1.導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、樹脂からなる基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する少なくとも一層の導電性金属層とを有する。そして、前記導電性金属層は、ニッケル又はニッケル合金で構成される第1の金属層と、この第1の金属層の上に形成され、かつ金、銀、パラジウムからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属で構成される第2の金属層とを含み、この第1の金属層の厚みと第2の金属層の厚みが特定範囲であるとともに、前記基材粒子が所定の硬さを有する。このように第1の金属層及び第2の金属層の厚みと、基材粒子の硬さが制御されていることにより、本発明の導電性微粒子は、導電性微粒子の粒子径を極めて小さくしても良好な初期抵抗を発現しうるとともに、ショートの発生も抑制され、高い接続信頼性を発揮することが可能となる。
1−1.基材粒子
基材粒子の粒子径は、個数平均粒子径で2.8μm以下である。本発明は微細な導電性微粒子の改良を目的とするものであり、基材粒子の粒子径が前記範囲内であれば、微細な導電性微粒子が得られ、微細化、狭小化された電極や配線の電気接続に対して、好適に使用できる。基材粒子の個数平均粒子径は、好ましくは2.7μm以下、より好ましくは2.6μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下、1.0μm以上が好ましく、より好ましくは1.1μm以上、さらに好ましくは1.2μm以上、一層好ましくは1.3μm以上である。
また基材粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、10.0%以下であることが好ましく、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、一層好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下、最も好ましくは3.0%以下である。このように粒子径の変動係数が小さい基材粒子は、単に一次粒子径の大きさが揃っているだけでなく、一次粒子径の単一分散性が極めて高い。そのため、このような基材粒子を用いれば、粒子径が揃っており、かつ凝集が抑制された導電性微粒子が得られる。
なお、本発明でいう基材粒子の個数平均粒子径やその変動係数等は、コールターカウンターにより測定することができ、その測定方法については実施例において後述する。
基材粒子は、所定の硬さを有するものであり、具体的には、その直径が10%変位したときの圧縮荷重値(以下「10%変位荷重」または「10%荷重」と称することがある)が0.4mN以上である。これにより、第1の金属層及び第2の金属層の厚みを後述するように従来に比べ薄い範囲に設定しても、導電性微粒子自体として必要な硬さを保持させることができ、加圧接続の際に被接続体(電極等)に対して十分な圧痕を形成し、導電性金属層と被接続体との密着性を高めるとともに、より大きな接続面積を確保して、良好な導通を得ることができる。基材粒子の10%変位荷重は、好ましくは0.5mN以上、より好ましくは0.6mN以上であり、好ましくは1.7mN以下、より好ましくは1.6mN以下である。
なお、基材粒子の10%変位荷重は、公知の微小圧縮試験機(例えば、島津製作所製「MCT−W500」など)を用いて測定することができ、その測定条件等は特に制限されないが、例えば、室温で粒子の中心方向へ荷重負荷速度2.2295mN/秒で荷重をかける圧縮試験において、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させたときの圧縮荷重(mN)を測定することが好ましい。
基材粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)は、基材粒子の粒子径に応じて、以下の通りに設定することが好ましい。
粒子径が2.8μm以下2.5μm以上である場合:好ましくは4000N/mm2以上25000N/mm2以下、より好ましくは5000N/mm2以上20000N/mm2以下、さらに好ましくは6000N/mm2以上18000N/mm2以下。
粒子径が2.5μm未満2.0μm以上である場合:好ましくは5000N/mm2以上30000N/mm2以下、より好ましくは6000N/mm2以上25000N/mm2以下、さらに好ましくは7000N/mm2以上22000N/mm2以下。
粒子径が2.0μm未満1.5μm以上である場合:好ましくは10000N/mm2以上45000N/mm2以下、より好ましくは15000N/mm2以上40000N/mm2以下、さらに好ましくは17000N/mm2以上38000N/mm2以下。
粒子径が1.5μm未満1.0μm以上である場合:好ましくは20000N/mm2以上70000N/mm2以下、より好ましくは20000N/mm2以上60000N/mm2以下。
基材粒子の10%K値が前記範囲であれば、被接続体(電極等)に対する圧痕をより形成しやすくなり、導電性金属層と被接続体との密着性及び接続面積をより一層向上させることが可能になる。
なお、基材粒子の10%K値は、公知の微小圧縮試験機(例えば、島津製作所製「MCT−W500」など)を用いて測定することができ、具体的には、室温で粒子の中心方向へ荷重負荷速度2.2295mN/秒で荷重をかける圧縮試験において、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させたときの圧縮荷重(mN)と圧縮変位(mm)を測定し、下記式に基づき求めた値を採用することが好ましい。
(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm
2)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)、R:粒子の半径(mm)である。)
基材粒子の10%変位荷重及び10%K値をそれぞれ前記範囲に制御するには、例えば、基材粒子を構成する樹脂(樹脂粒子)の組成を調整すればよい。具体的には、以下に詳述するが、例えば、ビニル重合体粒子であれば架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体)の割合を所定範囲に設定した特定組成のビニル重合体粒子(以下「特定ビニル重合体粒子」と称することもある)が10%変位荷重及び10%K値をそれぞれ前記範囲に制御するうえでは好ましく、そのほかに、アミノ樹脂粒子やオルガノポリシロキサン粒子も好ましい。それらの中でも、第1の金属層との密着性に優れる点からは、前記特定ビニル重合体粒子もしくはアミノ樹脂粒子が好適であり、特に10%変位荷重及び10%K値を好適な範囲に任意に制御し易い点では、特定ビニル重合体粒子が好ましい。
以下、本発明における基材粒子として用いることのできる樹脂粒子の組成、特に10%変位荷重及び10%K値をそれぞれ前記範囲に制御するうえで最適な樹脂組成について説明する。
基材粒子を構成する樹脂としては、例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;オルガノポリシロキサン;等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、導電性微粒子を異方導電接続に供した際の接続信頼性を高める点からは、ビニル重合体、アミノ樹脂、オルガノポリシロキサンが好ましく、ビニル重合体及びアミノ樹脂がより好ましく、さらにはビニル重合体が好ましい。特に、10%変位荷重及び10%K値をそれぞれ前記範囲に制御するうえでは、特定組成のビニル重合体、アミノ樹脂、オルガノポリシロキサンが好適である。一般に、ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。
1−1−1.ビニル重合体粒子
ビニル重合体粒子は、ビニル重合体により構成される。ビニル重合体は、ビニル系単量体(ビニル基含有単量体)を重合(ラジカル重合)することによって形成でき、このビニル系単量体はビニル系架橋性単量体とビニル系非架橋性単量体とに分けられる。なお、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような官能基と重合性炭素−炭素二重結合から構成される置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
前記ビニル系架橋性単量体とは、ビニル基を有し架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体(単量体(1))、又は、1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(単量体(2))が挙げられる。ただし、単量体(2)によって架橋構造を形成させるには、当該単量体(2)の結合性官能基と反応(結合)可能な相手方単量体の存在が必要である。
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(1)(1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体)の例として、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤等が挙げられる。
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ビニル系非架橋性単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する単量体(単量体(3))か、もしくは相手方単量体が存在しない場合の前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)が挙げられる。
前記ビニル系非架橋性単量体のうち前記単量体(3)(1分子中に1個のビニル基を有する単量体)には、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやスチレン系単官能モノマーが含まれる。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられる。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン(エチルビニルベンゼン)、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられる。単量体(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ビニル重合体粒子は、ビニル重合体の特性を損なわない程度に、他の成分を含んでいてもよい。この場合、ビニル重合体粒子は、ビニル重合体を50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
前記他の成分としては、特に限定されないが、ポリシロキサン成分が好ましい。ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入することで、加圧接続時の弾性変形に優れるものとなる。
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を用いることによって形成でき、このシラン系単量体はシラン系架橋性単量体とシラン系非架橋性単量体とに分けられる。また、シラン系単量体としてシラン系架橋性単量体を用いると、架橋構造を形成し得る。シラン系架橋性単量体により形成される架橋構造としては、ビニル重合体とビニル重合体とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
第一の形態(ビニル重合体間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等の2つ以上のビニル基を有するシラン化合物が挙げられる。第二の形態(ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらのシラン系架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記シラン系非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらのシラン系非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基等のビニル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格であることが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格であることが好ましい。
前記ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入する場合、ビニル系単量体の使用量は、シラン系単量体100質量部に対して100質量部以上が好ましく、より好ましくは200質量部以上、さらに好ましくは300質量部以上であり、700質量部以下が好ましく、より好ましくは600質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。
基材粒子の10%変位荷重及び10%K値を所定の範囲に制御するうえでは、ビニル重合体粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、20質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上90質量%以下である。架橋性単量体の割合が前記範囲であれば、適度な硬さを有することになり、前記範囲の10%変位荷重及び10%K値を発現させることができる。基材粒子があまりに硬すぎると、導電性微粒子を変形させた際に比較的薄い導電性金属層が剥がれやすくなる虞がある。
基材粒子の10%変位荷重及び10%K値を所定の範囲に制御するうえでは、架橋性単量体として、1分子中に2個のビニル基を有する2官能単量体を用いることが好ましく、特に、1分子中に2個のビニル基を有し、これら2個のビニル基が1〜14個(好ましくは2〜10個)の原子からなる結合鎖を介して連結されている2官能単量体が好ましい。ここで、特に好ましい2官能単量体としては、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、スチレン系2官能モノマーが挙げられる。
基材粒子の10%変位荷重及び10%K値を所定の範囲に制御するうえで好適な単量体成分は、ジビニルベンゼン及びジ(メタ)アクリレートを必須成分とする態様;ジビニルベンゼン及びスチレンを必須成分とする態様;ジ(メタ)アクリレート及びスチレンを必須成分とする態様が挙げられる。特に、ジビニルベンゼン及び/又はジ(メタ)アクリレートを必須成分として含むビニル重合体は、導電性金属層被覆後の粒子強度の低下が少ないという利点がある。
前記ビニル重合体粒子は、例えば、ビニル系単量体を重合することによって製造することができるが、具体的には、(i)ビニル系単量体を重合成分として含む単量体組成物を用いて、従来公知の水性懸濁重合、分散重合、乳化重合する方法;(ii)シラン系単量体を用いてビニル基含有ポリシロキサンを得た後、このビニル基含有ポリシロキサンとビニル系単量体とを重合(ラジカル重合)する方法;(iii)シード粒子に、ビニル系単量体を吸収させた後、ビニル系単量体をラジカル重合する、いわゆるシード重合する方法;が好ましい。
前記製造方法(i)では、ビニル系単量体として、前記2つ以上のビニル基を有するシラン化合物、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン等のビニル基を有するシラン化合物を併用してもよい。前記製造方法(ii)においては、少なくとも前記第三の形態を形成し得るシラン系架橋性単量体を用いることによって、ポリシロキサン骨格が導入されたビニル重合体粒子が得られる。
前記製造方法(iii)において、シード粒子としては、非架橋又は架橋度の低いポリスチレン粒子、ポリシロキサン粒子を用いることが好ましい。シード粒子にポリシロキサン粒子を用いることで、ビニル重合体にポリシロキサン骨格を導入できる。
ポリシロキサン粒子としては、前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体を含む組成物を、(共)加水分解縮合して得られるポリシロキサン粒子が好ましく、特にビニル基含有ポリシロキサン粒子が好ましい。ポリシロキサン粒子がビニル基を有する場合、得られるビニル重合体粒子が、ビニル重合体とポリシロキサン骨格がポリシロキサンを構成するケイ素原子を介して結合するため、弾性変形性及び接触圧に特に優れたものとなる。ビニル基含有ポリシロキサン粒子は、例えば、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシランを含むシラン系単量体(混合物)を(共)加水分解縮合することによって製造できる。
また、前記ビニル重合体粒子がポリシロキサン骨格を含む場合、基材粒子に加熱処理を施すことも好ましい態様である。前記加熱処理は空気雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行うことがより好ましい。前記加熱処理の温度は120℃(より好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃)以上が好ましく、熱分解温度(より好ましくは350℃、さらに好ましくは330℃)以下が好ましい。前記加熱処理の時間は、0.3時間(より好ましくは0.5時間、さらに好ましくは0.7時間)以上が好ましく、10時間(より好ましくは5.0時間、さらに好ましくは3.0時間)以下が好ましい。
1−1−2.アミノ樹脂粒子
アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物により構成されるものが好ましい。
前記アミノ化合物としては、例えば、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミン等のグアナミン化合物、メラミン等のトリアジン環構造を有する化合物等の多官能アミノ化合物が挙げられる。これらの中でも、多官能アミノ化合物が好ましく、トリアジン環構造を有する化合物がより好ましく、特にメラミン、グアナミン化合物(特にベンゾグアナミン)が好ましい。前記アミノ化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物中、グアナミン化合物を10質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。アミノ化合物中のグアナミン化合物の含有割合が上記範囲であれば、より粒度分布がシャープであり、粒子径が精密にコントロールされたものとなる。なお、アミノ化合物として、グアナミン化合物のみを用いることも好ましい。
アミノ樹脂粒子は、例えば、水性媒体中でアミノ化合物とホルムアルデヒドを反応(付加縮合反応)させることにより得られる。通常、この反応は加熱下(50〜100℃)で行う。また、ドデシルベンゼンスルホン酸、硫酸等の酸触媒の存在下で反応を行うことにより、架橋度を高めることができる。
アミノ樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特開2000−256432号公報、特開2002−293854号公報、特開2002−293855号公報、特開2002−293856号公報、特開2002−293857号公報、特開2003−55422号公報、特開2003−82049号公報、特開2003−138023号公報、特開2003−147039号公報、特開2003−171432号公報、特開2003−176330号公報、特開2005−97575号公報、特開2007−186716号公報、特開2008−101040号公報、特開2010−248475号公報等に記載のアミノ樹脂架橋粒子及びその製造方法を適用することが好ましい。
具体例としては、前記多官能アミノ化合物とホルムアルデヒドを、水性媒体(好ましくは塩基性の水性媒体)中で反応(付加縮合反応)させて縮合物オリゴマーを生成させ、該縮合物オリゴマーが溶解又は分散する水性媒体にドデシルベンゼンスルホン酸や硫酸等の酸触媒を混合して硬化させることによって、架橋されたアミノ樹脂粒子を製造することができる。縮合物オリゴマーを生成させる段階、架橋構造のアミノ樹脂とする段階は、いずれも、50〜100℃の温度で加熱された状態で行うことが好ましい。また、付加縮合反応を、界面活性剤の存在下で行うことにより、粒度分布のシャープなアミノ樹脂粒子が得られる。
1−1−3.オルガノポリシロキサン粒子
オルガノポリシロキサン粒子は、ビニル基を含有しないシラン系単量体(シラン系架橋性単量体、シラン系非架橋性単量体)の1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することによって得られる。
前記ビニル基を含有しないシラン系単量体としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の3官能性シラン系単量体;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン等が挙げられる。
基材粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状等のいずれでも良いが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。
1−2.導電性金属層
導電性金属層は、第1の金属層と第2の金属層とを有する。
第1の金属層は、ニッケル又はニッケル合金で構成される層(ニッケル系金属層)である。このようなニッケル系金属層は、基材粒子に対して良好な密着性を発現しうるので、かかる第1の金属層は、通常、基材粒子の表面に形成されることが好ましい。
前記ニッケル系金属層がニッケル合金からなる場合、ニッケル合金を構成するニッケル以外の金属は、Niと共析し合金皮膜を形成し得るものであれば良い。好ましくは、リン(P)、ホウ素(B)、タングステン(W)、コバルト(Co)等が挙げられる。これらの金属はニッケル合金において1種のみを含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。ニッケル合金におけるニッケルの含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
なお、前記ニッケル系金属層には、本発明の効果を損なわない範囲で、ニッケルやニッケル合金以外の他の金属成分からなる相が含まれていてもよい。他の金属成分からなる相としては、例えば、ニッケル系金属層中に他の金属成分が粒状で分散した形態が挙げられる。他の金属成分としては、例えば、上述したニッケル合金を構成するニッケル以外の金属が挙げられる。このようにニッケル系金属層が他の金属成分からなる相を有する場合、ニッケル系金属層におけるニッケル系金属(ニッケル又はニッケル合金)の含有率は、ニッケル系金属層100質量%に対して90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
第1の金属層の厚みは、0.030μm以上、0.08μm以下であり、好ましくは0.035μm以上、より好ましくは0.040μm以上であり、好ましくは0.075μm以下、より好ましくは0.070μm以下である。第1金属層の厚みが前記範囲であれば、基材粒子が小粒径であっても加圧接続時に導電性金属層の割れ(クラック)や亀裂を抑制することができるので、低い初期抵抗を得、ショートの発生を防止することが可能になる。第1金属層の厚みが前記範囲よりも厚すぎると、加圧接続時に導電性金属層の割れ(クラック)や亀裂を抑制できず、逆に薄すぎると、基材粒子と導電性金属層との密着性が不充分となる場合がある。
第2の金属層は、前記第1の金属層の上に形成されるものであり、金、銀、パラジウムからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属からなる貴金属層である。かかる貴金属層は、酸化され難く導通性にも優れるので、被接続体に接触する面の酸化を防止してより一層高い導電性が得られる。第2の金属層を構成する貴金属としては、導電性微粒子表面の酸化を抑えるとともに、電気的接続に供した際の抵抗を下げる効果が得られる点で、金、パラジウムが好ましく、より好ましくは金である。第2の金属層が金からなる層であれば、より薄膜化しても十分な導電性を得ることが可能になる。
第2の金属層の厚みは、0.005μm以上、0.03μm以下であり、好ましくは0.006μm以上、より好ましくは0.007μm以上であり、好ましくは0.025μm以下、より好ましくは0.023μm以下、さらに好ましくは0.02μm以下、特に好ましくは0.01μm未満である。特に第2金属層が金からなる場合には、さらに薄膜化が可能であり、0.01μm以下が好ましい。第2金属層の厚みが前記範囲であれば、基材粒子が小粒径であっても加圧接続時に導電性金属層の割れ(クラック)や亀裂を抑制することができるので、低い初期抵抗を得、ショートの発生を防止することが可能になる。第2金属層の厚みが前記範囲よりも厚すぎると、加圧接続時に導電性金属層の割れ(クラック)や亀裂を抑制できず、逆に薄すぎると、第1の金属層(ニッケル又はニッケル合金)の一部が露出してしまうことがあり、そうすると貴金属による導電性向上効果が不十分になる可能性がある。
なお、第1の金属層と第2の金属層との間には、ニッケル及び/又はニッケル合金を構成する合金元素と、金、銀、パラジウムからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属との合金組成の領域(層)が存在する場合があるが、そのような合金組成の領域(層)を有する導電性微粒子も本発明の一態様に包含される。第1の金属層と第2の金属層との間に合金組成の領域(層)を有していても、後述のようにして、当該合金組成の領域(層)の影響を考慮しつつ、第1及び第2の金属層の厚さを決定することができる。
第1の金属層(ニッケル系金属層)及び第2の金属層(貴金属層)をそれぞれ所定の膜厚(厚さ)に制御するには、例えば、後述する無電解メッキ処理を行う際の基材粒子(被メッキ粒子)の濃度(メッキ液反応液に対する粒子の量)、メッキ液の濃度、あるいはメッキ液のpHや温度、無電解メッキ処理時間等を調整すればよい。具体的には、基材粒子(被メッキ粒子)の濃度を高くしたり、メッキ液の濃度を低くしたり、或いは無電解メッキ処理時間を短くすると、形成される金属層の膜厚は薄くなる。
第1の金属層(ニッケル系金属層)及び第2の金属層(貴金属層)の膜厚は、例えば、以下のような方法で求めることができる。すなわち、まず、導電性微粒子に含まれる第1の金属層及び第2の金属層を液中に完全に溶解させる。ここで金属層を溶解させる方法は、金属種に応じて適宜選択すればよい。例えば、導電性微粒子0.05gに王水を8mL添加して80℃で攪拌を行うなどの方法を採用することができる。次に、溶解させた液中におけるニッケル系金属層を構成する金属(ニッケル、ニッケル合金元素)と貴金属層を構成する金属(Au、Ag、Pd)の濃度をICP発光分析装置を用いて分析し、下記の式(1)からニッケル系金属層の厚みを算出し、下記の式(2)から貴金属層の厚みを算出することができる。
式(1)中、rは基材粒子の半径(μm)、tはニッケル系金属層の厚み(μm)、dNiはニッケル系金属層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル系金属層の構成成分(ニッケル、ニッケル系金属層に含まれる合金元素)の含有率(質量%)、Xは貴金属層の構成成分(Au、Ag、Pd)の含有率(質量%)である。
式(2)中、aは貴金属層の厚み(μm)、dPrecは貴金属層の密度、d(base+Ni)は基材粒子にニッケル系金属層を設けた粒子(以下「ニッケル品」と称する)の密度、Xは貴金属層の構成成分(Au、Ag、Pd)の含有率(質量%)である。ここで、ニッケル品の密度d(base+Ni)は計算式(3)を使用して算出することができる。なお、式(3)中、dNiはニッケル系金属層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル系金属層の構成成分(ニッケル、ニッケル系金属層に含まれる合金元素)の含有率(質量%)である。
導電性金属層(前記第1の金属層及び前記第2の金属層)の形成方法は、特に限定されず、例えば、基材粒子表面に無電解メッキ法、電解メッキ法等によってメッキを施す方法;基材粒子表面に真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法により導電性金属層を形成する方法;のような従来公知の方法を採用することができる。これらの中でも特に、無電解メッキ法が、大掛かりな装置を必要とせず容易に導電性金属層を形成できる点で好ましい。なお、第1の金属層と第2の金属層とは必ずしも同じ方法で形成される必要はないが、生産性等を考慮すると同じ方法で形成するのがよい。
以下、無電解メッキ法による導電性金属層(第1及び第2の金属層)の形成について詳細に説明する。
無電解メッキ法により導電性金属層を形成するには、まず、基材粒子に無電解ニッケル系メッキ液を用いてニッケルメッキを施すことにより、ニッケル系金属層(第1の金属層)を形成したニッケル被覆粒子を得、その後、該ニッケル被覆粒子をさらに無電解貴金属系メッキ液(無電解金メッキ液、無電解銀メッキ液、無電解パラジウムメッキ液)に投入して金、銀またはパラジウム置換メッキを行うことにより、前記ニッケル系金属層の上に貴金属層(第2の金属層)が形成された導電性微粒子が得られる。なお、第1の金属層を形成した後、置換メッキ法により第2の金属層を形成した場合、例えばニッケル層を形成した後、置換メッキ法により金を析出させた場合、上述したように、得られる金属層は通常、ニッケル層と金層との間にNiとAuとからなるNi−Au合金領域が形成されたものとなる場合がある。
無電解メッキ法により基材粒子表面に第1の金属層(ニッケル系金属層)を形成するには、エッチング工程、触媒化工程を経た後、無電解メッキ工程を行うことが好ましい。
前記エッチング処理工程では、例えばクロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;等を用いて、基材粒子の表面に微小な凹凸を形成させる。これにより、凹凸のアンカー効果によって後述する無電解メッキ工程後の基材粒子と導電性金属層との密着性の向上を図ることができる。
前記触媒化工程では、基材粒子の表面にメッキ析出の基点となる触媒層(パラジウム触媒などの層)を形成する。触媒層を形成する方法は特に限定されず、無電解メッキ用として市販されている触媒化試薬を用いて行えばよい。例えば、二塩化パラジウムと二塩化スズとを含む溶液を触媒化試薬とし、これに基材粒子を浸漬することにより基材粒子表面に触媒金属を吸着させ、その後、硫酸や塩酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液で前記パラジウムイオンを還元することにより、基材粒子表面にパラジウム核を析出させる方法(キャタリスト−アクセレレーション法)や、スズイオン(Sn2+)を含有する溶液(二塩化スズ溶液など)に基材粒子を接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させた後、パラジウムイオン(Pd2+)を含有する溶液(二塩化パラジウム溶液など)に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウム核を析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等が好ましく採用される。なお、前記スズイオン含有溶液やパラジウムイオン含有溶液に基材粒子を浸漬する際の液温及び浸漬時間は、各イオンが基材粒子に充分に吸着できる範囲で適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、液温は10℃〜60℃が好ましく、浸漬時間は1分〜120分が好ましい。
前記無電解メッキ工程では、前記触媒化工程にて触媒層(例えばパラジウム核)を形成した基材粒子(以下「触媒化基材粒子」と称する)表面に、無電解メッキ処理を施して導電性金属層を形成する。無電解メッキ処理は、還元剤と所望の金属塩を溶解したメッキ液中に触媒化基材粒子を浸漬することにより、触媒を起点として、メッキ液中の金属イオンを還元剤で還元し、基材粒子表面に所望の金属を析出させて、導電性金属層を形成するものである。
前記無電解メッキ工程では、まず、触媒化基材粒子を水に十分に分散させ、触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する。触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常攪拌装置、高速攪拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置等従来公知の分散手段を採用すればよく、必要に応じて超音波を併用してもよい。また触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる際には、分散安定剤を添加することができる。分散安定剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤が好ましく用いられる。
触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する際には、形成される金属層の膜厚が所望の範囲になるよう、水性スラリー中の触媒化基材粒子の濃度を適宜調整することが好ましい。具体的には、得られた水性スラリーに後述の無電解メッキ液を添加し終えた状態で、メッキ液反応液(水性スラリーと無電解メッキ液の混合物)中の基材粒子(触媒化基材粒子)の濃度が0.3g/L以上10g/L以下となるようにすることが好ましく、より好ましくは0.4g/L以上5g/L以下、さらに好ましくは0.5g/L以上3g/L以下となるようにするのがよい。
次に、所望の導電性金属(ニッケル又はニッケル合金)の塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解メッキ液に、上記で調製した触媒化基材粒子の水性スラリーを添加することにより、無電解メッキ反応を生じさせる。無電解メッキ反応は、触媒化基材粒子の水性スラリーを添加すると速やかに開始する。また、この反応には水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が認められなくなった時点をもって無電解メッキ反応を終了すればよい。
前記無電解メッキ液に含有させる導電性金属塩としては、ニッケル又はニッケル合金の塩化物、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。具体的には、第1の金属層(ニッケル系金属層)形成時には、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケル塩等を無電解メッキ液に含有させればよい。導電性金属塩は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。無電解メッキ液中における導電性金属塩の濃度は、所望の膜厚の金属層が形成されるように、基材粒子のサイズ(表面積)等を考慮して適宜決定すればよい。
前記無電解メッキ液に含有させる還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、グリオキシル酸、ヒドラジン等が挙げられる。還元剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
前記無電解メッキ液に含有させる錯化剤としては、導電性金属のイオンに対して錯化作用のある化合物が使用できる。例えば、ニッケルに対して錯化作用のある化合物としては、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸またはそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのカルボン酸(塩);グリシン等のアミノ酸;エチレンジアミン、アルキルアミン等のアミン類;その他のアンモニウム(塩)、EDTA、ピロリン酸(塩);などが挙げられる。錯化剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
前記メッキ液を、触媒化基材粒子の水性スラリーに滴下する際の液温は、適宜調整すればよいが、形成される金属層の膜厚を制御するうえでは液温は50℃以上100℃未満が好ましい。
前記無電解メッキ液のpHは、限定されないが、形成される金属層の膜厚を制御するうえでは、好ましくは4〜14である。なお、無電解メッキ液のpHは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ性水溶液、硫酸、塩酸等の酸性水溶液を適宜添加することで調整できる。
以上のようにして第1の金属層(ニッケル系金属層)を有するニッケル系金属被覆粒子が得られる。そして、得られたニッケル系金属被覆粒子を、さらに、Au、Ag、Pdのいずれか1種以上を含む無電解メッキ液を用いた無電解メッキ工程に付すことにより、第2の金属層(貴金属層)が形成される。この第2の金属層を形成する際の無電解メッキ工程は、導電性金属塩としてAu塩、Ag塩、Pd塩のいずれかを用いることを除き、第1の金属層における無電解メッキ工程と同様に行うことができる。
全ての無電解メッキ反応の終了後、反応系内から導電性金属層が形成された基材粒子を取り出し、必要に応じて、洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子を得ることができる。
前記導電性金属層(第1の金属層及び第2の金属層)は、5質量%以上のリン(P)を含有していることが好ましい。リンが5質量%以上の濃度で存在すると金属層は軟化する傾向があるので、加圧接続時に導電性金属層が基材粒子の変形により一層追随しやすくなり、より低い初期抵抗を得、より確実にショートを防止することが可能となる。リン濃度は、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。ただし、リン濃度があまりに高すぎると、導電性が低下する傾向があるので、リン濃度は、19質量%以下が好ましい。なお、この特定量のリンは、第1の金属層のみに含有されていてもよいし、第2の金属層のみに含有されていてもよいし、両金属層に含有されていてもよいが、特に、第1の金属層におけるリン濃度が5質量%以上であることが好ましい
なお、導電性金属層中のリン濃度は、例えば、導電性微粒子表面の導電性金属層(第1の金属層及び第2の金属層)を王水等の酸に溶解させてろ別し、得られたろ液をICP発光分析装置等により分析することにより求めることができる。
本発明は、微細な導電性微粒子を電気的接続に供した際の接続信頼性を高めること(具体的には、初期抵抗を低く抑え、ショートの発生を回避すること)を目的とするものである。したがって、本発明において導電性微粒子の粒子径は、個数平均粒子径で、1.1μm以上、好ましくは1.2μm以上、より好ましくは1.3μm以上、さらに好ましくは1.4μm以上であり、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.9μm以下、さらに好ましくは2.8μm以下、一層好ましくは2.7μm以下、より一層好ましくは2.6μm以下、なお一層好ましくは2.5μm以下である。個数平均粒子径がこの範囲内であれば、微細化、狭小化された電極や配線を対象とした電気的接続においても好適に使用できる。なお、導電性微粒子の個数平均粒子径は、例えばフロー式粒子像解析装置を用いて求めることができる。
2.突起を有する導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、その表面が平滑であっても凹凸状であっても良いが、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。
導電性微粒子の表面に突起を形成させる方法としては、例えば、(1)基材粒子合成における重合工程において、高分子の相分離現象を利用して表面に突起の形成された基材粒子を得た後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(2)基材粒子表面に、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させた後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(3)基材粒子表面に無電解メッキを行った後、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させ、さらに無電解メッキを行う方法;(4)無電解メッキ反応時におけるメッキ浴の自己分解を利用して、基材粒子表面に突起の核となる金属を析出させ、さらに無電解メッキを行うことによって、突起部を含む導電性金属層が連続皮膜となった導電性金属層を形成する方法;等が挙げられる。
前記突起の高さは20nm〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは30nm〜800nm、さらに好ましくは40nm〜600nm、特に好ましくは50nm〜500nmである。突起の高さが前記範囲であると、接続信頼性が一層向上する。なお、突起の高さは、任意の導電性微粒子10個を電子顕微鏡で観察して求める。具体的には、観察される導電性微粒子の周縁部の突起について、導電性微粒子1個につき任意の10個の突起高さを測定し、その測定値を算術平均することにより求められる。
前記突起の数は特に限定されないが、高い接続信頼性を確保する点から導電性微粒子の表面を電子顕微鏡で観察したときの任意の正投影面において、少なくとも1個以上の突起を有することが好ましく、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上である。
3.絶縁被覆導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、表面の少なくとも一部に絶縁層を有する態様(絶縁被覆導電性微粒子)であってもよい。このように表面の導電性金属層にさらに絶縁層が積層されていると、高密度回路の形成時や端子接続時等に生じやすい横導通を防ぐことができる。
絶縁層の厚さは0.005μm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁層の厚さが前記範囲内であれば、導電性微粒子による導通特性を良好に維持しつつ、粒子間の電気絶縁性が良好となる。
前記絶縁層としては、導電性微粒子の粒子間における絶縁性が確保でき、一定の圧力及び/又は加熱により容易にその絶縁層が崩壊あるいは剥離するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン類;ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート重合体及び共重合体;ポリスチレン;等の熱可塑性樹脂やその架橋物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂及びこれらの混合物;シリコーン樹脂等の有機化合物、或いはシリカ、アルミナ等の無機化合物が挙げられる。
前記絶縁層は、単層であっても、複数の層からなるものであってもよい。例えば、単一又は複数の皮膜状の層が形成されていてもよいし、絶縁性を有する粒状、球状、塊状、鱗片状その他の形状の粒子を導電性金属層の表面に付着させた層であってもよいし、さらには、導電性金属層の表面を化学修飾することにより形成された層であってもよく、又は、これらが組み合わされたものであってもよい。これらの中でも絶縁性を有する粒子(以下、「絶縁粒子」という。)が導電性金属層表面に付着した態様が好ましい。
前記絶縁粒子の平均粒子径は、導電性微粒子の平均粒子径や絶縁被覆導電性微粒子の用途によって適宜選択されるが、例えば、0.005μm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁粒子の平均粒子径が0.005μmより小さくなると、複数の導電性微粒子間の導電層どうしが接触しやすくなり、1μmより大きくなると、対向する電極間に導電性微粒子が挟み込まれた際に発揮するべき導電性が不十分となる虞がある。
前記絶縁粒子の平均粒子径における変動係数(CV値)は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である。CV値が40%を超えると導通性が不十分となる虞がある。
前記絶縁粒子の平均粒子径は、導電性微粒子の平均粒子径の1/1000以上、1/5以下であることが好ましい。絶縁粒子の平均粒子径が前記範囲であると、導電性微粒子の表面に均一に絶縁粒子層を形成させることができる。また、粒子径の異なる2種類以上の絶縁粒子を使用してもよい。
前記絶縁粒子はその表面に導電性微粒子への付着性を高めるため官能基を有していても良い。前記官能基としては、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、リン酸基、シラノール基、アンモニウム基、スルホン酸基、チオール基、ニトロ基、ニトリル基、オキサゾリン基、ピロリドン基、スルホニル基、水酸基等が挙げられる。
導電性微粒子表面における絶縁粒子の被覆率(絶縁被覆導電性微粒子の正投影面)は、好ましくは1%以上98%以下、より好ましくは5%以上95%以下である。絶縁粒子による導電性微粒子の被覆率が前記範囲であることにより、充分な導通性を確保しつつ、隣接する絶縁被覆導電性微粒子間を確実に絶縁することができる。なお、上記被覆率は、例えば電子顕微鏡を用いて任意の100個の絶縁被覆導電性微粒子表面を観察したときに、絶縁被覆導電性微粒子の正投影面における絶縁粒子の被覆されている部分と樹脂粒子の被覆されていない部分の面積比率を測定することにより評価できる。
4.異方性導電材料
本発明の異方性導電材料は、上述した本発明の導電性微粒子を含有する。例えば、異方性導電材料としては、前記導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなるものが挙げられる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基板同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサー及びその組成物)も含まれる。
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
なお、本発明の異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基板間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
本発明の異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方性導電材料の全量に対して0.01体積%以上が好ましく、より好ましくは0.03体積%以上、さらに好ましくは0.05体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、十分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
本発明の異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する導電性微粒子の粒子径と、接続すべき被接続体(電極等)の仕様とを考慮し、接続すべき被接続体間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき被接続体が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
本発明の異方性導電材料には、導電性微粒子および前記バインダー樹脂とともに、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、酸化防止剤、各種カップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導向上剤、有機溶剤等を配合することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
1.分析方法
1−1.基材粒子及びシード粒子の粒子径及び変動係数(CV値)
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数平均粒子径(個数基準の平均分散粒子径)、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数平均粒子径)
なお、基材粒子の測定では、基材粒子0.005部に、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製「ハイテノール(登録商標)N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。シード粒子の測定では、加水分解、縮合反応で得られた分散液を、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製「ハイテノール(登録商標)N−08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料とした。
1−2.基材粒子の10%荷重及び10%K値
微小圧縮試験機(島津製作所社製「MCT−W500」)を用いて、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS材平板)上に散布した粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、「標準表面検出」モードで、粒子の中心方向へ一定の負荷速度(2.2295mN/秒)で荷重をかけた。そして、圧縮変位が粒子径の10%となったときの荷重値(mN)とそのときの変位量(μm)を測定した。なお、測定は各試料について、異なる10個の粒子に対して行い、平均した値を測定値とした。そして、得られた荷重値(mN)を、粒子が10%変位したときの圧縮荷重値(10%荷重)とした。また、得られた変位量(μm)を圧縮変位(mm)に換算し、基材粒子の個数平均粒子径(μm)から粒子の半径(mm)を算出し、これらと上記荷重値(mN)を換算した圧縮荷重(N)とを用いて下記式に基づき、粒子が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)を算出した。
(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm
2)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)、R:粒子の半径(mm)である。)
1−3.導電性金属層(ニッケル系金属層(Ni層)及び貴金属層の厚み)
導電性微粒子0.05gを王水8mLと混合し、温度80℃で攪拌して、導電性微粒子の導電性金属層を完全に溶解させた。次いで、導電性金属層が溶解した溶液中における全金属元素の濃度をICP発光分析装置(理学電機社製「CIROS120」)により分析し、下記式(1)から第1金属層(Ni層)の厚みを算出し、下記式(2)から第2金属層(Au層又はPd層)の厚みを算出した。
式(1)中、rは基材粒子の半径(μm)、tはニッケル層の厚み(μm)、dNiはニッケル層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル層の構成成分(ニッケル)の含有率(質量%)、Xは貴金属層の構成成分(Au、Pd)の含有率(質量%)である。
式(2)中、aは貴金属層の厚み(μm)、dPrecは貴金属層の密度、d(base+Ni)は基材粒子にニッケル層を設けた粒子(以下「ニッケル品」と称する)の密度、Xは貴金属層の構成成分(Au、Pd)の含有率(質量%)である。ここで、ニッケル品の密度d(base+Ni)は計算式(3)を使用して算出することができる。なお、式(3)中、dNiはニッケル層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル層の構成成分(ニッケル)の含有率(質量%)である。
2.導電性微粒子の製造
2−1.基材粒子の作製
(製造例1)
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール600部を入れ、攪拌下、滴下口から、単量体(シード形成モノマー)としての3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン50部を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、シード粒子とするオルガノポリシロキサン粒子の分散液を調製した。このポリシロキサン粒子(シード粒子)の個数基準の平均分散粒子径は1.26μmであった。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液5部をイオン交換水200部に溶解させた溶液に、単量体(吸収モノマー)として、スチレン50部及び、ジビニルベンゼン(新日鐡化学社製「DVB960」:ジビニルベンゼン96%、ビニル系非架橋性単量体(エチルビニルベンゼン等)4%含有品)150部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)2部とを溶解した溶液を加え、乳化分散させて単量体成分(吸収モノマー)の乳化液を調製した。乳化分散の開始から2時間後、得られた乳化液を、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の分散液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から2時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体(吸収モノマー)を吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、窒素雰囲気下で反応液を65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成して、基材粒子(1)を得た。
この基材粒子(1)の個数平均粒子径は2.5μm、変動係数(CV値)は3.8%であった。また、基材粒子(1)を10%変位させたときの圧縮荷重値(10%荷重)は0.86mNであり、そのときの圧縮弾性率(10%K値)は13050N/mm2であった。
(製造例2)
製造例1において、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の分散液を調製するにあたり、イオン交換水の使用量を1600部に、メタノールの使用量を800部に変更したこと以外は製造例1と同様にして、基材粒子(2)を得た。なお、シード粒子の個数基準の平均分散粒子径は1.40μmであった。
この基材粒子(2)の個数平均粒子径は2.8μm、変動係数(CV値)は3.6%であった。また、基材粒子(2)を10%変位させたときの圧縮荷重値(10%荷重)は0.91mNであり、そのときの圧縮弾性率(10%K値)は11010N/mm2であった。
(製造例3)
製造例1において、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の分散液を調製するにあたり、イオン交換水の使用量を1400部に、メタノールの使用量を1000部に変更したこと以外は製造例1と同様にして、基材粒子(3)を得た。なお、シード粒子の個数基準の平均分散粒子径は1.60μmであった。
この基材粒子(3)の個数平均粒子径は3.2μm、変動係数(CV値)は3.2%であった。また、基材粒子(3)を10%変位させたときの圧縮荷重値(10%荷重)は0.99mNであり、そのときの圧縮弾性率(10%K値)は9170N/mm2であった。
(製造例4)
製造例1において、吸収モノマーとして、スチレン150部及び1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート50部を用いるように変更した以外は製造例1と同様にしてラジカル重合を行い、その後、焼成に代えて80℃で12時間乾燥としたこと以外は製造例1と同様にして、基材粒子(4)を得た。
この基材粒子(4)の個数平均粒子径は2.5μm、変動係数(CV値)は3.5%であった。また、基材粒子(4)を10%変位させたときの圧縮荷重値(10%荷重)は0.66mNであり、そのときの圧縮弾性率(10%K値)は10020N/mm2であった。
2−2.導電性金属層の形成
(実施例1)
基材粒子(1)に、水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング処理を施し、その後、二塩化スズ溶液に接触させた後、二塩化パラジウム溶液に浸漬させること(センシタイジング−アクチベーション法)により、パラジウム核を形成させた。次に、パラジウム核を形成させた基材粒子10gをイオン交換水5000mLに添加し、超音波照射により十分に分散させた。得られた基材粒子の懸濁液を70℃に加熱し攪拌しながら、該懸濁液の中に、70℃に加熱した乳酸52.2g/L、リンゴ酸10.0g/L、硫酸ニッケル110.0g/L、次亜リン酸ナトリウム230g/L(pH4.6に調整)を含む無電解ニッケル液460mLを徐々に添加して、基材粒子(1)の無電解ニッケルメッキを行った。水素ガスの発生が停止したことを確認した後、さらに液温を70℃に保持しながら60分間攪拌した。その後、固液分離を行い、イオン交換水で洗浄することにより、基材粒子(1)の表面をニッケル系金属層(Ni層)で被覆したニッケルメッキ粒子を得た。
次いで、5g/Lのシアン化金カリウム、12g/Lのクエン酸三ナトリウム、10g/Lのエチレンジアミン4酢酸4ナトリウムを含有する置換金メッキ液1000mLに得られたニッケルメッキ粒子10gを加え、70℃で置換金メッキを行った。得られたニッケル・金メッキ基材粒子を濾別し、イオン交換水で洗浄した後、さらにメタノールで洗浄し、100℃で12時間真空乾燥を行い、導電性微粒子(1)を得た。
得られた導電性微粒子におけるニッケル系金属層(第1金属層)の厚さ及び貴金属層(第2金属層)の厚さを測定したところ、表1に示す通りであった。
(実施例2)
実施例1において、ニッケルメッキ液量を210mLに、置換金メッキ液量を290mLにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、ニッケル・金メッキを施した導電性微粒子(2)を得た。
得られた導電性微粒子におけるニッケル系金属層(第1金属層)の厚さ及び貴金属層(第2金属層)の厚さを測定したところ、表1に示す通りであった。
(実施例3)
実施例1において、基材粒子(4)を用い、ニッケルメッキ液量を350mLに変更した以外は同様にして、ニッケルメッキ粒子を得た。次いで、3g/Lの塩化パラジウム、10g/Lのエチレンジアミン、13g/Lの次亜リン酸ナトリウムを含有する無電解パラジウムメッキ液600mLに、得られたニッケルメッキ粒子10gを加え、60℃で無電解パラジウムメッキを行ったこと以外は実施例1と同様にして、ニッケル・パラジウムメッキを施した導電性微粒子(3)を得た。
得られた導電性微粒子におけるニッケル系金属層(第1金属層)の厚さ及び貴金属層(第2金属層)の厚さを測定したところ、表1に示す通りであった。
(実施例4)
実施例1において、基材粒子(2)を用い、ニッケルメッキ液量を370mLに、置換金メッキ液量を710mLに変更した以外は実施例1と同様にして、ニッケル・金メッキを施した導電性微粒子(4)を得た。
得られた導電性微粒子におけるニッケル系金属層(第1金属層)の厚さ及び貴金属層(第2金属層)の厚さを測定したところ、表1に示す通りであった。
(比較例1)
実施例1において、ニッケルメッキ液量を370mLに、置換金メッキ液量を170mLに変更した以外は実施例1と同様にして、ニッケル・金メッキを施した導電性微粒子(5)を得た。
得られた導電性微粒子におけるニッケル系金属層(第1金属層)の厚さ及び貴金属層(第2金属層)の厚さを測定したところ、表1に示す通りであった。
(比較例2)
実施例1において、基材粒子(2)を用い、ニッケルメッキ液量を140mLに、置換金メッキ液量を360mLに変更した以外は実施例1と同様にして、ニッケル・金メッキを施した導電性微粒子(6)を得た。
得られた導電性微粒子におけるニッケル系金属層(第1金属層)の厚さ及び貴金属層(第2金属層)の厚さを測定したところ、表1に示す通りであった。
(比較例3)
実施例1において、基材粒子(3)を用い、ニッケルメッキ液量を270mLに、置換金メッキ液量を310mLに変更した以外は実施例1と同様にして、ニッケル・金メッキを施した導電性微粒子(7)を得た。
得られた導電性微粒子におけるニッケル系金属層(第1金属層)の厚さ及び貴金属層(第2金属層)の厚さを測定したところ、表1に示す通りであった。
3.異方性導電材料の作製と評価
実施例および比較例で得られた導電性微粒子を用い、下記の方法で異方性導電材料(異方性導電フィルム)を作製し、その接続抵抗を下記の方法で評価した。評価結果は表1に示す。
すなわち、導電性微粒子1部に、バインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学社製「JER828」)100部と、硬化剤(三新化学社製「サンエイド(登録商標)SI−150」)2部と、トルエン100部とを加え、さらにφ1mmのジルコニアビーズ50部を加えて、ステンレス鋼製の2枚攪拌羽根を用いて300rpmで10分間攪拌して分散させ、得られたペースト状組成物を剥離処理を施したPETフィルム上にバーコーターにて塗布して乾燥させることにより、異方性導電フィルムを得た。
得られた異方性導電フィルムを、抵抗測定用の線を有した全面アルミ蒸着ガラス基板と30μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板との間に挟みこみ、2MPa、190℃の圧着条件で熱圧着した後、電極間の初期抵抗値を測定した。初期抵抗値が3Ω未満の場合を「◎」、3Ω以上5Ω未満の場合を「○」、5Ω以上の場合を「×」と評価した。また、このときにショート発生の有無も併せて確認した。