実施の形態1.
この発明の実施の形態として、冷媒を圧縮機で圧縮して循環させる冷凍サイクルを用いた家庭用電化機器の中から、空気調和装置を実施例に説明する。この実施の形態における空気調和装置は、圧縮機の運転回転数、正確には圧縮機の密閉容器内部に収納され、同様に密閉容器内部に収納されている圧縮機構部を駆動する電動機の回転数をインバータ制御により可変とし、圧縮機の運転回転数を変化させることで、空気調和装置の冷房や暖房などの運転能力を可変とするものである。
図1は、この発明の実施の形態1における空気調和装置の冷媒回路等を示す構成図である。図1に示すように、この空気調和装置は、室内に設置される室内機100と屋外に設置される室外機200とから構成されるセパレート形であり、室内機100と室外機200の間は、接続配管11a、11bで冷媒回路が接続されている。接続配管11aは凝縮工程を通過後の冷媒が流れる液側の接続配管で、接続配管11bは蒸発工程を通過後の冷媒が流れるガス側の接続配管である。
この空気調和装置の運転を制御する制御装置が、室内機100と室外機200にそれぞれ設置され、室内機100には室内側制御装置12、室外機200には室外側制御装置14が配置される。室内側制御装置12と室外側制御装置14は室内外連絡ケーブル29により接続されている。この室内外連絡ケーブル29は接続配管11a、11bとともに束ねられている。
室外機200には、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機1、冷媒の流れ方向を切り換える冷媒流路切換弁5(以降、四方弁5と呼ぶ)、外気と冷媒との熱交換を行う室外熱交換器8、室外側制御装置14の指令により開度を制御され、高圧の冷媒を低圧に減圧する電子制御式膨張弁などの減圧装置7(以降、膨張弁7と呼ぶ)が配置され、室内機100には室内空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器6が配置される。これらを接続配管11a、11bを含む配管で順次接続して冷媒回路、すなわち冷凍サイクルを構成している。冷凍サイクルを循環する作動流体である冷媒には、ここではHFC混合冷媒であるR410Aが用いられている。
圧縮機1は、密閉容器内にロータリ式やスクロール式などの圧縮機構部と、その圧縮機機構部を駆動する電動機が収納されており、密閉容器に設置されたガラスターミナルを介して電力がその電動機に伝えられ、この電力によって電動機が回転することで、圧縮機構部に低圧の冷媒を吸入してこれを圧縮し、密閉容器外の吐出配管2へと吐出する。圧縮機1の電動機は供給される電力の電圧、周波数に応じて回転数を変化させるもので、この圧縮機1の電動機は、回転子の鉄心内に希土類やフェライトの永久磁石が埋め込まれたDCモータが用いられている。
ここでは、この圧縮機1の電動機の回転数を、圧縮機1の回転数と呼ぶ。圧縮機1は、インバータ制御装置である圧縮機駆動装置15によりインバータ制御され、回転数を可変としている。圧縮機1の回転数を変更するために、圧縮機1に供給される電力の電圧や周波数を変更するのが、圧縮機駆動装置15である。圧縮機1の運転開始や停止も室外側制御装置14により制御される。
圧縮機1は圧縮機機構部の上流側で密閉容器の外部に、蒸発しきれずに液のまま圧縮機1に到着した冷媒を一時的に貯留して圧縮機構部での液圧縮を回避させるアキュームレータ4を接続保持しており、このアキュームレータ4に冷凍サイクルの吸入配管3が接続されている。
室内機100内部の室内熱交換器6の近傍には、送風機である室内ファン9が設置されており、室内側制御装置12によりファンモータである室内ファン駆動装置13が制御され、室内ファン9の運転開始や停止、回転数の変更が行われる。同様に室外機200には、室外熱交換器8の近くに送風機である室外ファン10が設置され、室外側制御装置14によりファンモータである室外ファン駆動装置16が同様に制御される。これらファン9、10は、熱交換器6、8における空気と冷媒の熱交換を促進させる。基本的には室内ファン9、室外ファン10ともに、その回転数は、圧縮機1の回転数に連動しており、圧縮機1が高回転で運転され、冷媒回路を流れる冷媒循環量が多いときには、これらファン9、10の回転数も高くなって、冷媒と空気との熱交換量を大きくする。
室温サーミスタ18により実際の現状の室温(空気調和される部屋の温度)が検出され、この検出信号は室内側制御装置12に伝えられる。そしてワイヤレスリモコンなどの外部操作装置25(以降、リモコン25と呼ぶ)により、使用者が要求する室内や体感温度の設定温度の情報も室内側制御装置12に伝えられる。室内側制御装置12は、室温サーミスタ18により検出した温度(室温)と設定温度の差により建物負荷を算出し、算出した建物負荷に応じて圧縮機1の回転数を変更するための信号を室内外連絡ケーブル29を介して室外側制御装置14に送る。室外側制御装置14は、室内側制御装置12からの信号に基づき、圧縮機駆動装置15に指令信号を発信し、圧縮機駆動装置15のインバータ制御により圧縮機1の回転数が算出した建物負荷に応じた回転数となる。
圧縮機1の回転数の可変幅は有限であり、この空気調和装置では、圧縮機1の通常の運転最大回転数を120rpsとしている。室外側制御装置14が圧縮機駆動装置15に対して、圧縮機1の運転最大回転数を120rpsとする制御をしており、圧縮機駆動装置15も120rpsより高い回転数となるような周波数およびそれに対応する電圧を圧縮機1へは供給しない。
室内外連絡ケーブル29には、室内側制御装置12と室外側制御装置14間の制御信号のやりとりをする通信線だけでなく、電源プラグ22を室内のコンセントに挿して得られる電力を、室内機100から室外機200へ伝達する電源線も含まれている。この電源線から伝えられる電力は、室外側制御装置14を介して、圧縮機1や室外ファン10を運転するために、それらの駆動装置15、16に供給される。
室外側制御装置14では、室外機200に室内外連絡ケーブル29を通って伝達されてきた電力の電流(運転電流)を検出している。ここで検出する電流は1次側電流である。そして運転時は常時、この検出した運転電流が所定のしきい値を越えないように、室外側制御装置14が制御している。このしきい値が運転最大電流で、この空気調和装置では18A(アンペア)としている。室外側制御装置14は、検出しているこの運転時の1次側電流が運転最大電流、すなわち18Aを超えないように、空気調和装置の運転電流(検出している1次側電流)が18Aを超えそうになると、圧縮機1の運転回転数を低下させ、運転電流を下げるように制御する。
この場合、上記した建物負荷に応じるよりも、電流が運転最大電流を超えないようにすることが制御として優先される。運転最大電流は、電源プラグ22の容量に見合った値が設定されており、これを超えさせないようにすることを優先して、電源プラグ22の安全性を維持している。なお電源プラグ22の容量に対して裕度が大きい運転最大電流を設定した場合では、検出している運転電流(1次側電流)が運転最大電流を超えたら、圧縮機1の運転回転数を低下させ、運転電流を下げるように制御してもよい。
また、室外側制御装置14においては、インバータ装置(圧縮機駆動装置)15から圧縮機1に供給される圧縮機電流(圧縮機1の運転電流)を、電圧と抵抗から演算することで検出しており、この電流(2次側電流)が所定のしきい値を超えると圧縮機1の運転を停止する措置が、室外側制御装置14によって行われる。突発的に生じる高電流から室外側制御装置14や圧縮機駆動装置15に使われている回路素子などの部品や圧縮機1を保護するためで、このしきい値が停止措置過電流であり、一般的には上記した運転最大電流より少し大きい値が設定されている。この空気調和装置では、停止措置過電流を19A(アンペア)に設定している。なお、この空気調和装置では、運転最大電流制御には1次側電流を、停止措置過電流には圧縮機電流を用いているが、どちら一方の電流で兼ねてもよいし、逆であってもよい。
また、圧縮機1やファン9、10の回転数や膨張弁7の開度などを細やかに制御してこの空気調和装置の運転状況をより使用者の要求に近づけるために、並びに圧縮機1やファン9、10などの保護のためなどに、フィンアンドチューブ型である室内熱交換器6の冷媒が流れる配管には、その配管の表面温度を検出する室内管温サーミスタ20が取り付けられている。同様に、フィンアンドチューブ型である室外熱交換器8の冷媒が流れる配管には、その配管の表面温度を検出する室外管温サーミスタ21が取り付けられている。
これらの管温サーミスタ20、21から冷媒の凝縮温度、蒸発温度が得られ、その温度から凝縮圧力(吐出圧、高圧)、蒸発圧力(吸入圧、低圧)を室外側制御装置14もしくは室内側制御装置12が把握する。圧縮機1やその他冷媒回路の種々の部品を高い圧力から保護するために、室内管温サーミスタ20もしくは室外管温サーミスタ21によって把握した凝縮圧力が、所定のしきい値を超えると、圧縮機1の運転を停止する措置を、室外側制御装置14が行う。このしきい値が停止措置圧力である。
管温サーミスタ20、21はそれぞれ熱交換器6、8の途中の配管に取り付けられるが、並列するフィンの側端部で上下の冷媒配管を連結するU字部分の表面に設置することで、フィンが支障とならずに取り付けられ、正確な管温を検出できる。なお、管温サーミスタ20、21はそれぞれ熱交換器6、8の途中でなくても、入口直前、出口直後の管温を検出するように取り付けてもよい。
管温サーミスタ20、21と同様に運転制御や保護に用いるために、吐出配管2の表面温度を検出する吐出温度サーミスタ17が吐出配管2に取り付けられる。吐出温度サーミスタ17は圧縮機1の吐出する吐出冷媒ガス温度を把握したいものであるので、なるべく吐出配管2の圧縮機1寄りの位置に設置するのがよい。圧縮機1が、密閉容器内に圧縮機構部から一旦吐出ガスが吐き出され、密閉容器内部が吐出圧(高圧)雰囲気となる高圧シェルタイプであれば、吐出温度サーミスタ17を圧縮機1の密閉容器の外表面に取り付けてもよい。
圧縮機1の運転時は常時、この吐出温度サーミスタ17が検出した温度(以降は吐出温度と呼ぶ)が所定のしきい値を超えないように、室外側制御装置14が制御している。このしきい値が運転最大吐出温度で、この空気調和装置では115℃としている。室外側制御装置14は、検出しているこの吐出温度が、運転最大吐出温度、すなわち115℃を超えないように、吐出温度が115℃を超えそうになると、圧縮機1の運転回転数を低下させ、吐出温度を下げるように制御する。
この場合、上記した建物負荷に応じるよりも、吐出温度が運転最大吐出温度を超えないようにすることが制御として優先される。なお、運転最大吐出温度を超えると、圧縮機1の運転回転数を低下させ、吐出温度を下げるように制御してもよい。また、吐出温度が、運転最大吐出温度よりも高い所定のしきい値になると、圧縮機1の運転を停止する措置が、室外側制御装置14によって行われる。このしきい値が停止措置吐出温度であり、この空気調和装置では、120℃に設定している。
室外熱交換器8と膨張弁7との間を接続する配管であって、室外熱交換器8の近傍の配管表面には、霜取検知サーミスタ19が取り付けられている。この霜取検知サーミスタ19が検出する配管温度は、後述する室外熱交換器8が蒸発器として機能する暖房運転時に用いられるもので、この場合蒸発器となっている室外熱交換器8の入口近傍に霜取検知サーミスタ19は取り付けられる。霜取検知セーミスタ19が検出した配管温度が、所定の温度以下である場合に、室外熱交換器8に付着した霜を除去する霜取り運転(デフロスト運転)を行うよう、室外側制御装置14が制御する。
霜取り運転を行うことで、室外熱交換器8に付着した霜を溶かすことができ、室外熱交換器8が霜で覆われてしまうことが避けられる。そのため、室外ファン10の風路が霜で遮られることがなくなり、室外ファン駆動装置16の保護が図られ、また室外熱交器8の熱交換能力(蒸発能力)が霜によって低下させられないことで、低圧(圧縮機1の吸入圧)の著しい低下や圧縮機1に多量な液冷媒が吸入されることが避けられ、圧縮機1の保護が図られる。
室内側制御装置12から、使用者の要求に基づいた空気調和装置の運転モードの指令が室外側制御装置14に伝えられる。運転モードは、冷房運転もしくは除湿運転または暖房運転などである。運転モードの指令信号を室外側制御装置14が受けると、その運転モード信号が冷房運転時もしくは除湿運転を指令するものである時には、室外熱交換器8が凝縮器に、室内熱交換器6が蒸発器となるように、室外側制御装置14が四方弁5を動かして冷媒の流れ方向を制御する。暖房運転を指令された場合には、逆に室内熱交換器6を凝縮器として、室外熱交換器8を蒸発器として用いるような冷媒の流れにすべく、室外側制御装置14が四方弁5を制御する。図2に、この空気調和装置の冷房運転もしくは除湿運転時の冷媒の流れ方向を示し、図3に暖房運転時の冷媒の流れ方向を示す。
図4は、実施の形態1における空気調和装置の室内機100の本体を示す斜視図である。この室内機100は、壁掛けタイプであり、空調される部屋の壁面上方に設置される。筐体30の内部に上記した室内熱交換器6や室内ファン9等が収納されている。この室内機100では、室内ファン9として長手方向に長いクロスフローファンが使用され、室内熱交換器6の下流側で水平に設置されている。筐体30の前面には、室内機100本体の意匠面となる前面パネル31が設置される。この前面パネル31は、上方を支点として上下方向に開閉可能であり、前面パネル31を開いた状態で、筐体30内部の清掃を可能として、筐体30内部の埃の堆積などを防止できる。
筐体30と前面パネル31の上方には、室内機100本体内部に室内空気を吸い込む吸い込み口32が形成されている。吸い込み口32は、前面パネル31の正面に形成されてもよいし、前面パネル31には設けず、筐体30にだけ形成してもよい。一方、筐体30の下部で前面パネル31より下方には、室内機100本体内部で室内熱交換器6を通過して冷媒と熱交換した後の室内空気(調和空気)を室内に放出する吹き出し口33が設けられている。吹き出し口33には、吹き出す調和空気の上下方向や左右方向を調整する風向フラップが設置され、室内側制御装置12により吹き出す気流の方向を制御することが可能となっている。図4において、吹き出し口33は、上下方向の気流を調整する2枚の風向フラップによって開口が閉塞された状態(室内機100の運転停止状態)として図示されている。
筐体30の下方は、緩やかな曲面状に形成されており、この室内機100本体が室内壁面に設置された状態において、その下方の曲面状部が斜め下を向き、その向きと、室内に居る使用者が室内機100本体を見上げるときの視線の方向とが、平行に近い状態となる。吹き出し口33もこの曲面状部に開口している。そして、この曲面状部の上方で吹き出し口33の側方に、リモコン25の受信部24が設置されている。
筐体30下方の曲面状部の吹き出し口33とリモコン受信部24との間には、本体の表記部34が設けられる。この表記部34には、製造業者名、空気調和装置の形名、製造年等が明記されている。この表記部34は、この室内機100においては、それらが明記されているステッカー(シール)を貼り付けることで構成しているが、筐体30に直接印刷して構成してもよいし、筐体30の樹脂成形時に型によって表面に刻印するように構成してもよい。そして、この室内機100本体の表記部34には、さらにこの空気調和装置の標準使用期間を明記している。表記部34の表記例を図5に示す。
図5に示すように、この空気調和装置の標準使用期間を表記することで、使用者は、この空気調和装置の標準使用期間を認知することができる。このため、使用者は、長期使用における安全性への注意喚起を図るようになる。表記部34に表記されている標準使用期間によって使用者の長期使用における安全性への意識高揚、注意喚起が図ることができる。使用者がこの空気調和装置を使用し始めてからの経過年と、表記されている標準使用期間を照合することが可能となり、長期的な使用に対しての安全への注意喚起、意識高揚が図れる。また、点検や買え換えの目安とすることもできる。図5に示すように、表記部34の中で、標準使用期間の表記を他の情報に比べて大きな文字で表記したり、色を変えて表記したりして、特に目立たせるようすると、使用者の認知性がより高まる。
この空気調和装置の使用開始時期を使用者がいちいち思い出さなくてもすぐに把握できるように、表記部34に使用開始年月日もしくは使用開始年月を、使用者や設置業者がマジック等で記入できるような欄を設けてもよい。また、表記部34とは別に、表記部34の近傍に、使用開始年月日もしくは使用開始年月を記入したシールを貼り付けられるスペースを設けておき、別途、使用開始年月日もしくは使用開始年月を記入できるシールを提供し、このシールに使用者や設置業者が使用開始年月日もしくは使用開始年月を記入して上記のスペースに貼ってもらうようにしてもよい。このように、標準使用期間の表記の近くに、使用開始時期を明記できるようにすることで、使用者の長期使用に対する安全への意識高揚がより図れるようになる。
標準使用期間は、この空気調和装置の品質、信頼性評価の結果や標準的な使用環境、運転時間などに基づいて、経年劣化により安全性が維持するのが困難となる時期までの期間を製造業者が設定するものである。図5に示す表記部34の表記例においては、この空気調和装置の標準使用期間を13年としている。この13年という期間については後述する。また、表記部34には、標準使用期間を過ぎて使用する場合の安全点検の実施を促す注意書きも併せて表記し、使用者へ長期使用時の安全性確保に対する注意換気を図り、安全性確保のため手引きを提供している。
このように標準使用期間を表記した表記部34は、使用者の目に付きやすい位置に設けるのが望ましい。この室内機100では、表記部34が、筐体30の下方の斜め下を向く曲面状部に設けられているので、使用者が室内機100本体を見上げた時に、その視線と表記部34とが直交に近い状態となり、使用者の目に付きやすく、表記することの目的(使用者の長期使用に対する安全への意識高揚、注意喚起)を十分に達成することできる。
この室内機100では、本体(筐体30)の下方の、使用者が壁面に設置された室内機100を見上げた時に、その視線と直交に近い状態となる面に、表記部34を設けたが、上記したように、表記部34は、使用者の目に付きやすい位置であればよいので、例えば、室内機100本体の正面でもよい。正面に設ける場合は、床面に近い下方の方がより目に付きやすい。正面に設ける場合では、前面パネル31に設けてもよい。
また、正面に表記部34を設けることが、室内機100本体の意匠性にそぐわない場合には、筐体30の下面に設ければよい。吹き出し口33より奥側(室内機100を設置している壁面寄り)の筐体30下面に表記部34を設けるのである。この位置に設ければ、室内機100本体を使用者が下方から見上げた時に、表記部34が目に付くようなる。なお、表記部34は、床置きタイプの室内機であれば、本体の正面や上面に、天井吊り下げタイプや天井埋め込みタイプの室内機であれば、床面に臨む面に設ければ、使用者の目に付きやすい。
図4において、筐体30下方の曲面状部の表記部34とリモコン受信部24との間には、運転ランプ35が設けられており、この空気調和装置が運転している時は、この運転ランプ35が点灯する。運転中は常時点灯している。そして、運転ランプ35のとなりには、標準使用期間に対するこの空気調和装置の経過状態を表示する経過表示部36が設置されている。この経過表示部36においては、この空気調和装置を使用者が使用し続けることにより、実際の使用期間(実使用期間)が、表記部34に表記した標準使用期間を越えた場合に、ランプが点灯するようになっている。運転ランプ35、経過表示部36のランプはいずれもLED(発光ダイオード)を用いている。
経過表示部36のランプは、実使用期間が標準使用期間を過ぎた場合に点灯するようにしてもよいが、点滅(点灯と消灯の繰り返し)させることで、使用者へのアピール性がより高まる。また、標準使用期間を過ぎる所定期間前、例えば6ヶ月前や3ヶ月前から、点灯するようにして、実使用期間が標準使用期間をまもなく過ぎようとしていることを通知し、標準使用期間を過ぎた場合には、ランプを点滅(点灯と消灯の繰り返し)させるようにして、標準使用期間を経過したことを知らせるようにするのもよい。
また、標準使用期間を過ぎる所定期間前から点灯し、標準使用期間をまもなく過ぎようとしていることを通知するランプと、標準使用期間を過ぎた場合に点灯もしくは点滅させるランプと、をそれぞれ設置するようにしてもよい。ここで、経過表示部36は、上記のように単一のランプの点灯や点滅で表示する構成に限定されるものではない。例えば、液晶表示画面で構成して、まもなく標準使用期間を過ぎることや、標準使用期間を超えたことを、直接文章や図にて表示するようにしてもよい。
また、使用者が、実際の使用期間がどれくらいかを把握できるような表示を経過表示部36に行うことで、より安心して使用できるようになる。図6は、経過表示部36の他の例を示すもので、上部のライン37は、その長さで標準使用期間を表現している。この上部ライン37は、ランプの点灯でもよいし、印刷やシールでもよい。そしてそのライン37の下方には、複数のLEDを並べた経過状況表示手段38を設ける。そして、標準使用期間の対する実際の使用期間の割合に応じて、経過状況表示手段38のLEDを端から順番に点灯させていくのである。これにより、標準使用期間に対する現状の実使用期間を使用者が把握できる。
そして、経過状況表示手段38のすべてのLEDが点灯することで、標準使用期間を過ぎたことを使用者が認識できる。この時、すべてのLEDを点滅させるようにしてもよい。なお、標準使用期間を表すライン37は省略してもよい。また、経過状況表示手段38を標準使用期間に対する実使用期間の割合で示すのでなく、直接、標準使用期間の年数分もしくは年数を分割した分のLEDを並べて、1年もしくは所定の年数が経過するごとに、LEDを端から順番に点灯させるようにしてもよい。LEDの配列は、横方向でも縦方向でもよく、室内機100本体の意匠性や表示できるスペースに応じて決めればよい。
図7は、経過表示部36の他の実施例を示す室内機101の斜視図である。吹き出し口33の側方には、室内機100同様に表記部34が設置されている。図7に示す室内機101では、上方を支点として上下方向に開閉可能な前面パネル31が、透明な樹脂の背面(室内に臨むの裏面)に、白や薄いベージュなど明るい色の塗装が施されて構成されている。そして、閉じられた状態の前面パネル31の内側に位置する筐体30正面部位に、表示する文字や形状をかたどった表示窓を有する表示枠とその表示枠の内部に設置された複数のLEDから成る表示機構を設置し、LEDを照らすことで、表示窓を通過したLEDの光が、塗装面を含めて前面パネル31を透過して、現在の室内温度や体感温度、空気調和装置の運転状況などを、前面パネル31の正面に表示し、使用者がそれらの情報を把握できるようになっている。
前面パネル31の正面を表示スペースとして利用できるので、多くの情報を大きく表示することが可能となり、使用者が見やすく、多くの情報を認知できるようになる利点があり、また意匠性にも優れる。室内機101は、この前面パネル31正面への透過表示機構に、経過表示部36を取り入れている。図7に示すように、図において表示情報の左端に、丸く表示したものが、この空気調和装置の実使用期間が、標準使用期間をまもなく過ぎようとしていることや標準使用期間を過ぎたことを知らせる経過表示部36となっている。連続的な透過表示でもよく、標準使用期間を過ぎた場合には表示非表示を繰り返すようにしてもよい。経過表示部36の表示が大きくできるので、使用者へのアピール性が高まる。
また、表示情報の右端には温度情報を表示する部位(図7において破線の丸で囲われている)を設けているが、ここを経過状況表示手段38として利用している。リモコン25もしくは室内機101本体でこの部位の表示切り替えができるようになっており、使用者の表示切り替え指示によって、温度情報から、実使用期間の表示に切り替わるように構成されている。実使用期間の表示は、年数を、例えば小数点以下で月を表すことまで含めて、直接表示してもよいし、表記部34に表記された標準実使用期間に対する割合、例えば%、を表示するのでもよい。
温度情報と表示場所を共有せずに、別途、経過状況表示手段38の表示スペースを設けるようにしてもよい。実使用期間の表示は、使用者が常に必要としている情報というわけではないので、この場合には、使用者の要求に応じて実使用期間を表示するように構成する方がよい。
以上のように、製品本体に表記部34を設置して標準使用期間を表記することで、使用者が標準使用期間を認識でき、長期使用に対する安全への意識高揚、注意喚起が図れるが、標準使用期間を超えるまでには相当な長い時間を要するため、使用者が、標準使用期間を過ぎたことに気づかないということも起こり得る。しかしながら、経過表示部36により、実使用期間が、まもなく標準使用期間を過ぎることや標準使用期間を過ぎたことを表示し、使用者に知らせるので、使用者がそれを認識することでき、表記部34や表記部34の表記内容に従って取り扱い説明書を参照、確認することで、適切な時期に、専門業者への安全点検の依頼を実施するようになる。安全点検の実施により、長期使用における安全性を確保することができる。そして、専門業者による安全点検や一部の部品交換、修理を行うことにより、さらに継続的な空気調和装置の長期使用が可能となり、資源の有効利用にも貢献できる。
また、経過状況表示手段38により、実使用期間を直接的にもしくは標準使用期間に対する割合で表示するので、使用者は、それによって知り得た実使用期間と標準使用期間とを照合することができ、使用者の標準使用期間に対する意識の高揚が図れるとともに、使用者が標準使用期間までの裕度を確認できるので、安心してその製品(空気調和装置)を使用することができる。
次に、リモコン25について説明する。図8はリモコン25を示す構成図であり、正面上方には、液晶で表示する表示画面27が、表示画面27の下方に複数の操作ボタン28が配置される。リモコン25の上面には、室内機100本体の受信部24に向けて使用者による操作信号を発信する送信部26が設置されている。操作ボタン28の中で最も大きいボタンが運転ボタン28aで、使用者がこの運転ボタン28aを押すことで、この空気調和装置の運転開始と停止を指示する。
運転ボタン28aに隣接するボタンが運転モード切換ボタン28bで、使用者が運転モードを指示するものである。ここでは、自動、冷房、除湿、暖房、空気清浄が切り替えられるようになっている。自動とは、空気調和装置が、制御装置12、14に蓄積した情報や現在の環境状況などから使用者が満足する運転モードを判断し、その運転モードで運転するものである。空気清浄では、室内ファン9が回転するだけで、圧縮機1や室外ファン10は運転されない。
次に、この実施の形態1における空気調和装置の動作について説明する。空気調和装置の購入設置後、初めてリモコン25の運転ボタン28aを押して空気調和装置の運転を開始した時に、室内側制御装置12が、実使用期間を演算するタイマーを作動させるように、室内側制御装置12のプログラムが構成されている。この実使用期間演算タイマーは、演算を開始すると、この後は空気調和装置が停止している時でも、作動し続ける。すなわち、実使用期間の演算をし続けるのである。この実使用期間演算タイマー機能は、室内側制御装置12に内蔵される。
また、リモコン25の操作ボタン28のいずれを操作しても、タイマーのカウント(演算)は続けられる。例えば運転ボタン28aを操作して、運転を停止させた後でも、運転モード切換ボタン28bを操作して、運転モードを選定もしくは変更しても、実使用期間を演算するタイマーはカウントをし続けるようにプログラムが構成されている。
実使用期間を演算するタイマーは、設置後に初めて運転した時点で演算を開始する。上記ではリモコン25の運転ボタン28aを操作した時点で演算を開始するようにしたが、室内機100本体に設置される本体運転ボタン23を操作して運転を開始した時点からカウントを始めるようにしてもよい。この場合では、専門の設置業者がこの本体運転ボタン23を押すことが望ましい。なお、本体運転ボタン23は、前面パネル31を開いた時に現れるように、室内機100本体の内部に設けられている。また、室内機100に接続している電源プラグ22が、部屋のコンセントに接続された時点で、実使用期間演算タイマーが作動を開始するようにしてもよい。
実使用期間演算タイマーは、空気調和装置が運転停止中もカウントを続けるものであるので、そのための電力は常時確保されていなければならない。そのため電池内蔵のタイマーを利用してもよいが、コストが高い。電源プラグ22から得られる電力を使用するのが現実的であり、この空気調和装置は、そのように電源プラグ22から実使用期間演算タイマーの作動電力を得ている。タイマーに使用される電力量は僅かであり、この空気調和装置では、停止中の待機電力として、この実使用期間演算タイマーの作動電力と室内機100のリモコン受信部24の作動電力が消費されるだけにして、待機電力を極めて小さく抑えている。
電源プラグ22をコンセントから抜いてしまうと、実使用期間演算タイマーに電力が供給されずにタイマーがカウントできなくなってしまうので、電源プラグ22を抜いている時間だけ、タイマーがカウントした実使用期間が、実際の実使用期間よりも短くなってしまう。このため、この空気調和装置では、空気調和装置の使用を開始し、実使用演算タイマーのカウントを開始させた後では、電源プラグ22を抜かないように、上記した理由を、待機電力が極めて小さいことも含めて取り扱い説明書に明記して呼びかけている。
このようにこの空気調和装置では、使用者が実際に空気調和装置の使用を始めてから(空気調和装置が設置後初めて運転された時から)、実使用期間を演算するタイマーが、カウントを開始するため、正確な実使用期間を把握し、使用者へ提供することが可能となる。製造された日から電池内蔵のタイマーを作動させるようにして、例えば製造年月日が2007年4月1日で、標準使用期間を13年とした場合に、タイマーの演算値が2020年3月31日になったときに、標準使用期間が経過したと判断するようにすることも可能であるが、この場合、製造年月日から使用者が実際に使用するまでに、1年以上経過するようであれば、その期間分が短い実使用期間で標準使用期間を経過してしまうことになり、標準使用期間までの使用者による実使用時間が短くなってしまう。
長期使用における事故の原因としては、電気電子部品の劣化、装置内部への埃の堆積、設置環境によって生じる錆や腐食などの劣化が考えられるが、これらは実際に機器(空気調和装置)が使用されてから生じるものである。製造業者が製造してから使用者が機器を使用するまでの期間は、通常は、製造業者や販売店の倉庫に保管されており、このような状態においては、屋外の日射や雨水や塩害にさらされることもなく、また運転による発熱で電気電子部品が劣化することの心配もないために、機器の劣化は殆ど生じないものと考えて差し支えない。このため、この空気調和装置のように、使用者が実際に使用を始めてから、実使用期間演算タイマーをカウントするようにして、正確な実使用期間を把握し、使用者へ提供することで、使用者が、実使用期間が正確でないという不信感や不公平感を持つことをなくすことができる。
上記では、実使用期間の把握に室内側制御装置12に設けた実使用期間演算タイマーを用いたが、実使用期間把握の別の方法を以下に説明する。図8に示すように、リモコン25には、表示画面27に現在の年月日を表示できるようになっている。入力された年月日からタイマーでカウントして現在の年月日を把握しているのである。リモコン25で何らかの操作ボタン28が押され、その信号が送信部26から本体の受信部24へ送信される時に、この年月日情報もいっしょに送信されるようにして、年月日情報が室内側制御装置12に伝えられるようにしておく。
そして、使用者が運転ボタン28aを押して空気調和装置の使用を開始した時の年月日情報を、受信部24が受信し、室内側制御装置12が記憶する。室内側制御装置12は、その後にリモコン25から操作指令信号といっしょに送信されてくる現在の年月日情報と、記憶している使用開始年月日を照合することで、実使用期間を演算し、実使用期間を把握できるようにするのである。
ここで、もし入力された年月日情報が途中で大幅に変更されるようなことになった場合、例えば、使用開始の時に正しく年月日設定がなされてなく、その年月日情報を開始年月日として室内側制御装置12が記憶してしまい、その後で正確な時間設定がなされた場合などには、室内側制御装置12が正確な実使用期間の把握ができなくなってしまうことが起こり得る。
そこで、年月日情報を手入力で設定せず、すなわちタイマーを用いることなく、現在の正しい年月日情報を定期的に取得できるように、電波時計に使用されている標準時刻電波(送信局から全国をカバーするように発信されている)を受信できるアンテナをリモコン25が内蔵している。標準時刻電波には、時刻情報の他に年月日の情報も含まれており、このため、リモコン25は常に正確な年月日情報を取得できるようになる。また、年月日情報を手入力する、という使用者の手間も省けるようになる。
このように標準時刻電波を受信して、リモコン25が常に正確な年月日情報を把握するので、空気調和装置の使用開始した時に室内側制御装置12が記憶する年月日情報も、それと照合する現在の年月日情報も、正確な年月日情報となって、室内側制御装置12が正確な実使用期間を把握できるようになる。また、併せて時刻情報も受信できるので、リモコン25の表示画面27に、正確な時刻表示ができたり、使用者が時刻を指定して入切タイマーを作動させようとする場合に、正確な時刻にタイマー作動による運転開始や停止が行われるようになったりする効果も得られる。なお、標準時刻電波を受信してその情報を読み取る間隔は、任意に設定すればよいが、1日に1回で十分である。
また、リモコン25に標準時刻電波を受信できるアンテナを内蔵させずに、直接室内機100本体にアンテナを設置するようにして、室内側制御装置12が標準時刻電波の年月日情報を把握するように構成してもよい。さらに、リモコン25や室内機100本体は、室内にあるので、地域によっては、標準時刻電波の受信が困難なこともあり得る。そこで、室外機200に標準時刻電波を受信できるアンテナを設置して、受信感度を高めるようにしてもよい。この場合、受信した標準時刻情報を、室内側制御装置12に室内外連絡ケーブル29を通して伝達してもよいし、室外側制御装置14にて、実使用期間の演算を実施するようにしてもよい。
受信アンテナはどこに設置してもよく、標準時刻電波がもたらす年月日情報を用いて実使用期間を把握するように構成すればよい。標準時刻電波から得られた年月日情報や時刻情報を、リモコン25の表示画面27だけでなく、室内機本体に、例えば、図7に示した室内機101本体の前面パネル31に表示すれば、使用者にとってカレンダーや時計の代わりとすることができる。なお、実使用期間の演算は、タイマーでカウントしていく場合も、現在の年月日と記憶した使用開始年月日とを比較する場合も、室内側制御装置12で行うように説明してきたが、室外側制御装置14にて実施してもよい。
上記では、設置後に初めて運転された年月日を記憶する手段と現在の年月日を把握する手段とを室内側制御装置12もしくは室外側制御装置14が有し、これらの年月日から、この空気調和装置の実使用期間を室内側制御装置12もしくは室外側制御装置14が演算するように構成したが、これらの手段が、年月日でなく年月だけを記憶や把握するようにしてもよい。演算により把握する実使用期間に、最大略1ヶ月のずれが生じることになるが、そのずれは標準使用期間13年と比べればわずかな期間である。年月だけとすることにより、記憶や演算を担う室内側制御装置12もしくは室外側制御装置14のマイコン容量を小さくできる。
次に、実使用期間が標準使用期間である13年を経過した場合について説明する。この実施の形態における空気調和装置では、標準使用期間を経過した以降の動作について、3つのステップを設けている。
まず、1つめのステップについて説明する。実使用期間が標準使用期間を経過すると、上記したように使用者に注意喚起や安全点検を受ける事を伝えるために、室内機100本体に設置した経過表示部36に、点灯や点滅などで、実使用期間が標準使用期間を過ぎたことを表示して、使用者へそのことを伝える。この経過表示部36による表示は、この空気調和装置が標準使用期間を過ぎた後では、少なくとも運転中には常に表示されるようにする。経過表示部36の表示(実使用期間が標準使用期間を過ぎたことを知らせる表示)がLEDの点灯や点滅であれば、少なくとも運転中はずっと点灯や点滅が続けられる。
このように、単にこの空気調和装置の標準使用期間を室内機100本体の表記部34や取り扱い説明書に記載しただけでは、実使用期間が標準使用期間を過ぎたことを使用者の判断に委ねることになるので、長期使用に関する安全上の注意喚起が十分とは言い難い。しかし、このように、実使用期間が標準使用期間を過ぎたことを知らせる経過表示部36を室内機100本体に設け、実使用期間が標準使用期間を経過した後では、少なくとも運転中は、この経過表示部36の表示をし続けることで、使用者に長期使用に関する安全上の注意喚起を図る事が可能になる。なお、実使用期間が標準使用時間を越えた後は、運転中だけでなく、停止中も含めて常時、経過表示部36の表示をし続けるようにして、より注意換気を図るようにしてもよい。
使用者は、経過表示部36の表示により実使用期間が標準使用期間を経過したことを知り、取り扱い説明書の記載に応じて製造業者が指定するサービス部門などの専門業者に連絡する。そして、連絡を受けたサービス部門(専門業者)は指定の安全点検を該当する空気調和装置に行い、継続的に使用し続けても安全上に問題がないか判断する。
安全点検は、例えば、室内室外それぞれの制御装置12、14の汚れや変色、絶縁劣化がないか、それら制御装置12、14に記録されている実使用期間データや、プログラム上の停止措置過電流や停止措置吐出温度など保護のためのしきい値が正しい値となっているか、またそれのしきい値を超えて圧縮機1が停止した動作の回数が多くないか、室外機200の外郭が錆や腐食により劣化していないか、室内機100の電源プラグ22に変色や埃の堆積、絶縁劣化がないか、室内熱交換器6などに付着した結露水を室外に導いて放出する排水経路(ドレンホース等)に埃の堆積や漏れが生じるような亀裂や穴が存在していないか、などを確認する。
この安全点検により、安全上問題がないと判断された場合、この空気調和装置にはリモコン25の操作ボタンを特殊操作する事で、演算して把握していた実使用期間をリセットすることができるようになっている。ここでは、運転ボタン28aと運転モード切換ボタン28bを同時に5秒間押し続けると、今までの実使用期間がリセットされるようになっている。リセットされるまでの実使用期間を室内側制御装置12に記憶するようにして、リセット後の実使用期間との累積の実使用期間を把握できるようにしてもよい。また、実使用期間のリセットとともに、経過表示部36や経過状況表示手段38の表示もリセットされる。すなわち、表示が消される(非表示とする)、もしくは表示内容が再スタートされる。
このように、安全点検の実施後に新たな実使用期間をカウントするために、室内側制御装置12などの部品を交換しなくとも、リモコン25の操作だけで実使用期間をリセット(新たに実使用期間を演算するようになる)して、空気調和装置を継続使用する事が可能となるので、安全点検の費用を抑制でき、使用者の点検費用の負担を軽減させることができる。そして安全点検の費用が抑えられることで、使用者が安全点検を依頼しやすくなる。
なお、実使用期間や経過表示部36の表示のリセットをする際の所定の操作は、リモコン25による操作だけでなく、室内機100本体の操作とリモコン25の操作の併用や、室内機100本体を操作するだけのものであってもよい。ただし、その操作は、使用者が容易に行ってしまうことがない操作設定にして、誤作動を防止しなければならない。
これにより、使用者が、次回の安全点検の時期まで空気調和装置を継続して使用することができるようになる。次回の安全点検までの期間が、リセット後の標準使用期間に相当する期間となり、この次回の安全点検までの期間をプログラム上、新しい標準使用期間として置き換えて、リセット後の実使用期間が、次回の安全点検までの期間にまもなく近づくことやその期間を過ぎたことを経過表示部36や経過状況表示手段38が、標準使用期間に対するときと同様に、表示するのである。また、安全点検を実施したサービス部門や専門業者により、次回の安全点検の時期を、表記部34の近傍に、もしくは表記部34に重ね貼りして表記するようにして、使用者に対して引き続きの長期使用における安全性の注意換気を図る。
この実施の形態の空気調和装置では、2回目以降の点検までの期間が、複数設定できるようになっている。そのように予め室内側制御装置12にプログラムされている。例えば、再度13年間、もしくは半分の6年間、もしくはもっと短い2年間などである。標準使用期間を最長として、1年ごとに任意の年数を設定できるようにしてもよい。このため、安全点検を実施したサービス部門(専門業者)は、点検結果の状況に応じて次回の安全点検までの期間をそれら複数の設定期間から選定することが可能となり、適切な期間が設定されることで、その安全点検以降の使用(長期使用)に対する安全性が高まるとともに、必要以上に安全点検の回数を増やして、使用者に費用負担や手間をかけさせてしまうことを避けることができる。
最後に、安全点検を終えたサービス部門(専門業者)は、さらに長期的な継続使用がなされる機器(空気調和装置)の形名や、使用者の連絡先を登録しておく。これにより、製造業者は、使用者に対して、この製品の安全や品質に関連する情報をサービスで提供することが可能になる。そのような情報提供は、電話、郵便、電子メール、インターネットでの提示などを用いて行われるが、情報の内容、緊急度によって使い分けられる。
一方、サービス部門などの専門業者は、安全点検により、このままの状態で継続使用すると安全上問題があると判断した場合には、安全を維持して使用を継続するためには、修理や特定の部品交換を実施する必要があることを使用者に伝え、使用者の了承が得られれば、修理もしくは部品交換を行って、次回の安全点検の時期まで継続して使用できるようにする。次回の安全点検までの期間や、実使用期間のリセット、経過表示部36や経過状況表示手段38の動作などについては、上記した、安全点検で安全上問題がないと判断された場合と同様である。
以上のように、製品の標準使用期間を本体の表記部34や、それに加えて取り扱い説明書に表記することで、使用者に標準使用期間を認識してもらえるようにするが、実使用時間が、標準使用期間を経過するまでには長い期間を伴うために、使用者が、標準使用期間を過ぎたことに気づかない可能性がある。しかしながら、本体の経過表示部36で実使用期間が標準使用時間を経過したことを表示して使用者に通知することで、標準使用期間を経過したことを使用者が認識できるようになり、表記部34や取り扱い説明書の記述に従って、適切な時期に安全の確認をすることが可能になる。そして、製造業者の指定するサービス部門などの専門業者による安全点検や一部の部品交換や修理を行うことで、安全上問題なく、さらに継続的に空気調和装置の長期使用が可能になり、資源の有効利用にも貢献できる。
次に、標準使用期間経過後の2つめのステップについて説明する。実使用期間が標準使用期間を経過したことを経過表示部36が表示してから、さらに所定の期間は、経過表示部36が点灯や点滅などで、経過したことを表示している以外は、従来通りに通常の運転を行うことができるようになっている。この所定の期間が、使用者が専門業者に依頼して安全点検を行うための期間である。この期間に安全点検を完了させ、次回の安全点検の時期までの新しい使用期間を開始させる。そうすれば、経過表示部36の表示も消える。
なお、上記の所定の期間は、使用者の負担を考慮すると、少なくとも1年は必要である。また、安全点検は、標準使用期間を経過する時期よりも所定の期間前から受け付けられるようにしておけば、使用者が安全点検を依頼できる期間が長くなり、使用者の利便性を高められる。この場合では、まもなく標準使用期間を過ぎることを知らせる表示が有効に活用できる。標準使用期間に到達する例えば上記したように6ヶ月前から表示部36が、まもなく標準使用期間を過ぎることを知らせる表示を行えば、この表示がなされた時から安全点検の受け付けるものとするのである。
但し、実使用期間が標準使用期間を経過したことを経過表示部36が表示してから、所定の期間が過ぎても、安全点検が行われなかった場合には、経過表示部36の表示による注意喚起だけでは、使用者が安全点検を依頼しない可能性が高いと考えられる。また、安全点検しないまま運転を継続すると、さらに経年劣化が進み、製品の安全を維持できなくなる恐れが生じる。
そこでこの空気調和装置では、安全点検が必要な所定の期間に安全点検が行われず、しかも継続して使用されるような場合には、2つめのステップとして、この空気調和装置の最大運転能力を低下させる措置をとる。最大運転能力を低下させることで、経年劣化の進行を少しでも遅らせて安全上の配慮を施すとともに、使用者が、暖房であれば最大暖房能力が低下して暖まりが悪いと感じ、冷房であれば最大冷房能力が低下して冷えが悪いと感じるようになり、表記部34に表記された標準使用期間や、経過表示部36の表示を改めて認識して、安全点検を行うことを決意するようになる。すなわち、最大運転能力の低下は、使用者が専門業者へ安全点検を依頼する動機づけとなる効果がある。
以下に、最大運転能力を低下させる方法を説明する。第1の方法は、圧縮機1の運転最大回転数を下げる手段である。この圧縮機1は、上記したように通常は運転最大回転数が120rpsであるが、これを例えば、80rpsに低下させる。すなわち、室温サーミスタ18により検出温度(室温)と設定温度の差がどれほど大きくても、室外側制御装置14は圧縮機駆動装置(インバータ装置)15に対して、80rpsより高い回転数での圧縮機1の運転指令を発しないのである。圧縮機1の運転最大回転数が低下すれば、冷凍サイクルの冷媒循環量も小さくなり、冷房であれば最大冷房能力が、暖房であれば最大暖房能力が低下する。
第2の方法は、運転最大電流を下げる手段である。上記したように、この空気調和装置では、室外側制御装置14が、通常は運転最大電流を18Aとして、空気調和装置の運転電流が18Aを超えないように制御しているが、この運転最大電流を例えば、12Aまで低下させる。室外側制御装置14は、運転電流が運転最大電流を超えそうになると、圧縮機1の回転数を下げるようにして、運転電流を下げる制御をするので、最大運転電流を低下させることで、結果的に、圧縮機1の回転数を低く抑えることになり、冷凍サイクルの冷媒循環量が小さくなって最大運転能力が低下する。
第3の方法は、運転最大吐出温度を下げる手段である。この空気調和装置では、上記したように、通常は運転最大吐出温度が115℃である。この運転最大吐出温度を例えば、100℃まで低下させる。室外側制御装置14は、吐出温度サーミスタ17が検出する運転時の吐出温度が運転最大吐出温度を超えそうになると、圧縮機1の回転数を下げるようにして、吐出温度を下げる制御をするので、最大運転吐出温度を低下させることで、結果的に、圧縮機1の回転数を低く抑えることになり、冷凍サイクルの冷媒循環量が小さくなって最大運転能力が低下する。
第4の方法は、膨張弁7の最大開度を下げる手段である。この空気調和装置では、通常は、膨張弁7の全開状態を最大開度としているが、この最大開度を例えば、全開の70%の開度に低下させる。膨張弁7の最大開度が絞られることにより、冷凍サイクルの冷媒循環量が小さくなって最大運転能力が低下する。
2つめのステップである、実使用期間が標準使用期間を経過後、所定の期間(上記の実施例では1年)が経っても安全点検が実施されなかった場合になされる措置として、この空気調和装置の最大運転能力を低下させるが、そのために具体的に4つの手段を上記にて説明した。これら4つがすべて設定されるように空気調和装置を構成してもよいし、いずれか一つ、または選択された2つもしくは3つを設定してもよい。なお、説明した4つ手段に限定されるものではなく、空気調和装置の最大能力を低下させることが可能な方法を用いるのであれば、その手段は任意に設定してよい。
なお、2つめのステップで、最大運転能力を低下させるために、初期(標準使用期間を経過前の通常)の設定値から低下させる運転制御設定値は、予め特定の値をプログラム(上記では例えば、運転最大電流の通常の18Aから12Aに変更など)されていてもよいが、変更後の設定値を、標準使用期間に到達する直前から直後にかけての運転情報(圧縮機1の回転数、各種サーミスタの温度)を室内側制御装置12が取り込み、予め室内側制御装置12に記憶している通常状態における運転情報と比較し、その比較結果から算出するようにしてもよい。このようにして設定すれば、使用しているその機器に合った新しい設定値となり、経年劣化の進行に見合った安全上の配慮を施すことができる。使用環境が悪く経年劣化の進行が早い場合には、最大運転能力を大きく低下させることができる。
このように変更後の設定値をその機器の運転状態に応じて算出する場合では、2つめのステップの実施中にも、所定の期間を置いて、現在の運転情報と記憶されている通常状態における運転情報と比較し、その状況に応じて段階的に最大運転能力を低下させるようにしてもよい。経年劣化が2つめのステップが実施されている期間に急激に進行しても経年劣化の進行に見合った安全上の配慮を施すことができる。
また、停止措置過電流や停止措置吐出温度の超過など各種保護手段の作動によって圧縮機1の運転が停止された履歴(作動回数や作動時期など)を室内側制御装置12が記憶し、この作動履歴に基づいて、2つめのステップにおける最大運転能力を低下させるために、初期の設定値から低下させる運転制御設定値を算出するように構成してもよい。このように設定しても、使用しているその機器に合った新しい設定値となり、経年劣化の進行に見合った安全上の配慮を施すことができる。
ここで、2つめのステップとしての別の実施例を説明する。この別の実施例は、上記した最大運転能力を低下させる措置とともに両方が設定されるようにしてもよい。この別の実施例の措置とは、この空気調和装置に設けられた保護手段の作動設定値を下げ、圧縮機1が運転を停止する頻度を高める措置、すなわち圧縮機1の連続的な運転を制限(圧縮機1が連続して運転できる時間を制限)する措置である。このようにすることで、経年劣化している部品の負荷を軽減して、進行を少しでも遅らせる安全上の配慮を施すとともに、使用者が、空気調和装置が勝手に止まってしまう頻度が多いと感じるようになり、表記部34に表記された標準使用期間や、経過表示部36の表示を改めて認識して、安全点検を行うことを決意するようになる。すなわち、保護手段の作動設定値の低下は、使用者が専門業者へ安全点検を依頼する動機づけとなる効果がある。
この空気調和装置では、保護手段として、上記したように、圧縮機電流が停止措置過電流を超えると圧縮機1の運転を停止する手段、吐出温度が温度停止措置吐出温度を超えると圧縮機1の運転を停止する手段、凝縮圧力が停止措置圧力を超えると圧縮機1の運転を停止する手段などが設定されている。そこで、これらの保護手段が作動する作動設定値(しきい値)である、停止措置過電流、停止措置吐出温度、停止措置圧力の少なくともいずれかの設定値を通常状態よりも下げるのである。
通常は19Aに設定していた停止措置過電流を例えば14Aに下げるとか、通常は120°に設定した停止措置吐出温度を例えば105℃に下げるなどの措置をとる。これにより、圧縮機1の運転が停止する頻度が高くなり、圧縮機1の連続運転が制限されるので、使用者が専門業者へ安全点検を依頼する動機づけとなる。
なお、2つめのステップの別の実施例として、保護手段の作動設定値を下げて、圧縮機1の連続運転を制限するようにしたが、保護手段によらず、制御装置12、14が、この期間では圧縮機1が運転を始めて所定時間経過したら強制的にその運転を停止して、圧縮機1の連続運転を意図して制限するように構成してもよい。この構成であれば、建物負荷に関係なく圧縮機1の連続運転を制限できるようになる。圧縮機1の連続して運転できる時間が制限されるので、使用者が専門業者へ安全点検を依頼する動機づけとなる。以上のように、2つめのステップとして、実使用期間が標準使用期間を経過後、安全点検が行われずにさらに所定の期間(例えば1年)が経った時から、空気調和装置の運転最大能力を低下させる、もしくは圧縮機1の連続運転を制限する措置をとる。
次に、実使用期間が標準使用期間を経過した後の3つめのステップについて説明する。上記した2つめのステップの措置が施されている期間でも安全点検が行われず、使用者が、最大能力が低下された状態、あるいは連続運転が制限された状態での使用(運転)を続け、実使用期間が標準使用期間を経過後から所定の期間、例えば5年間が経った場合には、経年劣化による事故の発生回避および使用者の安全確保を優先して、圧縮機1の運転を禁止する措置をとる。圧縮機1だけなく、室内ファン9、室外ファン10の運転も禁止する。あらゆる運転モードの運転を禁止する措置をとるのである。但し、このような運転禁止の状態においても、実使用期間が標準使用期間を経過したことを示す経過表示部36の表示(点灯や点滅など)は継続して行うものとする。
このように3つめのステップとして、実使用期間が標準使用期間を経過後、安全点検が行われずにさらに所定の期間(例えば5年)が経った時から、圧縮機1の運転を禁止する措置をとる。なお、2つめのステップとして上記にて説明した最大運転能力や圧縮機の連続運転の制限措置は取らず、実使用期間が標準使用期間の経過後、所定の期間(経過表示部36は表示されている)が経った場合に、いきなり圧縮機1の運転禁止の措置を取るように構成してもよい。
この3つめのステップである運転禁止措置を施した期間の経過表示部36の表示は、使用者のリモコン25の操作に関係なく、常時表示されるようにする。このため使用者は、経過表示部36の表示や表記部34の表記内容から、取り扱い説明書を参照し、空気調和装置が運転できない理由を把握できる。そして、取り扱い説明書に従い、この空気調和装置の使用を継続したい場合には、製造業者のサービス部門などの専門業者へ安全点検を依頼する。3つめのステップである運転禁止措置は、事故の発生回避および使用者の安全確保を図るための措置であるが、継続した使用を希望する使用者にとっては、専門業者へ安全点検を依頼する動機づけとなる効果をもたらす。
図9は、2つめのステップが最大運転能力を低下させる措置である場合の、使用期間に対する経過表示部36の動作や圧縮機1の運転最大回転数と空気調和装置の運転最大電流の流れを示す説明図である。この図9における経過表示部36は、実使用期間が標準使用期間を過ぎるとLEDが点灯する実施例のものである。また、( )内の値は、この実施の形態における空気調和装置の設定実施例である。運転最大電流が3つのステップ実施から1Aに低下しているが、この電流は経過表示部36の表示に主として使用されるものである。運転最大電流の設定値を1Aに下げてもよいが、実際にはこの時は圧縮機1の運転が禁止されており、大きい電力を必要としてないので、運転最大電流の設定値は2つめのステップで低下させた12Aのままであってもよい。
次に標準使用期間の設定について説明する。上記したように、この実施の形態の空気調和装置は、標準使用期間を13年に設定している。実使用期間が標準使用期間を経過した場合、使用者は、継続して安全に使用できるように、専門業者による安全点検を受ける必要がある。そして、使用者がこの安全点検にかかる費用を、点検を実施した専門業者(例えば製造業者のサービス部門)に支払うことになる。このため、標準使用期間は、使用者が安全点検を受けることに対して納得できる期間に設定されるべきものである。
そのため、使用者が納得できる標準使用期間があり、その期間内では、その機器の安全性が維持されるように、製造業者は機器の設計、製造を行う必要がある。そこで、使用者が納得できる標準使用期間の設定には、使用者の製品に対する期待寿命の調査結果と、機器(製品)の使用期間と市場残存率の関係から選定するのがよい。図10は、空気調和装置の中で、家庭で使用されることを目的とした家庭用エアコン(ルームエアコン)の使用期間と市場での残存率を示すグラフである。
使用者が家庭用電化機器に対して期待する寿命(以降、この寿命を期待寿命と呼ぶ)は、各機器の調査結果から、ほとんどの製品において、その機器の市場での残存率が、だいたい50%から20%になる期間に集約される。使用者の期待寿命が、標準使用期間として設定されていれば、使用者は標準使用期間に納得できると考えられる。そこで、市場残存率が50%から20%の範囲に相当する使用期間(期待寿命の範囲)の中で、最長の使用期間が、多くの使用者に納得してもらえる標準使用期間の設定の目安となる。
図10のグラフは、家庭用のエアコン(ルームエアコン)の使用期間と市場の残存率を、使用期間毎に調査した結果である。家庭用エアコンの場合は、図10のグラフが示すように、使用を開始して4年位から廃却が始まる。そして残存率は使用期間毎に緩やかに低下するが、7年位から急激に低下するようになる。使用開始から21年位までは製品は市場に存在し続ける。家庭用のエアコンの場合は、図10のような使用期間と市場残存率の関係がある。
この図における市場残存率が50%〜20%の範囲に相当する使用期間、すなわちルームエアコンに対する使用者の期待寿命は、約10年〜13年であることがわかる。そこで、ルームエアコンの標準使用期間を、使用者の期待寿命範囲の中で最長の期待寿命、言い換えれば市場残存率が20%となる使用期間である13年、もしくはそれより長い期間に設定することで、多くの使用者が納得できる適切な標準使用期間となる。
このように設定した標準使用期間であれば、使用者が安全点検を受けることに妥当性をもてる期間となり、安全点検をすることの運営に、使用者と専門業者(製造業者のサービス部門など)の間で、問題が発生する可能性が少なく、運営が効率的であり、また使用者も積極的に安全点検を受ける意識が高まる効果がある。そして製造業者は、このように設定した標準使用期間内において、製品の安全性が維持できるように設計、製造しなければならない。
使用者の期待寿命が、市場残存率と密接に関連する、すなわち期待寿命を市場残存率に置き換えることができるので、空気調和装置に限らず、どのような機器でも使用期間と残存率との関係から、その機器の所定の市場残存率となる使用期間を標準使用期間の設定の目安とすれば、使用者が納得できる適切な設定が可能となる。市場残存率が所定の範囲(上記の場合では50%〜20%)になる使用期間から選択して設定すれば、使用者の期待寿命が反映された標準使用期間とすることができる。また、その所定の範囲の中で最も低い市場存在率(上記の場合では20%)となる期間、もしくはその期間よりは長い期間を、標準使用期間の設定の目安とすれば、多くの使用者が経過後に安全点検を受けることに納得できる標準使用期間を設定することができる。
この実施の形態の空気調和装置では、実使用転期間を把握する方法の一つとして、初めて運転を開始してから、室内側制御装置12もしくは室外側制御装置14が、空気調和装置の運転停止中もタイマーをカウントし続けて把握するように構成しているが、タイマーが運転中のみ稼働し、運転時間のみを積算するようにして、この運転積算時間から実使用時間を推定するように構成してもよい。この構成において、標準使用期間が13年の場合、例えば1日の空気調和装置の運転時間を8時間、1年間における使用期間を250日と想定し、運転積算時間が26,000時間(8時間*250日*13年=26,000時間)を迎えた時点で、標準使用期間を経過したと判断するものである。
このように構成することで、実使用期間のカウントの精度は低下すること(例えば、使用者が、製造業者が想定し制御装置にプログラムした標準使用期間に相当する運転積算時間より大幅に短い時間しか運転しなかった場合など)になるが、空気調和装置の停止中は室内側制御装置12もしくは室外側制御装置14のタイマーの作動を停止することができるため、空気調和装置の待機電力を低減させることが可能となる効果がある。
図11は、運転時間を積算して実使用期間を推定する構成の場合の、運転積算時間に対する経過表示部36の動作や圧縮機1の運転最大回転数と空気調和装置の運転最大電流の流れを示す説明図である。図9の実使用期間を直接的に把握する場合と相対しており、( )内の値は、この実施の形態の設定実施例である。図9にて1つめのステップの期間が1年であったが、この期間も運転積算時間から推定し、想定に対応して8時間*250日=2,000時間とする。標準使用期間に相当する運転積算時間が経過した後、3つめのステップが始まる時期も、図9のおける5年に対して、運転積算時間が8時間*250日*5年=10,000時間を迎えた時から始めるようになっている。
なお、標準使用期間に相当する運転積算時間経過後に、図11に示すようタイマーをリセットして新たに運転時間を積算してもよいが、タイマーの積算を続けて累積していくようにしてもよい。すなわち、タイマーの積算時間が28,000時間になった時に2つめのステップを始めるように、36,000時間になったら3つめのステップを始めるようにするのである。
また、この実施の形態の空気調和装置では、室内機100本体に、標準使用期間が経過したこと示す経過表示部36を設けたが、リモコン25に経過表示部36を設けてもよく、室内機100本体とリモコン25の両方に設けてもよい。リモコン25に経過表示部36を設ける場合では、表示画面27に表示させればよい。経過表示部36の表示がリモコン25の表示画面27に表示されれば、リモコン25の操作時に使用者が気づき易くなる効果がある。
また、経過表示部36にLED等のランプを使用し、その点灯や点滅により表示するようにすれば製造コストの低減が図れるが、そのランプの色は、赤や橙色など、使用者が認識し易く、また警告性を感じるような色が望ましい。また、経過表示部36での経過状態を色別で表示するようにしてもよい。例えば、まもなく標準使用期間が近づくときの表示は、緑色や青色のランプで表示して、標準使用期間を経過した場合には、赤や橙色のランプでの表示に切り替えるようにする。液晶により、標準使用期間を経過したこと文章や図で直接的に表示するようにしてもよい。これらは使用者の注意喚起を強調できる効果がある。
また、音声案内機能を搭載して、音声や警告音を使って標準使用期間を経過したことを知らせるようにしてもよい。この音声や警告音を、標準使用期間を経過後に、使用者が空気調和装置を運転させた時に所定時間だけ発するようにしたり、運転中に所定の間隔で発するようにしたり構成する。音声や警告音による通知は、ランプ等の視覚的な表示と併用してもよく、使用者の注意喚起をより強調できる効果がある。
なお、この実施の形態における空気調和装置では、冷凍サイクルを循環する冷媒として、現在の家庭用エアコンで最も多く使用されているHFC冷媒のR410Aを用いたが、冷媒としてはこれに限定されるものではなく、他の冷媒、例えば、可燃性や毒性がなく安全性の高い二酸化炭素を用いた空気調和装置でも適用可能である。特に可燃性のある冷媒、例えば、HFC系のR32冷媒や炭化水素系の自然冷媒(プロパン、イソブタン等)などには、空気調和装置の構成部品からの発火が着火源となる可能性があるので、経年劣化による部品の発火には十分な注意が必要であり、この発明は可燃性冷媒を用いた空気調和装置には特に有効である。
また、この実施の形態の空気調和装置として、実使用期間の把握やリセット、経過表示部36や経過状況表示手段38を表示する制御などは室内側制御装置12が主体となって実施していたが、室外側制御装置14が実施してもよいし、2つの制御装置12、14で役割分担して実施するようにしてもよい。
実施の形態2.
上記した実施の形態1の空気調和装置においては、実使用期間が標準使用期間を経過した後の安全管理方法として、使用者の依頼により、専門業者(例えば、製造業者が指定するサービス部門など)がその装置の安全点検を実施することとしたが、この実施の形態2においては、実使用期間が標準使用期間を経過した後の安全管理方法として、使用者が自ら安全点検を実施するものとし、以下に説明する。安全点検以外については、すべて実施の形態1と同じであり、安全点検以外のことの説明は省略する。
使用者が製造業者や製造業者の指定するサービス部門などに対し、自己責任(使用者自身の責任)のもとで安全点検を行いたい旨を申し出た場合、その申し出を受けた製造業者やサービス部門は、使用者に対して、使用者が自己責任において継続使用することを申し出るための申請書を送付する。製造業者やサービス部門は、使用者によって記入されたその申請書を受理し、空気調和装置の安全上の確認表を送付する。さらに経過表示部36や経過状況表示手段38の非表示化やリセットのために、実使用期間のカウントをリセットする方法(例えば、使用期間を演算するタイマーをリセットするためのリモコン25の操作など)を使用者に連絡する。製造業者やサービス部門からの実使用期間のカウントリセットの連絡は、使用者が確認表の結果を製造業者やサービス部門に連絡した後で行われるようにしてもよい。
そして、安全上の確認表には、電源プラグ22に変色はないか、電源プラグ22とコンセントとの嵌め合いにガタツキはないか、結露水の排水経路に埃等による詰まりや漏れはないか、室外機200の外郭部品に錆による穴や腐食等がないか、室内機100およぶ室外機200の固定は安定しているか(固定強度が保たれているか)、空気調和装置の運転時に、焦げ臭い等異臭の発生はないか、異常な音や振動が発生していないかなどの確認事項を記載しておくとよい。
また、継続使用の申請書には、空気調和装置の形名、使用場所(設置場所の住所など)、使用者氏名、使用者の連絡先(住所、電話番号、メールアドレスなど)の記入欄を設け、これを記載してもらうようにする。これにより製造業者は、直接あるいはサービス部門を介して、使用者の連絡先をもとに、継続使用されている空気調和装置の安全に関連する情報を使用者へと提供することが可能になり、使用者の長期使用の安全に対する注意喚起を図ることができる。
上記の実施の形態1および2では、空気調和装置を実施例として説明した。しかし、この発明は空気調和装置に限定されるものではない。冷媒を圧縮機で圧縮して循環させる冷凍サイクルを用いた他の家庭用電化機器に適用しても空気調和装置に対する効果と同様な効果が得られる。冷凍サイクルを用いた他の家庭用電化機器として、冷蔵庫、除湿機、ヒートポンプ式給湯装置などに適用できる。給湯装置の場合では、熱源機、貯水タンクとも屋外に配置されるので、室内に設置される操作パネルに表記部34を設けるか、その操作パネルの近傍の壁面等に表記部34を貼り付けなどで固定するようにして設ければよい。そして経過表示部36は、操作パネルに設ければよい。
なお、空気調和装置についても、1台の室外機に2台以上の室内機が接続される形式のもの、所謂マルチエアコンであっても適用でき、その場合では、それぞれの室内機に表記部34と経過表示部36を設けるようする。また、上記の実施例のように室内機100と室外機200に分離したセパレート形式のものでなく、凝縮器と蒸発器が1つの筐体に収納される一体形式のもの、例えば窓に設置するウインドウエアコンなど、であっても適用可能である。
また、2つめのステップにおける最大運転能力の低下もしくは圧縮機の連続運転の制限については、上記の空気調和装置では電流や吐出温度を運転制御因子や保護手段の作動因子として使用したが、それぞれの機器に対応した運転制御因子や保護手段の作動因子の設定値を下げるようにすればよい。また、空気調和装置も含め、冷凍サイクルの圧縮機が可変速対応でなく一定速機であり、その一定速圧縮機のオンオフにより、運転能力を操作する機器であれば、2つめのステップにおいては、圧縮機のオン時間、すなわち運転時間を制限するような制御を行って、最大運転能力を低下させればよい。
また、家庭用電化機器だけでなく、冷凍サイクルを用いた業務用機器、例えばパッケージエアコン(業務用空気調和機)、業務用冷凍冷蔵装置、ショーケース、自動販売機などに適用しても、機器の長期使用における安全性を確保でき、使用者への注意喚起が図れる。
また、この発明は、冷凍サイクルを用いない他の家庭用電化機器に対しても適用することができ、機器の長期使用における安全性を確保でき、使用者への注意喚起が図れる。経過表示部36の表示は、例えばテレビであれば、画面上に経過表示部36を構成するなど、その機器の機能や意匠に見合った手段で表現するように構成すればよい。そして2つめのステップにおける最大能力の低下措置については、圧縮機を有していないので、圧縮機回転数を低下させる手段は適用できないが、例えばテレビでは、画面の明るさを低下させるとか、洗濯機であれば脱水時の回転数を低下させるとか、その機器に見合った手段を適用すればよい。3つめの運転禁止措置も、その機器を作動させようとしても運転できなくなるような手段を適宜用いればよい。