JP2013117065A - 溶融塩電解によるリチウムの製造方法及びその製造方法に使用する装置 - Google Patents

溶融塩電解によるリチウムの製造方法及びその製造方法に使用する装置 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムを含む処理対象物から、高純度のリチウムを安全かつ低コストで得る方法及びその方法に使用する装置の提供。
【解決手段】リチウムを含む処理対象物から溶融塩電解によりリチウムを製造する方法であって、溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを選択的に溶解させる工程と、前記リチウムが溶解した溶融塩中に一対の電極部材を設け、該電極部材における電位を所定の値に制御することにより、電極部材の一方に溶融塩中に存在するリチウムを選択的に析出させる工程とを備えることを特徴とする溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、溶融塩電解によるリチウムの製造方法及びその製造方法に使用する装置に関する。
近年、携帯電話、ノートブック型パソコン、パームトップ型パソコン、一体型ビデオカメラ、ポータブルCDプレーヤー等の電子機器の小型化、軽量化を図る上で、これらの電子機器の電源としての二次電池が用いられている。
二次電池のなかでも、リチウムイオン二次電池は、従来の鉛蓄電池、ニッカド二次電池等に比較して軽量、高容量、高起電力の優れた二次電池であることから、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器、などに広く使用されている。
このようなリチウムイオン二次電池の正極材料には正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、ニッケルコバルト酸リチウム(LiCo0.3Ni0.7)、マンガン酸リチウム(LiMn24)、チタン酸リチウム(Li4Ti512)、リチウムマンガン酸化合物(LiMyMn2-y4);M=Cr、Co、Ni)、リチウム酸等が用いられており、これらにはリチウムやコバルト等の希少有価物質が含まれている。
現在リチウムは、主にリチウム含有鉱石(スポジューメン、アンブリゴナイト、ペタライト、レピドライト等)、リチウム濃度の高い塩湖や地下かん水から抽出されている。しかしながら、わが国にはリチウム含有鉱石も塩湖もないため、ほとんど全量を輸入に頼っているのが実情である。
そこで、最近では、リチウム電池等のリチウム含有製品の製造工程で発生するリチウム含有廃棄物又使用済みとなって廃棄されるリチウム含有製品等からリチウムを分離、回収する検討が始まっている。
リチウムを回収する方法としては、リチウム二次電池の正極材料であるコバルト酸リチウムを金属リチウムとともに塩化リチウム溶融塩中で還元反応させて酸化リチウムを生成してコバルトまたは酸化コバルトを沈殿分離し、その後に塩化リチウム溶融塩内で酸化リチウムを電解して金属リチウムを陰極に析出させて回収する方法が提案されている(特許文献1特開2005−011698号公報)。
しかしながら、この方法は、処理対象物に含まれるコバルトを還元して分離するために金属リチウムを添加する必要があり、金属リチウムの回収のために金属リチウムを添加するといった工程を採用しているため効率がよくないという問題がある。
また、リチウム二次電池の正極材料であるマンガン酸リチウムに炭素を混合した混合物を、大気雰囲気下、酸化雰囲気下、不活性雰囲気下、および還元雰囲気下のいずれかで焙焼して、リチウムを酸化リチウムとし、この焙焼物を水で浸出することによってリチウムを水酸化リチウムおよび炭酸リチウムとして溶出させてリチウムを回収する方法が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、この方法は、水酸化リチウム、炭酸リチウムの溶解度が大きくないため、回収の効率が悪く、また、水酸化リチウムおよび炭酸リチウムを水に溶出させるために多量の水が必要となり、処理後には多量の廃水が発生するという問題がある。
特開2005−011698号公報 特開2011−094227号公報
本発明は、リチウムを含む処理対象物から、高純度のリチウムを安全かつ低コストで製造する方法及びその方法に使用する装置を提供することを目的とする。
(1)リチウムを含む処理対象物から溶融塩電解によりリチウムを製造する方法であって、
溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程と、
前記リチウムが溶解した溶融塩中に一対の電極部材を設け、該電極部材における電位を所定の値に制御することにより、電極部材の一方に溶融塩中に存在するリチウムを析出させる工程と
を備えることを特徴とする溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(2)前記リチウムを析出させる工程において、前記リチウムは前記電極部材を構成する材料と合金化して析出させることを特徴とする上記(1)に記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(3)前記リチウムを析出もしくは合金化させる工程において、溶融塩中のリチウム単体もしくはリチウム合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(4)前記リチウムを析出もしくは合金化させる工程において、前記電極部材における電位を所定の値に制御し、前記溶融塩中の前記リチウムを選択的に析出又は合金化させることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(5)前記溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程において、
化学的手法によりリチウムを前記溶融塩中に溶解させることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(6)前記溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程において、
前記溶融塩中に、陰極と、前記処理対象物を含む陽極材料からなる陽極とを設け、該陽極における電位を所定の値に制御することにより、前記処理対象物からリチウムを溶融塩中に溶解させることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(7)前記溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程において、
前記溶融塩中のリチウム単体もしくはリチウム合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(8)前記リチウムを溶融塩中に溶解させる工程において、前記陽極における電位を所定の値に制御し、リチウムを選択的に溶融塩中に溶解させることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(9)前記処理対象物はリチウムと遷移金属とを含む材料であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(10)前記処理対象物はリチウムを含む電池用電極材料であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(11)前記溶融塩として塩化物系またはフッ化物系の溶融塩を用いることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(12)前記溶融塩として塩化物系の溶融塩とフッ化物系の溶融塩とを混合した溶融塩を用いることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
(13)溶融塩を内部に保持した容器と、
前記容器の内部に保持された溶融塩に浸漬した陰極と、
前記容器の内部に保持された溶融塩に浸漬され、リチウムを含む導電性の処理対象物を内部に保持した陽極とを備え、
前記陽極は内部と外部との間で前記溶融塩が流通可能になっており、
さらに、
前記陰極と前記陽極における電位を所定の値に制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記電位の値の変更が可能となっている
ことを特徴とする溶融塩電解によるリチウムの製造方法に使用する装置。
(14)リチウムが溶解した溶融塩を内部に保持した容器と、
前記容器の内部に保持された溶融塩に浸漬した陰極と陽極とを備え、
前記陰極と前記陽極における電位を所定の値に制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記電位の値の変更が可能となっている
ことを特徴とする溶融塩電解によるリチウムの製造方法に使用する装置。
本発明により、リチウムを含む処理対象物から、高純度のリチウムを安全かつ低コストで得ることができる。
本発明の装置の構成の一例を説明するための断面模式図である。 本発明を実施する装置の構成の一例を説明するための断面模式図である。 本発明の実施例で用いたアノード電極を説明するための写真である。 実施例におけるアノード電流値と時間との関係を示すグラフである。
本発明に係る溶融塩電解によるリチウムの製造方法は、リチウムを含む処理対象物から溶融塩電解によりリチウムを製造する方法であって、溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程と、前記リチウムが溶解した溶融塩中に一対の電極部材設け、該電極部材における電位を所定の値に制御することにより、電極部材の一方に溶融塩中に存在するリチウムを析出させる工程とを備えることを特徴とする。
すなわち、本発明のリチウムの製造方法は、前記処理対象物に含まれるリチウムを溶融塩中に溶解させるプロセスと、該リチウムが溶解した溶融塩から溶融塩電解により一方の電極(陰極)にリチウムを析出させる工程とから成る。そして本発明の特徴は、リチウムの溶解工程において電極における電位を制御することで、処理対象物からリチウムを選択的に溶解させ、かつ、リチウムの析出工程において電極における電位を所定の値に制御することで、溶融塩中から陰極上にリチウムを選択的に析出させることにより純度の高いリチウムを得ることにある。
まず、処理対象物に含まれるリチウムを溶融塩中に溶解させる工程について説明する。
処理対象物に含まれるリチウムを溶融塩中に溶解させる方法としては例えば化学的手法により溶解させる方法が挙げられる。具体的には、処理対象物を粉砕して粒状、粉状にし、これらと塩とを混合して加熱することにより、処理対象物に含まれるリチウムを溶融塩中に溶解させることができる。また、処理対象物を溶融塩に投入して溶解させてもよい。
また、別の方法としては電気化学的手法が挙げられる。具体的には、処理対象物を含む陽極材料からなる陽極を溶融塩中に設け、該陽極として取り付けた処理対象物における電位の値を制御することによって、処理対象物に含まれるリチウムを選択的に溶解させる。溶融塩電解においては、元素が溶解する電位は元素の種類によって異なる性質があるため、このように処理対象物を陽極として用いて、溶解時の電位を制御することでリチウムを選択的に溶融塩中に溶解させてリチウムを他の金属から分離することができる。
この工程においては、処理対象物すべてを溶解させても良いし、リチウムを含む一部もしくはリチウムのみを溶解させても良い。処理対象物に含まれるリチウム以外の金属が溶解することもあるが、なるべくリチウムのみが溶解するように電位の値を制御することが好ましい。すなわち、前記リチウムを溶融塩中に溶解させる工程においては、前記陽極と前記陰極における電位を所定の値に制御して、リチウムを選択的に溶融塩中に溶解させることが好ましい。これにより、続けて行う析出工程において不純物の持ち込みをより少なくすることができる。
このためには、前記溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程において、前記溶融塩中のリチウム単体もしくはリチウム合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することが好ましい。これにより溶融塩中に溶解させるリチウムと、陽極に残留させる金属元素とを良好に分離することができる。前記標準電極電位の差は0.1V以上であることがより好ましく、0.25V以上であることが更に好ましい。
陽極において制御する電位は、後述するネルンストの式により計算することができる。
前記溶解工程において使用する陰極としては炭素あるいは溶融塩中の陽イオンを構成するLiやNa等のアルカリ金属と合金化しやすい材料を用いる。例えば、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)などを用いることができる。
前記リチウムを含む処理対象物を陽極として使用するには、例えば、金属等による導電性のカゴ(陽極材料)の中に処理対象物を収容して溶融塩中に設ければよい。カゴの上部に開口部を設けて、当該開口部から処理対象物を内部に挿入できるようにし、また、カゴの側壁および底壁に多数の穴を形成して溶融塩がカゴの内部に流入できるようにすればよい。カゴを構成する材料としては、金属線を編むことで形成された網状部材や、シート状の金属板に多数の穴を開けたシート部材など、任意の材料を用いることができる。特に、当該材料としてC、Pt、Mo等を用いるのが有効である。
前記陰極と、前記処理対象物を含む陽極材料かなる陽極(例えば、前記処理対象物を内部に保持した金属製のカゴ)を前記溶融塩中に設け、該両極に外部から電位を制御する制御部を接続し、電位を前述のように制御することで、処理対象物からリチウムを溶融塩中に溶解させることができる。
次の析出工程では、前記リチウムを溶解させた溶融塩中に一対の電極部材を設けて溶融塩電解を行うことによりリチウムを一方の電極部材(陰極)に析出させる。この場合は溶融塩電解で制御する電位の大きさによって、リチウムを選択的に陰極に金属もしくは合金として析出させることができる。
この析出工程においても、前記溶解工程と同様に、溶融塩電解においては元素が金属もしくは合金として陰極に析出する電位は元素の種類によって異なるという性質を利用して、リチウムと他の金属とを分離する。これにより、リチウム以外の金属が溶融塩中に含まれている場合にも、電位を制御することで、リチウムのみを陰極に析出させることができる。これにより高純度のリチウムを得ることができる。
また、リチウムを析出させる場合に、リチウムの溶解・析出電位と溶融塩中に含まれる他の金属の溶解・析出電位との差が小さく、当該金属と分離することが困難な場合には、陰極材料とリチウムとが合金化して析出するように、陰極材料の選択及び電位の制御を行っても良い。これにより、溶融塩中のリチウムをリチウム合金として他の不純物金属と分離し、その後に、リチウムと合金化した陰極材料を用いて、別の溶融塩中にて溶解工程と析出工程を行うことにより高純度のリチウムを得ることができる。
前記析出工程において使用する電極部材としては、例えば、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、グラッシーカーボン(C)等を用いることができる。
本発明は以上のような2つの工程によって、処理対象物からリチウムを分離回収する。なお、本発明においては溶融塩を用いるため、各工程における系の温度が溶融塩の融点以上となるように系を加熱する必要がある。
上記の2つの工程の特徴は電解液として溶融塩を用いることにある。すなわち、溶融塩の種類によって各元素の溶解・析出の電位が異なるという溶融塩電解の性質を利用して、リチウムの溶解・析出電位とリチウム以外の不純物対象となる金属の溶解・析出電位とが充分に離れて処理しやすい値となるように溶融塩を選択して設計することが可能となる。
具体的には、前記リチウムを析出もしくは合金化させる工程において、溶融塩中のリチウム単体もしくはリチウム合金の標準電極電位と他の不純物金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することが好ましい。溶融塩中の前記リチウム単体もしくはリチウム合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差は、0.1V以上とすることがより好ましく、0.25V以上とすることが更に好ましい。
このように、前記リチウムを析出もしくは合金化させる工程においては、前記電極部材における電位を所定の値に制御して、前記溶融塩中の前記リチウムを選択的に析出又は合金化させることが好ましい。
陰極に析出させるリチウムの析出電位は、電気化学的な計算により算出することができる。具体的にはネルンストの式を用いて計算する。
例えば、リチウムイオン(Li)からLi単体を析出させる電位は次の式により求めることができる。
Li=E Li + RT/3F・ln(aLi(I)/aLi(0))・・・式(1)
なお、上記式(1)において、E Liは標準電位を、Rは気体定数を、Tは絶対温度を、Fはファラデー数を、aLi(I)はLiイオンの活量を、aLi(0)はLi単体の活量を、それぞれ意味する。
そして、上記式(1)を、活量係数γLi(I)を考慮して書き直すと、aLi(0)=1なので、以下のような式となる。
Li=E Li+ RT/3F・lnaLi(I)
=E Li + RT/3F・ln(γLi(I)・CLi(I))・・・式(2)
Li=E0’ Li + RT/3F・lnCLi(I) ・・・式(3)
なお、上記式(3)において、CLi(I)はLiイオンの濃度を、E0’ Liは式量電極電位(ここでは、E Li+ RT/3F・lnγLi(I)と等しい)をそれぞれ意味する。
また、同様にLiM合金(Mは合金化する金属)を電極表面に析出させる場合の電位(析出電位:ELiM)は、以下の式に基づいて決定できる。
Li・M=E0’ Li・M+ RT/3F・lnCLi(I) ・・・式(4)
なお、上記式(4)において、E0’ Li・Mは式量電極電位(ここでは、E Li・M+ RT/3F・lnγLi(I)に等しい)を意味する。
同様にして、上記計算式により、全ての析出物に対して溶融塩の種類ごとに、析出電位を求めることができる。前記の陰極にリチウムを析出もしくは合金化させる工程では、このリチウム単体もしくはリチウム合金の析出電位の値を見て、他の金属の単体もしくはその合金の析出電位と充分な電位の差が得られるように溶融塩や陰極材料の選定を行い、リチウムとして析出させるか又はリチウム合金として析出させるかを決定する。
操業における電位は、電極の大きさや位置関係によって変わってくるため、条件出しにより基準となる電位を決めた後に、上記の方法で求めた電位の値と序列に基づいて、各ステップにおいて制御する電位の値を決定する。
上記のように、本発明の溶融塩電解によるリチウムの製造方法では、電位の値を制御することにより、リチウムを電気化学的に溶解・析出させることができる。このため、従来の湿式処理などのように酸などを用いた溶解・抽出といった工程を繰り返す場合よりも工程を簡略化でき、また特定の元素を選択的に分離・回収することができる。更に、溶融塩の比重の調整も不必要であり、リチウムを固体の状態で処理できる低温の溶融塩を選択することで、簡易な装置構成とすることができる。また、操業形態も単純化することが可能である。このため、工程の効率化および低コスト化を図ることが可能である。
本発明に係る溶融塩電解によるリチウムの製造方法において、処理対象物としてはリチウムを含む材料であれば制限はないが、好ましい例としては、リチウム一次電池の負極材料、リチウムイオン二次電池の正極材料を挙げることができる。
前記溶融塩としては、塩化物系の溶融塩またはフッ化物系の溶融塩を用いることができる。また、塩化物系の溶融塩とフッ化物系の溶融塩とを混合した溶融塩を用いることもできる。
塩化物系の溶融塩としては、例えばKCl、NaCl、CaCl2、LiCl、RbCl、CsCl、SrCl2、BaCl2、MgCl2などを用いることができる。またフッ化物系の溶融塩としては、例えばLiF、NaF、KF、RbF、CsF、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2を用いることができる。なお、効率の点から塩化物系の溶融塩を用いることが好ましく、なかでも安価で入手が容易という点から、KCl、NaCl、CaCl2を用いることが好ましい。
また、これらの溶融塩は複数種類の溶融塩を組み合わせて任意の組成の溶融塩として用いることができ、例えばKCl−CaCl2やLiCl−KCl、あるいはNaCl−KClといった組成の溶融塩を用いることができる。
本発明に係る溶融塩電解によるリチウムの製造方法においては、次のような装置を好ましく使用することができる。すなわち、本発明に係る溶融塩電解によるリチウムの製造方法に使用する装置は、溶融塩を内部に保持した容器と、前記容器の内部に保持された溶融塩に浸漬した陰極と、前記容器の内部に保持された溶融塩に浸漬され、リチウムを含み導電性の処理対象物を内部に保持した陽極とを備え、前記陽極は内部と外部との間で前記溶融塩が流通可能になっており、さらに、前記陰極と前記陽極における電位を所定の値に制御する制御部を備え、前記制御部は、前記電位の値の変更が可能となっていることを特徴とする。
また、本発明に係る溶融塩電解によるリチウムの製造方法に使用する装置は、リチウムが溶解した溶融塩を内部に保持した容器と、前記容器の内部に保持された溶融塩に浸漬した陰極と陽極とを備え、前記陰極と前記陽極における電位を所定の値に制御する制御部を備え、前記制御部は、前記電位の値の変更が可能となっていることを特徴とする。
前記本発明の装置を、図1および図2を参照して説明する。図1に示す装置は、溶融塩を内部に保持する容器1と、容器1の内部に保持される溶融塩2と、リチウムを含む処理対象物3を内部に保持するカゴ4と、電極6と、溶融塩2を加熱するためのヒータ10と、カゴ4および電極6と導電線5によって電気的に接続された制御部9とを備えている。
制御部9は、カゴ4を一方の電極(陽極)とし、電極6を他方の電極(陰極)としてこの電極における電位を所定の値に制御することが可能となっている。また、制御部9においては、制御する電圧の値の変更が可能である。ヒータ10は、容器1の周囲を環状に囲むように配置されている。電極6は任意の材料により構成することができるが、例えばアルミニウムを用いることができる。なお、容器1の形状は、底面の円形状あるいは多角形状であってもよい。また、カゴ4としては前述のカゴを用いることができる。
カゴ4と電極6の間には、制御部9により所定の電位の値となるように電位が制御される。これにより処理対象物3からリチウムが溶融塩2中に溶解する。
そして、処理対象物3からリチウムが充分に溶解した後に、カゴ4及び電極6を取り出し、図2に示すように別の電極7(陰極)、電極8(陽極)を溶融塩2中に投入する。この電極7、8はそれぞれ導電線5を介して制御部9と接続している。そして、制御部9から電極7、8における電位を所定の値に制御する。このとき、制御する電圧は、電極7、8の電位差がリチウムの析出電位となるように調整する。これにより溶融塩2中に溶解していたリチウムが電極7(陰極)の表面に析出することになる。電極7、8の材料としては、たとえばグラッシーカーボン(C)を用いることができる。
なお、ヒータ10による溶融塩2の加熱温度は、図1および図2に示した装置での処理のいずれについてもたとえば800℃とすることができる。このようにして、電極7の表面にリチウムを単体として析出させることができる。
なお、前記電極7、8に印加する電圧は、電極7(陰極)の表面にリチウムと陰極材料との合金が析出するように調整してもよい。この場合には、該合金化した電極7を用いて、前述の溶解工程及び析出工程を行えばよい。即ち、新たに図1に示すような装置を用意して、前述の処理対象物3の代わりにリチウムと合金化した電極7を用いればよい。
図1及び図2に示したような装置を用いて本発明によるリチウムの製造方法を実施する場合には、例えば以下のように実施することが考えられる。
まず、処理対象物3としてリチウムを含有するリチウムイオン電池の正極材料を準備し、溶融塩2としてKCl−NaClを準備する。前記正極材料としては例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)又はマンガン酸リチウムを含有する粉体を用いる。前記正極材料を粉砕してカゴ4の内部に配置する。処理の効率を向上させる観点から、処理対象物3である正極材料はできるだけ小さく粉砕することが好ましいが、例えば最大粒径が5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1mm以下となるような粒状に正極材料を粉砕する。そして、電極6として炭素からなる電極を用いて前述の溶解工程を行い、続いて電極7、8としてグラッシーカーボンからなる電極を用いて析出工程を行えばよい。
以上のようにして、処理対象物3としての正極材料からリチウムを回収することができる。
本発明の溶融塩電解によるリチウムの製造方法によれば、従来の湿式の分離方法などに比べて装置構成を簡略化できるとともに処理時間も短くすることができるため、コストを低減することができる。さらに、電極における電位を適切に設定することで、電極表面にリチウムを単体として析出させることができるので、純度の高いリチウムを得ることができる。
[実施の形態]
リチウムを含む処理対象物として市販のリチウムイオン二次電池を用いて、溶融塩電解によりリチウムを製造した。
−試料−
市販のリチウムイオン二次電池(正極にコバルト酸リチウム、負極にグラファイトを使用、コバルト酸リチウム含有量:質量%)
−リチウム電池正極材料の分離−
前記リチウムイオン二次電池を、電解液(5%NaCl)中に浸漬し、0.1mVになるまで放電させた。その後、手分解により正極材料を取り出し、カッターミルを用いて粉砕し平均粒径0.1mmの正極材料粉末を得た。その組成を表1に示す。分析の結果、分離された粉体はコバルト酸リチウムであることが確認された。

前記粉末を、モリブデン(Mo)製の網(200mesh)で包んだ。図3に示すようにMo製の網の内部に保持された試料粉末を、陽極(アノード電極)とした。
−電解装置の準備−
溶融塩としてNaCl−KClの共晶組成の溶融塩を使用し、700℃に加熱して完全に溶融させた。そして、当該溶融塩に、上述したアノード電極と、カソード電極とを配線して浸漬した。陰極(カソード電極)の材料としては炭素を用いた。
−電解溶解工程−
このように溶融塩にアノード電極とカソード電極とを浸漬した状態で、アノード電極を所定の電位に保持した。そして、所定時間経過後、溶融塩からサンプルを採取し、当該サンプルについてICP−AESにより組成分析を行なった。
溶解工程において観察されたアノード電流は、図4に示すような経時変化を示した。なお、図4の横軸は時間(単位:分)を示し、縦軸はアノード電流の電流値(単位:mA)を示す。図4に示すように、電流値は時間が経過するにつれて低下していた。また、電流値の時間変化率は、測定開始時(通電開始時)が最も高く、その後徐々に変化率が小さくなっていく傾向が見られた。
溶融塩から採取したサンプルについて、ICP−AESにより組成分析を行なった結果、当該溶融塩中にリチウムが溶解していることが確認された。
−電解析出工程−:
上記溶解工程の後、溶融塩にグラッシーカーボンからなるカソード電極およびグラッシーカーボンからなるアノード電極を浸漬し、カソード電極の電位を所定の電位に保持した。具体的には、NaCl−KCl系溶融塩においてリチウムが析出するような電位に保持した。そして、所定時間経過後、カソード電極の表面層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
その観察の結果、カソード電極を構成するグラッシーカーボンからなる電極本体部の表面に、リチウムが析出していた。
このように、リチウムを含む正極材料に含まれていたリチウムを回収することができた。
以上、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明はリチウムを含む処理対象物から高純度のリチウムを得る方法に好適に利用することができる。
1 容器
2 溶融塩
3 処理対象物
4 カゴ
5 導電線
6〜8 電極
9 制御部
10 ヒータ

Claims (14)

  1. リチウムを含む処理対象物から溶融塩電解によりリチウムを製造する方法であって、
    溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程と、
    前記リチウムが溶解した溶融塩中に一対の電極部材を設け、該電極部材における電位を所定の値に制御することにより、電極部材の一方に溶融塩中に存在するリチウムを析出させる工程と
    を備えることを特徴とする溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  2. 前記リチウムを析出させる工程において、前記リチウムは前記電極部材を構成する材料と合金化して析出させることを特徴とする請求項1に記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  3. 前記リチウムを析出もしくは合金化させる工程において、溶融塩中のリチウム単体もしくはリチウム合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  4. 前記リチウムを析出もしくは合金化させる工程において、前記電極部材における電位を所定の値に制御し、前記溶融塩中の前記リチウムを選択的に析出又は合金化させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  5. 前記溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程において、
    化学的手法によりリチウムを前記溶融塩中に溶解させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  6. 前記溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程において、
    前記溶融塩中に、陰極と、前記処理対象物を含む陽極材料からなる陽極とを設け、該陽極における電位を所定の値に制御することにより、前記処理対象物からリチウムを溶融塩中に溶解させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  7. 前記溶融塩中に前記処理対象物からリチウムを溶解させる工程において、
    前記溶融塩中のリチウム単体もしくはリチウム合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  8. 前記リチウムを溶融塩中に溶解させる工程において、前記陽極における電位を所定の値に制御し、リチウムを選択的に溶融塩中に溶解させることを特徴とする請求項6又は7に記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  9. 前記処理対象物はリチウムと遷移金属とを含む材料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  10. 前記処理対象物はリチウムを含む電池用電極材料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  11. 前記溶融塩として塩化物系またはフッ化物系の溶融塩を用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  12. 前記溶融塩として塩化物系の溶融塩とフッ化物系の溶融塩とを混合した溶融塩を用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の溶融塩電解によるリチウムの製造方法。
  13. 溶融塩を内部に保持した容器と、
    前記容器の内部に保持された溶融塩に浸漬した陰極と、
    前記容器の内部に保持された溶融塩に浸漬され、リチウムを含む導電性の処理対象物を内部に保持した陽極とを備え、
    前記陽極は内部と外部との間で前記溶融塩が流通可能になっており、
    さらに、
    前記陰極と前記陽極における電位を所定の値に制御する制御部を備え、
    前記制御部は、前記電位の値の変更が可能となっている
    ことを特徴とする溶融塩電解によるリチウムの製造方法に使用する装置。
  14. リチウムが溶解した溶融塩を内部に保持した容器と、
    前記容器の内部に保持された溶融塩に浸漬した陰極と陽極とを備え、
    前記陰極と前記陽極における電位を所定の値に制御する制御部を備え、
    前記制御部は、前記電位の値の変更が可能となっている
    ことを特徴とする溶融塩電解によるリチウムの製造方法に使用する装置。
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