JP2013087539A - 被覆構造および海洋鋼構造物 - Google Patents
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Abstract
【課題】海洋環境において防食性を高めつつ比較的安価に構成することができる被覆構造およびこの被覆構造を用いる海洋鋼構造物を提供する。
【解決手段】海水環境で用いられる鋼管杭1であって、この鋼管杭1は、炭素鋼からなる鋼管2の外周に、ペトロラタム系防食材からなる防食層3が設けられ、この外側にさらに電気的絶縁部4が設けられ、さらにこの外側に耐海水性ステンレス鋼からなる被覆部材5が設けられて構成されている。被覆部材5は、耐海水性ステンレス鋼からなる板材が鋼管2の外周に巻き付けられてその端部どうしがラップされた(重ねられた)ものであって、この被覆部材5のその重なった端部どうしがチタンからなるリベット6により固定されている。
【選択図】図1
【解決手段】海水環境で用いられる鋼管杭1であって、この鋼管杭1は、炭素鋼からなる鋼管2の外周に、ペトロラタム系防食材からなる防食層3が設けられ、この外側にさらに電気的絶縁部4が設けられ、さらにこの外側に耐海水性ステンレス鋼からなる被覆部材5が設けられて構成されている。被覆部材5は、耐海水性ステンレス鋼からなる板材が鋼管2の外周に巻き付けられてその端部どうしがラップされた(重ねられた)ものであって、この被覆部材5のその重なった端部どうしがチタンからなるリベット6により固定されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、海岸、湾岸、河川河口付近等の海洋環境で用いられる被覆構造およびこの被覆構造を用いた海洋鋼構造物に関する。
近年、建造物を取り巻く環境に対する意識の高まり、建設コスト縮減等のニーズ等により、構造物の長寿命化が重要課題となっている。これまでは、構造物の供用年数を50年程度に設定しておけば十分とされたものでも、100年以上の供用年数を設定するケースも見受けられる。特に、海洋鋼構造物の場合、長期供用を図るためには、如何にして構造物の耐食性を高めるかが課題の一つとされ、これまで様々な研究がなされてきた。
従来、海洋鋼構造物の防食方法として、FRP(ガラス繊維入り強化プラスチック)あるいはチタンクラッド鋼板などの高耐食性金属板からなる被覆構造(カバー)を鋼管杭等の被保護部材の外周に被覆する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。なお、この被覆構造は、腐食が生じ易い海面変動範囲および飛沫帯に少なくとも設けられる。
従来、海洋鋼構造物の防食方法として、FRP(ガラス繊維入り強化プラスチック)あるいはチタンクラッド鋼板などの高耐食性金属板からなる被覆構造(カバー)を鋼管杭等の被保護部材の外周に被覆する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。なお、この被覆構造は、腐食が生じ易い海面変動範囲および飛沫帯に少なくとも設けられる。
これらの被覆防食法のうち、鋼管杭等の被保護部材にペトロラタム系の防食材を施し、その表面にこれを保護するFRPからなる被覆構造を用いるものが実績として多い。この被覆構造の接合方法としては、図8に示すように、縦に2分割の被覆構造11、11の各端部にフランジ部11a、11aを設け、両フランジ部11a、11aをボルト12とナット13によりボルト結合している。また、被覆構造の他の接合方法としては、図9に示すように、鋼管杭等の被保護部材に巻き付けた被覆構造21の端部をラップさせて(重ねて)、リベット22により固定している。この場合、ボルト12やリベット22にはステンレス鋼やチタンからなるものが用いられる。
被覆構造が金属からなる場合には、ボルトやリベットと被覆構造とが異なる金属であると、その金属自身の耐食性(耐孔食性・耐すき間腐食性)に加え電位の卑なる金属側の異種金属腐食の確認が必要である。そのため、例えば、チタンからなるカバーを用いる場合には電位の差をなくすために通常チタンの接合部材が用いられる。
図10に示すように、鋼管杭等の被保護部材に巻き付けた被覆構造31の両端部をそれぞれ外側に折り曲げて継手を形成し、この継手に内側に開口部を有する鞘管32を上下方向において嵌合し接続させた被覆構造31の接合構造においては、被覆構造31および鞘管32はともにチタンから形成される。
しかし、電気防食が前提とされる建設用鋼材では、絶縁性確保やチタンの製造コスト等の問題があるため、わずかに実用化されているにすぎない。
図10に示すように、鋼管杭等の被保護部材に巻き付けた被覆構造31の両端部をそれぞれ外側に折り曲げて継手を形成し、この継手に内側に開口部を有する鞘管32を上下方向において嵌合し接続させた被覆構造31の接合構造においては、被覆構造31および鞘管32はともにチタンから形成される。
しかし、電気防食が前提とされる建設用鋼材では、絶縁性確保やチタンの製造コスト等の問題があるため、わずかに実用化されているにすぎない。
カバーとしてチタンクラッド鋼を用いる場合には、鋼材と鋼材の溶接およびチタン同士を溶接するようにして、腐食因子の侵入を封殺し、異種金属の接触を避け、溶接を容易としている。これは、異種金属を溶接する際の溶接金属の成分や溶接による熱影響部の関係を実用レベルまで改良したことによるが、クラッド鋼の製造量が限られた状況にあるため、あまり使用されていない。
海岸、湾岸、河川河口付近等の海洋環境で用いられる、特に水面付近に施される防食については腐食箇所が水面下から大気中に及ぶため、異種材または同一材質による接合においても、実用化に至るには確立された試験法による検証と同時に実海域等での継続的な試験や施工性の確認が必要である。
海岸、湾岸、河川河口付近等の海洋環境で用いられる、特に水面付近に施される防食については腐食箇所が水面下から大気中に及ぶため、異種材または同一材質による接合においても、実用化に至るには確立された試験法による検証と同時に実海域等での継続的な試験や施工性の確認が必要である。
被覆構造としてチタンやチタンクラッド鋼を用いると、チタン自体が高価な金属であるため、材料費が高くなるという問題がある。
また、耐海水性ステンレス鋼を被保護部材に溶接して被覆する方法があるが、この場合には、溶接後に溶接スケールを酸洗い等により除去しないと、耐食性が著しく劣化する等の問題があり、製作上の手間がかかる。さらに、腐食因子の侵入防止の確認のため溶接で囲われた異種金属間にエアを圧入し、エア洩れのないことを確認する手間も必要である。
その上、加工性に富む耐海水性ステンレス鋼やチタンは衝撃や接触に弱く、海洋環境で用いられる場合、荒れた海象時(低気圧や台風、高潮に加え地震の際の津波も含む)の浮遊物の接触や衝突を受けることがあるため、何らかの緩衝材が必要とされる。
また、耐海水性ステンレス鋼を被保護部材に溶接して被覆する方法があるが、この場合には、溶接後に溶接スケールを酸洗い等により除去しないと、耐食性が著しく劣化する等の問題があり、製作上の手間がかかる。さらに、腐食因子の侵入防止の確認のため溶接で囲われた異種金属間にエアを圧入し、エア洩れのないことを確認する手間も必要である。
その上、加工性に富む耐海水性ステンレス鋼やチタンは衝撃や接触に弱く、海洋環境で用いられる場合、荒れた海象時(低気圧や台風、高潮に加え地震の際の津波も含む)の浮遊物の接触や衝突を受けることがあるため、何らかの緩衝材が必要とされる。
本発明は、前記事情に鑑みて為されたものであり、海洋環境において防食性を高めつつ比較的安価に構成することができる被覆構造およびこの被覆構造を用いる海洋鋼構造物を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の被覆構造は、海水環境で用いられる被保護部材を防食するための被覆構造であって、耐海水性ステンレス鋼からなる構造部材がチタンからなる接合部材で接合されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明においては、耐海水性ステンレス鋼とチタンとが海水中での自然電位がほぼ同レベルでかつ両者は個々に製作後に表面が不働態化しているので、両者の接触による異種金属接触腐食が無く、いずれの金属も海水に対する耐食性に富んでいる。したがって、海洋環境において防食性を高めつつ比較的安価に被覆構造を構成することができる。
請求項2に記載の被覆構造は、請求項1に記載の発明において、前記耐海水性ステンレス鋼は、質量%で、C:0.005〜0.03%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.040%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.040%以下、Cu:0.2〜2.0%、Ni:5.0〜9.0%、Cr:23.0〜27.0%、Mo:2.0〜4.0%、W:0.3〜5.0%、N:0.22〜0.34%、残部がFeおよび不可避不純物からなる化学組成を有する二相ステンレス鋼であることを特徴とする。
請求項3に記載の被覆構造は、請求項2に記載の発明において、前記耐海水性ステンレス鋼は、さらに、V:1.5%以下、Sn:0.3%以下、Ca:0.02%以下、Mg:0.02%以下、B:0.02%以下、REM:0.2%以下のいずれか1種以上を含有することを特徴とする。
請求項2および請求項3に記載の発明においては、上記組成の二相ステンレス鋼とチタンは海水中での自然電位がほぼ同レベルでかつ両者は不働態化しているので、両者の接触による異種金属接触腐食がない。加えて、上記組成の二相ステンレス鋼は一定の強度を有するので、台風や高潮、津波等による流木、ブロック、船舶等の衝突や、サンドエロージョン等による摩耗・磨滅対策に極めて有効である。
請求項4に記載の被覆構造は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記接合部材は、リベットであることを特徴とする。
請求項4に記載の発明においては、リベット接合の場合は、溶接時のようなスケールの残存がなく、スケールの酸洗除去などをしなくてもよい。また、酸洗しないので耐食性劣化の問題も生じない。
請求項5に記載の海洋鋼構造物は、炭素鋼からなる前記被保護部材が電気的絶縁材料からなる電気的絶縁部を介して請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被覆構造で覆われていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明においては、電気的絶縁部が介在されているので、カソード防食(流電陽極方式)を適用する場合に、被覆構造の耐海水性ステンレス鋼からなる構造部材およびチタンからなる接合部材がそれぞれ、過防食による水素脆化および水素吸収による脆化を生じるのを抑制することができる。
請求項6に記載の海洋鋼構造物は、請求項5に記載の発明において、前記被保護部材と前記被覆構造との間に配される前記電気的絶縁部の少なくとも一部が防食性を有していることを特徴とする。
請求項6に記載の発明においては、電気的絶縁部が防食性を有しているので、被保護部材を腐食から保護することができる。防食性を有する電気的絶縁材料としてはペトロラタム、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂などを使用することができる。防食性の電気的絶縁部の形成はこれらの材料を被保護部材に塗布する、あるいは浸漬テープを巻き付ける、貼り付けるなどして、被保護部材を被覆すればよい。
請求項7に記載の海洋鋼構造物は、請求項6に記載の発明において、前記被保護部材と前記被覆構造との間に配される前記電気的絶縁部の少なくとも一部が対衝撃荷重用クッション材であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明においては、電気的絶縁部が対衝撃荷重用クッション材であるので、台風や高潮、津波等によって流木、ブロック、船舶等が衝突した際に、衝撃が緩衝されるため、被覆構造の損傷が抑制される。対衝撃荷重用クッション材としては発泡ポリエチレンシートなどを用いればよい。
請求項8に記載の海洋鋼構造物は、請求項7に記載の発明において、前記電気的絶縁部が、前記被保護部材側から、前記被保護部材を防食する防食層と対衝撃荷重用クッション材からなる緩衝層とからなることを特徴とする。
防食性を有し、かつ対衝撃荷重用クッション材として使用できる電気的絶縁材料であれば、そのような電気的絶縁材料を電気的絶縁部として使用することが好ましい。しかし、両機能をバランスよく兼ね備えた安価な材料を探すことは難しい。そこで、電気的絶縁部を、被保護部材を防食する防食層と対衝撃荷重用クッション材による緩衝層からなる層構造とする。このとき、被保護部材側から防食層、緩衝層の順に層を形成する。被保護部材の直近に防食層を形成することで被保護部材を腐食から保護できるとともに、衝突が起こる位置に近いその外側に緩衝層を形成することで、浮遊物の衝突等による被災をより効果的に軽減することができる。
請求項9に記載の海洋鋼構造物は、請求項8に記載の発明において、前記防食層がペトロラタムからなり、前記緩衝層が発泡ポリエチレンからなることを特徴とする。
請求項10に記載の海洋鋼構造物は、請求項8に記載の発明において、前記防食層が重防食被膜により形成され、前記緩衝層が発泡ポリエチレンからなることを特徴とする。
請求項10に記載の海洋鋼構造物は、請求項8に記載の発明において、前記防食層が重防食被膜により形成され、前記緩衝層が発泡ポリエチレンからなることを特徴とする。
請求項9または請求項10に記載の海洋鋼構造物においては、防食層がペトロラタムからなり、緩衝層が発泡ポリエチレンからなる層とするか、または防食層を重防食被膜により形成し、緩衝層が発泡ポリエチレンからなる層とするので、海洋環境で用いられる鋼構造物として適切な防食性を付与できるとともに、大きな衝撃荷重にも耐えうる海洋鋼構造物を得ることができる。
請求項11に記載の海洋鋼構造物は、請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の発明において、前記被保護部材が鋼管であって、前記被覆構造が前記鋼管を周回するストッパーバンドにより下方から支持され、前記被覆構造と前記ストッパーバンドの間に周回状に絶縁体が配されていることを特徴とする。
請求項11に記載の発明においては、鋼管が被覆構造で覆われており、被覆構造はストッパーバンドによって下方から支持される。ストッパーバンドは鋼管を囲うようにリング状の形状を有する。ストッパーバンドは鋼管に例えば溶接によって固着されるとともに、絶縁体を介して被覆構造の下端と接続される。ストッパーバンドは被覆構造がそれ自体の自重により降下しないように下方から被覆構造を支持する。一方、絶縁体はストッパーバンドと被覆構造(耐海水性ステンレス鋼)との接触を回避して腐食を避けるだけでなく、電気的絶縁部から電気的絶縁材料の一部が溶出しないようにする役割を果たす。
請求項12に記載の海洋鋼構造物は、請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の発明において、前記被保護部材が鋼管であって、前記被覆構造が前記鋼管の周回上にある複数のストッパーにより下方から支持され、前記被覆構造と前記ストッパーの間に絶縁体が配されているとともに、前記電気的絶縁部を海水から保護する封入部が形成されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明において、ストッパーが果たす役割は請求項11に記載の発明におけるストッパーバンドと同じである。しかし、鋼管を周回するようにストッパーをリング状に形成すると、海洋鋼構造物の製造コストが大きくなってしまう。そこで、鋼管の周回上の一部にのみストッパーを配置する。このとき90°ごとに配置するようにストッパーの数は4つであることが好ましい。また、この場合も、請求項11に記載の発明と同様、ストッパーは絶縁体を介して被覆構造の下端と接続することで、ストッパーと被覆構造(耐海水性ステンレス鋼)との接触を回避して腐食を避ける。一方、ストッパーの配置されない箇所では電気的絶縁部が剥き出しとなる。このため、このような箇所では、電気的絶縁部と海水が接触し、電気的絶縁部から電気的絶縁材料が溶出しないように封入部を形成する。封入部には例えば水中硬化型パテなどを用いることが好ましい。
請求項13に記載の海洋鋼構造物は、請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の発明において、前記被保護部材が鋼管であって、前記被覆構造が前記鋼管の周回するストッパーベルトにより側面方向から支持され、前記電気的絶縁部を海水から保護する封入部が形成されていることを特徴とする。
請求項13に記載の発明においては、鋼管が被覆構造で覆われており、被覆構造はストッパーベルトによって支持される。ストッパーベルトもストッパーバンド同様にリング状の形状を有するが、鋼管ではなく被覆構造を囲む。ストッパーベルトは被覆構造を絞めつけるように側面方向から支持する。一方、被覆構造の下端では電気的絶縁部が剥き出しとなるため、請求項12に記載の発明と同様に、電気的絶縁部と海水が接触しないように封入部を形成する。
本発明の被覆構造およびこの被覆構造を用いる海洋鋼構造物によれば、海洋環境において防食性を高めつつ比較的安価に構成することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る鋼管杭の一部を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は側面図である。
図1において、符号1は、港湾鋼構造物としての鋼管杭(海洋鋼構造物)であって、例えば、海底に打ち込まれて港湾岸壁等の杭として海洋環境において用いられている。この鋼管杭1は、炭素鋼からなる鋼管(被保護部材)2の外周に、電気的絶縁部3,4が設けられ、さらにこの外側に耐海水性ステンレス鋼からなる被覆構造9が設けられて構成されている。
まず、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る鋼管杭の一部を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は側面図である。
図1において、符号1は、港湾鋼構造物としての鋼管杭(海洋鋼構造物)であって、例えば、海底に打ち込まれて港湾岸壁等の杭として海洋環境において用いられている。この鋼管杭1は、炭素鋼からなる鋼管(被保護部材)2の外周に、電気的絶縁部3,4が設けられ、さらにこの外側に耐海水性ステンレス鋼からなる被覆構造9が設けられて構成されている。
ここで、被覆構造9は、被覆部材5とリベット(接合部材)6とからなり、鋼管(被保護部材)2の外周を覆っている。また、電気的絶縁部3はペトロラタム系防食材などからなる防食層3であり、ペトロラタムを主成分とし、腐食抑制剤等を含有するペースト(ペトロラタム系ペースト)3aが鋼管2の外周に塗布され、さらにその外側にこのペーストをナイロン等の合成樹脂製の不織布に含浸させたテープ(ペトロラタム系テープ)3bが2〜3重程度巻き付けられて形成される。
電気的絶縁部4は、ポリエチレンシート(非発泡性のものも含む)等の電気的絶縁材から構成されており、この電気的絶縁部4により電気的絶縁のほか、緩衝層(対衝撃荷重用クッション材)4としての役割、ペトロラタム系ペーストの溶出防止としての役割をも果たす。また、発泡ポリエチレン等の一定の弾力性を有する材料で電気的絶縁部4を形成すれば、鋼管2がスパイラル鋼管からなる場合に、らせん状の溶接部の膨らみをその弾力性で吸収する効果もある。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る鋼管杭のリベット部を示す図であって、(a)はリベット部の横断面図であり、(b)は縦断面である。
図2に示すように、被覆部材5は、耐海水性ステンレス鋼からなる板材が鋼管2の外周に巻き付けられてその端部どうしがラップされた(重ねられた)ものであって、この被覆部材5のその重なった端部どうしがチタンからなるリベット6により固定されている。ここで言うチタンとは、純チタンおよびチタン合金を含むものである。リベット6には、ブラインドリベットを用いることが好ましい。これは、ブラインドリベットをかしめるリベッターの操作が容易であるため、未熟練者でも簡単に短時間で構造部材を接合することができるからである。
図2に示すように、被覆部材5は、耐海水性ステンレス鋼からなる板材が鋼管2の外周に巻き付けられてその端部どうしがラップされた(重ねられた)ものであって、この被覆部材5のその重なった端部どうしがチタンからなるリベット6により固定されている。ここで言うチタンとは、純チタンおよびチタン合金を含むものである。リベット6には、ブラインドリベットを用いることが好ましい。これは、ブラインドリベットをかしめるリベッターの操作が容易であるため、未熟練者でも簡単に短時間で構造部材を接合することができるからである。
図3は、鋼管杭のリベット部の他の態様を示す横断面図である。被覆構造9は、図2(a)に示すように1枚の被覆部材5で構成するのではなく、図3に示すように、接合部に補助的な被覆部材5’を用いて被覆構造9を構成してもよい。また、被覆構造9は、複数個の板材から被覆部材5を構成するようにし、それらの端部同士を接合するようにしてもよい。このように、鋼管を被覆できる構造であれば、その態様は問わない。
図4は、鋼管杭のリベット部のさらに他の態様を表す横断面図である。図4に示す態様において、被覆構造9、緩衝層4は図2と同じであるが、電気的絶縁部7は重防食被膜により形成された防食層7である。重防食被膜7は、例えばウレタン樹脂やポリエチレン樹脂が吹き付けられて形成される。重防食被膜は工場で付加できるため、この態様を用いると、被覆構造の量産が可能である。
防食層3,7、緩衝層4および被覆部材5は、海が干満した際の海面レベルが変動する干満帯の部分と波の飛沫がかかる飛沫帯の部分に少なくとも設けられる。これらの部分は腐食が激しい部分であるからである。なお、この鋼管杭1にも、海中部の鋼材の腐食防止のためにカソード防食(流電陽極方式)が用いられるが、この防食は異種金属接触腐食の防止のために好ましい。
この第1の実施の形態にあっては、上記組成の二相ステンレス鋼からなる被覆部材5がチタンからなる接合部材(リベット)6で接合されているので、両者の海水中での自然電位がほぼ同レベルでかつ両者は不働態化しているため、両者の接触による異種金属接触腐食がない。加えて、上記組成の二相ステンレス鋼は強度にも優れるので、台風や高潮、津波等による流木、ブロック、船舶等の衝突や、サンドエロージョン等による摩耗・磨滅対策に極めて有効である。
また、リベット接合すれば、溶接時のようなスケールの残存がなく、スケールの酸洗除去などをしなくてもよい。また、酸洗しないので耐食性劣化の問題も生じない。
さらに、鋼管2と被覆構造9(被覆部材5および接合部材(リベット)6)との間に、電気的絶縁部3、4が介在されているので、カソード防食(流電陽極方式)を適用する場合に、下記組成の二相ステンレス鋼からなる被覆部材5が過防食による水素脆化するのを抑制できるとともに、チタンからなる接合部材(リベット)6が過防食によって水素吸収による脆化を生じるのを抑制することができる。
また、リベット接合すれば、溶接時のようなスケールの残存がなく、スケールの酸洗除去などをしなくてもよい。また、酸洗しないので耐食性劣化の問題も生じない。
さらに、鋼管2と被覆構造9(被覆部材5および接合部材(リベット)6)との間に、電気的絶縁部3、4が介在されているので、カソード防食(流電陽極方式)を適用する場合に、下記組成の二相ステンレス鋼からなる被覆部材5が過防食による水素脆化するのを抑制できるとともに、チタンからなる接合部材(リベット)6が過防食によって水素吸収による脆化を生じるのを抑制することができる。
被覆部材5を構成する耐海水性ステンレス鋼としては、特に限定されないが、質量%で、C:0.005〜0.03%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.040%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.040%以下、Cu:0.2〜2.0%、Ni:5.0〜9.0%、Cr:23.0〜27.0%、Mo:2.0〜4.0%、W:0.3〜5.0%、N:0.22〜0.34%、残部がFeおよび不可避不純物からなる化学組成を有する二相ステンレス鋼が好ましい。前記二相ステンレス鋼は、さらに、V:1.5%以下、Sn:0.3%以下、Ca:0.02%以下、Mg:0.02%以下、B:0.02%以下、REM(希土類金属):0.2%以下のいずれか1種以上を含有するのがさらに好ましい。
以下、前記二相ステンレス鋼の各成分について、その作用効果と含有量の限定理由を説明する。なお成分含有量についての%は全て質量%を意味する。
Cは、オーステナイト相を安定化するのに有効である。その効果を得るには0.005%以上含有させることが必要である。一方、その含有量が0.03%を超えると炭化物が析出しやすくなり、耐食性が劣化する。このため0.005〜0.03%とする。
Siは、鋼の脱酸成分として有効である。その効果を得るには0.01%以上含有させることが必要である。一方、その含有量が1.0%を超えると金属間化合物(σ相等)の生成を促進される。このため0.01〜1.0%以下とする。
Cは、オーステナイト相を安定化するのに有効である。その効果を得るには0.005%以上含有させることが必要である。一方、その含有量が0.03%を超えると炭化物が析出しやすくなり、耐食性が劣化する。このため0.005〜0.03%とする。
Siは、鋼の脱酸成分として有効である。その効果を得るには0.01%以上含有させることが必要である。一方、その含有量が1.0%を超えると金属間化合物(σ相等)の生成を促進される。このため0.01〜1.0%以下とする。
Mnは、二相ステンレス鋼の溶製時の脱硫および脱酸効果によって熱間加工性を向上させる。また、Nの固溶度を大きくする作用もある。その効果を得るには0.3%以上含有させることが必要である。一方、その含有量が1.5%を超えると孔食発生の基点となる非金属介在物のMnSが生成しやすく耐食性が劣化する。このため0.3〜1.5%とする。
Pは、鋼中に不可避的に混入する不純物元素であるが、その含有量が0.040%を超えると耐食性、靱性の劣化が著しくなる。このため0.040%を上限とする。
Pは、鋼中に不可避的に混入する不純物元素であるが、その含有量が0.040%を超えると耐食性、靱性の劣化が著しくなる。このため0.040%を上限とする。
Sも、鋼中に不可避的に混入する不純物元素で、鋼の熱間加工性を劣化させる。また、硫化物は孔食の発生起点となり耐孔食性を損なう。これらの悪影響を避けるため、その含有量を0.01%以下とする。Sはできるだけ少ない方がよく、特に0.005%以下が望ましい。
Alは、鋼の脱酸剤として有効であるが、鋼中のN量が高い場合にはAlN(窒化アルミニウム)として析出し、靱性および耐食性を劣化させる。したがって、Al含有量をsol.Alとして0.040%以下とする。なお、SiもAl同様に脱酸剤としての役割を果たすので、Siにより脱酸できれば、Alは添加する必要はない。このため下限を設けない。
Alは、鋼の脱酸剤として有効であるが、鋼中のN量が高い場合にはAlN(窒化アルミニウム)として析出し、靱性および耐食性を劣化させる。したがって、Al含有量をsol.Alとして0.040%以下とする。なお、SiもAl同様に脱酸剤としての役割を果たすので、Siにより脱酸できれば、Alは添加する必要はない。このため下限を設けない。
Cuは、還元性の低pH環境、例えばH2SO4あるいは汚染海水のような硫化水素含有環境での耐食性向上に特に有効で、その効果を得るためには0.2%以上の含有量が必要である。しかし、Cuの多量添加は鋼の熱間加工性を劣化させるから上限を2.0%とする。
Niは、オーステナイトを安定化するために必須の成分であるが、その含有量が9.0%を超えるとフェライト量の減少により二相ステンレス鋼の基本的な性質が確保しにくくなり、またσ相等の析出が容易になる。一方、Niの含有量が5.0%より少ないとフェライト量が多くなり過ぎて同じく二相ステンレス鋼の特徴が失われる。また、フェライト中へのNの固溶度が小さいため窒化物が析出して耐食性が劣化する。このためNi含有量は5.0〜9.0%とする。
Niは、オーステナイトを安定化するために必須の成分であるが、その含有量が9.0%を超えるとフェライト量の減少により二相ステンレス鋼の基本的な性質が確保しにくくなり、またσ相等の析出が容易になる。一方、Niの含有量が5.0%より少ないとフェライト量が多くなり過ぎて同じく二相ステンレス鋼の特徴が失われる。また、フェライト中へのNの固溶度が小さいため窒化物が析出して耐食性が劣化する。このためNi含有量は5.0〜9.0%とする。
Crは、耐食性を維持するために有効な基本成分である。その含有量が23.0%未満では、いわゆるスーパー二相ステンレスと言えるだけの耐食性が得られない。一方、Crの含有量が27.0%を超えると金属間化合物
(σ相等) の析出が顕著になり、熱間加工性の低下および溶接性の劣化を招く。このためCu含有量は23.0〜27.0%とする。
Moは、耐食性を向上させるのに非常に有効な成分ある。特に耐孔食性および耐隙間腐食性を高めるため、2.0%以上とする。一方、4.0%を超えてMoを添加すると製造中の素材の脆化の原因になり、金属間化合物の析出を容易にする。したがって、Mo含有量は2.0〜4.0%とする。
(σ相等) の析出が顕著になり、熱間加工性の低下および溶接性の劣化を招く。このためCu含有量は23.0〜27.0%とする。
Moは、耐食性を向上させるのに非常に有効な成分ある。特に耐孔食性および耐隙間腐食性を高めるため、2.0%以上とする。一方、4.0%を超えてMoを添加すると製造中の素材の脆化の原因になり、金属間化合物の析出を容易にする。したがって、Mo含有量は2.0〜4.0%とする。
Wは、耐食性、特に孔食および隙間腐食への抵抗性を向上させる元素であり、pHの低い環境で耐食性を向上させる元素である。また、 じん性を劣化させるσ相の析出を抑制する.それらの効果を得るためには0.3%以上の含有量が必要である。しかし、5.0%を超える量のWを添加してもそれに見合うだけの効果の増大はなく、コストが嵩むだけであるから上限は5.0%とする。
N(窒素)は、強力なオーステナイト生成元素で、二相ステンレス鋼の熱的安定性と耐食性の向上に有効である。特に,孔食,隙間腐食のような局部腐食については,局部アノードでアンモニウムイオンを生成しpHの低下を抑制し,塩化物溶液中での耐局部腐食性を改善する作用を有する.本発明鋼のようにフェライト生成元素であるCr、Moが多量に添加された場合には、フェライトとオーステナイトの二相のバランスを適正なものにするためにも0.22%以上のNの含有が必要となる。しかし、本発明鋼のような25%Cr系の二相ステンレス鋼では、0.34%を超えてNを含有させようとするとブローホールの発生による欠陥、あるいは溶接の際の熱影響による窒化物生成等により鋼の靱性、耐食性を劣化させる。したがって、N含有量は0.22〜0.34%とする。
N(窒素)は、強力なオーステナイト生成元素で、二相ステンレス鋼の熱的安定性と耐食性の向上に有効である。特に,孔食,隙間腐食のような局部腐食については,局部アノードでアンモニウムイオンを生成しpHの低下を抑制し,塩化物溶液中での耐局部腐食性を改善する作用を有する.本発明鋼のようにフェライト生成元素であるCr、Moが多量に添加された場合には、フェライトとオーステナイトの二相のバランスを適正なものにするためにも0.22%以上のNの含有が必要となる。しかし、本発明鋼のような25%Cr系の二相ステンレス鋼では、0.34%を超えてNを含有させようとするとブローホールの発生による欠陥、あるいは溶接の際の熱影響による窒化物生成等により鋼の靱性、耐食性を劣化させる。したがって、N含有量は0.22〜0.34%とする。
本発明の二相ステンレス鋼は以上の成分の他、鉄および不可避不純物からなる。この他、以下の成分を含有していてもよい。
Vは、特に硫酸等の酸に対する耐酸性を向上させる作用を持つ。Vを0.05%以上となるようにWと複合添加した場合、効果的に耐隙間腐食性を向上させることができる。しかし、Vの添加が過多になるとフェライト量が過度に増加し、靱性および耐食性の低下が生じる。このため、Vを添加する場合には、その上限を1.5%とする。
SnはpHの低下した局部アノードでSnイオンとして溶解し、鋼のアノード溶解を抑制するインヒビター作用を有することで耐食性を高める元素である。多量に添加すると鋼のじん性を劣化させるので0.3%以下の添加が良い。耐食性向上の観点からは望ましくは0.05%以上の添加が良い。
Ca、Mg、Bおよび希土類元素はいずれもSあるいはO(酸素)を固定し熱間加工性を向上させる元素である。この効果を効果的に得るには0.005%以上の添加が必要である。一方、これらの元素が多量に添加されるとそれらの酸化物、硫化物の非金属介在物が増加し、孔食の起点となり耐食性の劣化を招く。したがって、これらの元素を添加する場合には、Ca、MgおよびBはそれぞれ0.02%以下、希土類元素(主にLa、Ce)は0.2%以下とする。
Vは、特に硫酸等の酸に対する耐酸性を向上させる作用を持つ。Vを0.05%以上となるようにWと複合添加した場合、効果的に耐隙間腐食性を向上させることができる。しかし、Vの添加が過多になるとフェライト量が過度に増加し、靱性および耐食性の低下が生じる。このため、Vを添加する場合には、その上限を1.5%とする。
SnはpHの低下した局部アノードでSnイオンとして溶解し、鋼のアノード溶解を抑制するインヒビター作用を有することで耐食性を高める元素である。多量に添加すると鋼のじん性を劣化させるので0.3%以下の添加が良い。耐食性向上の観点からは望ましくは0.05%以上の添加が良い。
Ca、Mg、Bおよび希土類元素はいずれもSあるいはO(酸素)を固定し熱間加工性を向上させる元素である。この効果を効果的に得るには0.005%以上の添加が必要である。一方、これらの元素が多量に添加されるとそれらの酸化物、硫化物の非金属介在物が増加し、孔食の起点となり耐食性の劣化を招く。したがって、これらの元素を添加する場合には、Ca、MgおよびBはそれぞれ0.02%以下、希土類元素(主にLa、Ce)は0.2%以下とする。
本発明の第1の実施の態様では、図1に示すように、被覆構造9はストッパーバンド10Aにより下方から支持される。ストッパーバンド10Aは鋼管2の円周方向に鋼管2を取り巻くようにリング状に形成されており、その断面形状はL字形になっている。ストッパーバンド10Aと鋼管2は例えば溶接によって固着され、L字の一辺は鋼管と、もう一辺は絶縁体12を介して被覆構造9の下端と接続される。絶縁体12が配されることにより、被覆構造9とストッパーバンド10Aとの接触を回避し、腐食の発生を防止できる。また、シール(密封)が不十分な場合には防食層3である電気的絶縁部からの油分溶出することがある。特にペースト塗布して防食層3とした場合には、ペーストの油分が溶出しやすい。絶縁体12は一定の弾力性を有するため、絶縁体12を周回状に用いれば、シール特性を十分に確保でき、油分の溶出を防止することができる。絶縁体12としては、例えば、FRP(ガラス繊維入り強化プラスチック)を用いることができる他、厚膜塗装などによるライニングを用いることができる。
図5は、ストッパーバンドの他の態様を表す縦断面図である。図5に示すように、ストッパーバンド10Aは、図2(b)のようにL字形断面のストッパーバンドと面で鋼管2と結合するのではなく、点で結合するように固着するように構成することもできる。以上、ストッパーバンドの例としてはL字形断面のもののみを示したが、特にL字形断面を有さなくてもよく、被覆構造9を下方から支持できるのであれば、その態様は問わない。
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る鋼管杭の一部を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は側面図である。なお、図6において、図1と同一の構成要素には同一符号を付してその説明を省略または簡素化する。
図6(b)に示すように、本発明の第2の実施の態様では、被覆構造9はストッパー10Bに下方から支持される。ストッパー10Bは鋼管2の円周方向の4か所に形成されており、その断面形状はL字形になっている。ストッパー10Bと鋼管2は例えば溶接によって固着され、L字の一辺は鋼管2と、もう一辺は絶縁体12を介して被覆構造9の下端と接続される。絶縁体12が配されることにより、被覆構造9とストッパー10Bとの接触を回避し、腐食の発生を防止できる。ストッパー10Bは第1の実施の形態に示したストッパーバンドと異なりリング状をしていないため、ストッパー10Bのない位置では、絶縁体12によるシール(密封)効果が期待できないため、防食層3である電気的絶縁部から油分が溶出する。そこで、ストッパー10Bのない位置では、油分溶出防止用の封入部13を形成する。封入部13としては、例えば、水中硬化型パテを用いることができる。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る鋼管杭の一部を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は側面図である。なお、図6において、図1と同一の構成要素には同一符号を付してその説明を省略または簡素化する。
図6(b)に示すように、本発明の第2の実施の態様では、被覆構造9はストッパー10Bに下方から支持される。ストッパー10Bは鋼管2の円周方向の4か所に形成されており、その断面形状はL字形になっている。ストッパー10Bと鋼管2は例えば溶接によって固着され、L字の一辺は鋼管2と、もう一辺は絶縁体12を介して被覆構造9の下端と接続される。絶縁体12が配されることにより、被覆構造9とストッパー10Bとの接触を回避し、腐食の発生を防止できる。ストッパー10Bは第1の実施の形態に示したストッパーバンドと異なりリング状をしていないため、ストッパー10Bのない位置では、絶縁体12によるシール(密封)効果が期待できないため、防食層3である電気的絶縁部から油分が溶出する。そこで、ストッパー10Bのない位置では、油分溶出防止用の封入部13を形成する。封入部13としては、例えば、水中硬化型パテを用いることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
図7は、本発明の第3の実施例の形態に係る鋼管杭の一部を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は側面図である。なお、図7においても、図1と同一の構成要素には同一符号を付してその説明を省略または簡素化する。
図7右に示すように、本発明の第3の実施の態様では、被覆構造9を下方から支持するのではなく、ストッパーベルト10Cにより被覆構造9を側面方向から支持する。被覆構造9の落下防止のため、ストッパーベルト10Cは鋼管2の中心方向に張力がかかるように形成される必要があり、例えば、ラッシャーベルト等により張力をかける。
また、ストッパーベルト10Cは被覆構造9を下方から支持しないため、本発明の第2の実施の態様と同様に、防食層3である電気的絶縁部から油分が溶出する。このため、本発明の第3の実施の態様では、被覆構造9の下端を油分溶出防止用の封入部13により周回状に封入する。
図7は、本発明の第3の実施例の形態に係る鋼管杭の一部を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は側面図である。なお、図7においても、図1と同一の構成要素には同一符号を付してその説明を省略または簡素化する。
図7右に示すように、本発明の第3の実施の態様では、被覆構造9を下方から支持するのではなく、ストッパーベルト10Cにより被覆構造9を側面方向から支持する。被覆構造9の落下防止のため、ストッパーベルト10Cは鋼管2の中心方向に張力がかかるように形成される必要があり、例えば、ラッシャーベルト等により張力をかける。
また、ストッパーベルト10Cは被覆構造9を下方から支持しないため、本発明の第2の実施の態様と同様に、防食層3である電気的絶縁部から油分が溶出する。このため、本発明の第3の実施の態様では、被覆構造9の下端を油分溶出防止用の封入部13により周回状に封入する。
なお、上述の各実施の形態では、海洋鋼構造物として鋼管杭1について説明したが、本発明は鋼管杭以外の鋼管矢板、鋼矢板などの他の海洋構造物にも適用することができる。
1 鋼管杭(海洋鋼構造物)
2 鋼管(被保護部材)
3 防食層(電気的絶縁部)
4 緩衝層(電気的絶縁部、対衝撃荷重用クッション材)
5,5’ 被覆部材
6 リベット(接合部材)
7 防食層(電気的絶縁部、重防食被膜)
9 被覆構造
10A ストッパーバンド
10B ストッパー
10C ストッパーベルト
12 絶縁体(FRP、厚膜塗装)
13 封入部
2 鋼管(被保護部材)
3 防食層(電気的絶縁部)
4 緩衝層(電気的絶縁部、対衝撃荷重用クッション材)
5,5’ 被覆部材
6 リベット(接合部材)
7 防食層(電気的絶縁部、重防食被膜)
9 被覆構造
10A ストッパーバンド
10B ストッパー
10C ストッパーベルト
12 絶縁体(FRP、厚膜塗装)
13 封入部
Claims (13)
- 海水環境で用いられる被保護部材を防食するための被覆構造であって、
耐海水性ステンレス鋼からなる構造部材がチタンからなる接合部材で接合されていることを特徴とする被覆構造。 - 前記耐海水性ステンレス鋼は、質量%で、C: 0.005〜0.03%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.040%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.040%以下、Cu:0.2〜2.0%、Ni:5.0〜9.0%、Cr:23.0〜27.0%、Mo:2.0〜4.0%、W:0.3〜5.0%、N:0.22〜0.34%、残部がFeおよび不可避不純物からなる化学組成を有する二相ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載の被覆構造。
- 前記耐海水性ステンレス鋼は、さらに、V:1.5%以下、Sn:0.3%以下、Ca:0.02%以下、Mg:0.02%以下、B:0.02%以下、REM:0.2%以下を含有することを特徴とする請求項2に記載の被覆構造。
- 前記接合部材は、リベットであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の被覆構造。
- 炭素鋼からなる前記被保護部材が電気的絶縁材料からなる電気的絶縁部を介して請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被覆構造で覆われていることを特徴とする海洋鋼構造物。
- 前記電気的絶縁部の少なくとも一部が防食性を有することを特徴とする請求項5に記載の海洋鋼構造物。
- 前記電気的絶縁部の少なくとも一部が対衝撃荷重用クッション材であることを特徴とする請求項6に記載の海洋鋼構造物。
- 前記電気的絶縁部が、前記被保護部材側から、前記被保護部材を防食する防食層と対衝撃荷重用クッション材からなる緩衝層とからなることを特徴とする請求項7に記載の海洋鋼構造物。
- 前記防食層がペトロラタムからなり、前記緩衝層が発泡ポリエチレンからなることを特徴とする請求項8に記載の海洋鋼構造物。
- 前記防食層が重防食被膜により形成され、前記緩衝層が発泡ポリエチレンからなることを特徴とする請求項8に記載の海洋鋼構造物。
- 前記被保護部材が鋼管であって、前記被覆構造が前記鋼管を周回するストッパーバンドにより下方から支持され、前記被覆構造と前記ストッパーバンドの間に周回状に絶縁体が配されていることを特徴とする請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の海洋鋼構造物。
- 前記被保護部材が鋼管であって、前記被覆構造が前記鋼管の周回上にある複数のストッパーにより下方から支持され、前記被覆構造と前記ストッパーの間に絶縁体が配されているとともに、前記電気的絶縁部を海水から保護する封入部が形成されていることを特徴とする請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の海洋鋼構造物。
- 前記被保護部材が鋼管であって、前記被覆構造が前記鋼管の周回するストッパーベルトにより側面方向から支持され、前記電気的絶縁部を海水から保護する封入部が形成されていることを特徴とする請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の海洋鋼構造物。
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