JP2013130403A - 放射性物質含有材の保管構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 除染された除去土壌や放射性物質を含む焼却灰を充填した袋体を保管する施設として、収容空間3の底面に遮水シート等の底面遮水層10を設ける。また収容空間3の側面を包囲するように、所定高さに積層された土砂を充填した、土嚢あるいは箱状壁体で放射線遮蔽壁体20を構成する。多数の袋体2を、収容空間3内に配列、積層して収容空間3に収容した状態で、袋体2の積層された最上面を被覆するとともに、放射線遮蔽壁体20とで収容空間3と外部空間とを覆土33等の被覆体で隔離する。さらに遮水シート41等のカバーシート40やテント屋根等で全体を覆い、外部水の浸入防止を図る。
【選択図】 図1
Description
除染作業において、各施設の敷地内の表土(土壌)の剥ぎ取り等によって大量の除去土壌が発生する。この除去土壌を本発明の保管対象物の一例とした保管構造について、図1〜図10を参照して説明する。
図3(a)は、図2の○で囲まれた部位(III(a))を拡大して示した部分拡大図である。同図に示したように、底面遮水層10の主構成の遮水シート11として、本実施例では、合成樹脂である高密度ポリエチレン(HDPE)シートが用いられている。シート厚としては耐久性を考慮して1.0〜3.0mm程度を使用することが好ましい。遮水シート11の材質としてはHDPE以外の合成樹脂として、中密度ポリエチレン(MDPE)や、低密度ポリエチレン(LDPE)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等を使用することができ、また、合成樹脂系以外にも加硫ゴム系のエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が使用できる。遮水シート11は所定幅のシートを長手方向に敷設しながら溶着していき、全面が遮水性を保持した耐久性のある平面状シートを形成する。
底面遮水層10の上面には、図1,図2に示したように、所定容積の収容空間3を確保するように放射線遮断壁体20が構築されている。本実施例では組み立て式の鋼製ネット22で作られた箱状壁体21内に、土砂25を充填して所定寸法の直方体形状の壁体ユニットを現場製作し、複数の壁体ユニットを所定段数だけ配列、積層して放射線遮断壁体20としている。この組み立て式箱状壁体21は、所定目合いの格子状鋼製ネット22と、その内面に沿って箱状をなす不織布24を取り付けた既製品(たとえば商品名「マックスシースリー」(太陽工業製))である。この箱状壁体21は、当初は、図4(a)に示したように、2枚の側面壁を構成するネット22aを繋ぎネット22bで複数箇所を連結した構造からなり、ネット22の内面には組み立て後に箱状をなす不織布24が折り畳んで取り付けられている。この不織布24は充填土砂25がネット22の目合いからこぼれるのを防止する。本実施例では、1個の壁体ユニットは、土砂25が充填された状態で、図4(b)に示したように、各一辺Lが約1mの立方体区画が横方向に4個連なった横長の直方体形状からなる。壁体ユニット間は鋼製ネットの端部に設けられた連結部26を介して容易に直列方向、並列方向に連結できる。本実施例では、図1,図2に示したように、箱状壁体21を断面方向から見て底部が4列、高さ4段のピラミッド形状をなし、収容空間3の所定の長手方向に延長するように配列、積層して放射線遮断壁体20が構築されている。なお、放射性物質含有材に対して土砂の厚さ1m分で放射線遮断効果が確実に得られる。
たとえば放射性物質含有材としての除染により発生した除去土壌は、耐水性材料で梱包することが義務づけられている。この条件以外に、運搬が容易であること、積層時の安定性等を確実かつ容易に実現することが求められる。そこで、本発明では既製品のフレコンバッグ2を使用した。図5(a)は実施例で使用したフレコンバッグ2の概略斜視図である。このフレコンバッグ2の本体シートは、耐久性が高く、耐水性のあるポリエチレン製シートからなる。また、内側に保護マットを設けても良い。内側の保護マットは除去土壌に接し、除去土壌に含まれる礫や鋭角部を有する異物等で本体シートが破損するのを防止する役割を果たす。本体シートは、使用後の処理を考慮して耐久性・耐水性の高い材料として、繊維織物からなる基材に合成樹脂であるポリエチレン(PE)樹脂を被覆したものからなるが、被覆材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)等他の合成樹脂や、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴムからなるものであっても良いし、充填する放射性物質含有材によっては、前記合成樹脂や合成ゴムのみからなるシートであっても良い。
被覆体30は、収容空間3内に積層された袋体2の最上面を被覆するとともに、放射線遮蔽壁体20とで収容空間3と外部空間4とを隔離する役割を果たす。図3(b)は、図2の○で囲まれた部位(III(b))を拡大して示した部分拡大図である。同図に示したように、多数の袋体2の最上面を平坦な状態とするために鋼板31を敷設する。鋼板31は、厚さ5mm〜20mm程度のものを使用することが好ましく、本実施例では板厚12mmの鋼板31を収容空間3の最上面に敷き詰めるようにした。さらに鋼板31の上面に覆土分離シート32としてPET製の織布を敷設し、その上部に積層する覆土層33の安定性を図っている。覆土厚は約30cmとした。覆土厚30cmで放射線遮蔽効果は98%程度が見込まれる。覆土層33上面には中央位置から両端に向けて所定の雨勾配を設け、後述するカバーシート40による雨水の流下を促進することが好ましい。被覆体30の端部は図2に示したように、箱状壁体21の上部を完全に覆うように設けるが、さらに箱状壁体21を積層した放射線遮断壁体20の外側にも所定勾配の法面覆土34を形成する。被覆体30は、袋体2の収容空間3と外部空間4とを隔離するが、所定の厚さを確保することで放射線を遮蔽する機能を果たすことができる。たとえば覆土層33の場合には、覆土厚30cmで98%程度の放射線遮蔽効果が得られる。
図2に示したように、覆土層33を貫通するガス抜き管35が設置されている。このガス抜き管35は、袋体2内の除去土壌内の有機物が分解して発生するメタンガスや硫化水素ガス等が収容空間3内に充満しないように、外部に排気して大気中に放散させる役割を果たす。
図1、図2に示した実施例では、被覆体30としての覆土層33,34への雨水等の影響を遮断するために被覆体30の一部としてカバーシート40となる遮水シート41を敷設している。遮水シート41はその接合部の遮水性も必要なことから、溶着による接合が可能で耐久性の高い遮光層一体型HDPEシート(厚さ1.5mm)を使用した。このカバーシート40は図2に示したように、覆土層(上面覆土33、法面覆土34)、保護マット42を覆い、さらに端部は地中に定着されている。保護マット42としては、保護マット12と同様のものを用いることができる。
図7,図8は上述したカバーシート40に代えて、膜面構造屋根として、骨組構造のフレームに膜材を張設したテント屋根50を採用した実施例を示している。雨水等はテント屋根50で完全に遮断されるため、各図に示したように被覆体30としての覆土層33は収容空間3の上面と放射線遮蔽壁体20としての箱状壁体21の最上段との範囲にのみ施工されている。それ以外の構成は、図1,図2に示した保管構造1と同様である。
被覆体30としては覆土の他、鋼板31、コンクリートマット層36、保護マット42、カバーシート40を適用することも好ましい(図9〜図14参照)。また、これらから選択したものを積層させ被覆体30とすることもできる。この場合、現場でコンクリートを打設してコンクリートマット層36を構築する際、型枠工事を省略できる布製型枠37を用いることが工事の迅速化のために有効である。布製型枠37としては商品名「タコムマット」(太陽工業製)がある。コンクリート固化時のマット厚が10cmで放射線遮蔽効果は約80%確保できる。また、被覆体30として、カバーシート40を使用する場合は、上述した遮水を目的としたHDPEやPVC等の合成樹脂や、繊維織物からなる基材に前記合成樹脂を被覆してからなるシートでもよいし、ゼオライト粉末等の放射線吸着物質を樹脂やゴムに含有させた層を設けた放射性セシウムを吸着可能なシートや、鉛やタングステン、硫酸バリウムの粉末等の放射線遮蔽物質を樹脂やゴムに含有させた層を設けた放射性セシウムを遮蔽可能なシートを採用することも好ましい。
図9は、上述したコンクリートマット層36を設けた保管構造1において、外部水の遮断のために被覆体30の一部としてカバーシート40を設けた実施例を示している。図9に示した保管構造1では、コンクリートマット層36と袋体2の最上面との間にHDPEシート41(厚さ1.5mm)を介在させ、上面からの遮水性を図っている。また、コンクリートマット層36は、その端部36aが一段低い箱状壁体21の天端の端部まで約1m延長して敷設されている。このため、被覆体30上面の端部での遮水性も十分保持されている。図10は、被覆体30としてコンクリートマット層36を設けた保管構造1において、外部水の遮断構造としてテント屋根50を採用した例を示した断面図である。この場合には、コンクリートマット層36の下に遮水シートを敷設する必要がない。このため、コンクリートマット層36の端部36aは放射線遮蔽壁体20の天端と同一レベルにすることができる。
大気中に放出された放射性セシウム(134Cs,137Cs)のうち、137Csは半減期が約30年の人工核種であり、長期的な保管体制が求められる。しかし、放射性物質含有材としての放射性セシウムに汚染された廃棄物を焼却した焼却灰は、復旧作業において絶え間なく発生している。そこで、恒久的な保管施設が確定する前の一時的保管を行う必要がある。また、下水等に放射性セシウムが含まれた場合、下水道処理場の副次産物である脱水汚泥等も回収して保管する必要がある。これらの場合にも、上述した放射性物質含有材の保管構造1が有効である。
図13(a)は、放射線遮蔽壁体20として、プレキャストコンクリート製L型擁壁28を利用した保管構造1を示している。この実施例では、既製品のL型擁壁28を用いているため、収容空間3内は底版28bの厚さ分が低くなる。この高さ分を調整するため、及び遮水シート11の上面が冠水した場合に袋体2と水の接触をできるだけ避けるための嵩上げ構造体として、L型擁壁28の底版厚に相当する厚さのパレット6を敷設しており、パレット6の材質としては合成樹脂製や木製のものが利用できる。また底版28bの内側にはU字溝7が設置されている。パレット6の下面には上述の保管構造1と同様に遮水シート11が敷設され、遮水シート11の端部は図示したように、U字溝7上に位置する抑え部材8で折り曲げ上げられ、L型擁壁28の壁体28aの内面に取り付けられた固定金具60の先端固定部60aに固定されている。
プレキャストコンクリートL型擁壁のようなコンクリート壁体は、壁厚15cmで放射線遮蔽効果は約90%確保できる。さらに図13(a)の放射線遮蔽壁体の遮蔽効果を高めるとともに、壁体の安定性を図るために、上述した箱状壁体21を併用することも好ましい。図13(b)は、L型擁壁28の底版28b上に3段の箱状壁体21を積層した実施例を示している。この場合、固定金具60は、最下段の箱状壁体21を貫通させて箱状壁体21の内側面に突出させた支持ロッド61に固定することが好ましい。カバーシート40、遮水シート11の端辺は、図13(a)の場合と同様に中間固定部60bに定着すればよい。また、箱状壁体21を安定して積上げるために、支持ロッド61によって、コンクリート壁体と各箱状壁体21を各々連結することが好ましい。このような構造にすれば、放射線遮蔽効果を高めるだけでなく、箱状壁体21をピラミッド形状に積上げることなく安定して段積みすることが可能となるとともに、所定区画内で袋体2を有効に収容することも可能となる。
上述の放射線遮蔽壁体20は、すべて箱状壁体21を積層した例からなるが、放射線遮蔽壁体20としてフレコンバッグを使用することもできる。フレコンバッグ内に土砂を充填して大型土嚢を製作し、大型土嚢を適宜配列、積層することで所定の放射線遮蔽効果を得ることができる。
2 袋体
2W 大型土嚢
3 収容空間
4 外部空間
10 底面遮水層
11,41 遮水シート
12,42 保護マット
13 覆土層
20 放射線遮蔽壁体
21 箱状壁体
25 土砂
30 被覆体
31 鋼板
33 覆土層(上面覆土)
34 法面覆土
40 カバーシート
50 テント屋根(膜面屋根構造)
Claims (15)
- 放射性物質含有材を保管する収容空間の底面に敷設された底面遮水層と、
前記収容空間の側面を包囲するように、所定高さに構築された放射線遮蔽壁体と、
前記放射性物質含有材を満たした複数の袋体を、前記収容空間内に配列、積層して該収容空間に収容した状態で、前記袋体の積層された最上面を被覆するとともに、前記放射線遮蔽壁体とで前記収容空間と外部空間とを隔離する被覆体とを備えたことを特徴とする放射性物質含有材の保管構造。 - 前記底面遮水層は、遮水シートを基層とした請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記底面遮水層は、前記基層上に覆土層を積層した請求項2に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記底面遮水層は、前記基層上に嵩上げ構造体を敷設した請求項2に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記放射線遮蔽壁体は、土砂を充填した、土嚢あるいは箱状壁体を積層してなる請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記放射線遮蔽壁体は、プレキャストコンクリート製壁体を設置してなる請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記放射線遮蔽壁体は、前記土嚢あるいは箱状壁体と、前記プレキャストコンクリート製壁体とを組み合わせてなる請求項5または請求項6に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記被覆体は、前記積層された袋体の最上面と周囲とを覆う遮水シートである請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記被覆体は、前記積層された袋体の最上面と前記放射線遮蔽壁体とを覆う請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記被覆体は、前記袋体の積層された最上面に鋼板を敷設し、該鋼板と前記放射線遮蔽壁体とを、覆土層を積層してなる請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記被覆体は、前記袋体の積層された最上面に敷設された鋼板上に、水硬性固化材による被覆層を形成してなる請求項1に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記水硬性固化材は、前記鋼板上に設置された布製型枠内に充填して層状に固化させた請求項10に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記被覆体と前記放射線遮蔽壁体とが、遮水シートで覆われた請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記被覆体と前記放射線遮蔽壁体とが、その上部空間に構築された膜構造屋根で覆われた請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の放射性物質含有材の保管構造。
- 前記遮水シートの縁辺部は、シート表面の水を前記底面遮水層の外周または下層に導水させるように端部処理された請求項8または請求項12に記載の放射性物質含有材の保管構造。
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