A.第1実施例:
本発明の第1実施例について説明する。
A−1.装置構成:
図1は、本発明の第1実施例としてのプリンター20の概略構成図である。プリンター20は、双方向印刷を行うシリアル式インクジェットプリンターであり、図示するように、プリンター20は、紙送りモーター74によって印刷用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモーター70によってキャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ80に搭載された印刷ヘッド90を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、これらの紙送りモーター74,キャリッジモーター70,印刷ヘッド90および操作パネル99との信号のやり取りを司る制御ユニット30とから構成されている。プリンター20は、双方向印刷として、高画質モードと、高速モードとの何れかで印刷を行う。高画質モードとは、キャリッジ80の移動速度が200cpsに設定されるモードのことである。高速モードとは、キャリッジ80の移動速度が400cpsに設定されるモードのことである。何れを採用するかは、操作パネル99からの入力に従って決定される。
キャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構は、プラテン75の軸と平行に架設され、キャリッジ80を摺動可能に保持する摺動軸73と、キャリッジモーター70との間に無端の駆動ベルト71を張設するプーリー72等から構成されている。
キャリッジ80には、カラーインクとして、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエローインク(Y)、ブラックインク(K)、ライトシアンインク(Lc)、ライトマゼンタインク(Lm)をそれぞれ収容したカラーインク用のインクカートリッジ82〜87が搭載される。キャリッジ80の下部の印刷ヘッド90には、上述の各色のカラーインクに対応するノズル列が形成されている。キャリッジ80にこれらのインクカートリッジ82〜87を上方から装着すると、各カートリッジから印刷ヘッド90へのインクの供給が可能となる。
印刷ヘッド90には、図2に示したように、各インク色に対応して、インク滴を吐出する複数のノズルを副走査方向に配列したノズル列が設けられている。ノズル列におけるノズルの配列ピッチRは、ドットの形成ピッチ(ラスター間隔r)の整数倍とされており、印刷時には、主走査毎に、印刷ヘッド90に対して用紙を副走査方向に相対的に移動しつつ主走査を複数回繰り返すことで、各ラスターを完成する、いわゆるインターレースによる印刷を行う。また、一つのラスターを複数回の主走査により完成する、いわゆるオーバーラップ印刷も実施することができる。このため、インターレースとオーバーラップとを組み合わせることにより、各ラスターあるいは各カラムを、印刷ヘッド90の往動時あるいは復動時のいずれかで形成されるドットに統一した、いわゆるカラム交互のドット配置(図3(A))あるいはラスター交互のドット配置(図3(B))で印刷することができる。あるいは、往動時に形成されるドット、復動時に形成されるドットを、各ラスターおよび各カラムにおいて、交互に配置する、いわゆるタスキ掛けのドット配置(図3(C))で印刷することも可能である。第1実施例では、図3(C)に示したたすき掛けのドット配置により印刷するものとした。印刷ヘッド90は、こうしたドット配置により、例えば解像度720×720dpiで、多色のドットによるカラー印刷を行う。なお、印刷ヘッド90による印刷の解像度は、180×180dpi以上であれば良く、例えば主走査方向について180、240、360、720、1440dpi、あるいはそれ以上の解像度と、副走査方向について180、240、360、720、1440dpi、あるいはそれ以上の解像度とを適宜組み合わせた解像度であっても差し支えない。あるいは、300や600dpi、といった解像度(あるいはそれ以上)の解像度であっても差し支えない。種々の解像度でインターレースやオーバーラップを用いて所望のドット配置を実現する方法は、周知のものなので、詳しい説明は省略する。
上記の印刷ヘッド90やキャリッジモーター70、紙送りモーター74などを制御して印刷を実行する制御ユニット30は、CPU40や、ROM51、RAM52、EEPROM60がバスで相互に接続されて構成されている。制御ユニット30は、ROM51やEEPROM60に記憶されたプログラムをRAM52に展開し、実行することにより、プリンター20の動作全般を制御するほか、請求項におけるドットデータ生成部42、印刷部43としても機能する。これらの機能部の詳細については後述する。
EEPROM60には、第1のディザマスク61と第2のディザマスク62とが記憶されている。本実施例で用いた第1のディザマスク61及び第2のディザマスク62は、64×64の大きさを有しており、0から256までの閾値が、4096個の格納要素に格納されている。各閾値は、後述するハーフトーン処理において用いられる。第2のディザマスク62としての各閾値の配置は、いわゆるブルーノイズマスクに近い特性を持つように決定されている。本実施例で用いた第2のディザマスク62の特性については、後で詳しく説明するが、高画質を実現する第1のディザマスク61と同様、分散性の高い分散型ディザマスクとして構成されている。
本実施例では、印刷は、プリンター20単独で行われる。制御ユニット30には、メモリーカードスロット98が接続されており、メモリーカードスロット98に挿入したメモリーカードMCから画像データORGを読み込んで入力する。本実施例においては、メモリーカードMCから入力する画像データORGは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色の色成分からなるデータである。プリンター20は、このメモリーカードMC内の画像ORGを用いて印刷を行う。もとより、外部のコンピューターにUSBなどやLANを用いて接続し、コンピューター側でハーフトーン処理などを行い、その結果を受け取ってプリンター20で印刷するといった構成を取ることも差し支えない。
以上のようなハードウェア構成を有するプリンター20は、キャリッジモーター70を駆動することによって、印刷ヘッド90を印刷用紙Pに対して主走査方向に往復動させ、また、紙送りモーター74を駆動することによって、印刷用紙Pを副走査方向に移動させる。制御ユニット30は、キャリッジ80が往復動する動き(主走査)や、印刷媒体の紙送りの動き(副走査)に合わせて、印刷データに基づいて適切なタイミングでノズルを駆動することにより、印刷用紙P上の適切な位置に適切な色のインクドットを形成する。こうすることによって、プリンター20は、印刷用紙P上にメモリーカードMCから入力したカラー画像を印刷することが可能となっている。
A−2.印刷処理:
プリンター20における印刷処理について説明する。図4は、プリンター20における印刷処理の流れを示すフローチャートである。ここでの印刷処理は、ユーザーが操作パネル99等を用いて、メモリーカードMCに記憶された所定の画像の印刷指示操作を行うことで開始される。印刷処理を開始すると、CPU40は、まず、メモリーカードスロット98を介してメモリーカードMCから印刷対象であるRGB形式の画像データORGを読み込んで入力する(ステップS110)。
画像データORGを入力すると、CPU40は、用紙情報の設定を、操作パネル99を介して受け付ける処理を行う(ステップS115)。この用紙情報には、少なくとも用紙サイズと用紙の種類とが含まれる。この用紙の種類(メディアタイプ)は、具体例として「普通紙」「軽い用紙」「厚紙」などがあり、用紙の単位面積当たりの質量に関する情報である。この用紙の種類から、用紙の厚さが推定できる。なお、デフォルトで所定の用紙サイズ(例えばA4)と用紙の種類(例えば普通紙)とが設定されており、ユーザーが特に指定を行わなければ、デフォルトの用紙情報が用いられる。
用紙情報の設定を受け付けた後、CPU40は、EEPROM60に記憶されたルックアップテーブル(図示せず)を参照して、画像データORGについて、RGB形式をCMYKLcLm形式に色変換する(ステップS120)。
色変換処理を行うと、CPU40は、印刷モードが高画質モードと高速モードとの何れに設定されているかの判断を行う(ステップS125)。高画質モードに設定されていると判断すれば(ステップS125、高画質モード)、第1のハーフトーン処理(ステップS130)を行い、高速モードに設定されていると判断すれば(ステップS125、高速モード)、第2のハーフトーン処理(ステップS135)を行う。高速モードの場合、高画質モードの場合に比べてドットの形成位置のずれが生じ易い。そこで、高速モードの場合、ドットの形成位置のずれが生じても画質が劣化し難い第2のハーフトーン処理を行う。一方、高画質モードの場合、ドットの形成位置のずれが生じ難いので、ドットデータ通りにドットが形成されたときに、より高画質となる第1のハーフトーン処理を行う。第1,第2のハーフトーン処理の何れでも、ドットデータ生成部42の処理として、画像データを各色のドットのON/OFFデータ(以下、ドットデータとも言う)に変換する処理を行う。この処理は、本実施例においては、ディザ法を用いて行う。すなわち、入力データと、ディザマスクを構成する複数の閾値のうちの、入力データに対応する位置の格納要素に格納された閾値とを比較し、入力データが閾値よりも大きければ、ドットを形成する(ドットON)と判断し、入力データが閾値以下であればドットを形成しない(ドットOFF)と判断するものである。第1のハーフトーン処理においては第1のディザマスク61を、第2のハーフトーン処理においては第1のディザマスク62を用いる。この処理で用いる第1のディザマスク61又は第2のディザマスク62は、主走査方向および副走査方向に並ぶ各々の入力データに対して、主走査方向および副走査方向に繰り返し適用される。本実施例におけるハーフトーン処理は、生成するドットデータが所定の特性を有するように制御される。この制御の内容は、第1のディザマスク61及び第2のディザマスク62の持つ性質に依存している。第1のディザマスク61及び第2のディザマスク62の有する特性については、後述する。なお、ハーフトーン処理は、ドットのON/OFFの2値化処理に限らず、大ドットおよび小ドットのON/OFFなど、多値化処理であっても良い。また、ステップS130又はステップS135に供する画像データは、解像度変換処理やスムージング処理などの画像処理が施されたものであっても良い。
第1又は第2のハーフトーン処理を行うと、CPU40は、プリンター20のノズル配置や紙送り量などに合わせて、1回の主走査単位で形成するドットパターンデータに並び替えるオーバーラップおよびインターレース処理を行う(ステップS140)。オーバーラップおよびインターレース処理を行うと、CPU40は、印刷部43の処理として、印刷ヘッド90、キャリッジモーター70、モーター74等を駆動させて、印刷を実行する(ステップS150)。
かかる印刷処理で形成されるドットの配置について説明する。上述の説明からも明らかなように、プリンター20は、印刷媒体の共通の印刷領域に、印刷媒体に対するインクの吐出位置を変えつつ、複数の異なるタイミング(すなわち、往動と復動)で印刷ヘッドからインクを吐出してドットを形成し、往動で形成されたドット(以下、往動ドットとも言う)と、復動で形成されたドット(以下、復動ドットとも言う)とが相互に組み合わされた印刷画像を出力する。第1実施例では、ドットの配置をタスキ掛け配置(図3(C))としているので、印刷ヘッド90の往動時に形成されるドットは、図5(A)にハッチングを施して示したように市松模様状の画素位置に形成され、印刷ヘッド90の復動時に形成されるドットは、図5(B)に網掛け施して示したように、往動時のドット位置とはカラム方向に1画素分ずれた千鳥配列の画素位置に形成される。往動時に形成されるドットに対応した画素の集合を第1の画素グループ、復動時に形成されるドットに対応した画素の集合を第2の画素グループと呼ぶ。図5(A)、(B)において、実際に形成されたドットを、それぞれ「●」印およびハッチングを施した「○」印で示した。ドットサイズは、通常、ドットの形成位置に多少のずれが生じても、最大濃度で印刷媒体表面を100%被覆できるよう、画素の対角線サイズよりも大き目に設定されている。印刷された画像は、図5(C)に示したように、第1,第2の画素グループのそれぞれで形成されたドットを合わせたものとなる。
往動時と復動時とに形成されるドットの形成位置が完全に調整されていれば、図3に模式的に示したように、ドットは主走査方向にも副走査方向にも、完全に互い違いの位置に形成される。この状態を、ドット間距離が0であると呼ぶ。図5(C)は、ドット間距離が0の場合、つまり、形成された往動時のドットと復動時のドットが完全に互い違いに形成された状態を示している。双方向印字においてドットが形成される位置がずれ、ドット間距離が0の状態とは異なった状態で印刷が行われることは生じ得るので、実際に形成されるドットは、図5(C)とは異なる場合がある。例えば、復動時のドット形成位置に対して、往動時のドット形成位置が、ラスター方向(主走査方向)に約1画素分ずれているとすると、図5(C)で示した例では、図6(A)に示したように、往動時に形成されるドットが、主走査方向にずれた結果、ドットの重なり合う面積が増加する。また図6(B)に示したように、ずれ量が2に増えると更に重なり面積が増加する。
図5(C)からも分かるように、位置ずれがなければドット同士の重なりは非常に少ない。これはブルーノイズ特性を有するディザマスクでは、できるだけドットを離して配置しようとするためである。これに対して実際の印刷において、ドット形成位置に位置ずれが生じてドット間距離が大きくなると、図6(A),図6(B)に示したように、往動時にドットが形成される第1の画素グループに属するドットと、復動時にドットが形成される第2の画素グループに属するドットの重なり量が増える。ドット重なり量が増えると、ドットが印刷用紙Pを覆う割合である被覆率は変動する。また、ドットの形成位置にずれがなければ、隣接することのなかったドットが、ドット間距離が大きくなってドットの形成位置がずれたことで、隣り合う位置に形成されることも起こりえる。この場合には、被覆率は、ドットゲインによる重なりに対応した部分について変動する。なお、本実施例では、解像度は720×720dpiなので、2画素分ずれているということは、往動時に形成されるドットが属する画素グループの復動時に形成されるドットが属する画素グループとのドット間距離は、2/720インチに相当する。同じ2画素のずれでも、解像度が例えば300×300dpiであれば、ドット間距離は、2/300インチとなって大きな値となる。
A−3.ハーフトーン処理:
以上の点を踏まえて、第1実施例におけるハーフトーン処理の特徴について説明する。図4のステップS130として示したハーフトーン処理において、第1の画素グループに属する画素と第2の画素グループに属する画素の階調値を、EEPROM60に記憶した第2のディザマスク62と比較することにより、それぞれの画素位置にドットを形成するか形成しないかを決定している。一方、ステップS135として示したハーフトーン処理においては、第1の画素グループに属する画素と第2の画素グループに属する画素の階調値を、EEPROM60に記憶した第2のディザマスク62と比較することにより、それぞれの画素位置にドットを形成するか形成しないかを決定している。決定されたドットのオン・オフを示すデータを、ドットデータと呼ぶ。
ドットデータを生成するのに用いられる第2のディザマスク62は、既に説明したように、ブルーノイズマスクよりは低いものの、分散性の高いものとして設定されている。「分散性が高い」とは、形成されるドットの分布が、空間周波数領域において、所定の空間周波数以下の低周波領域より高周波側にピークを持つノイズ特性を有することを意味している。第1実施例第2のディザマスク62における閾値の配置は、往動時・復動時のそれぞれで形成されたドットを合わせたドット配置については、ドットが重なったり、隣接したりする割合は、例えばホワイトノイズ特性に従うドット配置よりは低いものの、ブルーノイズマスクによるドット配置よりは高いものとして、決定されている。このため、第1実施例の第2のディザマスク62を用いた場合、往復動におけるドット形成位置のずれが生じても、被覆率の変動が抑制されている。
しかも、本実施例のハーフトーン処理に用いる第2のディザマスク62では、往動および復動により形成させるドットのドット間距離が、2/720インチ〜5/720インチの範囲の任意の距離となった状態で印刷が行われたとしても、形成される画像のCIEL*a*b*色空間での変化が、以下の範囲になるように、第2のディザマスク62の各閾値の配置が設定されている。
(A)印刷される画像が、イエロー(RGB値で、R=G=255、B=0〜64、但し、RGB値は8ビット換算)である場合に、CIEL*a*b*色空間におけるb*の変化が値2以下の範囲となる。
(B)印刷される画像が、マゼンタ(RGB値で、R=B=255、G=0〜64、但し、RGB値は8ビット換算)である場合に、CIEL*a*b*色空間におけるL*の変化が値0.5以下またはa*の変化が値0.5以下の範囲となる。
(C)印刷される画像が、シアン(RGB値で、G=B=255、R=0〜64、但し、RGB値は8ビット換算)である場合に、CIEL*a*b*色空間におけるL*の変化が値0.5以下の範囲となる。
なお、第1の画素グループに属するドットが形成される位置から第2の画素グループに属するドットが形成される位置までのドット間距離の差が2/720インチ〜5/720インチである複数の状態とは、印刷が行われる複数の状態の一方のドット間距離と他方の状態のドット間距離とが、2/720〜5/720インチだけ異なっていることを意味している。一般に、双方向印字における往動と復動のドット形成位置は、何らかの方法で調整がなされるので、調整後の状態を第1の状態(第1の設定)と呼び、使用によってドット形成位置にずれが生じた後の状態を第2の状態(第2の設定)と呼ぶものとし、ドット間距離の異なる複数の状態として扱っても良い。仮にこのように呼ぶものとすれば、第1の状態は、第1の画素グループに属するドットが、第2の画素グループに属するドットの形成位置に対して、ずれがないデフォルトの位置(ドット間距離=0の位置)、つまり第1の画素グループに属するドットが、第2の画素グループに属するドットに対して形成されるべき位置にある状態として定めることもできる。あるいは、第1の画素グループに属するドットが、第2の画素グループに属するドットの形成位置との関連において予め定められた位置にある状態としても良い。第1の状態に対して、第2の状態は、第1の状態でドットが形成される第1の位置から2/720インチ〜5/720インチの範囲の任意の距離だけずれた位置にドットが形成される状態である。また、第1の状態を出荷時のデフォルト状態(基準状態)とした上で、第1、第2の状態を定義しても良い。こうした第1,第2の状態の各々でドットを形成する際に、上記の特性を有する第2のディザマスク62を用いてハーフトーン処理をした結果、本実施例のプリンター20は以下の効果を奏する。
A−4.実施例の効果:
上記構成を備えた第1実施例のプリンター20では、画像データORGを受け取って、制御ユニット30により図4に示した処理を行うことで、印刷用紙Pに画像を印刷する。このとき、画像を構成する各画素の階調値は、高速モードの場合、つまりキャリッジ80の往復速度が速いことによってドットの形成位置のずれが生じ易い場合、第2のディザマスク62を用いたディザ法によりハーフトーン処理されて、ドットの分布に変換される。第2のディザマスク62はもともとは分散性を優先して、ブルーノイズマスクを典型とする分散型ディザマスクとされているので、ハーフトーン処理されてドットの分布により表現された画像の画質は粒状感が低く、且つ画像の再現性の高いものとなっている。
その上、往復動におけるドットの形成位置が異なる複数の状態で印刷しても、往動時に形成されるドットと復動時に形成されるドットとの重なり方の変動が抑制され、形成される画像のCIEL*a*b*色空間での変化は、上記(A)から(C)の範囲内となる。かかる特性を実現するために、第1実施例では、印刷ヘッド90の往動時に形成されるドットが属する第1の画素グループの画素と、復動時に形成されるドットが属する第2の画素グループの画素との間で隣接関係にある画素、すなわちペア画素にドットが形成される確率が、ブルーノイズマスクより高く設定されている。この結果、往動時と復動時でドットの形成位置にずれを生じても、形成されるドットによる被覆率の変動が小さく、画像の階調値や色味の変化が生じにくいという特徴を有する。この点を、図7から図9を用いて説明する。
図7は、720×720dpiの解像度で、シアン色の均一な画像を形成した場合のドット形成位置のずれ量(画素単位)とL*a*b*色空間におけるL*の変化量ΔLとの関係を示す説明図である。図7(A)は、印刷する画像の色をRGB(各色8ビット)で表した場合において、G=B=255とし、Rを0、32、64、96、128と変化させた場合のL*の値を示している。図7(A)において、Pは本実施例の第2のディザマスク62を用いた場合のL*の値を、Nは従来のブルーノイズマスクを用いた場合のL*の値を、それぞれ、ドット形成位置のずれ量(−10画素、−5画素、0画素(ずれなし)、2画素、5画素、10画素、20画素)に応じて測定した値を示している。図7(A)の右端には、それぞれのL*の変化量ΔLを示した。変化量ΔLは、ドットの形成位置のずれ量毎のL*のうち、最大値と最小値との差分である。
図7(A)に示したデータのうち、R=0の場合のPとNの値を代表例として、横軸にドット形成位置のずれ量をとってプロットしたグラフが、図7(B)である。図7(A)に示した各データは、同様にグラフにすることができる。図7(B)から見て取れるように、本実施例の第2のディザマスク62を用いたハーフトーン処理では、往動時と復動時とで、ドットの形成位置が、ずれがない状態からプラス・マイナスいずれの方向にずれても、L*がほとんど変化しないことが分かる。その変化量ΔLは、最大でも0.3(R=32,64,96の場合)に抑制されている。これに対して、従来のブルーノイズマスクを用いたハーフトーン処理では、往動時と復動時とで、ドットの形成位置にずれが生じると、ずれがない状態からプラス・マイナスいずれの方向にドットの形成位置がずれても、L*が大きく変化することが分かる。その変化量ΔLは、最大で1.4に上る(R=0の場合)。一般に、L*の変化が0.5の範囲を超えると、違いとして視認し得るので、被覆率の変動をこれ以下に対応した範囲に抑制することで、本実施例により形成される画像では、往動時に形成されるドットの位置と、復動時に形成されるドットの位置とにずれ(ドット間距離の差)が生じても、明るさの変化として関知されることがない。
同様に、図8(A)(B)、図9(A)(B)に示したように、マゼンタやイエローの均一な画像を形成した場合にも、CIEL*a*b*色空間における変化の範囲は十分に小さく抑制されている。例えば、図8(A)に示したように、マゼンタ(R=B=255、G=0,32,64,96,128)では、本実施例ではL*の変化が、0.4までの範囲となるよう被覆率の変動が抑制されている。他方、ブルーノイズマスクを用いた場合には、L*の変化ΔLは、最大で1.5に上る(G=32の場合)。また、図8(B)に示したように、イエロー(R=G=255、B=0,32,64,96,128)では、本実施例でのL*の変化ΔLは1.3の範囲となるように被覆率の変動が抑制されているのに対して、ブルーノイズマスクを用いた場合は、5.7に上っている(B=64の場合)。
なお、被覆率の変動による画像の変化は明度に対応したL*に限らない。図9(A)(B)に示したように、本実施例での第2のディザマスク62を用いた場合には、シアン(G=B=255、R=0,32,64,96,128)では、a*の変化Δaは、0.6を超えない範囲に被覆率の変動は抑制されている。他方、従来のブルーノイズマスクでは、a*の変化Δaは最大で1.6に上っている(R=96の場合)。また、マゼンタ(R=B=255、G=0,32,64,96,128)では、本実施例ではb*の変化Δbは、0.4を超えない範囲に被覆率の変動は抑制されている。他方、ブルーノイズマスクを用いた場合には、b*の変化Δbは、最大で1.6に上る(G=96の場合)。こうした色味の変化は、形成される各色インク滴の形成の割合が異なることにより生じる。本実施例では、CMYLcLmのインク滴により印刷を行っており、画像の色により、各色インク滴の形成の割合は変化する。この結果、ドット形成位置のずれによる被覆率の変動がインク色毎に相違すると、色味も変化してしまう。本実施例では、ドット形成位置のずれ(ドット間距離の差)による被覆率の変動をこうしたa*、b*の変化が所定範囲となるように抑制しているので、プリンター20の使用者に色味の変化として感じとられるということがない。特に、複数の状態の一つが、往動時に形成されるドットの位置と復動時に形成されるドットの位置とが十分に調整された基準位置で印刷される状態であり、他の一つが、この基準位置から2/720インチ〜5/720インチの範囲の任意の距離だけずれた場合で印刷される状態であっても、L*a*b*色空間における変化の範囲は十分に小さく抑制され、明るさや色味の変化として、認識されることがない。
この結果、本実施例のハーフトーン処理によれば、往動時と復動時でのドットの形成位置にずれ(ドット間距離の差)が生じても、形成される画像の階調値の変化はほとんど生じることがない。また、被覆率の変動に伴って色味が変化するということもほとんど生じない。第1実施例における色味の変化は、少なくともユーザーによって視認される範囲以下に押さえられる。
一方、高画質モードの場合、つまりキャリッジ80の往復速度が遅いことによってドットの形成位置のずれが生じ難い場合は、第1のディザマスク61を用いることによって、第2のディザマスク62を用いる場合よりも粒状性を良好にすることができる。よって、高画質な印刷画像を得ることができる。
B.ディザマスクの生成方法:
本実施例では、往復動により形成されるドットの形成位置のずれが生じた場合に、被覆率の変動をCIEL*a*b*色空間における変化を所定の範囲に抑制している。こうした被覆率の変動の抑制は、本実施例では、ペアドットの発生確率を制御することにより実現した。以下、こうしたペアドットの発生確率の制御の原理について説明し、その後、かかるペアドットの発生確率を制御したディザマスクの生成方法について説明する。
B−1.ペアドット制御の原理:
ドット集中型のドット配置において、往復動でのドット形成位置がずれた場合に生じる被覆率の変動については、既に図28を用いて説明した。ドット集中型の場合には、ドット形成位置がずれるに従って、被覆率は一般に増加する傾向を示すのに対して、ドット分散型のディザマスクを用いた場合には、ドット形成位置がずれるに従って、被覆率は低下する傾向を示す。このため、ドット分散型のディザマスクの典型であるブルーノイズマスクを用いた場合には、往動と復動でのそれぞれでのドット形成位置同士にずれが生じると、一般に画像の明度は高くなり、時に色味に変化が生じる。これに対して、第1実施例では、往復動におけるドットの形成位置が2/720インチ〜5/720インチの範囲の任意の距離だけずれた場合の往動時に形成されるドットと復動時に形成されるドットとの重なり方の変動が、形成される画像のCIEL*a*b*色空間での変化が予め定めた範囲内となるように抑制されている。なお、ドット形成位置のずれは、これ以外に、ノズル毎に生じるものも存在する。例えば、ノズルのヘッドにおける形成位置のずれ等によるもの、印刷媒体の延び等によるインク滴の弾着位置のずれ等によるもの等がある。
ハーフトーン処理において用いるディザマスクに上記のような特性を持たせる手法としては、種々のものが考えられる。第1実施例では、第2のディザマスク62に上記の特性を持たせるために、以下に説明するペアドット制御の手法を用いた。ペアドットとは、往動(復動)時に形成されるドットと、復動(往動)時に形成されるドットとが、隣接する位置に配置される場合の両ドットの関係を言う。第1実施例の第2のディザマスク62は、後述するように、低濃度領域においても、有意の確立でペアドットが生じるように閾値の配置が設定されているのである。ペアドットが生じる有意の確率とは、次のようにして設定された確率である。第1実施例で用いる第2のディザマスク62では、画像データの階調値が0〜128/255の範囲では、第1および第2の画素グループに属する各画素に、ドットが配置される場合の確率をk(0≦k≦1)とすると、ドットが形成された一つの画素のラスター方向(主走査方向)右に隣接する画素またはカラム方向(副走査方向)下に隣接する画素のいずれかにドットが形成される確率Kが、それぞれ0.8×k2程度とされている。
着目した一つの画素に対して隣接する画素のうち、ドットが形成されるグループが異なるものを、以下「隣接画素」と呼ぶ。着目した画素に隣接する画素は、図3(C)のタスキ掛けの配置では、上下左右方向に4つ存在する。ドットの形成位置の大きなずれが生じるのは、往動時に形成されるドットと復動時に形成されるドットの間である。したがって、単に隣接しているか否かだけではなく、隣接し且つ異なる画素グループに属している画素同士に限って、ドットの発生確率を調整する。第1実施例では、往動時に形成されるドットと復動時に形成されるドットは、図3(C)に示したように、互い違いになっているので、着目画素に対して隣接し且つ異なる画素グループ属している画素は、着目画素の上下、左右の4箇所に存在する。本実施例では、このうち、ラスター方向(主走査方向)右、およびカラム方向(副走査方向)下に隣接する画素だけを、着目画素に対する「隣接画素」としている。これは、着目画素から見て点対称にある隣接画素は、どちらか一方だけを考慮して、ペアドット(隣接画素の両方に形成されたドット)を数えれば良いからである。画像を形成する全画素について、画像の左上から右下へと、着目画素を順次移動しながら、点対称にある隣接画素のいずれか一方だけを数えていけば、重複することなく、全てのペアドットを数えることができる。
図10(A)は、着目画素OJの位置を(0,0)とし、主走査右方向および副走査下方向をプラスとした場合、位置(1,0)が右側の隣接画素NR、位置(0,1)が下側の隣接画素NDとなることを示している。また、着目画素OJと、隣接画素NR,NDのいずれか一つとの関係を特定する場合には、これらをまとめて「ペア画素」と呼ぶ。第1実施例では、着目画素と共にペア画素を構成する隣接画素は、上記の通り、着目画素OJの右または下の画素NR,NDに限っているが、逆に着目画素のOJの左や上の画素などに限ってペアドットを数えても差し支えない。また、図10(A)では、ペア画素を、着目する画素に隣接する画素に限っているが、ペア画素として、発生確率を考慮する画素は、隣接する画素に限る必要はない。図10(B)、(C)に示したように、着目画素から隔たった位置の画素まで隣接画素として扱うこともでき、こうした場合の他の例については、後述する。
ペア画素にドットが形成される確率について説明する。ここで階調値は、ドットがオンになる(形成される)確率に対応するものとして扱う。仮に、ハーフトーン処理される画像ORGが、階調値26/255の一様な画像であったとすると、ドットの配置は10画素に一つ程度になる(k=0.1)。これに対して、ペア画素にドットが形成される確率Kが、第1実施例のディザマスクでは、K=0.8×k2≒0.008程度とされているのである。従来の分散性の高いディザマスクでは、低濃度領域では、ドットの分散性を優先しており、隣接する画素であるペア画素に共にドットが形成され確率は、限りなく0に近づけられている。実際、ブルーノイズマスクとして知られている特性を有するディザマスクでは、階調値26/255で、ペア画素に共にドットが形成される例は見つからなかった。
これに対して第1実施例では、階調値が0〜127/255、つまりドットの形成確率kが0〜0.5程度の範囲で、ペア画素にドットが共に形成される確率Kは、0.8×k2程度である。つまり、例えば、階調値が52/255(k≒0.2)であれば、ペア画素に共にドットが形成される確率Kが、0.032、つまり100組のペア画素当たり3組程度の割合でドットが形成されていることになる。
ペア画素にドットが形成される割合を模式的に示したのが図11である。図11において、横軸は、画素にドットが形成される確率で、画像の階調値に対応している。また、図11の縦軸は、ペア画素に共にドットが形成される割合を示している。図11において、実線JD1は、本実施例のディザマスクを用いてハーフトーン処理を行った場合を示しており、一点鎖線BN1は、ブルーノイズマスクを用いてハーフトーン処理を行った場合を示している。また、破線WN1は、ホワイトノイズマスクを用いてハーフトーン処理を行った場合を示している。ここでホワイトノイズマスクとは、マスクサイズを十分に大きくした上で、ディザマスクの各閾値を乱数により設定することで、閾値を毎回乱数によって発生させるランダムディザ法と同等の結果が得られるようにしたディザマスクを指すものとする。ブルーノイズマスクは低周波成分を含まないブルーノイズ特性を示すのに対し、ホワイトノイズマスクは、低周波成分から高周波成分までを満遍なく含むホワイトノイズ特性を示す。
図示するように、ブルーノイズマスクを用いた場合には、画像の階調値が低い領域(階調値0〜51、ドットの発生確率k=0〜0.2)では、ペア画素に共にドットが形成される確率はほぼ0である。これに対して、ホワイトノイズマスクを用いた場合には、ドットの形成位置はランダムなので、ドットの形成の確率kに対して、ペア画素にドットが形成される確率は、k2にほぼ一致している。これらの特性に対して、本実施例で採用したディザマスクでは、分散型のディザマスクでありながら、ペア画素に共にドットが形成される確率Kは、実線JD1として示したように、階調値の範囲0〜127(ドットの発生確率k=0〜0.5)で、ほぼ0.8×k2とされている。すなわち、本実施例で用いたディザマスクは、形成されるドットの分布については、ブルーノイズマスクに近い分散性を示しながら、ペア画素に共にドットが形成される確率Kについては、ホワイトノイズマスクに近い特性を示すものとなっている。こうしたペア画素におけるドット形成の割合を高めた分散型のディザマスクの作り方については、後で改めて説明する。
図12は、ドットの形成の割合が96/255である階調値の画像データORGを処理した場合の被覆率変動のシミュレーション結果を示すグラフである。図において、横軸は、往動時と復動時のドット形成位置のずれ量を、画素を単位として示し、縦軸は、被覆率変動率を示している。図12のグラフにおいて、実線JE1は、第1実施例の第2のディザマスク62を用いた場合を、破線BB1は、ドット同士が極力離散的に発生するよう作成された典型的なブルーノイズマスクを用いた場合を、それぞれ示している。ここで被覆率とは、形成されたドットが用紙Pを覆っている割合を意味し、被覆率の変動とは、本来ドットの形成位置にずれがない場合にドットが印刷用紙Pを覆う割合を基準として、ドットの形成位置にずれが生じたために、ドットの重なりが生じて用紙を覆う割合が変化する、その程度を意味している。
プリンター20ではインク滴が画素を完全に覆うように、ドットサイズは画素サイズよりやや大き目に設定してある。このため、ドット同士が重ならなくても、ドット同士が隣接して接触した状態になるとドットの重なりが発生し、被覆率は低下する。典型的なブルーノイズマスクではドット間隔を極力離して分散配置しようとするため、ずれがない状態でドット同士の接触、すなわち被覆率低下要因は最小となっている。したがって、実際のプリンター20で、例えば往復動印刷時におけるドットの形成位置にずれが発生すると、ドットの形成位置は最適配置から崩れ、ドット同士の接触や重なりが増え、一般に被覆率が低下する。同じ階調値のデータを印刷している場合に、被覆率が変動すると、画像の濃淡ムラとなり、画質が低下する。こうした被覆率変動による画質のムラは、特に大判プリンターにより印刷された大判の印刷物ほど目に付き易い。なぜなら、大判の印刷物は、離れて見るのが普通であり、離れて見た場合には、低周波の印字ムラに気づき易くなるからである。
図12に示したように、本実施例の第2のディザマスク62を用いた場合には、往動時と復動時でドット形成位置にずれを生じても、通常の分散型ディザマスクを用いた場合より、被覆率の変動が生じ難いことが分かる。なお、図12では、往動時印刷位置に対する復動時印刷位置のずれ量Δdが画素を単位として偶数のとき(Δd=2、4・・・)よりも奇数のとき(Δd=1、3・・)の被覆率低下率が大きくなる、ずれ量2を周期とする変動が見られる。ずれ量2周期の変動が発生するのは、図3(C)に示したタスキ掛けの配置による印刷では、水平ずれ量が奇数のときには往動時に形成されるドットと復動時に形成されるドットの位置が完全に重なるからである。このため、他の要因によるドット形成位置のずれを考慮せず、全てのドットの形成位置が往復動で同じようにずれると仮定して実行したシミュレーションでは、水平ずれ量が奇数のとき、図12に示したように、被覆率低下が顕在化することになるのである。実際のプリンター20では、往復動印刷におけるドット形成位置のずれに、画素単位の小さな位置ずれが重畳されるため、図12に示した被覆率の変動は、平坦化される。本実施例の第2のディザマスク62を用いた場合の被覆率変動は、図12の実線JF1はより更に平坦なものになり、ほとんど問題とならなくなる。これに対して、分散型ディザマスクを用いた場合の変動は、図12の破線BB1より多少平坦化されるものの十分には解消しきれず、被覆率の変動は残ることになる。
ペアドットの形成の割合をk2に近づけることにしたのは、次の知見によっている。すなわち、ブルーノイズマスクなどによってドット間隔を極力離して分散配置しておいても、特定の画素グループのドットの形成位置がずれ、そのずれ量が十分に大きくなると、特定方向のドットが互いに隣接してペアドットとなる確率はk2に収束するとの知見が得られた。実際のブルーノイズマスクを調査したところ、図13に示したように、ずれ量が4から5画素以上になると、ペアドットの発生率はほぼ一定値k2に収束することが判明した。これは、ずれ量が大きいと、もともとは離れた距離にある2画素が隣接することになるためである。2画素の距離が十分に離れていると、両画素におけるドット形成の有無の相関が低下するため、両画素に同時にドットが形成される確率は、単純に両者の階調値(ドット形成の確率k)を掛け合わせた値k2となる。したがって、ずれがない状態でのペアドット発生率を予めk2に近づけておけば、どのようなずれが発生したときにもペアドット発生率はあまり変化せず、被覆率変動を抑制できる。
上記第1実施例では、ペア画素に共にドットが形成される確率Kを、
K=0.8×k2
としている。したがって、ドットの形成位置にずれがない場合のドットの分布の分散性の低下を抑制することができる。この係数は、ペアドットの発生確率を調整するものであり、係数が0.8であれば、ペアドットの発生率が80%に抑制されると言うことを意味している。もとより、係数は、例えば0.6〜1.4程度の範囲であれば、適宜設定することができる。係数を0.8〜1.2の範囲とすれば、ドット形成位置のずれに対するペアドットの発生確率の変動を好適に抑制することができ、係数を値1.0に近づけるほど、ペアドットの発生確率の変動の抑制という観点からは望ましいものとなる。また、低階調度の領域でのドットの分散性を優先する場合などであれば、係数を値0.8以下、例えば0.6〜0.8の程度に調整することもできる。
B−2.ディザマスクの生成方法:
上述した第1実施例で用いたディザマスクは、以下の手法により生成した。図14は、第1実施例で用いたディザマスクの生成方法の一例を示すフローチャートである。この実施例では、ブルーノイズマスクを用意し、このブルーノイズマスクから、ペア画素に共にドットが形成される確率をk2に近づけたディザマスクを生成する。生成されるディザマスクを、以下「ペア画素制御マスク」と呼ぶ。また、作成中のディザマスクは、「作業用マスク」と呼ぶものとする。
ペア画素制御マスクを生成する場合には、まずブルーノイズマスクを用意する(ステップS200)。この例では、64×64の大きさのブルーノイズマスクを用いた。この例のブルーノイズマスクでは、64×64の大きさを有するマトリックスに、0〜254までの255個の閾値が格納されている。次に、現在の作業用マスクについて、全階調範囲に亘る階調値毎のペアドット数をカウントする処理を行う(ステップS210)。この処理は、詳しくは、右隣接ペアドット数RPD[1,2,・・・127]と、下隣接ペアドット数UPD[1,2,・・・127]とを、個別にカウントする処理である。以下の説明において、(S)のように丸括弧を用いた場合は、その階調値Sにおける値を示し、[a,・・x]のように[]を用いた場合は、階調範囲a〜xまでの配列を表すものとする。また、階調範囲a〜xまでの配列は、[a:x]として表すものとする。
作業用マスクについては、全ての閾値は分かっているから、階調値1〜127/255の範囲について、各階調値におけるドットの形成位置を調べることができる。このため、各階調値S毎の右隣接ペアドット数RPD(S)と下隣接ペアドット数UPD(S)とをカウントすることは容易である。ここでペアドットの数のカウントを、階調値1〜127/255に限っているのは、第1実施例で用いたペア画素制御マスク、つまり1〜127/255の階調範囲でペアドットの発生確率を所定の特性にしたマスクを生成するためである。階調値Sが大きくなると、ブルーノイズマスクにおいてもペアドット数はここで実現しようとしている発生確率に近づくので、全範囲について隣接ペアドット数をカウントする代わりに、階調値1〜127/255の範囲で、ペアドットの発生確率を調整すれば良い。もとより、以下に説明する手法は、全階調範囲について、ペアドット数をカウントし、その発生確率を調整する場合にも適用可能である。
ステップS210で所定の階調範囲(ここでは1〜127/255)における右隣接ペアドット数RPD[1:127]と下隣接ペアドット数UPD[1:127]とをカウントした後、各階調値S毎のペアドット数が、目標範囲M(S)に入っているか否かについて判断する(ステップS220)。ここで目標範囲M(S)は、次のようにして設定した範囲である。仮に、ディザマスクがホワイトノイズ特性を備えているとすれば、ドットはランダムに発生されることになり、一つの画素にドットが形成される確率がkである場合、右または下の隣接画素にもドットが形成される確率(これをペアドットの発生確率と言う)は、それぞれk2となる。画像の階調値が値1のときには、
k=0.00392156(=1/255)
であり、ペアドットの発生確率は、
k2=0.0000154
となる。したがって、ランダムにドットが形成されると仮定した場合に64×64の画素においてペア画素が存在すると予測される値(以下、予測値と言う)Hは、
H=k2×4096=0.063≒0
である。この計算を、予め、階調値1〜127/255の範囲で繰り返し、ペアドットの理論上の予測値H[1:127]を求め、これに係数0.8をかけたものを、各階調値Sにおけるペアドットの目標値m[1:127]として求めておく。なお、本実施例では、目標値m(S)に±20%の幅を持たせ、これを目標範囲M(S)と呼ぶものとする。
階調値Sを1〜32とした場合のペアドットの予測値H[1:32]、目標値m[1:32]を図15に示した。図示するように、階調値S=10で、予測値H(10)=6、目標値m(10)=5、階調値S=20で、予測値H(20)=25、目標値m(20)=20、といった値になることが分かる。
ステップS220では、こうして求めておいた理論的なペアドットの目標範囲M[1:127]と右隣接ペアドット数RPD[1:127]および下隣接ペアドット数UPD[1:127]とを比較する。比較の結果、両ペアドット数RPD[1:127],URD[1:127]が共に、目標範囲M[1:127]に入っていると判断できない場合には、次に作業用マスクにおける閾値のうち、適当な数の閾値(例えば2つの閾値)をランダムに入れ替える処理を行う(ステップS230)。ランダムに入れ替えているので、同じ画素グループに対応する閾値同士を入れ替えることもあれば、異なる画素グループ間で入れ替えることもあり得る。
作業用マスクにおける閾値を入れ替えると、各階調値におけるペアドットの数は変化するので、閾値を入れ替えたことによるペアドット数の修正を行う(ステップS240)。ペアドットの数は、入れ替えを行った閾値に対応した階調値の範囲内でしか変わらないので、1〜127/255の階調範囲で改めてカウントするのではなく、例えば閾値pと閾値q(p<q)とを入れ替えたとすれば、右隣接ペアドット数RPD[p:q]と下隣接ペアドット数UPD[p:q]のみ数え直せば良い。なお、入れ替える閾値はランダムに選択するものとしたが、階調値1〜127/255の範囲でペアドットの発生特性を調整しようとしているので、入れ替える閾値の少なくとも一方は、この範囲に入っている閾値にすることが望ましい。
こうして数え直したペアドットの数を調べて、次に、ペアドット特性が改善されたか否かを判断する(ステップS250)。ここでペアドット特性が改善したか否かは、次のように判断される。
(A)閾値を入れ替えたことにより、右および下隣接ペアドット数RPD[p:q],UPD[p:q]が、k2に近づいていれば、改善したと判断する。
(B)閾値を入れ替えたことにより、右および下隣接ペアドット数UPD[p:q],[p:q]のいずれか一方がk2に近づき他方が変化していないとき、改善と判断する。
(C)階調範囲[p:q]の一部で改善、一部で悪化している場合は、この階調範囲の各階調値において生じるペアドットの数とその階調値での予測値との差の総和が小さくなっていれば改善と判断する。
上記判断を行って、ペアドット特性が改善していないと判断された場合には、ステップS230に戻り、閾値をランダムに入れ替える処理から再度実行する。閾値の入れ替えは、2つの閾値を入れ替えるのであれば、その組合わせは、階調の全範囲であれば、
4096C2通り
存在することになる。階調値1から127/255の範囲に限っても、
2048C2通り
存在することになる。したがって、閾値の入れ替えの組合わせは相当数に上り、全ての場合を尽くすには相当の時間を要するものの、順次行えば、ペアドット特性を改善する入れ替えが見出される(ステップS250、「YES」)。
そこで、ペアドット特性が改善されたと判断した場合には、次に粒状性特性が問題ないか否かを判断する(ステップS260)。ここで、粒状性特性が問題ないとは、以下に示す粒状性指数が目標としている範囲に入っているか、あるいは目標範囲に入っていないが閾値の入れ替え前より改善した場合を意味している。粒状性指数は、公知の技術であるため(例えば、特開2007−15359号公報)、詳しい説明は省略するが、画像をフーリエ変換してパワースペクトルFSを求め、得られたパワースペクトルFSを、人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性VTF(Visual Transfer Function)に相当する重みを付けて、各空間周波数で積分して求められる指標である。図16に、VTFの一例を示す。こうしたVTFを与える実験式には、種々の式が提案されているが、次式(1)に代表的な実験式を示す。変数Lは観察距離を表しており、変数uは空間周波数を表している。粒状性指数は、かかるVTFに基づいて、次式(2)に示す計算式によって算出することができる。係数τは、得られた値を人間の感覚と合わせるための係数である。なお、算出方法からも明らかなように、粒状性指数は、人間がドットを目立つと感じるか否かを示す指標であるとも言える。かかる粒状性指数は、その値が小さいほど印刷画質においてドットが視認されにくく、その点において優れていると言える。
VTF(u)=5.05exp ( -0.138πLu / 180){1-exp ( -0.1πLu / 180)}・・・(1)
粒状性指数=τ∫FS(u)・VTF(u) du・・・(2)
当初用意したブルーノイズマスクは、粒状性指数が最も小さな値となるように構成されているが、ステップS230でランダムに閾値を入れ替えていくと、作業用マスクの粒状性は、ブルーノイズマスクより低下する。そこで、人間の視覚特性から見て許容できる範囲で粒状性指数の目標範囲を設けておき、この範囲から見て問題がないか否かを判断するのである。もとより、粒状性指数は階調値毎に定まる値なので、各階調値毎に上限値を用意し、各階調値における粒状性指数がこの上限値以下になっていれば、粒状性特性は目標範囲に入っていると判断すれば良い。
粒状性特性に問題があれば、つまり目標範囲に入っておらず、且つ閾値の入れ替え前と比較して改善もされていない場合には(ステップS260、「NO」)、ステップS230に戻り、閾値の入れ替えから、上記処理を繰り返す。ステップS230からS260の処理を繰り返した結果、ペアドット特性が改善され且つ粒状性特性も問題ないと判断された場合には(ステップS250、S260:共に「YES」)、一旦ステップS230〜S260のループを抜けて、ステップS220に戻り、ペアドットの発生特性が目標範囲か否かの判断を行う。
ペアドットの発生特性が目標範囲に入っていると判断できなければ(ステップS220、「NO」)、上述したステップS230以下の処理を繰り返す。図14に示した処理では、ステップS220からS260は、条件が満たされるまで、閾値の入れ替えを行いながら繰り返し実行される。そこで、このステップS230からS260までの処理が実行される回数(以下、ループ回数と言う)が小さいうちは、ステップS260における粒状性指数の上限値を大きくしておき、ループ回数が増加するにしたがって、上限値を最終的な目標値に近づけていく、といった処理を行っても良い。このように上限値をループ回数に応じて変化させることで、粒状性指数が局所的なミニマム値に陥ることを防止することができる。
こうして何度かステップS230からS260のループ処理が実行され、やがて粒状性特性に問題がなく、且つ右隣接ペアドット数RPD[1:127]および下隣接ペアドット数UPD[1:127]が目標範囲M[1:127]に入ると判断できれば(ステップS220、「YES」)、ペア画素制御マスクが完成したとして、その時点の作業用マスクをペア画素制御マスクとして保存し(ステップS270)、「END」に抜けて、ペア画素制御マスクの生成ルーチン(図14)を終了する。なお、上記の説明では、ペアドットの発生特性が目標範囲に入っているか否かは、ドットの発生があり得る階調値の全範囲のうち1〜127/255の範囲で行ったが、ペア画素制御マスクがペアドットの発生確率を制御しようとしている階調範囲で行うものとすれば良い。例えば、もっと低濃度の範囲(ドットの発生確率k=0〜0.25、0.2〜0.5などに対応した階調範囲)に限って行うものとしても良い。
以上説明した手法により、ブルーノイズマスクを基本として、ペア画素制御マスクを得ることができる。このディザマスクが、第1実施例において、ドットの形成の判断に用いられたディザマスクである。このペア画素制御マスクは、ブルーノイズマスクを基本としているので、画像の階調値が低い範囲で形成されるドットの分布を、空間周波数として解析すると、人間の視覚感度が高い低周波領域にほとんど成分を持っていない。このため、高い画質を実現可能なディザマスクを提供することができる。しかも、上記のペア画素制御マスクでは、隣接画素に共にドットが形成されるペアドットの発生確率が、その階調値でのドットの形成確率kにおいて、k2×0.8程度になるようにされている。この結果、往動と復動でのドットの形成位置にずれが生じても、被覆率の変動が抑制され、ドットの形成位置のずれに起因するCIEL*a*b*色空間での変化が以下の範囲に抑えられる。
(A)印刷される画像が、イエロー(RGB値で、R=G=255、B=0〜64、但し、RGB値は8ビット換算)である場合に、b*の変化が値2以下の範囲である。
(B)印刷される画像が、マゼンタ(RGB値で、R=B=255、G=0〜64、但し、RGB値は8ビット換算)である場合に、L*の変化が値0.5以下の範囲またはa*の変化が値0.5以下の範囲である。
(C)印刷される画像が、シアン(RGB値で、G=B=255、R=0〜64、但し、RGB値は8ビット換算)である場合に、L*の変化が値0.5以下の範囲である。
なお、これらの条件の全てが満たされる必要はなく、少なくともいずれか一つが満たされれば良い。
こうして、画像のムラの発生を抑制可能なディザマスクが提供される。なお、図14に従って作られたディザマスクが上記の条件を満たさない場合には、被覆率の目標値、具体的には、k2に乗じる係数の値(上記例では0.8)を変更して、所望の特性が得られるまで、図14の処理を繰り返せば良い。
本実施例では、ブルーノイズマスクを出発点としてペア画素制御マスクを生成したが、他の任意の特性を有するディザマスクから生成することも可能である。上述したようにブルーノイズマスクやあるいはグリーンノイズマスクなど、分散性に優れ、もともとの分散性が収束させたい特性に近いものから生成した方が、生成に要する時間を短くすることができる。また、一からディザマスクを生成する際に、次のルールを適用して、ペア画素制御マスクを生成することも可能である。
(1)閾値を、小さい側または大きい側のいずれか一方から順次マトリックスに配置する。
(2)既に、ある位置に配置された閾値に対して、次の閾値を配置する際、粒状性指数などの評価値を用いて、次の閾値の配置位置とその場合の評価値とを対応付ける。その上で、評価の高い順次に、次の閾値の配置位置の候補を特定する。
(3)上記の候補を評価の高い側から順に取り出し、その場合のペアドットの数をカウントする。ペアドットの数が必要数(例えば図15に示した数)となる候補を見つけたら、その位置に次の閾値を配置する。
(4)上記の(1)〜(3)を、閾値が尽きるまで繰り返す。
こうしたルールを用いて、一から閾値の配置を決定し、ペア画素制御マスクを生成するものとしても良い。
C.第1実施例の変形例:
以上説明した第1実施例の変形例について説明する。第1実施例では、往動と復動では、ドットの形成位置が、主走査、副走査両方向について互い違いになるものとし、ペア画素を構成する隣接画素の位置は、図10(A)に示すように、主走査方向右側、副走査方向とか下側の2画素としたが、隣接画素をこの2つに限らず、更に、副走査方向下側にラスターにおける左右の隣接画素を含めるものとしても良い。着目画素OJの位置を(0,0)としたとき、隣接画素として、(1,0)、(0,1)の位置の画素のみならず、(−2,1)、(2,1)の位置の画素も隣接画素とみなし、ペアドットを計4組カウントするのである。これを図10(B)に示した。もとより、更にこの範囲を広げて、図10(C)の8画素まで拡大することも考えられる。ペア画素の範囲を広ければ、一般にドットの形成位置のずれ方が変化しても、これに対する濃度ムラの発生を抑制することができる。なお、隣接画素の範囲は、印刷におけるドットの形成位置のずれが生じ易い方向については広く取ることが望ましい。図10(B)に示したように、主走査方向に広く隣接画素を設定すれば、主走査方向のずれに起因する濃度の抑制に効果的である。
また、往動時に形成されるドットの復動時に形成されるドットを、図3(A)に示したように、カラム交互や、図3(B)に示したラスター交互とすることもできる。これらの場合にも、隣接画素の範囲は様々な設定が可能である。
また上記の実施例・変形例では、説明を簡明にするために、画像の階調値の分解能を8ビット、閾値の範囲を0〜255としているが、ディザマスクに配置される閾値を0〜4095とし、画像の階調値を表すビット数を増やして、例えば10ビットにすれば、最小の階調値1に対して、配置されるドットの数を減らすことができ、階調値が1増加する度に増加するドットの数を減らすことができる。したがって、ペアドットの発生確率の制御を一層きめ細かく行うことができる。もとより、ディザマスクを128×128や、256×512など更に大きくすれば、10ビットで表現された階調値が、値1である場合に形成されるドットの数は、前者で4個、後者で32個程度となる。これら、ディザマスクの大きさや、階調値を表すビット数、ディザマスクに配置される閾値の種類などは、実行するハーフトーン処理の目的(画質優先か処理速度優先か、あるいは大判印刷用か否かなど)や処理時間などを考慮して決定すれば良い。
第1実施例では、ペアドットの制御を階調値0〜127/255の範囲、換言すれば、ドットの発生確率kが、0<k<0.5の範囲を想定してペア画素制御マスクを用意したが、この範囲については、上限値を更に低階調値の側に限定しても良い。例えば、0<k<0.2などの範囲に限ってペアドットの制御を行うものとしても良い。一般に、画素サイズに対する実際のドットのサイズが大きくなるほど、ずれによるドットの重なりが生じ易くなるから、濃度変動が問題になる階調領域が低濃度側に移動する。したがって、調整する範囲を画素サイズに対する実際のドットのサイズに応じて変更することも現実的である。また下限値を更に高階調値側に限定しても良い。一般に、階調値0近辺の低階調領域では、もともとドットの形成位置が遠く隔たっており、ドットの形成位置にずれが生じても濃度ムラの問題はそれほど顕在化しない。このため、0.1<k<0.4や0.2<k<0.5などの範囲に限って、ペア画素制御マスクを生成しても良い。また、往動時に形成されるドットの割合と復動時に形成されるドットの割合を最初から異ならせておき、それぞれについて、異なるドットの形成確率k1,k2を設定してペアドットの制御行うことも差し支えない。
D.第2実施例:
D−1.ディザマスク:
次に、本発明の第2実施例について説明する。第2実施例としてのプリンター20のハードウェアは、第1実施例と同一である(図1参照)。また、プリンター20における印刷制御処理(図4)は、ハーフトーン処理において用いるディザマスクが異なっている点を除いて同一である。第2実施例でも、ハーフトーン処理は、いわゆるディザ法によって行う。
第2実施例で用いるディザマスクと第1実施例で用いたディザマスクとの異同は、以下の通りである。
(1)両者の共通点:
・共に、ディザマスクの大きさは、64×64である。
・共に、分散性を優先した分散型ディザマスクである。
・往動および復動でのドットの形成位置にずれが生じた場合、CIEL*a*b*色空間での変化が、共に以下の条件(A)〜(C)を満たしている。
(A)印刷される画像が、イエロー(RGB値で、R=G=255、B=0〜64、但し、RGB値は8ビット換算)である場合に、b*の変化が値2以下の範囲である。
(B)印刷される画像が、マゼンタ(RGB値で、R=B=255、G=0〜64、但し、RGB値は8ビット換算)である場合に、L*の変化が値0.5以下の範囲またはa*の変化が値0.5以下の範囲である。
(C)印刷される画像が、シアン(RGB値で、G=B=255、R=0〜64、但し、RGB値は8ビット換算)である場合に、L*の変化が値0.5以下の範囲である。
(2)両者の相違点:
・一旦、ドットの分散性に優れた第1のディザマスク61(不図示)を生成してから、その第1のディザマスク61をずらすことで、第2のディザマスク62を生成している。なお、第1実施例における64×64のディザマスクの閾値が、印刷ヘッド90の往動と復動により形成されるドットの分布の分散性のみを考慮して作られていたのに対して、第2実施例における第1のディザマスク61は、印刷ヘッド90の往動時に形成されるドットが属する第1の画素グループおよび印刷ヘッド90の復動時に形成されるドットが属する第2の画素グループについて、それぞれドットの分散性を考慮して作られている。
第2実施例においても、第2のディザマスク62は、上記の(A)〜(C)の条件を満たしていることから、印刷ヘッド90の往動時に形成されるドットの位置と、復動時に形成されるドットの位置とにずれを生じても、被覆率に大きな変動を生じることはなく、画像のCIEL*a*b*色空間での変化は十分に抑制されるなど、第1実施例とほぼ同様の効果を奏する。特に、往動時に形成されるドットの位置と復動時に形成されるドットの位置とが十分に調整された基準位置で印刷される場合と、この基準位置から2/720インチ〜5/720インチの範囲の任意の距離だけずれた場合で印刷される場合とを比較しても、L*a*b*色空間における変化の範囲は十分に小さく抑制され、明るさや色味の変化として、認識されることがない。
D−2.第1のディザマスク61および第2のディザマスク62の生成方法:
上述した第1のディザマスク61および第2のディザマスク62の生成方法について説明する。第1のディザマスク61,第2のディザマスク62は、そのサイズ(閾値の数)に対応する格納要素を有している。本実施例では、第1のディザマスク61と第2のディザマスク62のサイズは同一である。格納要素とは、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62を構成する閾値を格納する要素である。これらの格納要素の全てに一つずつ閾値を格納することで、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62は生成される。第1のディザマスク61は、第2のディザマスク62の生成過程の途中段階で生成されるディザマスクである。以下に説明する生成方法は、メインフレーム等のCPUによって、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62を生成する処理である。なお、以下に説明する工程の一部または全部をユーザーが手計算等によって実行しても差し支えない。なお、第1のディザマスク61は、第2のディザマスク62の生成に用いられるものであり、プリンター20のEEPROM60に記憶される必要はない。第1のディザマスク61は、通常は、第2のディザマスク62を生成する装置(コンピューター)内のメモリーに記憶されている。
第1のディザマスク61および第2のディザマスク62のサイズは、例えば、256画素×256画素、512画素×512画素などとすることができるが、以下の説明においては、第1のディザマスク61,第2のディザマスク62のサイズは、説明を簡単にするために、縦方向サイズ、横方向サイズともに5画素、つまり合計25画素(=5×5)の画像データに適用するサイズとして説明する。
第1のディザマスク61および第2のディザマスク62の生成方法の手順を示す工程図を図17に示す。第1のディザマスク61および第2のディザマスク62の生成においては、図示するように、まず、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62のサイズに応じた閾値を用意する(ステップS310)。本実施例においては、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62が25個の格納要素を有するので、これと同数の0〜24の閾値を用意するものとした。
閾値を用意すると、次に、着目閾値選択処理を行う(ステップS320)。着目閾値選択処理とは、用意した0〜24の閾値のうちの、未だ格納要素に格納されていない閾値のうちから一つの閾値を着目閾値として選択する処理である。本実施例においては、用意した閾値のうちの小さい閾値から順に、着目閾値を選択することとした。図19に示すように、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62を構成する格納要素に、後述する工程によって値0〜3の閾値が既に格納要素に格納されている場合には、次にステップS320において選択される着目閾値は値4である。
着目閾値を選択すると、次に、ディザマスク評価処理を行う(ステップS330)。ディザマスク評価処理とは、用意した閾値が未だ格納されていない格納要素(以下、空白格納要素とも言う)の一つに対して着目閾値を格納したとした場合に、閾値が既に格納された格納要素(以下、決定格納要素とも言う)の配置が表すドットの形成パターンについての、ドットの分散の程度を示す評価値Eを、空白格納要素の各々について算出する処理である。
本実施例では、評価値Eは、その値が小さいほどドットの分散性が良好となり、印刷画像の粒状性の観点から優れていると言える。なお、ハーフトーン処理においては、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62の閾値が入力階調値よりも小さくなる画素でドットがONとなるので、全ての画素の階調値が同一のベタ画像を入力する場合において、当該階調値を徐々に大きくしていけば、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62における閾値の配置に応じたドットの形成パターンが現れることとなる。本実施例では、このようなドット発生特性に基づくドット形状をドット形成パターンと呼んでいる。
ディザマスク評価処理の詳細について、図18を用いて説明する。ディザマスク評価処理では、図18に示すように、まず、グループ化処理を行う(ステップS331)。グループ化処理とは、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62を構成する複数の格納要素を、当該複数の格納要素に格納された閾値がハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成を往動と復動のうちのいずれで行うかに着目して、複数のグループに区分する処理である。つまり、上述した往動ドットと復動ドットの配置の態様に基づいて、格納要素のグループを設定する処理である。例えば、カラム交互のドット配置を採用する場合、図3(A)に示した往動画素グループと復動画素グループとが表すパターンと同一のパターンのグループに区分される。
こうして、グループ化処理を行うと、決定格納要素のドットをONにする(ステップS332)。図19では、値0〜3の閾値が格納された決定格納要素のドットがONにされた様子をシングルハッチングで示している。決定格納要素のドットをONにすると、次に、候補格納要素選択処理を行う(ステップS333)。候補格納要素選択処理とは、着目閾値を格納すべき格納要素の候補である候補格納要素を選択する処理である。空白格納要素の各々には、着目閾値を格納することが可能であるから、ここでは、空白格納要素のうちの一つを、候補格納要素として選択する。候補格納要素選択処理を行うと、次に、候補格納要素のドットをONにする(ステップS334)。図19では、空白格納要素の一つを候補格納要素として選択し、当該候補格納要素のドットをONにした様子を、クロスハッチングで示している。
候補格納要素のドットをONにすると、次に、グループ選択処理を行う(ステップS335)。グループ選択処理とは、上記ステップS331で設定したp個(pは2以上の整数、ここではp=2)のグループG1〜Gpと、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62を構成する全ての格納要素を含むグループであるグループGp+1とのうちから、一つのグループGq(qは1以上p+1以下の整数)を選択する処理である。
グループGqを選択すると、次に、グループGqに属する格納要素に対応するドット形成パターンに基づいて、ドットの分散の程度を示す評価値Eq、つまり、ドットがどの程度満遍なく分散された状態で形成されるかを示す評価値を算出する(ステップS336)。ドットを満遍なく分散された状態で形成するためには、図20に示すブルーノイズ特性を有するディザマスクを生成すれば良いことが知られている。ブルーノイズ特性は、ドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性である。人間の視覚特性は、観察距離30cmの場合10サイクル/mm以上の高周波数の感度はほぼゼロとなるため、それ以上の領域にピークを持つようにできれば、良好な粒状性のディザマスクを生成できる。本実施例においては、このような特性のディザマスクを生成するために、ドットの分散性の程度を示す評価値として、第1実施例と同様、粒状性指数を用いることとした(図16および数式(1)(2)参照)。
評価値Eqを算出すると、全てのグループG1〜Gp+1(ここではG1〜G3)について評価値Eqを算出するまで、上記ステップS335,S336の工程を繰り返す(ステップS337)。こうして、全てのグループG1〜G3について評価値Eq(E1〜E3)を算出すると(ステップS337:YES)、算出した評価値E1〜E3に基づいて、次式(3)により、評価値Eを算出する(ステップS338)。式(3)においてa〜cは重み付け係数である。これらの重み付け係数は、良好な印刷画質が得られるように、一定値として、実験的に定められる。つまり、評価値Eとは、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62の決定格納要素の全体が表すドット形成パターンと、往動に対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンと、復動に対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンとについて、ドットの分散の程度を所定の重み付けで総合評価した評価値である。
E=a×E1+b×E2+c×E3・・・(3)
評価値Eを算出すると、全ての候補格納要素(空白格納要素)について評価値Eを算出するまで、上記ステップS333〜S338の工程を繰り返す(ステップS339)。こうして、全ての候補格納要素について評価値Eを算出すると(ステップS339:YES)、ディザマスク評価処理は終了となる。
以上説明したディザマスクの評価処理(図18)を終了すると、次に格納要素を決定する処理を実行する(図17、ステップS340)。ここでの格納要素決定処理とは、ディザマスク評価処理で算出した評価値Eに基づいて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する処理である。具体的には、候補格納要素(空白格納要素)毎に算出した評価値Eのうちで、その値が最も小さい評価値Eに対応する候補格納要素を、着目閾値を格納すべき候補格納要素として決定し、当該格納要素に着目閾値を格納する。
格納要素決定処理を行うと、ステップS310で用意した閾値を、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62を構成する全ての格納要素に格納するまで、上記ステップS320〜S340の工程を繰り返す(ステップS350)。こうして、全ての格納要素に閾値を格納すると(ステップS350:YES)、まず、第1のディザマスク61が完成となる(ステップS360)。
上述した評価値Eを用いて生成する第1のディザマスク61は、人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性VTFに相当する重み付けによって、ドットが視認されにくいドット形成パターンを生じるように生成される。したがって、結果的に、第1のディザマスク61によって生じるドット形成パターンは、そのドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有することとなる。換言すれば、第1のディザマスク61によって生じるドット形成パターンは、ブルーノイズ特性を有することとなる。したがって、第1のディザマスク61を用いたハーフトーン処理によって印刷される印刷画像は、ドットが良好に分散化され、ドットが目立ちにくい滑らかな印刷品質を得ることができる。
また、上述した評価値Eを用いれば、往動ドット、復動ドット、往動ドットと復動ドットとを組み合わせた印刷画像全体のいずれに対しても、ドットが分散して配置されるドット形成パターンを有する第1のディザマスク61を生成することができる。かかる第1のディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行えば、往動ドットと復動ドットとの間で位置ずれが生じても、往動ドットおよび復動ドットの分散性は確保されたままであるから、画像全体のドットの分散性が確保され、印刷画質の粒状性の悪化を抑制することができる。
こうして第1のディザマスク61が完成すると、閾値ずらし処理を行う(ステップS370)。閾値ずらし処理とは、第1のディザマスク61の閾値配置に対して、上記ステップS331で設定したグループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらす処理である。かかる閾値ずらし処理を行うことによって、第2のディザマスク62が完成する(ステップS380)。こうして、ディザマスク生成処理は終了となる。
閾値ずらし処理の詳細について、以下に説明する。第1のディザマスク61の閾値配置を図21に示す。第1のディザマスク61は、上述した手法によって、ドットの分散性が最適化されたディザマスクであり、分散性最適ディザマスクとも言う。図21は、7×7画素のサイズのディザマスクの閾値配置を示している。各画素の閾値を区別するために、図中では、各閾値に対して、「0,1」などと番号を付している。例えば、「0,1」の閾値は、主走査方向(図中の右方向)に0番目、副走査方向(図中の下方向)に1番目の閾値であることを示している。第1のディザマスク61を構成する各閾値は、往動によってドットが形成される画素に適用する閾値(以下、往動閾値とも言う)と、往動によってドットが形成される画素に適用する閾値(以下、復動閾値とも言う)とに区別される。図21では、復動閾値は、ハッチングを施して表示している。図示する第1のディザマスク61の閾値配置は、カラム交互のドット配置の場合である。
かかる第1のディザマスク61の閾値配置に対して、閾値ずらし処理によって、生成された第2のディザマスク62の閾値配置の具体例を図22に示す。図示するように、第2のディザマスク62の閾値配置は、第1のディザマスク61の往動閾値と復動閾値とのうちの復動閾値のみを副走査方向(図中の上方向)に3画素分ずらした閾値配置を有している。このため、第2のディザマスク62をずらしディザマスクとも言う。なお、第2のディザマスク62は、主走査方向および副走査方向に繰り返し適用されるから、復動閾値を上方向に3画素分ずらすと、例えば、「1,0」、「1,1」、「1,2」の閾値は、「1,7」の下に配置されることとなる。
第2のディザマスク62の閾値配置の他の例を図23に示す。この例では、図示するように、第2のディザマスク62の閾値配置は、第1のディザマスク61の復動閾値のみを主走査方向(図中の左方向)に4画素分ずらし、更に、副走査方向(図中の上方向)に3画素分ずらした閾値配置を有している。
このような閾値ずらし処理は、上述したカラム交互のドット配置と同様の手法で、ラスター交互のドット配置(図3(B))やタスキ掛けのドット配置(図3(C))にも適用することができる。ラスター交互のドット配置を採用する場合の、第2のディザマスク62の閾値配置の例を図24に示す。図示する例では、第1のディザマスク61の復動閾値を主走査方向(図中の左方向)に3画素分ずらしている。また、タスキのドット配置を採用する場合の、第2のディザマスク62の閾値配置の例を図25に示す。図示する例では、第1のディザマスク61の復動閾値を主走査方向(図中の左方向)に4画素分ずらしている。
以上説明したように、閾値ずらし処理における、閾値をずらす方向は、主走査方向であっても良いし、副走査方向であっても良い。もとより、主走査方向と副走査方向との方向であっても良い。また、ずらす閾値は、復動閾値に限らず、往動閾値であっても良い。このように閾値ずらし処理を行うことによって、第2のディザマスク62の特性は、第1のディザマスク61に比べて、ドットの分散性が悪化する方向に変化する。このことは、ペアドット発生率Kが第1のディザマスク61よりも大きくなることを意味している。すなわち、第1実施例と同様の特性が得られることとなる。
また、各方向の閾値のずらし量は、適宜設定すれば良いが、以下のように設定することが望ましい。ブルーノイズマスクの特性を調べると、一つのディザマスク内のおける2つの画素の相対位置が近い場合には、当該2つの画素におけるドットのON/OFFには、強い相関関係がある。つまり、2つの画素のうちの一つの画素のドットがONになると、他の一つの画素のドットがONとなる確率は、極めて低くなる。一方、2つの画素が十分に離れている場合には、当該2つの画素におけるドットのON/OFFには、ほとんど相関関係がなくなる。この2画素間の相対位置が大きくなると、2つの画素のドットの両方がONとなる確率、つまり、ペアドット発生率Kは、ホワイトノイズの場合と同様に、k2(kはドットの発生割合)に収束していく(図11参照)。
かかる2画素間の相対位置と、ペアドット発生率Kとの関係は、位置ずれによって濃度変化が問題となる印刷階調、つまり、低階調から中階調領域にかけて(例えば25〜127/255)は、2画素間の相対位置が5画素程度以上離れると、k2にほぼ収束することが確認できた。このことは、閾値のずらし量を5画素以上とすれば、ペアドット発生率Kは、k2にほぼ収束することを意味している。一方で、閾値のずらし量は、第2のディザマスク62のドット分散性を良好に確保するためには、小さいほど望ましい。閾値のずらし量が大きくなるほど、第1のディザマスク61として最適化されたドットの粒状性が劣化するからである。
このため、閾値のずらし量は、ペアドット発生率Kがk2にほぼ収束する値(上述の例では5画素)に対して、想定される位置ずれ量を加えた値を上限値として設定することが望ましい。例えば、実際に生じる位置ずれ量が±2画素と想定される場合、閾値のずらし量は、7画素を上限値とすることが望ましい。かかる場合、例えば、閾値のずらし量は、5画素としても良い。こうすれば、±2画素の位置ずれが生じた場合の実質的な閾値のずれ量は、3画素から7画素の範囲に収まり、ドットの粒状性の劣化を抑制しつつ、ペアドット発生率Kをk2に良好に近づけることができる。但し、想定される位置ずれ量が更に大きい場合には、閾値のずらし量は、更に大きくする必要がある。例えば、実際の位置ずれ量が−5画素である場合、閾値のずらし量を5画素としても、実質的な閾値のずれ量は0画素となってしまうからである。
また、閾値のずらし量は、プリンター20の位置ずれの特異性を考慮して設定することが望ましい。具体的には、プリンター20の位置ずれが特定の方向に発生し易い場合には、当該特定の方向と異なる方向についてのずらし量が、当該特定の方向についてのずらし量よりも大きくなるようにずらし量を設定することが望ましい。本実施例においては、プリンター20は、シリアル式プリンターであるから、往動ドットと復動ドットとの位置ずれが主走査方向に生じ易い。したがって、副走査方向のずらし量を主走査方向よりも大きくすることが望ましい。こうすれば、閾値のずらし量と、実際に生じる位置ずれの量との合計量の変動の範囲、つまり、実質的な閾値のずれの範囲が、位置ずれが生じない場合に対して近くなるので、ドット分散特性が安定する。また、閾値のずらし量も小さくすることができる。
例えば、主走査方向に±2画素の位置ずれが想定される場合を考える。第1のケースとして、閾値のずらし量を主走査方向に6画素、副走査方向に0画素とすると、閾値のずらし量と、実際に生じる位置ずれの量との合計量の変動範囲は、主走査方向に4〜8画素、副走査方向に0画素の範囲となる。一方、第2のケースとして、閾値のずらし量を主走査方向に0画素、副走査方向に4画素とすると、閾値のずらし量と、実際に生じる位置ずれの量との合計量の変動範囲は、主走査方向に−2〜2画素、副走査方向に4画素の範囲となる。ケース1とケース2とを比べると、ケース2の方が合計のずらし量が少なく、粒状性の劣化が抑制されている。しかも、ケース1とケース2とでは、実質的な閾値のずれ量をいずれも4画素以上確保できている。以上のことから、主走査方向に位置ずれが生じ易い場合には、主走査方向のずらし量よりも副走査方向のずらし量を大きくすることが望ましい。
D−3.効果:
かかる構成のプリンター20は、キャリッジ80の移動速度に応じて、2つのディザマスクを使い分ける。キャリッジ80の移動速度が遅いことによってドットの形成位置のずれが生じ難いと判断した場合は、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定された第1のディザマスク61によって生成されたドットデータに応じて印刷を行う。このように、ドットの位置ずれ対策よりも、粒状性を重視した第1のディザマスク61を用いることによって、より高画質の印刷ができる。
一方、キャリッジ80の移動速度が速いことによってドットの形成位置のずれが生じ易いと判断した場合は、第1のディザマスク61の閾値配置に対して、往動画素グループと復動画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらした第2のディザマスク62によって生成されたドットデータに応じて印刷を行う。このため、画素グループ間のドットの位置ずれが生じた場合でも、第1実施例同様、画像のCIEL*a*b*色空間での変化が所定の範囲内となるように、位置ずれの方向や量に応じたドットの被覆率の変動を抑制することができる。その結果、共通領域の印刷画像に濃度ムラが生じて印刷画質が低下することを抑制することができる。しかも、第2のディザマスク62の基礎となる第1のディザマスク61の閾値配置は、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有しており、印刷される画像は、少なくとも共通領域において、いわゆるブルーノイズ特性に近い特性を示すことになり、所定程度の粒状性を確保することができる。
かかるプリンター20の具体的な効果の例を図26に示す。図26は、シミュレーション結果である。具体的には、良好なブルーノイズ特性を示すディザマスクを用いたドット形成パターンに対して、主走査方向と副走査方向とに種々の量のBi−Dずれが生じたケースを設定し、各々のケースについて被覆率を求め、プロットしている。図26の横軸は、主走査方向と副走査方向との位置ずれ量の合計値(以下、総ずれ量とも言う)である。シミュレーションの前提条件は、以下の通りである。
(1)階調値:80/255
(2)インターレース処理:タスキ掛けのドット配置
(3)ドットサイズ:ドットの直径は画素間サイズの2倍
(4)位置ずれ量:下記の通り
位置ずれ量については、主走査方向のずれ量として、0画素と、0.5〜5.5画素の間を1画素間隔でそれぞれ採用し、7通りのすれ量を設定した。また、副走査方向のずれ量として、0〜4画素の間を0.5画素間隔でそれぞれ採用し、9通りのずれ量を設定した。図9では、これらのずれ量の全ての組み合わせ(63通り)のBi−Dずれのケースのうち、総ずれ量が7画素未満のケース(51通り)の被覆率をプロットしている。
図26に示すように、総ずれ量が0画素のケースと、2画素のケースとを比較すると、被覆率は、10%以上の差が生じることとなる。一方、総ずれ量が2画素よりも大きくなると、被覆率の変動量は、総ずれ量の増加に伴い、小さくなっていくことが分かる。総ずれ量が2画素のケースと3画素のケースとを比較すると、被覆率の変動は2%程度である。そして、総ずれ量が5画素を超えると、被覆率の変動は非常に安定し、総ずれ量が増加しても、被覆率はほとんど変動しない状態となっている。このことは、上述した第2のディザマスク62を生成する際の閾値のずらし量を5画素以上とすれば、ペアドット発生率Kがk2にほぼ収束することと対応している。
ここで、第2のディザマスク62を生成する際の閾値のずらし量を5画素とした場合、仮に、実際に生じる位置ずれ量が±2画素であれば、印刷画像に現れる実質的な位置ずれ量の範囲は、3画素から7画素の範囲となる。この範囲において、被覆率の変動幅は、2%未満である。一方、第2のディザマスク62を生成する際の閾値のずらし量を0画素とした場合、つまり、ブルーノイズ特性を有する従来の第1のディザマスク61を用いる場合、実際に生じる位置ずれ量が±2画素であれば、印刷画像に現れる実質的な位置ずれ量の範囲は、−2画素から2画素の範囲となる。この範囲において、被覆率の変動幅は、14%以上にも及ぶ。
以上の説明からも明らかなように、第2のディザマスク62は、被覆率の変動を大幅に抑制して、印刷される画像のCIEL*a*b*色空間での変化を所定範囲に抑制することができる。被覆率が局所的に変動することは、印刷画像の濃度ムラの発生を意味する。したがって、第2のディザマスク62を用いて印刷画像の被覆率の変動を抑制すると、濃度ムラの発生を大幅に抑制することが可能となる。
第1のディザマスク61の閾値配置に対して閾値をずらした第2のディザマスク62の閾値配置は、第1のディザマスク61を使用した場合に生じる位置ずれと同様の影響を印刷画質に与え、第1のディザマスク61よりも粒状性が劣化することになる。しかし、第2のディザマスク62の基礎となる第1のディザマスク61の閾値配置は、往動画素グループと復動画素グループの各々において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定されているので、第2のディザマスク62を用いて印刷した印刷画像は、かかる劣化を抑制することができる。つまり、第2のディザマスク62は、粒状性の悪化を抑制しつつ、濃度ムラの発生を大幅に抑制することができる。
上述した第2のディザマスク62は、上述したように、良好なブルーノイズ特性を有する第1のディザマスク61の閾値のうちの、一部の画素グループに対応する閾値をずらして生成する。したがって、第2のディザマスク62は、所定の性質を有することとなる。すなわち、第2のディザマスク62の閾値配置のうち、一部の画素グループに対応する閾値を、種々の方向に種々の量だけずらしたディザマスクを複数生成すると、これらのディザマスクのうちの、ある方向へある量だけずらしたディザマスクは、第2のディザマスク62よりも良好なブルーノイズ特性を有し、その印刷画像は、粒状性が改善するという性質を有することとなる。別の言い方をすれば、第2のディザマスク62は、ホワイトノイズマスクに近いペアドット発生率Kを維持しながら、極力、ホワイトノイズマスクよりもブルーノイズマスクに近い空間周波数特性を持つようにしたディザマスクとも言える。
E.第2実施例の変形例:
上述の実施形態の変形例について説明する。
E−1.変形例1:
第2実施例においては、上記ステップS331においては、印刷画像の画素群を、往動ドットからなる画素グループと、復動ドットからなる画素グループとに区分して、第1のディザマスク61の閾値配置に対して、いずれか一方の画素グループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらして第2のディザマスク62を生成する構成について示した。但し、区分する画素グループは、上述の例に限定されるものではなく、印刷条件が異なる画素グループであれば良い。
例えば、印刷ヘッド90を複数回の主走査によって、所定領域の画像を印刷する場合に、印刷画像の画素群を、複数回の主走査のうちの互いに異なる主走査によってドットが形成される画素のグループに区分しても良い。例えば、図3に示した着目領域は、パス1〜4によって画像が完成する領域が繰り返されて構成される。したがって、印刷画像の画素群を、各パスに対応する4つの画素グループ1〜4に区分しても良い。この場合、閾値ずらし処理では、一つの画素グループ、例えば、画素グループ1を基準として、他の画素グループ2〜4の少なくとも一つに対応する閾値をずらせば良い。例えば、画素グループ2に対応する閾値を主走査方向に4画素、画素グループ3に対応する閾値を副走査方向に4画素、画素グループ4に対応する閾値を主走査方向に2画素、副走査方向に2画素ずらしても良い。閾値をずらす方向やずらし量は、パス間の位置ずれの発生特性を考慮して、適宜設定すれば良い。
E−2.変形例2:
第2実施例においては、全ての印刷階調の範囲において、評価値Eを算出して、第1のディザマスク61の閾値配置を決定したが、一部の印刷階調の範囲において、評価値Eに基づいて閾値配置を決定しても良い。例えば、ドットの分散性が大きな問題とならない高階調印刷領域では、別の手法で第1のディザマスク61の閾値配置を設定しても良い。
E−3.変形例3:
第2実施例においては、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62をEEPROM60に予め記憶しておく構成としたが、かかる構成に限られるものではない。例えば、EEPROM60には、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62のいずれか一方を予め記憶しておいても良い。この場合、CPU40は、ディザマスク生成部としても機能して、第1のディザマスク61および第2のディザマスク62のいずれか一方から、他方を生成する構成としても良い。もとより、ハーフトーン処理において、印刷媒体の種類に応じて、ディザマスクを選択することは必須ではなく、プリンター20が、第2のディザマスク62のみを記憶しておき、印刷媒体の種類に関係なく、第2のディザマスク62を固定的に用いても良いし、第1のディザマスク61とは別のディザマスクと第2のディザマスク62とを切り替えて用いても良い。
E−4.変形例4:
ハーフトーン処理において、ディザマスクを主走査方向に複数回繰り返し適用する際に、ディザマスクの適用位置を副走査方向に所定量ずらして適用することがある。かかる場合の閾値ずらし処理について説明する。閾値ずらし処理を施した第2のディザマスク62の閾値配置例を図20に示す。この例では、図示するように、第2のディザマスク62を主走査方向に複数回繰り返し適用する際に、ディザマスクの適用位置を副走査方向に1画素ずつずらして適用するケースを示している。
この例では、第1のディザマスク61に対して、復動閾値が主走査方向(図中の左方向)に4画素分ずらしている。また、かかるずらしに加えて、復動閾値のうちの「1,x」と「3,x」(xは0〜7の整数)の閾値を副走査方向(図中の上方向)に1画素分ずらしている。これは、第1のディザマスク61が、副走査方向に所定量ずらして適用することを前提に最適化されているからである。具体的には、第1のディザマスク61では、例えば、復動閾値に着目すると、第1のディザマスク61では、「7,0」の隣の復動閾値が「1,1」となるように最適化されている。図示する図27に示す閾値配置は、このような復動閾値の相対関係を維持させるために、復動閾値のうちの「1,x」と「3,x」の閾値を副走査方向に1画素分ずらしている。こうすれば、第1のディザマスク61の前提条件が維持されるので、粒状性の劣化を抑制することができ、望ましい。
E−5.変形例5:
第2実施例においては、ドットの分散の程度を示す評価値Eqとして、粒状性指数を用いたが、評価値Eqは、ドット配置の分散の程度を評価できるものであれば良い。例えば、評価値Eqは、RMS粒状度を用いても良い。RMS粒状度は公知の技術であるため(例えば、特開2007−174272号公報)、詳しい説明は省略するが、ドット密度値に対して、ローパスフィルターを用いてローパスフィルター処理を行うとともに、ローパスフィルター処理がなされた密度値の標準偏差を算出するものである。あるいは、画素位置からの距離に反比例する重み値のフィルターなど、適当なローパスフィルター処理後のドット密度を評価値Eqとしても良い。
E−6.変形例6:
上述の実施形態においては、本発明の印刷装置を、シリアル式プリンターとして実現した例について示したが、本発明は、ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、当該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行って、印刷画像を出力する印刷装置に広く適用することができる。異なる印刷条件とは、ドットを形成するタイミング、位置、印刷ヘッドやノズルの違いとすることができる。
例えば、本発明の印刷装置は、インクジェット式のラインプリンターとしても実現することができる。具体的には、例えば、印刷範囲に亘って配列され、印刷媒体上にドットを形成する複数の印刷ヘッドを備えるラインプリンターであっても良い。かかるラインプリンターは、複数の印刷ヘッドのうちの隣り合う印刷ヘッド同士は、印刷ヘッドの配列の方向において一部が重複するように配列されたものとすることができる。この重複領域では、2つの印刷ヘッドによって形成されたドットが組み合わされて、印刷画像が完成する。かかるラインプリンターに対しては、上記ステップS331においては、複数の印刷ヘッドのうちの互いに異なる印刷ヘッドによってドットが形成される画素のグループの各々に区分しても良い。
あるいは、印刷範囲に亘ってノズルが配列され、インクを吐出するノズル列を、ノズル列の配列の方向と交わる交差方向、つまり、紙送り方向に複数備えるラインプリンターであっても良い。かかるラインプリンターは、ノズル列を複数備えることによって、印刷解像度を向上させることができる。つまり、2つのノズル列によって形成されたドットが組み合わされて、印刷画像が完成する。複数のノズル列間で、ノズルの配列方向のノズル位置が同じであれば、紙送り方向の印刷解像度を向上させることができる。また、複数のノズル列間で、ノズルの配列方向のノズル位置が異なれば、ノズルの配列方向の印刷解像度を向上させることができる。かかるラインプリンターに対しては、上記ステップS331においては、複数のノズル列のうちの互いに異なるノズル列によってドットが形成される画素のグループの各々に区分しても良い。かかる場合、複数のノズル列は、一つの印刷ヘッドが備えていても良いし、異なる印刷ヘッドが個別的に備えていても良い。
また、一つのノズル列を構成するノズルが、ノズル列の配列方向に千鳥形状に配列されている場合には、この千鳥形状を形成する2つのノズル群、つまり、紙送り方向において位置が異なる2つのノズル群によってドットが形成される画素のグループの各々に区分しても良い。
これらのラインプリンターでは、紙送り方向に位置ずれが生じ易い。したがって、ラインプリンターに用いる第2のディザマスク62の生成では、閾値ずらし処理において、紙送り方向と異なる方向、つまり、紙送り方向と交差する方向のずらし量を相対的に大きくすると良い。なお、第2の設定としての印刷速度が6インチ/秒以上またはA4用紙0.5枚/秒以上のプリンターに適用すると、本発明の効果が特に発揮される。
E−7.変形例7:
上述した実施形態においては、プリンター20が単独で印刷を行う構成としたが、プリンターとコンピューター(端末としてのコンピューター、プリントサーバーとしてのコンピューターなど)とが接続された印刷システム(広義の印刷装置)において印刷処理を行う場合には、図2に示した印刷処理の一部を、コンピューターが行っても良い。例えば、RIP(Raster Image Processor)によってハーフトーン処理されたドットデータを、プリンター20において印刷しても良い。また、専用のハードウェアRIPを用いても良い。このハードウェアRIPは、例えば、コンピューターから転送されたデータを対象にハーフトーン処理を実行し、これによって生成したドットデータをプリンターに転送する。
E−8.変形例8:
キャリッジ80の移動速度は、どのような数値に変更しても良い。ただし、200cps以上が好ましい。200cpsを超えると、特に400cps以上の場合、ドットの形成位置のずれが生じ易く、本発明の効果が特に発揮されるからである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における構成要素のうち、独立クレームに記載された要素に対応する要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることはもちろんである。例えば、本発明は、印刷装置としてのほか、ディザマスクの生成方法、印刷装置の製造方法等としても実現することができる。また、本発明は、多色のカラー印刷を行う構成に代えて、モノクロ印刷やセピアなどの単色印刷を行う印刷装置等としても実現可能なことはもちろんである。この場合には、単色のインク滴を吐出するノズル列を有する印刷ヘッドを用いれば良い。
さらに、インク滴として大小や大中小などの2種類以上の大きさのインク滴を形成可能なプリンターとしても実施可能である。インク滴の大きさを制御するには、例えば、インク室の容積をピエゾ素子などのアクチュエーターにより制御するタイプの印刷ヘッドを備えたプリンターでは、アクチュエーターを制御してノズル先端のインク界面(メニスカス)の状態を制御すれば良い。あるいは、ノズル内に設けたヒーターによってインクを加熱し、発生する気泡によってノズルからインク滴を吐出するタイプの印刷ヘッドを備えたプリンターでは、ヒーターの駆動本数や駆動電力を制御して、バブルの成長を制御すれば良い。
本発明は、ドット集中型のドット形成を行う印刷装置および印刷方法にも適用することができることは既に説明した。ドット集中型の印刷装置では、印刷しようとする画像の階調値が高くなるに従って、集中して形成されるドットの数は増加するから、複数の画素グループに分けて印刷した場合、画素グループ毎の印刷位置にずれが生じると、互いに重なるドット数は少なくなり、被覆率は一般に増加する。このために印刷された画像は、画素グループ間の印刷位置にずれがない場合に比べて、明度や色相が変化する。そこで、上述したドット分散型のディザマスクと同様に、ドットの形成位置がずれた場合のドットの重なりの割合の変動を抑制するように、ドット集中型のディザマスクにおける閾値の配置を決定しておけば良い。その抑制の度合い(色差の変化範囲)は、ドット分散型のドット形成を行う場合と同様である。
ドット集中型のディザマスクを用いる場合、ペアドットの確率は、形成されるドットの数が少ない範囲(明度の高い範囲)では、ランダムにドットを形成する場合と比べて高く設定されている。そこで、このペアドットの確率がランダムにドットが形成される場合にペアドットが形成される確率に近づくように、図14に示した処理と同様の処理により、ディザマスクの閾値の配置を修正するのである。
以上説明した各実施例の印刷装置等は、ディザマスクに特定の特性が与えられていることにより、印刷された画像のCIEL*a*b*色空間でのL*,a*,b*の変化が所定の範囲内に抑制される。したがって、必ずしもディザマスクの特性を解析しなくても、本願発明を実施しているかを判断することができる。すなわち、分散性の高いディザマスクを用いている場合、図7から図9に符号Nとして示したように、往動と復動におけるドットの形成位置にずれが生じると、CIEL*a*b*色空間で画像のL*,a*,b*は、所定の範囲を超えて変化する。かかるL*,a*,b*の少なくとも一つの変化が、印刷状態を、第1,第2の画素グループのドットのドット間距離0の設定から、ドット間距離が2/720インチ〜5/720インチの範囲の任意の値となる設定までずらした場合、L*で2.0以内、a*で0.5以内、b*で0.5以内となっていれば、本願発明を実施していると判定することができる。こうしたドット形成位置のずらしは、例えば双方向印字における往動と復動のドット形成位置のずれの調整により、容易に実現することができる。したがって、双方向印字のドット形成位置を変えて印刷した2つの画像の明度や色味の変化を測定することにより、本願発明の実施の有無を容易に判定することができる。