JP2013112541A - 炭化珪素を含む耐火物の製造方法 - Google Patents

炭化珪素を含む耐火物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】気相法を用いずに、低コストで高純度の炭化珪素からなる原料を得た後、この原料を用いて高強度の耐火物を製造する方法を提供する。
【解決手段】アチソン炉を用いて、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しており、かつ、B及びPの各々の含有率が1ppm以下である、シリカとカーボンからなる粒子を加熱して、炭化珪素からなる塊状物を得る、炭化珪素製造工程と、上記炭化珪素からなる塊状物を粉砕して、炭化珪素の粒状物からなる不定形耐火物を得る、不定形耐火物調整工程と、を含む、炭化珪素を含む不定形耐火物の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、アチソン炉を用いて得られる炭化珪素の塊状物を用いた耐火物の製造方法に関する。
炭化珪素は耐熱性、耐摩耗性、及び熱伝導性に優れ、かつ、高強度であることから耐火物の原料として使用されている。
しかし、従来、耐火物の製造に用いられる黒色炭化珪素等の炭化珪素からなる原料は、不純物を多く含むものであった。
また、炭化珪素は高温において酸化されやすく、クリストバライトの生成による体積膨張によって、炭化珪素を含む耐火物に亀裂が生じるという問題があった。
炭化珪素の酸化を防ぐ方法として、粗粒、中粒、及び細粒(ミクロンサイズから3mm程度)の炭化珪素を組み合わせて、可能な限り最密充填して酸素の侵入を防止する方法が知られている。例えば、特許文献1には、SiC含有量が70wt%以上でかつ気孔率10%以下、充填嵩比重が粗粒で1.25以上、中粒で1.60以上の炭化珪素骨材を使用し、炭化珪素70〜95wt%以上、カーボン質原料1〜7wt%、アルミナ微粉3〜20wt%およびシリカ超微粉0.5〜5wt%を含有する組成物に分散剤、結合剤を添加する耐火材が記載されている。
特公平6−8223号公報
炭化珪素からなる原料を高純度化することができれば、炭化珪素固有の優れた性質を有する耐火物を得ることができる。特に、耐火物に用いられる炭化珪素からなる原料は、骨材としての役割を担っていることから、高純度化することで、高強度の耐火物を得ることができる。
一方、高純度の炭化珪素を得る方法として、気相反応法(以下、「気相法」ともいう。)が知られている。しかし、気相法はコストがかかり、かつ、細粒しか得ることができないという問題があった。細粒しか得られない場合、骨材としての役割を期待することができず、耐火物の強度を向上させることが困難であり、また、耐火物が高温において酸化されやすくなるという問題もあった。
本発明は、気相法を用いずに、低コストで高純度の炭化珪素からなる原料を得た後、この原料を用いて高強度の耐火物を製造するための方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アチソン炉を用いて、特定のシリカとカーボンからなる粒子を加熱して炭化珪素からなる塊状物を得る工程と、上記炭化珪素からなる塊状物を粉砕する工程を含む、炭化珪素を含む不定形耐火物の製造方法によって、本発明の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] アチソン炉を用いて、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しており、かつ、B及びPの各々の含有率が1ppm以下である、シリカとカーボンからなる粒子を加熱して、炭化珪素からなる塊状物を得る、炭化珪素製造工程と、上記炭化珪素からなる塊状物を粉砕して、炭化珪素の粒状物からなる不定形耐火物を得る、不定形耐火物調整工程と、を含む、炭化珪素を含む不定形耐火物の製造方法。
[2] 上記シリカとカーボンからなる粒子が、粒子内のいずれの地点においても、シリカの含有率が90質量%以下であり、かつ、カーボンの含有率が10質量%以上である、前記[1]に記載の不定形耐火物の製造方法。
[3] 上記シリカとカーボンからなる粒子中の、Al、Fe、Mg、Ca、及びTiの含有率が、各々、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、1ppm以下である、前記[1]または[2]に記載の不定形耐火物の製造方法。
[4] 上記炭化珪素からなる塊状物中の、B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びOの含有率が、各々、0.1ppm以下、0.1ppm以下、1.0ppm以下、0.5ppm以下、1.0ppm以下、0.5ppm以下、0.5ppm以下、1ppm以下、0.5%未満である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の不定形耐火物の製造方法。
[5] 不定形耐火物調整工程において、SiO、Al、Si、C、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する結合剤を加えて混練する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の不定形耐火物の製造方法。
[6] 上記不定形耐火物を成形して、成形体を得る成形工程と、上記成形体を焼成して、定形耐火物を得る焼成工程と、を含む、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の炭化珪素を含む定形耐火物の製造方法。
[7] 前記[6]の製造方法で得られた、炭化珪素を含む定形耐火物。
本発明の製造方法によれば、気相法を用いずに、安価に、かつ大量に高強度の炭化珪素を含む耐火物を製造することができる。
アチソン炉の長手方向の断面図である。 アチソン炉の長手方向に垂直な方向の断面図である。 合成例1において、得られたシリカとカーボンの混合物の写真を簡易に表した図である。 合成例1において、EPMA分析により得られた試料中のカーボンの含有率を示す写真を簡易に表した図である。 合成例1において、EPMA分析により得られた試料中のシリカの含有率を示す写真を簡易に表した図である。
以下、本発明の炭化珪素を含む耐火物の製造方法を詳しく説明する。
本発明の炭化珪素を含む耐火物の製造方法は、アチソン炉を用いて、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しており、かつ、B及びPの各々の含有率が1ppm以下である、シリカとカーボンからなる粒子を加熱して、炭化珪素からなる塊状物を得る、炭化珪素製造工程と、上記炭化珪素からなる塊状物を粉砕して、炭化珪素の粒状物からなる不定形耐火物を得る、不定形耐火物調整工程とを含む。
本発明の製造方法で用いられるシリカとカーボンからなる粒子は、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しており、かつ、ホウ素(B)及びリン(P)の各々の含有率が1ppm以下のものである。
また、上記シリカとカーボンからなる粒子中のアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、及びチタン(Ti)の含有率は、好ましくは、各々、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、1ppm以下である。
上記シリカとカーボンからなる粒子は、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しているため、加熱時の反応性が高く、高純度の炭化珪素(SiC)を得ることができる。具体的には、粒子内のいずれの地点においても、シリカの含有率が好ましくは90質量%以下、より好ましくは60〜90質量%、かつ、カーボンの含有率が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは10〜40質量%である。また、粒子内のシリカの含有率が60〜80質量%であり、かつ、カーボンの含有率が20〜40質量%である部分が50体積%以上であるシリカとカーボンからなる粒子が好ましい。
不純物(B、P等)を上記範囲内とすることで高純度の炭化珪素を製造することができる。
さらに、上記シリカとカーボンからなる粒子中の、シリカとカーボンの合計の含有率は、好ましくは99.0質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上、特に好ましくは99.9質量%以上である。
上記シリカとカーボンからなる粒子の大きさは特に限定されるものではないが、粒子の長径が、通常、500μm以下であり、好ましくは400μm以下であり、より好ましくは300μm以下である。
上記シリカとカーボンからなる粒子の、カーボン(C)とシリカ(SiO)の混合モル比(C/SiO)は、好ましくは2.5〜4.0、より好ましくは2.8〜3.6、特に好ましくは2.9〜3.3である。該混合モル比は、炭化珪素の組成に影響を与える。カーボンとシリカの混合モル比が2.5未満、または4.0を超えると、炭化珪素中に未反応のシリカやカーボンが多く残存してしまうため、好ましくない。
以下、本発明の製造方法に用いられるシリカとカーボンからなる粒子の製造方法を詳しく説明する。
なお、本明細書中において、シリカとカーボンの混合物とは、上述したシリカとカーボンからなる複数の粒子からなる集合体をいう。
さらに、以下の工程(A1)〜工程(E)中、工程(B)及び(C)は、上記シリカとカーボンからなる粒子を得るために必須の工程であるが、工程(A)は、シリカ含有鉱物を原料としてケイ酸アルカリ水溶液を調製する場合に追加される工程であり、工程(A1)、(A2)、(B1)、(D)及び(E)工程は、必須ではなく、任意で追加可能な工程である。
[工程(A1);原料水洗工程]
工程(A1)は、シリカ含有鉱物(岩石状又は粉末状)を水洗して、粘土分及び有機物を除去する工程である。水洗後のシリカ含有鉱物は、通常、フィルタープレス等を用いて、さらに脱水させる。
シリカ含有鉱物としては、珪藻土、珪質頁岩等が挙げられる。シリカ含有鉱物は、アルカリに対する溶解性が高いことが望ましい。
ここで、珪藻土とは、珪藻が海底や湖底に沈積し、長い年月の間に体内の原形質その他の有機物が分解し、非晶質シリカを主体とした珪藻殻が集積して堆積したものである。
珪質頁岩とは、珪質の生物遺骸等に由来する頁岩である。すなわち、海域には、珪質の殻を有する珪藻などのプランクトンが生息するが、このプランクトンの死骸が海底中に堆積すると、死骸中の有機物の部分は徐々に分解され、珪質(SiO;シリカ)の殻のみが残る。この珪質の殻(珪質堆積物)が、時間の経過や温度・圧力の変化などに伴い、続成作用により変質して、硬岩化することにより珪質頁岩となる。なお、珪質堆積物中のシリカは、続成作用によって、非晶質シリカから、結晶化してクリストバライト、トリデイマイトへ、さらに石英へと変化する。
珪藻土は、主に非晶質シリカであるオパールAからなる。珪質頁岩は、オパールAより結晶化が進んだオパールCTまたはオパールCを主に含む。オパールCTとは、クリストバライト構造とトリディマイト構造からなるシリカ鉱物である。オパールCとは、クリストバライト構造からなるシリカ鉱物である。このうち、本発明では、オパールCTを主とする珪質頁岩が好ましく用いられる。
さらに、Cu−Kα線による粉末X線回折において、石英の2θ=26.6degのピーク頂部の回折強度に対するオパールCTの2θ=21.5〜21.9degの回折強度は、石英を1とした場合の比率で0.2〜2.0の範囲が好ましく、0.4〜1.8の範囲がより好ましく、0.5〜1.5の範囲が特に好ましい。該値が0.2に満たない場合には、反応性に富むオパールCTの量が少ないため、シリカの収量が低下する。一方、該値が2.0を超える場合には、オパールCTの量が石英よりはるかに多くなり、このような珪質頁岩は資源的に少なく、経済性に劣る。
なお、石英に対するオパールCTの回折強度の比率は、以下の式で求める。
石英に対するオパールCTの回折強度の比率=(21.5〜21.9degのピーク頂部の回折強度)/(26.6degのピーク頂部の回折強度)
また、珪質頁岩のCu−Kα線による粉末X線回折において、オパールCTの2θ=21.5〜21.9degの間に存在するピークの半値幅は0.5°以上が好ましく、0.75°以上がより好ましく、1.0°以上がさらに好ましい。該値が0.5°未満では、オパールCTの結晶の結合力が増大し、アルカリとの反応性が低下して、シリカの収量が減少する。ここで、半値幅とは、ピーク頂部の回折強度の1/2に位置する回折線の幅をいう。
本発明で用いる珪質頁岩は、シリカ(SiO)の含有率が70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。このような珪質頁岩を用いることにより、より高純度のシリカを低コストで製造することができる。
シリカ含有鉱物は、例えば、珪質頁岩等のシリカ含有鉱物を粉砕装置(例えば、ジョークラッシャー、トップグラインダーミル、クロスビーターミル、ボールミル等)で粉砕することによって得ることができる。
[工程(A2);原料焼成工程]
工程(A2)は、シリカ含有鉱物を300〜1000℃で0.5〜2時間焼成し、有機物を除去する工程である。
なお、工程(A1)と工程(A2)の双方を実施する場合、その順序は特に限定されない。
[工程(A);アルカリ溶解工程]
工程(A)は、シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi濃度が10質量%以上となるように、上記シリカ含有鉱物中のSiを液分中に溶解させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得るアルカリ溶解工程である。
ここで、本明細書中、ケイ酸アルカリ水溶液とは、化学式中にシリカ(SiO)を含む物質を含有するアルカリ性の水溶液をいう。
シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合してなるアルカリ性スラリーのpHは、11.5以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上となるように調整される。該pHが11.5未満であると、シリカを十分に溶解させることができず、シリカが固形分中に残存してしまうため、得られるシリカの収量が減少する。
pHを上記数値範囲内に調整するためのアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が用いられる。
スラリーの固液比(アルカリ水溶液1リットルに対するシリカ含有鉱物の質量)は、好ましくは100〜500g/リットル、より好ましくは200〜400g/リットルである。該固液比が100g/リットル未満では、スラリーの固液分離に要する時間が増大するなど、処理効率が低下する。該固液比が400g/リットルを超えると、シリカ等を十分に溶出させることができないことがある。
スラリーは、通常、所定時間(例えば、30〜90分間)攪拌される。
攪拌後のスラリーは、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離される。液分は、Si及び他の成分(Al、Fe等の不純物)を含むケイ酸アルカリ水溶液であり、次の工程(B1)または工程(C)で処理される。液分中に含まれるSiの濃度は、10質量%以上、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜18質量%、特に好ましくは13〜16質量%である。Siの濃度が10質量%未満であると、後述する工程(C)においてゲル状のカーボン含有シリカが析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカとカーボンの混合物の量が低下する。
なお、本工程においてアルカリ性スラリーを得る際の液温は、エネルギーコストの観点から、5〜100℃に保持されることが好ましく、10〜80℃に保持されることがより好ましく、10〜40℃に保持されることが特に好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
[工程(B1);不純物回収工程]
本工程は、工程(A)で得られたケイ酸アルカリ水溶液と酸を混合して、pHを10.3を超え、11.5未満であり、かつ液分中のSi濃度が10質量%以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi以外の不純物(例えば、Al及びFe)を析出させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る工程である。
なお、本工程で回収されずに液分中に残存する不純物は、工程(C)以降の工程で回収される。
本工程において、酸との混合後の液分のpHは、10.3を超え、11.5未満、好ましくは10.4以上、11.0以下、特に好ましくは10.5以上、10.8以下である。該pHが10.3以下であると、不純物(例えば、Al及びFe)と共にSiも析出してしまう。一方、該pHが11.5以上では、十分に析出せずに液分中に残存する不純物(例えば、Al及びFe)の量が多くなる。
また、酸と混合後の液分中に含まれるSiの濃度は、10質量%以上、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜18質量%、特に好ましくは13〜16質量%である。Siの濃度が10質量%未満であると、後述する工程(C)においてゲル状のカーボン含有シリカが析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカとカーボンの混合物の量が低下する。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
このうち、固形分(ケーキ)は、不純物(例えば、Al及びFe)を含むものである。
液分は、Siを含むものであり、後述する工程(C)で処理される。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、エネルギーコストの観点から、5
〜100℃に保持されることが好ましく、10〜80℃に保持されることがより好ましく、10〜40℃に保持されることが特に好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
[工程(B);カーボン混合工程]
本工程は、液分中のSi濃度が10質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液とカーボンを混合して、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を得る工程である。
本工程において用いられるケイ酸アルカリ水溶液は、特に限定されないが、具体的には前工程(工程(A)または工程(B1))で得られたケイ酸アルカリ水溶液、及び水ガラス等が挙げられる。
本発明で用いられる水ガラスは、市販のものを使用することができ、JIS規格により規定される1号、2号、3号の他に各水ガラスメーカーで製造販売されているJIS規格外の製品も使用することができる。
ケイ酸アルカリ水溶液中に含まれるSiの濃度は、10質量%以上、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜18質量%、特に好ましくは13〜16質量%である。Si濃度が10質量%未満であると、ゲル状のカーボン含有シリカが析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカとカーボンの混合物の量が低下する。
Si濃度が20質量%を超えると、ケイ酸アルカリ水溶液のハンドリング(輸送等)が悪化するとともに、不純物の除去が不十分となる場合がある。
本発明で用いられるカーボンは特に限定されるものではないが、例えば石油コークス、石炭ピッチ、カーボンブラック、各種有機樹脂等が挙げられる。
カーボンの粒度は好ましくは5mm以下であり、より好ましくは2mm以下である。粒度が5mmを超える場合、不純物の除去が不十分となる場合がある。
なお、工程(B)の前に、カーボンを上記の粒度範囲にまで粉砕する工程を含んでもよい。
混合方法は特に限定されるものではないが、ケイ酸アルカリ水溶液にカーボンを加える方法が好ましい。
工程(B)においてカーボンを混合することによって、得られるシリカとカーボンの混合物中のカーボン由来の不純物の量を大幅に低減することができる。また、後述する工程(C)において、内部にカーボンが均一に取り込まれたカーボン含有沈降性シリカを析出することができる。
[工程(C);シリカ回収工程]
本工程は、工程(B)で得られたカーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と、10体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のC及びSiを非ゲル状のカーボン含有沈降性シリカとして析出させ、沈降性シリカ含有液状物を得た後、該液状物を固液分離して、C及びSiOを含む固形分(シリカとカーボンの混合物)と、不純物を含む液分を得る工程である。
なお、カーボン含有沈降性シリカは、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と、鉱酸との混合と同時に生成する。
本工程において用いられる鉱酸は、例えば硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、硫酸を用いることが薬剤コストの低減の観点から好ましい。
鉱酸の濃度は、10体積%以上、より好ましくは10〜20体積%、特に好ましくは10〜15体積%である。鉱酸の濃度が、10体積%未満の場合には、カーボン含有沈降性シリカが生成しない、あるいはカーボン含有沈降性シリカとゲル状のカーボン含有シリカの両方が生成するおそれがある。このゲル状のカーボン含有シリカが生成すると、最終生成物中の不純物の濃度が高くなる。また、20体積%を超えるとコストの面から好ましくない。
カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の混合方法は、特に限定されるものではないが、カーボン含有沈降性シリカのみを生成させる観点から、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に添加する方法が好ましい。具体的には、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に滴下する方法や、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を、1.0mmφ以上、好ましくは4.0mmφ以上のチューブ等から、鉱酸中に直接押し出す方法等が挙げられる。
また、混合する際のpHは好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下に保つことが望ましい。pHが1.0を超えるとカーボン含有シリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカとカーボンの混合物の量が低下する。
また、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液の鉱酸中への流出速度は限定されないが、混合する際にpHが1.0を超え、かつ流出速度が大きい場合には、カーボン含有沈降性シリカが生成しない、あるいはカーボン含有沈降性シリカとゲル状のカーボン含有シリカの両方が生成するおそれがある。
本工程において、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合する際のカーボン含有沈降性シリカの析出温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20〜30℃であり、通常、常温(例えば10〜40℃)である。80℃を超えると、エネルギーコストが上昇するとともに、設備の腐食が生じ易くなる。
上記カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液中のC及びSiをカーボン含有沈降性シリカとして析出させた後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、C及びSiOを含む固形分と、不純物を含む液分に分離する。得られたカーボン含有沈降性シリカはゲル状ではなく、粒子状であるため、固液分離に要する時間を短くすることができる。
工程(C)で得られたC及びSiOを含む固形分は、Al、Fe、Mg、Ca、TiB、P等の不純物が低減されたシリカとカーボンの混合物である。
また、得られたシリカとカーボンの混合物は、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布している粒子からなるため、焼成時の反応性が高く、容易に高純度の炭化ケイ素やシリコンを得ることができる。
なお、工程(C)において、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液及び鉱酸の少なくともいずれか一方と過酸化水素を混合してもよい。
過酸化水素を混合することで、不純物(特にTi)が低減されたシリカとカーボンの混合物を得ることができる。
混合方法は特に限定されるものではなく、(1)カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物と鉱酸を混合する方法、(2)鉱酸と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物とカーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を混合する方法、(3)カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合し、次いで得られた混合物と過酸化水素を混合する方法、(4)カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と、鉱酸と、過酸化水素を同時に混合する方法が挙げられる。中でも、工程の上流側で不純物(特にTi)の低減を図るという観点から(1)が好ましい。
過酸化水素の添加量は、炭素(C)とシリカ(SiO)の合計質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。過酸化水素の添加量が0.1質量%未満では、不純物(例えばTi)の低減効果が十分ではなく、15質量%を超えると、不純物(例えばTi)の低減効果が飽和状態となる。
工程(C)において用いられる鉱酸が硫酸である場合、工程(C)で得られた不純物を含む液分を中和処理することで、液分中の不純物を石膏として析出させ、この石膏をセメントの原料として再利用してもよい。
[工程(D);酸洗浄工程]
工程(C)で得られたC及びSiOを含む固形分に対して、適宜、工程(D)(酸洗浄工程)を行うことができる。酸洗浄工程を行うことにより、より不純物が低減されたシリカとカーボンの混合物を得ることができる。
工程(D)は、工程(C)で得られたC及びSiOを含む固形分と酸を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物(例えば、Al、Fe)を溶解させた後、上記酸性スラリーを固液分離して、C及びSiOを含む固形分(シリカとカーボンの混合物)と、不純物(例えば、Al、Fe)を含む液分を得る工程である。
本工程における酸性スラリーのpHは、3.0未満、好ましくは2.0以下である。酸性スラリーのpHを上記範囲内に調整して酸洗浄を行うことにより、工程(C)で得られた固形分にわずかに残存するアルミニウム分、鉄分等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のC及びSiOの含有率を上昇させることができるため、さらに不純物が低減されたシリカとカーボンの混合物を得ることができる。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、特に限定されるものではないが、エネルギーコストの観点から、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20℃〜30℃であり、通常、常温(例えば10〜40℃)である。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
また、酸洗浄工程後の液分を回収し、工程(C)に用いられる鉱酸、および工程(D)に用いられる酸として再利用してもよい。
本発明では、工程(C)における過酸化水素の使用に代えて、または、工程(C)における過酸化水素の使用とともに、工程(D)において、酸と過酸化水素を混合することで、不純物(特にTi)が低減されたシリカとカーボンの混合物を得ることができる。
混合方法は特に限定されるものではなく、(1)工程(C)で得られたC及びSiOを含む固形分と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物と酸を混合する方法、(2)酸と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物と工程(C)で得られたC及びSiOを含む固形分を混合する方法、(3)工程(C)で得られたC及びSiOを含む固形分と酸を混合し、次いで得られた混合物と過酸化水素を混合する方法、(4)工程(C)で得られたC及びSiOを含む固形分と、酸と、過酸化水素を同時に混合する方法が挙げられる。中でも、工程の上流側で不純物(特にTi)の低減を図るという観点から(1)が好ましい。
過酸化水素の添加量は、炭素(C)とシリカ(SiO)の合計質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜15.0質量%、より好ましくは0.1〜10.0質量%、特に好ましくは0.1〜5.0質量%である。過酸化水素の添加量が0.1質量%未満では不純物(例えばTi)の低減効果が十分ではなく、15.0質量%を超えると、不純物(例えばTi)の低減効果が飽和状態となる。
[工程(E);水洗浄工程]
本工程は、前工程(工程(C)または工程(D))で得られたC及びSiOを含む固形分と水を混合して、スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記スラリーを固液分離して、C及びSiOを含む固形分(シリカとカーボンの混合物)と、不純物を含む液分を得る工程である。適宜、水洗浄を行うことにより、前工程で得られた固形分にわずかに残存するナトリウム、硫黄等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のC及びSiOの含有率を上昇させることができるため、さらに不純物が低減されたシリカとカーボンの混合物を得ることができる。
水洗浄後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
本工程で得られた固形分に対して、水洗浄工程をさらに行ってもよい。
また、水洗浄工程後の液分を回収し、工程(A1)、工程(A)、工程(C)、工程(D)、及び工程(E)に用いられる水として再利用してもよい。
[他の追加しうる工程]
さらに、本発明において、工程(A)と工程(B)の間で、適宜、イオン交換処理及び/又は活性炭処理を行うことができる。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理で回収される不純物は、ホウ素(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、及びマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる一種以上である。
イオン交換処理は、キレート樹脂、イオン交換樹脂等のイオン交換媒体を用いて行なうことができる。
イオン交換媒体の種類は、除去対象元素に対する選択性を考慮して、適宜定めればよい。例えば、ホウ素を除去する場合、グルカミン基を有するキレート樹脂や、N−メチルグルカミン基を有するイオン交換樹脂等を用いることができる。
イオン交換媒体の形態は、特に限定されるものではなく、ビーズ状、繊維状、クロス状等が挙げられる。イオン交換媒体への液分の通液方法もなんら限定されるものではなく、例えばカラムにキレート樹脂またはイオン交換樹脂を充填して連続的に通液する方法などを用いることができる。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理を行う際の液温は、各処理に用いる材料の耐用温度以下であれば、特に限定されない。
上述の製造方法によって得られたシリカとカーボンからなる粒子を、アチソン炉を用いて加熱すると、炭化珪素の塊状物が生成する。
アチソン炉を用いることで、他の電気炉等と比べて、安価にかつ大量に、しかも安全に炭化珪素を製造することができる。
また、アチソン炉は、炉が大きく、非酸化性雰囲気下で反応が行われることから、他の電気炉等と比べて、不純物(B、P、O等)の含有率、特に酸素(O)の含有率の低い炭化珪素を得ることができる。
なお、上記「酸素(O)の含有率」とは、炭化珪素中に含まれる金属酸化物を構成する酸素原子の総量を示す。
上記シリカとカーボンからなる粒子をアチソン炉で加熱して得られる炭化珪素は、不純物(B、P、O等)の含有率が低く、高強度の炭化珪素を含む耐火物を得ることができる。また、酸素(O)の含有率が低いことから、上記炭化珪素を用いた耐火物の酸化を予め防ぐことができる。
さらに、上記シリカとカーボンからなる粒子は、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しているため、焼成時の反応性が高く、アチソン炉を用いて炭化珪素を製造する際の消費電力量を低減することができる。
以下、本発明で用いられるアチソン炉について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1はアチソン炉4の長手方向の断面図であり、図2はアチソン炉4の長手方向に垂直な方向の断面図である。
アチソン炉4は大気開放型であり、炉本体5の断面が略U字状である炉であり、両端に電極芯3,3を有している。長手方向の中央部には発熱体2が電極芯3,3を結ぶように設置され、発熱体2の周りにはシリカとカーボンの混合物1が充填されている。また、炭化珪素製造用原料1は炉本体5の内部空間にかまぼこ状に収容される。
電極芯3,3間に電流を流し、発熱体2を通電加熱することで、発熱体2の周囲において下記式(1)で示される直接還元反応が起こり、炭化珪素(SiC)の塊状物が生成される。
SiO+3C → SiC+2CO (1)
上記反応が行われる温度は好ましくは1600〜3000℃、より好ましくは1600〜2500℃である。
本発明の製造方法に用いられるアチソン炉の発熱体2の種類は特に限定されないが、電気を通すことができればよく、例えば黒鉛粉、カーボンロッドが挙げられる。発熱体中の炭素以外の不純物の含有率(B、P等の含有率の合計)は、好ましくは120ppm以下、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、特に好ましくは25ppm以下である。発熱体中の不純物の含有率を、上記範囲内とすることで、より高純度の炭化珪素を得ることができる。
発熱体の形態は、上述したように電気を通すことができればよく、粉状でも棒状でもよい。また、棒状の場合、該棒状体の形態も特に限定されず、円柱状でも角柱状でもよい。
アチソン炉での加熱によって得られた炭化珪素の塊状物は、炭化珪素の含有率が高く、またB、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Ca等の不純物の含有率が低い炭化珪素である。また、得られた炭化珪素は、酸素(O)の含有率が低い。
具体的には、上記炭化珪素の塊状物中の炭化珪素(SiC)の含有率は、好ましくは99.0質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上、特に好ましくは99.9質量%以上である。
上記炭化珪素の塊状物中の、B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びOの含有率は、質量基準で、各々、好ましくは0.1ppm以下、0.1ppm以下、1.0ppm以下、0.5ppm以下、1.0ppm以下、0.5ppm以下、0.5ppm以下、1ppm以下、0.5%未満である。
なお、上記炭化珪素はα型、β型、またはαとβの混合型のいずれでもよい。発熱体周辺の高温側ではα型の結晶が優先的に生成されるが、低温側では、β型の結晶が優先的に生成される。例えば、加熱温度を1600〜1800℃程度に調整することで、β型を多く含む炭化珪素を得ることができる。
また、得られた炭化珪素は、目標純度に応じて、さらに鉱酸による洗浄をすることができる。鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が使用できる。
アチソン炉での加熱によって得られた炭化珪素からなる塊状物を粉砕することで、炭化珪素の粒状物を容易に得ることができる。粉砕方法は特に限定されるものではなく、例えば、ボールミル、振動ミル等の公知の方法が用いられる。
粒状物の粒径は特に限定されないが、好ましくは3mm以下、より好ましくは50μm〜3mmである。該粒径が3mmを超えると、耐火物の強度、耐スポークリング性が低下する場合がある。
また、平均粒径の異なる炭化珪素を組み合わせてもよい。平均粒径の異なる炭化珪素を組み合わせて最密充填を行うことで、耐火物の内部組織を緻密化して炭化珪素の酸化を防ぐことができる。また、より高強度の耐火物を得ることができる。さらに、不定形耐火物として用いる場合、流動性を向上させることができる。
例えば、平均粒径が1mmを超えて3mm以下である粗粒と、平均粒径が0.15mmを超えて1mm以下である中粒と、平均粒径が50μmを超えて0.15mm以下である細粒とを組み合わせることで、粗粒が耐火物の骨格を形成し、中粒が粗粒間の空隙を充填し、細粒が粗粒及び中粒間の空隙をさらに充填して、得られる耐火物の緻密性を高めることができる。さらに、平均粒径が50μm以下の超微粉を組み合わせても良い。
上記粗粒、中粒、及び細粒の組み合わせは、得られる耐火物が緻密化するように適宜組み合わせればよく、特に限定はされないが粗粒が30〜60質量%、中粒が15〜45質量%、細粒が10〜30質量%の範囲内で組み合わせることが好ましい。
なお、本明細書において、「炭化珪素の平均粒径」とは、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマンコールター社製、「モデルLS−230」)を用いて粒子の粒径を測定し、その測定された粒子の粒径に基づいて得られた体積累積分布50%における粒径(メジアン径;d50)をいう。
上記炭化珪素からなる粒状物は、必要に応じて結合剤等の他の耐火物原料と共に混練される。
ここで、結合剤は、例えば、有機質結合剤として、パルプ廃液、デキストリン、CMC、フェノール樹脂、及びタールピッチ等が挙げられる。無機質結合剤として、粘土、コロダイルシリカ、珪酸ソーダ、リン酸アルミニウム、リン酸ナトリウム、水硬性アルミナ、アルミナセメント、及びSi粉末等が挙げられる。
中でも、SiO、Al、Si、C、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む結合剤が好ましい。また、2種以上の結合剤を組み合わせても良い。
炭化珪素からなる粒状物に結合剤を加えて混練することで、得られた混練物を緻密化することができ、不定形耐火物として好適に使用できる。なお、上記結合剤は、施工時に添加しても良い。
ここで、不定形耐火物とは、例えば、キャスタブル耐火物、プラスチック耐火物、ラミング耐火物、築造用耐火モルタル、吹付耐火物、パッチング耐火物、コーティング耐火物、圧入耐火物、補修用耐火モルタル等が挙げられる。
また、必要に応じて水、成形バインダー、及び酸化防止剤等を加えてもよい。
成形バインダーを加えることで、成形の際の水分量を減少することができ、より緻密な耐火物を得ることができる。成形バインダーとしては、有機バインダーが好ましい。具体的には、ポリビニルアルコール系バインダー、セルロース系バインダー、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、熱可塑性樹脂系バインダー、熱硬化性樹脂バインダー等が挙げられる。
混練は、均一な配合となるように混練することが好ましい。混練機として、例えば、ウエットパン、アイリッヒミキサー、オムニミキサー、または、ナウタミキサー等が挙げられる。
耐火物原料の配合割合は、目的とする耐火物に要求される性能等に応じて適宜定められる。以下、具体例をいくつか挙げるが、配合はこれらに限定されるものではない。
(1)炭化珪素65〜80質量%、Al5〜15質量%を含有する、炭化珪素質キャスタブル耐火物原料。
(2)炭化珪素20〜25質量%、Al35〜40質量%、SiO17〜21質量%、C18〜22質量%を含有する、高炉マッド材原料。
(3)炭化珪素65〜80質量%、Si15〜25質量%を含有する、Si結合炭化珪素煉瓦原料。
得られた混練物は、成形工程において、所望の形状に成形される。成形方法としては手打ち成形、鋳込成形、油圧プレス、フリクションプレス、振動プレス等が挙げられ、所望の耐火物の大きさ、形状に合わせて選択される。
得られた成形体は、必要に応じて自然乾燥、または、チャンバー式乾燥炉、トンネルドライヤー等を用いて乾燥した後、焼成工程において、各種焼成方法によって焼成されて、炭化珪素を含む定形耐火物となる。
焼結方法は特に限定されるものではないが、例えば、トンネルキルン、シャトルキルン、窒化炉等が用いられる。焼成温度は好ましくは1000〜1800℃である。
得られた炭化珪素を含む定形耐火物は高強度であり、様々な耐火物として使用することができる。具体的には、自己結合炭化珪素質煉瓦、カーボンブロック、高炉マッド材、高炉樋材、Al−SiC−C煉瓦、ロングノズル、浸漬ノズル、及びSi結合SiC管等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[分析方法]
(1)B(ホウ素)及びP(リン)の含有率の分析方法
土壌中のB(ホウ素)の分析方法(BUNSEKI KAGAKU VOL47,No7,pp451−454参照)であるアルカリ溶融法によるICP−AES分析に基づいて分析を行った。
具体的には、試料1gおよびNaCO4gを白金ルツボに入れた後、この白金ルツボを電気炉内に載置して700℃で1時間加熱した。次いで1時間ごとに、白金ルツボ内の混合物を撹拌しながら、800℃で4時間加熱し、さらに1000℃で15分間加熱した。加熱後の混合物(融成物)に50質量%のHCl20mlを添加し、ホットプレートを用いて、140℃で10分間融成物をくずしながら溶解した。水を加えて100mlにメスアップした後、ろ過を行い、得られた固形分に対して、ICP−AES分析を行った。
(2)B及びP以外の元素(Al、Cu、Fe、Mg、Ca、Ni、及びTi)の含有率の分析方法
「JIS R 1616」に記載された加圧酸分解法によるICP−AES分析に基づいて測定した。
(3)酸素(O)の含有率をLECO社製の「TCH−600」を用いて測定した。
[合成例1]
水ガラス溶液(富士化学(株)製:SiO/NaO(モル比)=3.20)140gに、水35gを加えて混合し、Si濃度10質量%の水ガラス溶液を得た。
得られた水ガラス溶液にカーボン(東海カーボン社製:平均粒径1mm)を27.0g加えて混合し、カーボン含有水ガラス溶液を得た。
得られたカーボン含有水ガラス溶液66.2gを硫酸濃度10.7体積%の硫酸(水165.6mlに濃硫酸20mlを混合したもの)200g中に滴下し、常温(25℃)下でカーボン含有沈降性シリカを析出させた後、減圧下でブフナー漏斗を用いて固液分離し、C及びSiOを含む固形分(カーボン含有沈降性シリカ)33.9gと、不純物を含む液分232.3gを得た。なお、pHは滴下終了時まで1.0以下に保った。
得られたC及びSiOを含む固形分(カーボン含有沈降性シリカ)に対して、常温(25℃)下で硫酸濃度10.7体積%の硫酸を200g添加してpHが3.0未満のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に、得られた固形分を、蒸留水を用いて水洗した。その後、水洗した固形分を105℃で1日乾燥させ、シリカとカーボンの混合物(粒子の集合体)21.3gを得た。
得られたシリカとカーボンの混合物中の不純物(ホウ素(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)、及びチタン(Ti))の濃度を、上述した分析方法を用いて測定した。その結果を表1に示す。
得られたシリカとカーボンの混合物を乾燥させた後の、CとSiOの合計量は99.99質量%であり、Siの回収率は97.0%であった。
Figure 2013112541
さらに、得られたシリカとカーボンの混合物を、EPMAを用いて観察するとともに、該混合物を構成する粒子中のカーボンまたはシリカの分布状態を分析した。装置としては、電子線マイクロアナライザー(日本電子社製、商品名「JXA−8100」)を用いて、加速電圧15kV、プローブ径0.5μm、ピクセルサイズ1μm、ピクセル数400×400の条件で分析を行った。
図3にシリカとカーボンの混合物の写真を簡易に表した図を示す。
図4及び5に、シリカとカーボンの混合物表面の写真を簡易に表した図を示す。各図の右上の数値は、混合物を構成する粒子に含まれるシリカまたはカーボンの質量%であり、数値が大きいほど、含有率が高いことを示している。
[実施例1]
合成例1に記載した方法を用いて製造した、シリカとカーボンの混合物160kg、及び発熱体用黒鉛を、図1及び2に記載されたアチソン炉(アチソン炉の内寸;長さ1000mm、幅500mm、高さ500mm)の中へ収容した後、約1600℃で約10時間通電加熱を行い、β型の炭化珪素の塊状物20.0kgを生成させた。
発熱体用黒鉛としては分解黒鉛(カーボンブラックを3000℃で熱処理したもの)を使用した。
得られた炭化珪素の塊状物をボールミルおよびトップグラインダーを用いて粉砕し、平均粒径が1mmを超えて3mm以下である粗粒、平均粒径が0.15mmを超えて1mm以下である中粒、及び、平均粒径が50μmを超えて0.15mm以下である細粒の炭化珪素をそれぞれ得た。該炭化珪素を組み合わせて、粗粒45質量%、中粒40質量%、及び細粒15質量%からなる炭化珪素からなる原料Aを得た。
得られた炭化珪素からなる原料A中の不純物(B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びO)の含有率を、上述した分析方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
上記炭化珪素からなる原料A91質量部と、高純度シリカ粉末(平均粒径0.3μm)8質量部と、純水1質量部を配合した原料と、有機バインダーとしてポリビニルアルコールと、をアインリッヒミキサーを用いて、均一になるまで混練した。得られた混練物を、油圧プレスを用いて成形した。得られた成形体を、シャトルキルンを用いて大気雰囲気下、焼成温度1400℃で焼成し、炭化珪素を含む耐火物の試供体(4×3×40mm)を得た。得られた炭化珪素を含む耐火物の、見掛け気孔率、嵩密度、及び圧縮強度を測定した。なお、圧縮強度の測定は「JIS R 5201」に準じた方法で行った。結果を表3に示す。
[比較例1]
市販のβ型の黒色炭化珪素(屋久島電工社製、GCシリーズ)をボールミルおよびトップグラインダーを用いて粉砕し、平均粒径が1mmを超えて3mm以下である粗粒、平均粒径が0.15mmを超えて1mm以下である中粒、及び、平均粒径が50μmを超えて0.15mm以下である細粒の炭化珪素をそれぞれ得た。該炭化珪素を組み合わせて、粗粒45質量%、中粒40質量%、及び細粒15質量%からなる炭化珪素からなる原料Bを得た。
得られた炭化珪素からなる原料B中の不純物(B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びO)の含有率を、上述した分析方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
炭化珪素からなる原料Aの代わりに炭化珪素からなる原料Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、炭化珪素を含む耐火物の試供体を得た。得られた炭化珪素を含む耐火物の、見掛け気孔率、嵩密度、及び圧縮強度を測定した。結果を表3に示す。
[実施例2]
合成例1に記載した方法を用いて製造した、シリカとカーボンの混合物160kg、及び発熱体用黒鉛を、図1及び2に記載されたアチソン炉(アチソン炉の内寸;長さ1000mm、幅500mm、高さ500mm)の中へ収容した後、約2500℃で約10時間通電加熱を行い、α型の炭化珪素の塊状物20.0kgを生成させた。
発熱体用黒鉛としては分解黒鉛(カーボンブラックを3000℃で熱処理したもの)を使用した。
得られた炭化珪素の塊状物をボールミルおよびトップグラインダーを用いて粉砕し、平均粒径が1mmを超えて3mm以下である粗粒、平均粒径が0.15mmを超えて1mm以下である中粒、及び、平均粒径が50μmを超えて0.15mm以下である細粒の炭化珪素をそれぞれ得た。該炭化珪素を組み合わせて、粗粒45質量%、中粒40質量%、及び細粒15質量%からなる炭化珪素からなる原料Cを得た。
得られた炭化珪素からなる原料C中の不純物(B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びO)の含有率を、上述した分析方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
上記炭化珪素からなる原料C20質量部と、高純度シリカ粉末(平均粒径0.3μm)21質量部と、高純度アルミナ粉末(平均粒径1μm)39質量部と、カーボン粉末(鱗状黒鉛)20質量部を配合した原料と、有機バインダーとしてポリビニルアルコールと、をアインリッヒミキサーを用いて、均一になるまで混練した。得られた混練物を、油圧プレスを用いて成形した。得られた成形体を、トンネルキルンを用いて大気雰囲気下、焼成温度1400℃で焼成し、炭化珪素を含む耐火物の試供体(4×3×40mm)を得た。得られた炭化珪素を含む耐火物の、見掛け気孔率、嵩密度、及び圧縮強度を測定した。結果を表4に示す。
[比較例2]
市販のα型の黒色炭化珪素(屋久島電工社製、GCシリーズ)をボールミルおよびトップグラインダーを用いて粉砕し、平均粒径が1mmを超えて3mm以下である粗粒、平均粒径が0.15mmを超えて1mm以下である中粒、及び、平均粒径が50μmを超えて0.15mm以下である細粒の炭化珪素をそれぞれ得た。該炭化珪素を組み合わせて、粗粒45質量%、中粒40質量%、及び細粒15質量%からなる炭化珪素からなる原料Dを得た。
得られた炭化珪素からなる原料D中の不純物(B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びO)の含有率を、上述した分析方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
炭化珪素からなる原料Cの代わりに炭化珪素からなる原料Dを用いた以外は実施例2と同様にして、炭化珪素を含む耐火物の試供体を得た。得られた炭化珪素を含む耐火物の、見掛け気孔率、嵩密度、及び圧縮強度を測定した。結果を表4に示す。
[実施例3]
実施例2で使用した炭化珪素粉末C74質量部に、高純度窒化珪素粉末(平均粒径1μm以下)24質量部と、高純度シリカ粉末(平均粒径30μm)2質量部を配合した原料と、有機バインダーとしてポリビニルアルコールと、をアインリッヒミキサーを用いて、均一になるまで混練した。得られた混練物を、油圧プレスを用いて成形した。得られた成形体を、窒化炉(マッフル炉)を用いて窒素雰囲気下、焼成温度1400℃で焼成し、炭化珪素を含む耐火物の試供体(4×3×40mm)を得た。得られた炭化珪素を含む耐火物の、見掛け気孔率、嵩密度、及び圧縮強度を測定した。結果を表5に示す。
[比較例3]
炭化珪素からなる原料Cの代わりに炭化珪素からなる原料Dを用いた以外は実施例3と同様にして、炭化珪素を含む耐火物の試供体を得た。得られた炭化珪素を含む耐火物の、見掛け気孔率、嵩密度、及び圧縮強度を測定した。結果を表5に示す。
Figure 2013112541
Figure 2013112541
Figure 2013112541
Figure 2013112541
1 シリカとカーボンの混合物(シリカとカーボンからなる粒子の集合体)
2 発熱体用黒鉛
3 電極芯
4 アチソン炉
5 炉本体

Claims (7)

  1. アチソン炉を用いて、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しており、かつ、B及びPの各々の含有率が1ppm以下である、シリカとカーボンからなる粒子を加熱して、炭化珪素からなる塊状物を得る、炭化珪素製造工程と、
    上記炭化珪素からなる塊状物を粉砕して、炭化珪素の粒状物からなる不定形耐火物を得る、不定形耐火物調整工程と、
    を含む、炭化珪素を含む不定形耐火物の製造方法。
  2. 上記シリカとカーボンからなる粒子が、粒子内のいずれの地点においても、シリカの含有率が90質量%以下であり、かつ、カーボンの含有率が10質量%以上である、請求項1に記載の不定形耐火物の製造方法。
  3. 上記シリカとカーボンからなる粒子中の、Al、Fe、Mg、Ca、及びTiの含有率が、各々、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、1ppm以下である、請求項1または2に記載の不定形耐火物の製造方法。
  4. 上記炭化珪素からなる塊状物中の、B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びOの含有率が、各々、0.1ppm以下、0.1ppm以下、1.0ppm以下、0.5ppm以下、1.0ppm以下、0.5ppm以下、0.5ppm以下、1ppm以下、0.5%未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の不定形耐火物の製造方法。
  5. 不定形耐火物調整工程において、SiO、Al、Si、C、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する結合剤を加えて混練する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の不定形耐火物の製造方法。
  6. 上記不定形耐火物を成形して、成形体を得る成形工程と、
    上記成形体を焼成して、定形耐火物を得る焼成工程と、を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化珪素を含む定形耐火物の製造方法。
  7. 請求項6の製造方法で得られた、炭化珪素を含む定形耐火物。
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