JP2013066417A - パン用米粉及び米粉組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】パン類の製造に使用した際に、滑らかでしっかりしており、べたつきの少ない優れた生地性を示し、歯切れが良い食感でかつ優れたボリュームとなるパン用米粉及び米粉組成物を提供する。
【解決手段】うるち米を原料米とし、平均粒径が100μm〜150μmであり、50μm〜200μmの粒度幅に70%以上が含まれ、かつ損傷澱粉が5%未満の米粉を使用する。
【選択図】なし

Description

本発明は米粉を主原料として作られるパン用米粉及びその米粉を含む米粉組成物に関するものである。詳細には、特定の平均粒径を有し、特定の粒度分布を有する米粉及びその米粉を含む米粉組成物に関するものである。
通常、発酵パンの主原料として利用されているのは、小麦粉又はライ麦粉である。小麦粉は、水を加えて練り合わせることにより、小麦中に含まれる蛋白質のグリアジンとグルテニンが粘り気と弾力性に富むグルテンを形成し、生地に粘りが出る。グルテンは網目状の弾力のある構造で、パン酵母による発酵により生じる炭酸ガスを生地内に閉じ込める役割を有し、発酵パンの容積拡大に関与している。
我が国では小麦は輸入に頼らざるを得ない一方で、米は長年主食として用いられ、国内で唯一自給できる穀物であり、国内で容易に入手可能な原料である。近年の食生活の欧米化や多様化により米の消費は年々低下しているが、将来予測される食糧不足の問題を解消する為にも自給可能で、小麦よりも単位面積あたりの収量の多い米の用途を拡大して消費を促進し食糧自給率を上げることが望まれている。
このため、発酵パンの原料として米粉を使用することが提案されている。しかし従来和菓子や米菓子原料などに使用されてきた上新粉や上用粉などの米粉を小麦粉の代替えとしてそのまま利用しても、米には上記グルテンの前駆体タンパクが含まれないこと、また小麦粉よりも粒子径が大きい(小麦粉:70〜80μm、上新粉:100〜150μm)等の違いから、小麦粉のみを使用した場合のようには発酵生地が得られず、ボリュームや食感、食味に劣ったものしか得られなかった。
そこで、近年製パンに適した米粉の改良に関する多くの試みから、粒度が小さく、かつ損傷澱粉の低い米粉がパンの製造に適しているとされ、例えばロール粉砕機で荒粉砕した後に気流粉砕機で微粉砕して200メッシュの篩を通過する区分(粒径が88μm未満)を90%以上にした米粉を使用する方法(特許文献1)、小麦粉と米粉を特定の粒径及び粒度分布(米粉の粒度分布において粒径50〜90μmに最大頻度を有する)に調製して特定の割合で使用する方法(特許文献2)等が提案されている。しかしながら製パン作業性、食感については依然改良が求められており、また粒度を小さくする為の様々な加工処理、工程が必要であった。
特開平4−63555 特開2010−124776
そこで本発明者等は上記課題を解決する為鋭意研究を重ねた結果、意外にも米粉の平均粒径を従来考えられてきたものよりも大きいままで、粒度分布を一定に範囲に調製することで、滑らかでしっかりしており、べたつきの少ない優れた生地性を示し、歯切れが良い食感でかつ優れたボリュームとなる米粉パンが得られることを見出し、本発明を完成するにいたった。
すなわち本発明は
(1)うるち米を原料米とし、(i)平均粒径が100μm〜150μmであり、(ii)50μm〜200μmの粒度幅に70%以上が含まれ、かつ(iii)損傷澱粉が5%未満のパン用米粉、
(2)前記(1)の米粉75〜85質量部と、グルテン15〜25質量部とからなるパン用米粉組成物、および
(3)前記(2)のパン用米粉組成物を用いて製パンすることを特徴とするパン類の製造方法に関する。
平均粒径及び粒度分布を一定の範囲に調製した本発明の米粉を使用することで、滑らかでしっかりしており、べたつきの少ない優れた生地性で、歯切れが良い食感でかつ優れたボリュームとなる米粉パンを得ることができる。
本発明のパン用米粉に使用する原料米としてはうるち米であれば特に限定されず、同一の品種を原料とする場合であっても、異なる品種を原料とするものが配合された場合であっても、いずれも使用することができる。
本発明のパン用米粉に用いる米粉はその粒度分布において平均粒径が100μm〜150μmであり、50μm〜200μmの粒度幅に70%以上が含まれ、かつ損傷澱粉が5%未満である。好ましくは平均粒径が100μm〜130μmである。好ましくは50μm〜200μmの粒度幅に75%以上が含まれる。好ましくは損傷澱粉が4%未満である。
なお本発明における粒度分布は、マイクロトラック法(レーザー回析・散乱法)により測定し、平均粒径は、体積基準分布で測定した粒度分布を基準として求めた。
前記体積基準分布で測定した粒度分布とは粒子体積の全粒子体積に対する割合をいい、前記平均粒径とは、小さな粒子から累積した粒子体積が全粒子体積の半分になった時の粒径をいう。
なお、体積基準分布は、篩分けした場合における質量分布に近似した値となる。
この測定には、従来知られている測定機、例えばレーザー粒度分析機(LEEDS&NORTHRUP社製)が使用でき、具体的には「マイクロトラックMT3300EX−II」(日機装株式会社製)を用いて測定した。
本発明における「損傷澱粉」は、澱粉の一部が機械的な損傷を受けて澱粉粒が破壊された状態の澱粉である。この損傷澱粉は、澱粉粒の水透過性や酵素との結合性と関係する。損傷澱粉はAACC法に従い試料中に含まれている損傷澱粉のみをカビ由来α−アミラーゼでマルトサッカライドと限界デキストリンに分解し、次いでアミログルコシダーゼでグルコースにまで分解し、生成されたグルコースを定量することにより測定することができるが、市販のキット、例えばMegazyme社製、Starch Damage Assay Kitを用いて測定しても良い。
本発明の米粉の粒度分布及び平均粒径が上記範囲を外れると、平均粒径100μm以下の米粉を使用した場合、生地は柔らかくべたつきが有り劣った作業性で、できあがったパンは口溶けが悪い食感となる。平均粒径150μm以上の米粉を使用した場合、生地がざらつき作業性が悪い。50μm〜200μmの粒度幅が70%未満の米粉を使用した場合、生地はべたつきがあり作業性が悪く、できあがったパンは口溶けが悪い食感となるか(50μm未満の粒度の分布が多い場合)、生地がざらつき作業性が悪い(200μmを超える粒度の分布が多い場合)。
さらに損傷澱粉5%以上を含む米粉を使用した場合は、できあがったパンはボリュームが劣る。
本発明における上記特定の粒度分布及び平均粒径を有する米粉の調製方法や入手法等は特に制限されないが、例えば原料であるうるち米を胴搗き製粉、ロール製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等などを単独又は組み合わせることにより得ることができる。低い損傷澱粉値で粉砕可能である気流粉砕製粉で得られた米粉が好ましい。また必要に応じて粉砕前に水浸漬や酵素液処理等の前処理や、得られた米粉の粉砕物を篩い分けや空気分級等の分級手段を用いて粒度分布の調整を行っても良い。
本発明のパン用米粉組成物は、上記特定の粒度分布及び平均粒径を有する米粉を75〜85質量部およびグルテン15〜25質量部、好ましくは米粉を80〜85質量部及びグルテンを15〜20質量部含む。米粉の含有量が75質量部より少ないと食感が劣り、85質量部を超えると得られるパンのボリュームが小さく、得られた生地が柔らかくべたつきがあり作業性に劣る。
本発明のパン用米粉組成物において用いられるグルテンは特に制限されないが、バイタルグルテンが望ましい。
本発明のパン類の製造方法においては、さらに小麦粉、ライ麦粉、コーンフラワー、大麦粉などの穀粉類を本発明の米粉組成物80〜90質量部に対し10〜20質量部使用することができる。
また、本発明のパン類の製造方法においては、イースト、イーストフード;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉など及びこれらにα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等を行った加工澱粉類;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵その他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等の油脂類;乳化剤;食塩等の無機塩類;保存料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常パン製造に用いる副原料を使用することができる。
本発明のパンの製造方法は、パン用米粉組成物を用いる以外は、常法の製パン方法を用いることができる。例えば直捏法や中種法が挙げられる。
直捏法は、全材料を最初から混ぜて生地を製造する方法である。例えば全材料を配合、混捏し、生地をつくり、該生地を発酵した後、適当な大きさに分割し、室温でベンチタイムをとり、成形、ホイロを行なった後、焼成する。
中種法は、材料を2段階に分けて混ぜ、生地を製造する方法である。例えば小麦粉の一部にイーストと水を加えて中種生地をつくり1次発酵を行ない、残りの材料と混捏し、生地をつくる。その後室温でフロアータイムをとり、適当な大きさに分割した後、室温でベンチタイムをとり、成形、ホイロを行なった後、焼成する。
本発明の製造方法により得られるパン類としては、食パン、ロールパン、菓子パン、ドーナツ、調理パン等が挙げられる。食パンとしては白食パン、フランスパン、バラエティーブレッド、イングリッシュマフィン等が挙げられ、ロールパンとしては、テーブルロール、バターロール、コッペパン、スィートロール、バンズ等が挙げられ、菓子パンとしては、アンパン、ジャムパン、クリームパン、カレーパン等のフィリング類をパンに詰めたもの、メロンパン、レーズンパン、デニッシュペストリー、クロワッサン、ブリオッシュ等が挙げられ、調理パンとしては、ハンバーガー、ホットドック、ピザ等が挙げられる。
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
試験例1 [製パン試験1]
表2−1および表2−2の上部に記載した損傷澱粉の割合、平均粒径、粒度分布を有する実施例1〜5および、比較例1〜5のパン用米粉を用いて、製パン試験を行った。詳細には、下記の工程で製造した。
米粉80質量部、バイタルグルテン20質量部を含むパン用米粉組成物100質量部、イースト2.5質量部、塩2質量部、砂糖5質量部および水70質量部を加えた後、低速で2分間、次いで中速で5分間混捏した。そこへショートニング5質量部を加えた後、さらに低速で2分間、次いで中速で5分間混捏して生地を調製した。得られた生地を分割し、室温で15分放置した。
次にこの生地を成型して温度38℃および湿度85%の条件下で50分間最終発酵させた後、210度で30分間焼成した。
1時間の放冷後、ビニール袋に梱包した。
得られた各パンについて、体積を測定して比容積(cm3/g)を計算するとともに、表1に示す評価基準により、製パン作業性(滑らかさ)、製パン作業性(硬さ、べたつき)および食感を10名のパネラーで評価した。得られた結果(比容積と各評価の平均値)を下記の表2に示す。
Figure 2013066417
Figure 2013066417
Figure 2013066417
上記表2の結果から、実施例1〜5では、非常に良好なボリュームと製パン作業性を有し、食感に優れたパン類が得られることが確認された。
一方、損傷澱粉の割合が5%を超える比較例1では特にボリュームが劣っていた。平均粒径が100μm未満であり、50μm〜200μmの粒度幅への分布が70%未満である比較例2及び3では、得られた生地が柔らかくべたつきがあり作業性に劣り、更に歯切れが悪い食感であった。50μm〜200μmの粒度幅への分布が70%未満である比較例4及び5では得られた生地がざらつき作業性に劣っていた。平均粒径が150μm以上である比較例6でも、得られた生地がざらつき、作業性に劣っていた。
試験例2 [製パン試験2]
表3の上部に記載した割合で米粉とバイタルグルテンを含む、実施例6〜9および比較例6〜7のパン用米粉組成物を用いて製パン試験を行った。詳細には、下記の工程で製造した。なお、実施例3の米粉(平均粒径123μm、50μm〜200μmの粒度幅への分布が74%)を使用した。
パン用米粉組成物100質量部、イースト2.5質量部、塩2質量部、砂糖5質量部および水70質量部を加えた後、低速で2分間、次いで中速で5分間混捏した。そこへショートニング5質量部を加えた後、さらに低速で2分間、次いで中速で5分間混捏して生地を調製した。得られた生地を分割し、室温で15分放置した。
次にこの生地を成型して温度38℃および湿度85%の条件下で50分間最終発酵させた後、210度で30分間焼成した。
1時間の放冷後、ビニール袋に梱包した。
得られた各パンについて、体積を測定して比容積(cm3/g)を計算するとともに、表1に示す評価基準により、製パン作業性(滑らかさ)、製パン作業性(硬さ、べたつき)および食感を10名のパネラーで評価した。得られた結果(比容積と各評価の平均値)を下記の表3に示す。
Figure 2013066417
上記表3の結果から、実施例6〜9では、非常に良好なボリュームと製パン作業性を有し、食感に優れたパン類が得られることが確認された。
一方、米粉が75質量部より少ない比較例6では特に食感が劣り、米粉が85質量部を超える比較例7では得られるパンのボリュームが小さく、得られた生地が柔らかくべたつきがあり作業性に劣っていた。

Claims (3)

  1. うるち米を原料米とし、(i)平均粒径が100μm〜150μmであり、(ii)50μm〜200μmの粒度幅に70%以上が含まれ、かつ(iii)損傷澱粉が5%未満のパン用米粉。
  2. 請求項1記載の米粉75〜85質量部と、グルテン15〜25質量部とからなるパン用米粉組成物。
  3. 請求項2記載のパン用米粉組成物を用いて製パンすることを特徴とするパン類の製造方法。
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