JP2013133360A - 無機膜および多層構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高湿度条件下でのガスバリア性に優れる無機膜および多層構造体を提供する。
【解決手段】無機層状化合物と樹脂とを含有する無機膜であって、該無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像を、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行い、次いで、該画像処理後の観察像の任意の5箇所以上において、それぞれ無機膜の厚み方向に平行に、無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って、それぞれ線分析を行った結果から得られる各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差の平均値が15以下である無機膜。
【選択図】図3

Description

本発明は、無機膜および多層構造体に関するものである。
従来から、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる成形体は、食品分野、化粧品分野、農薬分野、医療分野等の分野で、包装材料として用いられている。熱可塑性樹脂製成形体を包装材料として用いる場合には、内容物が酸素により劣化することを防ぐため、ガスバリア性が求められることが多い。ガスバリア性を有する包装材料として、例えば特許文献1には、ポリビニルアルコールと無機層状化合物である合成ヘクトライトと水とを含む分散液を基材フィルム上に塗布後、乾燥して得られる多層フィルムが記載されている。
特開平03−30944号公報
しかしながら上記フィルムは、高湿度条件下でのガスバリア性が不十分であることがあった。
本発明は、高湿度条件下でのガスバリア性に優れる無機膜および多層構造体を提供する。
すなわち本発明は、無機層状化合物と樹脂とを含有する無機膜であって、該無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像を、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行い、次いで、該画像処理後の観察像の任意の5箇所以上において、それぞれ無機膜の厚み方向に平行に、無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って、それぞれ線分析を行った結果から得られる各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差の平均値が15以下である無機膜である。
本発明の無機膜および多層構造体は、高湿度条件下でのガスバリア性に優れるものである。
無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像の一例である。 各濃淡の度合いに対する度数分布図の一例である。 実施例1で得られた多層構造体(1)に含まれる無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像 比較例1で得られた多層構造体(2)に含まれる無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像
[無機層状化合物]
本発明の無機膜は無機層状化合物と樹脂とを含む。該無機層状化合物としては、溶媒への膨潤性、劈開性を有する粘土鉱物が好ましく用いられる。無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を形成している物をいう。層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス等の弱い結合力によってほぼ平行に積み重なった構造をいう。無機層状化合物の中でも特に溶媒への膨潤性を持つ粘土鉱物が好ましく用いられる。
粘土鉱物は、一般に(i)シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、(ii)シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を両側から挟んでなる3層構造を有するタイプに分類される。(i)の2層構造タイプの粘土鉱物としては、カオリナイト族およびアンチゴライト族等の粘土鉱物が挙げられる。(ii)の3層構造タイプの粘土鉱物としては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、およびマイカ族等の粘土鉱物が挙げられる。
これらの粘土鉱物としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等が挙げられる。また、これら粘土鉱物を有機物でイオン交換等の処理し、分散性等を改良したもの(朝倉書店、「粘土の事典」参照;以下、有機修飾粘土鉱物と称する場合もある)も無機層状化合物として用いることができる。粘土鉱物を処理する前記有機物としては、公知のジメチルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩やフォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩等を用いることができる。
上記粘土鉱物の中でもスメクタイト族、バーミキュライト族およびマイカ族の粘土鉱物が好ましく、スメクタイト族が特に好ましい。スメクタイト族としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライトが挙げられる。とりわけモンモリロナイトが好ましく用いられる。
上記無機層状化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
該無機層状化合物のアスペクト比は、ガスバリア性が向上するという観点から、20以上のものが好ましく、100以上のものがより好ましく、200以上のものがさらに好ましく用いられる。また、膨潤し劈開させやすく、ガスバリア性が向上するという観点から、該無機層状化合物のアスペクト比は、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、3000以下であることがさらに好ましい。なお、無機層状化合物のアスペクト比とは、該無機層状化合物と、無機層状化合物を膨潤かつ劈開させる液体媒体とを含む無機層状化合物分散液中での値である。
該無機層状化合物は、ガスバリア性、透明性、製膜性が向上するという観点から、平均粒径が10μm以下であることが好ましい。特に透明性が求められる用途では1μm以下であることが好ましい。
本発明において、無機層状化合物のアスペクト比(Z)は、式:Z=L/aで定義される。式中、Lは無機層状化合物の平均粒径であり、aは、無機層状化合物の単位厚さ、即ち、無機層状化合物の単位結晶層の厚みを示し、粉末X線回析法(「機器分析の手引き(a)」(1985年、化学同人社発行、塩川二朗監修)69頁参照)により求められる。
無機層状化合物の平均粒径とは、液体媒体中の回折/散乱法により求めた粒径(体積基準のメジアン径)である。すなわち、無機層状化合物の分散液に光を通過させたときに得られる回折/散乱パターンから、ミー散乱理論等により、上記回折/散乱パターンに最も矛盾のない粒度分布を計算することにより求めることができる。具体的には、例えば粒度分布の測定範囲を適当な区間に分け、それぞれの区間について、代表粒子径を決定し、本来連続的な量である粒度分布を離散的な量に変換させて計算する方法が挙げられる。
無機層状化合物としては、具体的には、下記の膨潤性試験による膨潤値が5以上のものが好ましく、膨潤値が20以上のものがより好ましい。また、下記の劈開性試験による劈開値が5以上のものが好ましく、劈開値が20以上のものがより好ましい。
〔膨潤性試験〕
100mlメスシリンダーに液体媒体100mlを入れ、これに無機層状化合物2gを徐々に加える。23℃にて24時間静置後、上記メスシリンダー内における無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(膨潤値)が大きい程、膨潤性が高いことを示す。
〔劈開性試験〕
無機層状化合物30gを液体媒体1,500ml中に徐々に加え、分散機(浅田鉄工株式会社製、デスパMH−L、羽根径52mm、回転数3,100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて、周速8.5m/分、23℃で90分間分散させた後、この分散液100mlをメスシリンダーに採取する。60分静置後、上記メスシリンダー内における層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(劈開値)が大きい程、劈開性が高いことを示す。
無機層状化合物は通常、層間に陽イオンを有する。該陽イオンは通常ナトリウムイオンであるが、本発明の無機層状化合物は、層間に水素イオン、アンモニウムイオン、およびリチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを含むものであることが好ましい。
無機層状化合物中のナトリウムイオン濃度は、無機層状化合物1gあたり、400μmol/g以下であることが好ましく、300μmol/g以下であることがより好ましく、100μmol/g以下であることがさらに好ましい。
また、無機層状化合物中の水素イオンとアンモニウムイオンとリチウムイオンとの合計の濃度が、400μmol/g以上であることが好ましく、無機層状化合物1gあたり、500μmol/gであることがより好ましく、600μmol/gであることがさらに好ましい。
得られる無機膜の高湿度条件下でのガスバリア性がより優れるという観点から、さらに好ましくは、ナトリウムイオン濃度が前記した条件を満たし、かつ水素イオンとアンモニウムイオンとリチウムイオンの合計の濃度が、前記した条件を満たすことである。
層間に水素イオン、アンモニウムイオン、およびリチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを含む無機層状化合物は、後述の方法により無機層状化合物の層間に含まれるナトリウムイオンを水素イオン、アンモニウムイオン、リチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンに交換することにより得られる。また、無機層状化合物の層間の陽イオン濃度もイオン交換処理を行うことにより、調製できる。イオン交換処理とは、例えば水素イオン、アンモニウムイオン、リチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを有するイオン交換樹脂と、層間の陽イオンがナトリウムイオンである無機層状化合物および液体媒体を含む分散液とを接触させた後に、イオン交換樹脂の残渣を取り除く方法や、層間の陽イオンがナトリウムイオンである無機層状化合物および液体媒体を含む分散液を、半透膜を介して、水素イオン、アンモニウムイオン、リチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを含有する液と接触させ、圧力差あるいは電気透析を利用してイオン交換する方法が挙げられる。イオン交換処理を行う場合の上記分散液は後述の樹脂を含んでいても良い。
無機層状化合物中の陽イオンの定性および定量方法については、該陽イオンが、ナトリウムイオン、リチウムイオン等の金属イオンである場合は、誘導結合プラズマ発光分析装置を用いて測定を行う。該誘導結合プラズマ発光分析装置を用いて測定したナトリウム濃度、リチウム濃度等の金属濃度を、それぞれナトリウムイオン濃度、リチウムイオン濃度とする。また該陽イオンがアンモニウムイオン等の非金属イオンである場合は、キャピラリー電気泳動法により求めることができる。また水素イオンについては、イオン交換前の無機層状化合物中の陽イオン濃度と、イオン交換後の無機層状化合物中の陽イオン濃度との差により求めることができる。また無機層状化合物を含有する分散液が入手できる場合は、該無機層状化合物分散液から液体媒体を除去した試料を用いて各イオン濃度を測定することができる。また無機膜中の陽イオンの定性および定量方法については、例えば無機膜全体の各イオン濃度を測定し、そこから樹脂に含まれる陽イオン濃度を差し引く方法などにより各イオン濃度を求めることができる。
[樹脂]
本発明の無機膜に含まれる樹脂としては、無機膜および後述の多層構造体のガスバリア性を高くするという観点から、該樹脂は、該樹脂のみからなる厚さ25μmのフィルムを用いて、23℃、0%RHの条件下で酸素透過度を測定した場合に、1000cc/m2・day・atm以下となる樹脂が好ましい。また樹脂のみからなるフィルムを作製することが困難な場合には、他の樹脂からなる酸素透過度が既知の基材フィルム上に、酸素透過度を測定したい樹脂からなる層を形成して積層フィルムを調製し、この積層フィルムの酸素透過度を測定する。以下の式により基材フィルム上に形成した樹脂層の酸素透過度を求める。
1/P=(1/P1)+(1/P2)
P :積層フィルムの酸素透過度(cc/m2・day・atm)
P1:基材フィルムの酸素透過度(cc/m2・day・atm)
P2:樹脂層の酸素透過度(cc/m2・day・atm)
具体的には、基材フィルムには厚さ25μmのPETフィルムを用い、該基材フィルム上に、酸素透過度を測定したい樹脂からなる層を形成して酸素透過度を測定し、樹脂層25μmあたりの酸素透過度を算出する。
当該樹脂のみからなる厚さ25μmのフィルムを用いて、23℃、0%RHの条件下で酸素透過度を測定した場合に、1000cc/m2・day・atm以下となる樹脂としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、多糖類、イミド樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリル酸およびそのエステル類、ポリメタアクリル酸およびそのエステル類、後述の2種類以上の官能基を有する樹脂、後述の熱反応性組成物が反応してなる樹脂などが挙げられる。
ポリビニルアルコールとは、ビニルアルコールのモノマー単位を主成分として有するポリマーである。このような「ポリビニルアルコール」としては、例えば、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解して得られるポリマー(正確にはビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体となったものや、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、t−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等を加水分解して得られるポリマーが挙げられる(「ポリビニルアルコール」の詳細については、例えば、ポバール会編、「PVAの世界」、1992年、(株)高分子刊行会;長野ら、「ポバール」、1981年、(株)高分子刊行会を参照することができる)。ポリビニルアルコールにおける「けん化」の程度は、70モル%以上が好ましく、85モル%以上のものがより好ましく、98%モル以上のいわゆる完全けん化品がさらに好ましい。また、重合度は、100以上5000以下、200以上3000以下であることがより好ましい。
また、ポリビニルアルコールとして、水酸基以外の官能基を有するいわゆるポリビニルアルコール誘導体も使用でき、水酸基以外の官能基として例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基、シリル基、シロキサン基、アルキル基、アリル基、フルオロアルキル基、アルコシキ基、カルボニル基、ハロゲン基等が例示できる。PVA中の水酸基の一部がこれら官能基の1種または2種以上と置き換わっていてもよい。
多糖類とは、種々の単糖類の縮重合によって生体系で合成される生体高分子であり、ここではそれらをもとに化学修飾したものも含まれる。たとえば、セルロースおよびヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、などが挙げられる。
イミド樹脂とは、分子内の繰り返し単位にイミド結合を有する樹脂であり、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドを指し、具体的にはポリアミック酸を脱水、環化反応して得られる樹脂である。
アミド樹脂とは、分子内の繰り返し単位にアミド結合を有する樹脂であり、脂肪族骨格を有する脂肪族ポリアミドあるいは芳香族骨格を有する芳香族ポリアミドが挙げられる。脂肪族ポリアミドとしては、例えばε-カプロラクタムの重縮合反応物、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共縮重合物が挙げられる。また芳香族ポリアミドとしてはp-フェニレンジアミンとテレフタル酸クロリドとの共縮重合物、m-フェニレンジアミンとイソフタル酸クロリドとの共縮重合物などが挙げられる。
2種類以上の官能基を含む樹脂とは、一分子中に2種類以上の官能基を含む樹脂であってもよいし、第1の官能基を含む樹脂と第2の官能基を含む樹脂との混合物であってもよい。
2種類以上の官能基を含む樹脂に含まれる官能基は水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシレート基、アンモニウム基からなる群より選ばれる2種以上の官能基であり、また該官能基同士が共有結合性、あるいはイオン結合性の結合をし得る樹脂である。
一分子中に2種類以上の官能基を含む樹脂としては、ビニルアルコール−アクリル酸共重合体、ビニルアルコール−メタアクリル酸共重合体、ビニルアルコール−ビニルアミン共重合体、アクリル酸−ビニルアミン共重合体、メタアクリル酸−ビニルアミン共重合体等の共重合体、また上記ポリビニルアルコール誘導体あるいは多糖類のうち、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシレート基、アンモニウム基からなる群より選ばれる官能基を有する樹脂が挙げられる。
また2種類以上の官能基を含む樹脂が、第1の官能基を含む樹脂と第2の官能基を含む樹脂との混合物である場合、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、多糖類、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物、ポリメタアクリル酸部分中和物、ポリビニルアミン等のうち、2種類以上の組み合わせが挙げられる。
該2種類以上の官能基を含む樹脂としては、水系の液体媒体に容易に溶解させることができ、取り扱いが容易であることや、無機膜または多層構造体のガスバリア性の観点から、官能基として水酸基とカルボキシル基とを含む樹脂であることが好ましい。一分子中に水酸基とカルボキシル基とを含む樹脂である場合、ビニルアルコール−アクリル酸共重合体、ビニルアルコール−メタアクリル酸共重合体であることが好ましく、また水酸基を含む樹脂とカルボキシル基を含む樹脂との混合物である場合、水酸基を含む樹脂としてポリビニルアルコール、カルボキシル基を含む樹脂としてポリアクリル酸またはポリメタアクリル酸またはポリアクリル酸部分中和物またはポリメタアクリル酸部分中和物であることが好ましい。
前記カルボキシル基を含む樹脂は、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物、ポリメタアクリル酸部分中和物から選択される1種以上の樹脂であることが好ましい。またアクリル酸とメタアクリル酸との共重合体も使用できる。上記カルボキシル基を含む樹脂の平均分子量は、2000〜1000000の範囲が好ましく、より好ましくは100000〜1000000が好ましい。
ポリアクリル酸部分中和物またはポリメタクリル酸部分中和物は、通常、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の水溶液にアルカリを添加することにより得ることができる。ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸とアルカリの量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。ポリアクリル酸部分中和物およびポリメタクリル酸部分中和物は、ガスバリア性や透明性の点から、以下の式により算出される中和度が0.1%〜20%であることが好ましい。
中和度=(A/B)×100
A:ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸1g中に含まれる中和されたカルボキシル基の全モル数
B:ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸1g中に含まれる中和前のカルボキシル基の全モル数
該水酸基とカルボキシル基とを含む樹脂中の、水酸基とカルボキシル基のモル比は、水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5であることが好ましく、より好ましくは70:30〜95:5である。また、特に高湿度条件下でのガスバリア性に優れる無機膜または多層構造体とするためには、該樹脂に含まれる水酸基およびカルボキシル基の合計重量が30〜60%であることが好ましく、より好ましくは35〜55%である。前記水酸基およびカルボキシル基の合計重量は、該樹脂の重量を100重量%としたときの値である。
該水酸基とカルボキシル基とを含む樹脂中の水酸基とカルボキシル基とのモル比は、公知のNMR法、IR法等により求めることができる。例えばIR法であれば、水酸基とカルボキシル基のモル比が既知のサンプルを用い、検量線を求め、算出することができる。またビニルアルコール単一重合体と、アクリル酸単一重合体および/またはメタアクリル酸単一重合体を用いる場合は、予めその重量から水酸基およびカルボキシル基のモル数を求め、モル比を算出することができる。該樹脂に含まれる水酸基およびカルボキシル基の合計重量測定については、モル比と同様、公知のNMR法、IR法等にて求めることができる。例えばIR法であれば、ポリオールユニット数が既知であるポリオール重合体および、ポリカルボン酸ユニット数が既知であるポリカルボン酸重合体について検量線を求め、算出することができる。またビニルアルコール単一重合体と、アクリル酸単一重合体および/またはメタアクリル酸単一重合体を用いる場合は、予めその重量から水酸基およびカルボキシル基の重量を求め、この合計量を用いることができる。
該樹脂が、水酸基およびカルボキシル基を含む樹脂である場合、本発明の無機膜または多層構造体の耐水性の点から、アルカリ金属イオンを含むことが好ましい。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。該樹脂の重量を100%とするとき、2000〜50000ppmであることが好ましく、より好ましくは2000〜20000ppmである。
前記アルカリ金属イオンは、アルカリ金属イオン供与化合物に由来する。すなわち該樹脂が水酸基およびカルボキシル基を含む樹脂である場合、アルカリ金属イオン供与化合物を含むことが好ましい。アルカリ金属イオン供与化合物としては、水酸化ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等が挙げられる。また、無機層状化合物としてモンモリロナイトを用いる場合には、該モンモリロナイトの層間にナトリウムイオンが含まれるため、モンモリロナイトがアルカリ金属イオン供与化合物として作用する。したがって、無機層状化合物として、モンモリロナイトを用いることがとりわけ好ましい。またアルカリ金属イオン供与化合物として、2種類以上を併用してもよい。
また本発明の樹脂として熱反応性組成物が反応してなる樹脂であってもよい。該熱反応性組成物とは、常温では液状、半固形状または固形状等であって常温下または加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質であるが、加熱処理により硬化反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成し得る組成物である。本発明で用いる熱反応性組成物は、後述の加熱処理前では溶剤に可溶であり、加熱処理することによって形成される無機膜が、溶剤に不溶であるものが好ましい。
熱反応性組成物としては、互いに反応する2種類以上のモノマーを含む組成物や、加熱により重合してポリマーを形成するモノマーと、重合開始剤とを含む組成物等が挙げられる。
互いに反応する2種類以上のモノマーを含む組成物としては、水酸基を含むモノマーとカルボキシル基を含むモノマーとを含む組成物、また水酸基を含むモノマーとイソシアネート基を含むモノマーとを含む組成物が挙げられる。水酸基を含むモノマーとイソシアネート基を含むモノマーとを含む組成物が反応してなる樹脂としては、ウレタン樹脂が挙げられる。
加熱により重合してポリマーを形成するモノマーとしては、エポキシ系化合物、(メタ)アクリロイル系化合物、アリル系化合物、ビニル系化合物が挙げられる。
熱反応性組成物は、エポキシ系化合物と重合開始剤とを含む組成物か、水酸基を含むモノマーとカルボキシル基を含むモノマーとを含む組成物であることが好ましい。
上記エポキシ系化合物とは、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物をいう。上記エポキシ系化合物中のエポキシ基の数としては、1分子当たり1個以上であることが好ましく、1分子当たり2個以上であることがより好ましい。ここで、1分子当たりのエポキシ基の数は、エポキシ系化合物中のエポキシ基の総数をエポキシ系化合物中の分子の総数で除算することにより求められる。
上記エポキシ系化合物としては、公知のエポキシ基を有する化合物を用いることができ、例えばビスフェノール型エポキシ系化合物、ノボラック型エポキシ系化合物、グリシジルエステル型エポキシ系化合物、グリシジルアミン型エポキシ系化合物、フルオレン型エポキシ系化合物が挙げられるが、分子内に芳香環を有するエポキシ系化合物であることが好ましい。またシルセスキオキサンユニット等のシロキサン結合を分子内に有するエポキシ系化合物も用いることができる。熱反応性組成物は、2種類以上のエポキシ系化合物を含んでいてもよい。
エポキシ系化合物用の重合開始剤としては、例えば、ビス(4−アミノシクロヘキシル)、メタンジアミノジフェニルスルホン、1,5−アザビシクロ−(4,3,0)−ノネン−7およびそれらの塩類等のアミン類;無水フタル酸、無水ドデセニルコハク酸等の酸無水物類;ビスフェノ−ルF、フェノ−ルノボラック等の多価フェノ−ル類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;上述のようなアミンのBF3錯体化合物;芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩及びホスホニウム塩等のブレンステッド酸塩類;アジピン酸ジヒドラジッド及びフタル酸ジヒドラジッド等の有機酸ヒドラジッド類;ジシアンジアミド類;アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びカルボキシル基含有ポリエステル等のポリカルボン酸類等が挙げられる。反応速度の点から、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素等を対アニオンとした、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等のイオン性熱潜在性カチオン重合開始剤;N−ベンジルフタルイミド、芳香族スルホン酸エステル等の非イオン熱潜在性カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。また該重合開始剤は、分子内にポリイミド骨格を有することが好ましい。ここでいうポリイミド骨格とは、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された構造をいう。重合開始剤は、2種類以上用いてもよい。
水酸基を含むモノマーと、カルボキシル基を含むモノマーとを含む組成物としては、例えば芳香族アルコールと芳香族カルボン酸とを含む組成物等が挙げられる。
具体的には、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせや、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸や、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせ、またこれらの芳香族ヒドロキシカルボン酸の一部を芳香族アミノカルボン酸に置き換えたもの、芳香族ジオールの一部を、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンおよび/または芳香族ジアミンに置き換えたもの、を用いることができるが、溶剤への溶解性など取り扱いの容易さから、(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と(2)芳香族ジカルボン酸と(3)芳香族ジアミン、水酸基を有する芳香族アミンあるいは芳香族アミノ酸、とを含むことが好ましい。
上記(1)で示される芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸などが挙げられるが、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を含むことが好ましい。またこれらを2種類以上用いても構わない。
上記(2)で示される芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられるが、イソフタル酸を含むことが好ましい。またこれらを2種類以上用いても構わない。
上記(3)で示される芳香族ジアミン、水酸基を有する芳香族アミンあるいは芳香族アミノ酸としては、例えば、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、アミノ安息香酸などが挙げられるが、4−アミノフェノールを含むことが好ましい。またこれらを2種類以上用いても構わない。
また上記(1)〜(3)は、エステル形成性誘導体を用いてもよい。カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基が、ポリエステルを生成する反応を促進するような、酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高い誘導体となっているもの、カルボキシル基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。フェノール性水酸基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。アミノ基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
熱反応性組成物が、芳香族アルコールと芳香族カルボン酸とを含む組成物である場合、下記に示す非プロトン性溶媒に可溶な範囲で、その一部をあらかじめ予備重合したものを用いても構わない。
非プロトン性溶媒しては、例えば、1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒、アセトニトリル、サクシノニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルフィド系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン酸系溶媒などが挙げられる。
熱反応性組成物が反応してなる樹脂が、芳香族アルコールと芳香族カルボン酸とを含む組成物の熱反応物である場合は、芳香族ジアミン由来の構造単位、水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位、芳香族アミノ酸由来の構造単位、または上記構造単位の2種以上を全構造単位に対して10〜35モル%含むことが好ましい。また該樹脂は、構造単位として以下の式(1)〜(3)で示される構造単位を含み、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%、式(2)で示される構造単位が35〜10モル%、式(3)で示される構造単位が35〜10モル%であることが好ましい。
式(1) −O−Ar1−CO−
式(2) −CO−Ar2−CO−
式(3) −X−Ar3−Y−
ここで、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、または4,4’−ビフェニレンを表わす。Ar2は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、または2,6−ナフタレンを表わす。Ar3は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表わす。Xは−NH−であり、Yは、−O−または−NH−を表わす。
[無機膜]
本発明の無機膜は、該無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像を、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行い、次いで、該画像処理後の観察像の任意の5箇所以上において、それぞれ無機膜の厚み方向に平行に、無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って、それぞれ線分析を行った結果から得られる各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差の平均値が15以下である。
透過型電子顕微鏡による断面観察は、図1の写真で示すように、無機層状化合物の1層1層が確認できる観察像が得られる倍率で行うことが好ましく、10万倍以上で行うことが好ましい。また無機膜の厚み方向の70%以上が納まる観察像を用いて、後述の画像処理および線分析を行う必要があり、無機膜の厚み方向全てが納まる観察像を用いることが好ましい。
該観察像を、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行う。グレースケールとは、画像を白から黒までの濃淡(明暗)だけで表現する手法であり、本願においては、256段階の濃淡に分類する。このような画像処理および後述の線分析としては、汎用の画像解析ソフトウェアを用いて行うことができ、例えば三谷商事(株)のWinROOF(登録商標)、アドビシステムズ社のAdobePhotoShop、Scion CorporationのScion Image、マジカルアート(株)のMagicalIP(登録商標)、ナノシステム(株)のNanoHunter(登録商標)等などを使用することができる。
次いで、グレースケールにて画像処理を行った観察像の任意の5箇所以上において、それぞれ無機膜の厚み方向に平行に、無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って線分析を行う。線分析とは、分析の対象とする直線に沿って、画像処理後の観察像の濃淡の度合いの分布を示す分析方法である。本発明では、グレースケールにて画像処理を行うことにより、濃淡の度合いは256段階に分類される。該線分析は、線分析の対象とする直線に沿って、0.1〜1nm間隔で濃淡の度合いの分布を示すように行うことが好ましい。
該線分析の結果から、各濃淡の度合いに対する度数分布を得ることができる。各濃淡の度合いに対する度数分布は、図2に示すように、横軸に濃淡(明暗)の度合いを示し、縦軸にその度数を示す度数分布図を作成するとわかりやすい。
本発明の無機膜は、上記各直線に沿って、それぞれ線分析を行った結果から得られる各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差の平均値が15以下であり、14以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましい。標準偏差を求めるにあたっては、少なくとも異なる5つの直線に沿って、それぞれ線分析を行い、それぞれ標準偏差を求め、その平均値を求めることとする。8つ以上の直線に沿って、それぞれ線分析を行うことが好ましい。
上記方法にて求めた標準偏差の平均値は、無機膜中の無機層状化合物の配向状態を示す指標であり、上記標準偏差の平均値が小さいほど、無機膜中の無機層状化合物1枚1枚が等間隔に、均一に存在し、無機膜の厚み方向に垂直に配向しているものが多いことを表す。上記標準偏差の平均値が15以下である無機膜は高湿度条件下でのガスバリア性に優れる。
本発明の無機膜に含有される無機層状化合物の含有量は、5〜95体積%であることが好ましい(ただし、無機膜に含有される無機層状化合物と樹脂との合計体積を100体積%とする)。該無機層状化合物の含有量は、無機膜のガスバリア性の点から10体積%より高いことが好ましく、15体積%より高いことがさらに好ましい。また無機膜の屈曲性の点から、無機層状化合物の含有量は90体積%より低いことが好ましく、80体積%よりも低いことがさらに好ましい。
[無機膜の製造方法]
本発明の無機膜は、上記無機層状化合物、樹脂および液体媒体からなる混合液を用いて製造することが好ましい。
該混合液に含まれる液体媒体としては、無機層状化合物を膨潤かつ劈開させる液体媒体を用いることが好ましい。
無機層状化合物を膨潤し劈開させる液体媒体としては、無機層状化合物が親水性の膨潤性粘土鉱物の場合には、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられるが、とりわけ水、アルコール、水−アルコール混合物が好ましい。
また、無機層状化合物が有機修飾粘土鉱物の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、メタクリル酸メチル、フタル酸ジオクチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、シリコンオイルなどを液体媒体として用いることができる。
該混合液の調製方法としては、例えば樹脂等を液体媒体に溶解あるいは分散させてなる樹脂含有液と、無機層状化合物を予め液体媒体に膨潤し劈開させた無機層状化合物分散液とを混合する方法、無機層状化合物を液体媒体に予め膨潤し劈開させた無機層状化合物分散液に樹脂等を直接混合する方法、樹脂含有液と無機層状化合物とを混合する方法があげられる。充分に膨潤し劈開させた無機層状化合物を樹脂中に均一に分散させることができるため、樹脂等を液体媒体に溶解あるいは分散させてなる樹脂含有液と、無機層状化合物を予め液体媒体に膨潤し劈開させた無機層状化合物分散液とを混合する方法が好ましい。
本発明の無機膜を得るために、上記混合液は、高圧分散処理を行って調製する。樹脂と無機層状化合物とを含む混合液を高圧分散処理してもよいし、予め高圧分散処理した無機層状化合物分散液と、樹脂とを上記の方法で混合してもよい。
該高圧分散処理は、高圧分散装置を用いて行う。高圧分散装置としては、例えば、ナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられる。高圧分散処理とは、上記混合液または無機層状化合物分散液を複数本の細管中に高速通過させた後に合流させて、混合液同士または無機層状化合物分散液同士、あるいは該混合液または無機層状化合物分散液と細管内壁とを衝突させることにより、混合液または無機層状化合物分散液に高剪断および/または高圧を付加する処理方法である。高圧分散処理では、混合液または無機層状化合物分散液を管径1μm〜1000μm程度の細管中に通過させ、このとき100kgf/cm2以上の最大圧力が印加されるように処理することが好ましい。最大圧力は500kgf/cm2以上であることがより好ましく、1000kgf/cm2以上であることが特に好ましい。また混合液または無機層状化合物分散液が細管内を通過する際、該液の最高到達速度は100m/s以上であることが好ましく、圧力損失による伝熱速度は100kcal/hr以上であることが好ましい。
上記混合液を用いて、無機膜を製造する場合、後述する基材の表面に、該混合液を用いて塗布膜を形成し、該塗布膜から液体媒体を除去して、基材と無機膜とからなる多層構造体を製造した後、該基材を除去する方法が好ましい。
除去可能な基材を構成する材料としては、銅、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
該塗布膜を形成する方法としては、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法等のグラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、ドクターナイフ法、ダイコート法、バーコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法、スピンコート法が挙げられる。均一な厚みの層を設けることができることからグラビア法、スピンコート法あるいはダイコート法を採用することが好ましい。なお、塗布膜は、基材表面の一部に形成してもよく、全面に形成してもよい。
塗布膜から液体媒体を除去するときの温度条件として、20〜150℃が好ましく、30〜140℃がより好ましく、40〜130℃がさらに好ましく、50〜120℃が最も好ましい。時間は通常0.1秒間〜24時間である。塗布膜から液体媒体を除去するときの水蒸気濃度は、好ましくは0〜50g/m3である。塗布膜から液体媒体を除去するときの熱源は熱ロール接触、熱媒接触(空気等)、赤外線加熱、マイクロ波加熱等が挙げられる。
基材を除去する方法としては、基材と無機膜を剥離する方法、基材を溶解する方法等が挙げられる。基材を溶解する方法としては、例えば基材が銅である場合、銅である基材と無機膜とからなる多層構造体を塩化第2鉄水溶液等に浸漬して、銅を溶解させることにより除去する方法が挙げられる。
該混合液には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を含有する混合液を塗布して、無機膜を形成することにより、混合液を均一に基材に塗布しやすくなる。界面活性剤の含有量は、通常、混合液100重量%中0.001〜5重量%である。界面活性剤の含有量が0.001重量%以上であると、混合液を均一に基材に塗布しやすく、界面活性剤の含有量が5重量%以下であると、ガスバリア性が良好であるため好ましい。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤など、界面活性剤を用いることができる。とりわけ炭素数6以上、24以下のアルキル鎖を有するカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体等のエーテル型の非イオン性界面活性剤(シリコーン系非イオン性界面活性剤)や、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド化合物等のフッ素型非イオン性界面活性剤(フッ素系非イオン性界面活性剤)を使用することが、混合液を均一に基材に塗布しやすいという観点から好ましい。
〔多層構造体〕
本発明の多層構造体は、上記無機膜と、該無機膜に隣接する隣接層を有するものである。隣接層とは、無機膜に隣接する層であり、本発明の多層構造体は、無機膜の一方の表面に隣接層を有する多層構造体であってもよいし、無機膜の両方の表面にそれぞれ隣接層を有する多層構造体であってもよい。無機膜の両方の表面にそれぞれ隣接層を有する多層構造体である場合は、二つの隣接層は同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
隣接層を構成する材料は、金属や、樹脂、木材、セラミック、ガラス等が挙げられる。また隣接層の形態は、紙や、布、不織布、フィルム等が挙げられる。
金属としては、銅、鉄、銀、アルミニウム、シリカ、チタン等が挙げられ、またこれらの合金も含まれる。隣接層が金属である場合は、他の層に金属が蒸着された層であってもよい。隣接層が、他の層に金属が蒸着された層である場合、蒸着される金属としては、アルミニウム、アルミナ、シリカが好ましい。
樹脂としては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、エチレン系共重合体、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ポリアリレート、アクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン系樹脂、疎水化セルロース系樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、水素結合性樹脂、カーボネート樹脂、サルホン樹脂、エーテルサルホン樹脂、エーテルエーテルケトン樹脂、フェニレンオキシド樹脂、メチレンオキシド樹脂、イミド樹脂等が挙げられる。
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等が挙げられる。
エチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはそのケン化物、エチレン−α・β不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α・β不飽和カルボン酸共重合体等が挙げられる。
エステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
アミド系樹脂としては、ナイロン−6(Ny−6)、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6−Ny)等が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
スチレン系樹脂としては、AS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
疎水化セルロース系樹脂としては、トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等が挙げられる。
塩素系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等が挙げられる。
水素結合性樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、セルロース誘導体等が挙げられ、このうち、樹脂単位重量あたりの水酸基の重量分率が20〜60%の割合を満たす重合体が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エチレンイミン樹脂、また前述の熱反応性組成物が反応してなる樹脂等が挙げられる。
光硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
本発明の多層構造体の隣接層が樹脂からなる場合には、隣接層は無延伸、一軸延伸、二軸延伸されたものであってもよい。
隣接層、無機膜、および後述の追加層には、これを他の層と積層するにあたり、コロナ処理、オゾン処理、電子線処理、イオン処理、シラン等のガスを用いたフレーム処理、常圧または減圧プラズマ処理等の表面処理を予め施していてもよい。また無機膜、後述の追加層についても上記表面処理を施してもよい。
本発明の多層構造体の隣接層を構成する材料が樹脂である場合、隣接層に含まれる樹脂と無機膜に含まれる樹脂とは、同じ樹脂であっても良く、また異なる樹脂であっても良い。
本発明の多層構造体は、無機膜および隣接層以外の追加層を有していてもよい。追加層は複数あってもよい。また、追加層は、隣接層に用いられた材料と同じ材料で構成されていてもよいし、無機膜とも隣接層とも異なる材料で構成されていてもよい。本発明の多層構造体が追加層を有する場合の構成としては、例えば
隣接層/無機膜/隣接層/追加層A(構成1)、
隣接層/無機膜/隣接層/追加層B/追加層C(構成2)、
追加層D/隣接層/無機膜(構成3)、
追加層E/隣接層/無機膜/隣接層/追加層F(構成4)、
が挙げられる。
また本発明の多層構造体は複数の無機膜を有していてもよい。本発明の多層構造体が複数の無機膜を有する場合の構成としては、例えば
隣接層/無機膜/隣接層/無機膜(構成5)、
隣接層/無機膜/隣接層/無機膜/隣接層(構成6)、
が挙げられる。
本発明の多層構造体は、無機層状化合物、樹脂および液体媒体からなる混合液を用いて、隣接層を表層として含む構造体の表面に塗布膜を形成し、該塗布膜から液体媒体を除去する方法、
上記混合液を用いて、基材の表面に塗布膜を形成し、該塗布膜から液体媒体を除去して、基材と無機膜とからなる多層構造体を製造した後、該基材を除去した後、無機膜の少なくとも一方の表面に隣接層を形成する方法、
予め製造した無機膜と隣接層とを貼り合せる方法が挙げられる。
本発明の多層構造体は、耐熱性の観点から、前記の熱反応性組成物が反応してなる樹脂を含有する隣接層を有することが好ましい。
また本発明の無機膜および多層構造体は耐水性およびガスバリア性をより向上するために、加熱処理を施すことが好ましい。
該加熱処理の条件としては、上記塗布膜から液体媒体を除去する温度よりも、高い温度で行うことが好ましい。また、100〜400℃であることが好ましく、120〜350℃であることがより好ましく、130〜350℃であることがさらに好ましい。また該加熱処理は、水蒸気濃度が50g/m3未満の雰囲気下で実施することが好ましい。加熱処理する時間は通常1秒間〜24時間である。該加熱処理に用いる熱源は、塗布膜から液体媒体を除去するときに用いる熱源を適用することができる。
また、本発明の無機膜または隣接層が、水酸基およびカルボキシル基を含む樹脂を含む場合、上記加熱処理後に、湿熱処理を施すことが好ましい。該湿熱処理とは100℃以上の温度で水蒸気濃度が290g/m3超の雰囲気下または80℃以上の水中で保持する処理である。湿熱処理する時間は、通常1秒間〜1時間である。100℃以上の温度で水蒸気濃度が290g/m3超の雰囲気下での処理の場合、温度は120〜200℃の範囲内が好ましく、水蒸気濃度は500〜20000g/m3の範囲内が好ましい。また80℃以上の水中で保持する処理の場合、水の温度は100℃以上であることが好ましく、120〜200℃の範囲内がより好ましい。
本発明の無機膜および多層構造体を構成する各層の厚みは特に限定されるものではない。本発明の無機膜および多層構造体をガスバリア材料として用いる場合、無機膜の厚みは通常1μm〜50μmである。上記した隣接層および追加層の厚みは通常0.01μm〜50μmである。
本発明の多層構造体を構成する各層は、必要に応じて紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
本発明の無機膜および多層構造体は、タイヤやねじ、液晶ディスプレイ用、有機EL用などフレキシブルディスプレイ用基板あるいは封止材といった光学部品部材、太陽電池あるいは色素増感太陽電池などの基板、封止材のような電子部品部材、また真空断熱材パネル等に用いることが出来る。
該無機膜および多層構造体を、例えばディスプレイ用基板として用いた場合、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に比べ、軽量化、大型化という要求にこたえることができ、形状の自由度が高く、曲面表示が可能である。さらにはロールツーロール方式が可能であることからガラスよりも生産性が良くコストダウンの点でも有利である。また従来のプラスチック等を用いた基板と比較して、水蒸気や空気のガスバリア性が高く、例えば液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまうといった問題を解決できる。
またシリコン型あるいは色素増感型太陽電池の基板用途として用いた場合、本発明の無機膜および多層構造体をバックシートあるいは前面板として用いれば、水蒸気や酸素等のガスが電極や半導体、色素、電解質に作用することで起こる光電変換特性の劣化を抑制することができる。また耐熱性にも優れることから、薄膜でシリコン層等を形成する場合にも好適に用いることができる。また電子部品部材として用いる場合、耐熱性に優れ、またエッチングの際の耐アルカリ性、耐酸性に優れることからプリント配線基板用途として用いる場合にも好適である。
真空断熱材パネル用途として外装に用いた場合、ガスバリア性に優れるため、長期間にわたって内部の真空度を保持できるとともに、アルミ箔等と比較して熱橋が起こりにくいため、断熱性に優れる。
また本発明の無機膜および多層構造体を包装材料として用いることにより、該包装材料で包装された内容物の酸素および水蒸気劣化を防ぐことができる。該多層構造体を包装材料として用いる場合、その用途としては、フィルム、袋、パウチ、ボトル、ボトルキャップ、カートン容器、カップ、皿、トレー、タンク、チューブ等が挙げられる。本発明の無機膜および多層構造体により包装される内容物としては、ケーキ、カステラ等の洋菓子、大福、もち等の和菓子、ポテトチップス等のスナック菓子等の菓子類、竹輪や蒲鉾等の水産加工品、味噌、漬物、蒟蒻、ミートボール、ハンバーグ、ハム・ソーセージ等の食品、コーヒー、茶、ジュース等の飲料品、牛乳、ヨーグルト等の乳製品、米飯、カレー等が例示される。また食料品以外に、洗剤、入浴剤、化粧品といったトイレタリー製品、ガソリン、水素ガス等の燃料、粉末剤、錠剤、点眼薬、輸液バック等の医薬品および医療機器、ハードディスク、シリコンウエハ等の電子部品および電子機器等の包装材料としても用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。各種物性の測定方法を以下に記す。
〔厚み測定〕
0.5μm以上の厚みは、デジタル厚み計(接触式厚み計、商品名:超高精度デシマイクロヘッド MH−15M、日本光学社製)を用いて測定した。0.5μm未満の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)の断面観察より求めた。
〔粒径測定〕
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA910、堀場製作所(株)製)を用いて測定した。後述の塗工液(1)および(2)をイオン交換水を用いて100倍以上に希釈し、該希釈液中の無機層状化合物の平均粒径を、フローセルにて光路長4mmで測定し、得られた平均粒径を無機層状化合物の平均粒径Lとみなした。
なお、該塗工液(1)および(2)を希釈せずに、該塗布液中の無機層状化合物の平均粒径をペーストセルにて光路長50μmで測定し、この平均粒径と、希釈液で求めた平均粒径Lの値とがほぼ一致したとき、該分散液中で無機層状化合物が充分に膨潤し劈開していると認定した。
〔アスペクト比計算〕
X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、無機層状化合物そのものについて粉末法による回折測定を行った。これにより無機層状化合物の単位厚さaを求め、上述の方法で求めた粒径Lを用いて、アスペクト比Zを、Z=L/aの式により算出した。
〔加熱処理〕
210mm×300mmの多層構造体を、150℃、水蒸気濃度5g/m3のオーブン中で60分間加熱処理した。
〔湿熱処理〕
小型レトルト高圧蒸気滅菌器(アルプ(株)社製 RK-3030)を用いて、210mm×300mmの多層構造体を120℃で所定時間、水蒸気雰囲気下で湿熱処理した。水蒸気濃度は1113g/m3であった。
〔乾燥処理〕
210mm×300mmの多層構造体を、23℃、50%RH雰囲気下で24時間静置した。
〔画像解析〕
多層構造体(1)および(2)について、TEMにより、多層構造体の厚み方向を含む断面の観察を50万倍で行い、断面観察像(1)および(2)を得た。該断面観察像を、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行い、次いで、該画像処理後の観察像の任意の8箇所において、それぞれ多層構造体の厚み方向に平行に、多層構造体に含まれる無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って、それぞれ線分析を行った。各線分析結果それぞれについて、各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差を求め、8つの標準偏差の平均値を求めた。
〔酸素透過率測定〕
JIS K7126に基づき、酸素透過率測定装置(OX−TRANML、MOCON社製)にて23℃、90%RHの条件下で測定を行った。
〔塗布液の作製〕
(1)塗工液(1)の作製
分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1300gと、ポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)130gとを混合し、低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で95℃に昇温した。該混合系を同温度で30分間攪拌してポリビニルアルコールを溶解させたのち、60℃に冷却し、ポリビニルアルコール水溶液を得た。該ポリビニルアルコール水溶液(60℃)を前記同様の条件で攪拌しながら、1−ブタノール122g、イソプロピルアルコール122gおよびイオン交換水520gを混合してなるアルコール水溶液を5分間かけて滴下した。滴下終了後、高速攪拌(3,000rpm、周速度=8.2m/分)に切り替え、該攪拌系に高純度モンモリロナイト(商品名:クニピアG;クニミネ工業(株)製、単位厚さa=1.22nm)82gを徐々に加え、添加終了後、60℃で60分間攪拌を続けた。その後、さらにイソプロパノール243gを15分間かけて加え、次いで該混合系を室温まで冷却し、粘土鉱物分散液(1)を得た。
この粘土鉱物分散液(1)に対し、非イオン性界面活性剤(ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体、商品名:SH3746、東レ・ダウコーニング(株)製)2.5gを低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)において添加し、その後系のpHが6となるようにH型イオン交換樹脂(デュオライト C255LFH;日本水研(株)製)を10g添加し、その後30分間攪拌し、混合液(1)を得た。その後、フィルター(フルイ目の開きが297μm)を用いて、該混合液(1)をろ過してイオン交換樹脂の残渣を除去し、pH=6の粘土鉱物分散液(2)を調製した。
別の分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1067gと、ポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製、平均分子量1,000,000)33gとを混合し、常温にて低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で樹脂成分(A3)溶液を作製した。
粘土鉱物分散液(2)2519gと樹脂成分(A3)溶液1100gを、低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)において徐々に混合して混合液とし、さらに該混合液を高圧分散装置1(商品名:ナノマイザー NMII−2000AR、吉田機械興業(株)製)を用いて、1000kgf/cm2の圧力条件で処理することにより、塗工液(1)を得た。該塗工液(1)中の劈開したモンモリロナイト平均粒径Lは450nmであった。粉末X線回折から得られる単位厚さa値は1.22nmであり、アスペクト比Zは370であった。
(2)塗工液(2)の作製
塗工液(1)の作製において、高圧分散装置1のかわりに高圧分散装置2(商品名:超高圧ホモジナイザーM110−E/H、Microfluidics Corporation 製)を用いたこと以外は同様にして塗工液(2)を得た。該塗工液(2)中の劈開したモンモリロナイト平均粒径Lは480nmであった。アスペクト比Zは390であった。
[実施例1]
厚さ15μmの二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム(商品名:ON−U;ユニチカ(株)製)の片面をコロナ処理したものを隣接層として用いた。該隣接層のコロナ処理面に、前述の塗工液(1)をテストコーター(康井精機製)を用いてマイクログラビア塗工法(グラビアロールの線数♯150(♯:GM)により、塗工速度3m/分でグラビア塗工して100℃で乾燥することにより、隣接層と無機膜とを有する多層構造体(1’)を得た。多層構造体(1’)に含まれる無機膜の厚みは0.1μmであった。得られた多層構造体(1’)を加熱処理した後、23℃、50%RH雰囲気下で24時間静置し、次いで60分間湿熱処理を行い、さらに乾燥処理を行い、多層構造体(1)を得た。該多層構造体(1)の酸素透過度を測定した。該無機膜中のナトリウム濃度は7000ppmであった。また多層構造体(1)について、TEM観察を行い(図3)、画像解析を実施した。結果を表1に示した。
[比較例1]
塗工液(1)のかわりに塗工液(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、隣接層と無機膜とを有する多層構造体(2’)を得た。多層構造体(2’)に含まれる無機膜の厚みは0.15μmであった。得られた多層構造体(2’)を加熱処理した後、23℃、50%RH雰囲気下で24時間静置し、次いで60分間湿熱処理を行い、さらに乾燥処理を行い、多層構造体(2)を得た。該多層構造体(2)の酸素透過度を測定し、以下の式1に従い無機膜の厚み0.1μmあたりの酸素透過度に換算した。結果を表1に示した。
(式1) P1=P2×(T1/0.1)
P1:無機膜の厚み0.1μmあたりの酸素透過度(cc/m2・day・atm)
P2:多層構造体の酸素透過度(実測値)
T1:多層構造体の無機膜の膜厚(μm)
なお隣接の酸素透過度は、無機膜の酸素透過度と比較して、著しく高いため、考慮していない。該無機膜中のナトリウム濃度は7000ppmであった。また多層構造体(2)について、TEM観察を行い(図4)、画像解析を実施した。結果を同様に表1に示した。
Figure 2013133360

Claims (4)

  1. 無機層状化合物と樹脂とを含有する無機膜であって、該無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像を、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行い、次いで、該画像処理後の観察像の任意の5箇所以上において、それぞれ無機膜の厚み方向に平行に、無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って、それぞれ線分析を行った結果から得られる各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差の平均値が15以下である無機膜。
  2. 該無機膜に含有される無機層状化合物の含有量が、5〜95体積%である(ただし、無機膜に含有される無機層状化合物と樹脂との合計体積を100体積%とする)請求項1に記載の無機膜。
  3. 該無機層状化合物が層間に水素イオン、アンモニウムイオン、およびリチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを含むものである請求項1または2に記載の無機膜。
  4. 請求項1〜3いずれか一項に記載の無機膜と、該無機膜に隣接する隣接層とを有する多層構造体。
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