JP2013129614A - 紫外線遮蔽複合粒子と紫外線遮蔽多層複合粒子及び紫外線遮蔽分散液並びに化粧料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の紫外線遮蔽複合粒子は、第1の樹脂からなる芯材部の表面全体または表面の1箇所以上に、第2の樹脂中にジベンゾイルメタン誘導体を含有してなる樹脂組成物を付着させて被覆膜または1個以上の島状物とし、この樹脂組成物中のジベンゾイルメタン誘導体の含有率を20質量%以上かつ60質量%以下とした。
【選択図】なし
Description
これらのうち、UV−Cは、オゾン層によって吸収されるので、地表には到達せず、人体に対して悪影響を及ぼすこともない。
一方、UV−Bは、オゾン層を通過して地表に到達してしまい、人体に対して悪影響を及ぼすこととなり、その結果、皮膚が熱傷したり、メラニン色素が増加して日焼けによるシミ・ソバカスを引き起こすこととなる。
そこで、従来の化粧料は、UV−Bから人体を保護することを目的に開発がなされてきた。ちなみに、化粧料の紫外線遮蔽能を表す指数として広く用いられているSPF(Sun Protection Factor)は、被験者の遅延型紅斑反応から算出されることから、主にUV−Bに対する防護性を表している。
UV−Aの人体に対する防護性を表す指標としては、複数の指標が実施あるいは検討されている。例えば、日本においてはPA値(Protection Grade of UVA)が用いられており、PA+、PA++、PA+++の三段階で表記されている。また、ヨーロッパでは、COLIPA(European Cosmetic Toiletery and Fragrance Association)の指標(SPF)が用いられ、SPFの1/3以上のUVA防護指数を有する化粧料は「UVA」と表示することができる。また、英国では、UV−A/UV−B比に基づいたBoots Star評価システムが用いられている。一方、米国においては、FDA(Food and Drug Administration;食品医薬品局)がUV−Aの防護レベルの識別用に1個から4個の星印により表される尺度に基づいたシステムの導入を検討している。
このUV−Aをも遮蔽することのできる紫外線遮蔽剤としては、無機系紫外線遮蔽剤と有機系紫外線遮蔽剤とがある。
無機系紫外線遮蔽剤は、散乱現象を利用して物理的に紫外線を遮蔽することから、屈折率が高い酸化亜鉛、酸化チタン等が主に使用されている。この無機系紫外線遮蔽剤は、バンドギャップに由来する紫外線吸収能も併せ持つという利点がある。
しかしながら、無機系紫外線遮蔽剤では、UV−Aの中でも特に380nm〜400nmの波長帯域の紫外線を効率的に遮蔽することは困難であるという問題点がある。
また、可視光線も散乱してしまうことから、化粧品に大量に配合すると、肌に塗った場合に肌が白くなる虞があるという問題点がある。
しかしながら、有機系紫外線遮蔽剤は処方しうる量に制限があり、この制限を超えて大量に使用すると、肌への刺激を増大する虞がある等、好ましくない皮膚感覚をもたらし易い等の問題点がある。
そこで、樹脂粒子中に有機系紫外線遮蔽剤を含む有機系紫外線遮蔽剤含有樹脂粒子が提案されている。
例えば、有機系紫外線吸収剤を含有する(メタ)アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂からなる芯材部と、該芯材部の表面に形成された有機系紫外線吸収剤を含有しない(メタ)アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂からなる表層部とを有する化粧料用粒子(特許文献1)、ラジカル重合性単量体と多官能性架橋単量体が重合された高分子粒子、及び紫外線遮断剤がハイブリッドされた高分子複合粒子(特許文献2)等が提案されている。
一方、この樹脂粒子中の有機系紫外線遮蔽剤の含有率を高くすると、有機系紫外線遮蔽剤含有樹脂粒子の粒子サイズ、粒子分布及び形態を制御することが困難になり、したがって、化粧料への配合が困難となり、使用感の低下を引き起こす虞があるという問題点があった。
このように、樹脂中のジベンゾイルメタン誘導体の含有率を高くした場合には、化粧料中の紫外線遮蔽粒子の配合量を減少せざるを得ず、したがって、皮膚の表面を均一に紫外線遮蔽することができないという問題点が生じることとなる。一方、化粧料中の紫外線遮蔽複合粒子の量を増加させた場合には、樹脂中のジベンゾイルメタン誘導体の含有量が減少して紫外線遮蔽粒子当たりの紫外線遮蔽効果が弱くなる。その結果、このような紫外線遮蔽粒子を用いた場合には、所望の紫外線遮蔽効果を得るために、紫外線遮蔽複合粒子が皮膚表面を覆うように大量の化粧料を必要とする(厚塗りする)という問題点があった。
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂のうちいずれか一方または双方は、(メタ)アクリル樹脂、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルスチレン共重合体、アクリルポリエステル共重合体、シリコンアクリル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂の群から選択される1種または2種以上からなることが好ましい。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明の一実施形態の紫外線遮蔽複合粒子は、第1の樹脂からなる芯材部の表面全体または表面の1箇所以上に、第2の樹脂中にジベンゾイルメタン誘導体を含有してなる樹脂組成物を付着させて被覆膜または1個以上の島状物とし、前記樹脂組成物中の前記ジベンゾイルメタン誘導体の含有率を20質量%以上かつ60質量%以下とした紫外線遮蔽性能を有する複合粒子である。
なお、この紫外線遮蔽複合粒子の「平均粒子径」とは、この紫外線遮蔽複合粒子を所定数、例えば、500個、あるいは100個を選びだし、これら紫外線遮蔽複合粒子各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を平均して求められた値である。
ここで、平均粒子径を上記の範囲に限定した理由は、平均粒子径が0.1μm未満では、芯材部の粒子サイズ、粒度分布を制御することが困難となり、その結果、得られる紫外線遮蔽複合粒子の粒子サイズ、粒度分布も不均一となるからである。
一方、平均粒子径が5μmを超えると、紫外線遮蔽複合粒子自体が透明性を失ってしまい、化粧料に配合したときに透明性が損なわれるからである。
ここで、被覆膜または島状物の全質量を、芯材部全体の質量に対して上記の範囲とした理由は、被覆膜または島状物の全質量が芯材部全体の質量に対して1質量%未満では、紫外線遮蔽複合粒子中のジベンゾイルメタン誘導体の含有率が少なくなり、したがって、この紫外線遮蔽複合粒子を用いた化粧料が十分な紫外線遮蔽効果を得るには、化粧料中の紫外線遮蔽複合粒子の含有率を大幅に上げる必要があり、有機系紫外線遮蔽剤であるジベンゾイルメタン誘導体の含有率を低く抑えることができなくなるので好ましくない。一方、被覆膜または島状物の全質量が芯材部全体の質量に対して100質量%を超えると、芯材部の粒子サイズや粒度分布が紫外線遮蔽複合粒子の粒子サイズや粒度分布に効果的に反映されない虞があるからである。
芯材部の大きさ及び形状を上記の範囲とした理由は、化粧料に配合した場合に透明性が高く、かつ優れた使用感を示すからである。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル;
アクリル酸、メタクリル酸;
アクリロニトリル;メタクリロニトリル;アクリル酸2−クロロエチル;アクリル酸フェニル;アクリル酸トリフルオロエチル;アクリル酸テトラフルオロプロピルを挙げることができる。
上述したモノマーは、1種のみを単独で重合してもよく、2種以上を組み合わせて重合して用いてもよい。
このアルキルアルコキシジベンゾイルメタンは、下記の式(1)にて表される。
また、ジベンゾイルメタン誘導体単独ではなく、その特性を損なわない範囲でベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体等の他の有機系紫外線遮蔽剤を1種または2種以上を混合して用いてもよい。
ここで、ジベンゾイルメタン誘導体の含有率を上記の範囲に限定した理由は、ジベンゾイルメタン誘導体の含有率が10質量%未満では、ジベンゾイルメタン誘導体自体の量が少なすぎて、ジベンゾイルメタン誘導体の単位色素当たりの紫外線吸収効率の向上が認められないので好ましくなく、一方、ジベンゾイルメタン誘導体の含有率が60質量%を超えると、ジベンゾイルメタン誘導体の量が相対的に多くなり過ぎてしまい、樹脂中にジベンゾイルメタン誘導体の一部が結晶化し、ジベンゾイルメタン誘導体の単位色素当たりの紫外線吸収効率が低下するので好ましくないからである。
また、上記の紫外線遮蔽複合粒子の外周に、樹脂に有機系紫外線吸収剤及び無機系紫外線遮蔽剤のうちいずれか一方または双方を含有してなる樹脂組成物を、単層もしくは複数層、または1個もしくは複数個付着させてもよい。
本実施形態の紫外線遮蔽複合粒子の製造方法は、第1の樹脂からなる芯材部を製造する工程と、第2の樹脂モノマーを重合させることにより、この芯材部の表面に、第2の樹脂中にジベンゾイルメタン誘導体を含有してなる被覆膜または1個以上の島状物を形成する樹脂モノマー重合工程とを有する。
第1の樹脂からなる芯材部を製造するには、公知の方法を用いて上述した樹脂を所望の大きさ、形状に形成させることのできる方法を用いればよく、特に限定されない。また、上述した樹脂からなる市販品の樹脂粒子を用いてもよい。
芯材部及びジベンゾイルメタン誘導体の存在下にて、第2の樹脂モノマーを重合させることにより、この芯材部の表面に、第2の樹脂中にジベンゾイルメタン誘導体を含有してなる樹脂組成物からなる被覆膜または1個以上の島状物を形成する工程であり、第2の樹脂モノマーを重合させる方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されない。このような重合方法としては、例えば、シード重合法、ミニエマルジョン法等が好適に用いられる。
本実施形態の紫外線遮蔽多層複合粒子は、本実施形態の紫外線遮蔽複合粒子の表面全体または表面の1箇所以上に、第3の樹脂中にUV−B吸収剤を含有してなる樹脂組成物を付着させて被覆膜または1個以上の島状物とした多層複合粒子である。
このように、ジベンゾイルメタン誘導体を含有する第2の樹脂の表面全体または表面の1箇所以上に、UV−B吸収剤を含有する第3の樹脂からなる被覆膜または1個以上の島状物を付着させることにより、UV−Aよりも粒子の表面で散乱されやすいUV−Bを複合粒子の表層で効果的に吸収でき、よって、UV−A及びUV−Bの遮蔽性能を高めることができる。したがって、さらに優れた紫外線遮蔽効果を得ることができる。
このように、より高い紫外線遮蔽効果を得るためには、第1の樹脂は無機系紫外線遮蔽剤を含有し、第2の樹脂はジベンゾイルメタン誘導体を含有し、第3の樹脂はUV−B遮蔽剤を含有する構造が好ましい。
図5は、本実施形態の紫外線遮蔽多層複合粒子の一例を示す断面図であり、この紫外線遮蔽多層複合粒子41は、第1の樹脂からなる芯材部2の表面全体に、第2の樹脂中にジベンゾイルメタン誘導体を含有した樹脂組成物からなる被覆膜3が形成された紫外線遮蔽複合粒子1の表面全体に、第3の樹脂中にUV−B吸収剤を含有した樹脂組成物からなる被覆膜42が形成された構造体(以下、多層コアシェル構造と称することもある)である。この被覆膜42は、UV−B遮蔽機能を充分に発現することができればよく、紫外線遮蔽複合粒子1の表面全体を覆っている必要はない。よって、少なくとも紫外線遮蔽複合粒子1の表面全体の1%以上を覆っていればよい。
この芯材部2の形状は、図5に示した断面形状が円形状の他、楕円状、多面体状、レンズ状等様々な形状が選択可能である。
この第3の樹脂に含有されるUV−B吸収剤としては、例えば、サリチル酸誘導体、p−アミノ安息香酸(PABA)等が挙げられる。
これらの被覆膜または島状物中のUV−B吸収剤の含有率は、UV−B遮蔽機能を充分に発現することができるように適宜調整すればよい。
また、この紫外線遮蔽多層複合粒子の表面側に、有機系紫外線遮蔽剤及び無機系紫外線遮蔽剤のうち一方または双方を含有してなる樹脂組成物を、単層もしくは複数層、または1個もしくは複数個付着させてもよい。
本実施形態の紫外線遮蔽多層複合粒子の製造方法は、上述した紫外線遮蔽複合粒子の表面全体または表面の1箇所以上に、第3の樹脂中にUV−B吸収剤を含有してなる樹脂組成物を付着させて被覆膜または1個以上の島状物とする工程を有する。
第3の樹脂モノマーを重合させる方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されない。このような重合方法としては、例えば、シード重合法、ミニエマルジョン法、エマルジョン法等が好適に用いられる。
本実施形態の紫外線遮蔽分散液は、上述した紫外線遮蔽複合粒子及び紫外線遮蔽多層複合粒子のうちいずれか1種または2種(以下、単に紫外線遮蔽粒子と略称することがある)を分散媒中に分散してなる分散液である。
この紫外線遮蔽粒子の含有率は、所望の紫外線遮蔽性能を得るために適宜調整すればよく、好ましくは1質量%以上かつ80質量%以下、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下である。
酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;
ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;
が好適に用いられる。
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;
シクロヘキサン等の環状炭化水素;
ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;
ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類;
も好適に用いられる。
アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン類;
も好適に用いられる。
これらの水および溶媒のうち1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
分散剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、オルガノアルコキシシランやオルガノクロロシラン等のシランカップリング剤が好適に用いられる。これらの分散剤の種類や量は、紫外線遮蔽複合粒子の粒子径や目的とする分散媒の種類により適宜選択すればよく、上記の分散剤のうち1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシセルロース、ポリアクリル酸等を用いることができる。
この紫外線遮蔽複合粒子を分散媒中に分散させる処理手段としては、公知の分散処理手段を用いることができる。この分散処理手段としては、攪拌機の他、ジルコニアビーズを用いたビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、混練機、三本ロールミル、自転・公転ミキサー等が好適に用いられる。分散処理に要する時間としては、紫外線遮蔽複合粒子が分散媒中に均一に分散されるのに十分な時間であればよい。
本実施形態の化粧料は、上述した紫外線遮蔽複合粒子、紫外線遮蔽多層複合粒子及び紫外線遮蔽分散液の群から選択される1種または2種以上を基剤中に、紫外線遮蔽粒子換算で1質量%以上かつ60質量%以下含有してなる化粧料であり、この紫外線遮蔽複合粒子を上記の範囲内で含有することにより、白化の虞も無く、透明感を十分に確保することができ、しかも、ざらつき感等が無く、使用感に優れたものとなる。
この有機系紫外線遮蔽剤としては、例えば、アントラニラート類、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ショウノウ誘導体、ベンゾフェノン誘導体、β,β'-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンザルマロナート誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾリン類、ビスベンゾアゾリル誘導体、p−アミノ安息香酸(PABA)誘導体、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)誘導体等が挙げられ、これらの群から選択される1種または2種以上を選択して用いることができる。
特に、ジベンゾイルメタン誘導体として4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)を用いる場合には、UV−B領域を効果的に遮蔽することができる酸化亜鉛、酸化チタン等を併用することが好ましい。
さらに、従来では処方が困難であった化粧水や日焼け止めジェル等の水系化粧料に、上述した紫外線遮蔽複合粒子、紫外線遮蔽多層複合粒子及び紫外線遮蔽分散液の群から選択される1種または2種以上を配合することにより、紫外線遮蔽能、透明感及び使用感に優れた水系化粧料を得ることができる。
さらに、本実施形態の化粧料を化粧品の成分として用いることにより、紫外線遮蔽能、透明感、使用感及び安全性に優れたスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディケア化粧品等の各種化粧品を提供することができる。特に、紫外線遮蔽能が必要とされるスキンケア化粧品のホワイトニング、メイクアップ化粧品のベースメイク、ボディケア化粧品のサンスクリーン等に用いた場合には、紫外線遮蔽能、透明感、使用感及び安全性に優れた化粧品を提供することができる。
また、化粧品以外の分野で用いる場合には、化粧品で重要視されているざらつき感や使用感等がさほど問題とされない場合も多く、分散剤や樹脂の選択の幅が広がり、塗料等の設計配合の自由度を高めることができる。
「紫外線遮蔽複合粒子の作製」
アクリル粒子 MP−2200(粒子径:350nm、綜研化学社製)20質量部を純水80質量部に加え、ホモジナイザーを用いて分散させ、アクリル粒子分散液を作製した。
次いで、メタクリル酸メチル(MMA)70質量部に、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)としてParsol(登録商標)1789(DSMニュートリション社製)30質量部、リン酸エステル型界面活性剤3質量部を加えて完全に溶解させ、有機系紫外線遮蔽剤含有MMA溶液を得た。この有機系紫外線遮蔽剤含有MMA溶液におけるアボベンゾン、メタクリル酸メチル及びリン酸エステル型界面活性剤の質量比は、30:70:3であった。
次いで、このエマルジョンと、上記のアクリル粒子分散液を混合した。この混合液におけるアボベンゾン、メタクリル酸メチル及びアクリル粒子の質量比は、30:70:200であった。
この反応液中の紫外線遮蔽複合粒子の体積粒度分布を、粒度分布計 LB−550(堀場製作所社製)にて測定したところ、累積体積百分率が10%における粒子径(D10)
は178nm、50%における粒子径(D50)は313nm、90%における粒子径(D90)は529nmであった。
得られた反応液を室温(25℃)まで冷却した後、この反応液に2−プロパノールを加えて紫外線遮蔽複合粒子を沈降させ、得られた沈殿物を回収した。
上記の紫外線遮蔽複合粒子30質量部を、ポリエーテル変性シリコーン5.5質量部とデカメチルシクロペンタシロキサン(以下、「D5」と略記する)64.5質量部を混合させた溶液に投入し、ジルコニアビーズを用いたビーズミル分散機を用いて分散させ、実施例1の紫外線遮蔽複合粒子D5分散液を作製した。
有機系紫外線遮蔽剤含有MMA溶液におけるアボベンゾン、メタクリル酸メチル及びリン酸エステル型界面活性剤の質量比を50:50:5とした他は、実施例1に準じて実施例2の紫外線遮蔽複合粒子及び紫外線遮蔽複合粒子D5分散液を作製した。
「アボベンゾン含有樹脂粒子の作製」
メタクリル酸メチル90質量部に、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)としてParsol(登録商標)1789(DSMニュートリション社製)10質量部、リン酸エステル型界面活性剤5質量部を加えて混合し、樹脂モノマー溶解液とした。
次いで、このエマルジョン320.0質量部と、純水79.856質量部と、過硫酸カリウム0.144質量部とを混合し、攪拌器及び温度計を備えた反応装置に移して窒素置換を1時間行なった。
紫外線遮蔽複合粒子の代わりに上記のアボベンゾン含有樹脂粒子を用いた他は、実施例1と同様にして、比較例1のアボベンゾン含有樹脂粒子D5分散液を作製した。
実施例1の紫外線遮蔽複合粒子及び比較例1のアボベンゾン含有樹脂粒子それぞれについて評価を行った。評価項目及び評価結果は下記のとおりである。
(1)アボベンゾンの濃度評価
紫外線遮蔽複合粒子及びアボベンゾン含有樹脂粒子それぞれをトルエンに溶解した後、光透過式吸光度測定装置 UV−3150(島津製作所社製)を用いて、検量線法によりアボベンゾンの濃度を測定した。
その結果、実施例1の紫外線遮蔽複合粒子のアボベンゾン濃度は10.2%、比較例1のアボベンゾン含有樹脂粒子のアボベンゾン濃度は9.9%であり、アボベンゾン濃度は実施例1及び比較例1共に同等であった。
熱分析装置 Thermo Plus TG8120(リガク社製)を用いて行った。
ここでは、紫外線遮蔽複合粒子及びアボベンゾン含有樹脂粒子それぞれを、上記の熱分析装置の試料用容器それぞれに投入し、室温(25℃)から100℃まで温度を上昇させ、この間にアボベンゾンの融点が生じているか否かを観測した。ここで、アボベンゾンの融点が生じていれば、アボベンゾンが結晶として析出していることを示し、アボベンゾンの融点が生じていなければ、アボベンゾンが結晶化せずに樹脂粒子中に含まれていることを示す。
その結果、実施例1の紫外線遮蔽複合粒子及び比較例1のアボベンゾン含有樹脂粒子共に、室温(25℃)から100℃までの温度範囲ではアボベンゾンの融点が観測されず、これらの粒子中のアボベンゾンは結晶化しておらず、PMMA中に含まれていることが確認できた。
走査型電子顕微鏡(SEM)S−4000(日立製作所社製)を用いて行った。
図9に実施例1の紫外線遮蔽複合粒子の走査電子顕微鏡像(SEM像)を、図10に比較例1のアボベンゾン含有樹脂粒子の走査電子顕微鏡像(SEM像)を、それぞれ示す。
これらの図によれば、実施例1の紫外線遮蔽複合粒子では、芯材部としてアボベンゾン(色素)を含まない樹脂粒子を用いることで、粒度分布が揃った紫外線遮蔽複合粒子が得られることが確認できた。
なお、実施例2の紫外線遮蔽複合粒子についても、実施例1の紫外線遮蔽複合粒子に準じて粒子の観察を行った結果、実施例1の紫外線遮蔽複合粒子と同様、芯材部としてアボベンゾン(色素)を含まない樹脂粒子を用いることで、粒度分布が揃った紫外線遮蔽複合粒子が得られることが確認できた。
実施例1の紫外線遮蔽複合粒子D5分散液及び比較例1のアボベンゾン含有樹脂粒子D5分散液それぞれについて評価を行った。
ここでは、紫外線遮蔽複合粒子D5分散液及びアボベンゾン含有樹脂粒子D5分散液それぞれを、分散液中のアボベンゾン濃度が2.8%となるようにD5(デカメチルシクロペンタシロキサン)を用いて濃度調整し、次いで、濃度調整した各分散液を石英板にバーコーターを用いて厚みが32μmとなるように塗布し、これらの塗膜の分光透過率をSPFアナライザー UV−100S(Labspere社製)を用いて評価した。
この図によれば、実施例1の塗膜は、比較例1の塗膜と比べて、UV−A、特に380nm〜400nmの波長帯域の紫外線に対して透過率が低く、良く遮蔽されていることが分かった。
以上により、アボベンゾンの濃度が同等であっても、アボベンゾンを局所に存在させて高濃度化させることにより、より長波長側の紫外線を遮蔽できることが確認できた。
[実験例1]
ポリメチルメタクリル酸メチル95質量部と、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)としてParsol(登録商標)1789(DSMニュートリション社製)5質量部とをトルエンに溶解し、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)/アボベンゾン/トルエン溶液を作製した。
PMMA/アボベンゾン/トルエン溶液中のPMMAの質量とアボベンゾンの質量との比を90:10とした以外は、実験例1と同様にして、PMMA/アボベンゾン薄膜を作製した。
PMMA/アボベンゾン/トルエン溶液中のPMMAの質量とアボベンゾンの質量との比を80:20とした以外は、実験例1と同様にして、PMMA/アボベンゾン薄膜を作製した。
PMMA/アボベンゾン/トルエン溶液中のPMMAの質量とアボベンゾンの質量との比を70:30とした以外は、実験例1と同様にして、PMMA/アボベンゾン薄膜を作製した。
PMMA/アボベンゾン/トルエン溶液中のPMMAの質量とアボベンゾンの質量との比を50:50とした以外は、実験例1と同様にして、PMMA/アボベンゾン薄膜を作製した。
PMMA/アボベンゾン/トルエン溶液中のPMMAの質量とアボベンゾンの質量との比を40:60とした以外は、実験例1と同様にして、PMMA/アボベンゾン薄膜を作製した。
PMMA/アボベンゾン/トルエン溶液中のPMMAの質量とアボベンゾンの質量との比を30:70とした以外は、実験例1と同様にして、PMMA/アボベンゾン薄膜を作製した。
実験例1〜7各々のPMMA/アボベンゾン薄膜について、膜厚の測定、吸光度スペクトルの測定及び示差熱分析を行った。
(1)膜厚の測定
触針式段差膜厚計 P−9(KLA‐Tencor社製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
光透過式吸光度測定装置 UV‐3150(島津製作所社製)を用いて透過法により測定した。
実験例1〜7各々の吸光度スペクトルの測定結果を図12に、各吸光度スペクトルについて、ベースラインの強度を相対強度0%とし、スペクトルの最大値の強度を相対強度100%として、標準化した吸光度スペクトルを図13に示す。
また、図13の吸光度スペクトルにおける相対強度20%及び50%となる長波長側のそれぞれの波長と、PMMA/アボベンゾン薄膜中のアボベンゾン濃度との関係を図14に示す。
熱分析装置 Thermo Plus TG8120(リガク社製)を用いて行った。
ここでは、PMMA/アボベンゾン薄膜を石英板から剥がした後、上記の熱分析装置の試料用容器に投入し、室温(25℃)から100℃まで温度を上昇させ、この間にアボベンゾンの融点が生じているか否かを観測した。ここで、アボベンゾンの融点が生じていれば、アボベンゾンが結晶として析出していることを示し、アボベンゾンの融点が生じていなければ、アボベンゾンがPMMA中に結晶として析出せずに含まれていることを示す。測定結果を表1に示す。
図13の標準化した吸光度スペクトルから、樹脂中のアボベンゾン濃度が上昇すると、スペクトルの最大値の強度がブロードとなり、特に長波長側にこぶの部分(ショルダー)が出現し、吸収範囲が広がることが確認できた。
また、UV吸収能の向上は、アボベンゾン濃度が30%以上で顕著となることが確認できた。
また、表1から、樹脂中にアボベンゾンを混入させた場合、60%まで結晶として析出せずに安定に存在することができることが確認できた。
2 芯材部
3 被覆膜
11 紫外線遮蔽複合粒子
12 芯材部
13 島状物
21 紫外線遮蔽複合粒子
22 芯材部
23 島状物
31 紫外線遮蔽複合粒子
32 芯材部
33 島状物
41 紫外線遮蔽多層複合粒子
42 被覆膜
51 紫外線遮蔽多層複合粒子
52 島状物
61 紫外線遮蔽多層複合粒子
62 被覆膜
71 紫外線遮蔽多層複合粒子
72 島状物
Claims (6)
- 第1の樹脂からなる芯材部の表面全体または表面の1箇所以上に、第2の樹脂中にジベンゾイルメタン誘導体を含有してなる樹脂組成物を付着させて被覆膜または1個以上の島状物とし、
前記樹脂組成物中の前記ジベンゾイルメタン誘導体の含有率は20質量%以上かつ60質量%以下であることを特徴とする紫外線遮蔽複合粒子。 - 前記ジベンゾイルメタン誘導体は、アルキルアルコキシジベンゾイルメタンであることを特徴とする請求項1記載の紫外線遮蔽複合粒子。
- 前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂のうちいずれか一方または双方は、(メタ)アクリル樹脂、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルスチレン共重合体、アクリルポリエステル共重合体、シリコンアクリル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂の群から選択される1種または2種以上からなることを特徴とする請求項1または2記載の紫外線遮蔽複合粒子。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の紫外線遮蔽複合粒子の表面全体または表面の1箇所以上に、第3の樹脂中にUV−B吸収剤を含有してなる樹脂組成物を付着させて被覆膜または1個以上の島状物としたことを特徴とする紫外線遮蔽多層複合粒子。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の紫外線遮蔽複合粒子及び請求項4記載の紫外線遮蔽多層複合粒子のうちいずれか1種または2種を分散媒中に分散してなることを特徴とする紫外線遮蔽分散液。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の紫外線遮蔽複合粒子、請求項4記載の紫外線遮蔽多層複合粒子及び請求項5記載の紫外線遮蔽分散液の群から選択される1種または2種以上を基剤中に含有してなることを特徴とする化粧料。
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