JP2013122414A - 非破壊検査システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非破壊検査システム100は、ハンドリングロボット11でワーク1の検査すべき異種金属材料の重ね接合部を所定の位置と角度に設定する。所定の波形のレーザ光を重ね接合部の表面に照射し、赤外線カメラ3により撮影し、データ処理装置4に赤外線画像を取得する。取得された赤外線画像に基づいて、データ処理装置4で取得された赤外線画像の画素ごとにフーリエ変換し、コンソール装置5にて位相画像を生成する。生成された位相画像に基づいて接合の良否を判定する。この非破壊検査の際に、レーザ光出射直後の赤外線画像の強度に基づいて近傍の縦壁による反射が大きいか否かを判定し、レーザ光の光軸と検査部位の表面とのなす角を微調整して、ノイズの少ない赤外線画像を取得する。
【選択図】図1
Description
そして、特許文献1には、そのような異種金属の接合方法及び接合構造が記載されている。
また、特許文献2には、材料接合部の非破壊試験方法として、材料接合部の溶融部と溶融部を囲む非溶融部に対して、時間的に、例えば、矩形波のパルス状又は正弦波状に所定の周期で加熱して、材料接合部を透過した熱画像(本願発明の「赤外線画像」に対応)を取得して、溶融部の有無を検出する技術が記載されている。
しかしながら、異種金属の重ね接合部おいて確実に金属接合された強度の高い接合状態になっていることを非破壊検査で精度良く検査する技術が確立されていなかった。
被検査体を搬送及び把持する被検査体取扱装置と、被検査体取扱装置を制御して被検査体を、重ね接合部の表面を加熱照射源及び赤外線カメラに対して所定の位置及び向きに設定する検査位置制御手段と、加熱照射源からの加熱光の照射制御をする加熱制御手段と、加熱制御手段からの予め設定された所定の波形の加熱に基づいて赤外線カメラにより取得された赤外線画像を取得する赤外線画像取得手段と、取得された赤外線画像の単位画素ごとの輝度に基づいて赤外線の量と位相を演算処理して取得し、さらに位相画像を生成する位相画像取得手段と、取得された位相画像に基づいて予め設定された所定の判定値より大きい位相遅れの領域が重ね接合部にあるか否かを判定する良否判定手段と、を備え、赤外線画像取得手段が、予め設定された所定の波形の加熱に基づいて赤外線カメラにより取得された赤外線画像のうちの加熱の初期に取得された赤外線画像の赤外線強度が、予め決められた強度閾値を超えたときに、検査位置制御手段は、当該の重ね接合部の表面の加熱照射源及び赤外線カメラに対しての所定の位置を保ったまま当該の重ね接合部の向きを調整し、その後、再度、加熱手段は加熱光を照射し、赤外線画像取得手段は赤外線画像を取得することを特徴とする。
また、赤外線カメラにより取得された赤外線画像の単位画素ごとの輝度の時間推移を、位相画像取得手段が演算処理し、精度の良い位相画像を取得することができ、接合の良否判定が容易にできる。
さらに、赤外線画像取得手段が、予め設定された所定の波形の加熱に基づいて赤外線カメラにより取得された赤外線画像のうちの加熱の初期に取得された赤外線画像の赤外線強度が、予め決められた強度閾値を超えたときに、検査位置制御手段は、当該の重ね接合部の表面の加熱照射源及び赤外線カメラに対しての所定の位置を保ったまま当該の重ね接合部の向きを調整し、その後、再度、加熱手段は加熱光を照射し、赤外線画像取得手段は赤外線画像を取得する。従って、例えば、重ね接合部の近傍に縦壁があり、加熱照射源からの加熱光が重ね接合部の表面で乱反射して、被検査体の重ね接合部の近傍にある従壁に反射して赤外線カメラへ入射したり、重ね接合部の一方側の表面への加熱照射源からの加熱光が縦壁に反射して重ね接合部の一方側の表面に入射し、その後一方側の表面からの放射エネルギとして赤外線カメラへ入射したりすることにより発生するノイズが赤外線画像の精度に影響を与える場合に、そのような赤外線画像へのノイズを低減した非破壊検査ができる。
図1は、非破壊検査システムの全体概要を示すブロック構成図と、非破壊検査システムで取り扱う被検査体を検査する検査室等の内部の側面模式図であり、図2は、図1で示した検査室の内部の平面配置図例である。ちなみに、図1では、図2の平面配置図と対応させたものではなく、検査室20内を図2で左方向に回り込みながら周方向に見えるものを平面視に展開して表示してある。
なお、1つのワーク1に対して、線状の検査部位が1つのみとは限られるものではなく、複数個所存在することが多い。また、線状の検査部位は必ずしも直線状であることに限定されるものではなく、曲線状である場合もある。
以下では、説明の簡単化のため一つの検査部位についての非破壊検査の方法について説明する。
ハンドリングロボット11は、前記した検査部位の各検査部分の表面を所定の予め設定された距離及び所定の角度に設定制御をするために、例えば、コントローラ11aに予め入力された一連の作業指令に基づき、ワーク1の所定の被把持部を把持しながら、ワーク1の位置や把持する角度を制御する。
検査室20に隣接して、被検査体受け渡し室21が設けられ、検査室20と被検査体受け渡し室21とは、シャッタ駆動部17で、例えば、上下方向に駆動される可動式の遮光用のシャッタ26で間仕切り可能になっている。ワーク1の検査中は、シャッタ26は降ろされ、検査室20内では、赤外線カメラ3に赤外線の外乱が入射されないようにされる。
検査システム制御装置13は、コントローラ11aに予め入力された一連の作業指令に基づき、ワーク1の所定の被把持部をハンドリングロボット11に把持するようにコントローラ11aを介してして指令する。そして、検査システム制御装置13は、前記予め入力された一連の作業指令に基づき、予め設定された所定の順に、「検査部位の或る検査部分のレーザ光射出部2と赤外線カメラ3に対する位置及び角度(向き)を固定して検査」→「検査部位を次の検査部分まで所定量移動」→「検査部位の次の検査部分のレーザ光射出部2と赤外線カメラ3に対する位置及び角度を固定して検査」というように検査部位の一連の始点から終点までの各検査部分に対する検査作業を、コントローラ11aを介してハンドリングロボット11に繰り返させる。
この3種類の一連の作業指令は、(1)検査部位の各検査部分の表面をレーザ光射出部2と赤外線カメラ3に対して所定の予め設定された距離を保ったまま、例えば、検査部位の移動方向から見てレーザ光の光軸に対する検査部位の各検査部分の表面とのなす角度が直角(基準の角度(図6の(b)で「0°」と表示)の状態で前記した検査部位の一連の始点から終点までの各検査部分に対する検査作業を実行するプログラムPAと、(2)基準の角度(図6の(b)で「0°」表示)に対して、検査部位の移動方向から見て、所定の角度、例えば、+2°変更した状態で前記した検査部位の一連の始点から終点までの各検査部分に対する検査作業を実行するプログラムPBと、(3)所定の角度、例えば、−2°変更した状態で前記した検査部位の一連の始点から終点までの各検査部分に対する検査作業を実行するプログラムPCとである。
ここで、プログラムPA,PB,PCが特許請求の範囲に記載の「検査部位走査プログラム」に対応する。
ちなみに、検査システム制御装置13は、例えば、画像処理機能を有した、制御用計算機であり、その記憶装置に非破壊検査システム100を統括制御するプログラムを予め格納され、そのプログラムを実行することで検査システム制御装置13の統括制御機能を実現する。
ここで、検査システム制御装置13、コントローラ11aは、特許請求の範囲に記載の「検査位置制御手段」を構成する。
このレーザ光調光部6に制御されたレーザ光強度の所定の波形が、特許請求範囲に記載の「予め設定された所定の波形」に対応する。このレーザ光強度の所定の波形は、重ね接合部35における少なくとも異種金属材料の種類及びその厚さに基づいて、重ね接合部35の異種金属材料間の境界部分を通過して深く熱伝導した後に、加熱側の表面に戻って放射される放射エネルギ(内部伝熱後の戻りエネルギ)が接合の良否を判定に用いられるのに適切なものになるように、所定の波形を適宜設定する。これは、検査を開始する前に、例えば、品質保証担当の検査技術者が予め試行実験を行い、前記した所定の波形を容易に設定することができる。
なお、所定の波形とは、波形の高さ(レーザ光強度)、波形時間的長さ、前記した矩形波パルス状、階段状に増加してその後減少するステップ増減矩形波形状、正弦波状、三角波状、台形波状等の波形の形状を全て含んで意味している。このレーザ光強度の所定の波形は、検査技術者がコンソール装置5に後記する入力部51(図5参照)を用いて入力することにより設定される。
データ処理装置4、コンソール装置5については、その機能を図5の説明の中で詳細に説明する。
摩擦撹拌接合法を重ね合わせ接合に用いる場合のツールは、例えば、図4に示すように円柱体形状の先端部41の先端にプローブ42を有し、先端部41の下面外周側にショルダ41aを形成している。そして、ツールを回転させながら異種金属材料側に押圧し、フランジ部1a(図3参照)に沿って水平方向にツールを移動させることによって摩擦撹拌接合法による重ね接合部35(図3参照)が線上に所望の長さだけ形成される。
なお、ツールの円柱体形状の先端部41のプローブ42の形状は、重ね合わせ接合される異種金属材料の種類や厚さに応じて適宜選択されるものである。
攪拌領域45の接合界面45aの両側には、摩擦撹拌接合時に先端部41のショルダ41aが当接して攪拌したショルダ部45bが形成され、メッキ層46、電着塗装された塗装材47が残っている。従って、ショルダ部45bでは、アルミニウム合金部材31と鋼板33とは接合されていない。
なお、攪拌領域45の下端側の接合界面45a及びショルダ部45bの内、少なくとも接合界面45aには、シール部材32が存在せず、外側に押し出され、好ましくは両方の領域にはシール部材32が存在せず、外側に押し出されることが好ましい。
ちなみに、攪拌領域45の表面側には、アルミニウム合金部材31の重ね接合部35ではない表面とでは色や光沢が異なる表面痕65が形成される。
次に、図5から図7を参照しながらデータ処理装置4、コンソール装置5について詳細に説明する。図5は、図1における赤外線ロックイン・サーモグラフィを用いた非破壊検査データ処理装置の詳細ブロック構成図である。図6は、被検査体の重ね接合部の表面にレーザ光が照射される角度を調整する説明図であり、(a)は、赤外線カメラに縦壁の反射光が入射することの説明図、(b)は、赤外線カメラに縦壁の反射光が入射するのを防ぐために、被検査体の重ね接合部の表面角度の設定変更の概念説明図である。図7は、重ね接合部の表面にレーザ光を照射し、表面から放射される放射エネルギの時間変化を赤外線画像で取得する赤外線ロックイン・サーモグラフィの原理の説明図であり、(a)は、レーザ光照射、レーザ光による表面部分の加熱による放射エネルギ(表面放射エネルギ)、レーザ光による加熱が内部まで伝わり、その後表面に戻ってきて放射される放射エネルギ(内部伝熱後の戻りエネルギ)の熱伝導度の差異による位相差の発生の説明図、(b)は、レーザ光照射のタイミングと赤外画像のサンプリングタイミングとを示すタイムチャートである。図7では、レーザ光の波形は、例示的に矩形波で示してあり、適宜設定されるものである。
コンソール装置5は、例えば、パーソナルコンピュータ又はエンジニアリングコンピュータであり、機能部として制御部(良否判定手段)5a、位相画像演算部(位相画像取得手段)5b、記憶部(位相画像取得手段)5cを有するとともに、キーボードやマウス等の入力部51、カラー液晶表示装置等の表示部52、カラープリンタ装置等の出力部53を有している。
画像処理制御部4aは、コンソール装置5の制御部5aからの前記した予め設定された所定の波形に対応した加熱制御指令によって、レーザ光調光部6がレーザ光射出部2を制御して、レーザ光射出部2からレーザ光の強度が所定の波形のレーザ光を出力する。例えば、所定の波形として矩形波が設定された場合の例で説明すると、レーザ光調光部6は、画像処理制御部4aからの加熱制御指令に従って、レーザ光射出部2からレーザ光を所定の時間幅T1(図7参照)だけ出力させる。
このとき、所定の取得総枚数N1分の取得された赤外線画像は、各画素(ピクセル)に対して輝度をデジタル化して、画像取得部4bのメモリに一時記憶される。ここで、「画素」が、特許請求の範囲に記載の「単位画素」に対応する。
所定枚数N1Bは、期間T2内から所定の時間遅れΔTを差し引いた時間内に周期T3で取得できる赤外線画像の枚数である。
ちなみに、期間T2の初期の所定枚数N1Aの赤外線画像は、前記した期間T2の初期の所定の時間遅れΔT後の所定枚数N1Bの赤外線画像には含まれない赤外線画像であり、加熱制御指令をトリガ信号として画像取得部4bで取得された初期のものである。
また、所定の時間遅れΔT及び所定枚数N1Bは、所定の波形のレーザ光により加熱されて、重ね接合部35における少なくとも異種金属材料の種類及びその厚さに応じて、重ね接合部35の異種金属材料間の境界部分を通過して深く熱伝導した後に、加熱側の表面に戻って放射される放射エネルギ(内部伝熱後の戻りエネルギ)に基づく赤外線画像が、接合の良否を判定に用いられるのに適切なものになるように、適宜設定される。
この所定の時間遅れΔT及び所定枚数N1Bも、検査を開始する前に、例えば、品質保証担当の検査技術者が予め試行実験を行い容易に設定することができ、検査技術者がコンソール装置5に入力部51(図5参照)を用いて入力することにより設定される。
なお、画像処理制御部4aは、画像取得部4b及び高速フーリエ変換部4cにおいて、ワーク1の検査部位の検査部分ごとに識別子を付して、データ処理させる。
また、画像処理制御部4aは、検査システム制御装置13に通信回線を介して、当該検査部位の始点から終点に対するそれまでの検査が不適切であるとの信号を送信して、検査システム制御装置13からコントローラ11aに、「当該検査部位の或る検査部分のレーザ光射出部2と赤外線カメラ3に対する位置及び角度(向き)を固定して検査」→「検査部位を次の検査部分まで所定量移動」→「検査部位の次の検査部分のレーザ光射出部2と赤外線カメラ3に対する位置及び角度を固定して検査」というように検査部位の一連の始点から終点までの各検査部分に対する検査作業を、コントローラ11aを介してハンドリングロボット11に繰り返させる一連の作業指令(プログラム)を、現在その検査部位に対して用いているプログラムを、例えば、標準のプログラムPAからプログラムPBに切り替えさせる。もし、現在その検査部位に対して用いているプログラムが、例えば、プログラムPBの場合は、プログラムPBからプログラムPCに切り替えさせる。
その後、高速フーリエ変換部4cは、所定枚数N1Bの赤外線画像の画素ごとに所定枚数N1B間で、短時間フーリエ変換の高速フーリエ変換演算をし、各画素の輝度の短時間フーリエ変換した結果を、コンソール装置5の記憶部5cの短時間フーリエ変換結果記憶領域に記憶させる。そして、高速フーリエ変換部4cは、前記した短時間フーリエ変換の演算が終了したことを、画像処理制御部4aを介して制御部5aへ通知する。画像処理制御部4aは、短時間フーリエ変換の演算が終了した通知を受け、画像取得部4bに対して一時記憶された所定の取得総枚数N1分の赤外線画像を消去させる。
つまり、本実施形態の高速フーリエ変換部4cでは、通常の短時間フーリエ変換のような周波数分析をし、画素ごとの輝度(赤外線の量)の時間推移に対する位相(赤外線の位相)の解析を行う演算処理をする。
この高速フーリエ変換部4cによる画素ごとの輝度の時間推移に対する位相の解析を行う演算処理が、特許請求の範囲に記載の「赤外線画像の単位画素ごとの輝度に基づいて赤外線の量と位相を演算処理して取得」に対応する。
これで、被検査体の検査部位の一連の検査部分のうちの1つの各検査部分の赤外線ロックイン・サーモグラフィの演算処理が終わる。
また、当該検査部位の始点からそれまでの検査部分に対するそれまでの検査が不適切であると判定されるまでに、当該査部位の一部に対して接合の良否の判定が既に位相画像に基づいて行われていた場合には、その接合の良否の判定結果も消去される。
コンソール装置5の制御部5aは、入力部51からの入力により前記したレーザ光射出部2から出力させる所定の波形の強度のレーザ光、例えば、図7に示した例では、矩形波状の強度のレーザ光の所定の時間幅T1の設定、所定の周期T3、前記した第1の画像取得制御指令の入力設定に対応する所定の取得総枚数N1(又は期間T2)の設定、前記した第2の画像取得制御指令の入力設定に対応する初期輝度判定用に用いる所定枚数N1Aの赤外線画像の取得の開始と終了のタイミングの設定(所定の取得総枚数N1の何枚目から何枚目までを用いるかの設定)、判定値である強度閾値の設定、前記した第3の画像取得制御指令の入力設定に対応する時間遅れΔT及び所定枚数N1Bの設定、短時間フーリエ変換の演算処理後に着目する特定の周波数ωの設定等を行い、前記設定されたパラメータの内の必要なものをデータ処理装置4の画像処理制御部4aに入力する機能を有する。
短時間フーリエ変換の演算処理後に着目する特定の周波数ωの値は、所定の波形のレーザ光により加熱されて、重ね接合部35における少なくとも異種金属材料の種類及びその厚さに応じて、重ね接合部35の異種金属材料間の境界部分を通過して深く熱伝導した後に、加熱側の表面に戻って放射される放射エネルギ(内部伝熱後の戻りエネルギ)に基づく赤外線画像が、接合の良否を判定に用いられるのに適切なものになるように、適宜設定されるものである。
そして、制御部5aは、記憶部5cの位相画像を読み出し、入力部51から予め設定入力された判定基準の位相遅れ(所定の判定値)BSTD(図12参照)に基づいて、検査部位の各検査部分の異種金属材料の重ね接合の良否を判定し、出力部53にカラー画像の位相画像とともに出力する。
フランジ部1aの重ね接合部35が縦壁31bに接近している場合は、レーザ光61による照射部分61aが縦壁31bの下部に当たり、それが縦壁31bで反射して重ね接合部35の表面31aに入射し、その後に表面反射光として赤外線カメラ3に入射する場合も、赤外線画像の取得が正常に行われていないと判定することとする。
この場合においては、例えば、レーザ光61が縦壁31bで反射して重ね接合部35の表面31aに入射すると、重ね接合部35の表面31aが均一にレーザ光61により加熱されないことになり、内部伝熱後の戻りエネルギの表面分布を正確に表さないからである。
以下では、このような検査部位の近傍の縦壁31bによる内部伝熱後の戻りエネルギの表面分布を正確に表さないでノイズとなる効果を、単に「検査部位近傍の縦壁による反射による赤外線画像へのノイズ」と称する。
そのように判定された場合、検査システム制御装置13は、ワーク1Aを、縦壁31bからの反射が少なくなるように図6の(b)に示すように検査部位の移動方向から見た角度を直角(図6の(b)中「0°」で表示)のものを、所定の角度、例えば、+2°側に検査部位の表面を傾けるようにコントローラ11aに指令を出して、当該検査部位の一連の始点から終点までの検査部分の赤外線画像の取得をやり直させる。
ステップS03では、コントローラ11aは、検査部位の始点にワーク1を移動し、ワーク1の向きを検査部位の表面がレーザ光61の光軸に対して移動方向から見て直角になるように設定する。
ステップS04では、データ処理装置4の画像処理制御部4aは、加熱制御指令をレーザ光調光部6に出力し、レーザ光射出部2、レーザ光調光部6が、加熱制御指令に従い、所定の波形のレーザ光61の照射を開始する。
ステップS05では、画像取得部4bが、画像処理制御部4aからの第1の画像取得制御指令に基づき、加熱制御指令をトリガとして、所定の周期T3で赤外線画像を所定の枚数N1枚取得する。具体的には、画像取得部4bが、加熱制御指令をトリガとして、期間T2(図7参照)の間にN1枚の赤外線画像を取得して、画像取得部4bのメモリに一時記憶する。
ステップS07では、画像処理制御部4aは、画像取得部4bのメモリに一時記憶された所定枚数N1の内の初期の所定枚数N1Aの赤外線画像を読み出し、その後で各赤外線画像に対して各画素の輝度を積算して全体の輝度をそれぞれ演算し、その後に所定枚数N1A分の平均の赤外線画像の全体の輝度(赤外線強度)を算出する(「レーザ光の照射直後の赤外線画像全体の輝度を演算」)。
ステップS08では、画像処理制御部4aは、全体の輝度が輝度閾値(強度閾値)以上か否かをチェックする。全体の輝度が輝度閾値以上の場合(Yes)は、検査システム制御装置13にその旨の判定結果信号を出力し、結合子(A)に従って、図9のステップS11へ進み、全体の輝度が輝度閾値未満の場合(No)は、ステップS09へ進む。
ちなみに、この所定量だけ移動は、図10の(b)に示すように重ね接合部35の表面痕65を連続して検査できるようにレーザ光61の照射部分61aが隙間無く接続するか、一部移動方向で重複するような移動量である。
ステップS12では、画像処理制御部4aは、当該検査部位のステップS05において取得された赤外線画像を画像取得部4bのメモリから消去する。また、当該検査部位の一連の検査部分(照射部分61aに対応する部分)の高速フーリエ変換部4cで演算された短時間フーリエ変換の演算結果で、通信回線を通じてコンソール装置5の記憶部5cに記憶されたもの、短時間フーリエ変換の演算結果を用いて、位相画像演算部5bにおいて演算して得られ、記憶部5cに記憶された当該検査部位の位相画像をも消去させる(「当該検査部位のそれまでに取得した赤外線画像等を消去」)。このとき、コンソール装置5の表示部51にその旨のメッセージを表示させると都合が良い。また、その旨の処理をしたログ記録を記憶部5cに記録させると都合が良い。
また、検査時のレーザ光61の光軸と検査部位の表面とのなす角を微小調整するためにワーク1を保持するプログラムを、検査部位の移動方向から見てレーザ光61の光軸と検査部位の表面とのなす角を直角の場合のプログラム(プログラムPA)に対して、予め所定の値の+−の値としたプログラム(プログラムPB,PC)を作成して、コントローラ11aに登録しておくことで、容易に切り替えて非破壊検査ができ、検査工程の戻り処理や、ハンドリングロボット11の検査プログラムをその都度チューニングするような時間的ロスを無くし、効率の良い正確な検査ができる。
ここでは、非破壊検査のためにレーザ光61の照射部分61aの移動が、重ね接合部35の攪拌領域45の表面痕65に沿って、一部重なって連続的につながるようには表示されていないが、重ね接合部35が十分に長い場合は、このような検査でも良いが、重ね接合部35が短い場合は、レーザ光61の照射部分61aは、一部重なって連続的につながるようにすることが接合強度を確保する点で望ましい。ちなみに、図10の(b)における「始点側」は、摩擦攪拌接合の開始側を意味し、「終点側」は、摩擦攪拌接合の終端側を意味する。
このようにすることで、重ね接合部35の非破壊検査の効率向上が図れるとともに、ワーク1のフランジ部1a(図3参照)のような狭い領域の検査部位の各検査部分にレーザ光61を照射して、検査部位以外にレーザ光61が照射されて赤外線カメラ3で検査部分の表面からの放射エネルギを正確に測定するのを阻害することを防止する点でも好都合である。
ちなみに、図1、図2、図5、図10の(a)における赤外線カメラ3は、模式的に検査部位の表面を斜めから撮影しているように図示化してあるが、レーザ光射出部2に近い光軸で、可能な限り検査部位の表面に対して垂直方向に近い光軸で撮影することが赤外線画像で検査部位の表面から放射される放射エネルギをより正確に測定する上で好ましい配置である。
また、レーザ光射出部2の光学系は、レーザ光61の照射部分61aの上面から見た平面形状が表面痕65の幅方向をカバーする、例えば、円形状とする。
そして、赤外線カメラ3の画角63(図10の(a)参照)は、照射部分61aよりも広い余裕を取った範囲を撮影画像の視野とするものに設定することが好ましい。
重ね接合部35の幅Aで、長手方向の所定の長さ、例えば、長さLBの矩形に含まれる全画素(ピクセル)の平均位相遅れを位相画像に基づいて算出し、その平均位相遅れの値が判定基準の平均位相遅れの値よりも位相遅れが大きいとき良好な金属接合となっていないと判定するようにしても良い。
なお、平均位相遅れの値を算出する矩形の重ね接合部35の幅方向の長さは、重ね接合部35の幅Aと限定されるものではなく、それよりも小さい値として、重ね接合部35の幅A方向に複数の前記矩形を設定して、それぞれの矩形における平均位相遅れを算出して良好な金属接合か否かの判定に用いても良い。
また、検査システム制御装置13は、監視カメラ15A,15Bからのカメラ画像により、ワーク1の検査部位の表面痕65をアルミニウム合金部材31の重ね接合部35ではない表面と区別して検出して、検査部位の公差に応じて、レーザ光射出部2と赤外線カメラ3に対する位置を予め入力された一連の作業指令による位置から補正するようにしても良い。
なお、ワーク1の距離や角度を検出するために、少なくとも監視カメラ15A,15Bの2台を用意し、三角法でワーク1の距離や角度を検出することは容易に公知のカメラ画像認識プログラムで実行できる。
本実施形態では、高速フーリエ変換部4cは、画像取得部4bのメモリに一時記憶された周期T3のN1B回分の赤外線画像を読み出して、各画素の輝度の短時間フーリエ変換した結果を、コンソール装置5の記憶部5cの短時間フーリエ変換結果記憶領域に記憶させるとしたがそれに限定されるものではない。
検査部位の検査部分に対してレーザ光を前記した所定の波形で一回のみの照射ではなく、期間T2の周期でN2回行なうようにしても良い(図7における仮想線で示した時間幅T1の矩形波のレーザ光の照射を参照)。その場合、先ず、画像処理制御部4aは、画像取得部4bに一時記憶されたN1×N2回分の赤外線画像の内の期間T2の初期の所定枚数N1AのN2回分の赤外線画像を読み出して、N1A×N2枚の各赤外線画像に対して画素ごとの輝度を積算し、1枚分の全体の赤外線の輝度を積算演算し、その後にN1A×N2枚の平均の全体の輝度を算出して、ステップS08において全体の輝度が輝度閾値(強度閾値)以上か否かのチェックに用いる。
その後、ステップS08において全体の輝度が輝度閾値(強度閾値)未満の場合は、画像処理制御部4aは、高速フーリエ変換部4cに画像取得部4bに一時記憶されたN1B×N2回分の赤外線画像を読み出させて、N1B×N2枚の赤外線画像の所定の予め設定された範囲に対して、N2回分のレーザ光の発光に対して、所定の時間遅れΔT後の同一のタイミングに取得された赤外線画像の各画素の輝度のデジタル値を平均化処理し、N1B枚の所定の周期T3の赤外線画像を生成する。
このように、期間T2の周期でN2回レーザ光を照射して赤外線画像を取得し、N1B×N2枚の赤外線画像から同一タイミングのN1B回分の積算平均の赤外線画像を生成してから位相画像を生成することによって、ノイズを低減することができ、精度の良い位相画像を得ることができる。
2 レーザ光射出部(加熱照射源)
3 赤外線カメラ
4 データ処理装置(位相画像取得手段)
4a 画像処理制御部(加熱制御手段)
4b 画像取得部(赤外線画像取得部)
4c 高速フーリエ変換部(位相画像取得手段)
5 コンソール装置
5a 制御部(良否判定手段)
5b 位相画像演算部(位相画像取得手段)
5c 記憶部(位相画像取得手段)
6 レーザ光調光部(加熱制御手段)
11 ハンドリングロボット(被検査体取扱装置)
11a コントローラ(検査位置制御手段)
13 検査システム制御装置(検査位置制御手段)
15A,15B 監視カメラ(検査位置制御手段)
17 シャッタ駆動部
20 検査室
21 被検査体受け渡し室
21a 被検査体受け渡し室外板
23A 被検査体受け取り台
23B 被検査体払い出し台
26 シャッタ
31 アルミニウム合金部材(異種金属材料)
32 シール部材
33 鋼板(異種金属材料)
35 重ね接合部
45 攪拌領域
45a 接合界面
51 入力部
52 表示部
53 プリンタ
61 レーザ光(加熱光)
61a 照射部分
63 画角
65 表面痕
100 非破壊検査システム
BSTD 判定基準の位相遅れ(所定の判定値)
T2 期間(所定の第1の周期)
T3 周期(所定の第2の周期)
Claims (4)
- 異種金属材料の重ね接合部に対して、その一方側の表面へ加熱照射源からの予め設定された所定の波形の加熱を行い、
前記所定の波形の加熱による前記一方側の表面からの放射エネルギに対し、赤外線カメラにより所定の周期で赤外線画像を取得し、
取得された前記赤外線画像の単位画素ごとの輝度に基づいて赤外線の量と位相を演算処理して取得し、
接合の良否を判定する赤外線ロックイン・サーモグラフィによる非破壊検査方法を用いた非破壊検査システムであり、
被検査体を搬送及び把持する被検査体取扱装置と、
前記被検査体取扱装置を制御して前記被検査体を、前記重ね接合部の表面を前記加熱照射源及び前記赤外線カメラに対して所定の位置及び向きに設定する検査位置制御手段と、
前記加熱照射源からの加熱光の照射制御をする加熱制御手段と、
前記加熱制御手段からの前記予め設定された所定の波形の加熱に基づいて前記赤外線カメラにより取得された前記赤外線画像を取得する赤外線画像取得手段と、
取得された前記赤外線画像の単位画素ごとの輝度に基づいて赤外線の量と位相を演算処理して取得し、さらに位相画像を生成する位相画像取得手段と、
取得された前記位相画像に基づいて予め設定された前記所定の判定値より大きい位相遅れの領域が前記重ね接合部にあるか否かを判定する良否判定手段と、
を備え、
前記赤外線画像取得手段が、前記予め設定された所定の波形の加熱に基づいて前記赤外線カメラにより取得された前記赤外線画像のうちの前記加熱の初期に取得された赤外線画像の赤外線強度が、予め決められた強度閾値を超えたときに、
前記検査位置制御手段は、当該の重ね接合部の表面の前記加熱照射源及び前記赤外線カメラに対しての前記所定の位置を保ったまま当該の重ね接合部の向きを調整し、
その後、再度、前記加熱手段は前記加熱光を照射し、前記赤外線画像取得手段は前記赤外線画像を取得することを特徴とする非破壊検査システム。 - 前記被検査体は、前記重ね接合部の近傍に縦壁があり、前記重ね接合部の一方側の表面への前記加熱照射源からの加熱に対する前記一方側の表面からの放射エネルギが前記縦壁に反射して前記赤外線カメラに入射する可能性がある構造であることを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査システム。
- 前記被検査体は、前記重ね接合部の近傍に縦壁があり、前記重ね接合部の一方側の表面への前記加熱照射源からの前記加熱光が前記縦壁に反射して前記重ね接合部の一方側の表面に入射する可能性がある構造であることを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査システム。
- 前記検査位置制御手段は、
前記重ね接合部の表面の前記加熱照射源及び前記赤外線カメラに対しての前記所定の位置を保ったまま前記所定の向きのみを調整する複数の検査部位走査プログラムを予め記憶し、
前記予め設定された波形の加熱のタイミングをトリガとして前記赤外線カメラにより取得された前記赤外線画像のうちの前記加熱の初期に取得された赤外線画像の赤外線強度が、予め決められた強度閾値を超えたときに、
前記予め記憶された複数の検査部位走査プログラムを切り替えて、前記重ね接合部の表面の前記加熱照射源及び前記赤外線カメラに対しての前記所定の位置を保ったまま前記所定の向きのみを調整し、
その後、再度、前記加熱手段は前記加熱光を照射し、前記赤外線画像取得手段は前記赤外線画像を取得することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非破壊検査システム。
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