1.導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、樹脂からなる基材粒子と、この基材粒子の表面に形成された導電性金属層とを備えた導電性微粒子であって、基材粒子の個数平均粒子径が1.0〜3.0μmであり、前記導電性金属層の厚みが0.01〜0.10μmであり、塩化物イオンの含有量が25μg/g以下、且つ、ナトリウムイオンの含有量が40μg/g以下であるところに特徴を有する。
1−1.塩化物イオン含有量、ナトリウムイオンの含有量
まず、本発明の導電性微粒子における塩化物イオン及びナトリウムイオンの含有量について説明する。本発明では、高温高湿条件に曝されても接続抵抗値が上昇し難い導電性微粒子とするため、塩化物イオン及びナトリウムイオンの含有量をそれぞれ上記範囲内に制限する。これら塩化物イオン及びナトリウムイオンは、環境から混入してきたり、導電性金属層形成工程で使用する試薬(例えば、無電解メッキ法や電解メッキ法で用いられる触媒化試薬、無電解メッキ液など)、或いは水等から混入してくるものであり、これらの量をゼロにすることは困難である。しかしながら、本発明者らは、導電性微粒子における塩化物イオンの含有量を25μg/g以下とし、ナトリウムイオンの含有量を40μg/g以下とすることで、上記問題点が解決できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の導電性微粒子における塩化物イオンの含有量は25μg/g以下であり、好ましくは20μg/g以下であり、より好ましくは15μg/g以下である。塩化物イオンの含有量が上記範囲を超えると、導電性微粒子が高温高湿条件に曝された際に接続抵抗値が上昇する。
本発明の導電性微粒子におけるナトリウムイオンの含有量は40μg/g以下であり、好ましくは35μg/g以下であり、より好ましくは25μg/g以下である。ナトリウムイオンの含有量が上記範囲を超えると、導電性微粒子が高温高湿条件に曝された際に接続抵抗値が上昇する。
上述のように、塩化物イオン及びナトリウムイオンは、基材粒子の製造工程や、導電性金属層の形成工程において混入してくるものであり、これらの量をゼロにすることは困難である。また必要以上に少なくしても、接続抵抗低減効果は飽和する一方で、イオン低減コストが増大する。よって塩化物イオン、ナトリウムイオンの含有量は夫々、例えば、0μg/g超、好ましくは1μg/g程度以上、さらに好ましくは2μg/g程度以上である。
本発明における塩化物イオン及びナトリウムイオンの含有量とは、密閉容器内に、導電性微粒子1gと蒸留水(比抵抗18MΩ・cm)10mLとを加え、120℃で24時間加熱したとき、蒸留水中に抽出された塩化物イオン及びナトリウムイオン量を意味する。なお、蒸留水に抽出された各種イオンの測定方法は特に限定されず、例えば、ICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)、イオンクロマトグラフィー等、従来公知の測定方法はいずれも使用できる。詳細な測定方法については、いずれも実施例において説明する。
1−2.導電性金属層
本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、この基材粒子の表面に形成された導電性金属層を有しており、当該導電性金属層の厚みは0.01μm以上、0.10μm以下である。導電性金属層の厚みは、好ましくは0.03μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは0.09μm以下であり、より好ましくは0.08μm以下である。導電性金属層の厚みが0.01μmより小さくなると、導電性が不十分となり接続抵抗値が上昇する。一方、導電性金属層の厚みが0.10μmよりも厚くなると、本発明の導電性微粒子は比較的粒子径の小さなものであるので、粒子径の大きな導電性微粒子に比べて曲率が大きくなるため応力が集中し易くなり、導電性微粒子が圧縮変形を受けた際に導電性金属層に入るクラック(破断箇所)の数が増加し、導電性金属層内部からの塩化物イオン、及びナトリウムイオンの溶出量が増えて、電極を除々に腐食させ、接続抵抗値を低下させる虞がある。
本発明に係る導電性金属層を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム及びニッケル−リン、ニッケル−ホウ素等の金属や金属化合物、及び、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、金、ニッケル、パラジウム、銀、銅、スズが導電性に優れた導電性微粒子となるため好ましい。また、コスト的な観点からは、ニッケル、ニッケル合金(Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Pd−Au、Ni−Ag、Ni−P、Ni−B、Ni−Zn、Ni−Sn、Ni−W、Ni−Co、Ni−Ti);銅、銅合金(CuとFe、Co、Ni、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Ag、Au、Bi、Al、Mn、Mg、P、Bからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素との合金、好ましくはAg、Ni、Sn、Znとの合金);銀、銀合金(AgとFe、Co、Ni、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Au、Bi、Al、Mn、Mg、P、Bよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素との合金、好ましくはAg−Ni、Ag−Sn、Ag−Zn);スズ、スズ合金(たとえばSn−Ag、Sn−Cu、Sn−Cu−Ag、Sn−Zn、Sn−Sb、Sn―Bi―Ag、Sn―Bi―In、Sn−Au、Sn―Pb等)等が好ましい。これらの中でもニッケル及びニッケル合金は、基材粒子との密着性に優れるため好ましい。
前記導電性金属層は、単層構造でも、上記例示の金属からなる二以上の層を有する多層構造であってもよい。導電性金属層が多層構造である場合、基材粒子と導電性金属層との密着性の観点から、ニッケル系金属層(ニッケル又はニッケル合金)を最も内側(換言すれば基材粒子の表面)に配するようにすることが好ましい。ニッケル系金属層上に設ける層は特に限定されず、上記例示の金属からなる層を目的に応じて適宜設けることができる。なお、電気的接続に供した際の抵抗を低減させる観点からは、上記例示の金属の中でも、金、パラジウム及び銀よりなる群から選択される1種以上の貴金属からなる層を最表層とするのが好ましい。
導電性金属層が多層構造である場合、全ての導電性金属層の膜厚の総和が上述した導電性金属層の厚みの範囲内にあればよい。したがって、各層の厚みは特に限定されるものではないが、基材粒子と導電性金属層との密着性を確保する観点から、例えば、ニッケル系金属層の厚みは、導電性金属層の厚みの総和(100%)に対して40%〜99%であるのが好ましく、より好ましくは50%〜95%であり、さらに好ましくは60%〜90%である。また、貴金属層の厚みは、1%〜60%であるのが好ましく、より好ましくは5%〜50%であり、さらに好ましくは10%〜40%である。
前記導電性金属層の膜厚は、単層構造、多層構造、いずれの場合であっても、例えば、以下のような方法で求めることができる。以下では、導電性金属層が、第1の導電性金属層(例えば、ニッケル系金属層)、第2の導電性金属層(例えば、貴金属層)の2層構造からなる場合を例に挙げ、具体的に説明する。
まず、導電性微粒子を構成する第1及び第2の導電性金属層を完全に溶解させる。導電性金属層を溶解させる方法は、各層を構成する金属種に応じて適宜選択すればよいが、例えば、第1の導電性金属層がニッケル、第2の導電性金属層が金で構成される場合であれば、導電性微粒子0.05gに王水を8ml添加して80℃で攪拌を行う等の方法を採用することができる。
次に、導電性金属層を溶解させた溶液中における第1及び第2の導電性金属層を構成する金属等の濃度(ここでは、ニッケル、合金元素及び貴金属元素のそれぞれの濃度)を、ICP発光分析装置を用いて分析し、下記式(1)よりニッケル系金属層の厚みを算出する。なお、式中、rは基材粒子の半径(μm)、tはニッケル系金属層の厚み(μm)、dNiはニッケル系金属層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル系金属層成分(ニッケル、ニッケル系金属層に含まれる合金元素)含有率(質量%)、Xは貴金属元素の含有率(質量%)である。
導電性金属層が多層構造の場合、すなわち、上記式(1)においてXが0超である場合には、続いて、下記式(2)より貴金属層の厚みを算出する。なお、式中、aは貴金属層の厚み(μm)、dPrecは貴金属層の密度、d(base+Ni)は、基材粒子にニッケル系金属層を設けた粒子(以下「ニッケル品」と称する)の密度、Xは貴金属元素の含有率(質量%)である。ここで、ニッケル品の密度d(base+Ni)は計算式(3)を使用して算出できる。なお、式中、dNiはニッケル系金属層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル系金属層成分(ニッケル及びニッケル系金属層に含まれる合金元素)含有率(質量%)である。
上述のように、本発明の導電性微粒子は、微細化、狭小化された電極や配線の電気接続への使用を目的とするものである。したがって、本発明の導電性微粒子の平均粒子径は、個数平均粒子径で、1.1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上であり、3.2μm以下が好ましく、より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.9μm以下、より一層好ましくは2.8μm、さらに一層好ましくは2.7μm以下、なお一層好ましくは2.6μm以下である。導電性微粒子の個数平均粒子径が上記範囲内であれば、微細化、狭小化された電極や配線を対象とした電気的接続においても好適に使用できる。また前記導電性微粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。なお、導電性微粒子の個数平均粒子径及び粒子径の変動係数(CV値)は、例えば、フロー式粒子像解析装置を用いて求めることができる。
本発明の導電性微粒子は、LCD用導通スペーサ、半導体や電子回路の実装における異方導電接続用の導電性微粒子として、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等の異方性導電材料に好適に用いることができる。
1−3.基材粒子
上記導電性金属層を形成するためのベースとなる本発明に係る基材粒子は、樹脂成分を含む樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。前記樹脂粒子としては、例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;オルガノポリシロキサン等が挙げられる。これらの樹脂粒子を構成する材料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造原料に塩素やナトリウムを実質的に含まない、或いは、たとえこれらの元素を含む場合であっても、その含有量が極めて低いものを原料として使用できるという点から、ビニル重合体、アミノ樹脂、オルガノポリシロキサンが好ましく、ビニル重合体及びアミノ樹脂がより好ましく、特にビニル重合体が好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。特に、ジビニルベンゼン及び/又はジ(メタ)アクリレートを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ないため好ましい。
1−3−1.ビニル重合体粒子
ビニル重合体粒子は、ビニル重合体により構成される。ビニル重合体は、ビニル系単量体(ビニル基含有単量体)を重合(ラジカル重合)することによって形成でき、このビニル系単量体は、ビニル系架橋性単量体とビニル系非架橋性単量体とに分けられる。なお、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような官能基と重合性炭素−炭素二重結合から構成される置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
前記ビニル系架橋性単量体とは、ビニル基を有し架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体(単量体(1))、又は、1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(単量体(2))が挙げられる。ただし、単量体(2)によって架橋構造を形成させるには、当該単量体(2)の結合性官能基と反応(結合)可能な相手方単量体の存在が必要である。
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(1)(1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体)の例として、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブダンジオールジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤;等が挙げられる。
これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)や、芳香族炭化水素系架橋剤(特にスチレン系多官能モノマー)が好ましい。前記1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)の中でも、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(ジ(メタ)アクリレート)が特に好ましい。前記スチレン系多官能モノマーの中では、ジビニルベンゼンのように1分子中に2個のビニル基を有する単量体が好ましい。単量体(1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ビニル系非架橋性単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する単量体(単量体(3))か、もしくは相手方単量体が存在しない場合の前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)が挙げられる。
前記ビニル系非架橋性単量体のうち前記単量体(3)(1分子中に1個のビニル基を有する単量体)には、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやスチレン系単官能モノマーが含まれる。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン(エチルビニルベンゼン)、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、スチレンが好ましい。単量体(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ビニル系単量体としては、少なくとも前記ビニル系架橋性単量体(1)を含む態様が好ましく、中でも前記ビニル系架橋性単量体(1)と前記ビニル系非架橋性単量体(3)とを含む態様(特に単量体(1)と単量体(3)との共重合体)が好ましい。具体的には、構成成分として、スチレン系単官能モノマー、スチレン系多官能モノマー、多官能(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含む態様が好ましい。さらに好ましくは、スチレン系多官能モノマー及び多官能(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;スチレン系多官能モノマー及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;多官能(メタ)アクリレート及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;である。上記態様において、スチレン系単官能モノマーとしてはスチレンが好ましく、スチレン系多官能モノマーとしてはジビニルベンゼンが好ましく、多官能メタ(アクリレート)としてはジ(メタ)アクリレートが好ましい。従って、ジビニルベンゼン及びジ(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;ジビニルベンゼン及びスチレンを必須構成成分とする態様;ジ(メタ)アクリレート及びスチレンを必須構成成分とする態様が特に好ましい。
前記ビニル重合体粒子は、ビニル重合体の特性を損なわない程度に、他の成分を含んでいてもよい。この場合、ビニル重合体粒子は、ビニル重合体を50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
前記他の成分としては、特に限定されないが、ポリシロキサン成分が好ましい。ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入することで、加圧接続時の弾性変形に優れるものとなる。
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を用いることによって形成でき、このシラン系単量体はシラン系架橋性単量体とシラン系非架橋性単量体とに分けられる。また、シラン系単量体としてシラン系架橋性単量体を用いると、架橋構造を形成し得る。シラン系架橋性単量体により形成される架橋構造としては、ビニル重合体とビニル重合体とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
第一の形態(ビニル重合体間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等の2つ以上のビニル基を有するシラン化合物が挙げられる。第二の形態(ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらのシラン系架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記シラン系非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらのシラン系非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基等のビニル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格であることが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格であることが好ましい。
前記ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入する場合、ビニル系単量体の使用量は、シラン系単量体100質量部に対して100質量部以上が好ましく、より好ましくは200質量部以上、さらに好ましくは300質量部以上であり、700質量部以下が好ましく、より好ましくは600質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。
前記ビニル重合体粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、弾性変形と復元力に優れる点から、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。架橋性単量体の割合が上記範囲内であれば、優れた弾性変形特性を維持しつつ、復元力を向上させることができる。架橋性単量体の割合の上限は、特に限定されないが、用いる架橋性単量体の種類によっては、架橋性単量体の割合が多すぎると硬くなりすぎて異方導電接続時に圧縮変形させるために高い圧力が必要となる場合がある。そのため、架橋性単量体の割合は、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
前記ビニル重合体粒子は、例えば、ビニル系単量体を重合することによって製造することができるが、具体的には、(i)ビニル系単量体を重合成分として含む単量体組成物を用いて、従来公知の水性懸濁重合、分散重合、乳化重合する方法;(ii)シラン系単量体を用いてビニル基含有ポリシロキサンを得た後、このビニル基含有ポリシロキサンとビニル系単量体とを重合(ラジカル重合)する方法;(iii)シード粒子に、ビニル系単量体を吸収させた後、ビニル系単量体をラジカル重合する、いわゆるシード重合する方法;が好ましい。
前記製造方法(i)では、ビニル系単量体として、前記2つ以上のビニル基を有するシラン化合物、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン等のビニル基を有するシラン化合物を併用してもよい。前記製造方法(ii)においては、少なくとも前記第三の形態を形成し得るシラン系架橋性単量体を用いることによって、ポリシロキサン骨格が導入されたビニル重合体粒子が得られる。
前記製造方法(iii)において、シード粒子としては、非架橋又は架橋度の低いポリスチレン粒子、ポリシロキサン粒子を用いることが好ましい。シード粒子にポリシロキサン粒子を用いることで、ビニル重合体にポリシロキサン骨格を導入できる。
ポリシロキサン粒子としては、前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体を含む組成物を、(共)加水分解縮合して得られるポリシロキサン粒子が好ましく、特にビニル基含有ポリシロキサン粒子が好ましい。ポリシロキサン粒子がビニル基を有する場合、得られるビニル重合体粒子が、ビニル重合体とポリシロキサン骨格がポリシロキサンを構成するケイ素原子を介して結合するため、弾性変形性及び接触圧に特に優れたものとなる。ビニル基含有ポリシロキサン粒子は、例えば、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシランを含むシラン系単量体(混合物)を(共)加水分解縮合することによって製造できる。
また、前記ビニル重合体粒子がポリシロキサン骨格を含む場合、基材粒子に加熱処理を施すことも好ましい態様である。前記加熱処理は空気雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行うことがより好ましい。前記加熱処理の温度は120℃(より好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃)以上が好ましく、熱分解温度(より好ましくは350℃、さらに好ましくは330℃)以下が好ましい。前記加熱処理の時間は、0.3時間(より好ましくは0.5時間、さらに好ましくは0.7時間)以上が好ましく、10時間(より好ましくは5.0時間、さらに好ましくは3.0時間)以下が好ましい。
1−3−2.アミノ樹脂粒子
アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物により構成されるものが好ましい。
前記アミノ化合物としては、例えば、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミン等のグアナミン化合物、メラミン等のトリアジン環構造を有する化合物等の多官能アミノ化合物が挙げられる。これらの中でも、多官能アミノ化合物が好ましく、トリアジン環構造を有する化合物がより好ましく、特にメラミン、グアナミン化合物(特にベンゾグアナミン)が好ましい。前記アミノ化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物中、グアナミン化合物を10質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。アミノ化合物中のグアナミン化合物の含有割合が上記範囲であれば、より粒度分布がシャープであり、粒子径が精密にコントロールされたものとなる。なお、アミノ化合物として、グアナミン化合物のみを用いることも好ましい。
アミノ樹脂粒子は、例えば、水性媒体中でアミノ化合物とホルムアルデヒドを反応(付加縮合反応)させることにより得られる。通常、この反応は加熱下(50〜100℃)で行う。また、ドデシルベンゼンスルホン酸、硫酸等の酸触媒の存在下で反応を行うことにより、架橋度を高めることができる。
アミノ樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特開2000−256432号公報、特開2002−293854号公報、特開2002−293855号公報、特開2002−293856号公報、特開2002−293857号公報、特開2003−55422号公報、特開2003−82049号公報、特開2003−138023号公報、特開2003−147039号公報、特開2003−171432号公報、特開2003−176330号公報、特開2005−97575号公報、特開2007−186716号公報、特開2008−101040号公報、特開2010−248475号公報等に記載のアミノ樹脂架橋粒子及びその製造方法を適用することが好ましい。
具体例としては、前記多官能アミノ化合物とホルムアルデヒドを、水性媒体(好ましくは塩基性の水性媒体)中で反応(付加縮合反応)させて縮合物オリゴマーを生成させ、該縮合物オリゴマーが溶解又は分散する水性媒体にドデシルベンゼンスルホン酸や硫酸等の酸触媒を混合して硬化させることによって、架橋されたアミノ樹脂粒子を製造することができる。縮合物オリゴマーを生成させる段階、架橋構造のアミノ樹脂とする段階は、いずれも、50〜100℃の温度で加熱された状態で行うことが好ましい。また、付加縮合反応を、界面活性剤の存在下で行うことにより、粒度分布のシャープなアミノ樹脂粒子が得られる。
1−3−3.オルガノポリシロキサン粒子
オルガノポリシロキサン粒子は、ビニル基を含有しないシラン系単量体(シラン系架橋性単量体、シラン系非架橋性単量体)の1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することによって得られる。
前記ビニル基を含有しないシラン系単量体としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の3官能性シラン系単量体;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン等が挙げられる。
上述のように、本発明は各種電子機器におけるファインピッチ接続への適用を考慮したものであり、粒子径のより小さな導電性微粒子を対象とするものである。したがって、導電性微粒子の基材となる樹脂粒子(基材粒子)も粒子径が小さく、その個数平均粒子径は、1.0μm以上、3.0μm以下である。個数平均粒子径は、好ましくは1.5μm以上であり、より好ましくは2.0μm以上であり、好ましくは2.8μm以下であり、より好ましくは2.7μm以下、さらに好ましくは2.6μm以下、さらに一層好ましくは2.5μm以下である。基材粒子の粒子径が1.0μmよりも小さくなると、導電性微粒子を圧縮変形させても、電極との十分な接触面積が得られ難くなり接続抵抗値が上昇する。一方、基材粒子の粒子径が3.0μmよりも大きくなると、隣接する導電性微粒子間の接触によるショートが発生し易くなる。
基材粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。基材粒子の個数平均粒子径、粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、例えば、コールターカウンター法を採用した粒度分布測定装置を用いて求めることができる。またフロー式粒子像解析装置を用いて求めることもできる。
基材粒子の10%K値は1000N/mm2以上であるのが望ましく、より好ましくは4000N/mm2以上、さらに好ましくは5000N/mm2以上であり、70000N/mm2以下であるのが好ましく、より好ましくは60000N/mm2以下であり、さらに好ましくは50000N/mm2以下である。基材粒子の10%K値が小さすぎると、異方性導電材料として用いた際に、周囲のバインダーを十分に排除できなかったり、電極への食い込み具合が弱かったりする結果、低い接続抵抗値を得ることができない虞がある。一方、基材粒子の10%K値が大きすぎると、接続部位に対して電気的に良好な接触状態を確保できない虞がある。
なお、基材粒子の10%K値とは、粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率であり、例えば、公知の微小圧縮試験機(例えば、島津製作所製「MCT−W500」など)を用い、室温で粒子の中心方向へ荷重負荷速度2.2295mN/secで荷重をかけ、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させたときの圧縮荷重(N)と圧縮変位(mm)を測定し、下記式に基づき求めることができる。
(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm2)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)
、R:粒子の半径(mm)である。)
1−4.導電性微粒子の製法
導電性金属層の形成方法は、特に限定されず、例えば、基材粒子表面に無電解メッキ法、電解メッキ法等によってメッキを施す方法;基材粒子表面に真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法により導電性金属層を形成する方法;のような従来公知の方法を採用することができる。これらの中でも特に、無電解メッキ法が、大掛かりな装置を必要とせず容易に導電性金属層を形成できる点で好ましい。以下、無電解めっき法による導電性金属層の形成について詳細に説明する。
無電解メッキ法により基材粒子に導電性金属層を形成する際には、エッチング処理工程、触媒化処理工程を経た後、無電解メッキ工程を行うことが好ましい。
エッチング処理工程
エッチング処理工程では、例えばクロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;等を用いて、基材粒子の表面に親水性を付与し、その後の無電解メッキ液に対するぬれ性を高める。また、基材粒子の表面に微小な凹凸を形成させ、その凹凸のアンカー効果によって、後述する無電解メッキ工程後の基材粒子と導電性金属層との密着性の向上を図る。
触媒化処理工程
触媒化処理工程では、基材粒子の表面にメッキ析出の基点となる触媒層(パラジウム触媒などの層)を形成する。触媒層を形成する方法は特に限定されず、無電解メッキ用として市販されている触媒化試薬を用いて行えばよい。例えば、二塩化パラジウムと二塩化スズとを含む溶液を触媒化試薬とし、これに基材粒子を浸漬することにより基材粒子表面に触媒金属を吸着させ、その後、硫酸や塩酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液で前記パラジウムイオンを還元することにより、基材粒子表面にパラジウム核を析出させる方法(キャタリスト−アクセレレーション法)や、スズイオン(Sn2+)を含有する溶液(二塩化スズ溶液など)に基材粒子を接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させた後、パラジウムイオン(Pd2+)を含有する溶液(二塩化パラジウム溶液など)に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウム核を析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等が好ましく採用される。
なお、前記スズイオン含有溶液やパラジウムイオン含有溶液に基材粒子を浸漬する際の液温及び浸漬時間は、各イオンが基材粒子に充分に吸着できる範囲で適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、液温は10℃〜60℃が好ましく、浸漬時間は1分〜120分が好ましい。
無電解メッキ工程
無電解メッキ工程では、前記触媒化処理工程にて触媒層(例えばパラジウム核)を形成した基材粒子(以下「触媒化基材粒子」と称する)表面に、無電解メッキ処理を施して導電性金属層を形成する。無電解メッキ処理は、還元剤と所望の金属塩を溶解したメッキ液中に触媒化基材粒子を浸漬することにより、触媒を起点として、メッキ液中の金属イオンを還元剤で還元し、基材粒子表面に所望の金属を析出させて、導電性金属層を形成するものである。
前記無電解メッキ工程では、まず、触媒化基材粒子を水に十分に分散させ、触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する。ここで、安定した導電特性を発現させるためには、触媒化基材粒子を、メッキ処理を行う水性媒体に十分に分散させておくことが好ましい。触媒化基材粒子が凝集した状態で無電解メッキ処理を行うと、基材粒子同士の接触面に未処理面(導電性金属層が存在しない面)が生じるからである。触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常攪拌装置、高速攪拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置など従来公知の分散手段を採用すればよく、必要に応じて超音波や分散剤(界面活性剤等)を併用してもよい。
次に、所望の導電性金属の塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解メッキ液に、上記で調製した触媒化基材粒子の水性スラリーを添加することにより、無電解メッキ反応を生じさせる。無電解メッキ反応は、触媒化基材粒子の水性スラリーを添加すると速やかに開始する。また、この反応には水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が認められなくなった時点をもって無電解メッキ反応を終了すればよい。無電解メッキ反応の終了後、反応系内から導電性金属層が形成された基材粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子を得ることができる。
前記無電解メッキ液に含有させる導電性金属塩としては、導電性金属層を構成する金属として例示した金属の塩化物、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。例えば、導電性金属層としてニッケル層を形成する場合には、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケル塩等を無電解メッキ液に含有させればよい。導電性金属塩は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。無電解メッキ液中における導電性金属塩の濃度は、所望の膜厚の導電性金属層が形成されるように、基材粒子のサイズ(表面積)等を考慮して適宜決定すればよい。
前記無電解メッキ液に含有させる還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、グリオキシル酸、ヒドラジン等が挙げられる。還元剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
前記無電解メッキ液に含有させる錯化剤としては、導電性金属のイオンに対して錯化作用のある化合物が使用できる。例えば、ニッケルに対して錯化作用のある化合物としては、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸またはそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのカルボン酸(塩);グリシン等のアミノ酸;エチレンジアミン、アルキルアミン等のアミン酸;その他のアンモニウム、EDTA、ピロリン酸(塩);などが挙げられる。錯化剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
前記無電解メッキ液のpHは、限定されないが、好ましくは4〜14である。
無電解メッキ工程は、必要に応じて繰返し行ってもよい。例えば金属種の異なる無電解メッキ液を用いて無電解メッキ工程を繰返すことにより、基材粒子の表面に異種金属を幾層にも被覆できる。例えば、基材粒子にニッケルメッキを施してニッケル被覆粒子を得た後、該ニッケル被覆粒子をさらに無電解金メッキ液に投入して金置換メッキを行うことにより、最外層が金層で覆われ、その内側にニッケル層を有する導電性微粒子が得られる。
なお、前記導電性金属層は、基材粒子表面の少なくとも一部を被覆していればよいが、導電性金属層の表面には、実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面が存在しないことが好ましい。ここで、「実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面」とは、電子顕微鏡(倍率1000倍)を用いて任意の10000個の導電性粒子の表面を観察したときに、導電性金属層の割れ、および、基材粒子表面の露出が、実質的に目視で観察されないことを意味する。
脱イオン処理工程
上述のようにして得られる導電性微粒子は、環境や試薬(無電解メッキ法や電解メッキ法で用いる触媒化試薬、無電解メッキ液など)などに由来する塩化物イオンやナトリウムイオンを含有しており、塩化物イオンの含有量は、例えば、50μg/g〜2000μg/g程度(特に50μg/g〜500μg/g程度)である。またナトリウムイオンの含有量は、例えば、50μg/g〜2000μg/g程度(特に50μg/g〜500μg/g程度)である。そこで本発明では、基材粒子の表面に導電性金属層を形成した後、得られた導電性微粒子をアルコール/水混合溶媒を用いて熱処理する(脱イオン処理工程)。水にアルコールを加えた混合溶媒で熱処理することにより、塩化物イオンやナトリウムイオンの除去能力を高めることができ、導電性微粒子の粒径が小さくても、これらイオンの濃度を所定値以下にすることが可能となる。
なお、塩化物イオンやナトリウムイオンといったハロゲンイオン及びアルカリ金属イオン量を低減する手段として、特許文献1、2では、導電性微粒子の製造工程で用いる材料をハロゲンイオン及びアルカリ金属イオンの含有量の少ないものを選択して用いる方法や、導電性微粒子の製造工程として、導電性微粒子を加圧下、100℃以上の蒸留水を用いて洗浄する工程を導入する方法等が提案されている。しかしながら、無電解メッキ法や電解メッキ法において、ハロゲンイオンやアルカリ金属イオンを完全に排除することは現実的ではない。また、さらなる微細化、狭小化に対応可能な小粒径の導電性微粒子では、上記方法によっても塩化物イオンやナトリムイオンを十分に低減できず、高温高湿条件に曝されると導電特性が経時的に劣化することが本発明者らの検討の中で判明した。
そこで、本発明者らはさらに検討を重ね、アルコール/水混合溶媒を用いて導電性微粒子を熱処理することで、粒子径の小さな導電性微粒子であっても、塩化物イオンやナトリウムイオンといったハロゲンやアルカリ金属イオン含有量を低減できることを見出した。すなわち、導電性微粒子の粒子径が小さくなると、水系媒体への導電性微粒子の分散性が低下し、特に、水のみを媒体として用いた熱処理では、導電性微粒子の表面の水(媒体)に対する濡れ性が低いため、上記イオン成分の除去が不十分になるものと考えられる。そこで、本発明では、導電性微粒子を熱処理する媒体(処理媒体ともいう)の一部にアルコールを使用することにより、処理媒体の表面張力を低下させ、導電性微粒子と処理媒体との濡れ性を高めることで、効果的なイオン除去を実現しているのである。
上記アルコール/水混合溶媒に使用するアルコールとしては、炭素数1〜4の直鎖状又は分枝鎖状の低級アルコールが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール及びブタノール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、メタノール、エタノール又はイソプロパノールは、導電性微粒子と処理媒体との濡れ性が高められ、導電性微粒子からイオン分を効率よく除去できるため好ましい。
アルコール/水混合溶媒におけるアルコールの配合量は、アルコールと水の総量100体積%に対して、1.0体積%以上であるのが好ましく、より好ましくは3.0体積%以上であり、さらに好ましくは5.0体積%以上であり、90体積%以下であるのが好ましく、より好ましくは80体積%以下であり、さらに好ましくは70体積%以下である。アルコールの配合量が上記範囲から外れると、十分なイオン除去効果が得られない場合がある。
また、上記洗浄媒体として使用する水は、ハロゲンイオンやアルカリ金属イオンの含有量が少ないものが好ましく、例えば、フィルターやイオン交換膜、逆浸透膜など、各種ろ材を備えた超純水装置で処理した超純水(比抵抗18MΩ・cm以上)を用いることが推奨される。
なお、洗浄工程で使用するアルコール/水混合溶媒には、アルコール、水以外の成分が含まれていてもよく、例えば、アルコール以外の有機溶媒(トルエン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素等)、導電性微粒子の分散性を向上させる分散剤(高分子分散剤、界面活性剤等)が挙げられる。なお、これらの成分の配合量は、アルコール/水混合溶媒100部に対して0.1部以上、10部以下とするのが好ましい。
アルコール/水混合溶媒の使用量は、導電性微粒子100部に対して200部以上、10000部以下とするのが好ましい。より好ましくは300部以上、さらに好ましくは500部以上であり、より好ましくは9000部以下、さらに好ましくは8000部以下である。アルコール/水混合溶媒の使用量が少なすぎると十分なイオン除去効果が得られ難く、一方、多量に使用しても、使用量に見合った効果は得られ難く、多量の処理液が排出されるため、環境にも経済的にも好ましくない。
また、脱イオン処理工程は、上記アルコール/水混合溶媒を100℃以上に加熱して実施する。好ましくは105℃以上であり、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下であり、さらに好ましくは170℃以下である。アルコール/水混合溶媒の温度が低すぎると、イオン除去効果が不十分になる虞があり、一方、高すぎると、導電性金属層がダメージを受けたり、導電性金属層の酸化により、導電性微粒子として使用した際に抵抗値が高くなってしまう虞がある。さらに、脱イオン処理工程は加圧下で行ってもよい。脱イオン処理工程の実施時間は0.5時間以上であるのが好ましく、より好ましくは1時間以上であり、50時間以下であるのが好ましく、より好ましくは20時間以下である。脱イオン処理の時間が上記範囲外では、イオン除去効果が不十分となったり、また、脱イオン処理工程が非効率的になる虞がある。
脱イオン処理工程は、導電性微粒子がアルコール/水混合溶媒中に分散した状態で実施される限り特に限定されず、バッチ式、連続式のいずれで行ってもよい。なお、本発明に係る脱イオン処理工程は100℃以上の加熱条件下で実施するものであるので、アルコールや水が気化し、処理媒体の組成が変動するのを防ぐ観点からは、バッチ式で実施するのが好ましい。また、同様の理由から、脱イオン処理工程は、オートクレーブ等の従来公知の密閉可能な装置で実施するのが好ましい。脱イオン処理工程は、導電性微粒子の分散液を攪拌しながら行ってもよい。
脱イオン処理工程は、導電性金属層形成後(例えば、無電解メッキ工程後)に行う。なお、無電解メッキ工程を繰り返し実施する場合は、脱イオン処理工程の実施時期及び回数は特に限定されず、その都度、脱イオン処理工程を実施してもよいし、また、最初の無電解メッキ工程後、2回目以降の無電解メッキ工程後等、任意の段階で1回以上実施してもよい。塩化物イオン及びナトリウムイオン量を効率よく低減させる観点からは、最初の無電解メッキ工程後及び/又は最後の無電解メッキ工程後に脱イオン処理工程を実施するのが好ましく、また、最後の無電解メッキ工程後に脱イオン処理工程を実施するのがより好ましい。
2.突起を有する導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、その表面が平滑であっても凹凸状であってもよいが、異方性導電材料などとして使用する際に、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で、複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。
導電性微粒子の表面に突起を形成させる方法としては、(1)基材粒子合成における重合工程において、高分子の相分離現象を利用して表面に突起の形成された基材粒子を得た後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(2)基材粒子表面に、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させた後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(3)基材粒子表面に無電解メッキを行った後、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させ、さらに無電解メッキを行う方法;(4)無電解メッキ反応時におけるメッキ浴の自己分解を利用して、基材粒子表面に突起の核となる金属を析出させ、さらに無電解メッキを行うことによって、突起部を含む導電性金属層が連続皮膜となった導電性金属層を形成する方法;等が挙げられる。
導電性微粒子が有する突起の高さは20nm〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは30nm〜800nm、さらに好ましくは40nm〜600nm、特に好ましくは50nm〜500nmである。突起の高さが前記範囲であると、接続信頼性が一層向上する。なお、突起の高さは、任意の導電性微粒子10個を電子顕微鏡で観察して求める。具体的には、観察される導電性微粒子の周縁部の突起について、導電性微粒子1個につき任意の10個の突起高さを測定し、その測定値を算術平均することにより求められる。
突起の数は特に限定されないが、高い接続信頼性を確保する点から導電性微粒子の表面を電子顕微鏡で観察したときの任意の正投影面において、少なくとも1個以上の突起を有することが好ましく、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上である。
3.絶縁被覆導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、表面の少なくとも一部に絶縁層を有する態様(絶縁被覆導電
性微粒子)であってもよい。このように表面の導電性金属層にさらに絶縁層が積層されて
いると、高密度回路の形成時や端子接続時等に生じやすい横導通を防ぐことができる。
絶縁層の厚さは0.005μm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁層の厚さが前記範囲内であれば、導電性微粒子による導通特性を良好に維持しつつ、粒子間の電気絶縁性が良好となる。
絶縁層としては、導電性微粒子の粒子間における絶縁性が確保でき、一定の圧力及び/又は加熱により容易にその絶縁層が崩壊あるいは剥離するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン類;ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート重合体及び共重合体;ポリスチレン;等の熱可塑性樹脂やその架橋物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂及びこれらの混合物;シリコーン樹脂等の有機化合物、或いはシリカ、アルミナ等の無機化合物が挙げられる。
絶縁層は、単層であっても、複数の層からなるものであってもよい。例えば、単一又は複数の皮膜状の層が形成されていてもよいし、絶縁性を有する粒状、球状、塊状、鱗片状、その他の形状の粒子を導電性金属層の表面に付着させた層であってもよいし、さらには、導電性金属層の表面を化学修飾することにより形成された層であってもよく、又は、これらが組み合わされたものであってもよい。これらの中でも絶縁性を有する粒子(以下、「絶縁粒子」という。)が導電性金属層表面に付着した態様が好ましい。
絶縁粒子の平均粒子径は、導電性微粒子の平均粒子径や絶縁被覆導電性微粒子の用途によって適宜選択されるが、絶縁粒子の平均粒子径は0.005μm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁粒子の平均粒子径が0.005μmより小さくなると、複数の導電性微粒子間の導電層同士が接触しやすくなり、1μmより大きくなると対向する電極間に導電性微粒子が挟み込まれた際に発揮するべき導電性が不十分となる虞がある。
絶縁粒子の平均粒子径における変動係数(CV値)は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である。CV値が40%を超えると導通性が不十分となる虞がある。
絶縁粒子の平均粒子径は、導電性微粒子の平均粒子径の1/1000以上、1/5以下であることが好ましい。絶縁粒子の平均粒子径が前記範囲であると、導電性微粒子の表面に均一に絶縁粒子層を形成させることができる。また、粒子径の異なる2種類以上の絶縁粒子を使用してもよい。
絶縁粒子はその表面に導電性微粒子への付着性を高めるため官能基を有していても良い。前記官能基としては、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、リン酸基、シラノール基、アンモニウム基、スルホン酸基、チオール基、ニトロ基、ニトリル基、オキサゾリン基、ピロリドン基、スルホニル基、水酸基等が挙げられる。
導電性微粒子表面における絶縁粒子の被覆率(絶縁被覆導電性微粒子の正投影面)は、好ましくは1%以上98%以下、より好ましくは5%以上95%以下である。絶縁粒子による導電性微粒子の被覆率が前記範囲であることにより、充分な導通性を確保しつつ、隣接する絶縁被覆導電性微粒子間を確実に絶縁することができる。なお、上記被覆率は、例えば電子顕微鏡を用いて任意の100個の絶縁被覆導電性微粒子表面を観察したときに、絶縁被覆導電性微粒子の正投影面における絶縁粒子の被覆されている部分と樹脂粒子の被覆されていない部分の面積比率を測定することにより評価できる。
4.異方性導電材料
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料として有用である。
前記異方性導電材料としては、前記導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなるものが挙げられる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサー及びその組成物)も含まれる。
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
バインダー樹脂組成物には、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、酸化防止剤、各種カップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導向上剤、有機溶剤等を配合することができる。
なお、前記異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基材間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
前記異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方性導電材料の全量に対して0.01体積%以上が好ましく、より好ましくは0.03体積%以上、さらに好ましくは0.05体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
前記異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する導電性微粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
1.評価方法
1−1.個数平均粒子径、変動係数(CV値)
<シード粒子、基材粒子>
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数基準の平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数基準平均粒子径)
なお、基材粒子では、基材粒子0.005部に界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。シード粒子では、加水分解、縮合反応で得られた分散液を、界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料とした。
1−2.導電性金属層の厚み
導電性微粒子0.05gを王水8mlと混合し、温度80℃で攪拌して、導電性微粒子の導電性金属層を完全に溶解させた。次いで、導電性金属層が溶解した溶液中におけるニッケル又はニッケルと金、及び、その他の合金元素の濃度をICP発光分析装置(理学電機社製、CIROS120)により分析し、下記式(1)からニッケル層の厚みを算出した。
なお、式中、rは基材粒子の半径(μm)、tはニッケル層の厚み(μm)、dNiはニッケル層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル層成分(ニッケル、リン)含有率(質量%)、Xは金の含有率(質量%)である。
導電性金属層が2層以上の多層構造であり、上記Xが0超である場合には、下記式(2’)から金層の厚みを算出した。
なお、式中、aは金層の厚み(μm)、dAuは金層の密度、d(base+Ni)はニッケル品(ニッケル層+基材粒子)の密度、Xは金の含有率(質量%)である。ここで、ニッケル品の密度d(base+Ni)は上記計算式(3)を使用して算出した。なお、式中、dNiはニッケル層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル層成分(ニッケル、リン)含有率(質量%)である。
1−3.導電性微粒子に含まれる塩化物イオン及びナトリウムイオンの含有量
ステンレス鋼製の外筒と、テフロン(登録商標)製の内筒を有するテフロン(登録商標)内筒型密閉容器(耐圧硝子工業株式会社製)の内筒容器を蒸留水で洗浄した後、精秤した1gの導電性微粒子と、蒸留水(比抵抗18MΩ・cm)10mLとを加えた後、当該容器を密閉した。この容器を120℃の電気オーブン内で24時間加熱した後、容器を開封し、得られた抽出液を0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、この溶液中の塩化物イオン、ナトリウムイオン量をICP発光分析装置(DIONEX社製、ICS−2000)にて測定した。
導電性微粒子を用いなかったこと以外は同様にしてブランク試験を行い、導電性微粒子1g当たりの溶出イオン量を算出した。
1−4.抵抗値評価
エポキシ樹脂(三井化学株式会社製、ストラクトボンド(登録商標)XN−5A)100gに、導電性微粒子1g、及び、基材粒子の直径の70%に相当する直径のシリカ粒子を0.5g添加し、均一に攪拌して樹脂ペースト(異方性導電接着剤)を作製した。
この樹脂ペーストを、ITO電極が形成された2枚のガラス基板間のITO電極が交差する部分に挟み込み、160℃、50kg/cm2の圧力で30分の熱圧着を行った後、四端子法により初期抵抗値(Ω)の測定を行った。次いで、85℃、相対湿度85%の恒温恒湿器に入れ、100時間放置後に、再度、抵抗値(高温高湿処理後抵抗値(Ω))を測定した。また、測定された初期抵抗値、高温高湿処理後抵抗値の値を基に、下記式より、抵抗値上昇率を算出し、抵抗値上昇率が20%以下のものを◎、20%超、30%以下のものを○、30%超のものを×として判定した。
抵抗値上昇率(%)=100×[(高温高湿処理後抵抗値(Ω))−(初期抵抗値(Ω)]/(初期抵抗値(Ω))
2.基材粒子の作製
2−1.合成例1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール550部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン50部及びメタノール50部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、オルガノポリシロキサン粒子の乳濁液を調製した。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF−08」)の20%水溶液35.0部をイオン交換水200部で溶解した溶液に、スチレン120部、ジビニルベンゼン960(新日鉄化学社製、ジビニルベンゼン含量96質量%、ビニル系非架橋性単量体(エチルビニルベンゼン等)4%含有品)30部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、「V−65」)2.5部を溶解した溶液を加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。
乳化分散の開始から2時間後、得られた乳化液を、ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から2時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、窒素雰囲気下で反応液を65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、80℃で12時間真空乾燥させて基材粒子(1)を得た。この基材粒子(1)の粒子径をコールターマルチサイザーIII型(ベックマンコールター社製)で測定したところ、個数平均粒子径は2.5μm、変動係数(CV値)は3.8%であった。
2−2.合成例2
ポリシロキサン粒子(シード粒子)の乳濁液を調整するにあたり、イオン交換水の使用量を1600部に、メタノールの使用量を800部に変更したこと以外は合成例1と同様の手法により基材粒子(2)を得た。この基材粒子(2)の粒子径を コールターマルチサイザーIII型(ベックマンコールター社製)で測定したところ、個数平均粒子径は3.0μm、変動係数(CV値)は3.5%であった。
3.導電性微粒子の製造
3−1.実施例1
<導電性微粒子の作製>
ビーカーに「ピンクシューマー(日本カニゼン株式会社製:塩化スズ水溶液)」50部と、イオン交換水400部を入れ混合した。別途、イオン交換水50部に予め水酸化ナトリウム水溶液を用いてエッチング処理を行った基材粒子(1)10部を超音波分散させたものを準備し、この分散液を前記混合液に投入し、30℃で10分間攪拌して懸濁液とした後、これを固液分離して得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で洗浄し、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥を行った。
次に、乾燥後の粒子10部を、イオン交換水50部に超音波分散させ、これを、「レッドシューマー(日本カニゼン株式会社製:塩化パラジウム水溶液)」100部とイオン交換水350部とを混合した溶液に投入し、30℃で10分間攪拌して懸濁液とした。この懸濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールの順で洗浄し、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥を行い、基材粒子(1)の表面にパラジウムを吸着させた。
パラジウムにより活性化された基材粒子(1)をイオン交換水500部と混合し、超音波処理を30分間行い、粒子を十分分散させて微粒子懸濁液を得た。微粒子懸濁液の攪拌下、温度50℃で、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物40g/L、クエン酸ナトリウム50g/Lを含有する無電解メッキ液を徐々に微粒子懸濁液に添加して、基材粒子(1)の無電解ニッケルメッキを行った。基材粒子表面に0.09μmの厚みのニッケルメッキ層が形成された時点で無電解メッキ液の滴下を終了した。得られたニッケルメッキ基材粒子を濾別し、イソプロパノール50ml/蒸留水950mlからなる混合溶媒に超音波分散させ、撹拌機付オートクレーブ内で、120℃で10時間攪拌(脱イオン処理)した。その後、濾別して100℃で1時間真空乾燥を行い、導電性微粒子(1)を得た。得られた導電性微粒子におけるニッケル系金属層の厚さ及び金層の厚さを測定したところ、表1に示す通りであった。
3−2.実施例2
無電解メッキ工程後のニッケルメッキ基材粒子に対して、イソプロパノール50ml/蒸留水950mlからなる混合溶媒での脱イオン処理を2回繰り返し行ったこと以外は、実施例1と同様の手法により導電性微粒子(2)を得た。
3−3.実施例3
無電解メッキ工程後のニッケルメッキ基材粒子に対して、イソプロパノール50ml/蒸留水950mlからなる混合溶媒での脱イオン処理を3回繰り返し行ったこと以外は、実施例1と同様の手法により導電性微粒子(3)を得た。
3−4.実施例4
実施例1と同様の手法により無電解メッキ工程を行った後、脱イオン処理工程を行うことなく得られたニッケルメッキ粒子を、5g/Lのシアン化金カリウム、12g/Lクエン酸三ナトリウム、10g/Lエチレンジアミン4酢酸4ナトリウムを含有する置換金メッキ液に加え、金メッキ厚みが0.02μmになるまで置換金メッキを行った。得られたニッケル・金メッキ基材粒子を濾別し、イソプロパノール50ml/蒸留水950mlからなる混合溶媒に超音波分散させ、撹拌機付オートクレーブ内で、120℃で10時間攪拌(脱イオン処理)した。その後、濾別して100℃で1時間真空乾燥を行い、導電性微粒子(4)を得た。
3−5.実施例5
基材粒子として合成例2で得られた基材粒子(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により導電性微粒子(5)を得た。
3−6.実施例6
実施例5で得られたニッケルメッキ基材粒子を用いたこと以外は、実施例4と同様の手法により、ニッケル・金メッキされた導電性微粒子(6)を得た。
3−7.実施例7
無電解メッキ工程後のニッケルメッキ基材粒子に対して、イソプロパノール30ml/蒸留水970mlからなる混合溶媒での脱イオン処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の手法により導電性微粒子(7)を得た。
3−8.実施例8
無電解メッキ工程後のニッケルメッキ基材粒子に対して、イソプロパノール10ml/蒸留水990mlからなる混合溶媒での脱イオン処理を3回行ったこと以外は、実施例1と同様の手法により導電性微粒子(8)を得た。
3−9.比較例1
無電解メッキ工程の終了後、ニッケルメッキ基材粒子を濾別して真空乾燥を行い、比較導電性微粒子(1)を得た。なお、比較例1では、アルコール/水の混合溶媒での脱イオン処理は実施しなかった。
3−10.比較例2
イソプロパノール50ml/蒸留水950mlからなる混合溶媒に代えて蒸留水1000mlを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により比較導電性微粒子(2)を得た。
3−11.比較例3
基材粒子表面に0.11μmの厚みのニッケルメッキ層が形成されるまで無電解メッキ液の滴下を行ったこと以外は、実施例1と同様の手法により比較導電性微粒子(3)を得た。
3−12.比較例4
比較例3で得られた比較導電性微粒子(3)(厚み0.11μm)を用いたこと以外は、実施例4と同様の手法により、ニッケル・金メッキされた比較導電性微粒子(4)を得た。
表1、2より、導電性金属層の厚みが所定範囲内であり、且つ、塩化物イオン及びナトリウムイオンの含有量が低減されている実施例1〜8の導電性微粒子は、比較例の比較導電性微粒子に比べて、高温高湿処理前後における抵抗値の上昇が抑えられており、これらの導電性微粒子は、各種用途に用いても経時的な電極等の腐食や導通不良を生じ難いものと考えられる。特に、水/アルコール混合溶媒による脱イオン処理を複数回行った実施例2、3では、他の実施例と比べても塩化物イオン、ナトリウムイオンの含有量が低レベルに抑えられており、抵抗値の上昇率も小さなものであった。
なお、比較例3、4の比較導電性微粒子は、抵抗値評価前の塩化物イオン、ナトリウムイオン量はともに少ないものであったが、抵抗値上昇率は、76.9%(比較例3)、177.8%(比較例4)と大きな値を示していた。これは、比較導電性微粒子(3)、(4)の導電性金属層が厚かったため、高温高湿処理中に導電性金属層にクラックが生じ、導電性微粒子の深部に存在していた上記イオン分が経時的に滲出したためと考えられる。