実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について、図1乃至図6を参照しながら説明する。この実施の形態1においては、冷凍サイクル装置として、家庭用の空気調和機(ルームエアコン)を例に説明する。
図1は、この発明における電力系統50と需要側との構成の一例を示す構成図である。図2は、実施の形態1における空気調和機100の冷媒回路等を示す構成図である。そして、図3は、空気調和機100の室内機101の縦断面図であり、図4は、空気調和機100の制御装置の構成を示す構成図である。図5は、電源の電圧波形と室外側制御装置14が備える電源ゼロクロス回路207の出力信号との関係を示す説明図であり、図6は、空気調和機100の室内機101本体の斜視図である。
図1において、破線で囲まれた領域が電力を供給する側である電力系統50であり、おおよそ1つの発電所を表象している。電力系統50には、図1に示すように発電装置として、石油や石炭等の化石燃料の燃焼により発電する複数の回転型発電機104(図示は3基で、それぞれ104a、104b、104cの符号を付すが、3基に限るものではなくもっと多くてもよい。)と、自然エネルギーである太陽光を用いて発電する太陽光発電設備105および風力を用いて発電する風力発電設備106と、が接続されている。
回転型発電機104は、石油や石炭等の化石燃料を燃焼して水を蒸気に変え、その蒸気によって回転するタービンにより回転して発電する。この電力系統50が供給する電力の周波数は、回転型発電機104の発電により決定され、太陽光発電設備105や風力発電設備106は、その周波数に同調して発電する。
電力系統50からの電力送電線107に、電力を消費する需要側となる電化機器を有する複数の住宅103(需要家)が接続されている。そして各需要家が、電力送電線107を介して住宅103のコンセントから電力系統50が供給する電力を得て、それぞれ保有する電化機器を運転することにより電力系統50が供給する電力を消費している。そのような電化機器の一つが、図1に示される空気調和機100であり、図示されるように、この空気調和機100は、室内に設置される室内機101と屋外に設置される室外機102から構成されている。室内機101から室外機102に電力を伝達する室内外連絡ケーブル13が両者間に接続されている。
電力系統50の回転型発電機104は、電力系統50すなわち電力の供給側が供給する電力と、需要側が消費する電力とのバランス(電力の需給バランス)が安定に維持されていれば、一定の周波数で発電する。この電力系統50では50Hzで発電している。すなわち、電力系統50が供給する電力の標準周波数が50Hzということである。もし、電力の需給バランスが崩れて、電力が供給過剰となれば、回転型発電機104の特性上、供給電力の周波数は自然と上昇し、逆に電力が供給不足となれば自然と周波数は低下する。そのため、電力の需給バランスの状態は、一般的には供給電力の周波数を把握することで判定できる。
需要側から見れば、供給電力の周波数は、住宅内のコンセントに電源プラグを挿して得られる電力の周波数であり、これを本明細書では電源の周波数と呼ぶことにする。この電源の周波数を電化機器が把握できれば、需要側においても電力の需給バランスの状態を判別することが可能となる。この実施の形態1の空気調和機100は、電源の周波数を把握できる手段を備えるものであるが、それについての詳細な説明は後述する。
上記のとおり、電源の周波数とは、需要側、すなわち電力を消費する需要家、電化機器から見た場合の供給電力の周波数であり、電源の周波数と供給電力の周波数は同じ周波数である。供給側(電力系統50)から見た場合が、供給電力の周波数となり、需要側(住宅103)から見た場合が電源の周波数となる。それぞれの立場に応じて使い分けて説明した方がわかりやすいため、以降も両方を用いるが、同じ周波数のことである。
電力系統50には、地球温暖化抑制のために、燃料を燃焼せず二酸化炭素を排出しない風力や太陽光といった自然エネルギーを活用した発電の導入をより積極的に拡大することが望まれている。太陽光発電設備105や風力発電設備106は、発電量が天候に左右されるため電力の安定供給が難しいが、需要側である電化機器において電力の需給バランスを整える運転が行われれば、仮に天候が急変して太陽光発電設備105や風力発電設備106の発電による電力の供給量が変動しても、それに合わせて需要側で電力消費量が調整されて電力品質の安定は保たれるので、電力系統50において天候急変後に直ちに電力の供給量を回復する措置を取ればよく、風力や太陽光といった自然エネルギーを活用した発電の導入がより拡大できるようになる。
住宅103には、説明は後述するが、電源の周波数を把握して電力の需給バランス状態を判定し、これが崩れたと判断すると直ちに電力の需給バランスを整える運転が可能である本実施の形態1の空気調和機100が設置されている。そして電力系統50においては、風力発電設備106と太陽光発電設備105を最大限に活用し、回転型発電機104は1基のみの運転として、電力を供給している。
ここで、天候が変化して風力発電設備106と太陽光発電設備105の発電量が例えば急に減少して電力が供給不足になる、もしくは需要側において電力の消費量が急増して電力が供給不足になると、電力系統50は、電力の供給量を回復する措置として、直ちに回転型発電機104を2基、もしくは3基と運転台数を増加させて供給電力の増加を図る。電力の供給量を回復する措置をとる期間は一時的に電力の供給不足状態となるが、その間は、需要側である本実施の形態1の空気調和機100が、消費電力を減少させて電力の需給バランスを整える運転を行うことにより、電力の需給バランスの安定は確保され、電力品質の安定は保たれる。
今までの電力系統では、需要側である電化機器にそのような電力の需給バランスを整える運転を望めなかったので、電力品質の安定を保つためには、天候に発電量が左右される自然エネルギーを用いた発電の導入拡大を進展させることができずにいたが、本実施の形態1の空気調和機100を需要側の住宅103が備えることで、この電力系統50のように風力発電設備106と太陽光発電設備105を最大限に活用して、回転型発電機104の運転を電力需要に応じた最小限にとどめ、燃料を燃焼するときに生じる二酸化炭素の排出を極力抑えることが可能となる電力系統(発電所)が実現できる。
これより、電源の周波数を把握して電力の需給バランス状態を判定し、これが崩れれば直ちに電力の需給バランスを整える運転が可能となる、実施の形態1の空気調和機100について、詳細に説明する。まず、この空気調和機100の全体構成と基本的な作用を説明し、その後でこの空気調和機100の電源の周波数の測定手段、把握した電源の周波数に基づいた運転制御等について詳細に説明する。
図1および図2に示すように、この空気調和機100は、室内に設置される室内機101と屋外に設置される室外機102とから構成されるセパレート形であり、室内機101と室外機102の間は、接続配管11a、11bで冷媒回路が接続されている。接続配管11aは凝縮工程を通過後の冷媒が流れる液側の接続配管で、接続配管11bは蒸発工程を通過後の冷媒が流れるガス側の接続配管である。
この空気調和機100の運転を制御する制御装置が、室内機101と室外機102にそれぞれ設置され、室内機101には室内側制御装置12、室外機102には室外側制御装置14が配置される。それぞれが制御基板を保有し、その基板上に空気調和機100を運転制御するための各種回路が構成されている。室内側制御装置12と室外側制御装置14は室内外連絡ケーブル13により接続されている。この室内外連絡ケーブル13は接続配管11a、11bとともに束ねられている。
室外機102には、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機1、冷媒の流れ方向を切り換える冷媒流路切換弁5(以降、四方弁5と呼ぶ)、外気と冷媒との熱交換を行う室外熱交換器8、開度が変更可能で、高圧の冷媒を低圧に減圧する電子制御式膨張弁などの減圧装置7(以降、膨張弁7と呼ぶ)が配置され、室内機101には室内空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器6が配置される。これらを接続配管11a、11bを含む配管で順次接続して冷媒回路、すなわち圧縮機1により冷媒を循環する圧縮式冷凍サイクル(圧縮式ヒートポンプサイクル)を構成している。この冷凍サイクルを循環する作動流体である冷媒には、ここではHFC混合冷媒であるR410Aが用いられている。
なお、冷凍サイクルを循環する冷媒として、空気調和機100では、現在の家庭用空気調和機(ルームエアコン)で最も多く使用されているHFC混合冷媒のR410Aを用いているが、本発明は、冷媒がこれに限定されるものではない。他の冷媒、例えば、可燃性や毒性がなく安全性の高い二酸化炭素を用いた空気調和機であっても適用可能であり、また、例えば、HFC冷媒のR32や炭化水素系の自然冷媒(プロパン、イソブタン等)の冷媒を用いても適用可能である。
圧縮機1は、密閉容器内にロータリ式やスクロール式などの圧縮機構部と、その圧縮機機構部を駆動する電動機が収納されており、密閉容器に設置されたガラスターミナルを介して電力がその電動機に伝えられ、この電力によって電動機が回転することで、圧縮機構部に低圧の冷媒を吸入してこれを圧縮し、密閉容器外の吐出配管2へと吐出する。圧縮機1の電動機は供給される電力の電圧、周波数に応じて回転数を変化させるもので、この圧縮機1の電動機は、回転子の鉄心内に希土類やフェライトの永久磁石が埋め込まれたDCブラシレスモータが用いられている。
圧縮機1の回転数を変更するために、圧縮機1に供給される電力の電圧や周波数を変更するのが、室外側制御装置14の制御基板上に構成される圧縮機駆動回路15である。圧縮機1の運転開始や停止も圧縮機駆動回路15により制御される。この圧縮機1の電動機の回転数を、圧縮機1の回転数と呼ぶ。圧縮機1は、圧縮機駆動回路15によりインバータ制御され、回転数を変更可能、すなわち回転数可変となっている。このように、圧縮機駆動回路15が、圧縮機1の運転を制御している。
圧縮機1は圧縮機機構部の上流側で密閉容器の外部に、蒸発しきれずに液のまま圧縮機1に到着した冷媒を一時的に貯留して圧縮機構部での液圧縮を回避させるアキュームレータ4を接続保持しており、このアキュームレータ4に冷凍サイクルの吸入配管3が接続されている。
室内機101内部の室内熱交換器6の近傍には、送風機である室内ファン9が設置されており、室内側制御装置12の制御基板上に組み込まれた室内ファン駆動回路により制御され、室内ファン9の運転開始や停止、回転数の変更がなされる。同様に室外機102には、室外熱交換器8の近くに送風機である室外ファン10が設置され、室外側制御装置14の制御基板上に組み込まれた室外ファン駆動回路により、室外ファン10が制御され、室外ファン10の運転開始や停止、回転数の変更が行われる。
室内ファン9は室内熱交換器6における、そして室外ファン10は室外熱交換器8における空気と冷媒の熱交換を促進させる。基本的には室内ファン9、室外ファン10ともに、その回転数は、圧縮機1の回転数に連動しており、圧縮機1が高回転で運転され、冷媒回路を流れる冷媒循環量が多いときには、室内ファン9、室外ファン10の回転数も高くなって、室内熱交換器6、室外熱交換器8での冷媒と空気との熱交換量を大きくする。
室温サーミスタ18により実際の現状の室温(空気調和される部屋の温度)が検出され、この検出信号は室内側制御装置12に伝えられる。そしてワイヤレスリモコンなどの外部操作装置25(以降、リモコン25と呼ぶ)により、使用者が要求する温度、すなわち設定温度の情報も室内側制御装置12に伝えられる。室内側制御装置12は、室温サーミスタ18により検出した温度(室温)と設定温度の差により建物負荷を算出し、算出した建物負荷に応じて圧縮機1の回転数を変更するための信号を室内外連絡ケーブル13を介して室外側制御装置14に送る。室外側制御装置14は、室内側制御装置12からの信号に基づき、圧縮機駆動回路15により圧縮機1を建物負荷に応じた回転数に制御する。
圧縮機1の回転数の可変幅は有限であり、この空気調和機100では、圧縮機1の通常の運転最大回転数(最大許容回転数)を120rpsとしている。そのため、圧縮機駆動回路15は、120rpsより高い回転数となるような周波数およびそれに対応する電圧を圧縮機1へは供給しない。
室内外連絡ケーブル13には、室内側制御装置12と室外側制御装置14間の制御信号のやりとりをする通信線13cだけでなく、電源プラグ22を室内のコンセントに挿して得られる電力を、室内機101から室外機102へ伝達する電源線13a、13bも含まれている。この電源線13a、13bから伝えられる電力により、圧縮機1や室外ファン10等が運転される。
室外側制御装置14では、室外機102に室内外連絡ケーブル13を通って伝達されてきた電力の電流(運転電流)を検出している。ここで検出する電流は1次側電流である。そして運転時は常時、この検出した運転電流が所定のしきい値を越えないように制御している。このしきい値が運転最大電流(最大許容電流)で、この空気調和機100では18A(アンペア)としている。室外側制御装置14は、検出しているこの運転電流が運転最大電流、すなわち18Aを超えないように制御し、空気調和機100の運転電流が18Aを超えそうになると、圧縮機駆動回路15により圧縮機1の運転回転数を低下させ、運転電流を下げるように制御する。運転最大電流は、電源プラグ22の容量に見合った値が設定されており、これを超えさせないことで電源プラグ22の安全性を維持している。なお運転電流は、図4に示すカレントトランス(電流センサ)208にて測定される。
また、圧縮機1や室内ファン9、室外ファン10の回転数、膨張弁7の開度などを細やかに制御して、この空気調和機の運転状況をより使用者の要求に近づけるために、並びに圧縮機1や室内ファン9、室外ファン10などの保護のために、フィンアンドチューブ型である室内熱交換器6の冷媒が流れる配管には、その配管の表面温度を検出する室内管温サーミスタ20が取り付けられている。同様に、フィンアンドチューブ型である室外熱交換器8の冷媒が流れる配管には、その配管の表面温度を検出する室外管温サーミスタ21が取り付けられている。
これらの管温サーミスタ20、21から冷媒の凝縮温度、蒸発温度が得られ、その温度から凝縮圧力(吐出圧、高圧)、蒸発圧力(吸入圧、低圧)を室外側制御装置14もしくは室内側制御装置12が把握する。圧縮機1やその他冷媒回路の種々の部品を高い圧力から保護するために、室内管温サーミスタ20もしくは室外管温サーミスタ21によって把握した凝縮圧力が、所定のしきい値を超えると、圧縮機1の運転を停止する措置を、室外側制御装置14が行う。このしきい値が停止措置圧力である。
管温サーミスタ20、21と同様に運転制御や保護に用いるために、吐出配管2の表面温度を検出する吐出温度サーミスタ17が吐出配管2に取り付けられる。吐出温度サーミスタ17は圧縮機1の吐出する吐出冷媒ガス温度を把握したいものであるので、吐出配管2の圧縮機1寄りの位置に設置されている。圧縮機1が、密閉容器内に圧縮機構部から一旦吐出ガスが吐き出され、密閉容器内部が吐出圧(高圧)雰囲気となる高圧シェルタイプであれば、吐出温度サーミスタ17を圧縮機1の密閉容器の外表面に取り付けてもよい。
圧縮機1の運転時は常時、この吐出温度サーミスタ17が検出した温度(以降は吐出温度と呼ぶ)が所定のしきい値を超えないように、室外側制御装置14が制御している。このしきい値が運転最大吐出温度で、この空気調和機100では115℃としている。室外側制御装置14は、検出しているこの吐出温度が、運転最大吐出温度、すなわち115℃を超えないように、吐出温度が115℃を超えそうになると、圧縮機1の運転回転数を低下させ、吐出温度を下げるように制御する。
また、室内機101は、室内側制御装置12の指令に基づいて、室内機101本体前面側に、この空気調和機100の運転状況や、室内の温度状況、設定温度などを表示して使用者に伝える表示手段23を備えている。
室内側制御装置12から、使用者の要求に基づいた空気調和装置機100の運転モードの指令が室外側制御装置14に伝えられる。運転モードは、冷房運転もしくは除湿運転または暖房運転などである。運転モードの指令信号を室外側制御装置14が受けると、その運転モード信号が冷房運転時もしくは除湿運転を指令するものである時には、室外熱交換器8が凝縮器に、室内熱交換器6が蒸発器となるように、室外側制御装置14が四方弁5を動かして冷媒の流れ方向を制御する。暖房運転を指令された場合には、逆に室内熱交換器6を凝縮器として、室外熱交換器8を蒸発器として用いるような冷媒の流れにすべく、四方弁5を切り換え制御する。
ここで室内機101の構成と動作について、図3を参照して説明する。この室内機101は、壁掛けタイプであり、空調される部屋の壁面上方に設置される。筐体30の内部に上記した室内熱交換器6や室内ファン9などが収納されている。室内機101では、室内ファン9として長手方向に長いクロスフローファンが使用され、室内熱交換器6の下流側でその長手方向を水平にして設置されている。筐体30の前面には、室内機101本体の意匠面となる前面パネル31が設置される。この前面パネル31は、上方を支点として上下方向に開閉可能である。
筐体30の上方には、室内機101本体内部に室内空気を吸い込む吸込口32が形成されている。一方、筐体30の下部で前面パネル31より下方には、室内機101本体内部で室内熱交換器6を通過して冷媒と熱交換した後の室内空気(調和空気)を室内に吹き出す吹出口33が設けられている。吹出口33には、吹き出す調和空気の上下方向を調整する上下風向調整板34が設置され、また、その上下風向調整板34の上流側の吹出風路内には、吹き出す調和空気の左右方向を調整する左右風向調整板35が設置されている。
左右風向調整板35は、室内機101本体の上下方向に直立状に設置され、左右に長い吹出口33の長手方向に沿って複数枚が並列されて構成される。そして室内側制御装置12の指令に基づき左右方向に回動する。また、上下風向調整板34は吹出口33に沿って左右方向に長く構成され、吹出口33の上下に2枚がともに水平に設置される。そして室内側制御装置12の指令に基づき上下方向に回動する。空気調和機100の運転停止時には吹出口33は2枚の上下風向調整板34によってその開口が塞がれる。
空気調和機100の運転中は、室内ファン9が回転することで、吸込口32から筐体30の内部に室内空気が吸い込まれる。吸い込まれた室内空気は、室内熱交換器6へと導かれ、室内熱交換器6内部を流れる冷凍サイクルの冷媒と熱交換し、調和空気となる。調和空気は、室内ファン9の回転により、室内ファン9の下流にある吹出風路を通って吹出口33から室内へと送風される。送風される調和空気の風向は、左右風向調整板35、上下風向調整板34にて調整される。
次に室外側制御装置14および室内側制御装置12の構成について図4を参照しながら説明する。室外側制御装置14および室内側制御装置12はそれぞれ1枚の制御基板を有し、その基板上に各種回路が実装されている。この空気調和機100では、室外側制御装置14および室内側制御装置12のそれぞれの制御基板が1枚で構成されているが、2枚以上に分けて構成してもよい。
そして室外側制御装置14には、制御基板上にマイクロコンピュータ209(以降、室外制御マイコン209と呼ぶ)を装備している。室外制御マイコン209は、各種の情報信号を入力する入力部と、演算処理や判断処理が行われるCPUと、制御設定値や制御プログラム、CPUでの演算結果等を記憶してCPUに提供するメモリと、制御信号を出力する出力部とから構成されている。室内側制御装置12にも、同様な構成のマイクロコンピュータ201(以降、室内制御マイコン201と呼ぶ)を装備している。
図4に示される室外側制御装置14の構成図には、回路として圧縮機駆動回路15が図示されている。室外側制御装置14は、基板上に実際には、この圧縮機駆動回路15以外にも、室外ファン10の駆動回路、膨張弁7の開度調整回路、四方弁5の切換回路を実装しているが、図4においてはこれらの回路の図示を省略している。圧縮機駆動回路15を含めたこれらの回路のいずれもが、室外制御マイコン209の出力する制御信号に基づいて動作することで、圧縮機1、室外ファン10、膨張弁7、四方弁5が制御される。
また、図4に示される室内側制御装置12の構成図には、各種回路の図示を省略しているが、実際には室内ファン9の駆動回路、上下風向調整板34や左右方向調整板35の駆動回路、表示手段23の運転回路などが基板上に実装されている。これらの回路のいずれもが、室内制御マイコン201の出力する制御信号に基づいて動作することで、室内ファン9、上下風向調整板34、左右風向調整板35、表示手段32が制御される。これら室外側制御装置14と室内側制御装置12により、本冷凍サイクル、そしてこの空気調和機100の運転が制御される。
ここで圧縮機駆動回路15について説明する。室内機101の電源プラグ22がコンセントから得た電力が、商用電源周波数(ここでは基本的に50Hz)の交流電源電圧にて、室外側制御装置14に供給されると、ダイオードブリッジ204で全波整流されて、交流電源電圧が直流電圧に変換される。
次に、平滑コンデンサ205にて、ダイオードブリッジ204で変換された直流電圧が平滑化され、脈動分の少ない直流電圧となる。その後、インバータ部であるIPM( Intelligent Power Module)206にて、直流電圧が三相交流電圧に変換され、ガラスターミナルを介して圧縮機1の電動機に供給されて圧縮機1が駆動する。
IPM206は、直列に接続された2つのスイッチング素子と、それぞれのスイッチング素子に並列に接続されたダイオードとを有し、圧縮機1の電動機が三相モータであるので、これらのスイッチング素子とダイオードの組み合わせを3組備えている。ただし、図4のIPM206には、省略して1組だけ図示している。IPM206のスイッチング素子のスイッチングは室外制御マイコン209の出力する制御信号に基づいて行われる。
このとき、室外制御マイコン209は、建物負荷に応じた圧縮機1の回転数となるように、IPM206のスイッチング素子をスイッチングして、三相交流の周波数と電圧を作り出し、圧縮機1に供給する。これにより、圧縮機1が建物負荷に応じた回転数に制御される。このように、電力送電線107を介して室内のコンセントに供給されている商用交流電源(交流電力)から、圧縮機1の回転数が任意の回転数となるような三相の交流電圧や周波数を作り出す駆動回路が、圧縮機駆動回路15である。
近年は、電化機器に対して省エネルギー化の要求が増し、空気調和機においても高効率化の観点から、圧縮機1の電動機として、従来の交流(AC)モータから直流(DC)ブラシレスモータを採用することが主流となってきている。この直流ブラシレスモータを高効率に運転するためには、回転子の回転位置を検出し、回転位置に応じてインバータ部であるIPM206のスイッチング素子のスイッチングを行う必要がある。
そして、この圧縮機駆動回路15は、さらにPAM(Pulse Amplitude Modulation)手段203を備えており、PAM手段203により電源電圧波形と電流波形の位相を合わせることで、力率を改善し、空気調和機100の高効率化を図っている。PAM手段203を用いてPAM制御することにより、リアクタ202のみによって力率改善を図る場合に比べて、力率を大幅に改善する事ができ、空気調和機100のより高効率化が図れる。
PAM手段203は、ダイオードブリッジとその出力側に接続されるスイッチング素子を有する。ここでは電源(室内のコンセント)が単相であるため、これらが1組だけであるが、電源が三相電源であれば、ダイオードブリッジとスイッチング素子の組み合わせを3組備えることになる。
このPAM手段203によるPAM制御では、電流波形の一定のタイミングで、PAM手段203の有するスイッチング素子をスイッチングすることで、電流波形を正弦波に近づけることができるのである。このスイッチング素子のスイッチングは制御マイコン209の出力する制御信号に基づいて行われる。
そして、制御マイコン209が、このスイッチングを行うためのタイミングを算出するために、室外側制御装置14の制御基板上には、圧縮機駆動回路15の一部として、電源ゼロクロス回路207を備えている。この電源ゼロクロス回路207は、室内機101から供給されてきた電源交流電圧、すなわち、室内のコンセントから電源プラグを介して空気調和機100に入力(印加)された電源の交流電圧に対して、この交流電圧のゼロ点(電圧ゼロ点)の通過を検出する回路である。この電源ゼロクロス回路207の検出信号を室外制御マイコン209が取り込み、この検出信号を利用してPAM手段203のスイッチング素子をスイッチングするタイミングを計っている。この電源ゼロクロス回路207は、圧縮機駆動回路15の構成要素の一つとなっている。
図5は、この電源ゼロクロス回路207の動作を説明するための説明図で、電源電圧波形51と電源ゼロクロス回路207の出力信号53の関係を示している。図5に示すように、室内機101より室外機102に供給されてきた電源交流電圧の電圧波形51が、電圧ゼロ点52aを通過する時に、電源ゼロクロス回路207は信号(電圧)を制御マイコン209に出力し、次の電圧ゼロ点52bを通過する時には信号の出力を停止する。そして次の電圧ゼロ点52cを通過する時に再び信号を出力する、というように、交流電圧の電圧ゼロ点を通過するタイミングで、室外制御マイコン209に送る信号の出力を繰り返しON/OFFするものである。電源ゼロクロス回路207の出力信号は図5において符号53を付して示されている。
この電源ゼロクロス回路207では、信号を5V(ボルト)の電圧としており、電源ゼロクロス回路207から室外制御マイコン209に5Vの電圧の出力有無が、電源電圧のゼロ点通過のタイミングで繰り返される。図5では、交流電源電圧が正の電圧である区間に信号を出力し(出力信号5V)、負の電圧となる区間では信号を出力しない(出力信号0V)としているが、これが逆であってもよい。また、交流電圧のゼロ地点通過の度にパルス状に出力信号を出力するようなゼロクロス回路を用いてもよい。なお、出力信号の電圧値は5Vに限定されるものではない。
なお、この圧縮機駆動回路15のようなPAM手段203を有さずPAM制御を行わない圧縮機駆動回路であっても、電源ゼロクロス回路207を圧縮機駆動回路の構成要素として基板上に保有して、室外制御マイコン209が、インバータ部であるIPM206のスイッチング制御のタイミングを計るために、電源ゼロクス回路207の出力信号を利用することもある。
これより、この空気調和機100における電源の周波数の測定手段、そして測定した電源の周波数に基づく空気調和機100の運転制御等について詳細に説明する。
室内機101から室外機102に供給された交流電源、すなわち室内のコンセントから得た商用電源の周波数(これは、電力供給側である電力系統50から見れば、供給電力の周波数である)を測定するために、室外側制御装置14では、PAM手段203によるPAM制御のために使用している電源ゼロクロス回路207を活用する。上記のとおり、電源ゼロクロス回路207は、室外機102に供給された交流電圧のゼロ点を検出できる。
また、マイクロコンピュータは通常、自身が動作するタイミングを取るために、水晶発振子やセラミック発振子を利用したクロック発振回路を備え、このクロック発振回路から発生される周期的な方形波(矩形波)の信号であるクロック信号を使用している。一般的には発振子と発振回路を1つにパッケージングしたモジュール(電子部品)としてマイクロコンピュータとは別体で基板に装備される。この室外制御マイコン209もマイコン209とは別体のセラミック発振子を利用した発振回路210を室外側制御装置14の制御基板上に有しており、このクロック発振回路210から発生されるクロック信号を利用している。
同様に室内制御マイコン201も、セラミック発振子を利用したクロック発振回路211を室内側制御装置12の基板上に有し、このクロック発振回路211から発生されるクロック信号を利用して、自身が動作するタイミングを取っている。最近では、マイクロコンピュータそのものにクロック信号の発振回路が内蔵されているものもある。
そこで、電源ゼロクロス回路207による電源電圧波形のある電圧ゼロ点の通過検出から、その次の次の、すなわちその電圧ゼロ点から2回後の電圧ゼロ点の通過検出までの時間、図5によれば、電圧ゼロ点52aの通過から電圧ゼロ点52cの通過までの時間を、室外制御マイコン209が、発振回路210のクロック信号を使用して算出することで、室外側制御装置14は、電源の交流電圧波形51の1周期を捉えることができるのである。
クロック発振回路210のクロック信号は、セラミック発振子により周波数が決定されている、すなわち1秒間あたりの発振子の振動数(クロック信号の方形波の数量)が決定されているので、例えば、室外制御マイコン209が、電源ゼロクロス回路207の出力信号立ち上がり(0→5V)を捉えると、次に電源ゼロクロス回路207の出力信号立ち上がりを捉えるまでの間(図5では、電圧ゼロ点52aから電圧ゼロ点52cの区間)の、セラミック発振子振動数をカウントすれば、その間の時間、すなわち電源電圧波形の1周期が算出できる。電源ゼロクロス回路207の出力信号の立ち下がり(5V→0V)から次の出力信号立ち下がりまでの間のセラミック発振子振動数をカウントしてもよい。
周期(秒)は、周波数(1/秒)の逆数であるので、室外制御マイコン209が電源電圧波形の1周期を捉えることで、電源電圧波形の周波数、すなわち電源の周波数、電力系統50から見れば供給電力の周波数を室外制御マイコン209が把握(測定)することできる。例えば、電源ゼロクロス回路207の出力信号立ち上がりから次の出力信号立ち上がりまでの間、図5によれば、電圧ゼロ点52aから電圧ゼロ点52cまでの時間が0.0201秒と算出されれば、電源の交流電圧の1周期が0.0201秒となるので、逆数1/0.0201=49.75Hzが、電源の周波数であることを室外制御マイコン209が把握できる。
なお、電源ゼロクロス回路207の出力信号の立ち上がりから、その後の最初の出力信号立ち下がりまでの間(図5によれば、電圧ゼロ点52aから電圧ゼロ点52bの区間)と、その出力信号の立ち下がりからその後の最初の出力信号立ち上がりまでの間(図5によれば、電圧ゼロ点52bから電圧ゼロ点52cの区間)の両方について、セラミック発振子振動数をそれぞれカウントして、電源電圧波形の半周期をそれぞれ算出し、それらを加算して1周期を求めることで、電源の周波数を測定(把握)するようにしてもよい。または、どちらか一方だけのセラミック発振子振動数をカウントして半周期を求め、それを2倍することで1周期とみなしてもよい。電源ゼロクロス回路207によって検出された電源交流電圧の電圧ゼロ点の間隔から、室外側制御装置14(室外制御マイコン209)が電源電圧波形の周期を捉えることができるのである。
このように、この空気調和機100における電源の周波数を把握する(測定する)手段は、既存の室外制御マイコン209に交流電圧波形の周期とその逆数を算出するプログラムを追加するだけで、電源ゼロクロス回路207と、クロック発振回路210を含めた室外制御マイコン209という、元より室外側制御装置14が保有していた要素にて構成されるものである。図4において、電源ゼロクロス回路207と、クロック発振回路210を含めた室外制御マイコン209から構成される回路16が、電源の周波数測定回路16となる。
この空気調和機100においては、この電源の周波数測定回路16の構成要素の一つである電源ゼロクロス回路207と、PAM手段203もしくはインバータ部であるIPM206のスイッチング制御のタイミングを計るために元より室外側制御装置14の圧縮機駆動回路15が保有していたゼロクロス回路(電源ゼロクロス回路207)と、が併用されているのである。このように、何ら特別な構成部品を設ける必要がなく、既存の電子部品や回路を利用しているだけであるので、電源の周波数を測定できる電源の周波数測定回路16を極めて安価に構成することができる。そして、室外側制御装置14の拡大も要らずに、既存の室外側制御装置14内に電源の周波数測定回路16を構成することができる。
なお、PAM手段203を保有せず、インバータ部(IPM)206のスイッチングについても電源ゼロクロス回路207を利用しないために、電源ゼロクロス回路207を室外側制御装置の制御基板上に装備していない空気調和機であれば、電源ゼロクロス回路207をその室外側制御装置の基板上に新設して、既存の室外制御マイコン209(クロック発振回路210含む)と合わせて電源の周波数測定回路16を構成すればよい。ゼロクロス回路は、単純な回路で基板上の占有面積も小さく、安価に構成できるので、電源の周波数測定回路16を構成するために、新たに電源ゼロクロス回路207を設けても、空気調和機のコスト増は極めて小さく抑えられ、室外側制御装置14を拡大する必要もなく、既存の室外側制御装置14内に電源の周波数測定回路16を構成することができる。
ここで、クロック発振回路の発振子としては、水晶発振子(水晶振動子)が、その発振するクロック信号の周波数の精度が高いことで知られているが、一般の家庭用電化機器に用いられるマイクロコンピュータの多くは、クロック発振回路の発振子として、水晶発振子に比べて大幅に安価なセラミック発振子を使用している。この室外制御マイコン209においても、クロック発振回路210の発振子としてセラミック発振子を用いている。しかしセラミック発振子は、水晶発振子よりもクロック信号の周波数精度の観点で劣る。
水晶発振子のクロック信号周波数は、誤差±0.001%程度と極めて精度が高いが、セラミック発振子のクロック周波数精度は、誤差が±1%程度とかなり劣る。そのため、この電源の周波数測定回路16が把握する電源の周波数は、約±1%の誤差を含んでいることになる。例えば、実際に電源の周波数の絶対値がちょうど50.0Hzであったとしても、電源の周波数測定回路16は、49.5Hz〜50.5Hzのいずれかの値で認識してしまう可能性があり、把握した電源の周波数の絶対値は信用度が低く、絶対値をそのまま使用して制御することは困難となる。
電力系統50が供給する電力の周波数に対しては、多少の変動が許容されており、その許容範囲は±0.3Hzである。標準周波数が50Hzの場合、供給電力の周波数は49.7Hz〜50.3Hzの間にあれば許容される。すなわち、この空気調和機100を商用電源周波数50Hzのコンセントに電源プラグ22を挿して使用する場合には、電源の周波数が49.7Hz〜50.3Hzの間で変動することに対しては、空気調和機100は、電力の需給バランスを整えるために特別な動作を起こす必要はない。
言い換えれば、±0.3Hzを超える電源の周波数の変動に対して、電力の需給バランスを整えるための動作が必要となってくることになるが、上記のとおり、セラミック発振子のクロック信号を用いて電源の周波数を算出するこの電源の周波数測定回路16が把握した電源の周波数は、約±1%の誤差を含んでいるため、実際の電源の周波数が50.0Hzであっても、49.5Hzや50.5Hzと認識してしまう可能性があり、実際には許容範囲内にあって電力の需給バランスを整えるために特別な動作を起こす必要のない電源の周波数であるのにも関わらず、許容範囲を超えた変動が起きたと認識してしまって特別な動作を起こしてしまう不具合が生じることになる。
その逆の不具合も生じ得て、すなわち、例えば実際の電源の周波数が49.6Hzと許容範囲外で電力の需給バランスを整えるための動作を必要としているのにも関わらず、50.1Hzと認識して、許容範囲内である判断してしまう事態も起こり得る。このように、電源の周波数測定回路16が測定した電源の周波数の絶対値そのものが、許容範囲49.7Hz〜50.3Hz内にあるか否かを判定して、空気調和機100の動作を制御することは適切ではない。
そこで、この空気調和機100では、このような±1%程度の誤差を含んで電源の周波数測定回路16にて測定される電源の周波数を使用しても、室外側制御装置14が電源の周波数の変動量を精度よく検出でき、検出した変動量より電力の需給バランス状態を判定して、その変動量に基づいた空気調和機100の制御が可能となる電源の周波数の変動量検出方法について、これより説明する。
なお、ここで述べているセラミック発振子のクロック周波数の誤差とは、クロック信号の周波数が運転の度にばらついて値が変化してしまうという意味の誤差ではない。セラミック発振子の個体差等により、クロック周波数が基準値(カタログ表示値、設計値)からある特定の方向に偏った周波数となっていることを言っているものである。例えばここで、クロック周波数の基準値が8MHzのセラミック発振子を設計上使用することとしているが、実際に搭載したセラミック発振子のクロック周波数が、8.05MHzであったりとか、もしくは7.935MHzであったりとか、8MHzという基準値(設計値)から特定の方向に所定量だけずれているということを意味しているのである。運転中には常にその基準値からずれた周波数のクロック信号を発振しているということである。
そのため、電源の周波数の誤差も、測定する度にばらつきが生じるということではなく、セラミック発振子の上記した特定方向への所定量の偏り(ここで言う誤差)によって、電源の周波数測定回路16の測定する電源の周波数が、特定の方向(高めの方向もしくは低めの方向)に所定量だけずれて(偏って)測定される傾向を示すことを意味しているのである。供給電力の周波数が標準周波数の50Hzで安定して推移しているときには、電源の周波数測定回路16がセラミック発振子の上記の誤差(偏り)により、例えば低めに偏って測定する傾向(ここで言う誤差)があって、測定値は49.7Hzとなるが、その49.7Hzで安定して推移するということである。
この電源の周波数測定回路16では、電源ゼロクロス回路207の出力信号立ち上がりを捉えて室外制御マイコン209が、クロック発振回路210のクロック信号を使用して電源の交流電圧波形(図5の電圧波形51)の1周期を算出し、その逆数である電源の周波数を把握しているが、電源の周波数測定回路16(室外制御マイコン209と言ってもよい)は、空気調和機100の運転中には、常時電源の周波数を算出しており、常に最新の電源の周波数を把握できている。50.0Hzであれば1秒間に50回、電源の周波数の絶対値を把握しているのである。
そして、室外側制御装置14が電源の周波数の変動量を検出するためには、把握した最新の電源の周波数を、何か基準となる周波数と比較して判定する必要がある。そこで、この空気調和機100においては、電源の周波数測定回路16が測定した最新の電源の周波数と比較する基準周波数として、この電源の周波数測定回路16自身が測定した直近の所定時間分の電源の周波数を平均化処理した値(平均値)を使用する。
変動の判定の基となる基準周波数を、予め絶対値として室外側制御装置14の室外制御マイコン209に記憶させておくのではなく、電源の周波数回路16が測定した所定時間前から現在に至るまでの電源の周波数の平均値を基準周波数とするのである。そのため、基準周波数は、常時直近の所定時間分の平均値に更新されることになり、この常に更新される基準周波数と電源の周波数のその時点での最新値(瞬時値)とを常時比較する。基準周波数を設定する所定時間分の平均化処理の際には、ここでは最新値は含めず、最新値の1つ前のデータまでを使用して平均化している。その理由は後述する。
例えば、この所定時間をこの空気調和機100では15分と定める。そのため、電源の周波数測定回路16が現時点に至るまでの直近の15分間に測定した15分間分の電源の周波数を、室外制御マイコン209が平均化処理し、その平均周波数を、電源の周波数の最新瞬時値と比較する基準周波数と定める。そして電源の周波数測定回路16が新たに電源の周波数を把握する毎に基準周波数を更新し、基準周波数は、常時、直近15分間の電源の周波数の平均値となっている。
そして室外側制御装置14(室外制御マイコン209)が電源の周波数の最新瞬時値と、常に直近15分間の電源の周波数の平均値に書き換えられる基準周波数と、を比較することで、電源の周波数の変動量を検出するようにしている。このように、把握した電源の周波数の絶対値を、予め固定値として設定した周波数もしくは周波数範囲と比較することにより電源の周波数の変動を検出するのではなく、最新値に至るまでに把握した直近15分間の電源の周波数を平均化処理した基準周波数と相対的な比較をすることにより電源の周波数の変動量を検出することで、セラミック発振子のクロック周波数の誤差は排除することができるようになる。
クロック発振回路210のセラミック発振子のクロック信号が誤差を含んでいるとしても、最新の電源の周波数も、それと比較される基準周波数も、同じセラミック発振子のクロック信号を用いて算出したもののであり、これらを相対的に比較するものであるので、その差(変動量)には、セラミック発振子の誤差は含まれなくなるのである。よって、本方法で電源の周波数の変動量を検出することで、セラミック発振子のクロック周波数の誤差が排除でき、電源の周波数の変動量検出精度を高めることができる。
また、この検出方法は、電源の周波数測定回路16以外に変動量検出のために新たな特別な電気回路を設ける必要がなく、室外制御マイコン209のプログラム処理の追加だけで対応することができ安価である。そして、高精度であるが高価な水晶発振子を使用しないで安価なセラミック発振子を使用しても、電源の周波数の変動量の高精度な検出を実現することができるようになる。
例えば、電源の周波数測定回路16にて、電源の周波数の最新の瞬時値が49.5Hzと測定されたとする。これを電力系統50の供給電力の標準周波数50.0Hzと絶対比較してしまえば、許容範囲の±0.3Hzを超えた−0.5Hzの変動となるが、測定した直近15分間の電源の周波数の平均値である基準周波数が、49.6Hzであれば、それとの相対比較で−0.1Hzの変動と認識し、電力の需給バランスは、問題ないレベルであると判断可能となる。この場合では、セラミック発振子のクロック信号周波数誤差が−0.8%あり、このため電源の周波数測定回路16は、実際の周波数よりも0.8%低く測定する傾向にあるというわけである。このような傾向があったとしても、直近の所定時間分の平均値との相対比較であれば、電源の周波数の変動量を精度よく検出できるのである。
なお、クロック発振回路210にセラミック発振子ではなくクロック信号の周波数精度が高い水晶発振子を用いるのであれば、発振子のクロック周波数誤差を最初から考慮する必要がなく、電源の周波数測定回路16が測定した電源の周波数そのもの(絶対値)が正確であるので、平均化処理による基準周波数の設定は不要であり、把握した電源の周波数絶対値そのものを標準周波数(ここでは50.0Hz)と比較して、その差により、周波数の変動量を求めればよい。
なお、基準周波数を設定するための平均化処理に用いる電源の周波数測定回路16による測定値(データ)は、上記では直近の15分間のデータを用いていたが、これに限るものではなく、もっと時間的に短くても長くてもよい。常に15分間のデータで毎回基準周波数を更新するとなると、例えば50.0Hzであれば、この室外制御マイコン209は、1秒間に50回データを取り込むので、15分間の平均値を求めるとなると、4.5万個のデータを平均化処理することになる。そしてこれらのデータを保管するメモリ容量が室外制御マイコン209には必要となるため、室外制御マイコン209の容量に応じて平均化処理に対応するデータ量(直近の所定時間)を適宜設定すればよい。
基準周波数設定のための直近データ(電源の周波数)の平均化処理では、常に新しい電源の周波数が加わるが、15分(所定時間)前のデータは破棄されていく、すなわち常に直近の15分間分のデータに更新されていくので、メモリとして決まった容量を確保しておけばよく、常に直近の所定時間分の全データ(上記の場合では4.5万個のデータ)を保管してそれらの合計を母数で割って平均値(基準周波数)を算出すればよい。
また、個々のデータは保管せずに最新の平均値(基準周波数)だけを記憶するようにして、これに新たな電源の周波数の偏差だけを加減して、基準周波数を更新するようにしてもよい。このような平均化処理をすれば、室外制御マイコン209のメモリ容量を減らせる効果がある。新たな電源の周波数の偏差は、最新の平均値と電源の周波数の最新瞬時値(今回測定した値)の差を所定時間分(15分間)のデータ数(4.5万)で割った値である。このときの分母となるデータ数(4.5万)は、固定値としてよい。
なお、運転開始時から所定時間に到るまで、すなわち運転時間がまだ所定時間に満たない場合には、その時点までに得られたデータにて平均化処理して、それを暫定的に基準周波数とすればよい。
上記のとおり、電源の周波数の変動は、電力の需給バランスが崩れることによって生じるもので、アンバランスの度合いが大きいほど電源の標準周波数に対する変動量が大きくなる。この空気調和機100では、直近の所定時間分の平均値である基準周波数と電源の周波数の最新瞬時値とを比較することで、電源の周波数の変動量を検出し、この検出結果に応じて、電力の需給バランスの状態を判定している。
なお、直近の所定時間分の平均値である基準周波数と比較する電源の周波数は、最新瞬時値に限るものではない。例えば、基準周波数の設定よりも時間的な範囲が短い直近の所定時間分の平均値を用いてもよい。上記した例では、直近15分間の電源の周波数の平均値を基準周波数としているが、その基準周波数と、例えば直近1秒間の電源の周波数の平均値を比較して、電源の周波数の変動量を検出するようにしてもよい。このようにすることで、制御上のエラーによって突発的に生じた瞬間的な電源の周波数の変動による誤判定は回避できる。
次に、この空気調和機100が、電源の周波数測定回路16により測定した電源の周波数が設定された所定範囲から逸脱する変動を検出した時に開始する、電力の需給バランスを整えるための運転動作について説明する。この空気調和機100は、電力の需給がアンバランス状態であると判断した場合には、電源の周波数の変動量に応じて、電力の需給バランスを整えるための運転を行うのであるが、その主たる目的は、アンバランス状態にある電力の需給バランスを整えて、電力の需給バランスの安定を確保して、すなわち電源の周波数の変動幅を所定範囲内に収めて、電力品質の安定化を図ることである。これにより空気調和機100の効率悪化や停止を回避するとともに、電力系統50の停電の発生を阻止することである。
まず、この空気調和機100では、室外側制御装置14において、上記した方法によって電源の周波数の変動を常時検出し、その変動量が、所定範囲を逸脱すれば、電力の需給バランスを整える運転動作を開始する。
なお、電源の周波数の変動が供給電力の周波数変動の許容範囲である±0.3Hzを少しでも超えたら電力の需給バランスを整える運転を開始するようにしてもよい、すなわち設定する所定範囲を供給電力の周波数変動の許容範囲と等しく、±0.3Hz以内(−0.3Hz≦変動量≦+0.3Hz)として、この所定範囲(許容範囲)を逸脱したら電力の需給バランスを整える運転を開始するとしてもよいが、この許容範囲からのわずかな逸脱、すなわち±0.3Hzの超える変動分が小さいのであれば、空気調和機100の運転効率への影響は小さく、空気調和機100の運転停止や電力系統50での停電発生の可能性は極めて低いので、電力の需給バランスを整える運転を開始する電源の周波数変動量は、±0.3Hzより大きい側へ多少のゆとりがあってもよい。
この空気調和機100では、電源の周波数が基準周波数に対して±0.4Hz以上変動した場合(所定範囲を±0.4Hz未満として、この所定範囲を逸脱した場合)に、電力の需給バランスを整える運転を開始する。すなわち、電力の需給がアンバランスであると判定して、電力の需給バランスが安定するような運転へと移行する。なお、電力の需給バランスを整える運転を開始する電源の周波数変動量(この空気調和機100では±0.4Hzとしている)については、電源の周波数変動量と空気調和機100の効率悪化の関係を踏まえ、空気調和機100が設置される地域を担当する電力系統50側との協議により決定すればよい。
電源の周波数が基準周波数よりも小さくなる変動、すなわち変動量がマイナスとなる変動をした場合には、電力の需給バランスは、電力供給不足状態であり、需要側における電力使用量が、電力系統50からの電力供給量より大きい場合である。逆に電源の周波数が基準周波数よりも大きくなる変動、すなわち変動量がプラスとなる変動をした場合には、電力供給過剰状態であり、需要側における電力使用量が、電力系統50からの電力供給量より小さい場合である。この空気調和機100の電力の需給バランスを整える運転は、電力の供給不足状態と供給過剰状態とで異なる動作となる。
まずは、室外側制御装置14が、電力の需給バランスを整える運転が必要となるレベルの電力の供給不足状態と判定した場合の、すなわち電源の周波数測定回路16が測定した電源の周波数の最新瞬時値が、電源の周波数測定回路16が測定した直近15分間の電源の周波数の平均値である基準周波数より0.4Hz以上小さくなる変動を検出した場合の、この空気調和機100の電力の需給バランスを整える運転について説明する。
電力の供給不足状態と判断してから電力の需給バランスを安定化させるために、この空気調和機100では、室外側制御装置14が、当該空気調和機100の消費電力を低下させるように圧縮機1の回転数を低下させる制御を行う。これが電力系統50の電力供給不足状態を検出した場合の電力の需給バランスを整える運転である。この需要側である空気調和機100の消費電力を減少させることで、電力の供給不足状態を解消して、電力の需給バランスを保たせ、電力品質を安定化させる。
そして、室外側制御装置14は、その圧縮機1の回転数の低下度合いを、電源の周波数の変動量(対基準周波数)の大きさに応じて変化させるのである。具体的には、電源の周波数の基準周波数よりも小さくなる変動量が0.4Hz以上で0.7Hz未満(変動量が−0.4Hz〜−0.7Hz、ただし0.7Hzは含まず)となる変動を室外側制御装置14(室外制御マイコン209)が検出した場合は、室外側制御装置14は、カレントトランス208が検出するこの空気調和機100の運転電流(1次側電流)が0.4Hz以上で0.7Hz未満の変動を検出する直前の運転電流の75%となるように、圧縮機駆動回路15を介して、圧縮機1の回転数を低下させる制御を行う。
なお、カレントトランス(電流センサ)208は、空気調和機100の運転中は、常時検出した運転電流を室外制御マイコン209に入力しており、空気調和機100の運転電流を室外制御マイコン209が常時監視している。
そして、電源の周波数の基準周波数よりも小さくなる変動量が0.7Hz以上で1.5Hz未満(変動量が−0.7Hz〜−1.5Hz、ただし1.5Hzは含まず)である場合は、室外制御装置14は、空気調和機100の運転電流がその変動を検出する直前の運転電流の60%となるように、圧縮機駆動回路15を介して、圧縮機1の回転数を低下させる制御を行う。
但し、圧縮機駆動回路15が圧縮機1の回転数を運転最小回転数まで低下させても、カレントトランス208の検出する運転電流が、目標とする電流(電源の周波数が基準周波数より0.4Hz以上小さくなる変動が検出される直前の運転電流の75%もしくは60%となる電流)に到達しない(低減しない)場合では、室外側制御装置14は、その運転最小回転数で圧縮機1を運転するように制御する。また、運転電流が、変動を検出する直前の運転電流ではなく、変動を検出した時点の運転電流の75%もしくは60%となるように、圧縮機1の回転数を低下させてもよい。
そして、電源の周波数の基準周波数よりも小さくなる変動量が、1.5Hz以上である場合は、室外側制御装置14は、電力系統50の電力供給状態が危機的に不足状態であると判断して、圧縮機1を停止する措置をとる。なお、電力系統50の危機的な電力供給不足状態が続くと、発電設備に不具合が生じて大規模な停電が発生する危険性が高まるので、この状態をできるだけ早く回避しなければならない。
このように、室外側制御装置14が、電源の周波数の瞬時値が基準周波数よりも0.4Hz以上小さくなる変動を検出して電力が供給不足状態であると判断すると、空気調和機100の運転電流が下がるように圧縮機1の回転数を低下もしくは圧縮機1を停止させて消費電力を減少させ、電力系統50の電力供給不足を補うようにするので、電力の需給バランスを安定化させ、電力品質の安定を確保することに貢献できる。以上が、電力の供給不足状態におけるこの空気調和機100の電力の需給バランスを整える運転である。室外側制御装置14は、空気調和機100の運転電流の低下を監視しながら圧縮機1の回転数を低下させる制御を行うので、確実に消費電力が減少し、電力系統50の電力供給不足を補うことになる。
なお、この空気調和機100では、電源の周波数が一瞬でも0.4Hz以上基準周波数より下がる変動を室外側制御装置14が検出したのであれば、直ちに上記した電力の供給不足状態における電力の需給バランスを整える運転を行うものである。そのような変動が所定時間続いたことを確認して、電力系統50の電力供給不足状態が確実であると判断してから、電力の需給バランスを整える運転を行うように制御してもよいが、一刻も早い電力の需給バランスの安定回復を達するために、0.4Hz以上電源の周波数が下がる変動を検出した瞬間に、直ちに電力の需給バランスを整える運転を行うこととする。
次に、室外側制御装置14が、電力の需給バランスを整える運転が必要となるレベルの電力の供給過剰状態と判断した場合の、すなわち電源の周波数測定回路16が測定した電源の周波数の最新瞬時値が、電源の周波数測定回路16が測定した直近15分間の電源の周波数の平均値である基準周波数より0.4Hz以上大きくなる変動を検出した場合の、この空気調和機100の電力の需給バランスを整える運転について説明する。
電力の供給過剰状態と判定してから電力の需給バランスを安定化させるために、この空気調和機100では、室外側制御装置14が、当該空気調和機100の消費電力を高めるように圧縮機1の回転数を上昇させる制御を行う。これが電力系統50の電力供給過剰状態を検出した場合の電力の需給バランスを整える運転である。需要側である空気調和機100の消費電力を増大させることで、電力の供給過剰状態を解消して、電力の需給バランスを保たせ、電力品質を安定化させる。
そして、室外側制御装置14は、その圧縮機1の回転数の上昇度合いを、電源の周波数の変動量(対基準周波数)の大きさに応じて変化させるのである。具体的には、電源の周波数の基準周波数よりも大きくなる変動量が0.4Hzで0.7Hz未満(変動量が+0.4Hz〜+0.7Hz、ただし0.7Hzは含まず)となる変動を室外側制御装置14(室外制御マイコン209)が検出した場合は、室外側制御装置14は、カレントトランス208が検出する空気調和機100の運転電流が0.4Hz以上で0.7Hz未満の変動を検出する直前の運転電流の150%となるように、圧縮機駆動回路15を介して、圧縮機1の回転数を上昇させる制御を行う。なお、運転電流が、変動を検出する直前の運転電流ではなく、変動を検出した時点の運転電流の150%となるように、圧縮機1の回転数を上昇させてもよい。
但し、目標とする運転電流(電源の周波数が基準周波数より0.4Hz以上大きくなる変動が検出される直前の運転電流の150%となる電流)が、運転最大電流(最大許容電流)を超えるような場合では、運転最大電流を上限として、運転電流がこれを超えない範囲で運転最大電流に近い電流となるように圧縮機1の回転数を制御する。また、圧縮機駆動回路15が圧縮機1の回転数を運転最大回転数(この圧縮機1では120rps)まで回転数を上昇させても、カレントトランス208の検出する運転電流が、目標の電流値に到達しない(増加しない)場合では、室外側制御装置14は、その運転最大回転数(最大許容回転数)で圧縮機1を運転するように制御する。
そして、電源の周波数の基準周波数よりも大きくなる変動量が、0.7Hz以上である場合は、電力系統50の電力供給過剰の状態が非常に大きな状態になっていると判断して、圧縮機1を運転最大回転数(最大許容回転数)で、その際に運転最大電流を超えるようであれば超えない範囲で最も大きい回転数で運転するよう制御し、電力の需給バランスの安定化を図ることを優先させる。なお、電力系統50の電力供給過剰が非常に大きな状態が続くと、発電設備に不具合が生じて大規模な停電が発生する危険性が高まるので、この状態をできるだけ早く回避しなければならない。
このように、室外側制御装置14が、電源の周波数の瞬時値が基準周波数よりも0.4Hz以上大きくなる変動を検出して電力が供給過剰状態であると判断すると、空気調和機100の運転電流が大きくなるように圧縮機1の回転数を上昇もしくは圧縮機1を最大運転回転数で運転させて消費電力を増加させ、電力系統50の電力供給過剰を和らげるようにするので、電力の需給バランスを安定化させ、電力品質の安定を確保することに貢献できる。以上が、電力の供給過剰状態におけるこの空気調和機100の電力の需給バランスを整える運転である。室外側制御装置14は、空気調和機100の運転電流の上昇を監視しながら圧縮機1の回転数を上昇させる制御を行うので、確実に消費電力が増加し、電力系統50の電力供給過剰を緩和することになる。
そして、この空気調和機100では、電源の周波数が一瞬でも0.4Hz以上基準周波数より高まる変動を室外側制御装置14が検出したのであれば、直ちに上記した電力の供給過剰状態における電力の需給バランスを整える運転を行うものである。そのような変動が所定時間続いたことを確認して、電力系統50の電力供給過剰状態が確実であると判断してから、電力の需給バランスを整える運転を行うように制御してもよいが、一刻も早い電力の需給バランス安定回復を達するために、0.4Hz以上電源の周波数が高まる変動を検出した瞬間に、直ちに電力の需給バランスを整える運転を行うこととする。
以上のように、この空気調和機100は、電源の周波数測定回路16が測定した電源の周波数の変動に応じて、圧縮機1の回転数を変化させたり、圧縮機1を停止させたりするもののである。そして、それにより、空気調和機100の消費電力を増減させて、電力の需給バランスを整えようとするものである。なお、電力の供給不足、供給過剰のいずれの状態における電力の需給バランスを整える運転においても、上記の段階分けした電源の周波数の変動量や、圧縮機1の回転数変更の指標となる目標運転電流の比率(75%や150%)は、一つの例であり、上記の値に限定されるものではない。
この空気調和機100は、電源の周波数の瞬時値の基準周波数に対する変動量が所定範囲(ここでは−0.4Hz<変動量<+0.4Hzの範囲)を逸脱した場合に直ちに電力の需給バランスを整える運転を行うものである。そして、需給バランスを整える運転として、室外側制御装置14は、電源の周波数がこの所定範囲を逸脱する直前もしくは逸脱時の運転電流に、電源の周波数の基準周波数に対する変動量に応じた所定の比率(上記の例では0.75や1.5)を乗じて目標運転電流を設定し、運転電流がこの目標運転電流となるように、カレントトランス208にて運転電流を監視しながら、圧縮機1の回転数を変化させている。
また、上記した電力の供給不足、供給過剰のいずれの状態における電力の需給バランスを整える運転中においても、電源の周波数測定回路16にて電源の周波数の測定は継続して行われる。ただし、電力の需給バランスを整える運転中は、基準周波数の更新を行わず、基準周波数は、電力の需給バランスを整える運転を開始した時点もしくは直前の基準周波数を継続する。
すなわち、電力の需給バランスを整える運転中は、室外制御マイコン209が、基準周波数を書き換えず、電力の需給バランスを整える運転を開始した時点もしくは直前の基準周波数を記憶して、これと電源の周波数測定回路16にて測定された電源の周波数の最新瞬時値とを比較する。圧縮機1を停止する措置をとっている間も同様である。圧縮機1の停止措置もこの空気調和機100の電力の需給バランスを整える運転に含まれている。
電力の需給バランスを整える運転中では基準周波数の更新を行わない、すなわち平均化処理を停止するのは、直近の所定時間分の電源の周波数を平均化処理して得られる基準周波数に、電力の需給バランスが崩れて変動した電源の周波数を取り入れてしまっては、基準周波数そのものが変動した後の電源の周波数に徐々に近づいてしまうことになるからである。基準周波数は、あくまで電力の需給バランスが安定しているときの電源の周波数を示していなければならないのである。
そのために、通常の運転中における所定時間分の平均化処理の際にも、電源の周波数の最新値は含めず、最新値の1つ前のデータまでを使用して平均化しているのである。これにより、最新瞬時値が±0.4Hz以上の変動をした(所定範囲を逸脱した)周波数であって直ちに電力の需給バランスを整える運転に移行しても、その最新値の周波数は、基準周波数に取り入れられず、基準周波数の信頼度を高く維持できるのである。
このように、電力の需給バランスを整える運転中であっても、室外側制御装置14が、電源の周波数測定回路16により電源の周波数を常に把握し、電力の需給バランスを整える運転前の基準周波数と比較して電力の需給バランス状態を常に判定しているのである。そのため、この空気調和機100では、電力の需給バランスを整える運転中に電力の需給バランスが回復して電力の周波数の変動が所定範囲内に収まったことを室外側制御装置14が認識することができるので、室外側制御装置14が、自ら電力の需給バランスを整える運転を終了させ、電力の需給バランスを整える運転を開始する前の通常運転(建物負荷に応じた運転)に戻す制御をすることが可能となるのである。
すなわち、電力の需給バランスを整える運転中に、室外側制御装置14が、電源の周波数と基準周波数(電力の需給バランスを整える運転を開始した時点もしくは直前の基準周波数)との差が±0.4Hz未満になった(所定範囲内に戻った)ことを認識すれば、電力の需給バランスが回復したと判断して電力の需給バランスを整える運転を終了し、直ちに空気調和機100を電力の需給バランスを整える運転を開始する直前の運転状態に戻す制御を始める。
このように、この空気調和機100では、自ら電力の需給バランスが回復したことも判断でき、電力の需給バランスを整える運転を終了させるので、電力の需給バランスを整える運転の時間を最小限に抑えることができる。この電力の需給バランスを整える運転は、電力が供給不足状態の場合では、圧縮機1の回転数を低下させるため、建物負荷に比べ空調能力は低下してしまうこととなり、使用者が不快に感じることも考えられる。また、電力が供給過剰状態の場合は、圧縮機1の回転数を上昇させるため、建物負荷に比べて空調能力が高まってしまうこととなり、暖め過ぎもしくは冷やし過ぎを招いて、こちらも使用者が不快に感じることも起こり得る。
しかし、この空気調和機100は、上記のとおり、電力の需給バランスを整える運転を最小限の時間に抑えることができるので、使用者が感じる不快感も最小限とすることができ、使用者に大きな不快感を与えないで電力の需給バランスを整える運転が行える。
なお、需要側である空気調和機100が電力の需給バランスを整える運転をしている間は、供給側である電力系統50においても、発電設備の稼動量を増減する等の対応をとり、電力の需給バランスをできるだけ早く安定化させる取り組みを行うのである。
室外側制御装置14が、電源の周波数の基準周波数に対する変動量が±0.4Hz未満となって(所定範囲内に戻って)電力の需給バランスが回復したと判断して、電力の需給バランスを整える運転を終えると、室外側制御装置14は、基準周波数の更新を再開する。電力の需給バランスを整える運転中には、基準周波数は、電力の需給バランスを整える運転を開始した時点もしくは直前の基準周波数に固定されているが、これを書き換えていく。すなわち、再開後の基準周波数は、電力の需給バランスを整える運転時間を除いた直近の所定時間分の平均化処理となる。
例えば、電力の需給バランスを整える運転が11分間行われ、その後通常運転に戻って3分間が経過した時点の基準周波数は、その電力の需給バランスを整える運転が始まるまでの12分間のデータと電力の需給バランスを整える運転が終了後の3分間のデータを合わせた15分間分のデータを平均化処理したものとなる。電力の需給バランスを整える運転を挟むときには、正確には直近の所定時間分の平均値とはならないが、ここでの直近の所定時間分には、電力の需給バランスを整える運転の時間は除くものとする。
また、この空気調和機100では、電力の需給バランスを整える運転中であっても、室外側制御装置14が、電源の周波数を常に把握し、電力の需給バランスを整える運転前の基準周波数と比較して電力の需給バランス状態を常に判定しているため、電源の周波数が段階的に変動しても、それに合わせた段階的な対応(電力の需給バランスを整える運転)が可能となる。
例えば、室外側制御装置14が、基準周波数に対して−0.5Hzとなる電源の周波数の変動(電力の供給不足状態)を検出して、運転電流がその検出直前の運転電流の75%となるように圧縮機1の回転数を低下させて、電力の需給バランスを整える運転をしているときに、さらに電源の周波数が変動して、基準周波数(電力の需給バランスを整える運転開始前の基準周波数である)よりも−0.9Hzとなったとしたら、直ちに運転電流がその−0.5Hzの変動を検出する直前の運転電流の60%となるように圧縮機1の回転数を低下させる対応をとる。
そして、さらに電源の周波数が変動して基準周波数よりも−1.5Hzとなったら、直ちに圧縮機1を停止する措置をとるのである。このように、電源の周波数が、所定範囲内(±0.4Hz未満)に戻らないで、その所定範囲外で段階的に変化しても、電力の需給バランスを整える運転中でも、電源の周波数を常に把握して電力の需給バランス状態を常に判定しているため、電源の周波数が段階的に変動しても、それに合わせた電力の需給バランスを整える運転を直ちに行うことができ、電力の需給バランスの早期回復に貢献できる。電源の周波数が、マイナスの変動(電力供給不足)からプラスの変動(電力供給過剰)に急変した場合、もしくはその逆の場合でも対応可能である。
なお、電力の需給バランスを整える運転の運転時間を予め設定し、電力の需給バランスを整える運転を開始したら、その設定運転時間はその運転を続けるように構成してもよい。この場合では、電力の需給バランスを整える運転中は、電源の周波数と基準周波数との差が±0.4Hz未満になったかどうか(電源の周波数が所定範囲内に戻ったかどうか)を確認する必要がないので、電源の周波数測定回路16による電源の周波数の測定も停止してもよい。そしてその運転設定時間は、供給側である電力系統50における発電設備の稼動量増減等の対応に必要となる時間とすればよく、空気調和機100が設置される地域を担当する電力系統50側との協議により決定されることが望ましい。
上記の電力の需給バランスを整える運転では、空気調和機100の消費電力を増減させる方法として、空気調和機100の運転電流を変更するようにしている。室外側制御装置14が、空気調和機100の運転電流をカレントトランス208で監視しながら、目標の運転電流となるように圧縮機1の回転数を制御している。しかし、電力の需給バランスを整える運転はこれに限るものではない。
他にも例えば室外側制御装置14が、圧縮機1の回転数を、電力の需給バランスを整える運転直前の圧縮機1の回転数に対して、電力が供給不足状態では、75%や50%とする指示を、また、電力が供給過剰の状態では、125%や150%とする指示を直接的に圧縮機駆動回路15に行って圧縮機1の回転数を変化させ、消費電力を増減させてもよい。すなわち、室外制御装置14が、電力の需給バランスを整える運転直前の圧縮機1の回転数に所定の比率を乗じて目標となる運転回転数を設定し、圧縮機駆動回路15を介して圧縮機1の回転数をこの目標運転回転数に変化させるのである。
または、室外側制御装置14が、電力の供給不足状態(電源の周波数が基準周波数より小さくなる方向に変動して所定範囲を逸脱したこと)を検出した場合には、例えば、空気調和機100の運転最大電流(最大許容電流)や圧縮機1の運転最大回転数(最大許容回転数)を、電源の周波数の基準周波数に対する変動量に応じて低減させる措置をとって空気調和機100の消費電力を抑制させたり、電力の供給過剰状態(電源の周波数が基準周波数より大きくなる方向に変動して所定範囲を逸脱したこと)を検出した場合には、圧縮機1を強制的に最大運転回転数(最大許容回転数)で運転して、空気調和機100の消費電力を増加させたりしてもよい。
または、室外側制御装置14が、電力の需給アンバランス状態を検出した場合には、室内側制御装置12から室外側制御装置14に送信される建物負荷(室温と設定温度の差のデータ)を、室内側制御装置12もしくは室外側制御装置14が強制的に変更して、空気調和機100の消費電力を増減させてもよい。
冷房運転を例に説明すると、室温が30℃で、設定温度が27℃の場合では、室外側制御装置14には建物負荷として温度差3degのデータが送信され、圧縮機1は、この温度差に応じた回転数に制御されるが、電力が供給不足の状態である場合には、例えば、この温度差3degを1degに強制的に変更し、2deg相当の負荷を見かけ上縮小させることで、圧縮機1の回転数を低下させ、空気調和機100の消費電力を減少させる。逆に電力が供給過剰の状態である場合には、温度差3degを5degに強制的に変更し、2deg相当の負荷を見かけ上増加させて圧縮機1の回転数を上昇させ、空気調和機100の消費電力を増加させるようにしてもよい。
上記したが、電力の需給バランスを整える運転においては、建物負荷に比べて空調能力が電力の供給不足状態では低下したり、電力の供給過剰状態では上昇したりしてしまうことから、使用者が不快に感じることも起こり得る。そこでこれより、電力の需給バランスを整える運転中に使用者が感じる不快感をできる限り軽減するようなこの空気調和機100の室内機101の運転制御について説明する。
室外側制御装置14が、電力の需給バランスを整える運転を開始すると同時に、その判断情報を、室内側制御装置12に、室内外連絡ケーブル13の通信線(信号ケーブル)13cを介して送信する。これにより、電力の需給バランスが崩れた場合には、室内側制御装置12は、室外側制御装置14と連動しながら、電力の需給バランスを整える運転が行われている間の使用者が感じる不快感を軽減するように、室内ファン9の回転数や上下風向調整板34の回動角度を制御する。
具体的には、電力の需給バランスを整える運転中に室内側制御装置12は、以下のような室内機101の気流制御を行う。空気調和機100の冷房運転と暖房運転でこの気流制御は異なり、また電力の需給アンバランスの状態によっても異なるので、場合分けして説明する。なお、以下に示す室内機101の電力の需給バランスを整える運転中の気流制御は、一つの例であり、これに限定されるものではなく、使用者が感じる不快感を減らせるものであればよい。なお、ここでは室内ファン9の風速(風量)を、強、中、弱の3段階に分けて説明する。室内ファン9の回転数は、強、中、弱の順番で小さくなる。
まず暖房運転時に、室外側制御装置14が、電源の周波数が基準周波数より−0.4Hz〜−1.5Hz(ただし−1.5Hzは含まず)となる変動(電力の供給不足状態)を検出して電力の需給バランスを整える運転を行う場合について説明する。この場合、圧縮機1の回転数低下により暖房能力が低減し、室内機100の吹出口33から吹き出し温度が低くなった気流(調和空気)が室内に吹き出されることになるので、室内側制御装置12は、室内ファン9の風速を弱とし、また、温度の低くなった吹き出し気流が使用者に直接あたらないように、上下風向調整板34を上吹きとなる角度に回動させる制御を行う。ここで上吹きとは、気流を水平方向もしくは水平より天井側に向けて吹き出すことである。
続いて暖房運転時に、室外側制御装置14が、電源の周波数が基準周波数より0.4Hz以上大きくなる変動(電力の供給過剰状態)を検出して電力の需給バランスを整える運転を行う場合について説明する。この場合では、極力、高暖房能力運転を得て消費電力が増加するように、室内側制御装置12は、室内ファン9の風速を、強もしくは中と高めに設定する。しかし、使用者が暖め過ぎと感じたり、高めの風速に不快感を感じたりしないように、室内側制御装置12は、室内への吹き出し気流が使用者に直接あたらないよう上下風向調整板34を上吹きとなる角度に回動させる制御を行う。
このように暖房運転時の電力の需給バランスを整える運転においては、いずれの場合にも室内側制御装置12が、吹き出し気流が使用者に直接あたらないように上下風向調整板34を制御するので、電力供給不足の状態では、使用者に温度の低い気流があたることが避けられ、また電力供給過剰の状態では、使用者に高暖房能力運転された気流があたることが避けられるので、使用者の不快感が軽減される。
次に冷房運転時に、室外側制御装置14が、電源の周波数が基準周波数より−0.4Hz〜−1.5Hz(ただし−1.5Hzは含まず)となる変動(電力の供給不足状態)を検出して電力の需給バランスを整える運転を行う場合について説明する。この場合、圧縮機1の回転数低下により冷房能力が低減し、室内機100の吹出口33から吹き出し温度が高くなった気流が吹き出されることになるので、室内側制御装置12は、使用者が冷涼感を感じられるように、室内ファン9の風速を強とし、また、上下風向調整板34を上下にスイングさせて、使用者に気流感を与える制御を行う。
続いて冷房運転時に、室外側制御装置14が、電源の周波数が基準周波数より0.4Hz以上大きくなる変動(電力の供給過剰状態)を検出して電力の需給バランスを整える運転を行う場合について説明する。この場合は、暖房運転時と同様で、極力、高冷房能力運転を得て消費電力が増加するように、室内側制御装置12は、室内ファン9の風速を、強もしくは中と高めに設定する。しかし、使用者が冷やし過ぎと感じたり、高めの風速に不快感を感じたりしないように、室内側制御装置12は、室内への吹き出し気流が使用者に直接あたらないよう上下風向調整板34を上吹きとなる角度に回動させる制御を行う。
このように冷房運転時の電力の需給バランスを整える運転においても、室内側制御装置12が、電力供給不足の状態では、使用者に気流感を与え、電力供給過剰の状態では、使用者に高冷房能力運転された気流があたることが避けられるので、使用者の不快感を軽減させることができる。
また、室内機100本体に人体検知センサ(図示せず)を備え、この人体検知センサにて室内の居住者(使用者)を検知して、暖房運転時の電力の需給バランスを整える運転と、冷房運転時で電力の供給過剰状態による電力の需給バランスを整える運転においては、検知した人を避けて気流を吹き出すようように、室内側制御装置12が、上下風向調整板34および左右風向調整板35の向き(角度)を制御してもよい。
そして、冷房運転時で電力の供給不足状態による電力の需給バランスを整える運転においては、人体検知センサが検知した人に向かって直接的に気流を送るように、室内側制御装置12が、上下風向調整板34および左右風向調整板35の向きを制御してもよいし、また、上下風向調整板34を上下にスイングさせるとともに、左右風向調整板35も左右にスイングさせ、使用者に気流感を与えるようにしてもよい。
なお、1.5Hz以上基準周波数よりも小さくなる変動(電力の供給不足が深刻な状態)を検出し、電力の需給バランスを整える運転として、圧縮機1を停止させる措置をとる場合でも、上記と同様に、暖房運転時は、室内ファン9の風速を弱にして、吹き出し気流が使用者にあたらないようにし、冷房運転時は、室内ファン9の風速を強にして、吹き出し気流を上下や左右にスイングさせてもよいし、圧縮機1と同様に室内ファン9を停止してもよい。その場合では、上下風向調整板34を回動させ、吹出口33を閉塞するようにしてもよい。
図6は室内機101本体の斜視図であるが、この図においては、吹出口33が2枚の上下風向調整板34によって塞がれた状態(空気調和機100の運転停止状態)として示されている。この空気調和機100では、さらに、室内機101本体に、電力の需給バランスを整える運転中であることを示す表示ランプ23bを設置する。この表示ランプ23bは、表示手段23のひとつである。図6においては、空気調和機100が運転中であることを示す運転ランプ23a(表示手段のひとつ)とは別個に設けられている。電力の需給バランスを整える運転が開始されると、室内側制御装置12が、表示ランプ23bを点灯し、使用者に電力の需給バランスを整える運転中であることを知らせる。電力の需給バランスを整える運転中は、運転ランプ23a、表示ランプ23bがともに点灯している。
そして、電力の需給バランスの安定が回復され、電力の需給バランスを整える運転を室外側制御装置14が終了させると、室内側制御装置12は、表示ランプ23bを消灯させる。電力の需給バランスを整える運転において、電力の供給不足が深刻な状態にある場合には、圧縮機1を停止する措置をとるが、この場合も電力の需給バランスを整える運転中であり、室内側制御装置12は、表示ランプ23bを点灯し、運転ランプ23a、表示ランプ23bがともに点灯される。なおランプにはいずれもLED(発光ダイオード)を用いている。
このように、表示ランプ23bが点灯することにより、電力の需給バランスを整える運転が行われていることを使用者が認識することが可能となるので、使用者が、電力の需給バランスを整える運転に多少の不快感を招いたとしても、この空気調和機100が故障しているわけではないことが判り、使用者に余計な不安を抱かせたり、心配させたりすることが回避できる。
さらに、表示ランプ23bの点灯が何を意味しているのかを、使用者に説明する表記部36を、室内機101本体の表示ランプ23bの近傍に設けている。この表記部36には、表示ランプ23bが点灯しているときには、電力の需給バランスを整える運転中であり、故障ではないことが明記されている。また、電力の需給バランスを整える運転がどのような運転なのか、その運転を行う目的は何か、なども表示するとよいが、スペース的な問題もあって困難である場合には、詳細は取扱い説明書を参照して欲しい旨を表示し、それらの点は取扱い説明書で解説するようにしてもよい。
表記部36を設けることにより、使用者が、表示ランプ23bの点灯が意味すること(電力の需給バランスを整える運転中であること)をいつでもすぐに理解できるようになり、この空気調和機100が故障しているわけではないことが判って、使用者に余計な不安を抱かせたり、心配させたりすることがより回避できるようになる。
この表記部36は、ステッカー(シール)を貼り付けることで構成しているが、筐体30の外表面に直接印刷して構成してもよいし、筐体30の樹脂成形時に型によって外表面に刻印するように構成してもよい。
また、表示ランプ23bは設けずに、運転ランプ23aの点灯状態を変更することで、電力の需給バランスを整える運転中であることを表示するように構成してもよい。例えば、通常の運転中では、運転ランプ23aが点灯しているが、電力の需給バランスを整える運転中には、室内側制御装置12によって運転ランプ23aは点滅に変更されるようにして、電力の需給バランスを整える運転中であることを使用者に知らせる。この場合には、運転ランプ23aの点滅が何を意味しているのかを、表記部36にて説明する。表示ランプ23b設置のコスト増が省ける効果がある。
なお、電力の需給バランスを整える運転中であることを、リモコン25の表示画面に表示して、使用者に知らせるようにしてもよく、室内機101本体とリモコン25の両方で表示するようにしてもよい。
また、電力の需給バランスを整える運転中に、使用者がリモコン25を操作した場合、この空気調和機100は、圧縮機1の回転数変化に直接的に関係しない、例えば室内機101の風向(上下風向調整板34や左右風向調整板35の角度やスイング)や風量(室内ファン9の回転数)の変更の指示については直ちに実行するが、圧縮機1の回転数変化が伴われる設定温度の変更や運転モードの変更指示は、リモコン受信部24にて受理はするがその時点では実行せず、電力の需給バランスを整える運転が終了し、建物負荷に応じた通常運転に戻ってから実行する。
なお、電力の需給バランスを整える運転中には、一切のリモコン25からの指示を、受理はするが実行しないで、通常運転に戻ってから実行するように構成してもよいし、電力の需給バランスを整える運転中には、一切のリモコン25からの指示を受け付けない(受信しない)ように構成してもよい。
実際のところ電力系統50において、電力の需給バランスが崩れるレベルである供給電力の周波数が許容範囲外に変動するような事態は、頻繁に起こるものではない。そのため、室外側制御装置14が、例えば1日に10回とか頻繁に電源の周波数の所定範囲からの逸脱を検出することは現実的でなく、制御上のトラブルが発生している可能性がある。そのため、この空気調和機100では、電力の需給バランスを整える運転を実施した回数を室外制御マイコン209が記憶している。そして、所定期間内にその記憶した回数が所定回数を超えた場合には、室外側制御装置14が制御上のトラブルが発生していると判断する。
そして、そのような判断を下したときには、例えば表示ランプ23bを点滅させるとか、リモコン25の表示画面にトラブル発生を表示するなどして、使用者に制御上のトラブルが発生したことを知らせる。使用者は説明書等によってその警告が意味することを理解するとともに、製造業者のサービス部門等にトラブル解決(修理)の要求を行うものとする。そのとき修理までの期間に使用者が頻発してしまう電力の需給バランスを整える運転によって不快感を感じないように、特定のリモコン操作により、たとえ室外側制御装置14が電源の周波数の所定範囲からの逸脱を検出したとしても電力の需給バランスを整える運転へは移行しないように設定できるようになっている。
また、所定期間内に電力の需給バランスを整える運転を実施した回数が所定回数を超え、室外側制御装置14が制御上のトラブルが発生していると判断した場合には、それ以降は、電力の需給バランスを整える運転を行う制御を無効にするようにしてもよい。そして電源の周波数測定回路16による電源の周波数の測定、室外制御マイコン209による基準周波数の更新の制御も無効にするようにしてもよい。
このように、室外側制御装置14の誤検出によって、電力の需給バランスを整える運転が行われてしまうという事態の発生は回避することができる。それにより必要もないのに電力の需給バランスを整える運転が行われ、使用者が不快感を感じてしまうという不具合の発生が回避される。室外側制御装置14が、制御上のトラブルが発生したと判断する指標となる所定時間と所定回数については、空気調和機100が設置される地域を担当する電力系統50側との協議により決定されることが望ましい。
なおここまでに説明した空気調和機100では、室外側制御装置14に電源の周波数測定回路16を設けていたが、これは、室外側制御装置14が、その制御基板上にPAM手段203のスイッチング素子のスイッチング制御に使用する電源ゼロクロス回路207を予め備えていたから、すなわち既存の電源ゼロクロス回路207を利用したからでもある。既存の電源ゼロクロス回路のない空気調和機であれば、電源の周波数測定回路16を設けるために、電源ゼロクロス回路207を新設するが、その場合では、室内側制御装置12の制御基板上に電源ゼロクロス回路207を設け、この電源ゼロクロス回路207と室内制御マイコン201(クロック発振回路211を含む)にて、室内側制御装置12に電源の周波数測定回路16を構成してもよい。
この場合では、室内側制御装置12(室内制御マイコン201)が、基準周波数の更新や、電源の周波数の瞬時値と基準周波数(平均周波数)との比較による電力の需給バランス状態の判定、その判定結果に基づく電力の需給バランスを整える運転の開始および終了の判断を行うことになる。そして、電力の需給バランスを整える運転の開始および終了の判断がなされた場合には、これを室外側制御装置14に通信線13cを介して送信し、受信した室外側制御装置14は、圧縮機駆動回路15により圧縮機1の回転数を制御し、空気調和機100の消費電力を増減させる。
以上のように、電力消費量の割合が高い空気調和機に、ここまでに説明した電源の周波数測定回路16を搭載し、これを広く普及させ、多くの空気調和機が、測定した電源の周波数(瞬時値)と直近の所定時間分の電源の周波数の測定値を平均化処理した基準周波数との変化量で、電源の需給バランス状態を判定し、電力の需給バランスが崩れた場合には直ちに電力の需給バランスを整える運転を行ってその消費電力を増減することは、電力の需給バランスの安定化に非常に有効であり、電力品質の安定化に大きく貢献できる。
また、そのためには、電源の周波数測定回路16を省スペースで構成し、それを搭載するコストを抑制する必要があるが、電源ゼロクロス回路207を活用すること、さらに、基準周波数との変化量で電力の需給バランス状態を判定するのでセラミック発振子のクロック信号が活用できることにより、極めて安価にしかも省スペースにより既存の制御装置に内蔵して実現することが可能となる。
なお、上記した実施の形態1においては、空気調和機100をルームエアコン(家庭用)として説明したが、当然ではあるが、業務(店舗)用やビル用の大形の空気調和機に適用してもよく、消費電力量が大きいこれら大形の空気調和機にも適用することで、電力の需給バランスの安定化に大きく貢献できる。特に、電力の供給不足が問題となる夏季の昼間には有効である。これにより電力品質が安定するとともに、電力系統50においては、風力発電設備106と太陽光発電設備105を最大限に活用して、回転型発電機104の運転を最小限にとどめ、燃料を燃焼するときに生じる二酸化炭素の排出を極力抑えることができるようになる。
また、空気調和機だけではなく、圧縮式冷凍サイクル(圧縮式ヒートポンプサイクル)を利用した他の冷凍サイクル装置への適用も有効である。例えば、最近急速に普及が拡大している、深夜電力を活用して圧縮式冷凍サイクルを運転し、冷媒と水を熱交換させて湯を作り(水を加熱し)、その湯を貯湯タンクに溜めて供給するヒートポンプ式給湯機への適用がある。この給湯機は、基本的に屋外に設置される熱源機内に冷凍サイクル全体が装備されていて、冷凍サイクルの水加熱用熱交換器(空気調和機の暖房運転では、凝縮器となる室内熱交換器に相当)で、熱源機とは別に設置されているタンクの水に冷媒の熱を伝えて、湯を作りタンクに供給している。タンクの水はタンクと熱源機の水加熱用熱交換器とをポンプにより循環している。なお、給湯機の冷凍サイクルには、一般的に冷媒として二酸化炭素が使用されている。
この熱源機の制御装置(制御基板)に、上記と同様な電源の周波数測定回路16を設置し、空気調和機100と同様に、制御装置が電力の需給バランス状態を判定し、電力の需給バランスが崩れたと判定したならば、直ちに電力の需給バランスを整える運転を行うものとする。ただし、電力の需給バランスを整える運転動作は、上記した空気調和機100とは異ならせてもよい。
ヒートポンプ給湯機では、所定時間に所定温度のお湯を所定量タンク内に作るために、前日の残湯が含まれるタンク内の水の温度(水温)や外気温といった毎晩異なる負荷条件に対して、効率よく、すなわち消費電力をより小さくした運転ができるよう圧縮機の回転数が変更可能であるが、1回の湯沸し運転では、圧縮機の運転開始直後や停止直前、または冬場における空気用熱交換器(空気調和機の暖房運転では、蒸発器となる室外熱交換器に相当)の除霜運転を除き、通常は、湯沸しが完了するまで、負荷条件に基づき効率を優先して決定された回転数にて連続的に運転される。
そこで、上記の空気調和機100と同様に、圧縮機の回転数を変更して、消費電力を増減させ、電力の需給バランスを整えるようにしてもよいが、電力が供給不足の状態では、圧縮機の回転数を低下させる制御は行わずに、電源の周波数が基準周波数よりも小さくなる方向に所定範囲を逸脱する変動を制御装置が検出したら、制御装置は、直ちに圧縮機を停止して、湯沸し運転を一旦停止する。そして、電力の需給バランスの安定が回復した(電源の周波数の対基準周波数の変動量が所定範囲内に戻った)ら、制御装置が、その時点における負荷条件に対して、最も効率よく湯沸し運転が可能となる圧縮機の回転数を決定し、その回転数にて湯沸し完了まで連続的に運転するようにしてもよい。
このようにヒートポンプ給湯機に適用させて、これを広く普及させることで、深夜電力の需給バランスの安定化に大きく貢献できる。これにより深夜電力の品質が安定するとともに、電力系統50においては、風力発電設備106を最大限に活用して回転型発電機104の運転を深夜電力需要に応じて最小限にとどめ、燃料を燃焼するときに生じる二酸化炭素の排出を極力抑えることができるようになる。
また、圧縮式冷凍サイクルを利用した他の冷凍サイクル装置として、冷凍冷蔵庫への適用も有効である。近年では、省エネルギー化を背景に、回転数が変更可能な圧縮機を搭載する冷蔵庫の普及が拡大してきている。このため、圧縮機の回転数を変更して冷蔵庫の消費電力を増減させることも可能である。そこで、冷蔵庫の制御装置(制御基板)に、空気調和機100と同様な電源の周波数測定回路16を設置し、その制御装置が電力の需給バランス状態を判定し、電力の需給バランスが崩れたと判定したならば、直ちに電力の需給バランスを整える運転を行うものとする。
ただし、冷蔵庫においては、圧縮機の回転数を変化させ消費電力を増減させることにより、庫内の温度管理が不安定となって、貯蔵する食品に悪影響を及ぼしてはならないので、圧縮機の回転数変更の指標とする目標運転電流設定に用いる、電力の需給バランスを整える運転を開始する直前もしくは開始時点の運転電流に乗ずる比率を、空気調和機100の場合よりも緩和して、圧縮機の回転数の大幅な変更は避けるようにする。特に、電力が供給不足の状態で、圧縮機の回転数を低下させる場合では、空気調和機100では、運転電流の低減割合を75%や60%としたが、冷蔵庫においては、これを最も低減する場合でも80%とする。そして、運転中の圧縮機の停止措置はとらないものとする。このようにして、電力の需給バランスを整える運転中に、貯蔵する食品に悪影響が及ぶことを避ける。
また、冷蔵庫が連続的ではなく段階的に圧縮機の回転数を変更するものであれば、電力供給不足の場合であれば一段階低い回転数に、電力供給過剰の場合であれば、一段落高い回転数にするというように、大幅な圧縮機の回転数の変更は行わないようにする。冷蔵庫の場合では、庫内の食品の保護を優先する必要があるため、極端な消費電力の増減は困難であるが、これを普及率の高い冷蔵庫に広く普及させることで、台数効果により、電力の需給バランスの安定化に大きく貢献できる。特に、電力の供給不足が問題となる夏季の昼間には有効である。これにより電力品質が安定するとともに、電力系統50においては、風力発電設備106と太陽光発電設備105を最大限に活用して、回転型発電機104の運転を最小限にとどめ、燃料を燃焼するときに生じる二酸化炭素の排出を極力抑えることができるようになる。
また、冷凍冷蔵庫は家庭用に限らず、業務用冷凍冷蔵庫にも適用し、さらに圧縮式冷凍サイクルを用いた業務用のショーケースや自動販売機にも適用して、これを広く普及させることで、電力の需給バランスの安定化に大きく貢献できる。これにより電力品質が安定するとともに、電力系統50においては、風力発電設備106と太陽光発電設備105を最大限に活用して、回転型発電機104の運転を最小限にとどめ、燃料を燃焼するときに生じる二酸化炭素の排出を極力抑えることができるようになる。
さらには、このように需要側の電化機器(冷凍サイクル装置)が、消費電力を電力の需給バランス状態に応じて増減させる電力の需給バランスを整える運転を行うことにより、電力の供給側である電力系統50においては、電力の供給不足を避けるための余剰電力となるかもしれない電力を発電する必要がなくなる。これにより、回転型発電機104が燃料を燃焼するときに生じる二酸化炭素の排出を極力抑えることができるようになる。
以上のように、電力の需給バランスを整える運転を可能とする上記した冷凍サイクル装置を広く普及させることで、風力発電設備106や太陽光発電設備105といった自然エネルギーを使って発電する発電設備を最大限に活用して、回転型発電機104の運転を最小限にとどめられ、また、余剰電力となるかもしれない電力の発電を必要としない電力系統50が実現でき、回転型発電機104が燃料を燃焼するときに生じる二酸化炭素の排出を極力抑え、地球温暖化防止に大きく貢献できる。