JP2013107847A - 9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物、その製造法及びその用途。 - Google Patents

9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物、その製造法及びその用途。 Download PDF

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Abstract

【課題】光カチオン重合又は光ラジカル重合において、耐マイグレーション性及び耐昇華性に優れた新規な化合物を提供すること。
【解決手段】アルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良いアントラセン基を持つ、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジアルキルエーテル化合物。
【選択図】なし

Description

本発明は、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物、その製造法及び光重合増感剤としての用途に関する。
紫外線や可視光線等の活性エネルギー線により重合する光硬化性樹脂は、硬化が速く、熱硬化性樹脂に比べ有機溶剤の使用量を大幅に減らすことができることから、作業環境の改善、環境負荷を低減することができるという点で優れている。従来の光硬化性樹脂はそれ自体では重合開始機能が乏しく、硬化させるには通常、光重合開始剤を用いる必要がある。光重合開始剤として、ヒドロキシアセトフェノンやベンゾフェノン等のアルキルフェノン系重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤又はオニウム塩などが用いられる(特許文献1,2,3)。これら光重合開始剤の内でオニウム塩系開始剤を用いる場合、オニウム塩の光吸収は225nm〜350nm付近にあり、350nm以上には吸収を持たないため、350nm以上の長波長のランプを光源とした場合、光硬化反応が進行しにくいなどの問題があり、光重合増感剤を添加するのが一般的である。光重合増感剤としては、アントラセン、チオキサントン化合物が知られているが、色目の問題などで、アントラセン化合物が用いられることが多い(特許文献4)。
アントラセン系の光重合増感剤としては、9,10−ジアルコキシアントラセン化合物が用いられている。例えば、光重合における光重合開始剤であるヨードニウム塩に対し、光重合増感剤として9,10−ジブトキシアントラセンや9,10−ジエトキシアントラセンなどの9,10−ジアルコキシアントラセン化合物が使用されている(特許文献5、6、7、8)。
しかしながら、従来から使用されている光重合増感剤は、光重合性組成物を硬化した後、ポストベーク(熱処理)したときにしばしば昇華物が発生し、それが排気ダクト等に付着したり、さらに付着した昇華物がフィルムなどの硬化物上に降りかかるなどのトラブルを引き起こすことがある。また、プリベーク(溶媒蒸発操作)工程がある場合は、そのプリベーク工程で光重合増感剤が昇華等で系外に流出することにより、光硬化時の光重合増感剤の濃度が不足して、光硬化が不十分となる場合もある。
さらにまた、フィルムとフィルムを接着する光接着剤の一成分としてこれらの増感剤を使用する場合、増感剤が上部に被せたフィルムに移行する(マイグレーション)ことがあり、上部フィルム上に増感剤の粉吹きや着色の問題を引き起こす場合もある。
特開平06−345614号公報 特開平07−062010号公報 特開平05−249606号公報 特開平10−195117号公報 特開2002−302507号公報 特開平11−279212号公報 特開2000−344704号公報 WO2007/126066号公報
したがって、密着したフィルム層に対するマイグレーションが起こりにくく、かつ、ベーキング工程において昇華物の発生量が少ない光重合性組成物の開発が望まれている。
本発明者は、アントラセン化合物の構造と物性に関して鋭意検討した結果、本発明の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物が、光カチオン重合及び光ラジカル重合において光重合増感剤として優れた効果を示すのみならず、当該9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物を光重合増感剤として含有する光重合性組成物の上にフィルムを被せた場合マイグレーションの程度が著しく低下すること、又該光硬化物を加熱した際の光重合増感剤が昇華する程度が低いことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物に存する。
(一般式(1)において、Rは、炭素数1〜8のアルキル基又はアラルキル基を示し、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
本発明の第2の要旨は、一般式(2)に示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物をエーテル化することからなる、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の製造法に存する。
(一般式(2)において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
本発明の第3の要旨は、一般式(3)に示される9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物をエノール化し、次いでエーテル化することからなる、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の製造方法に存する。
(一般式(3)において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
本発明の第4の要旨は、一般式(3)に示される9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が、アントロン化合物と2−置換−1,4−ナフトキノン化合物との反応で得られることを特徴とする、第3の要旨に記載の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の製造方法に存する。
(一般式(3)において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
本発明の第5の要旨は、一般式(3)に示される9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が、アントロン化合物と2、6−二置換−1,4−ベンゾキノン化合物との反応で得られることを特徴とする、第3の要旨に記載の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の製造方法に存する。
(一般式(3)において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
本発明の第6の要旨は、一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物を含有する光重合増感剤に存する。
(一般式(1)において、Rは、炭素数1〜8のアルキル基又はアラルキル基を示し、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
本発明の第7の要旨は、第6の要旨に記載の光重合増感剤と、光重合開始剤としてオニウム塩とを含有する光重合開始剤組成物に存する。
本発明の第8の要旨は、第7の要旨に記載の光重合開始剤組成物と光カチオン重合性化合物とを含有する光重合性組成物に存する。
本発明の第9の要旨は、第7の要旨に記載の光重合開始剤組成物と光ラジカル重合性化合物とを含有する光重合性組成物に存する。
本発明の第10の要旨は、第8の要旨又は第9の要旨に記載の光重合性組成物を硬化してなる光硬化物に存する。
なお、一般式(1)、(2)及び(3)の化合物におけるビアントラセン骨格の置換基の位置を示す炭素原子の位置番号は、以下の化学構造式に示す通りとする。
本発明の一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物は、アントロン化合物と2−置換ナフトキノン化合物との反応、又はアントロン化合物と2,6−二置換ベンゾキノン化合物との反応を経由して容易に製造され、光重合増感剤として高活性であるだけでなく、本発明の化合物を光重合増感剤として含有する光重合性組成物の上にフィルムを被せた場合でもフィルムへの本発明の化合物のマイグレーションは低く、更に、本発明で得られた光硬化物は、加熱処理過程において、光硬化物に含まれる本発明の光重合増感剤の昇華性がきわめて低いという有用な化合物である。
(化合物)
本発明の光重合増感剤である9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物は、一般式(1)に記載の構造を有する化合物である。
(一般式(1)において、Rは、炭素数1〜8のアルキル基又はアラルキル基を示し、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
本発明の一般式(1)中、Rで表される、炭素数が1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基又は2−エチルヘキシル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基又はフェネチル基等が挙げられる。
一般式(1)中、X、X’、Y及びY’で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル碁、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。以下、本発明の一般式(1)に示す9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の具体例を置換基毎に例示する。なお、後述の一般式(2)、(3)におけるそれぞれのX、X’、Y及びY’の具体例はこれら一般式(1)の具体例と同様である。
本発明の一般式(1)において、X、X’、Y及びY’が水素原子である場合の例としては、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテル、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテル、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ペンチル)エーテル、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ヘキシル)エーテル、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ヘプチル)エーテル、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−オクチル)エーテル、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(2−エチルヘキシル)エーテル,9’−ビアントラセン−10,10’−ジベンジルエーテル、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジフェネチルエーテル等が挙げられる。
さらに、本発明の一般式(1)において、X、X’、及び/又は、Y、Y’がアルキル基である場合の例としては、2,2’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、2,2’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、2,2’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、2,2’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、2,2’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル、2,2’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル、2,3’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、2,3’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、2,3’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、2,3’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、2,3’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル、2,3’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル、3,3’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、3,3’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、3,3’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、3,3’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、3,3’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル又は3,3’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル等が挙げられる。
さらに、本発明の一般式(1)において、X、X’、及び/又は、Y、Y’がハロゲン原子である場合の例としては、2,2’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、2,2’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、2,2’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、2,2’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、2,2’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル、2,2’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル、2,3’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、2,3’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、2,3’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、2,3’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、2,3’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル、2,3’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル、3,3’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、3,3’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジメチルエーテル、3,3’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、3,3’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル、2,3’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル又は3,3’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジブチルエーテル等が挙げられる。
上記化合物の中でも、合成の容易さと光重合増感剤としての性能の良さから、特に、下記構造式に示す、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル(A)、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテル(B)、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテル(C)、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(i−ブチル)エーテル(D)、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ペンチル)エーテル(E)9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ヘプチル)エーテル(F)、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(2−エチルヘキシル)エーテル(G)、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジベンジルエーテル(H)が好ましい。
(製造方法)
次に、一般式(1)に示す9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の製造方法について説明する。一般式(1)に示す9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物は、出発原料に9−アントロン化合物を用いる。そして、該9−アントロン化合物と、2−置換−1,4−ナフトキノン化合物又は2,6−二置換−1,4−ベンゾキノン化合物とを酸の存在下反応させて、一般式(3)に示す9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物を得る(第一反応)。次いで、該9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物をエノール化して一般式(2)に示す9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物とし(第二反応)、最後に得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物をエーテル化する(第三反応)ことにより9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物を製造する方法である。
上記第一反応式(a)及び(b)において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示し、L、M及びNは、同一であっても異なっていても良く、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、アセトキシ基、塩素原子又は臭素原子のいずれかを示す。なお、以下、第一反応(a)と第一反応(b)を合わせて、第一反応という場合がある。
上記第二反応式において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。
上記第三反応式において、Rは炭素数1〜8のアルキル基又はアラルキル基を示し、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。
まず、第一反応から説明する。第一反応は出発原料に9−アントロン化合物と、2−置換−1,4−ナフトキノン化合物又は2,6−二置換−1,4−ベンゾキノン化合物を用いる。
第一反応において用いるアントロン化合物としては、9−アントロン、2−メチル−9−アントロン、3−メチル−9−アントロン、2−エチル−9−アントロン、3−エチル−9−アントロン、2−クロロ−9−アントロン、3−クロロ−9−アントロン、2−ブロモ−9−アントロン、3−ブロモ−9−アントロン等が挙げられる。2−置換−1,4−ナフトキノン化合物としては、例えば、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2−エチル−1,4−ナフトキノン、2−クロロ−1,4−ナフトキノン、2−ブロモ−1,4−ナフトキノン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−アセトキシ−1,4−ナフトキノン等が挙げられる。2,6−二置換−1,4−ベンゾキノン化合物としては、例えば、2,6−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジエチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジ(t−ブチル)−1,4−ベンゾキノン、2,3,5−トリメチル−1,4−ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジブロモ−1,4−ベンゾキノン等が挙げられる。
第一反応において、原料として一種類のアントロン化合物を用いた場合は、XとX’、YとY’は同一となる。しかし、置換基の異なる二種類のアントロン化合物を用いることにより、XとX’、YとY’が異なる一般式(3)の化合物を得ることも可能である。この場合は、XとX’、YとY’が同一である化合物との混合物となるが、カラム等でそれぞれを単離して本発明の用途に利用することができる。また、これらを単一化合物として単離することなく、混合物として、本発明の用途に用いることも可能である。
第一反応で用いる酸としては、無機酸、有機酸いずれも使用可能であるが、無機酸としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、四塩化チタン、四塩化スズ等が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。
第一反応で用いる溶媒としては、特に種類を選ばない。例えば、トルエン、キシレン、クロロナフタレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒が挙げられる。これらのうち、第一反応で副生する2−置換−1.4−ナフトヒドロキノン化合物の溶解度が高い溶媒が好ましい。特に好ましい溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の水溶性エーテル系溶媒である。
第一反応で用いる酸の添加量は、原料アントロン化合物に対して1重量%程度である。反応温度は50℃以上、150℃未満、より好ましくは90℃以上、120℃未満である。50℃未満では反応に時間がかかりすぎ、また、150℃以上では、ナフトキノンの分解物由来の不純物が増えて生成物の純度が上がらず、好ましくない。反応時間は反応温度によるが、通常1時間以上、4時間未満である。
次に第二反応について説明する。第二反応は、第一反応で得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物を、溶媒中で塩基の存在下で加熱し、次いで酸析することにより行われる。
第二反応で用いる塩基としては、無機塩基、有機塩基ともに使用できる。無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が使用可能である。これらの中でも特に、水酸化ナトリウムが好ましい。また、有機塩基としては、ピリジン、キノリン、ピペリジン等が挙げられる。
9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物に対する塩基の添加比率は、塩基が無機塩基か有機塩基かにより異なる。無機塩基の場合は、好ましくは2モル倍以上、15モル倍未満、より好ましくは5モル倍以上、10モル倍未満である。2モル倍未満では、原料の9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が未反応で残留し、また15モル倍以上添加しても、反応成績は向上することはない。
一方、塩基が有機塩基の場合も、添加比率の好ましい範囲の下限値及びより好ましい範囲の下限値は無機塩基の場合と同様であるが、該有機塩基を溶媒としても用いることもできるため、上限値は特に規定されない。該有機塩基を溶媒兼反応試薬として用いる場合は、原料9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物に対する添加比率は100モル倍に達する場合もある。ただし、必要以上に過剰に用いると、経済的でないだけでなく、反応濃度が薄くなり、効率的ではなくなる。
第二反応に用いる溶媒としては、9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が溶解すればよく、特に種類を選ばない。例えば、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール,i−プロパノール等のアルコール系の溶媒が挙げられる。中でも、エノール化反応の起こり易さから、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒が好ましい。また、無機塩基を用いる場合は、無機塩基を水に溶解して反応させることから、水混和性であるアミド等の溶媒が好ましい。
第二反応の反応温度は、通常50℃から100℃である。反応時間は反応温度に関係し一定ではないが、通常30分から2時間程度である。塩基を添加後、加熱して反応が進行するとともに、9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物のスラリーが溶解し赤色の溶液となる。その後、冷却しつつ、該赤色溶液を酸性の水溶液に投入すると、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物の白色沈殿が生成する。なお、得られる9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物は、有機塩基化合物と塩を形成する場合がある。
最後に第三反応について説明する。第三反応は、第二反応で得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物を無機塩基存在下、エーテル化剤を用いてエーテル化することにより製造する。
第三反応で用いる無機塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。これらの中でも特に水酸化ナトリウムが好ましい。
第三反応における無機塩基の添加量は、原料9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物に対して好ましくは2モル倍以上、5モル倍未満、より好ましくは3モル倍以上、4モル倍未満である。
第三反応で用いるエーテル化剤としては、ジアルキル硫酸又はハロゲン化アルキル化合物を用いることができる。ジアルキル硫酸としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジ−n−プロピル硫酸等が挙げられる。ハロゲン化アルキル化合物としては、臭化メチル、臭化エチル、臭化−n−プロピル、臭化−n−ブチル、臭化−n−ペンチル、臭化−i−ペンチル、臭化−n−ヘキシル、臭化−n−ヘプチル、臭化−n−オクチル、臭化−2−エチルヘキシル、臭化−n−ノニル、臭化−n−デシル、臭化−n−ドデシル、臭化ベンジル、臭化フェネチル、塩化メチル、塩化エチル、塩化−n−プロピル、塩化−n−ブチル、塩化−n−ペンチル、塩化−i−ペンチル、塩化−n−ヘキシル、塩化−n−ヘプチル、塩化−n−オクチル、塩化−2−エチルヘキシル、塩化ベンジル、塩化フェネチル等が挙げられる。
第三反応で用いるエーテル化剤の使用量は、原料9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物に対して好ましくは2モル倍以上、5モル倍未満、より好ましくは3モル倍以上、4モル倍未満である。
第三反応は、通常溶媒中で行うが、溶媒としては水溶性溶媒又は非水溶性溶媒が用いられる。水溶性溶媒としては、メタノール、エタノール、i−プロパノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。非水溶性溶媒としては,トルエン、キシレン、メチルナフアレン、クロロナフタレン等の芳香族系溶媒が挙げられる。
第三反応の反応温度としては、通常0℃以上、100℃未満、好ましくは20℃以上、60℃未満である。0℃未満では反応時間がかかりすぎ、100℃以上だと、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下するため、好ましくない。反応時間は反応温度によって異なるが、通常1時間から4時間程度である。また、反応の進行に伴って、ジエーテル化合物が析出する場合が多く、その場合は、析出物を濾過・乾燥することにより、目的化合物が得られる。
このように第一反応、第二反応、第三反応を経ることにより、本発明の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物は簡便かつ、収率良く得ることができる。
なお、上記第二反応と第三反応において、第二反応の生成物である9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物を単離せずに連続的に行わせることもできる。また、第二反応であるエノール化反応と第三反応であるエーテル化反応を同時に行うこともできる。
(ジオール体を単離せずに連続でエーテル化する方法)
ジオール体を単離せずに連続でエーテル化する方法としては、まず、上記第二反応で記載したように、第一反応で得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物を、溶媒中で塩基の存在下で加熱しエノール化する。上記の第二反応では、この後、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物を酸析処理により単離したが、連続で行う場合は、酸析処理を行わず、当該反応液に、直接エーテル化剤を添加することにより、引き続きエーテル化を実施する。
この場合のエノール化反応に用いる塩基は、無機塩基が好ましい。例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。これらの中でも特に水酸化ナトリウムが好ましい。
9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物に対する無機塩基の添加比率は、好ましくは2モル倍以上、15モル倍未満、より好ましくは5モル倍以上、10モル倍未満である。2モル倍未満では、原料の9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が未反応で残留し、また15モル倍以上添加しても、反応成績は向上することはない。
連続でエーテル化する方法の場合の溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール,i−プロパノール等のアルコール系の溶媒が挙げられる。中でも、エノール化反応の起こり易さから、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒が好ましい。
エノール化の反応温度は、通常50℃から100℃である。反応時間は反応温度に関係し一定ではないが、通常30分から2時間程度である。
エノール化反応に引き続いてエーテル化反応を行う。
エーテル化反応で用いるエーテル化剤としては、ジアルキル硫酸又はハロゲン化アルキル化合物を用いることができる。ジアルキル硫酸としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジ−n−プロピル硫酸等が挙げられる。ハロゲン化アルキル化合物としては、臭化メチル、臭化エチル、臭化−n−プロピル、臭化−n−ブチル、臭化−n−ペンチル、臭化−i−ペンチル、臭化−n−ヘキシル、臭化−n−ヘプチル、臭化−n−オクチル、臭化−2−エチルヘキシル、臭化−n−ノニル、臭化−n−デシル、臭化−n−ドデシル、臭化ベンジル、臭化フェネチル、塩化メチル、塩化エチル、塩化−n−プロピル、塩化−n−ブチル、塩化−n−ペンチル、塩化−i−ペンチル、塩化−n−ヘキシル、塩化−n−ヘプチル、塩化−n−オクチル、塩化−2−エチルヘキシル、塩化ベンジル、塩化フェネチル等が挙げられる。
エーテル化反応の反応温度としては、通常0℃以上、100℃未満、好ましくは20℃以上、60℃未満である。0℃未満では反応時間がかかりすぎ、100℃以上だと、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下するため、好ましくない。反応時間は反応温度によって異なるが、通常1時間から4時間程度である。また、反応の進行に伴って、ジエーテル化合物が析出する場合が多く、その場合は、析出物を濾過・乾燥することにより、目的化合物が得られる。
(エノール化反応とエーテル化反応を同時に行う方法)
次に、第二反応であるエノール化反応と第三反応であるエーテル化反応を同時に行う方法について説明する。当該方法では、第一反応で得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物を、溶媒中であらかじめエーテル化剤と混合しておく。そして、当該混合物に、無機塩基を添加することにより、エノール化させると同時にエーテル化することにより、目的とする9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物を得る方法である。
溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール,i−プロパノール等のアルコール系の溶媒が挙げられる。中でも、エノール化反応の起こり易さから、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒が好ましい。
エーテル化剤としては、ジアルキル硫酸又はハロゲン化アルキル化合物を用いることができる。ジアルキル硫酸としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジ−n−プロピル硫酸等が挙げられる。ハロゲン化アルキル化合物としては、臭化メチル、臭化エチル、臭化−n−プロピル、臭化−n−ブチル、臭化−n−ペンチル、臭化−i−ペンチル、臭化−n−ヘキシル、臭化−n−ヘプチル、臭化−n−オクチル、臭化−2−エチルヘキシル、臭化−n−ノニル、臭化−n−デシル、臭化−n−ドデシル、臭化ベンジル、臭化フェネチル、塩化メチル、塩化エチル、塩化−n−プロピル、塩化−n−ブチル、塩化−n−ペンチル、塩化−i−ペンチル、塩化−n−ヘキシル、塩化−n−ヘプチル、塩化−n−オクチル、塩化−2−エチルヘキシル、塩化ベンジル、塩化フェネチル等が挙げられる。
この反応に用いる塩基としては、無機塩基が好ましい。例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。これらの中でも特に水酸化ナトリウムが好ましい。
9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物に対する無機塩基の添加比率は、好ましくは2モル倍以上、15モル倍未満、より好ましくは5モル倍以上、10モル倍未満である。2モル倍未満では、原料の9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が未反応で残留し、また15モル倍以上添加しても、反応成績は向上することはない。
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、100℃未満、好ましくは20℃以上、60℃未満である。0℃未満では反応時間がかかりすぎ、100℃以上だと、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下するため、好ましくない。反応時間は反応温度によって異なるが、通常1時間から4時間程度である。
(光重合増感剤)
本発明の一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物は、光カチオン重合及び光ラジカル重合における光重合増感剤として用いることができる。
(一般式(1)において、Rは、炭素数1〜8のアルキル基又はアラルキル基を示し、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
本発明の光重合増感剤は、光重合開始剤の重合開始能を高めるために用いられる。光重合開始剤と光重合増感剤は、別々に光重合性化合物に添加してもよいが、光重合開始剤と光重合増感剤を混合した光重合開始剤組成物として、光重合性化合物に添加してもよい。また、本発明の一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物を光重合増感剤として単独で用いることもできるが、一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物を複数種類併用して用いることもできる。さらにまた、本発明の効果を損なうことのない範囲で、本発明の一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物以外の光重合増感剤を併用してもよい。
(光重合開始剤組成物)
次に本発明の光重合開始剤組成物について説明する。本発明の光重合開始剤組成物は、光重合増感剤として本発明の一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物と、光重合開始剤を含有する組成物である。光重合開始剤としては、オニウム塩を用いることができる。オニウム塩としては、通常スルホニウム塩又はヨードニウム塩が用いられる。スルホニウム塩としては、S,S,S’,S’−テトラフェニル−S,S’−(4、4’−チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサメトキシフォスフェート、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート等が挙げられ、例えばダウ・ケミカル社製UVI6992を用いることができる。一方、ヨードニウム塩としては、4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサメトキシフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサメトキシアンチモネート、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタメトキシフェニルボレートが挙げられ、例えばチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製イルガキュア250(イルガキュアはチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社の登録商標)、ローディア社製2074を用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても2種以上併用しても構わない。
本発明の光重合開始剤組成物において、光重合増感剤である本発明の一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の使用量は、特に限定されないが、光重合開始剤に対して通常5重量%以上、100重量%未満の範囲、好ましくは10重量%以上、50重量%未満の範囲である。使用量が5重量%未満では光重合性化合物を光重合させるのに時間がかかりすぎてしまい、一方、100重量%以上使用しても添加に見合う効果は得られない。
(光重合性組成物)
次に本発明の光重合性組成物について説明する。本発明の光重合性組成物は、本発明の光重合開始剤組成物と、光カチオン重合性化合物又は光ラジカル重合性化合物とを含有する組成物である。
本発明の光重合性組成物において、用いることができる光カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。エポキシ化合物として一般的なものは脂環式エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、芳香族のグリシジルエーテル等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートが挙げられ、例えばダウ・ケミカル社製UVR6105、UVR6110を用いることができる。エポキシ変性シリコーンとしては、東芝GEシリコーン製UV−9300等が挙げられる。芳香族グリシジル化合物としては、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。これらの光カチオン重合性化合物は、単一化合物でも二種以上の混合物であっても良い。
光ラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の二重結合を有する有機化合物を用いることができる。これらのラジカル重
合性化合物のうち、フィルム形成能等の面から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル(以下、両者をあわせて「(メタ)アクリル酸エステル」という)が好 ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリ
ル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチ ロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリ
ブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレート等が挙げられる。これらの光ラジカル重合性化合物は、単一化合物でも二種以上の混合物であっても良い。
本発明の光カチオン重合性組成物又は光ラジカル重合性組成物における光重合開始剤組成物の使用量は、光重合性組成物に対して0.005重量%以上、10重量%未満の範囲、好ましくは0.025重量%以上、5重量%未満である。0.005重量%未満だと光重合性組成物を光重合させるのに時間がかかってしまい、一方10重量%以上だと光重合させて得られる硬化物の硬度が低下し、硬化物の物性を悪化させるため好ましくない。
本発明の光重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
(光硬化物)
次に本発明の光硬化物について説明する。本発明の光重合性組成物に光を照射すると、光硬化物を得ることができる。本発明の光重合性組成物を光硬化する場合、当該光重合性組成物をフィルム状に成形して光硬化させることもでき、また、光重合性組成物を塊状に成形して光硬化させることもできる。フィルム状に成形して光硬化させる場合は、液状の光重合性組成物を例えばポリエステルフィルムなどの基材にバーコーターなどを用いて膜厚5〜300ミクロンになるように塗布することができる。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。このようにして調製した膜に、250〜500nmの波長範囲を含む紫外線を1〜1000mW/cm程度の強さで光照射することにより光硬化物を得ることができる。用いる光源としてはメタルハライドランプ、キセノンランプ、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、365nm紫外線LED、青色LED、白色LED、フュージョン社製のDバルブ、Vバルブ等が挙げられる。また、太陽光で光硬化することも可能である。
(タックフリーテスト)
本発明の光重合性組成物が光硬化したかどうかを判定する方法としては、例えば、タックフリーテスト(指触テスト)により行うことができる。すなわち、光重合性組成物に光照射すると、硬化して表面のタック(べたつき)が取れるため、光照射を開始してからタック(べたつき)が取れるまでの時間を測定し、光硬化時間を計測する方法である。
(耐マイグレーション性の判定)
本発明の光重合性組成物に含まれる光重合増感剤がフィルム等に移行(マイグレーション)するかどうかを判定する方法としては、光重合増感剤を含む光重合性組成物を薄いフィルム状物に塗布したものを作成し、その上にポリエチレンフィルムを被せて一定温度で一定期間保管し、その後ポリエチレンフィルムを剥がし、光重合増感剤がポリエチレンフィルムに移行しているかを調べ、耐マイグレーション性を判定した。剥がしたポリエチレンフィルムは、アセトンで表面の組成物を洗った後乾燥し、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、光重合増感剤に起因する吸収強度の増大を調べることにより耐マイグレーション性を測定した。なお、当該測定には、紫外・可視分光光度計(島津製作所製、型式:UV2200)を用いた。比較例の化合物である9,10−ジブトキシアントラセンと量的な比較するために、得られた吸光度を9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度の値に換算した。換算に当たっては、紫外吸光光度計により本発明の化合物及び9,10−ジブトキシアントラセンの260nmにおける吸光度を測定し、その吸光度の値とモル濃度からそれぞれのモル吸光係数を計算し、その比をもちいて換算した。
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部は重量部である。生成物の確認は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS
K0064に準拠)
(2)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(3)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX
FT NMR Spectorometer
(光重合増感剤の合成実施例)
(合成例1)9−アントロンと2−メチル−1,4−ナフトキノンによる9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンの合成
温度計、攪拌機付きの500ml三口フラスコに、窒素雰囲気下9−アントロン21.2g(110ミリモル)、2−メチル−1,4−ナフトキノン17.2g(100ミリモル)、1,4-ジオキサン85g、メタンスルホン酸0.2gを仕込んだ。該スラリーを106℃のオイルバスにつけて加熱したところ、いったんスラリーが溶けて黄色の溶液となり、その後数分して結晶が多量析出した。反応混合物を室温まで冷却し、吸引濾過、1,4−ジオキサン洗い、乾燥して、9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンの白い結晶16.5g(42ミリモル)を得た。原料の9−アントロンに対する収率は76モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンの物性値
(1) 融点:260℃以上
(2)
IR(KBr,cm−1):1662,1600,1463,1322,1100,940,790,693.
(3)
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=4.79(s,2H),6.88(d,J=8Hz,4H),7.36−7.48(m,8H),7.94(d,J=8Hz,4H).
(合成例2)9−アントロンと2,6−ジメチル−1,4−ベンゾキノンによる9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコに、窒素雰囲気下9−アントロン4.27g(22ミリモル)、2,6−ジメチル−1,4−ベンゾキノン2.72g(20ミリモル)、1,4−ジオキサン20g、メタンスルホン酸0.1gを仕込んだ。該スラリーを106℃のオイルバスにつけて加熱したところ、いったん溶けて黄色の溶液となり、その後数分して結晶が多量析出した。反応混合物を室温まで冷却し、吸引濾過、1,4−ジオキサン洗い、乾燥して、9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンの白い結晶3.70g(9.5ミリモル)を得た。原料の9−アントロンに対する収率は87モル%であった。
得られた白い結晶をIRとH−NMRで分析したところ、合成例1と同様の分析結果が得られ、9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンであることを確認した。
(合成例3)9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンのエノール化による9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオールの合成(無機塩基を使用した場合)
温度計、攪拌機付の200ml三口フラスコ中窒素雰囲気下、合成例1と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン3.86g(10ミリモル)をジメチルアセトアミド50ml中に分散させた。次いで、水酸化ナトリウム3.0g(75ミリモル)の水15g溶液を室温で添加した。すると、白い色のスラリーが急に赤くなり、溶け始めた。その後、バス温を65℃で加熱したところ、30分後にはスラリーが全て溶けて赤色の溶液となった。さらに30分加熱後、反応液を室温まで冷却し、該反応液を酸性水溶液250mlに投入した。すると、多量の沈殿が生じたので、吸引濾過・水洗い・乾燥し、薄黄色の粉末4.60g(8.2ミリモル)を得た。このものは9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオールに溶媒のジメチルアセトアミドが2分子付加したものであった。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンに対する単離収率は82モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオールのジメチルアセトアミド2分子付加物の物性値
(1)融点:260℃以上
(2)IR(KBr、cm−1):3440,3060,1620,1560,1422,1380,1365,1300,1224,1210,1090,1021,766,673.
(3)H−NMR(400MHz,アセトン−d):δ=1.96(s,6H),3.02(s,12H),6.97−7.04(m,4H),7.12−7.20(m,4H),7.43(d,J=8Hz,4H),8.63(d,J=8Hz,4H),9.46(s,2H).
(合成例4)9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンのエノール化による9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオールの合成(有機塩基を使用した場合)
温度計、攪拌機付の300ml三口フラスコ中、合成例1と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン3.86g(10ミリモル)をピリジン80gに分散させた。次いで、バス温106℃で加熱したところ、速やかに黄色の溶液となった。さらに30分加熱後、反応液を室温まで冷却し、ヘキサン400mlに投入した。すると多量の沈殿が生じたので、吸引濾過乾燥し、黄緑色の粉末3.55g(6.5ミリモル)を得た。このものは9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオールにピリジンが2分子付加したものであった。次に、得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール・ピリジン2分子付加物をアセトン50mlに溶解し、メタンスルホン酸1.5g(15.6ミリモル)を加えた。すると薄茶色の液となり次第に沈殿が出た。さらに1時間後、沈殿物を吸引濾過・乾燥し、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオールの薄茶色の粉末2.20g(5.7ミリモル)を得た。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンに対する単離収率は57モル%であった。
中間体の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール・ピリジン2分子付加物の物性値
(1) 融点:260℃以上
(2) IR(KBr,cm−1):3420,3026,2930,1680,1620,1596,1560,1440,1340,1320,1216,1170,1092,900,768,700,672.
(3) H−NMR(400MHz,アセトン−d):δ=7.02(d,J=8Hz,4H),7.11−7.18(m,4H),7.28−7.38(m,4H),7.39−7.49(m,4H),7.74(t,J=8Hz,2H),8.58(d,J=8Hz,4H),8.65(d,J=8Hz,4H),9.48(bs,2H).
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオールの物性値
(1) 融点:260℃以上
(2) IR(KBr,cm−1):3400,3250,1696,1560,1370,1310,1207,1090,770.
(3) H−NMR(400MHz,アセトン−d):δ=7.01(d,J=8Hz,4H),7.12−7.18(m,4H),7.38−7.45(m,4H),8.64(d,J=8Hz,4H),9.42(bs,2H).
(実施例1)9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル(化合物A)の合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコにジメチルアセトアミド25g、水20gを仕込み、合成例1と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン3.86g(10ミリモル)を加えた。次に、得られた白いスラリーに窒素雰囲気下、水酸化ナトリウム2.0g(50ミリモル)の水10ml溶液を加えた。50℃で30分加熱して赤い溶液を得た。次いで、該溶液を室温まで冷却し、次にジエチル硫酸(Mw154)3.85g(25ミリモル)のジメチルアセトアミド15g溶液を加えた。10時間攪拌後、該溶液の赤い色は消えて多量の沈殿物が析出した。酸性水中に該混合物を投入し、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル(Mw442)の橙色の粉末4.0g(9.0ミリモル)を得た。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンに対する収率は90モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルの物性値
(1)融点:205−207℃
(2)IR(KBr,cm−1):3060,2980,2930,1620,1440,1420,1370,1340,1170,1086,1020,848,770,730,680.
(3)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=8.44(4H,d,J=9Hz),7.44(4H,dd,J=9Hz,J=2Hz),7.06−7.19(8H,m),4.48(4H,q,J=8Hz),1.76(6H,t,J=8Hz).
(実施例2)9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテル(化合物B)の合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコにジメチルアセトアミド20gを仕込み、合成例1と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン1.54g(4ミリモル)、臭化−n−プロピル1.97g(16ミリモル)を加えた。すると白いスラリーが得られたので、該スラリーに窒素雰囲気下、水酸化ナトリウム1.20g(30ミリモル)の水6ml溶液を加えた。すると直ちに液の色は赤くなり、次第にスラリーは溶解した。その後、そのまま室温で10時間攪拌したところ、多量の沈殿物が析出した。該スラリーを酸性水中に投入し、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテル(Mw470)の白黄色の粉末1.76g(3.72ミリモル)を得た。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンに対する収率は93モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの物性値
(1)融点:260℃以上
(2)IR(KBr,cm−1):3060,2975,2940,2880,1620,1440,1420,1350,1340,1168,1096,980,945,772,682.
(3)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=8.46(4H,d,J=9Hz),7.44(4H,dd,J=9Hz,J=2Hz),7.04−7.17(8H,m),4.35(4H,t,J=8Hz),2.14−2.26(4H,m),1.31(6H,t,J=8Hz).
(実施例3)9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテル(化合物C)の合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコにジメチルアセトアミド20gを仕込み、合成例1と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン1.54g(4ミリモル)、臭化−n−ブチル1.64g(12ミリモル)を加えた。すると白いスラリーが得られたので、該スラリーに窒素雰囲気下、水酸化ナトリウム1.20g(30ミリモル)の水6ml溶液を加えた。すると直ちに液の色は赤くなり、次第にスラリーは溶解した。その後、そのまま室温で10時間攪拌したところ、少量の沈殿物が出た。酸性水中に該溶液を投入し、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテル(Mw496)の白黄色の粉末1.93g(3.90ミリモル)を得た。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンに対する収率は97モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテルの物性値
(1)融点:252−254℃
(2)IR(KBr,cm−1):3060,2970,2940,2875,1620,1440,1420,1352,1170,1090,1022,965,868,772,682.
(3)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=8.47(4H,d,J=9Hz),7.45(4H,dd,J=9Hz,J=2Hz),7.06−7.18(8H,m),4.39(4H,t,J=8Hz),2.11−2.21(4H,m),1.74−1.84(4H,m),1.14(6H,t,J=8Hz).
(実施例4)9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(i−ブチル)エーテル(化合物D)の合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコにジメチルアセトアミド30gを仕込み、合成例1と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン3.86g(10ミリモル)、臭化−i−ブチル5.48g(40ミリモル)を加えた。すると白いスラリーが得られたので、該スラリーに窒素雰囲気下、水酸化ナトリウム4.0g(100ミリモル)の水10ml溶液を加えた。すると直ちに液の色は赤くなり、次第にスラリーは溶解した。その後、そのまま室温で10時間攪拌したところ、多量の沈殿物が析出した。酸性水中に該溶液を投入し、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(i−ブチル)エーテル(Mw498)の白黄色の粉末7.5g(9.00ミリモル)を得た。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンに対する収率は75モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(i−ブチル)エーテルの物性値
(1)融点:255℃以上
(2)IR(KBr,cm−1): 3070,2960,2880,1621,1562,1472,1440,1420,1380,1351,1340,1168,1092,992,772,682.
(3)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=8.45(4H,d,J=9Hz),7.44(4H,dd,J=9Hz,J=2Hz),7.03−7.18(8H,m),4.18(4H,t,J=8Hz),2.46−2.60(2H,m),1.14(12H,t,J=8Hz).
(実施例5)9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ペンチル)エーテル(化合物E)の合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコにジメチルアセトアミド30gを仕込み、合成例1と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン3.86g(10ミリモル)、臭化−n−ペンチル4.50g(30ミリモル)を加えた。すると白いスラリーが得られたので、該スラリーに窒素雰囲気下、水酸化ナトリウム2.0g(50ミリモル)の水10ml溶液を加えた。すると直ちに液の色は赤くなり、次第にスラリーは溶解した。その後、そのまま室温で10時間攪拌したところ、多量の沈殿物が析出した。酸性水中に該溶液を投入し、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ペンチル)エーテル(Mw524)の白黄色の粉末3.8g(7.2ミリモル)を得た。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンに対する収率は72モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ペンチル)エーテルの物性値
(1)融点:204−206℃
(2)IR(KBr,cm−1):3090,2950,2940,2890,1620,1440,1420,1347,1164,1090,973,771,681.
(3)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=8.46(4H,d,J=9Hz),7.43(4H,dd,J=9Hz,J=2Hz),7.04−7.17(8H,m),4.39(4H,t,J=8Hz),2.12−2.26(4H,m),1.66−1.80(4H,m),1.50−1.66(4H,m),1.07(6H,t,J=8Hz).
(実施例6)9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ヘプチル)エーテル(化合物F)の合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコにジメチルアセトアミド20gを仕込み、合成例1と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン1.54g(4ミリモル)、臭化−n−ヘプチル2.86g(12ミリモル)を加えた。すると白いスラリーが得られたので、該スラリーに窒素雰囲気下、水酸化ナトリウム1.20g(30ミリモル)の水6ml溶液を加えた。すると直ちに液の色は赤くなり、次第にスラリーは溶解した。その後、そのまま室温で10時間攪拌したところ、少量の沈殿物が出た。酸性水中に該溶液を投入し、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ヘプチル)エーテル(Mw582)の白黄色の粉末2.25g(3.86ミリモル)を得た。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンに対する収率は96モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ヘプチル)エーテルの物性値
(1)融点:151−152℃
(2)IR(KBr,cm−1):2940,2860,1348,1092,770,680.
(3)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=1.34−1.48(m,8H),1.48−1.60(m,4H),1.68−1.81(m,4H),2.10−2.23(m,4H),4.37(d,J=8Hz,4H),7.02−7.17(m,8H),7.44(dd、J=9Hz,J=2Hz,4H),8.44(d,J=9Hz,4H).
(実施例7)9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(2−エチルヘキシル)エーテル(化合物G)の合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコにジメチルアセトアミド50gを仕込み、合成例1と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン3.86g(10ミリモル)、臭化−2−エチルヘキシル7.72g(40ミリモル)を加えた。すると白いスラリーが得られたので、該スラリーに窒素雰囲気下、水酸化ナトリウム4.0g(100ミリモル)の水15ml溶液を加えた。すると直ちに液の色は赤くなり、次第にスラリーは溶解した。その後、そのまま室温で10時間攪拌したところ、該スラリーは全体がゾル化していた。攪拌したところ該ゾルはとろみのある液状物となった。酸性水中に該ゾルを投入したところ、黄色の沈殿が多量に出た。吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(2−エチルヘキシル)エーテル(Mw610)の白黄色の粉末5.4g(9.0ミリモル)を得た。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’−(9H,9H’)−ジオンに対する収率は90モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(2−エチルヘキシル)エーテルの物性値
(1)融点:174−175℃
(2)IR(KBr,cm−1):3065,2960,2930,2875,1620,1600,1560,1460,1440,1418,1380,1344,1163,1090,1020,768,680.
(3)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=8.45(4H,d,J=9Hz),7.46(4H,dd,J=9Hz,J=2Hz),7.06−7.19(8H,m),4.27(4H,t,J=8Hz),2.10−2.21(2H,m),1.87−1.97(2H,m),1.75−1.86(4H,m),1.62−1.75(2H,m),1.42−1.57(8H,m),1.14(6H,t,J=8Hz),1.01(6H,t,J=8Hz).
(実施例8)9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジベンジルエーテル(化合物H)の合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコにジメチルアセトアミド30gを仕込み、合成例4と同様にして得られた9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール3.86g(10ミリモル)、臭化ベンジル5.10g(30ミリモル)を加えた。すると白いスラリーが得られたので、該スラリーに窒素雰囲気下、水酸化ナトリウム2.0g(50ミリモル)の水14ml溶液を加えた。すると直ちに液の色は赤くなり、次第にスラリーは溶解した。その後、そのまま室温で10時間攪拌したところ、多量の沈殿物が析出した。酸性水中に該溶液を投入し、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジベンジエーテル(Mw566))の白黄色の粉末4.8g(8.5ミリモル)を得た。原料9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオールに対する収率は85モル%であった。
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジベンジルエーテルの物性値
(1)融点:199−201℃
(2)IR(KBr,cm−1):3060,3036,2940,2880,1620,1416,1414,1342,1165,1090,986,772,732,682,608.
(3)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=8.50(4H,d,J=9Hz),7.77(4H,d,J=8Hz),7.54(4H,d,J=8Hz),7.46(4H,dd,J=9Hz,J=2Hz),7.22−7.29(2H,m),7.10−7.1(8H,m),5.55(4H,s).
<硬化試験実施例>
<カチオン硬化例>ヨードニウム塩
(実施例9)
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ化合物(ダウ・ケミカル社製UVR6105)100部に、光重合開始剤としてヨードニウム塩(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製イルガキュア250)2部、光重合増感剤として実施例1で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテル(化合物A)1.0部を混合して得た光重合開始剤組成物を添加し、光重合性組成物を調製した。このようにして調製した当該組成物を膜厚100ミクロンのポリエステルフィルム(東レ製ルミラー、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)の上にバーコーター(No.8)を用いて膜厚が12ミクロンになるように塗布した。さらに当該組成物を厚さ30ミクロンの低密度ポリエチレンフィルムで覆い、その上からサンダー社製紫外線LEDを用いて光照射することにより光硬化物を得た。照射光の中心波長は395nmで照射強度は4mW/cm2である。一定時間毎に該ポリエチレンフィルムを剥がしてべたつき(タック)を指触により確認した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は10秒であった。
(実施例10)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルの代わりに、実施例2と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテル(化合物B)を用いること以外は、実施例9と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は9秒であった。
(実施例11)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルの代わりに、実施例3と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテル(化合物C)を用いること以外は、実施例9と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は10秒であった。
(実施例12)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルの代わりに、実施例4と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(i−ブチル)エーテル(化合物D)を用いること以外は、実施例9と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は10秒であった。
(実施例13)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルの代わりに、実施例5と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n-ペンチル)エーテル(化合物E)を用いること以外は、実施例9と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は11秒であった。
(実施例14)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルの代わりに、実施例6と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n-ヘプチル)エーテル(化合物F)を用いること以外は、実施例9と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は11秒であった。
(実施例15)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルの代わりに、実施例7と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(2−エチルヘキシル)エーテル(化合物G)を用いること以外は、実施例9と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は11秒であった。
(実施例16)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルの代わりに、実施例8と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジベンジルエーテル(化合物H)を用いること以外は、実施例9と同様にして光硬化組成物をを調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は12秒であった。
(比較例1)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルを添加しない以外は実施例9と同様に光重合性組成物を調製した。このようにして調製した当該組成物を膜厚100ミクロンのポリエステルフィルムの上にバーコーター(No.8)を用いて膜厚が12ミクロンになるように塗布した。さらに当該組成物を厚さ30ミクロンの低密度ポリエチレンフィルムで覆い、その上からサンダー社製紫外線LEDを用いて光照射した。照射光の中心波長は395nmで照射強度は4mW/cm2である。一定時間毎に該ポリエチレンフィルムを剥がしてべたつき(タック)を指触により確認した。しかし、当該組成物は5分間照射しても硬化しなかった。
(比較例2)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエチルエーテルの代わりに公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン(化合物I)1.0部を添加した以外は実施例9と同様に光重合性組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は11秒であった。
実施例9〜16及び比較例1、2の結果を表にすると、以下の通りとなる。
なお、本発明の化合物A〜H及び公知の化合物Iは以下の化学構造式の化合物である。
<カチオン硬化例>スルホニウム塩
(実施例17)
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ化合物(ダウ・ケミカル社製UVR6105)100部に、光重合開始剤としてスルホニウム塩(ダウ・ケミカル社製UVI−6992)4部、光重合増感剤として実施例2と同様にして合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテル(化合物B)1.0部を混合して得た光重合開始剤組成物を添加し、光重合性組成物を調製した。このようにして調製した当該組成物を膜厚100ミクロンのポリエステルフィルムフィルム(東レ製ルミラー、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)の上にバーコーター(No.8)を用いて膜厚が12ミクロンになるように塗布した。さらに当該組成物を厚さ30ミクロンの低密度ポリエチレンフィルムで覆い、その上からサンダー社製紫外線LEDを用いて光照射することにより光硬化物を得た。一定時間毎に該ポリエチレンフィルムを剥がしてべたつき(タック)を指触により確認した。照射光の中心波長は395nmで照射強度は4mW/cm2である。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は23秒であった。
(実施例18)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに、実施例3と同様にして合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテル(化合物C)を用いること以外は、実施例17と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は25秒であった。
(実施例19)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに、実施例7と同様にして合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(2−エチルヘキシル)エーテル(化合物G)を用いること以外は、実施例17と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は27秒であった。
(比較例3)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルを添加しない以外は実施例17と同様に光重合性組成物を調製した。このようにして調製した当該組成物を膜厚100ミクロンのポリエステルフィルムの上にバーコーター(No.8)を用いて膜厚が12ミクロンになるように塗布した。さらに当該組成物を厚さ30ミクロンの低密度ポリエチレンフィルムで覆い、その上からサンダー社製紫外線LEDを用いて光照射した。一定時間毎に該ポリエチレンフィルムを剥がしてべたつき(タック)を指触により確認した。照射光の中心波長は395nmで照射強度は4mW/cm2である。しかし、当該組成物は5分間照射しても硬化しなかった。
(比較例4)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン(化合物I)1.0部を添加した以外は実施例17と同様に光重合性組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は25秒であった。
実施例17〜19、及び比較例3、4の結果を表にすると、以下の通りとなる。
<ラジカル硬化例>
(実施例20)
光ラジカル重合性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート100部に、光重合開始剤としてヨードニウム塩(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製イルガキュア250)2部、光重合増感剤として実施例2と同様にして合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテル(化合物B)1.0部を混合して得た光重合開始剤組成物を添加し、光重合性組成物を調製した。このようにして調製した当該組成物を膜厚100ミクロンのポリエステルフィルム(東レ製ルミラー、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)の上にバーコーター(No.8)を用いて膜厚が12ミクロンになるように塗布した。さらに当該組成物を厚さ30ミクロンの低密度ポリエチレンフィルムで覆い、その上からサンダー社製紫外線LEDを用いて光照射することにより光硬化物を得た。照射光の中心波長は395nmで照射強度は4mW/cm2である。一定時間毎に該ポリエチレンフィルムを剥がしてべたつき(タック)を指触により確認した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は2秒であった。
(実施例21)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに、実施例3と同様にして合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテル(化合物C)を用いること以外は、実施例20と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は2.5秒であった。
(実施例22)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに、実施例5と同様にして合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n-ペンチル)エーテル(化合物E)を用いること以外は、実施例20と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は2.5秒であった。
(実施例23)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに、実施例7と同様にして合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(2−エチルヘキシル)エーテル(化合物G)を用いること以外は、実施例20と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は3秒であった。
(実施例24)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに、実施例8と同様にして合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジベンジルエーテル(化合物H)を用いること以外は、実施例20と同様にして光硬化組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は3秒であった。
(比較例5)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルを添加しない以外は実施例20と同様に光重合性組成物を調製し、光硬化試験を実施した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」を測定したが、当該組成物は5分照射後しても硬化しなかった。
(比較例6)
光重合増感剤として9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン(化合物I)1.0部を添加した以外は実施例20と同様に光重合性組成物を調製し、光照射することにより光硬化物を得た。光照射開始からタックが無くなるまでの時間「タック・フリー・タイム」は2.5秒であった。
実施例20〜24、及び比較例5、6の結果を表にすると、以下の通りとなる。
実施例9〜24及び比較例1〜6の結果より、次のことが明らかである。すなわち、本発明の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジアルキルエーテル化合物が光カチオン重合、光ラジカル重合の両方において、光重合増感効果を有し、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンと比較しても同等の増感効果を有していることがわかる。
<マイグレーション試験実施例>
(実施例25)
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ化合物(ダウ・ケミカル社製UVR6105)100部に、光重合増感剤として実施例2と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテル(化合物B)1.0部を添加し、調製した組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)上で膜厚が12ミクロンになるようにバーコーター(No.8)を用いて塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したものと二日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、フィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9−プロポキシ−10−(1,4−ジプロポキシ−2−ナフチル)アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算したところ、その吸光度は、一日保管後0.01、二日保管後0.02であった。
(実施例26)
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに実施例5と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ペンチル)エーテル(化合物E)を使用すること以外は実施例25と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9−ペンチルオキシ−10−(1,4−ジペンチルオキシ−2−ナフチル)アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.05、二日保管後0.06であった。
(実施例27)
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに実施例8と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジベンジルエーテル(化合物H)を使用すること以外は実施例25と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9−ベンジルオキシ−10−(1,4−ジベンジルオキシ−2−ナフチル)アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.00、二日保管後0.00であった。
(比較例7)
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに9,10−ジブトキシアントラセン(化合物I)を使用すること以外は実施例25と同様に調製した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後0.61、二日保管後0.60であった。
(実施例28)
光ラジカル重合性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート100部に、光重合増感剤として実施例2と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテル(化合物B)1.0部を添加し、調製した組成物をポリエステルフィルム上で膜厚が12ミクロンになるようにバーコーターを用いて塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したものと二日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い、乾燥した後、フィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を求めた。得られた9−プロポキシ−10−(1,4−ジプロポキシ−2−ナフチル)アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.03、二日保管後0.07であった。
(実施例29)
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに実施例5と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ペンチル)エーテル(化合物E)を使用すること以外は実施例28と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9−エトキシ−10−(1,4−ジエトキシ−2−ナフチル)アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.07、二日保管後0.08であった。
(実施例30)
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに実施例8と同様の方法で合成した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジベンジルエーテル(化合物H)を使用すること以外は実施例28と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9−ベンジルオキシ−10−(1,4−ジベンジルオキシ−2−ナフチル)アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.02、二日保管後0.02であった。
(比較例8)
9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルの代わりに9,10−ジブトキシアントラセン(化合物I)を使用すること以外は実施例28と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、得られた9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後1.10、二日保管後1.08であった。
実施例25〜30、及び比較例7、8の結果を表にすると、以下の通りとなる。
実施例25〜30、比較例7、8の結果より、本発明の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物は9,10−ジブトキシアントラセンに比べて、光カチオン重合性組成物、光ラジカル重合性組成物の両方において、ポリエチレンフィルムに対して極めて低いマイグレーションを示すことが分かる。
<耐昇華性試験実施例>
<カチオン硬化>
(実施例31)
実施例10において調製した光硬化物をオーブン中で180℃に加熱した。一定時間ごとに硬化物をオーブンから出して、UVスペクトルを測定し、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルに起因する405nmの吸収強度を測定した。その結果、30分間加熱した後でも、当該吸収強度に変化は認められず、添加した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルは昇華していないことが判明した。したがって、昇華率は0%であった。
(実施例32)
実施例11において調製した光硬化物をオーブン中で180℃に加熱した。一定時間ごとに硬化物をオーブンから出して、UVスペクトルを測定し、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテルに起因する405nmの吸収強度を測定した。その結果、30分間加熱した後でも、当該吸収強度に変化は認められず、添加した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテルは昇華していないことが判明した。したがって、昇華率は0%であった。
(比較例9)
比較例2において調製した光硬化物をオーブン中で180℃に加熱した。一定時間ごとに硬化物をオーブンから出して、UVスペクトルを測定し、9,10−ジブトキシアントラセンに起因する405nmの吸収強度の変化を昇華の指標として測定した。その結果、30分間加熱した後、当該吸収強度は34%減少した。したがって、昇華率は34%であった。
実施例31、32、及び比較例9の結果から次のことが明らかである。すなわち、光カチオン重合において、本発明の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物はまったく昇華が認められなかった。一方、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンは昇華が認められることから、本発明の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物は極めて高い耐昇華性を有することが分かる。
<ラジカル硬化><耐昇華性試験>
(実施例33)
実施例17において調製した光硬化物をオーブン中で180℃に加熱した。一定時間ごとに硬化物をオーブンから出して、UVスペクトルを測定し、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルに起因する405nmの吸収強度を測定した。その結果、30分間加熱した後でも、当該吸収強度に変化は認められず、添加した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルは昇華していないことが判明した。したがって、昇華率は0%であった。
(実施例34)
実施例18において調製した光硬化物をオーブン中で180℃に加熱した。一定時間ごとに硬化物をオーブンから出して、UVスペクトルを測定し、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−ブチル)エーテルに起因する405nmの吸収強度を測定した。その結果、30分間加熱した後でも、当該吸収強度に変化は認められず、添加した9,9’−ビアントラセン−10,10’−ビス(n−プロピル)エーテルは昇華していないことが判明した。したがって、昇華率は0%であった。
(比較例10)
比較例3において調製した光硬化物をオーブン中で180℃に加熱した。一定時間ごとに硬化物をオーブンから出して、UVスペクトルを測定し、9,10−ジブトキシアントラセンに起因する405nmの吸収強度の変化を昇華の指標として測定した。その結果、30分間加熱した後、当該吸収強度は41%減少した。したがって、昇華率は41%であった。
実施例33、34及び比較例10の結果から次のことが明らかである。すなわち、光ラジカル重合において、本発明の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物はまったく昇華が認められなかった。一方、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンは昇華が認められることから、本発明の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物は極めて高い耐昇華性を有することが分かる。
本発明の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物は、光カチオン重合及び光ラジカル重合において、公知の光重合増感剤である9,10−ジアルコキシアントラセン化合物と比較して、同等の光重合増感能を有するだけでなく、耐マイグレーション性及び耐昇華性が高い優れた化合物であり、光重合増感剤として極めて有用な化合物である。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物。

    (一般式(1)において、Rは、炭素数1〜8のアルキル基又はアラルキル基を示し、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
  2. 下記一般式(2)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジオール化合物をエーテル化することからなる、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の製造方法。

    (一般式(2)において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
  3. 下記一般式(3)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物をエノール化し、次いでエーテル化することからなる、9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の製造方法。

    (一般式(3)において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
  4. 下記一般式(3)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が、アントロン化合物と2−置換−1,4−ナフトキノン化合物との反応で得られることを特徴とする、請求項3に記載の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の製造方法。

    (一般式(3)において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
  5. 下記一般式(3)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が、アントロン化合物と2、6−二置換−1,4−ベンゾキノン化合物との反応で得られることを特徴とする、請求項3に記載の9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物の製造方法。

    (一般式(3)において、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
  6. 下記一般式(1)で示される9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジエーテル化合物を含有する光重合増感剤。

    (一般式(1)において、Rは、炭素数1〜8のアルキル基又はアラルキル基を示し、X、X’、Y及びY’は同一であっても異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
  7. 請求項6に記載の光重合増感剤と、光重合開始剤としてオニウム塩とを含有する光重合開始剤組成物。
  8. 請求項7に記載の光重合開始剤組成物と光カチオン重合性化合物とを含有する光重合性組成物。
  9. 請求項7に記載の光重合開始剤組成物と光ラジカル重合性化合物とを含有する光重合性組成物。
  10. 請求項8又は9に記載の光重合性組成物を硬化してなる光硬化物。
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