以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
<第一実施形態>
本実施形態に係る電気コネクタ1(以下、「コネクタ1」という)は、回路基板(図示せず)上に配されるとともに平型導体C(図3参照)が挿入接続される回路基板用電気コネクタである。まず、図3にもとづいて、平型導体Cの構成について説明する。
上記平型導体Cは、挿抜方向たる前後方向(図3にて左右方向)を長手方向として延び、前端側(図3にて右端側)の上面で露呈して該平型導体Cの幅方向(図3の紙面に対して直角な方向)に配列形成された回路部(図示せず)を有している。本実施形態では、該回路部は、上記幅方向にて該回路部の範囲の両端側に位置するグランド回路部と、該グランド回路部同士間に位置する信号回路部とから成っている。また、該平型導体Cの前端側部分の両側縁部(図3の紙面に対して直角な方向での両側における縁部)には、コネクタ1の後述の係止突部37A−1を下方から受け入れるための切欠部C1が形成されている。該切欠部C1の前方に位置する部分は、平型導体Cが後方へ向けて外力を受けたとき、上記係止突部37A−1に対して後方へ向けて係止可能な被係止部C2として形成されている。
次に、図1,2にもとづいて、コネクタ1の構成を説明する。図1(A)に見られるように、コネクタ1は、略直方体外形をなすハウジング10と、該ハウジング10の長手方向(平型導体Cの幅方向に対応)で配列保持される端子20(図2(A)参照)と、上記ハウジング10の上面を覆うように該ハウジング10に取り付けられる金属部材30と、上記ハウジング10の前端側で、後述する開位置と閉位置との間で移動可能な可動部材40とを有している。
上記ハウジング10は、合成樹脂等の電気絶縁材で作られており、図1(A)および図2に見られるように、平型導体Cの前端側部分(図3参照)を後方から受け入れるための受入空間11が後方に向け開口して形成されている。該受入空間11は、図1(A)に見られるように、上下方向で互いに対向する上壁12および底壁13そして該上壁12および底壁13の端部同士を連結する二つの側壁14によって囲まれて形成されている。該受入空間11は、図2(A),(B)に見られるように、前後方向では後方に開口し、端子配列方向では、後述する金属部材30の二つの弾性腕部37を含む範囲で連通する空間として形成されている。以下、受入空間11の形成する上壁12の下面および底壁13の上面をそれぞれ「上側内壁面12A」、「下側内壁面13A」とする。また、図2(A)によく見られるように、上壁12の後端は、底壁13の後端よりも前方に位置している。なお、該上壁12の後端が底壁13の後端よりも前方に位置することは必須ではなく、例えば、該底壁13の後端よりも後方あるいは同位置にあってもよい。
図1(A)に見られるように、ハウジング10は、端子を収容して保持するための端子保持部15が、端子配列方向に等間隔で形成されている。該端子保持部15は、端子配列方向に対して直角な方向(図2(A)の紙面に平行な方向)に延びるスリット状をなし前後方向に貫通して形成されている。図2(A)に見られるように、該端子保持部15は、上壁12の下面に沿った上溝部15Aと、底壁13の前半部の上面に沿った下溝部15Bと、底壁13の後半部で該底壁13を前後方向に貫通して延びる孔部15Cと、前後方向での中間位置で上下方向に延びて上記上溝部15Aそして下溝部15Bを連通する連通溝部15Dとによって形成されている。
また、図1に見られるように、ハウジング10は、端子配列方向で端子配列範囲外の両側端側の位置に、後述の金属部材30の弾性腕部37を収容するための収容溝16が、図2(B)に見られるように、端子配列方向に対して直角な方向(図2(B)の紙面に平行な方向)に延び前後方向に貫通して形成されている。該収容溝16は、前後方向で後端位置から中間位置にわたって底壁13の上面に沿って延びる下溝部16Aと、該下溝部16Aの前部から上方へ向けて延びる縦溝部16Bとによって形成されている。また、上記底壁13は、後端部が切り欠かれているとともに、前後方向での中間位置に上下方向で貫通した底孔部13Bが形成されている。
図2(A),(B)によく見られるように、端子保持部15および収容溝16は、ハウジング10の前方側にて端子配列方向に連通するとともに上方に開口していて、可動部材40の回動を許容する回動許容空間17を形成している。また、図2(A),(B)に見られるように、該回動許容空間17の内壁面をなすハウジング10の前面の下半部は、端子配列方向に見て開位置の可動部材40の下端側部分に対応して円弧状をなす凹湾曲面17Aとして形成されている。
側壁14は、図1(A)に見られるように、後半部が前半部よりも端子配列方向内方へ段状をなすように没している。以下、該側壁14の前半部そして後半部をそれぞれ「前方側壁14A」、「後方側壁14B」という。前方側壁14Aには、後述する金属部材の取付腕部34(図1(B)参照)が後方から圧入されるスリット状の取付孔部14A−1が前後方向に貫通して形成されている。
端子20は、金属板を打ち抜いて平坦な板面を維持して形成されており、図2(A)に見られるように、前後方向に延びて上下に並設された上腕部21および下腕部22が前後方向での中間位置で上下方向に延びる連結部23により連結された略横H字形状をなしている。
上腕部21は、連結部23と連結されている領域である上側被連結域21Aから後方へ向けて延びる接触腕部21Bを有している。該接触腕部21Bの後端には下方へ向けて突出する接触部21B−1が形成されている。該接触部21B−1は、後述するように可動部材40が閉位置にあるときに、受入空間11内に挿入された平型導体Cの上面に形成された信号回路部に対して接圧をもって接触するようになっている(図3(C)参照)。また、上記上腕部21は、上記上側被連結域21Aから前方へ向けて回動許容空間17内へ延び後述の可動部材40の第一カム部42からの力を下方から受ける第一被圧部21Cを有している。
下腕部22は、連結部23と連結されている領域である下側被連結域22Aから後方へ向けて延びる被保持腕部22Bを有している。前後方向での該被保持腕部22Bの中間位置には、該被保持腕部22Bをハウジング10の孔部15Cに圧入するための圧入突部22B−1が上方へ突出して形成されている。
下腕部22は、上記下側被連結域22Aから前方へ向けても延びており、ハウジング10外へ延出する前端部の下部は、回路基板(図示せず)に半田接続される接続部22Cとして形成されている。該接続部22Cの下端はハウジング10の底壁13の下面よりも若干下方に位置しており、コネクタ1が回路基板上に配置されたときに該接続部22Cの下端が該回路基板の対応回路部と接触するようになっている。接続部22Cの後縁には、上記底壁13の前端部に対して係止する固定突部22C−1が形成されている。
前後方向での下腕部22の下側被連結域22Aと上記接続部22Cとの間には、後述の可動部材40の第一カム部42の回動を案内するカム案内部22Dが形成されている。該カム案内部22Dは、上腕部21の第一被圧部21Cの下方に位置している。
図2(A)に見られるように、下腕部22は、前後方向での下側被連結域22Aと上記接続部22Cとの間にて、該下腕部22の下縁が溝部15Bの底面よりも上方に位置している。また、該下腕部22は、前後方向での上記カム案内部22Dの位置にて、該下腕部22の下縁から下方へ向けて延びその下端で溝部15Bの底面に当接して該下腕部22を下方から支持する支持部22Eが形成されている。図2(A)に見られるように、上記溝部15Bのうち上記支持部22Eの前方そして後方にそれぞれ形成された前方溝部15B−1および後方溝部15B−2の位置では、上記下腕部22の下縁がこれらの溝部15B−1,15B−2の底面と離間して位置している。このように該下腕部22の下縁を上記溝部15B−1,15B−2の底面と離間させることにより、上記下腕部は、図2(A)に見られるように、前後方向でのほぼ全域にわたって上下方向での寸法がほぼ同程度の寸法となる。したがって、インピーダンスの調整がしやすくなるとともに、信号反射の影響を小さくすることができる。また、端子20の接続部22Cが回路基板の対応回路部(図示せず)に半田接続された際、該端子20の接触部21B−1側へ向けた半田上がりを上記前方溝部15B−1,15B−2で防止することができる。
このような構成の端子20は、ハウジング10に対して前方から取り付けられる。具体的には、該端子20が端子保持部15内にもたらされると、端子20の被保持腕部22Bが孔部15C内に圧入され該被保持腕部22Bの圧入突部22B−1がハウジング10の孔部15Cの上側内壁面に喰い込んで抜けが防止される。また、端子20の固定突部22C−1が底壁13の前端部に対して下方から係止する。この結果、端子20がハウジング10の端子保持部15内で保持される。
金属部材30は、図1(A),(B)に見られるように、金属板を打ち抜いてから板厚方向に屈曲して作られている。該金属部材30は、端子配列方向に延びる平坦な板状をなしハウジング10の上面を覆う上板部31を有しており、該上板部31によってコネクタ1のシールドが図られている。
上記上板部31には、端子配列方向での両端寄り位置での後端縁から該上板部31の下方で前方へ向けて折り返すようにして延びるグランド腕部32が、上下方向で弾性変位可能に形成されている。図2(B)によく見られるように、該グランド腕部32の折り返し部分である前部には、下方へ向けて突出するように屈曲されたグランド突部32Aが形成されている。図2(A),(B)に見られるように、該グランド突部32Aは、ハウジング10の上側内壁面12Aよりも受入空間11内へ突入しており、該グランド突部32Aの下端と底壁13の上面、換言すると受入空間11の下側内壁面13Aとの上下方向での間隔が平型導体Cの厚さ寸法よりも小さくなっている。上記グランド腕部32は、端子配列方向で平型導体Cのグランド回路部と対応する位置に設けられていて、受入空間11に平型導体Cが挿入されたとき、上記グランド突部32Aが上記グランド回路部に対して上方から接圧をもって接触するようになっている。
図1(A),(B)に見られるように、上記上板部31の側縁からは、下方へ屈曲されて延び上記ハウジング10の後方側壁14Bの外面を覆う側板部33が形成されていて、該側板部33も上板部31とともにコネクタ1のシールドに寄与している。該側板部33は、前後方向にて上記上板部31に対して後方にずれて位置しており、該側板部33の上部の前方側部分が上板部31の両端部の後方側部分に連結されている。
また、上記側板部33の前縁からは、取付腕部34が前方へ向けて延びて形成されていて、該取付腕部34がハウジング10の取付孔部14A−1へ後方からから圧入されることにより、金属部材30がハウジング10に取り付けられるようになっている。また、側板部33は、前部の下縁が端子配列方向で外方へ向けて直角に屈曲されていて、該金属部材30を回路基板に半田固定するための固定部35が形成されている。
また、上記側板部33は、その下縁の後半部で端子配列方向での内方へ向けて直角に屈曲されていて、上下方向に対して直角をなし該側板部33の下縁と後述の弾性腕部37の前部を連結する連結板部36が形成されている。そして、該連結板部36の後縁からは、該連結板部36の上方で前方へ向けて延びるように折り返されて片持ち梁状に形成された弾性腕部37が、上下方向で弾性変位可能に設けられている。図1(A),(B)に見られるように、該弾性腕部37は上記端子配列方向にて上記グランド腕部32よりも外方に位置している。
図2(B)に見られるように、弾性腕部37は、該弾性腕部37の後端から前方へ向かうにつれて下方へ傾斜する後方傾斜部37Aと、該後方傾斜部37Aの前端位置で屈曲され前方へ向かうにつれて上方へ傾斜する前方傾斜部37Bと、該前方傾斜部37Bの前端位置で屈曲され前方へ向けて延びる第二被圧部37Cとを有している。
上記後方傾斜部37Aは、ハウジング10の受入空間11に対して下方側に位置しており、前後方向での中間位置には、上方へ向けて突出するように山型(逆V字状)に屈曲された係止突部37A−1が形成されている。後述するように、係止突部37A−1は、上記受入空間11に挿入された平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aに対して係止可能に位置することにより、平型導体Cの不用意な抜けを防止するようになっている(図3(C)参照)。また、図2(B)に見られるように、該係止突部37A−1は、グランド腕部32のグランド突部32Aよりも後方に位置している。
該係止突部37A−1は、図2(B)に示されるように、弾性腕部37が自由状態にあるとき、該係止突部部37A−1の上端が受入空間11内へ下方から突入している。この状態において、該係止突部37A−1の上端とハウジング10の上壁12の下面、換言すると、受入空間11の上側内壁面12Aとの上下方向での間隔が平型導体Cの厚さ寸法以上となっている。
また、図2(B)に見られるように、上記後方傾斜部37Aは、係止突部37A−1よりも前方側部分が、ハウジング10の底壁13の底孔部13B内に突入している。また、上記第二被圧部37Cは、回動許容空間17内に後方から進入しており、上記係止突部37A−1よりも上方に位置している。
可動部材40は、合成樹脂等の電気絶縁材で作られており、図1(A)に示されるように、上記ハウジング10の前端側で、端子配列方向にて、ハウジング10の二つの後方側壁14Bを含む範囲にわたって延びて形成されている。該可動部材40は、端子配列方向での両端面に形成された回動被支持部(図示せず)が、該両端面に対面するハウジング10の前方側壁14Aの内面に形成された回動支持部(図示せず)によって、回動可能に支持されている。該可動部材40は、上記ハウジング10の受入空間11への平型導体Cの挿入を可能とする開位置(図3(A),(B)参照)と端子20に対する平型導体Cの接圧を高める閉位置(図3(C)参照)との間で回動可能となっている。
図2(A),(B)に見られるように、上記可動部材40は、開位置にあるとき、下半部がハウジング10の回動許容空間17内に位置していて、上半部が該回動許容空間17から上方へ突出している。また、該可動部材40の下端側部分は、端子配列方向に見たときに外縁が円弧状をなしており、回動許容空間17内でハウジング10の前面の凹湾曲面17Aとの間に若干の隙間をもって対面するように位置している。図2(A)では、上記可動部材40の下端側部分のうち端子20と重なっている部分の外縁を破線で示している。
また、図2(A)に見られるように、該可動部材40は、端子配列方向で各端子20に対応する部分の下半部に、各溝部41は、該溝部41の対向内壁面(端子配列方向で互いに面する内壁面)同士を連結している第一カム部42が設けられている。該第一カム部42は、可動部材40が開位置にあるときに、該第一カム部42の断面が前後方向に長い長円形状をなし、また、該可動部材40が閉位置にあるときには、その断面が上下方向に長い長円形状をなす姿勢となる。該第一カム部42の回動中心は可動部材40全体の回動中心と一致している。
図2(A)に見られるように、可動部材40が開位置にあるとき、端子20の第一被圧部21Cが第一カム部42の上方位置で上記溝部41内へ後方から進入し、該第一カム部42と上下方向で間隔をもって位置している。また、端子20のカム案内部22Dが上記溝部41内で第一カム部42の下方に位置し、該第一カム部42を回動可能に支持している。本実施形態では、第一被圧部21Cの下縁と端子20のカム案内部の上縁との間の距離は、上記第一カム部42の短手方向の寸法より大きく、かつ、該第一カム部42の長手方向の寸法より小さくなっている。
また、図2(B)に見られるように、可動部材40は、端子配列方向にて金属部材30の弾性腕部37に対応する位置で、可動部材40の後方側(図2(B)にて左方側)の面が上下方向全域にわたって没入していて、スリット状の溝部43が形成されている。該溝部43は、下半部が上半部に比べて大きく没入して凹部をなしている。
図2(B)に見られるように、上記可動部材40の下端側には、後方へ向けて溝部43内へ突入する第二カム部44が形成されている。該第二カム部44は、図2(B)や図3(A),(B)に見られるように、可動部材40が開位置にあるとき、その断面形状が後方へ向けて突出する円弧をもつ略半円状をなしていて、図3(C)に見られるように、該可動部材40が回動されて閉位置にもたらされると、その断面形状が上方へ向けて突出する円弧をもつ略半円状をなすようになる。
図2(B)に見られるように、可動部材40が開位置にあるときには、第二カム部44の上方で上記弾性腕部37の第二被圧部37Cが上記溝部43の下半部に後方から進入していて第二カム部44と上下方向で間隔をもって位置している。本実施形態では、可動部材40が開位置にあるときの、第二カム部44の上縁と上記第二被圧部37Cの下縁との間の距離は、該第二カム部44の前後方向寸法(可動部材40が閉位置にあるときの上下方向寸法)よりも小さくなっている。したがって、可動部材40が閉位置にあるときには、上記第二カム部44が上記第二被圧部37Cを下方から押圧するようになっている。
以下、図3(A)ないし(C)にもとづいて、コネクタ1の使用要領について説明する。まず、コネクタ1の端子20の接続部22Cを回路基板(図示せず)上に形成された対応回路部に半田接続するとともに、金属部材30の固定部35を上記回路基板上に形成された対応部に半田接続して固定する。
次に、該コネクタ1の可動部材40が開位置にある状態にて、平型導体Cの前端側部分を受入空間11内へ前方に向けて挿入する。該平型導体Cの挿入過程にて、平型導体Cは、図3(A)に示されるように、ハウジング10の受入空間11の上側内壁面12Aと金属部材30の弾性腕部37の係止突部37A−1の上端との間を通過する。既述したように、上記上側内壁面12Aと上記係止突部37A−1との間隔は、平型導体Cの厚さ寸法よりも大きくなっているので、該平型導体Cは上記弾性腕部37を下方へ向けて弾性変位させることなく、上記上側内壁面12Aと上記係止突部37A−1との間を前方へ向けて移動する。つまり、本実施形態では、平型導体Cの挿入するための挿入力を必要とせず、いわゆる零挿入力で平型導体Cを挿入することができる。
そして、図3(B)に示されるように、平型導体が所定位置まで挿入されると、該平型導体Cの前端が受入空間11の前端を規定するハウジング10の当接面11Aに当接して、該平型導体Cの切欠部C1が前後方向で上記弾性腕部37の係止突部37A−1の位置に到達し、該係止突部37A−1の上端が上記切欠部C1内に下方から突入する。また、図3(B)に見られるように、金属部材30のグランド腕部32のグランド突部32Aが、該平型導体Cの上面で露呈するグランド回路部に対して上方から接圧をもって接触する。
次に、開位置にある可動部材40を回動させて、図3(C)に示される閉位置へもたらす。このとき、可動部材40の下端側部分は、ハウジング10の凹湾曲面17Aに沿って回動する。該可動部材40の下端側部分は、上記凹湾曲面17Aとの間に若干の隙間をもって位置しているので、該凹湾曲面17Aと摺接することなく円滑に回動できる。また、仮に、該可動部材40に対して上記凹湾曲面17A側へ向けた外力(例えば、後方や下方へ向けた外力)が不用意に作用しても、上記下端側部分は、該凹湾曲面17Aに当接してそれ以上の移動が規制されるので、該可動部材40が大幅にずれることはなく、安定した回動が可能となっている。
また、可動部材40の回動過程にて、該可動部材40の第一カム部42(図2(A)参照)が、端子20のカム案内部22D(図2(A)参照)の上縁部で案内されながら閉位置に向けて回動する。回動開始後、該第一カム部42の端部は端子20の第一被圧部21Cを上方へ押し上げる。これによって、端子20の連結部23が後方へ向けて傾斜するように弾性変位し、端子20の上腕部21が上側被連結域21Aを支点として梃子状に傾き、該上腕部21の後端が下方へ変位する。この結果、該上腕部21の後端に形成された接触部21B−1が下方へ変位して、平型導体Cの上面に形成された信号回路部に対して接圧をもって接触する。
一方、可動部材40の第二カム部44は、可動部材40の回動開始後、該第二カム部44の端部が金属部材30の弾性腕部37の第二被圧部37Cを上方へ押し上げて、該弾性腕部37を上方へ向けて弾性変位させる。そして、可動部材40が閉位置にもたらされると、図3(C)に見られるように、上記弾性腕部37の後方傾斜部37Aが、傾斜姿勢から前後方向に延びた水平姿勢となる。
上記弾性腕部37の弾性変位に伴い、該弾性腕部37の係止突部37A−1は上方へ向けて移動するので、図3(C)に見られるように、平型導体Cの切欠部C1内への該係止突部37A−1の突入量が増大して、係止突部37A−1が平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aの後方で該後縁C2Aと全面的に対向するように位置する。この結果、平型導体Cが後方へ向けた不用意な外力を受けたときに、上記係止突部37A−1が上記被係止部C2の後縁C2Aに十分に係止するようになる。
また、本実施形態では、上記閉位置にて、上記係止突部37A−1とハウジング10の上側内壁面12Aとの上下方向での間隔は、平型導体Cの厚さ寸法よりも小さくなっている。したがって、平型導体Cが後方へ向けた外力を受けたとしても、該平型導体Cが上記係止突部37A−1を乗り越えるようにして該係止突部37A−1と上記上側内壁面12Aとの間を抜けるようにして通過することがないので、平型導体Cの抜けを確実に防止できる。
本実施形態では、図2(B)に見られるように、金属部材30の弾性腕部37の後方傾斜部37Aは、係止突部37A−1よりも前方側部分が、ハウジング10の底壁13の底孔部13B内に突入している。したがって、その突入している分だけ後方傾斜部37Aを下方へ位置させることができるので、その分、上記係止突部37A−1を上下方向で大きく形成できる。つまり、平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aと係止可能な部分が上下方向でさらに大きくなるとともに、該係止突部37A−1の上端とハウジング10の上側内壁面12Aとの上下方向での間隔がさらに小さくなる。この結果、所定位置まで挿入された平型導体Cの抜けをより確実に防止できる。
また、本実施形態では、可動部材40が閉位置にあるとき、可動部材40の第二カム部44が金属部材30の弾性腕部37の前端に形成された第二被圧部37Cを上方へ押し上げることにより、該弾性腕部37は前端と後端で支持された両持ち梁状をなすので、上方からの外力に対して強固に対抗できる。したがって、上記弾性腕部37の係止突部37A−1が平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aに係止可能に位置した状態を維持しやすくなるので、平型導体Cの抜けをより確実に防止できる。
本実施形態では、金属部材30の弾性腕部37が、上方へ突出する係止突部37A−1で平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aと係止することとしたが、該係止突部に代えて、弾性腕部の前後方向での中間位置に、該中間位置よりも後方側の部分が前方側の部分よりも上方に位置するような段部を形成し、該段部で平型導体の被係止部の後縁と係止するようにしてもよい。
本実施形態では、金属部材の弾性腕部は、前方へ向かうにつれて下方へ傾斜する後方傾斜部を有していたが、該弾性腕部の形状はこれに限られず、弾性腕部は、該後方傾斜部に代えて、例えば、傾斜することなく前方へ向けて延びた部分を有していてもよい。
<第二実施形態>
第一実施形態では、金属部材30の弾性腕部37は、平型導体Cの挿入時に自由状態にあり、可動部材が閉位置にもたらされる際に上方へ向けて弾性変位したが、図4ないし図6に示される本実施形態では、弾性腕部が、平型導体Cの挿入時に下方へ向けて弾性変位し、可動部材が閉位置にもたらされる際には自由状態にある点で、第一実施形態と相違する。
本実施形態に係るコネクタは、金属部材および可動部材の一部の形状を除き、第一実施形態に係るコネクタ1と構成が同じである。本実施形態では、第一実施形態に対応する構成について、第一実施形態での符号に「100」を加えた符号を付している。以下、第一実施形態と異なる構成を中心に説明し、第一実施形態と同じ構成については説明を省略する。また、平型導体も第一実施形態と構成が同じであるので、第一実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
図4ないし図5にもとづいて、本実施形態に係るコネクタ101の構成を説明する。本実施形態の金属部材130は、図4,5に見られるように、弾性腕部137の形状を除いて、第一実施形態の金属部材30と構成が同じである。図4(A)および図5に見られるように、本実施形態に係るコネクタ101の金属部材130の片持ち梁状の弾性腕部137は、該弾性腕部137の後端から傾斜することなく前方へ向けて延びる後方横部137Aと、該後方横部137Aの前端位置で直角に屈曲され上方へ向けて延びる縦部137Bと、該縦部137Bの上端位置で直角に屈曲され前方へ向けて延びる前方横部137Cとを有している。
上記後方横部137Aは、ハウジング110の受入空間111に対して下方側に位置しており、前後方向での中間位置には、上方へ向けて突出するように山型に屈曲された係止突部137A−1が形成されている。該係止突部137A−1は、図5に示されるように、弾性腕部137が自由状態にあるとき、受入空間111内へ突入している。この状態において、該係止突部137A−1の上端と受入空間111の上側内壁面112Aとの上下方向での間隔が平型導体Cの厚さ寸法より小さくなっている。
上記弾性腕部137の前方横部137Cは、後述するように、可動部材140が閉位置にあるとき、該可動部材140の規制部144によって下方への移動を規制される被規制部として機能する(図6(C)参照)。
本実施形態の可動部材140は、カム部に代えて、上記金属部材130の上記弾性腕部137の前方横部137Cの下方への移動を規制するための規制部144が形成されている点を除いて、第一実施形態の可動部材40と構成が同じである。可動部材140は、図5に見られるように、開位置にあるとき、該可動部材140の下端側部分にて溝部143の底面を形成する後述の規制面144A(図5にて溝部143の右端面)が、上下方向にわたって平坦になっている。つまり、第一実施形態のような上記溝部143の底面から後方へ突出するカム部は形成されていない。本実施形態では、図5に示される開位置での可動部材140の前半部の下端側部分、すなわち上記規制面144Aを後端面とする部分は、該可動部材140が閉位置にあるときに、被支持部としての前方横部137Cの下方への移動を、該閉位置での上面たる上記規制面144Aで規制する規制部144として形成されている(図6(C)参照)。
以下、図6(A)ないし(C)にもとづいて、コネクタ101の使用要領について説明する。まず、第一実施形態と同様に、コネクタ101の端子120の接続部122Cを回路基板(図示せず)上に形成された対応回路部に半田接続するとともに、金属部材130の固定部135を上記回路基板上に形成された対応部に半田接続して固定する。
次に、該コネクタ101の可動部材140が開位置にある状態にて、平型導体Cの前端側部分を受入空間111内へ前方に向けて挿入する。本実施形態では、既述したように、弾性腕部137が自由状態にあるとき、該弾性腕部137の係止突部137A−1の上端と受入空間111の上側内壁面112Aとの上下方向での間隔は平型導体Cの厚さ寸法より小さくなっている。したがって、平型導体Cの挿入過程にて、平型導体Cの前端が係止突部137A−1の位置にまで到達すると、該平型導体Cは、図6(A)に示されるように、該平型導体Cの被係止部C2が係止突部137A−1を上方から押圧して弾性腕部137を下方へ向けて弾性変位させて上記間隔を拡げながら、上記上側内壁面112Aと上記係止突部137A−1の上端との間を通過する。
そして、図6(B)に示されるように、平型導体Cが所定位置まで挿入されると、平型導体Cの前端が受入空間111の前端を規定するハウジング110の当接面111Aに当接して、該平型導体Cの切欠部C1が前後方向で上記弾性腕部137の係止突部137A−1の位置に到達する。この結果、弾性腕部137は弾性変位状態から開放されて自由状態に戻り、係止突部137A−1が上記切欠部C1内に突入する。この結果、図6(B)に見られるように、該係止突部137A−1が平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aの後方で該後縁C2Aと対向するように位置する。また、図6(B)に見られるように、金属部材130のグランド腕部132のグランド突部132Aが、該平型導体Cの上面で露呈するグランド回路部に対して上方から接圧をもって接触する。
本実施形態では、平型導体Cの挿入過程にて、上記グランド腕部132が平型導体Cを下方へ付勢するので、該平型導体Cが該グランド突部132Aの下方側へ案内されやすくなっている。また、平型導体Cの挿入が完了した状態にて、上記グランド突部132Aが平型導体Cを下方へ押圧しているので、平型導体Cは該グランド突部132Aとハウジング110の下側内壁面113Aとによって挟持される。この結果、可動部材140が閉位置へもたらされる前においても、平型導体Cを仮固定して該平型導体Cの不用意な抜けを防止することができる。
次に、開位置にある可動部材140を回動させて、図6(C)に示される閉位置へもたらす。本実施形態においても、第一実施形態と同様に、閉位置へ回動する過程にて、可動部材140のカム部142(図示せず)の回動にもとづいて、端子120の上腕部121が梃子状に傾くことにより、該上腕部121の後端に形成された接触部121B−1が下方へ変位して、平型導体Cの上面に形成された信号回路部に対して接圧をもって接触する。
また、可動部材140が閉位置にもたらされると、図6(C)に見られるように、該可動部材140の規制部144が、上記金属部材130の弾性腕部137の前方横部137Cに対して、該前方横部137Cを上方へ弾性変位させることなく下方から当接して支持する。したがって、上記規制部144により上記前方横部137Cの下方への移動が規制されるので、弾性腕部137が下方へ向けて移動することがなくなる。この結果、該弾性腕部137の係止突部137−1が平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aに対して係止可能な状態が維持される。
また、本実施形態では、上記閉位置にて、上記係止突部137A−1とハウジング110の上側内壁面112Aとの上下方向での間隔は、平型導体Cの厚さ寸法よりも小さくなっている。したがって、平型導体Cが後方へ向けた外力を受けたとしても、該平型導体Cが上記係止突部137A−1を乗り越えるようにして該係止突部137A−1と上記上側内壁面112Aとの間を抜けるように通過することがないので、所定位置まで挿入された平型導体Cの抜けを確実に防止できる。
また、本実施形態では、可動部材140が閉位置にあるときに、可動部材140の規制部144が金属部材130の弾性腕部137の前方横部137Cを支持することにより、第一実施形態の場合と同様に、該弾性腕部137は両持ち梁状をなすので、上方からの外力に対して強固に対抗できる。したがって、上記弾性腕部137の係止突部137A−1が平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aに係止可能に位置した状態を維持しやすくなるので、平型導体Cの抜けをより確実に防止できる。
本実施形態では、閉位置にて、可動部材140の規制部144が、弾性腕部137の前方横部137Cを上方へ弾性変位させることなく支持することとしたが、これに代えて、該前方横部137Cを上方へ若干弾性変位させる程度に支持してもよい。また、弾性腕部137の係止突部137A−1とハウジング110の上側内壁面112Aとの上下方向での間隔が平型導体Cの厚さ寸法よりも小さい状態が維持される範囲内であれば、上記閉位置にて、上記規制部144が上記前方横部137Cに対して間隔をもって位置していてもよい。
<第三実施形態>
第一実施形態では、可動部材40が閉位置にあるとき、金属部材30の弾性腕部37の被圧部37Cは上方へ向けて弾性変位した状態となるが、図7ないし図12に示される本実施形態では、可動部材が閉位置にあるとき、金属部材の弾性腕部の被圧部は端子配列方向での外方へ向けて弾性変位した状態となる点で第一実施形態と異なっている。
本実施形態に係るコネクタは、ハウジング、金属部材および可動部材の一部の形状を除き、第一実施形態に係るコネクタ1と構成が同じである。本実施形態では、第一実施形態に対応する構成について、第一実施形態での符号に「200」を加えた符号を付している。以下、第一実施形態と異なる構成を中心に説明し、第一実施形態と同じ構成については説明を省略する。また、平型導体は第一実施形態と構成が同じであるので、第一実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
以下、図7ないし図9にもとづいて、本実施形態のコネクタ201の構成を説明する。本実施形態の金属部材230は、連結板部236および弾性腕部237の形状を除いて、第一実施形態の金属部材30と構成が同じである。図7(A),(B)に見られるように、本実施形態に係るコネクタ201の金属部材230は、側板部233の下部の後端で直角に屈曲されて連結板部236が端子配列方向での内方へ向けて延びるとともに、該連結板部236の内側縁で直角に屈曲されて片持ち梁状の弾性腕部237が前方へ向けて延びている。図7(A),(B)に見られるように、該弾性腕部237は、端子配列方向に対して直角な板面をもつ板状をなし、上下方向および端子配列方向(該弾性腕部237の板厚方向)で弾性変位可能となっている。
図8に見られるように、上記弾性腕部237は、該弾性腕部237の後端から傾斜することなく前方へ向けて延びる後方横部237Aと、該後方横部237Aの前部に連結され該後方横部237Aより上方位置で前方へ向けて延びる前方横部237Cとを有している。
上記後方横部237Aは、ハウジング210の受入空間211に対して下方側に位置しており、前後方向での中間位置には、上方へ向けて突出する係止突部237A−1が形成されている。該係止突部237A−1は、図8に示されるように、受入空間211内へ突入している。この状態において、該係止突部237A−1の上端と受入空間211の上側内壁面212Aとの上下方向での間隔は平型導体Cの厚さ寸法より小さくなっている。
上記弾性腕部237の前方横部237Cは、後述するように、可動部材240が閉位置にあるときに該可動部材240の第二カム部244によって端子配列方向外方へ向けて押圧される被圧部として機能する(図12(C)参照)。
本実施形態の可動部材240は、開位置での下半部のみに第二溝部243が形成されていること、そして、開位置での下端寄り部分に第二カム部244が形成されている点を除いて、第一実施形態の可動部材40と構成が同じである。また、図8に見られるように、開位置での第二カム部244の後縁には、後方へ向かうにつれて端子配列方向内方へ傾斜する傾斜面244Aが形成されていて、可動部材240が開位置から閉位置へ移動する過程にて、金属部材230の弾性腕部237の前方横部237Cに対して上記傾斜面244Aが摺接しながら該前方横部237Cを端子配列方向での外方(図8にて手前方向)へ押圧するようになっている。
本実施形態のハウジング210は、図9(A)ないし(C)に見られるように、前方側壁214Aに、端子配列方向外方へ向けて弾性変位した上記前方横部237Cを受け入れ下方への移動を規制するための規制部214A−2が前後方向に貫通した空間として形成されている点で、第一実施形態のハウジング10と構成が異なっている。該規制部214A−2は、図9(A),(B)に見られるように、上下方向での上記前方横部237Cに対応する位置で前方側壁214Aが角状に切り欠かれていて、上記端子配列方向内方へ向けて開口している。また、該規制部214A−2の下面は、上記前方横部237Cが上記規制部214A−2内に位置しているときに、該前方横部237Cの下方への移動を規制するための規制面214A−3として機能する(図12(A),(B)をも参照)。
以下、図10ないし図12にもとづいて、コネクタ201の使用要領について説明する。まず、第一実施形態と同様に、コネクタ201の端子220の接続部222Cを回路基板(図示せず)上に形成された対応回路部に半田接続するとともに、金属部材230の固定部235を上記回路基板上に形成された対応部に半田接続して固定する。
次に、該コネクタ201の可動部材240が開位置にある状態にて、平型導体Cの前端側部分を受入空間211内へ前方に向けて挿入する。本実施形態では、既述したように、弾性腕部237が自由状態にあるとき、該弾性腕部237の係止突部237A−1の上端と受入空間211の上側内壁面212Aとの上下方向での間隔は平型導体Cの厚さ寸法より小さくなっている。したがって、平型導体Cの挿入過程にて、平型導体Cの前端が係止突部237A−1の位置にまで到達すると、該平型導体Cは、図10(A)に示されるように、該平型導体Cの被係止部C2が係止突部237A−1を上方から押圧して弾性腕部237を下方へ向けて弾性変位させて(図10(B),(C)をも参照)上記間隔を拡げながら、上記上側内壁面212Aと上記係止突部237A−1の上端との間を通過する。
そして、図11(A),(C)に示されるように、平型導体が所定位置まで挿入されると、該平型導体Cの前端が受入空間211の前端を規定するハウジング210の当接面211Aに当接して、該平型導体Cの切欠部C1が前後方向で上記弾性腕部237の係止突部237A−1の位置に到達する。この結果、弾性腕部237は弾性変位状態から開放されて自由状態に戻り(図11(B)をも参照)、係止突部237A−1が上記切欠部C1内に突入する。この結果、図11(A)に見られるように、該係止突部237A−1が平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aの後方に位置する。また、図11(A)に見られるように、金属部材230のグランド腕部232のグランド突部232Aが、該平型導体Cの上面で露呈するグランド回路部に対して上方から接圧をもって接触する。
次に、開位置にある可動部材240を回動させて、図12(A)に示される閉位置へもたらす。本実施形態においても、第一実施形態と同様に、閉位置へ回動する過程にて、可動部材240の第一カム部242(図示せず)の回動にもとづいて、端子220の上腕部221が梃子状に傾くことにより、該上腕部221の後端に形成された接触部221B−1(図示せず)が下方へ変位して、平型導体Cの上面に形成された信号回路部に対して接圧をもって接触する。
また、可動部材240の第二カム部244は、可動部材240の回動開始後、上記弾性腕部237の前方横部237Cの端子配列方向での内側面に対して傾斜面244Aが摺接しながら、該前方横部237Cを該端子配列方向での外方へ押圧して、弾性腕部237を外方へ向けて弾性変位させる。
そして、可動部材240が閉位置にもたらされると、図12(A)ないし(C)に見られるように、上記弾性腕部237の前方横部237Cは、上記第二カム部244の側面(端子配列方向に対して直角な面)で該端子配列方向での外方へ向けて押圧されて弾性変形し、ハウジング210の前方側壁214Aの規制部214A−2内に収容される。また、該規制部214A−2に収容された上記前方横部237Cは、該規制部214A−2の下面たる規制面214A−3によって、下方への移動が規制されるので、弾性腕部237が下方へ向けて移動することがなくなる。この結果、図12(C)に見られるように、該弾性腕部237の係止突部237A−1が平型導体Cの被係止部C2の後縁に対して係止可能な状態が維持される。
本実施形態では、上記閉位置にて、上記係止突部237A−1とハウジング10の上側内壁面212Aとの上下方向での間隔は、平型導体Cの厚さ寸法よりも小さくなっている。したがって、平型導体Cが後方へ向けた外力を受けたとしても、該平型導体Cが上記係止突部237A−1を乗り越えるようにして該係止突部237A−1と上記上側内壁面212Aとの間を抜けるように通過することがないので、所定位置まで挿入された平型導体Cの抜けを確実に防止できる。
また、本実施形態では、可動部材240が閉位置にあるとき、ハウジング210の規制面214A−3が金属部材230の弾性腕部237の前方横部237Cを下方から支持することにより、第一そして第二実施形態の場合と同様に、該弾性腕部237は両持ち梁状をなすので、上方からの外力に対して強固に対抗できる。したがって、上記弾性腕部237の係止突部237A−1が平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aに係止可能に位置した状態を維持しやすくなるので、平型導体Cの抜けをより確実に防止できる。
<第四実施形態>
第二実施形態では、平型導体Cの挿入過程にて金属部材130の弾性腕部137が下方へ向けて弾性変位し、可動部材140が閉位置にあるときに、該可動部材140の規制部144によって該弾性腕部137の前方横部137Cの下方への移動が規制された。これに対して、図13ないし図17に示される本実施形態では、平型導体の挿入過程にて金属部材の弾性腕部が端子配列方向外方へ向けて弾性変位し、可動部材が閉位置にあるときに、該可動部材の規制面によって該弾性腕部の前方横部の端子配列方向外方への移動が規制される点で第二実施形態と異なっている。
本実施形態に係るコネクタは、ハウジング、金属部材および可動部材の一部の形状を除き、第二実施形態に係るコネクタ1と構成が同じである。本実施形態では、第一実施形態に対応する構成について、第二実施形態での符号に「200」を加えた符号を付している。以下、第二実施形態と異なる構成を中心に説明し、第二実施形態と同じ構成については説明を省略する。また、平型導体は第一実施形態と構成が同じであるので、第一実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
以下、図13および図14にもとづいて、本実施形態のコネクタ301の構成を説明する。本実施形態のハウジング310は、図13(A)および図14に見られるように、第二実施形態のハウジング110の側壁114(図4(A)参照)と比較して、側壁314が端子配列方向で大きくなっていて肉厚に形成されている。また、図14(B)に見られるように、端子配列方向での上記ハウジング310の側壁314の内面は、略前半部にて、前方へ向かうにつれて端子配列方向外方へ傾斜する傾斜面314Cが形成されている。
金属部材330は、上述したように、ハウジング310の側壁314が第二実施形態と比較して端子配列方向で大きく形成されていることに伴い、図13(A)に見られるように、上板部331も上記端子配列方向で大きくなっている。図13(A),(B)に見られるように、上記金属部材330は、側板部333の上下方向での中間部分の後端で直角に屈曲されて連結板部336が端子配列方向での内方へ向けて延びるとともに、該連結板部336の内側縁で直角に屈曲されて片持ち梁状の弾性腕部337が前方へ向けて延びている。図13(A),(B)に見られるように、該弾性腕部337は、端子配列方向に対して直角な板面をもつ板状をなし、端子配列方向(板厚方向)で弾性変位可能となっている。
図13および図14(B)に見られるように、上記弾性腕部337は、上記連結板部336から前方へ向けて延びる後方横部337Aと、該後方横部の前端位置で端子配列方向内方へ向けて突出するように山型に屈曲された係止突部337Dと、該係止突部337Dの前端位置で屈曲されて前方へ向けて延びる前方横部337Cとを有している。
図14(B)に見られるように、上記後方横部337Aは、端子配列方向で前壁318の両端に形成された後方突出部318Aの内側面318A−1(端子配列方向に対して直角な面)よりも端子配列方向外方、すなわち受入空間311外に位置していて、該受入空間311に挿入された平型導体Cの側縁と干渉しないようになっている(図16(B)参照)。また、上記係止突部337Dは、該係止突部337Dの頂部側部分が受入空間311内へ側方から突入している。上記前方横部337Cは、端子配列方向にて上記後方横部337Aよりも端子配列方向外方位置で、側壁314の傾斜面314Cに対して間隔をもって位置している。該前方横部337Cは、後述するように、可動部材340が閉位置にあるときに、該可動部材340の規制面344Aによって端子配列方向外方へ向けた移動の規制を受ける被規制部としての機能する(図17(B)参照)。
図14(A)に示されるように、可動部材340は、端子配列方向で上記弾性腕部337の前方横部337Cに対応する位置にて、開位置にあるときの該可動部材340の下部の前面が切り欠かれて規制溝部344が形成されている。該規制溝部344は、端子配列方向に対して直角な面をもつスリット状をなしており、上記可動部材340が閉位置にもたらされたときに、上記前方横部337Cの前端側部分を収容するようになっている(図17(B)参照)。また、該規制溝部344の二つの対向面(端子配列方向に対して直角な面)のうち端子配列方向外方に位置する面は、上記前方横部337Cの前端側部分に当接して、該前方横部337Cの外方へ向けた移動を規制する規制面344Aとして形成されている。
また、図14(A),(B)に見られるように、開位置にあるときの可動部材340は、上記規制溝部344よりも端子配列方向外方かつ下方位置で、前後方向に貫通する溝部345が形成されている。図14(B)に見られるように、該溝部345内の空間は、端子配列方向にて側壁314の傾斜面314Cとハウジング310の前壁318の外側面との間に形成される空間と相俟って、後述するように、金属部材330の弾性腕部337の端子配列方向外方への弾性変位を許容するための弾性変位許容空間319を形成している(図15(B)をも参照)。
以下、図15ないし図17にもとづいて、コネクタ301の使用要領について説明する。まず、第一実施形態と同様に、コネクタ301の端子320の接続部322Cを回路基板(図示せず)上に形成された対応回路部に半田接続するとともに、金属部材330の固定部335を上記回路基板上に形成された対応部に半田接続して固定する。
次に、コネクタ301の可動部材340が開位置にある状態にて、平型導体Cの前端側部分を受入空間311内へ前方に向けて挿入する。本実施形態では、既述したように、弾性腕部337が自由状態にあるとき、該弾性腕部337の係止突部337Dの頂部側部分が受入空間311内に突入している。したがって、平型導体Cの挿入過程にて、平型導体Cの前端が係止突部337Dの位置にまで到達すると、図15(B)に示されるように、平型導体Cは、該平型導体Cの被係止部C2が上記係止突部337Dを端子配列方向外方へ向けて押圧して弾性腕部337を弾性変位許容空間319内で外方へ弾性変位させながら前方へ移動する(図15(A)をも参照)。
そして、図16(B)に示されるように、平型導体Cが所定位置まで挿入されると、該平型導体Cの前端が受入空間311の前端を規定するハウジング310の当接面311Aに当接して、該平型導体Cの切欠部C1が前後方向で上記弾性腕部337の係止突部337Dの位置に到達する。この結果、弾性腕部337は弾性変位状態から開放されて自由状態に戻り(図16(A)をも参照)、係止突部337Dが上記切欠部C1内に側方から突入する。この結果、図16(B)に見られるように、該係止突部337Dの頂部側部分が平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aの後方で該後縁C2Aと対向するように位置する。また、金属部材330のグランド腕部332のグランド突部332A(図示せず)が、該平型導体Cの上面で露呈するグランド回路部に対して上方から接圧をもって接触する。
次に、開位置にある可動部材340を回動させて、図17(A),(B)に示される閉位置へもたらす。本実施形態においても、第一実施形態と同様に、閉位置へ回動する過程にて、可動部材340のカム部342(図示せず)の回動にもとづいて、端子320の上腕部321が梃子状に傾くことにより、該上腕部321の後端に形成された接触部321B−1(図示せず)が下方へ変位して、平型導体Cの上面に形成された信号回路部に対して接圧をもって接触する。
また、可動部材340が閉位置にもたらされると、図17(B)に見られるように、上記弾性腕部337の前方横部337Cの前端側部分が該可動部材340の規制溝部344内に収容される。該前端側部分が規制溝部344内に収容されることにより、該規制溝部344の規制面344Aにより上記前方横部337Cの端子配列方向外方への移動が規制されるので、弾性腕部337が外方へ向けて移動することがなくなる。この結果、該弾性腕部337の係止突部337Dが平型導体Cの被係止部C2の後縁に対して係止可能な状態が維持される。
また、本実施形態では、可動部材340が閉位置にあるとき、可動部材340の規制面344Aが金属部材330の弾性腕部337の前方横部337Cを規制することにより、第一ないし第三実施形態の場合と同様に、該弾性腕部337は両持ち梁状をなすので、端子配列方向で内方からの外力に対して強固に対抗できる。したがって、上記弾性腕部337の係止突部337Dが平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aに係止可能に位置した状態を維持しやすくなるので、平型導体Cの抜けをより確実に防止できる。
本実施形態では、金属部材330の弾性腕部337が、端子配列方向にて内方へ突出する係止突部337Dで平型導体Cの被係止部C2の後縁C2Aと係止することとしたが、該係止突部に代えて、弾性腕部の前後方向での中間位置に、該中間位置よりも後方側の部分が前方側の部分よりも端子配列方向内方に位置するような段部を形成し、該段部で平型導体の被係止部の後縁と係止するようにしてもよい。
また、第一ないし第四実施形態では、平型導体と係止する係止突部を有する弾性腕部が、シールド機能をもつ上板部や側板部と一体に形成されているので、その分、部品点数が少なくて済み、コネクタの組立工程も容易となる。また、部品点数に制限が場合には、上記弾性腕部を有する係止金具を、上板部や側板部をもつシールド部材と別体として設けることとしてもよい。
第一ないし第四実施形態では、金属部材の弾性腕部は、可動部材からの押圧力あるいは規制を係止突部よりも前方の位置で受けることとしたが、該押圧力あるいは規制を受ける位置はこれに限られず、上記係止突部よりも後方位置あるいは該係止突部と同位置であってもよい。
第一ないし第四実施形態では、金属部材の弾性腕部は、端子配列方向にて該金属部材のグランド腕部よりも外方位置に設けられていることとしたが、これに代えて、該グランド腕部よりも内方位置あるいは該グランド腕部と同位置に設けられていてもよい。また、第一ないし第四実施形態では、上記弾性腕部の係止突部は、前後方向にてグランド腕部のグランド突部より後方位置に設けられていることしたが、これに代えて、該グランド突部よりも前方位置あるいは該グランド突部と同位置に設けられていてもよい。
第一ないし第四実施形態では、端子配列方向にて各端子と対応して位置する可動部材のカム部は、断面形状が長円形状であることとしたが、該断面形状は長円形状に限られず、開位置にて端子の被圧部との間に隙間をもって位置するとともに、閉位置にて該被圧部を上方へ押圧可能な形状であれば、どのような断面形状であってもよい。つまり、該カム部は、開位置での上下方向寸法が、端子の被圧部とカム案内部との間の上下方向での距離より小さく、閉位置での上下方向寸法が、該距離よりも大きくなるような形状であればよい。
第一ないし第四実施形態では、全ての端子が同じ形状で作られていて、該端子の接触部や接続部が前後方向で同位置に形成されていたが、これに代えて、形状の異なる複数種の端子を設けて、各種の端子の接触部や接続部が前後方向で異なる位置に形成されるようにしてもよい。
第一ないし第四実施形態では、平型導体の回路部は平型導体の上面に形成されていることとしたが、これに代えて、該回路部は平型導体の下面あるいは両面に形成されていてもよい。このとき、端子の接触部そしてグランド突部は、回路部の位置に対応させて平型導体の下面側あるいは両面側に設ける必要がある。