JP2013066432A - クリームチーズ類 - Google Patents

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Abstract

【課題】カット適性、調理混合適性、焼成適性を有する新規なクリームチーズ類を提供する。
【解決手段】乳タンパク濃縮物を4%以上含有し、pHを4.5〜5.7に、および脂肪球平均径を1.8μm以下に設定することにより、カット適性、調理混合適性、焼成適性を有する新規なクリームチーズを得る。また、クリームチーズ類に未変性のβラクトグロブリンを含有させることにより、カット適性、調理混合適性、焼成適性を有する新規なクリームチーズを得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なクリームチーズ類に関する。
近年、国内のナチュラルチーズおよびプロセスチーズの生産量および消費量は、直接消費用、原料用ともに増加傾向にあり、なかでも非熟成チーズであるフレッシュチーズの消費は拡大傾向にある。フレッシュチーズは脂肪含量および水分含量が高く、軟らかな物性であるため、パンやクラッカーにぬってそのまま食されるほか、製菓・製パン用やプロセスチーズ類等の加工原料として広く利用されている。
フレッシュチーズのひとつであるクリームチーズは、乳酸菌由来の発酵風味と、さわやかな酸味を有することから、甘さとの相性が良く、ケーキやパン、デザートの製菓・製パン用加工原料として使用されることが多い。クリームチーズをこれらの加工原料として使用する際に必要とされる機能性は、主として、カット適性、調理混合適性、焼成適性が挙げられる。ケーキに使用する所定量のクリームチーズ類を切り分ける際には、変形しないことや、刃に付かないことが作業性(工程)の点から好まれる。したがって、クリームチーズ類は適度な保形性がある方が、カット適性が高いとされる。一方、生地など他の原料と混合する作業(工程)では、混ぜる負荷が小さく、他の素材と混ざりやすい方が好まれ、調理混合適性については、クリームチーズ類は適度に軟らかく、くずれやすい方が良いとされる。このように、カット適性と調理混合適性は相反する物性であり、一般にカット適性を向上すると、調理混合適性が低下する傾向となる。
焼成工程を含む製菓・製パン調理において、焼成後のケーキのボリュームの低下(沈みや縮み)は課題となる場合が多い。焼成後のケーキの沈みは、見た目が悪く、さらに組織が破壊されているため、食感が低下するとされる。この焼成後の沈みは、焼成適性の指標の一つである。クリームチーズ類を用いたケーキの場合も同様である。焼成後の沈みを緩和する手法はこれまでも検討されてきた。例えば、イモ類由来タンパク質の添加で焼成後の沈み抑制に効果があると報告されている(非特許文献1)が、イモ類は特有の風味を有しているため、完成した製菓・製パン類の風味を損なう。また、このようにケーキ作製時に材料を添加すると、添加する材料が1種増加するために作業性が煩雑になるといった課題がある。このように、クリームチーズ類において、機能性となるカット適性、調理混合適性、焼成適性を具備させることは困難であった。
例えば特許文献1では、ゼラチンと乳タンパク質を併用することで風味とカット適性および耐熱保形性が良好なチーズ類が得られると記載されているものの、本発明の主目的であるカット適性、調理混合適性、焼成適性については何ら記載されていない。
特開2009-112226号公報
大羽和子,文科省科研費報告書(1987)
本発明は、カット適性、調理混合適性、焼成適性を有する新規なクリームチーズ類を提供することを課題とする。
なお、本発明において、「カット適性」とは、テクスチャーアナライザを用いた圧縮試験により求めた硬度が5.0N以上(10℃)であることをいう。硬度が5.0N以上であると、刃でクリームチーズ類をカットした際、クリームチーズ類が粘って切れないことや、刃に付着することが少なく、カット後の変形が小さい。
本発明において、「調理混合適性」とは、テクスチャーアナライザを用いた圧縮試験により求めた硬度が20N以下(10℃)であり、かつ、20℃でオイルオフしないことをいう。硬度が20N以下であると、クリームチーズ類を他の原料と混合する際に要する力が小さく、均一な混合が可能である。
本発明において、「焼成適性」とは、対象となるクリームチーズ類を使用してチーズケーキを焼成した際に、焼成直後と冷却後において、チーズケーキの高さが減少しない(変形しない)性質をいう。焼成適性を有するクリームチーズ類を用いたチーズケーキでは、変形がないために組織が破壊されず、食感が良いものとなる。
本発明者らはクリームチーズ類のpH、平均脂肪球径等の各種パラメータと、クリームチーズ類を用いて焼成した製菓・製パン類の物性の変化に着目して鋭意研究を行い、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
(1)乳タンパク濃縮物を4%以上含有し、脂肪球平均径が1.8μm以下かつpH4.5〜5.7であるクリームチーズ類。
(2)10℃での硬度が5〜20Nであることを特徴とする(1)記載のクリームチーズ類。
(3)未変性βラクトグロブリンを含む(1)又は(2)記載のクリームチーズ類。
(4)未変性βラクトグロブリンを含有し、脂肪球平均径が1.8μm以下かつpH4.5〜5.7であるクリームチーズ類。
(5)前記未変性βラクトグロブリンの含有量が、0.01mg/ml以上であることを特徴とする(4)記載のクリームチーズ類。
(6)前記未変性βラクトグロブリンが、乳タンパク濃縮物由来であることを特徴とする(4)又は(5)記載のクリームチーズ類。
(7)原材料として乳タンパク濃縮物を4%以上添加し、加熱乳化工程以後に脂肪球破砕処理を行うクリームチーズ類の製造方法。
(8)前記脂肪球破砕処理工程が、均質処理工程である、(7)記載のクリームチーズ類の製造方法。
本発明のクリームチーズ類は、カット適性、調理混合適性、焼成適性を具備したものである。
本発明において、「クリームチーズ類」とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)、および公正競争規約で定めるプロセスチーズ、チーズフード、または乳等を主要原料とする食品の規格のうちいずれかに該当するものであって、かつ一般にクリームチーズあるいはクリームチーズ様食品とされるものをすべて包含するものとする。
本発明では、原料チーズに乳タンパク濃縮物を添加する。通常、乳タンパク濃縮物は、タンパク質の含有量が乾燥状態において全重量の80%以上であることを特徴としている。生乳の産地、濃縮手法や濃縮度合いにより多くの種類があるが、一般に使用されているものであればいずれも使用可能である。プロセスチーズの場合は、製品中乳糖含量が5%未満、添加量が製品固形中6分の1以下という規格があるためこの範囲で適用するものの、チーズフードおよび乳等を主原料とする食品に関しては、それぞれの規格内での添加量で適用する。
乳タンパク濃縮物を添加すると、乳成分が増加するため、ミルク風味を保持する上で効果がある。また、クリームチーズ類においては、乳タンパク濃縮物を添加すると、乳固形量の増加によりチーズの硬度および保形性が増し、カット適性が向上される。さらに、チーズケーキを焼成した際にしばしば見られる焼成後のケーキの沈みを抑制する効果がある。また、乳タンパク濃縮物には乳清タンパク質であるβラクトグロブリンが含まれるが、チーズ中に未変性のβラクトグロブリンが残存することにより、チーズのカット適性および焼成適性が向上する。未変性βラクトグロブリンは乳タンパク濃縮物の添加量が多いほどチーズ中の残存量が増加するが、未変性βラクトグロブリンの残存量を増加させるために、ホエータンパク濃縮物等、他の乳素材を添加しても良い。これらを添加する工程は限定されないが、加熱乳化以前に添加すると効果的である。加熱乳化温度および時間は、一般的にクリームチーズ類の製造に用いられている条件(例えば70℃〜95℃で5〜15分程度の保持など)であればよい。但し、加熱乳化後のチーズ中未変性βラクトグロブリンは、加熱温度が低く、加熱時間が短いほど増加するため、必要に応じて適宜調節する。
本発明において、カット適性、調理混合適性、焼成適性以外に、なめらかさ等、求められる食感や風味がある場合、それらの付与に効果的な安定剤やフレーバー・果実等を添加することも可能である。ただし、過度に安定剤を添加するとカット適性および調理混合適性が悪化するため、安定剤の添加量はこれらを維持できる範囲に適宜調整するものとする。また、本発明においては一般的なクリームチーズ類の範囲であれば特に水分値の制限はないが、特にカット適性および焼成適性を期待する場合には、45〜60%の範囲に水分値を調整することが好ましい。
本発明では、pH4.5〜5.7に調整する。pH調整剤を使用する場合は、一般にプロセスチーズ類製造で使用されているものであればいずれも使用可能である。水分値の高いクリームチーズ類においては、pHを高くすることは保水性増強と滑らかさの向上に効果がある。ただし、pHが高すぎる場合には、静電的相互作用によりタンパク質同士の結合が緩み、組織が柔らかく粘り、カット適性が損なわれるため、カット適性を付与するためにはpHは5.7以下が適当であり、特にpH5.5以下が好ましい。反対にpHが低すぎると、酸味の増加による風味の悪化や調理混合時の加温でのオイルオフが見られるためpH4.5以上が望ましい。
また、本発明では適宜乳化剤を用いることも可能である。本発明のクリームチーズ類の製造で使用できる乳化剤は、一般にプロセスチーズ類製造で使用されている乳化剤であればよく、モノリン酸ナトリウム、ジリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明のクリームチーズ類の製造方法としては、例えば、まず原料チーズに副原料を混合した後、加熱殺菌および乳化を行う。乳化機は直接加熱または間接加熱、撹拌シェアの違い等で様々存在するが、いずれの乳化機でも構わない。加熱乳化後に均質処理を加え、脂肪球破砕処理を行う。加熱殺菌および乳化の工程で、緻密な構造を形成したクリームチーズ類中のタンパク質に、小さく破砕された脂肪球を均一に分散することで、硬度が増加し、カット適性が付与される。また、均質処理によって緻密になったタンパク質および脂肪の構造は均一でかつ方向性をもつため、くずれやすく、他原料と混合する際も均一に混ざりやすい。本発明では乳化物の平均脂肪球径が1.8μm以下となるまで脂肪球を破砕する。脂肪球径の調整には均質機、乳化機の撹拌、インラインホモミキサー、バッチ式ホモミキサー、シェアポンプ、スタティックミキサー等を使用しても良い。
このようにして得たクリームチーズ類は、カット適性、調理混合適性、焼成適性を有している。
以下に本発明の実施例を示して詳細に説明する。ただし、実施例は本発明の態様の1つであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
ナチュラルクリームチーズ30kgに、乳タンパク濃縮物(オセアニア産)を5%、ポリリン酸ナトリウム0.7%、pH5.0となるようpH調整剤を添加し、最終水分量が52%となるよう加水した後、2軸クッカーを使用して85℃に達するまで加熱乳化した。その後、5MPa(実施例品1)、15MPa(実施例品2)、20MPa(実施例品3)の各均質圧で均質処理をおこなって、クリームチーズを得た。乳タンパク濃縮物(オセアニア産)を8%添加した点以外は実施例品3と同様の製造方法によって、クリームチーズを得た(実施例品4)。比較対照として、均質処理を行わない点以外は実施例品1〜3と同様の製造方法によって、クリームチーズを得た(比較例品1)。また、均質圧が25MPaである点以外は実施例品4と同様の製造方法によって、クリームチーズを得た(比較例品2)。
[試験例1]
得られたクリームチーズについて、以下に示す方法で、(1)硬度の測定、(2)カット適性の官能評価、(3)チーズの風味の官能評価、(4)調理混合適性の官能評価、(5)オイルオフの評価、(6)焼成適性の官能評価、(7)焼成後のケーキの食感の官能評価、(8)脂肪球平均径測定を実施した。
(1)硬度の測定試験
各実施例で得られたクリームチーズを、10mm角に切り出し、10℃に温度調整したものを、テクスチャーアナライザを用いて、サンプルの上面からアダプター(75mm平板プレート)を0.5mm/sの速度で降下させ、80%(8mm)圧縮した際の圧縮荷重を測定した。試験を始めてから80%圧縮した時点での荷重を硬度とした。
(2)カット適性の官能評価
官能評価により、カット適性を評価した。評価は訓練をつんだ専門パネラー20人によって、絶対評価3点法(−3:悪い、0:普通、+3:良い)で行ない、平均点が−3以上−1点未満を×、−1以上+1点未満を△、+1点以上+3点以下を○とし、平均点が−1点以上でカット適性を有するとした。
(3)チーズの風味の官能評価
官能評価により、チーズの風味を評価した。評価は訓練をつんだ専門パネラー20人によって、絶対評価3点法(−3:悪い、0:普通、+3:良い)で行ない、平均点が−3以上−1点未満を×、−1以上+1点未満を△、+1点以上+3点以下を○とし、平均点が−1点以上でチーズの風味を満たすとした。
(4)調理混合適性の官能評価
各実施例で得られたクリームチーズ325gを20℃に温め、グラニュー糖45g、全卵55g、生クリーム100gを添加して、泡だて器で100回撹拌し、その後ふるった薄力粉25gを添加しさらに100回撹拌する作業を行い、官能評価により、調理混合適性を評価した。官能評価は、他原料とすばやく均一に分散し、また混ぜる負荷が小さいものを高い評価とした。評価は訓練をつんだ専門パネラー20人によって、絶対評価3点法(−3:悪い、0:普通、+3:良い)で行ない、平均点が−3以上−1点未満を×、−1以上+1点未満を△、+1点以上+3点以下を○とし、平均点が−1点以上で調理混合適性を有するとした。
(5)オイルオフの評価
各実施例で得られたクリームチーズ325gを20℃に温め、クリームチーズ表面のオイルオフの有無を目視で確認した。
(6)焼成適性の官能評価
(4)と同様の手法で調整したチーズケーキミックスをオーブンで上下165℃、55分間、湯煎焼きし、放冷後、10℃インキュベーターで翌日まで冷却して得たチーズケーキについて、官能評価により、ケーキの沈みを評価した。官能評価は、ケーキに沈み、変形がないものを高い評価とした。評価は訓練をつんだ専門パネラー20人によって、絶対評価3点法(−3:悪い、0:普通、+3:良い)で行ない、平均点が−3以上−1点未満を×、−1以上+1点未満を△、+1点以上+3点以下を○とし、平均点が−1点以上で焼成適性を有するとした。
(7)焼成後のケーキの食感の官能評価
(6)と同様の手法で焼成したチーズケーキについて、官能評価により、食感を評価した。官能評価は、口どけが良く、なめらかなものを高い評価とした。。評価は訓練をつんだ専門パネラー20人によって、絶対評価3点法(−3:悪い、0:普通、+3:良い)で行ない、平均点が−3以上−1点未満を×、−1以上+1点未満を△、+1点以上+3点以下を○とし、平均点が−1点以上で焼成後のケーキの食感を満たすとした。
(8)脂肪球平均径測定試験
各実施例で得られたクリームチーズを、液体窒素を用いて凍結割断しクライオ走査型顕微鏡を用いて観察した。得られた画像中の脂肪球について、画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて粒子径解析を行い、脂肪球径の分布を算出した。脂肪球径分布より求めた個数平均を脂肪球平均径とした。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2013066432
上記表1の結果より、均質処理なし、均質圧5〜25MPaで作成したクリームチーズ類の脂肪球平均径は、均質圧が高いものほど均質処理したものほど小さくなる傾向がみられた。均質処理を加え、脂肪球平均径が1.8〜1.2μmである実施例品1〜4は、硬度は5〜20Nであり、カット適性および調理混合適性を有していた。また官能評価においても、実施例品1〜4については、いずれのサンプルもカット適性および調理混合適性、焼成適性を有していた。一方、均質処理なしで、平均脂肪球径が2.0μmである比較例品1では、硬度は7.8Nでありカット適性はあったが、調理混合時にオイルオフを生じる問題があった。また焼成適性および焼成後の食感も満たしていなかった。均質圧が25MPa、乳タンパク濃縮物8%である比較例品2については、硬度が22Nであり、官能評価においてもカット適性を有していなかった。実施例品1〜4、および比較例品1および2は、いずれもフレッシュでミルク感のある風味であることが確認された。
ナチュラルクリームチーズ30kgに、乳タンパク濃縮物(オセアニア産)を5%、ポリリン酸ナトリウム0.7%、pH4.5(実施例5)、pH5.7(実施例6)となるようそれぞれpH調整剤を添加して、最終水分量が52%となるよう加水した後、ケトル釜にて85℃に達するまで加熱乳化した。その後10MPaで均質処理をおこない、約35kgのクリームチーズを得た。比較対照としてpH4.4(比較例品3)、pH5.9(比較例品4)となるよう調整した以外は同様の製造方法によって、約35kgのクリームチーズを得た。
[試験例2]
各実施例で得られたクリームチーズについて、試験例1と同様の方法で、(1)硬度の測定、(2)カット適性の官能評価、(7)チーズの風味の官能評価、(4)調理混合適性の官能評価、(5)オイルオフの評価、(6)焼成適性の官能評価、(7)焼成後のケーキの食感の官能評価、(8)脂肪球平均径測定を実施した。
以上の結果を表2に示す。
Figure 2013066432
上記表2の結果より、pHが4.5、5.7である実施例品5、6はいずれについても硬度が5〜20Nの間であり、官能評価においてもカット適性、調理混合適性、焼成適性を有していた。一方、pHが4.4である比較例品3では硬度は11.1Nであり官能評価においてカット適性を有していた。しかし、調理混合時にオイルオフを生じる問題があり、官能評価において焼成適性および焼成後の食感を満たしていなかった。またpHが5.9である比較例品4では、硬度が4.0Nであり、カット適性を有しておらず、官能評価においてもカット適性を示さなかった。チーズの風味については、実施例品5、6は良好であったが、比較例品3は酸味が強く風味を損ねていた。比較例品4では、酸味はないもののフラットで濃厚感が無かった。
ナチュラルクリームチーズ30kgに、未変性βラクトグロブリンを3.5mg/ml含有する乳タンパク濃縮物(オセアニア産)を4%(実施例品7)、5%(実施例品8)、7%(実施例品9)、8%(実施例品10)配合し、ポリリン酸ナトリウム0.7%、pH5.2となるようpH調整剤を添加して、最終水分量が55%となるよう加水した後、ケトル釜にて85℃で10分間加熱乳化した。その後10MPaで均質処理をおこない、約35kgのクリームチーズを得た。また、未変性βラクトグロブリンを1mg/ml含有する乳タンパク濃縮物(オセアニア産)を使用した点以外は実施例品7と同様の製造方法によって、約35kgのクリームチーズを得た(実施例品11)。さらに、未変性βラクトグロブリンを3.5mg/ml含有する乳タンパク濃縮物(オセアニア産)を1.5%、未変性βラクトグロブリンを9.1mg/ml含有するホエータンパク質濃縮物(日本産)を1.5%使用した点以外は実施例品7と同様の製造方法によって、約35kgのクリームチーズを得た(実施例品12)。一方、比較対照として、未変性βラクトグロブリンを3.5mg/ml含有する乳タンパク濃縮物(オセアニア産)を添加しない(比較例品5)、3.5%添加した(比較例品6)点以外は同様の製造方法によって、約35kgのクリームチーズを得た。
但し、乳タンパク濃縮物(オセアニア産)中の未変性βラクトグロブリン含量は次の方法により測定した。乳タンパク濃縮物5%溶液を作成し、pHをpH4.6にあわせる。超純水で4倍希釈し、HPLCにかけた。0.1%トリフルオロ酢酸、55%アセトニトリル溶液を用い、流速0.3ml/分、40℃の条件で測定した。45分後のピーク面積を未変性βラクトグロブリン量として検出した。結果は、HPLCにかけた溶液中濃度を希釈前溶液中濃度に換算して示した。
[試験例3]
各実施例で得られたクリームチーズについて、試験例1と同様の方法で、(1)硬度の測定、(2)カット適性の官能評価、(3)チーズの風味の官能評価、(4)調理混合適性の官能評価、(5)オイルオフの評価、(6)焼成適性の官能評価、(7)焼成後のケーキの食感の官能評価、(8)脂肪球平均径測定を実施した。また、(9)未変性βラクトグロブリン量の測定を、以下の手法にて測定した。
(9)未変性βラクトグロブリン量の測定
各実施例で得られたクリームチーズ20gに、0.5Mクエン酸ナトリウム水溶液80ml、60℃に温度調整した超純粋を20ml加え、十分にホモジナイズした懸濁液のpHをpH4.6にあわせ、超純水で400mlにメスアップする。固形分を分離して得た上澄み液をフィルターでこし、HPLCにかけた。0.1%トリフルオロ酢酸、55%アセトニトリル溶液を用い、流速0.3ml/分、40℃の条件で測定した。45分後のピーク面積を未変性βラクトグロブリン量として検出した。結果は、HPLCにかけた溶液中濃度で示した。
以上の結果を表3に示す。
Figure 2013066432
上記表3の結果より、乳タンパク濃縮物を4%以上含有した、実施例品7〜11では、いずれにおいても硬度測定値は5〜20Nであり、カット適性および調理混合適性を有していた。官能評価においてもカット適性および調理混合適性を有していた。また、焼成適性および焼成後の食感を満たしていた。さらに、未変性のβラクトグロブリンがチーズから検出された実施例品7、8、9、10では、未変性のβラクトグロブリンが検出されなかった実施例品11と比べ、官能評価においてカット適性、焼成適性が高かった。乳タンパク濃縮物を1.5%、ホエータンパク濃縮物を1.5%含有した実施例品12では、βラクトグロブリンが検出された。実施例品12は、硬度測定値は5〜20Nであり、カット適性および調理混合適性を有しており、官能評価においてもこれらを満たしていた。また、焼成適性および焼成後の食感を満たしていた。一方、乳タンパク濃縮物を含有しない比較例品5では、硬度は2.5Nであり、カット適性を有していなかった。官能評価においてもカット適性、焼成適性および焼成後の食感を満たしておらず、また調理混合時にオイルオフが生じる問題があった。乳タンパク濃縮物を3.5%含有した比較例品6では、硬度は3.5Nであり、カット適性を有していなかった。官能評価においても、調理混合適性は有していたが、カット適性を満たさない結果だった。

Claims (8)

  1. 乳タンパク濃縮物を4%以上含有し、脂肪球平均径が1.8μm以下かつpH4.5〜5.7であるクリームチーズ類。
  2. 10℃での硬度が5〜20Nであることを特徴とする、請求項1記載のクリームチーズ類。
  3. 未変性βラクトグロブリンを含む、請求項1又は請求項2記載のクリームチーズ類。
  4. 未変性βラクトグロブリンを含有し、脂肪球平均径が1.8μm以下かつpH4.5〜5.7であるクリームチーズ類。
  5. 前記未変性βラクトグロブリンの含有量が、0.01mg/ml以上であることを特徴とする請求項4記載のクリームチーズ類。
  6. 前記未変性βラクトグロブリンが、乳タンパク濃縮物由来であることを特徴とする請求項4又は5記載のクリームチーズ類。
  7. 原材料として乳タンパク濃縮物を4%以上添加し、加熱乳化工程以後に脂肪球破砕処理を行うクリームチーズ類の製造方法。
  8. 前記脂肪球破砕処理工程が、均質処理工程である、請求項7記載のクリームチーズ類の製造方法。
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