JP2013133360A - 無機膜および多層構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】無機層状化合物と樹脂とを含有する無機膜であって、該無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像を、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行い、次いで、該画像処理後の観察像の任意の5箇所以上において、それぞれ無機膜の厚み方向に平行に、無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って、それぞれ線分析を行った結果から得られる各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差の平均値が15以下である無機膜。
【選択図】図3
Description
本発明の無機膜は無機層状化合物と樹脂とを含む。該無機層状化合物としては、溶媒への膨潤性、劈開性を有する粘土鉱物が好ましく用いられる。無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を形成している物をいう。層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス等の弱い結合力によってほぼ平行に積み重なった構造をいう。無機層状化合物の中でも特に溶媒への膨潤性を持つ粘土鉱物が好ましく用いられる。
上記無機層状化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
100mlメスシリンダーに液体媒体100mlを入れ、これに無機層状化合物2gを徐々に加える。23℃にて24時間静置後、上記メスシリンダー内における無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(膨潤値)が大きい程、膨潤性が高いことを示す。
無機層状化合物30gを液体媒体1,500ml中に徐々に加え、分散機(浅田鉄工株式会社製、デスパMH−L、羽根径52mm、回転数3,100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて、周速8.5m/分、23℃で90分間分散させた後、この分散液100mlをメスシリンダーに採取する。60分静置後、上記メスシリンダー内における層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(劈開値)が大きい程、劈開性が高いことを示す。
無機層状化合物中のナトリウムイオン濃度は、無機層状化合物1gあたり、400μmol/g以下であることが好ましく、300μmol/g以下であることがより好ましく、100μmol/g以下であることがさらに好ましい。
また、無機層状化合物中の水素イオンとアンモニウムイオンとリチウムイオンとの合計の濃度が、400μmol/g以上であることが好ましく、無機層状化合物1gあたり、500μmol/gであることがより好ましく、600μmol/gであることがさらに好ましい。
得られる無機膜の高湿度条件下でのガスバリア性がより優れるという観点から、さらに好ましくは、ナトリウムイオン濃度が前記した条件を満たし、かつ水素イオンとアンモニウムイオンとリチウムイオンの合計の濃度が、前記した条件を満たすことである。
層間に水素イオン、アンモニウムイオン、およびリチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを含む無機層状化合物は、後述の方法により無機層状化合物の層間に含まれるナトリウムイオンを水素イオン、アンモニウムイオン、リチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンに交換することにより得られる。また、無機層状化合物の層間の陽イオン濃度もイオン交換処理を行うことにより、調製できる。イオン交換処理とは、例えば水素イオン、アンモニウムイオン、リチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを有するイオン交換樹脂と、層間の陽イオンがナトリウムイオンである無機層状化合物および液体媒体を含む分散液とを接触させた後に、イオン交換樹脂の残渣を取り除く方法や、層間の陽イオンがナトリウムイオンである無機層状化合物および液体媒体を含む分散液を、半透膜を介して、水素イオン、アンモニウムイオン、リチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを含有する液と接触させ、圧力差あるいは電気透析を利用してイオン交換する方法が挙げられる。イオン交換処理を行う場合の上記分散液は後述の樹脂を含んでいても良い。
本発明の無機膜に含まれる樹脂としては、無機膜および後述の多層構造体のガスバリア性を高くするという観点から、該樹脂は、該樹脂のみからなる厚さ25μmのフィルムを用いて、23℃、0%RHの条件下で酸素透過度を測定した場合に、1000cc/m2・day・atm以下となる樹脂が好ましい。また樹脂のみからなるフィルムを作製することが困難な場合には、他の樹脂からなる酸素透過度が既知の基材フィルム上に、酸素透過度を測定したい樹脂からなる層を形成して積層フィルムを調製し、この積層フィルムの酸素透過度を測定する。以下の式により基材フィルム上に形成した樹脂層の酸素透過度を求める。
1/P=(1/P1)+(1/P2)
P :積層フィルムの酸素透過度(cc/m2・day・atm)
P1:基材フィルムの酸素透過度(cc/m2・day・atm)
P2:樹脂層の酸素透過度(cc/m2・day・atm)
具体的には、基材フィルムには厚さ25μmのPETフィルムを用い、該基材フィルム上に、酸素透過度を測定したい樹脂からなる層を形成して酸素透過度を測定し、樹脂層25μmあたりの酸素透過度を算出する。
中和度=(A/B)×100
A:ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸1g中に含まれる中和されたカルボキシル基の全モル数
B:ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸1g中に含まれる中和前のカルボキシル基の全モル数
互いに反応する2種類以上のモノマーを含む組成物としては、水酸基を含むモノマーとカルボキシル基を含むモノマーとを含む組成物、また水酸基を含むモノマーとイソシアネート基を含むモノマーとを含む組成物が挙げられる。水酸基を含むモノマーとイソシアネート基を含むモノマーとを含む組成物が反応してなる樹脂としては、ウレタン樹脂が挙げられる。
加熱により重合してポリマーを形成するモノマーとしては、エポキシ系化合物、(メタ)アクリロイル系化合物、アリル系化合物、ビニル系化合物が挙げられる。
熱反応性組成物は、エポキシ系化合物と重合開始剤とを含む組成物か、水酸基を含むモノマーとカルボキシル基を含むモノマーとを含む組成物であることが好ましい。
具体的には、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせや、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸や、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせ、またこれらの芳香族ヒドロキシカルボン酸の一部を芳香族アミノカルボン酸に置き換えたもの、芳香族ジオールの一部を、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンおよび/または芳香族ジアミンに置き換えたもの、を用いることができるが、溶剤への溶解性など取り扱いの容易さから、(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と(2)芳香族ジカルボン酸と(3)芳香族ジアミン、水酸基を有する芳香族アミンあるいは芳香族アミノ酸、とを含むことが好ましい。
上記(2)で示される芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられるが、イソフタル酸を含むことが好ましい。またこれらを2種類以上用いても構わない。
上記(3)で示される芳香族ジアミン、水酸基を有する芳香族アミンあるいは芳香族アミノ酸としては、例えば、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、アミノ安息香酸などが挙げられるが、4−アミノフェノールを含むことが好ましい。またこれらを2種類以上用いても構わない。
非プロトン性溶媒しては、例えば、1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒、アセトニトリル、サクシノニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルフィド系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン酸系溶媒などが挙げられる。
式(1) −O−Ar1−CO−
式(2) −CO−Ar2−CO−
式(3) −X−Ar3−Y−
ここで、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、または4,4’−ビフェニレンを表わす。Ar2は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、または2,6−ナフタレンを表わす。Ar3は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表わす。Xは−NH−であり、Yは、−O−または−NH−を表わす。
本発明の無機膜は、該無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像を、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行い、次いで、該画像処理後の観察像の任意の5箇所以上において、それぞれ無機膜の厚み方向に平行に、無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って、それぞれ線分析を行った結果から得られる各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差の平均値が15以下である。
本発明の無機膜は、上記無機層状化合物、樹脂および液体媒体からなる混合液を用いて製造することが好ましい。
該高圧分散処理は、高圧分散装置を用いて行う。高圧分散装置としては、例えば、ナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられる。高圧分散処理とは、上記混合液または無機層状化合物分散液を複数本の細管中に高速通過させた後に合流させて、混合液同士または無機層状化合物分散液同士、あるいは該混合液または無機層状化合物分散液と細管内壁とを衝突させることにより、混合液または無機層状化合物分散液に高剪断および/または高圧を付加する処理方法である。高圧分散処理では、混合液または無機層状化合物分散液を管径1μm〜1000μm程度の細管中に通過させ、このとき100kgf/cm2以上の最大圧力が印加されるように処理することが好ましい。最大圧力は500kgf/cm2以上であることがより好ましく、1000kgf/cm2以上であることが特に好ましい。また混合液または無機層状化合物分散液が細管内を通過する際、該液の最高到達速度は100m/s以上であることが好ましく、圧力損失による伝熱速度は100kcal/hr以上であることが好ましい。
除去可能な基材を構成する材料としては、銅、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
該塗布膜を形成する方法としては、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法等のグラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、ドクターナイフ法、ダイコート法、バーコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法、スピンコート法が挙げられる。均一な厚みの層を設けることができることからグラビア法、スピンコート法あるいはダイコート法を採用することが好ましい。なお、塗布膜は、基材表面の一部に形成してもよく、全面に形成してもよい。
基材を除去する方法としては、基材と無機膜を剥離する方法、基材を溶解する方法等が挙げられる。基材を溶解する方法としては、例えば基材が銅である場合、銅である基材と無機膜とからなる多層構造体を塩化第2鉄水溶液等に浸漬して、銅を溶解させることにより除去する方法が挙げられる。
本発明の多層構造体は、上記無機膜と、該無機膜に隣接する隣接層を有するものである。隣接層とは、無機膜に隣接する層であり、本発明の多層構造体は、無機膜の一方の表面に隣接層を有する多層構造体であってもよいし、無機膜の両方の表面にそれぞれ隣接層を有する多層構造体であってもよい。無機膜の両方の表面にそれぞれ隣接層を有する多層構造体である場合は、二つの隣接層は同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
隣接層を構成する材料は、金属や、樹脂、木材、セラミック、ガラス等が挙げられる。また隣接層の形態は、紙や、布、不織布、フィルム等が挙げられる。
金属としては、銅、鉄、銀、アルミニウム、シリカ、チタン等が挙げられ、またこれらの合金も含まれる。隣接層が金属である場合は、他の層に金属が蒸着された層であってもよい。隣接層が、他の層に金属が蒸着された層である場合、蒸着される金属としては、アルミニウム、アルミナ、シリカが好ましい。
樹脂としては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、エチレン系共重合体、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ポリアリレート、アクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン系樹脂、疎水化セルロース系樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、水素結合性樹脂、カーボネート樹脂、サルホン樹脂、エーテルサルホン樹脂、エーテルエーテルケトン樹脂、フェニレンオキシド樹脂、メチレンオキシド樹脂、イミド樹脂等が挙げられる。
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等が挙げられる。
エチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはそのケン化物、エチレン−α・β不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α・β不飽和カルボン酸共重合体等が挙げられる。
エステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
アミド系樹脂としては、ナイロン−6(Ny−6)、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6−Ny)等が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
スチレン系樹脂としては、AS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
疎水化セルロース系樹脂としては、トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等が挙げられる。
塩素系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等が挙げられる。
水素結合性樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、セルロース誘導体等が挙げられ、このうち、樹脂単位重量あたりの水酸基の重量分率が20〜60%の割合を満たす重合体が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エチレンイミン樹脂、また前述の熱反応性組成物が反応してなる樹脂等が挙げられる。
光硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
本発明の多層構造体は、無機膜および隣接層以外の追加層を有していてもよい。追加層は複数あってもよい。また、追加層は、隣接層に用いられた材料と同じ材料で構成されていてもよいし、無機膜とも隣接層とも異なる材料で構成されていてもよい。本発明の多層構造体が追加層を有する場合の構成としては、例えば
隣接層/無機膜/隣接層/追加層A(構成1)、
隣接層/無機膜/隣接層/追加層B/追加層C(構成2)、
追加層D/隣接層/無機膜(構成3)、
追加層E/隣接層/無機膜/隣接層/追加層F(構成4)、
が挙げられる。
また本発明の多層構造体は複数の無機膜を有していてもよい。本発明の多層構造体が複数の無機膜を有する場合の構成としては、例えば
隣接層/無機膜/隣接層/無機膜(構成5)、
隣接層/無機膜/隣接層/無機膜/隣接層(構成6)、
が挙げられる。
上記混合液を用いて、基材の表面に塗布膜を形成し、該塗布膜から液体媒体を除去して、基材と無機膜とからなる多層構造体を製造した後、該基材を除去した後、無機膜の少なくとも一方の表面に隣接層を形成する方法、
予め製造した無機膜と隣接層とを貼り合せる方法が挙げられる。
本発明の多層構造体は、耐熱性の観点から、前記の熱反応性組成物が反応してなる樹脂を含有する隣接層を有することが好ましい。
該加熱処理の条件としては、上記塗布膜から液体媒体を除去する温度よりも、高い温度で行うことが好ましい。また、100〜400℃であることが好ましく、120〜350℃であることがより好ましく、130〜350℃であることがさらに好ましい。また該加熱処理は、水蒸気濃度が50g/m3未満の雰囲気下で実施することが好ましい。加熱処理する時間は通常1秒間〜24時間である。該加熱処理に用いる熱源は、塗布膜から液体媒体を除去するときに用いる熱源を適用することができる。
該無機膜および多層構造体を、例えばディスプレイ用基板として用いた場合、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に比べ、軽量化、大型化という要求にこたえることができ、形状の自由度が高く、曲面表示が可能である。さらにはロールツーロール方式が可能であることからガラスよりも生産性が良くコストダウンの点でも有利である。また従来のプラスチック等を用いた基板と比較して、水蒸気や空気のガスバリア性が高く、例えば液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまうといった問題を解決できる。
またシリコン型あるいは色素増感型太陽電池の基板用途として用いた場合、本発明の無機膜および多層構造体をバックシートあるいは前面板として用いれば、水蒸気や酸素等のガスが電極や半導体、色素、電解質に作用することで起こる光電変換特性の劣化を抑制することができる。また耐熱性にも優れることから、薄膜でシリコン層等を形成する場合にも好適に用いることができる。また電子部品部材として用いる場合、耐熱性に優れ、またエッチングの際の耐アルカリ性、耐酸性に優れることからプリント配線基板用途として用いる場合にも好適である。
真空断熱材パネル用途として外装に用いた場合、ガスバリア性に優れるため、長期間にわたって内部の真空度を保持できるとともに、アルミ箔等と比較して熱橋が起こりにくいため、断熱性に優れる。
また本発明の無機膜および多層構造体を包装材料として用いることにより、該包装材料で包装された内容物の酸素および水蒸気劣化を防ぐことができる。該多層構造体を包装材料として用いる場合、その用途としては、フィルム、袋、パウチ、ボトル、ボトルキャップ、カートン容器、カップ、皿、トレー、タンク、チューブ等が挙げられる。本発明の無機膜および多層構造体により包装される内容物としては、ケーキ、カステラ等の洋菓子、大福、もち等の和菓子、ポテトチップス等のスナック菓子等の菓子類、竹輪や蒲鉾等の水産加工品、味噌、漬物、蒟蒻、ミートボール、ハンバーグ、ハム・ソーセージ等の食品、コーヒー、茶、ジュース等の飲料品、牛乳、ヨーグルト等の乳製品、米飯、カレー等が例示される。また食料品以外に、洗剤、入浴剤、化粧品といったトイレタリー製品、ガソリン、水素ガス等の燃料、粉末剤、錠剤、点眼薬、輸液バック等の医薬品および医療機器、ハードディスク、シリコンウエハ等の電子部品および電子機器等の包装材料としても用いることができる。
0.5μm以上の厚みは、デジタル厚み計(接触式厚み計、商品名:超高精度デシマイクロヘッド MH−15M、日本光学社製)を用いて測定した。0.5μm未満の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)の断面観察より求めた。
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA910、堀場製作所(株)製)を用いて測定した。後述の塗工液(1)および(2)をイオン交換水を用いて100倍以上に希釈し、該希釈液中の無機層状化合物の平均粒径を、フローセルにて光路長4mmで測定し、得られた平均粒径を無機層状化合物の平均粒径Lとみなした。
なお、該塗工液(1)および(2)を希釈せずに、該塗布液中の無機層状化合物の平均粒径をペーストセルにて光路長50μmで測定し、この平均粒径と、希釈液で求めた平均粒径Lの値とがほぼ一致したとき、該分散液中で無機層状化合物が充分に膨潤し劈開していると認定した。
X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、無機層状化合物そのものについて粉末法による回折測定を行った。これにより無機層状化合物の単位厚さaを求め、上述の方法で求めた粒径Lを用いて、アスペクト比Zを、Z=L/aの式により算出した。
210mm×300mmの多層構造体を、150℃、水蒸気濃度5g/m3のオーブン中で60分間加熱処理した。
小型レトルト高圧蒸気滅菌器(アルプ(株)社製 RK-3030)を用いて、210mm×300mmの多層構造体を120℃で所定時間、水蒸気雰囲気下で湿熱処理した。水蒸気濃度は1113g/m3であった。
210mm×300mmの多層構造体を、23℃、50%RH雰囲気下で24時間静置した。
多層構造体(1)および(2)について、TEMにより、多層構造体の厚み方向を含む断面の観察を50万倍で行い、断面観察像(1)および(2)を得た。該断面観察像を、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行い、次いで、該画像処理後の観察像の任意の8箇所において、それぞれ多層構造体の厚み方向に平行に、多層構造体に含まれる無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って、それぞれ線分析を行った。各線分析結果それぞれについて、各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差を求め、8つの標準偏差の平均値を求めた。
JIS K7126に基づき、酸素透過率測定装置(OX−TRANML、MOCON社製)にて23℃、90%RHの条件下で測定を行った。
(1)塗工液(1)の作製
分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1300gと、ポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)130gとを混合し、低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で95℃に昇温した。該混合系を同温度で30分間攪拌してポリビニルアルコールを溶解させたのち、60℃に冷却し、ポリビニルアルコール水溶液を得た。該ポリビニルアルコール水溶液(60℃)を前記同様の条件で攪拌しながら、1−ブタノール122g、イソプロピルアルコール122gおよびイオン交換水520gを混合してなるアルコール水溶液を5分間かけて滴下した。滴下終了後、高速攪拌(3,000rpm、周速度=8.2m/分)に切り替え、該攪拌系に高純度モンモリロナイト(商品名:クニピアG;クニミネ工業(株)製、単位厚さa=1.22nm)82gを徐々に加え、添加終了後、60℃で60分間攪拌を続けた。その後、さらにイソプロパノール243gを15分間かけて加え、次いで該混合系を室温まで冷却し、粘土鉱物分散液(1)を得た。
この粘土鉱物分散液(1)に対し、非イオン性界面活性剤(ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体、商品名:SH3746、東レ・ダウコーニング(株)製)2.5gを低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)において添加し、その後系のpHが6となるようにH+型イオン交換樹脂(デュオライト C255LFH;日本水研(株)製)を10g添加し、その後30分間攪拌し、混合液(1)を得た。その後、フィルター(フルイ目の開きが297μm)を用いて、該混合液(1)をろ過してイオン交換樹脂の残渣を除去し、pH=6の粘土鉱物分散液(2)を調製した。
別の分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1067gと、ポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製、平均分子量1,000,000)33gとを混合し、常温にて低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で樹脂成分(A3)溶液を作製した。
粘土鉱物分散液(2)2519gと樹脂成分(A3)溶液1100gを、低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)において徐々に混合して混合液とし、さらに該混合液を高圧分散装置1(商品名:ナノマイザー NMII−2000AR、吉田機械興業(株)製)を用いて、1000kgf/cm2の圧力条件で処理することにより、塗工液(1)を得た。該塗工液(1)中の劈開したモンモリロナイト平均粒径Lは450nmであった。粉末X線回折から得られる単位厚さa値は1.22nmであり、アスペクト比Zは370であった。
塗工液(1)の作製において、高圧分散装置1のかわりに高圧分散装置2(商品名:超高圧ホモジナイザーM110−E/H、Microfluidics Corporation 製)を用いたこと以外は同様にして塗工液(2)を得た。該塗工液(2)中の劈開したモンモリロナイト平均粒径Lは480nmであった。アスペクト比Zは390であった。
厚さ15μmの二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム(商品名:ON−U;ユニチカ(株)製)の片面をコロナ処理したものを隣接層として用いた。該隣接層のコロナ処理面に、前述の塗工液(1)をテストコーター(康井精機製)を用いてマイクログラビア塗工法(グラビアロールの線数♯150(♯:GM)により、塗工速度3m/分でグラビア塗工して100℃で乾燥することにより、隣接層と無機膜とを有する多層構造体(1’)を得た。多層構造体(1’)に含まれる無機膜の厚みは0.1μmであった。得られた多層構造体(1’)を加熱処理した後、23℃、50%RH雰囲気下で24時間静置し、次いで60分間湿熱処理を行い、さらに乾燥処理を行い、多層構造体(1)を得た。該多層構造体(1)の酸素透過度を測定した。該無機膜中のナトリウム濃度は7000ppmであった。また多層構造体(1)について、TEM観察を行い(図3)、画像解析を実施した。結果を表1に示した。
塗工液(1)のかわりに塗工液(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、隣接層と無機膜とを有する多層構造体(2’)を得た。多層構造体(2’)に含まれる無機膜の厚みは0.15μmであった。得られた多層構造体(2’)を加熱処理した後、23℃、50%RH雰囲気下で24時間静置し、次いで60分間湿熱処理を行い、さらに乾燥処理を行い、多層構造体(2)を得た。該多層構造体(2)の酸素透過度を測定し、以下の式1に従い無機膜の厚み0.1μmあたりの酸素透過度に換算した。結果を表1に示した。
(式1) P1=P2×(T1/0.1)
P1:無機膜の厚み0.1μmあたりの酸素透過度(cc/m2・day・atm)
P2:多層構造体の酸素透過度(実測値)
T1:多層構造体の無機膜の膜厚(μm)
なお隣接の酸素透過度は、無機膜の酸素透過度と比較して、著しく高いため、考慮していない。該無機膜中のナトリウム濃度は7000ppmであった。また多層構造体(2)について、TEM観察を行い(図4)、画像解析を実施した。結果を同様に表1に示した。
Claims (4)
- 無機層状化合物と樹脂とを含有する無機膜であって、該無機膜の厚み方向を含む断面の透過型電子顕微鏡による観察像を、グレースケールにて256段階の濃淡に分類する画像処理を行い、次いで、該画像処理後の観察像の任意の5箇所以上において、それぞれ無機膜の厚み方向に平行に、無機膜の一方の表面から他方の表面までの直線をとり、各直線に沿って、それぞれ線分析を行った結果から得られる各濃淡の度合いに対する度数の標準偏差の平均値が15以下である無機膜。
- 該無機膜に含有される無機層状化合物の含有量が、5〜95体積%である(ただし、無機膜に含有される無機層状化合物と樹脂との合計体積を100体積%とする)請求項1に記載の無機膜。
- 該無機層状化合物が層間に水素イオン、アンモニウムイオン、およびリチウムイオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを含むものである請求項1または2に記載の無機膜。
- 請求項1〜3いずれか一項に記載の無機膜と、該無機膜に隣接する隣接層とを有する多層構造体。
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