である。
本実施例においては、形状が70×70×3mmのアルミニウム合金を用いた。
続いて、本実施例における大気腐食試験方法の手順について図8を併用して説明する。実施例1で説明した内容については一部省略し、以下では、主として実施例1と異なる点を説明する。
本実施例の大気腐食試験方法においては、乾湿繰り返し工程を12週間行い、週2回の頻度で恒温恒湿槽110から取り出して洗浄工程230を行った。
噴霧準備工程211においては、恒温恒湿槽110を稼働させて温湿度を一定にした。本実施例においては、30分以上稼働させて温湿度を一定にした。本実施例においては、噴霧準備工程211にて保持する温湿度の温度を40℃±1℃、相対湿度を35%RH±3%とする条件aにより塩付着を行った。また、比較のため、温度を40℃±1℃、相対湿度を65%RH±3%とする条件b、温度を40℃±1℃、相対湿度を95%RH±3%とする条件cについても塩付着を行った。
噴霧工程212においては、塩水の霧を発生させて被試験体160に塩分を付着させた。事前の検討により、付着塩分量は、噴霧時間に比例して大きくなることが判っており、本実施例においては、1m2当たり1gの塩分を付着させるために、噴霧時間を12分とした。
噴霧工程212の後は、速やかに排気部130を稼働し、恒温恒湿槽110内に残留した塩水の霧を除去した。条件a、条件bおよび条件cのそれぞれについて塩分付着工程210を行い、それぞれ塩分の付着した被試験体160a、被試験体160bおよび被試験体160cを得た。条件aでの塩付着粒子の直径は平均で25μmであった。条件bでの塩付着粒子の直径は平均で50μm、条件cでの塩付着粒子の直径は平均で100μmであった。
以上より、温湿度を選定することにより、塩付着粒子の大きさを変えることを確認した。
続いて、乾湿繰り返し工程220は、塩分を付着させた被試験体160に対して、乾燥工程221と、湿潤工程222とを繰り返す。本実施例においては、1サイクルあたりの時間を8hとした。
乾燥工程221においては温度を35℃。相対湿度を40%、保持時間を1hとし、湿潤工程222においては温度を20℃、相対湿度を95%、保持時間を1hとした。さらに、乾燥工程221から湿潤工程222への移行時間、湿潤工程222から乾燥工程221への移行時間を1hとした。
さらに、洗浄工程230として、週に2回の頻度で被試験体160を取り出し、純水で水洗して、付着していた塩分を洗い流した。水洗後は、温風乾燥器で被試験体160に残留した洗浄水を除去し、再び塩分付着工程210を行った。
試験開始より12週経過後に被試験体160a、被試験体160bおよび被試験体160cを回収し、腐食の進行状態を比較した。
被試験体160aでは、僅かに金属光沢が残り、所々に白色の腐食生成物を伴う腐食が観察された。
被試験体160bでは、被試験体160aと同様に僅かに金属光沢が残り、所々に白色の腐食生成物を伴う腐食が観察された。被試験体160bでの白色の腐食生成物を伴う腐食は、被試験体160aのものと比較して大きかったが、被試験体160bの腐食の傾向は、被試験体160aと類似していた。
被試験体160cでは、金属光沢があって腐食されていない部分と、白色の腐食生成物を伴って腐食されている部分との差が明瞭であった。被試験体160cの腐食形態は、被試験体160aや被試験体160bと明らかに異なっていた。
被試験体160a、被試験体160bおよび被試験体160cの腐食の様子を実環境での腐食の様子と比較したところ、最も類似していたのは被試験体160aであった。一方、被試験体160cは明らかに異なっていた。
図1は、大気腐食試験方法の一連の工程を自動で実施する装置の構成を示したものである。
本図においては、塩水ノズル125から供給する塩霧の量(体積)は、積算流量計170(流量測定部)で計測し、予め設定した体積に達した時点で開閉弁180を閉止し、塩水の噴霧を停止することができる構成としている。また、恒温恒湿槽110の内部には、洗浄水タンク140と温風乾燥部150とを設けている。本図は、恒温恒湿槽110の内部に被試験体160を設置した状態を示している。
実施例1で説明した内容については一部省略し、以下では、主として実施例1と異なる点を説明する。
恒温恒湿槽110は、実施例1と同様に、槽内の温度と湿度とを独立に制御でき、かつ、温度と湿度とを組み合わせた複数の条件を連続的に変化させるプログラム機能を有する。
本実施例においては、洗浄水としてイオン交換水を使用した。温風乾燥部150は、被試験体160に温風を吹き付け、残留した洗浄水を除去する。
本実施例においては、被試験体160として、形状が70×70×1mmの亜鉛めっき鋼板を用いた。
実際の腐食試験に先立ち、先ず始めに、所定の粒径の塩粒子を所定量付着させるための恒温恒湿槽110の温度、湿度、及び塩分の付着体積の条件を見出しておく。本実施例においては、亜鉛めっき鋼板の表面に付着する塩粒子の粒径の中心が約20μm、付着量が1g/m2となる条件として、温度40℃、相対湿度35%、噴霧体積50ml(ミリリットル)に設定した。
この設定条件に基づき、本実施例の大気腐食試験方法における塩分付着工程の手順を図2に示す。
塩分付着工程においては、先ず、予め見出した塩分付着量を試験装置の制御部に入力する。ここでは、塩分付着量としてVset=50mlを入力した(S310)。実際に塩分を付着する工程においては、試験槽内の温度が40℃、相対湿度が35%に到達したことを検知して(S320)、開閉弁180を開放して塩分の付着を開始する(S330)。そして、塩分付着開始と同時に積算流量計170で塩水の体積Vmの計測を開始して塩分付着量の監視を行い(S340)、予め設定したVsetに達したか否かを判定する(S350)。VmがVsetに達した時点で開閉弁180を閉止し、塩分の付着を終了する(S360)。
本図に示す手順を繰り返すことにより、塩分付着工程ごとの塩分付着量のばらつきが抑制され、腐食試験の再現性が高まることを確認した。
図3は、本実施例における変形例である試験装置の構成を示したものである。
本図に示す大気腐食試験装置1は、基本的な構成は、図1と同様であるが、塩水タンク120の内部に塩水の体積を計測するための塩水タンク水位計121(塩水量測定部)が設置してある。この塩水タンク水位計121の変化量から塩霧の体積を計測し、予め設定した体積に達した時点で開閉弁180を閉止することにより、塩水の噴霧を停止することができる構成としている。
本図の構成の大気腐食試験装置1を用いた場合も、本実施例に示す塩水の体積計測に基づく塩分付着を制御することができ、塩分付着工程ごとの塩分付着量のばらつきを抑制することができ、腐食試験の再現性を高めることができた。
図4は、大気腐食試験方法の一連の工程を自動で実施する装置の構成を示したものである。
本図において図1の構成と異なる点は、塩水ノズル125から供給した塩霧のうち、被試験体160に付着した塩霧の質量を被試験体160に隣接して設置した水晶振動子型質量センサ190(塩分付着量測定部)で計測し、予め設定した付着質量に達した時点で開閉弁180を閉止し、塩水の噴霧を停止することができる構成としている点である。
恒温恒湿槽110は、槽内の温度と湿度とを独立に制御でき、かつ、温度と湿度とを組み合わせた複数の条件を連続的に変化させるプログラム機能を有する。
本実施例においては、洗浄水としてイオン交換水を使用した。温風乾燥部150は、被試験体160に温風を吹き付け、残留した洗浄水を除去する。
本実施例においては、被試験体160として、形状が70×70×3mmのアルミニウムダイキャスト板を用いた。
先ず始めに、所定の粒径の塩粒子を所定量付着させるための恒温恒湿槽110の温度、湿度、及び塩分の付着体積の条件を見出しておく。本実施例においては、アルミニウムダイキャスト板表面に付着する塩粒子の粒径の中心が約35μmとなる条件として、温度65℃、相対湿度65%に設定した。
この設定条件に基づき、本実施例の大気腐食試験方法における塩分付着工程の手順を図5に示す。
塩分付着工程においては、先ず、予め見出した塩分付着量を試験装置の制御部に入力する。ここでは、塩分付着量としてMset=0.1g/m2を入力した(S410)。この付着量に相当する水晶振動子型質量センサ190の周波数変化量Fset(Hz)を算出する(S415)。実際に塩分を付着する工程においては、試験槽内の温度が65℃、相対湿度が65%に到達したことを検知して(S420)、水晶振動子型質量センサ190の周波数の初期値Fini(Hz)を計測する(S425)。
次に、開閉弁180を開放して塩分の付着を開始する(S430)。塩分付着開始と同時に水晶振動子型質量センサ190の周波数Fmの計測を開始して塩分付着量の監視を行い(S440)、周波数の変化量Fini−Fmを算出し、予め設定したFset(Hz)に達したか否かを判定する(S450)。Fini−FmがFsetに時点で開閉弁180を閉止し、塩分の付着を終了する(S460)。
本図に示す手順を繰り返すことにより、塩分付着工程ごとの塩分付着量のばらつきが抑制され、腐食試験の再現性が高まることを確認した。
なお、本実施例においては、塩分付着量測定部としては、水晶振動子型質量センサ190を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、被試験体160の塩分付着量が測定可能なセンサであれば測定方式等はどのようなものであってもよい。
図6は、図4に示す本発明の大気腐食試験方法の実施装置を用いて、実際に試験片の表面に付着した塩分の付着量を検証する手順を示したものである。
塩分付着工程においては、先ず、塩分付着量を試験装置の制御部に入力する。ここでは、塩分付着量としてMset=1g/m2を入力した(S510)。この付着量に相当する水晶振動子型質量センサ190の周波数変化量Fset(Hz)を算出する(S515)。実際に塩分付着させる工程においては、試験槽内の温度が40℃、相対湿度が35%に到達したことを検知して(S520)、水晶振動子型質量センサ190の周波数の初期値Fini(Hz)を計測する(S525)。
次に、開閉弁180を開放して塩分の付着を開始する(S530)。塩分付着開始と同時に水晶振動子型質量センサ190の周波数Fmの計測を開始して塩分付着量の監視を行い(S540)、周波数の変化量Fini−Fmを算出し、予め設定したFset(Hz)に達したか否かを判定する(S550)。Fini−FmがFsetに時点で開閉弁180を閉止し、塩分の付着を終了する(S560)。
次に、再度、試験槽内の温度を40℃、相対湿度を35%に制御し、条件に到達した時点で(S570)、水晶振動子型質量センサの周波数Ffin(Hz)を計測し(S580)、周波数の変化量Fini−Ffinから実際に試験片の表面に付着した付着塩分量Mobsを換算した(S590)。これにより、試験片の表面に付着した塩分質量を検証した。
本実施例の手順を繰り返すことにより、塩分付着工程ごとの塩分付着量のばらつきが抑制され、かつ、実際の付着量を検証し、腐食試験の再現性が高まることを確認した。