<第1実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施形態の吸音構造体1は、直方体状の筺体2と、筺体2の内部に配置された複数の多孔板ユニット3とから構成されている。筺体2は、1つの面に多数の貫通孔が形成された長方形状の表面板2aを備えている。吸音構造体1は、表面板2a側が音源側となるように配置されている。なお、以下の吸音構造体1の説明において、表面板2aの長手方向及び短手方向を単に長手方向及び短手方向、表面板2aに直交する方向を奥行方向と定義して説明する。
図1(a)及び図1(b)に示すように、筺体2は、多孔板からなる表面板2aと、表面板2aに対向配置されている背面板2bと、背面板2bと一体的に形成されている枠部2cとから構成されている。筺体2の大きさは、例えば、長手方向の長さが2000mm、短手方向の長さが500mm、奥行方向の長さが95mmである。但し、筺体2は、上記の大きさに限定されるものではない。
背面板2b及び枠部2cは、鉄やステンレス鋼などの金属材料や、繊維強化樹脂等で形成されている。
表面板2aは、枠部2cの端部にネジ等によって着脱自在に取り付けられていてもよく、リベットや嵌合によって枠部の端部に固定されていてもよい。表面板2aとしては、例えば板厚が1.0mm程度のアルミニウム板であって、多数の円形状の貫通孔が形成された多孔板が用いられる。表面板2aの貫通孔の径は、例えば0.3〜3.0mm程度であり、表面板2aの開口率は例えば10%以下である。また、貫通孔の形状は、円形に限定されるものではなく、四角形状や三角形状等の多角形状であってもよい。また、貫通孔は、スリットで構成されていてもよい。このような円形状以外の形状の貫通孔の場合、貫通孔の径とは、孔面積が等価な円形状の孔の径のこととする。また、表面板2aの板厚、開口率及び貫通孔の径は、貫通孔を通過する空気に対して粘性を生じさせるように設定されている。貫通孔を通過する空気に粘性作用が生じると、空気振動の熱エネルギーへの変換が促進され、吸音性能が向上する。なお、表面板2aの後述する空間9に接する領域には、シート等が貼り付けられて、貫通孔が塞がれていることが好ましい(図示省略)。
筺体2の内部には、複数(本実施形態では12)の多孔板ユニット3が、表面板2aの面方向に並んで配置されている。多孔板ユニット3は、多孔板により形成されており、奥行方向に延在する四角筒状の外形を有している。図1(c)に示すように、複数の多孔板ユニット3は、長手方向に関して6つずつ、短手方向に関して2つずつ並んで配置されている。
図1(a)及び図1(b)に示すように、多孔板ユニット3は、背面板2b側が開口した箱状体に形成された第1部材4と、短手方向及び長手方向の断面形状がH字状に形成された第2部材5とから構成されている。
第1部材4は、背面板2bに設置されている。第1部材4は、背面板2bに固定されていてもよいが、固定されていなくてもよい。第1部材4は、表面板2aに対向して配置される平面部4aと、奥行方向に延在する側面部4bとから構成されている。側面部4bは、奥行方向から見て平面部4aを取り囲むように配置されており、平面部4aは、その全周において側面部4bの表面板2a側端部に連結されている。
第2部材5は、第1部材4の表面板2a側端部に取り付けられている。第2部材5は、表面板2aに対向して配置される平面部5aと、奥行方向に延在する側面部5bとから構成されている。側面部5bは、奥行方向から見て平面部5aを取り囲むように配置されており、平面部5aは、その全周において側面部5bの奥行方向の略中央部に連結されている。第2部材5は、その背面板2b側の開口端部が、第1部材4の表面板2a側端部の外側に嵌め込まれることによって固定されている。この嵌合固定に加えて、さらにステープラーや、接着剤、粘着テープ等を用いて固定されていてもよい。
平面部4a、5aは、それぞれ表面板2aに平行である。また、側面部4b、5bは、長手方向に直交する2つの面と、短手方向に直交する2つの面とからそれぞれ構成されている。なお、第1部材4の側面部4bと第2部材5の側面部5bとによって、本発明の多孔板ユニットの側面部が構成されている。
多孔板ユニット3の奥行方向の長さは、筺体2の内部空間の奥行方向の長さとほぼ同じである。また、第1部材4及び第2部材5の長手方向の長さは互いにほぼ同じであって、短手方向の長さも互いにほぼ同じである。第1部材4及び第2部材5の長手方向の長さをW1、短手方向の長さをW2とする。
図1(a)に示すように、長手方向に関して隣接する2つの多孔板ユニット3の側面部4b(5b)は、互いに隙間d1を空けて配置されている。また、長手方向に関して枠部2cに隣接する多孔板ユニット3の側面部4b(5b)は、枠部2cとの間に隙間D1を空けて配置されている。また、図1(b)に示すように、短手方向に関して隣接する2つの多孔板ユニット3の側面部4b(5b)は、互いに隙間d2を空けて配置されている。また、短手方向に関して枠部2cに隣接する多孔板ユニット3の側面部4b(5b)は、枠部2cとの間に隙間D2を空けて配置されている。さらに、図1(c)に示すように、これら複数の隙間D1、D2、d1、d2によってそれぞれ形成された空間は互いに連通しており、空間9を構成している。
筺体2の内部空間には、側面部4b、5bと表面板2aと背面板2bとによって囲まれた1つの空間が形成される。つまり、1つの多孔板ユニット3の側面部は、筺体2の内部空間を、表面板2aの面方向に並んだ複数の空間に仕切っている。また、側面部4b、5bと表面板2aと背面板2bとで囲まれた空間は、2つの平面部4a、5aによって、奥行方向に並んだ3つの空気室6〜8に仕切られる。
空気室6は、表面板2aと平面部5aと側面部5bとによって囲まれた空間である。空気室7は、平面部5aと平面部4aと側面部5bとによって囲まれた空間である。空気室8は、平面部4aと背面板2bと側面部4bとによって囲まれた空間である。
また、空気室6〜8の長手方向の幅(第1部材4及び第2部材5の長手方向の長さ)W1は、吸音対象となる音の波長の1/2よりも小さくなるように設定されることが好ましい。空気室6〜8の短手方向の幅(第1部材4及び第2部材5の長手方向の長さ)W2も、長手方向の長さと同じく、吸音対象となる音の波長の1/2よりも小さくなるように設定されることが好ましい。理由については後述する。また、空気室6〜8の奥行方向の長さは、互いに異なっていてもよいが、同じであってもよい。
第1部材4及び第2部材5は、それぞれ1枚の多孔板を折り曲げ加工することにより形成されている。そのため、平面部4aと側面部4bは一体的に形成されている。また、平面部5aと側面部5bも一体的に形成されている。また、第2部材5の側面部5bのうち、平面部5aよりも表面板2a側の部分は、折り返しにより二重構造になっている。
第1部材4及び第2部材5を構成する多孔板は、例えば板厚が0.1mm程度のアルミニウム薄板(箔)であって、多数の円形状の貫通孔が形成されている。上記多孔板の貫通孔の径は例えば0.05mm〜0.15mmであり、開口率は例えば0.1〜1.0%である。貫通孔は、パンチング加工により形成された孔であってもよいが、以下の方法で形成された孔であってもよい。多孔板の材料となる薄板に、山形状及び谷形状を交互に連続して形成し、この山形状及び谷形状の先端部を延性破壊させることにより、微小な孔を形成する。この孔の形状は、円形ではなく、十字形に近い形となる。また、貫通孔がパンチング加工により形成される場合、貫通孔の形状は、円形に限定されるものではなく、四角形状や三角形状等の多角形状であってもよい。もしくは、スリット状であってもよい。このような円形状以外の形状の貫通孔の場合、貫通孔の径とは、孔面積が等価な円形状の孔の径のこととする。上記多孔板の開口率、板厚、貫通孔の径は、表面板2aを構成する多孔板と同様の理由から、貫通孔を通過する空気に対して粘性を生じさせるように設定されている。第1部材4と第2部材5とをそれぞれ構成する多孔板としては、開口率、孔径、板厚が互いに異なるものを用いてもよい。
次に、吸音構造体1の吸音作用について説明する。
音源からの音は、先ず、表面板2aの貫通孔から空気室6内に進入する。このとき、表面板2aの開口率や孔径等に応じた特定の周波数(共鳴周波数)周辺の音が、表面板2aの貫通孔から空気室6に進入すると、共鳴が発生し、貫通孔部における空気の振動によって、貫通孔の内壁と空気との間で摩擦が生じ、振動エネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて吸音作用が生じる。また、空気室6内に進入した音の一部は、平面部5aの貫通孔から空気室7内に進入し、さらに、平面部4aの貫通孔から空気室8内に進入する。表面板2aの貫通孔を通過する場合と同様に、平面部4a、5aの開口率等に応じた特定の周波数の周辺の音が、平面部4a、5aの貫通孔を通過する際、その音の一部は吸音される。
また、空気室6〜8内に進入した音の一部は、側面部4b又は側面部5bの貫通孔を通って空間9内に進入し、さらに、隣接する多孔板ユニット3の空気室6〜8内に進入する。このとき、表面板2aの貫通孔を通過する場合と同様に、側面部4a、5aの開口率等に応じた特定の周波数の周辺の音が、側面部4b、5bの貫通孔を通過する際、その音の一部は吸音される。このように、吸音構造体1は、表面板2a及び平面部4a、5aの貫通孔を用いて吸音を行なうだけでなく、側面部4b、5bの貫通孔も用いて吸音を行なうため、吸音効率が向上する。
次に、吸音構造体1の吸音できる音の周波数について説明する。
上述したように、吸音構造体1は、表面板2aと複数の平面部4a、5aと複数の側面部4b、5bの貫通孔を用いて吸音しているが、特に、表面板2aの貫通孔において吸音できる音の周波数を例に挙げて説明する。
空気室6〜8が平面部4a、5aの貫通孔を介して連通しているため、吸音構造体1は、空気室6の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できるとともに、空気室6と空気室7とを合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、空気室6〜8を全て合わせた空間に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。また、長手方向及び短手方向に並んだ複数の空気室6及び空間9が、側面部5bの貫通孔を介して連通しているため、例えば、空気室6と空間9とを合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、長手方向又は短手方向に関して並んだ2つの空気室6と空間9とを合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、長手方向に並んだ2つの空気室6と空間9とを合わせた空間に、さらに、上記2つの空気室6の奥行方向の図1中の下側に配置されている2つの空気室7も合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。
また、平面部4a、5a及び側面部4b、5bについても、表面板2aと同様に、それぞれの貫通孔に連通する空間に対応した複数の共鳴周波数の周辺の音を吸音できる。
以上により、吸音構造体1は、各空気室6〜8の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、奥行方向に並んだ空気室6〜8を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できるだけでなく、表面板2aの面方向に並んだ複数の空気室6(又は空気室7、8)及び空間9を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。ヘルムホルツ共鳴器の原理によると、共鳴孔に連通している空気層の体積が大きいほど、この空気層に対応した共鳴周波数は低くなる。従って、吸音構造体1は、側面部4b、5bが貫通孔の形成されていない板材で形成された場合に比べて、吸音帯域を低周波域側に広げることができる。
ここで、隣接する2つの多孔板ユニット3の側面部4b(5b)同士が密着した状態で配置されている場合、一方の側面部4b(5b)の貫通孔が他方の側面部4b(5b)によって塞がれ易く、また塞がれないようにするには、両側面部4b(5b)の貫通孔の位置を一致させなければならないため、吸音構造体1の製造が困難となる。
一方、本実施形態では、長手方向又は短手方向に関して隣接する2つの多孔板ユニット3の側面部4b(5b)同士が、隙間d1又は隙間d2を空けて配置されている。そのため、両側面部4b(5b)の貫通孔の位置を一致させなくても、長手方向又は短手方向に関して隣接する複数の空気室6〜8を、側面部4b、5bの貫通孔を介して連通させることができる。
枠部2cに隣接する多孔板ユニットの側面部4b(5b)が、枠部2cとの間に、隙間D1又は隙間D2を空けて配置されているため、吸音構造体1は、各空気室6〜8に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できる上、各空気室6〜8と隙間D1又は隙間D2によって形成される空間とを合わせた空間に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。そのため、吸音構造体1は、多孔板ユニット3の側面部4bと枠部2cとの間に隙間が形成されていない場合に比べて、吸音帯域を広帯域化することができる。
また、空間9は、複数の隙間D1、D2、d1、d2によってそれぞれ形成された空間が連結されたものであるため、その体積は比較的大きい。さらに、この空間9は、複数の多孔板ユニット3の空気室6〜8全てに連通している。そのため、吸音構造体1は、低周波域で高い吸音性能を発揮することができる。
また、高速道路などの通常の吸音構造体1の使用状況下では、様々な大きさ(音圧)の音が表面板2aを介して空気室6内に進入してくる。そのため、隣接する2つの多孔板ユニット3の空気室6内の音の大きさ(音圧)は異なっている場合がある。この場合、音圧の大きい方の空気室6〜8の音が、空間9に進入しやすくなる。また、表面板2aの空間9に接する領域の貫通孔が塞がれている場合、外部からの音は直接空間9に進入しないため、空気室6〜8から空間9に音がより進入しやすくなる。このように、空気室6〜8から空間9に音が進入しやすくなると、空気室6〜8と空間9とを合わせた空間に対応した共鳴周波数及びその周辺の周波数における吸音率が向上する。
また、表面板2a又は平面部4a、5aの貫通孔から進入した音の一部は、空気室6〜8内で、長手方向又は短手方向に沿って進む。このとき、空気室6〜8の幅W1が、吸音対象となる音の波長の1/2よりも大きいと、空気室6〜8内において長手方向に進む音の共鳴現象が発生し、空気室6〜8内に貫通孔から音が進入しにくくなり、吸音性能が低下する場合がある。また、空気室6〜8の幅W2が、吸音対象となる音の波長の1/2よりも大きい場合も同様に、吸音性能が低下する場合がある。一方、本実施形態では、空気室6〜8の幅W1、W2が、吸音対象となる音の波長の1/2よりも小さいため、空気室6〜8内における共鳴が防止され、その結果、表面板2a又は平面部4a、5aの貫通孔から空気室6〜8内に音が進入しやすくなり、吸音性能が向上する。
さらに、多孔板で形成された複数の多孔板ユニット3を筺体2の内部に設置するという方法は、筺体2の内面に、表面板2aに対向する方向の複数の多孔板と、表面板に直交する方向の複数の多孔板とを直接設置する場合に比べて容易であるため、吸音構造体1を容易に製造することができる。
また、多孔板ユニット3の数を変えたり、複数の多孔板ユニット3のうち一部の多孔板ユニット3を、孔径等の異なる多孔板で形成された多孔板ユニットに変えることによって、吸音構造体1の吸音特性を使用目的等に応じて容易に調整することができる。
また、多孔板ユニット3は、多孔板のみで形成されており、例えば、図18に示す従来の吸音構造体901のように樹脂製の仕切壁92〜94などを使用していないため、材料コストを低減できるとともに、軽量化できる。
また、上述したように、第1部材4及び第2部材5は、それぞれ1枚の多孔板を折り曲げ加工することにより形成されており、平面部4a、5aと側面部4b、5bとはそれぞれ一体化されている。そのため、平面部4a、5aは、その面方向に直交する方向(奥行方向)に関して振動しにくい。平面部4a、5aが振動した場合、貫通孔の内壁と空気との摩擦が小さくなり、吸音性能が低下する。本実施形態では、平面部4a、5aの振動が抑制されているため、振動に起因する吸音性能の低下を抑制することができる。
また、側面部4b、5bが、奥行方向から見て平面部4a、5aを取り囲むように配置されており、平面部4a、5aが、その全周において側面部4b、5bに連結されているため、多孔板ユニット3は、比較的高い強度を有する。
なお、吸音構造体1は、多孔板ユニット3が、表面板2aに直交する方向の軸を回転中心として180°回転した状態で配置されていてもよい。つまり、第2部材5が背面板2bに設置され、この第2部材5の表面板2a側に、表面板2a側が開口した第2部材4が取り付けられた構造であってもよい。
また、吸音構造体は、図2に示すように、2つの第2部材5が奥行方向に連結されて形成された多孔板ユニット3´を複数備えるものであってもよい。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、前記第1実施形態と相違する点を中心に説明する。但し、前記第1実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
第2実施形態の吸音構造体21は、多孔板ユニットの形状が異なるが、その他の構成は第1実施形態と同じである。
図3に示すように、第2実施形態の多孔板ユニット23は、背面板2b側が開口した大箱24と、大箱24の内側に配置される、背面板2b側が開口した小箱25とから構成されている。大箱24及び小箱25は、それぞれ背面板2bに固定されている。
大箱24は、表面板2aに対向して配置される底壁(平面部)24a、と、奥行方向に延在する側壁部(側面部)24bとから構成されている。小箱25は、表面板2aに対向して配置される底壁(平面部)25aと、奥行方向に延在する側壁部(側面部)25bとから構成されている。
底壁24a、25aは、それぞれ表面板2aに平行である。側壁部24b、25bは、長手方向に直交する2つの側壁と、短手方向に直交する2つの側壁とからそれぞれ構成されている。側壁部24b、25bは、奥行方向から見て底壁24a、25aをそれぞれ取り囲むように配置されている。底壁24a、25aは、その全周において、それぞれ側壁部24b、25bの表面板2a側端部に連結されている。なお、大箱24の側壁部24bと子箱の側壁部25bとによって、本発明の多孔板ユニットの側面部が構成されている。
大箱24の奥行方向の長さは、筺体2の内部空間の奥行方向の長さよりも短い。小箱25の奥行方向の長さは、大箱24の奥行方向の長さよりも短い。つまり、大箱24と小箱25の奥行方向の長さは互いに異なっている。小箱25の長手方向の長さ及び短手方向の長さは、それぞれほぼ同じであるが、大箱24の方が僅かに大きい。大箱24及び小箱25は、それぞれ開口側が背面板2bに固定された状態で、入れ子状に重ねられている。
長手方向に関して隣接する2つの多孔板ユニット23の側壁部24bは、隙間を空けて配置されている。また、長手方向に関して枠部2cに隣接する多孔板ユニット23の側壁部24bは、枠部2cとの間に隙間を空けて配置されている。また、短手方向に関して隣接する2つの多孔板ユニット23の側壁部24bは、隙間を空けて配置されており、また、短手方向に関して枠部2cに隣接する多孔板ユニット23の側壁部24bは、枠部2cとの間に隙間を空けて配置されている(図3参照)。これらの隙間によって形成される空間は、連通しており、空間29を形成している。
筺体2の内部空間には、複数の多孔板ユニット23の底壁24aと表面板2aと枠部2cとによって囲まれた1つの空気室26が形成される。つまり、底壁24aは、筺体2の内部空間を、奥行方向に並んだ2つの空間に仕切っている。この空気室26は、上述した空間29と連通している。
また、筺体2の内部空間には、多孔板ユニット23の側壁部24b(及び側壁部25b)と底壁24aと背面板2bとよって囲まれた空間が形成される。つまり、1つの多孔板ユニット23の側壁部24b(及び側壁部25b)は、筺体2の内部空間を、表面板2aの面方向に並んだ複数の空間に仕切っている。また、側壁部24bと底壁24aと背面板2bとよって囲まれた空間は、底壁25aによって、奥行方向に並んだ2つの空気室27、28に仕切られている。
大箱24及び小箱25は、それぞれ1枚の多孔板を折り曲げ加工することにより形成されている。そのため、底壁24aと側壁部24b、及び、底壁25aと側壁部25bとは、それぞれ一体的に形成されている。これにより、底壁24a、25aはその面方向に直交する方向(奥行方向)に振動しにくくなるため、振動による吸音性能の低下を抑制することができる。
大箱24及び小箱25を構成する多孔板は、第1実施形態と同様の多孔板を用いることができる。大箱24及び小箱25をそれぞれ構成する多孔板としては、開口率、孔径、板厚が互いに異なるものを用いてもよい。
以上のような構成を有する吸音構造体21は、各空気室26〜28の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、奥行方向に並んだ空気室26〜28を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できるだけでなく、表面板2aの面方向に並んだ複数の空気室27(又は空気室28)を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。従って、吸音構造体21は、側壁部24b、25bが貫通孔の形成されていない板材で形成された場合に比べて、吸音帯域を低周波域側に広げることができる。
また、表面板2a及び底壁24a、25aの貫通孔を用いて吸音を行なうだけでなく、側壁部24b、25bの貫通孔も用いて吸音を行なっているため、吸音効率が向上している。
また、空気室26の長手方向の長さ及び短手方向の長さは、筺体2の内部空間の長手方向の長さ及び短手方向の長さと同じである。そのため、空気室26と空気室27の長手方向の幅は、互いに異なっており、さらに、空気室26、27のそれぞれの長手方向の両端部の位置が互いに異なっている。そのため、空気室26、27間で音の干渉(音圧の干渉)が起こり、空気室26、27内において長手方向に進む音の共鳴が発生しにくくなる。これにより、空気室26、27内に音が進入しやすくなり、吸音性能が向上する。また、短手方向に関しても、長手方向と同様に、空気室26、27の幅、及び、両端部の位置が互いに異なっているため同様の効果を奏する。
また、大箱24及び小箱25は折り曲げ加工によって形成されており、多孔板ユニット23は、大箱24と小箱25とが入れ子状に重ねられた簡易な構造であるため、容易に製造することができる。
また、大箱24又は小箱25を、奥行方向の長さの異なるものに取り替えたり、開口率等の異なるものに取り替えたりすることにより、吸音構造体21の吸音特性を使用目的等に応じて容易に調整することができる。
なお、本実施形態の多孔板ユニット23は、2つの箱状体24、25が入れ子状に重ねられた構成であるが、奥行方向の長さの異なる3つ以上の箱状体が入れ子状に重ねられた構成であってもよい。また、例えば、大箱24の内側に、2つ以上の箱状体を、表面板2aの面方向に並べて配置する構成であってもよい。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について、前記第1実施形態と相違する点を中心に説明する。但し、前記第1実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
第3実施形態の吸音構造体31は、多孔板ユニットの形状が異なるだけで、その他の構成は第1実施形態と同じである。
図4(a)に示すように、第3実施形態の多孔板ユニット33は、表面板2aに対向して配置される2つの平面部33aと、奥行方向に延在する側面部33bとから構成されている。
2つの平面部33aは、それぞれ表面板2aに平行であって、奥行方向に並んで配置されている。また、側面部33bは、奥行方向から見て平面部33aを取り囲むように配置されており、平面部33aは、その全周において側面部33bにそれぞれ固定されている。側面部33bは、長手方向に直交する2つの面と、短手方向に直交する2つの面とから構成されている。側面部33bの延在方向(奥行方向)の長さは、筺体2の内部空間の奥行方向の長さとほぼ同じである。
2つの平面部33aは、それぞれ1枚の多孔板で構成されている。また、側面部33bは、1枚又は複数枚の多孔板により形成されている。平面部33a及び側面部33bを構成する多孔板は、第1実施形態と同様の多孔板を用いることができる。平面部33a及び側面部33bを構成する多孔板としては、開口率、孔径、板厚が互いに異なるものを用いてもよい。
また、側面部33bには、2つの平面部33aをそれぞれ挟持する2つの挟持部33cが設けられている。挟持部33cは、側面部33bを構成する多孔板の一部によって形成されている。挟持部33cは、平面部33aを全周にわたって挟持している。図4(b)に示すように、挟持部33cは、外側(平面部33aと反対側)に突出して形成されており、平面部33aの縁部を両面側から押さえ付けて挟持している。挟持部33cは、例えば、側面部33bを形成する際に、側面部33bを構成する多孔板の一部を、平面部33aの縁部の両面に密着するように折り曲げることによって形成されている。
また、挟持部33cの先端部は、隣接する多孔板ユニット33の側面部33bに当接している。また、隣接する2つの多孔板ユニット33の挟持部33cは、その高さ(奥行方向位置)が互いに異なるように形成されている。さらに、挟持部33cの上面(又は下面)が、隣接する挟持部33cの下面(又は上面)と接する高さに形成されていることが好ましい。挟持部33cについても同様である。これにより、挟持部33cの強度を向上させることができるからである。
このような挟持部33cを設けることにより、多孔板以外の部材を特に使用しなくても、平面部33aの縁部を側面部33bに固定することができるため、多孔板ユニット33の製造コストを軽減できる。また、側面部33bは、0.1mm程度のアルミニウム薄板で形成されているため、上述した方法により挟持部33cを容易に形成することができる。
また、挟持部33cは、外側に突出して形成されているため、長手方向又は短手方向に関して隣接する2つの多孔板ユニット33の側面部33bは、互いに隙間を空けて配置される。また、長手方向又は短手方向に関して枠部2cに隣接する多孔板ユニット33の側面部33bは、枠部2cとの間に隙間を空けて配置される。また、これらの隙間によって形成される空間は、面方向に関して連通している一方、2つの挟持部33cによって奥行方向に並ぶ3つの空間37〜39に仕切られている。
筺体2の内部空間には、表面板2aと側面部33bと背面板2bとによって囲まれた1つの空間が形成される。さらにこの空間は、2つの平面部33aによって、奥行方向に並んだ3つの空気室34〜36に仕切られている。
以上のような構成を有する吸音構造体31は、各空気室34〜36の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、奥行方向に並んだ空気室34〜36を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できるだけでなく、表面板2aの面方向に並んだ複数の空気室34(又は空気室35、36)を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。従って、吸音構造体31は、側面部33bが貫通孔の形成されていない板材で形成された場合に比べて、吸音帯域を低周波域側に広げることができる。
また、表面板2a及び平面部33aの貫通孔を用いて吸音を行なうだけでなく、側面部33bの貫通孔も用いて吸音を行なっているため、吸音効率が向上している。
また、上述したように平面部33aの縁部は、挟持部33cに固定されている。そのため、平面部33aはその面方向に直交する方向(奥行方向)に振動しにくくなるため、振動による吸音性能の低下を抑制することができる。
なお、本実施形態の多孔板ユニット33では、挟持部33cは、平面部33aを全周にわたって挟持しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、図5(a)に示すように、平面部133aの長手方向(又は短手方向)の両端部を挟持するように、挟持部133cが側面部133bに形成されていてもよい。
この場合、側面部133bを構成する4つの側面のうち、挟持部が形成されていない2つの側面と、平面部133aとは、折り曲げ加工により一体的に形成されていてもよい。具体的には、例えば、図5(b)に示すように、短手方向断面の形状が、2つのH型部材133A、133Bを奥行方向に関して連結させた形状の多孔板ユニット133であってもよい。H型部材133A、133Bは、それぞれ1枚の多孔板を短手方向断面がH字状になるように折り曲げることにより形成される。また、例えば、図5(c)に示すように、短手方向断面の形状が、2つのZ型部材133C、133Dを奥行方向に関して連結させた形状の多孔板ユニット133´であってもよい。Z型部材133C、133Dは、それぞれ1枚の多孔板の両端部を互いに逆方向に折り曲げることによって形成されている。但し、この場合、短手方向に隣接する多孔板ユニットの間には、ほとんど隙間は形成されない。
また、本実施形態の多孔板ユニット33は、平面部33aを側面部33bに固定する手段として、多孔板で形成された挟持部33cを用いているが、この構成に限定されるものではない。例えば、図6に示すように、平面部33aの縁部を折り曲げて、その折り曲げられた部分を側面部33bに接着剤等を使用して固定された多孔板ユニット33´であってもよい。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について、前記第1実施形態と相違する点を中心に説明する。但し、前記第1実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
図7に示すように、第4実施形態の吸音構造体41は、第1実施形態と同様の筺体2と、筺体2の内部に長手方向に並んで配置された複数の多孔板ユニット43とから構成される。
多孔板ユニット43は、短手方向に直交する断面形状が、背面板2b側が開口したU字状のU型部材44と、U型部材44の内側に配置され、U型部材44とほぼ相似形であって、奥行方向の長さがU型部材44よりも短いU型部材45とから構成される。2つのU型部材44、45は、それぞれ背面板2bに固定されている。
U型部材44、45は、表面板2aに対向して配置される平面部44a、45aと、奥行方向に延在する側面部44b、45bとからそれぞれ構成されている。側面部44b、45bは、長手方向に直交する2つの面からそれぞれ構成されている。平面部44a、45aの対向する2つの縁部は、側面部44b、45bの表面板2a側端部に連結されている。2つのU型部材44、45の側面部44b、45bが、本発明の多孔板ユニットの側面部を構成している。
U型部材44の奥行方向の長さは、筺体2の内部空間の奥行方向の長さよりも短い。また、U型部材45の奥行方向の長さは、U型部材44の奥行方向の長さよりも短い。また、U型部材44、45の長手方向の長さ及び短手方向の長さは、それぞれほぼ同じであるが、U型部材44の方が僅かに大きい。U型部材44とU型部材45とは、それぞれ開口側が背面板2bに固定された状態で、入れ子状に重ねられている。
長手方向に関して隣接する2つの多孔板ユニット43の側面部44bは、隙間を空けて配置されている。この隙間によって形成される空間を空間49とする。また、長手方向に関して枠部2cに隣接する多孔板ユニット43の側面部44bは、枠部2cとの間に隙間を空けて配置されている。この隙間によって形成される空間を空間49aとする。
複数のU型部材44の平面部44aと表面板2aと枠部2c(図1参照)とによって空気室46が形成されている。空気室46は、上述した空間49、49aに連通している。また、筺体2の内部空間には、多孔板ユニット43の側面部44bと平面部44aと背面板2bとよって囲まれた1つの空間が形成されており、さらにこの空間は、平面部45aによって、奥行方向に並んだ2つの空気室47、48に仕切られている。
2つのU型部材44、45は、それぞれ1枚の多孔板を折り曲げ加工することにより形成されている。そのため、平面部44aと側面部44b、及び、平面部45aと側面部45bは、それぞれ一体的に形成されている。これにより、平面部44a、45aはその面方向に直交する方向(奥行方向)に振動しにくくなるため、振動による吸音性能の低下を抑制することができる
側面部44b、45b及び平面部44a、45aを構成する多孔板は、第1実施形態と同様の多孔板を用いることができる。側面部44b、45b及び平面部44a、45aをそれぞれ構成する多孔板としては、開口率、孔径、板厚が互いに異なるものを用いてもよい。
以上のような構成を有する吸音構造体41は、各空気室46〜48の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、奥行方向に並んだ空気室46〜48を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できるだけでなく、表面板2aの面方向に並んだ複数の空気室47(又は空気室48)及び空間49又は空間49aを合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。従って、吸音構造体41は、側面部44b、45bが貫通孔の形成されていない板材で形成された場合に比べて、吸音帯域を低周波域側に広げることができる。
また、表面板2a及び平面部44a、45aの貫通孔を用いて吸音を行なうだけでなく、側面部44b、45bの貫通孔も用いて吸音を行なっているため、吸音効率が向上している。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について、前記第1実施形態と相違する点を中心に説明する。但し、前記第1実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
図8に示すように、第5実施形態の吸音構造体51は、第1実施形態と同様の筺体2と、筺体2の内部に長手方向に並んで配置された複数の多孔板ユニット53とから構成される。
多孔板ユニット53は、1枚の多孔板を折り曲げ加工することによって形成されている。多孔板ユニット53は、1対の取付部56を有する平面部54と、側面部55とから構成されている。
平面部54は、表面板2aに対向して配置されている。平面部54は、矩形状であって、その縁部は、長手方向と短手方向にそれぞれ延在している。平面部54は、筺体2の内部空間を、奥行方向に並ぶ2つの空間に仕切っている。
1対の取付部56は、平面部54の短手方向に関して対向する縁部に設けられている。1対の取付部56は、平面部54から表面板2a側に向かって奥行方向に延在しており、さらに、その先端が外側に折り曲げられた形状に形成されている。この取付部56は、平面部54の縁部の一部である。外側に折り曲げられた部分を引っ掛け部56aとする。引っ掛け部56aは、枠部2cの縁に引っ掛けられており、その上には、表面板2aが設置されている。引っ掛け部56aは、枠部2cの縁部と表面板2aとによって挟持されており、表面板2aはリベット等によって枠部2cの縁部に固定されている。これにより、多孔板ユニット53は、筺体2に固定されている。
側面部55は、平面部54の長手方向に関して対向する縁部に連結された2つの側壁55aから構成されている。側壁55aは、平面部54から表面板2a側に向かって奥行方向に延在している。側壁55aの先端は表面板2aに接していてもよいが、表面板2aとの間に僅かな隙間が形成されていてもよい。側壁55aは、表面板2aと平面部54との間の空間を、長手方向に並ぶ複数の空間に仕切っている。また、側壁55aと取付部56とは、連結されていてもよいが、連結されていなくてもよい。
また、隣接する2つの多孔板ユニット53の対向する側壁55aの間は、隙間が形成されていてもよいが、ほとんど隙間が形成されていなくてもよい。
筺体2の内部空間には、表面板2aと多孔板ユニット53の平面部54と側面部55とによって囲まれた複数の空気室57と、背面板2bと複数の多孔板ユニット53の平面部54とによって囲まれた1つの空気室58が形成されている。
多孔板ユニット53は、上述したように1枚の多孔板を折り曲げ加工することによって形成されている。具体的には、矩形状の多孔板の四隅に切り欠き又は切り込みを形成した後、この多孔板の一方の対向する端部を垂直に折り曲げてU字状に形成し、さらにその先端部を外側に折り曲げる。つまり、ハット状に形成する。これにより、1対の取付部56を形成する。そして、多孔板の他方の対向する端部を、取付部56と反対側に垂直に折り曲げて、2つの側壁55aと平面部54を形成する。なお、側壁55aを形成してから、取付部56を形成してもよい。
以上のような構成を有する吸音構造体51は、多孔板で形成された側壁55aを有するため、各空気室57、58の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、奥行方向に並んだ空気室57と空気室58とを合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できるだけでなく、長手方向に隣接する空気室57を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。従って、吸音構造体51は、側壁55aが貫通孔の形成されていない板材で形成された場合に比べて、吸音帯域を低周波域側に広げることができる。
また、上述したように、引っ掛け部56aが、表面板2aと共に枠部2cの縁部に固定されているため、筺体2内で多孔板ユニット53が移動することがない。
また、吸音構造体51は、1枚の多孔板を折り曲げて形成された多孔板ユニット53の引っ掛け部56aを、枠部2cの縁部に引っ掛けてその上から表面板2aを被せて固定するという簡易な方法で製造されるため、製造コストを低減できる。
なお、本実施形態の多孔板ユニット53は、側面部55の2つの側壁55aが、平面部54から表面板2a側に延在しているが、図9に示すように、側面部155の2つの側壁155aが、平面部54から背面板2b側に延在する多孔板ユニット153であってもよい。
また、図10に示すように、側面部255の2つの側壁255aのうちの一方が、平面部54から表面板2a側に延在し、他方の側壁255aが平面部54から背面板2b側に延在する多孔板ユニット253であってもよい。
また、本実施形態の多孔板ユニット53は、2つの側壁55aを有しているが、何れか一方の側壁55aのみを有していてもよい。この場合でも、側壁55aによって、筺体2内の空間を、長手方向に並んだ複数の空間に仕切ることができる。
また、多孔板ユニット53は、2つの側壁55aを有していなくてもよい。但し、この場合、筺体2内の空間は、長手方向に関して仕切られていない。
また、奥行方向の長さの異なる複数の多孔板ユニット53を入れ子状に重ね合わせて、新たな多孔板ユニットを形成してもよい。これにより、筺体2の内部空間を奥行方向に関して複数の空間に仕切ることができる。
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態について、前記第1実施形態と相違する点を中心に説明する。但し、前記第1実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
図11に示すように、第6実施形態の吸音構造体61は、外形が略直方体状の筺体62と、筺体62の内部に長手方向に並んで配置された複数の多孔板ユニット63とから構成されている。
筺体62は、多孔板からなる表面板2aと、表面板2aに対向配置されている背面板62bと、背面板62bと一体的に形成されている枠部2cとを備えている。背面板62bには、表面板2a側に突出した突出部62dが設けられている。突出部62dは、背面板62b上に形成された凸部62eと、この凸部62eの上に設置されたスペーサブロック62fとから構成されている。
多孔板ユニット63は、1枚の多孔板を折り曲げ加工することによって形成されている。多孔板ユニット63は、平面部64と、1対の接触部66と、側面部65とから構成されている。
平面部64は、表面板2aに対向して配置されている。平面部64は、矩形状であって、その縁部は、長手方向と短手方向にそれぞれ延在している。平面部64は、筺体62の内部空間を、奥行方向に並ぶ2つの空間に仕切っている。また、平面部64は、突出部62dの上に設置されている。そのため、突出部62dは、平面部64と背面板62bとの間の空間を、短手方向に並ぶ2つの空間に仕切っている。平面部64は、突出部62dの上に載せられているだけでもよいが、リベット等で固定されていてもよい。
1対の接触部66は、平面部64の短手方向に関して対向する縁部に連結されている。1対の接触部66は、平面部64から表面板2a側に向かって奥行方向に延在している。また、接触部66の奥行方向長さは、突出部62dの先端から表面板2aまでの長さとほぼ同じに設定されており、接触部66の先端は表面板2aに接触している。このように、平面部64が突出部62dに載せられた状態で、この平面部64の対向する縁部から延在する1対の接触部66の先端が表面板2aに接触していることにより、多孔板ユニット63は、筺体62内に固定されている。
側面部65は、平面部64の長手方向に関して対向する縁部に連結された2つの側壁65aから構成されている。側壁65aは、平面部64から表面板2a側に向かって奥行方向に延在している。側壁65aの先端は表面板2aに接していてもよいが、表面板2aとの間に僅かな隙間が形成されていてもよい。側壁65aは、表面板2aと平面部64との間の空間を、長手方向に並ぶ複数の空間に仕切っている。また、側壁65aと接触部66とは、連結されていてもよいが、連結されていなくてもよい。
また、隣接する2つの多孔板ユニット63の対向する側壁65aの間は、隙間が形成されていてもよいが、ほとんど隙間が形成されていなくてもよい。
筺体62の内部空間には、表面板2aと多孔板ユニット63の平面部64と側面部65とによって囲まれた複数の空気室67と、背面板62bと突出部62dと複数の多孔板ユニット63の平面部64とによってそれぞれ囲まれた2つの空気室68、69が形成されている。
多孔板ユニット63は、上述したように1枚の多孔板を折り曲げ加工することによって形成されている。具体的には、矩形状の多孔板の四隅に切り欠き又は切り込みを形成した後、この多孔板の周縁部を垂直に折り曲げることによって形成されている。
以上のような構成を有する吸音構造体61は、多孔板で形成された側壁65aを有するため、各空気室67〜69の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、奥行方向に並んだ空気室67と空気室68(69)とを合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できるだけでなく、長手方向に隣接する空気室67を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。従って、吸音構造体61は、側壁65aが貫通孔の形成されていない板材で形成された場合に比べて、吸音帯域を低周波域側に広げることができる。
また、上述したように、平面部64が突出部62dに載せられた状態で、1対の接触部66の先端が表面板2aに接触していることにより、多孔板ユニット63は筺体62内に固定されているため、筺体62内で多孔板ユニット63が移動することがない。
また、吸音構造体61は、1枚の多孔板を折り曲げて形成した多孔板ユニット63を突出部62dの上に設置し、表面板2aを枠部2cに固定するという簡易な方法で製造されるため、製造コストを低減できる。
なお、本実施形態の多孔板ユニット63は、2つの側壁65aが、平面部64から表面板2a側に延在しているが、図12に示すように、側面部165の2つの側壁165aが、平面部64から背面板62b側に延在する多孔板ユニット163であってもよい。また、2つの側壁のうちの一方が、平面部64から表面板2a側に延在し、他方が平面部64から背面板62b側に延在する多孔板にユニットであってもよい。
また、本実施形態の多孔板ユニット63は、2つの側壁65aを有しているが、何れか一方の側壁65aのみを有していてもよい。この場合でも、側壁65aによって、筺体2内の空間を、長手方向に並んだ複数の空間に仕切ることができる。
また、多孔板ユニット63は、側面部65を有していなくてもよい。但し、この場合、筺体2内の空間は、長手方向に関して仕切られていない。
また、2つの側壁65aの先端が、表面板2aに接している場合、1対の接触部66を有していなくてもよい。この場合、平面部64が突出部62dに載せられた状態で、2つの側壁65aの先端が表面板2aに接触していることにより、多孔板ユニット63は筺体62内に固定される。
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態について、前記第1実施形態と相違する点を中心に説明する。但し、前記第1実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
図13に示すように、第7実施形態の吸音構造体71は、第1実施形態と同様の筺体2と、筺体2の内部に長手方向に並んで配置された複数の多孔板ユニット73とから構成される。
多孔板ユニット73は、1枚の多孔板を折り曲げ加工することによって形成されている。多孔板ユニット73は、平面部74と、側面部75とから構成されている。
平面部74は、表面板2aに対向して配置されている。平面部74は、矩形状であって、その縁部は、長手方向と短手方向にそれぞれ延在している。平面部74は、筺体2の内部空間を、奥行方向に並ぶ2つの空間に仕切っている。
側面部75は、平面部74の長手方向に関して対向する縁部に連結された2つの側壁75aと、平面部74の短手方向に関して対向する縁部に連結された2つの側壁75bとから構成されている。2つの側壁75aは、平面部74から表面板2a側に向かって奥行方向に延在しており、2つの側壁75bは、平面部74から背面板2b側に向かって奥行方向に延在している。側壁75aの奥行方向長さと側壁75bの奥行方向長さとを合わせた長さ(多孔板ユニット73の奥行方向長さ)は、筺体2内の奥行方向長さとほぼ同じに設定されている。従って、側壁75a、75bの先端は、表面板2aと背面板2bにそれぞれ接触しており、これにより、多孔板ユニット73は、筺体2内に固定されている。また、側壁75aは、表面板2aと平面部74との間の空間を、長手方向に並ぶ複数の空間に仕切っている。
また、隣接する2つの多孔板ユニット73の対向する側壁75aの間は、隙間が形成されていてもよいが、ほとんど隙間が形成されていなくてもよい。
筺体2の内部空間には、表面板2aと多孔板ユニット73の平面部74と側壁75aとによって囲まれた複数の空気室76と、背面板2bと複数の多孔板ユニット73の平面部74及び側壁75bとによって囲まれた1つの空気室77が形成されている。
多孔板ユニット73は、上述したように1枚の多孔板を折り曲げ加工することによって形成されている。具体的には、矩形状の多孔板の四隅に切り欠きを形成した後、この多孔板の周縁部を、隣接する縁部同士が逆向きになるように垂直に折り曲げることによって形成されている。
以上のような構成を有する吸音構造体71は、多孔板で形成された側壁75aを有するため、各空気室76、77の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音や、奥行方向に並んだ空気室76と空気室77とを合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できるだけでなく、長手方向に隣接する空気室76を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。従って、吸音構造体71は、側壁75aが貫通孔の形成されていない板材で形成された場合に比べて、吸音帯域を低周波域側に広げることができる。
また、上述したように、2つの側壁75aの先端が表面板2aに接し、2つの側壁75bの先端が背面板2bに接することにより、多孔板ユニット73は筺体2内に固定されているため、筺体2内で多孔板ユニット73が移動することがない。
また、吸音構造体71は、1枚の多孔板を折り曲げて形成された多孔板ユニット73を筺体2内に設置してから、表面板2aを枠部2cに固定するという簡易な方法で製造されるため、製造コストを低減できる。
なお、本実施形態の多孔板ユニット73では、側壁75aが表面板2a側に延在し、側壁75bが背面板2b側に延在しているが、図14に示すように、長手方向に関して対向する2つの側壁175aが背面板2b側に延在し、短手方向に関して対向する2つの側壁175bが表面板2a側に延在する多孔板ユニット173であってもよい。この場合、側壁175aが、背面板2bと平面部74との間の空間を、長手方向に並ぶ複数の空間に仕切っている。
また、本実施形態の多孔板ユニット73と、上述の多孔板ユニット173とを、筺体2内に長手方向に交互に配置してもよい。これにより、表面板2aと平面部74との間の空間は、多孔板ユニット73の側壁75aによって仕切られ、背面板2bと平面部74との間の空間は、多孔板ユニット173の側壁175aによって仕切られる。
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態について、前記第1実施形態と相違する点を中心に説明する。但し、前記第1実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
図15に示すように、第8実施形態の吸音構造体81は、第1実施形態と同様の筺体2と、筺体2の内部に表面板2aに対向して配置された2つの第1多孔板82、83と、筺体2の内部に表面板2aに直交する方向に沿って配置された複数の第2多孔板84〜86とを有する。
第1多孔板82、83は、それぞれ表面板2aに平行に配置されている。第1多孔板82、83は、それぞれ表面板2aとほぼ同じ大きさに形成されている。また、複数の第2多孔板84〜86は、長手方向に直交する方向に配置されている。
筺体2の内部空間は、第1多孔板82、83によって、奥行方向に並ぶ3つの空間に仕切られている。複数の第2多孔板84は、第1多孔板82と表面板2aとの間に配置され、第1多孔板82と表面板2aとの間の空間を長手方向に並ぶ複数の空気室87に仕切っている。また、複数の第2多孔板85は、第1多孔板82と第1多孔板83との間に配置されており、第1多孔板82と第1多孔板83の間の空間を長手方向に並ぶ複数の空気室88に仕切っている。複数の第2多孔板86は、背面板2bと第1多孔板83との間に配置され、背面板2bと第1多孔板83との間の空間を長手方向に並ぶ複数の空気室89に仕切っている。
なお、第1多孔板82、83及び第2多孔板84〜86の筺体2内への設置方法としては、例えば、第1多孔板82、83及び第2多孔板84〜86の縁部を、枠体2cに直接固定する方法があるが、特に、この方法に限定されるものではない。
第1多孔板82、83及び第2多孔板84〜86としては、第1実施形態の多孔板ユニット3を構成する多孔板と同様のものが用いられる。第1多孔板82、83及び第2多孔板84〜86をそれぞれ構成する多孔板としては、開口率、孔径、板厚が互いに異なるものを用いてもよい。
以上のような構成を有する吸音構造体81は、各空気室87〜89の体積に対応した共鳴周波数の周辺や、奥行方向に並んだ空気室87〜89を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音を吸音できるだけでなく、表面板2aの面方向に並んだ複数の空気室87(又は空気室88、89)を合わせた空間の体積に対応した共鳴周波数の周辺の音も吸音できる。従って、吸音構造体81は、第2多孔板84〜86の代わりに、貫通孔の形成されていない板材を用いた場合に比べて、吸音帯域を低周波域側に広げることができる。
また、表面板2a及び第1多孔板82、81の貫通孔を用いて吸音を行なうだけでなく、第2多孔板84〜86の貫通孔も用いて吸音を行なっているため、吸音効率が向上している。
以上、本発明の好適な実施形態として、第1〜第8実施形態を説明したが、本発明の吸音構造体の筺体2の形状は、直方体形状に限定されるものではない。例えば、表面板2a及び背面板2bの形状が、円形状や三角形状であってもよい。
また、図16に示すように、長手方向に直交する断面形状が平行四辺形に形成された筺体102であってもよい。この場合、筺体102の枠部102cと多孔板ユニット3の側面部との間に、三角形状の隙間が形成される。この三角形状の隙間によって形成される空間102dの体積は、第1〜第4実施形態における枠部2cと多孔板ユニットの側面部との間に形成される空間の体積よりも大きい。そのため、側面部が孔の形成されていない板材で構成された場合と比較した吸音帯域の増加幅は、第1〜第8実施形態の吸音構造体に比べて大きくなる。つまり、このような形状の筺体102の場合、空間102dと空気室とを連通させることは、吸音帯域を広域化するために、特に有効である。
また、第1〜第8実施形態では、多孔板ユニットの平面部又は第1多孔板は、表面板2aと平行に配置されているが、表面板2aに対して若干傾斜した方向に配置されていてもよい。また、第1〜第8実施形態では、多孔板ユニットの側面部又は第2多孔板は、表面板2aに直交する方向に沿って配置されているが、表面板2aに交差する方向であれば直交方向以外の方向であってもよい。
また、第1〜第7実施形態では、複数の多孔板ユニットは、全て同じ形状であるが、これに限定されるものではない。例えば、複数の多孔板ユニットは、長手方向の長さ又は短手方向の長さが互いに異なっていてもよい。
また、第1〜第3実施形態では、複数の多孔板ユニットは、短手方向に2つずつ、長手方向に6つずつ配列されているが、この配列数に限定されるものではない。例えば、短手方向に1つずつ、長手方向に複数個ずつ配列されていてもよい。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
実施例として、図17に示す吸音構造体801を作製した。実施例の吸音構造体801は、6つの多孔板ユニット803を備え、これら6つの多孔板ユニット803は、筐体802の内部に、長手方向に並んで配置されている。多孔板ユニット803としては、第1実施形態の多孔板ユニット3と同様の構造のものを用いた。実施例の吸音構造体801の表面板802a、平面部804a、805a及び側面部804b、805bのそれぞれの板厚、開口率及び貫通孔の径、ならびに、空気室806〜808及び隙間D1、d1の大きさを表1に示す。
比較例として、図18に示す従来の吸音構造体901を作製した。吸音構造体901は、筺体902の内部に、筺体902の表面板902aと平行な多孔板90、91と、表面板902aに直交する方向に延在する複数の仕切壁92〜94とを備える。仕切壁92は、表面板902aと多孔板90との間に配置され、表面板902aと多孔板90との間の空間を、長手方向に並んだ複数の空間95に仕切っている。仕切壁93、94は、それぞれ、多孔板90と多孔板91との間、及び、多孔板91と背面板902bとの間に配置され、これらの間の空間を長手方向に並んだ複数の空間95〜97にそれぞれ仕切っている。比較例の吸音構造体901の表面板902a、多孔板90、91のそれぞれの板厚、開口率及び貫通孔の径、ならびに、空気室95〜97の大きさを表1に示す。
実施例及び比較例の吸音構造体801、901について、実測による残響室法吸音率を測定した。その結果を、図19に示す。図19の縦軸は、音源からの音に対する吸音率を示し、横軸は、1/3オクターブバンド周波数(Hz)を示している。
図19に示すように、実施例の吸音構造体801の吸音率は、400Hz〜630Hzの範囲では比較例の吸音構造体901とほぼ同じであるが、それ以外の周波数帯域では、比較例に比べて向上している。特に、250Hz〜315Hzの低周波域での吸音率が向上している。従って、実施例の吸音構造体801は、比較例の吸音構造体901に比べて、吸音帯域が広帯域化されていることがわかる。