JP7462209B2 - パン用小麦粉組成物、パン用プレミックス粉、パン生地、パン類、及びパン類の製造方法 - Google Patents

パン用小麦粉組成物、パン用プレミックス粉、パン生地、パン類、及びパン類の製造方法 Download PDF

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本発明は、パン用小麦粉組成物、それを使用したパン用プレミックス粉、パン生地、パン類、及びパン類の製造方法に関する。
パン類は、小麦粉を主体として穀粉原料、食塩、水、イースト及び任意に副原料(糖類、油脂類、粉乳類等)を混捏して得られるドウ生地を加熱焼成して得られるものであり、様々な食シーンで喫食されている。
近年の消費者の健康志向の高まりから、食物繊維、ビタミン、ミネラル等の栄養素に富む食品が注目されている。パン類においても同様の期待が寄せられており、近年小麦ふすまを使用したパン類の需要が拡大基調にある。しかしながら、小麦ふすまを使用すると、ふすま独特のふすま臭やエグミ、ざらつき感やパサつきが生じるため、パン類の食味が損なわれることがあった。
このような問題を解決するために種々検討がなされている。例えば、特許文献1には、(1)原料小麦を粗粉砕する工程(2)工程(1)で得られた粗粉砕物を、平均粒径150~200μm未満の微粉画分と、平均粒径150~200μm以上の粗粉画分(但し、この粗粉画分の平均粒径は、前者の微粉画分の平均粒径よりも大きい)に分離する工程(3)工程(2)で得られた粗粉画分を衝撃式微粉砕に供して微粉砕する工程(4)工程(3)で得られた微粉砕物から平均粒径が150~200μm未満の微粉画分を分取する工程(5)工程(2)で得られた平均粒径150~200μm未満の微粉画分と、工程(4)で得られた平均粒径150~200μm未満の微粉画分とを混合する工程を含む小麦全粒粉の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、(1)原料小麦を粗粉砕する工程(2)工程(1)で得られた粗粉砕物を、平均粒径150μm未満~200μm未満の微粉画分と、平均粒径150μm以上~200μm以上の粗粉画分(但し、この粗粉画分の平均粒径は、前者の微粉画分の平均粒径よりも大きい)に分離する工程(3)工程(2)で得られた粗粉画分を湿熱処理する工程(4)工程(3)で湿熱処理した画分を衝撃式微粉砕に供して微粉砕する工程(5)工程(4)で得られた微粉砕物から平均粒径が150μm未満~200μm未満の微粉画分を分取する工程(6)工程(2)で得られた平均粒径150μm未満~200μm未満の微粉画分と、工程(5)で得られた平均粒径150μm未満~200μm未満の微粉画分とを混合する工程を含む小麦全粒粉の製造方法が開示されている。これらの製造方法によれば、二次加工適正に優れ、二次加工品における外観、風味及び食感の良好な小麦全粒粉が得られる。これらはいずれも優れた技術ではあるが、市場の要請は更なる改良を求めている。
特開2007-61813号公報 特開2007-82541号公報
本発明の目的は、風味に優れ、ふすま臭やエグミを感じにくく、ざらつきが抑えられ、更に良好な食感を有する小麦全粒粉を含有するパン類を得るためのパン用小麦粉組成物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記パン用小麦粉組成物がGA-SX小麦全粒粉を含有することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]パン用小麦粉組成物であって、
GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦全粒粉(GA-SX小麦全粒粉)を含有する、パン用小麦粉組成物。
[2]前記GA-SX小麦全粒粉を前記パン用小麦粉組成物の全量に対して5質量%以上含有する、[1]に記載のパン用小麦粉組成物。
[3]前記GA-SX小麦全粒粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦全粒粉(GA-SA小麦全粒粉)である、[1]又は[2]に記載のパン用小麦粉組成物。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のパン用小麦粉組成物を含む、パン用プレミックス粉。
[5][1]~[3]のいずれかに記載のパン用小麦粉組成物又は[4]に記載のパン用プレミックス粉を含む、パン生地。
[6][5]に記載のパン生地を焼成してなるパン類。
[7][1]~[3]のいずれかに記載のパン用小麦粉組成物又は[4]に記載のパン用プレミックス粉を使用してパン生地を得る工程、前記パン生地を焼成する工程を含む、パン類の製造方法。
[8]前記GA-SX小麦全粒粉を、衝撃式粉砕機を用いてGA-SX小麦穀粒を粉砕することによって得る、[7]に記載のパン類の製造方法。
[9]前記GA-SX小麦全粒粉を、ロール式粉砕機を用いてGA-SX小麦穀粒を粉砕することによって得る、[8]に記載のパン類の製造方法。
本発明によれば、風味に優れ、ふすま臭やエグミを感じにくく、ざらつきが抑えられ、更に良好な食感を有する小麦全粒粉を含有するパン類を得るためのパン用小麦粉組成物を提供することができる。
本発明のパン用小麦粉組成物は、GA-SX小麦全粒粉を含有する。本発明のパン用小麦粉組成物は、GA-SX小麦全粒粉を前記パン用小麦粉組成物の全量に対して5質量%以上含有することが好ましい。5質量%以上であると、標準的な小麦全粒粉のみで製造したパンよりも全粒粉由来の穀物風味が得られる。GA-SX小麦全粒粉の含有量は、パン用小麦粉組成物の全量に対し、5~100質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることが更に好ましい。もっとも、本発明のパン用小麦粉組成物は、GA-SX小麦全粒粉そのもの(パン用小麦粉組成物の全量に対して100質量%)であってもよく、その場合であっても、従来の小麦全粒粉100質量%を使用して得られるパンよりもふすま臭やエグミを感じにくく、ざらつきが抑えられ、更に良好な食感を有するパンが得られる。
上記GA-SX小麦全粒粉とは、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られる小麦全粒粉を意味する。
普通系コムギは、異質6倍体であり、その染色体には同祖染色体であるA、B、Dの3つのゲノムがそれぞれ1~7番まで存在する(1A~7A、1B~7B、1D~7D)。
「GBSSI」とは、アミロースの合成に関与する顆粒結合性澱粉合成酵素であり、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1が、それぞれ7A、4A、7D染色体上に座上する遺伝子によってコードされている。
「SSIIa」とは、アミロペクチンの分岐鎖合成に関与する澱粉合成酵素であり、SSIIa-A1、SSIIa-B1、SSIIa-D1が、それぞれ7A、4A、7D染色体上に座上する遺伝子によってコードされている。
「酵素活性を欠損する」とは、コムギ植物体内で正常な酵素活性を有するタンパク質が機能していないこと、好ましくは正常な酵素活性を有するタンパク質が発現していないことをいう。具体的には、遺伝子配列の変異(一つ又は複数の塩基の置換、欠失、挿入、逆位、転座等の変異をいい、遺伝子領域全体の欠失も含む)、mRNA転写の欠損、タンパク質翻訳の欠損、コムギ植物体内での酵素活性の阻害等の態様が考えられ、野生型の酵素活性の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満にまで酵素活性が低下ないし欠失していれば、いずれの態様であってもよい。
GA-SX小麦全粒粉としては、酵素活性を欠損した2種類のSSIIaの組み合わせにより、以下の小麦全粒粉が挙げられる。
GA-SA小麦全粒粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦全粒粉;
GA-SB小麦全粒粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-B1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦全粒粉;
GA-SD小麦全粒粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-D1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-B1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦全粒粉。
これらの小麦全粒粉のうち、本発明の効果に優れることから、GA-SA小麦全粒粉が好ましい。このようなGA-SX小麦全粒粉は、公知の方法、例えば特開2013-188206号公報に記載の方法に従って製造することができる。
小麦全粒粉には、小麦ふすまとよばれる、小麦穀粒の製粉工程を経て得られる胚乳よりも外層の部分を含んでいる。小麦ふすまは、タンパク質やミネラル、食物繊維等の成分を豊富に含んでおり、糖質量やカロリーが低いため、本発明の小麦粉組成物を用いて得られるパンは、小麦ふすまによる生理機能向上、低糖質化及び低カロリー化等が期待できる。また、小麦ふすまを使用することにより、得られるパン類に穀物風味を付与することもできる。
小麦穀粒は、一般に胚乳、胚芽、及び胚乳よりも外層の部分で構成されている。胚乳よりも外層の部分とは、胚乳と接するアリューロン層から最外層に至るまでの部分を指し、胚乳側からアリューロン層、珠心層、種皮、管状細胞、横細胞、下皮、表皮の順で存在している(各層は別称されることがある)。外皮は、珠心層から表皮に至る6層から構成されており、これを「ふすま」と称する。果皮は、管状細胞から表皮に至る4層から構成されている。アリューロン層は、胚乳と外皮とを隔てており、澱粉を含まず、タンパク質や脂質、灰分(ミネラル)を多く含む層である。小麦穀粒の場合、外皮、アリューロン層及び胚乳の構成割合は、それぞれ小麦穀粒の6~8質量%、6~7質量%及び81~85質量%である。製粉工程において、アリューロン層は外皮(ふすま)と共に胚乳から分離される。本発明では、胚乳から分離された胚乳よりも外層の部分を「小麦ふすま」と称し、単なる外皮を意味する「ふすま」とは区別する。即ち、本発明における小麦ふすまは、アリューロン層及び外皮から構成されるものであり、胚乳及び胚芽を含まない。
なお、小麦穀粒では、生育条件や品種等により多少の増減はあるものの、胚乳、小麦ふすま及び胚芽の構成割合は、一般的に83:15:2(質量比)である。従って、本発明においても小麦穀粒(全粒)における小麦ふすまの含有量を15質量%とみなした。
小麦全粒粉とは、前記小麦穀粒の各構成成分の粉末が、前記構成割合と略同一の構成割合で含まれるものを意味する。小麦全粒粉を得る手法としては、例えば、製粉工程において、胚乳、小麦ふすま及び胚芽を分離することなく全てを粉砕して得る手法(製造方法1)、並びに胚乳画分、小麦ふすま画分及び胚芽画分の3画分に分画し、任意に小麦ふすま画分及び/又は胚芽画分を更に微粉砕した後に、それら3画分を混合して得る手法(製造方法2)等が挙げられる。具体的には、製造方法1においては、精選した小麦穀粒を任意に調質し、ピンミルやジェットミル等の衝撃式粉砕機で粉砕して小麦全粒粉が得られ、製造方法2においては、精選した小麦穀粒を任意に調質し、ロール式粉砕機等で粉砕した後、シフター等を用いて胚乳画分(小麦粉)と、大きな小麦ふすま断片が含まれる小麦ふすま画分と、胚芽画分との3画分に分画し、任意に調質してピンミル、ジェットミル、グラインダーミル等を用いて再粉砕し、これら3画分を小麦穀粒の構成割合と略同一になるように混合して小麦全粒粉が得られる。製造方法2の場合、各画分は、同一の品種又は銘柄の原料穀粒に由来するものでもよく(例えば、全ての画分がGA-SX小麦由来等)、それぞれが異なる品種又は銘柄の原料穀粒に由来するものでもよい(例えば、3画分がそれぞれGA-SX小麦由来、DNS由来、WW由来等)。
小麦穀粒を粉砕する手法としては特に限定されないが、パン類におけるふすま臭、エグミ及びざらつきを抑える観点からは、得られる小麦全粒粉中の小麦ふすまの粒度を比較的小さくするために、衝撃式粉砕機を用いてGA-SX小麦穀粒を粉砕することが好ましい。小麦ふすまの穀物風味を付与する観点からは、得られる小麦全粒粉中の小麦ふすまの粒度を比較的大きくするために、ロール式粉砕機を用いてGA-SX小麦穀粒を粉砕することが好ましい。
本発明のパン用小麦粉組成物は、上記GA-SX小麦全粒粉以外の他の小麦粉及び/又は他の小麦全粒粉を含むことが好ましく、上記GA-SX小麦全粒粉と、上記GA-SX小麦全粒粉以外の他の小麦粉及び/又は他の小麦全粒粉とからなることがより好ましい。そのような小麦粉及び/又は小麦全粒粉としては特に限定されず、公知の小麦粉及び/又は小麦全粒粉を使用できるが、例えば、GBSSI(GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1)及びSSIIa(SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1)の6種の酵素活性の欠損の組み合わせ(ただし、GA-SXを除く)で酵素活性を欠損した小麦並びにGBSSI及びSSIIaのいずれの酵素活性も欠損していない小麦穀粒から製粉した小麦粉及び/又は小麦全粒粉が挙げられる。より具体的には、食用に使用される品種又は銘柄の小麦穀粒であればいずれも好適に使用でき、例えば、ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)、ハード・レッド・ウインター(HRW)、ハード・レッド・スプリング(HRS)、No.1カナダ・ウェスタン・レッド・スプリング(1CW)、ウエスタン・ホワイト(WW)、プライム・ハード(PH)、オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW)、ユメチカラ、ミナミノカオリ、シロガネコムギ、バーミュード、アルルカン、アパシェ等の小麦穀粒を使用することができる。あるいは一般に使用されている小麦全粒粉であってもよい。GA-SX小麦全粒粉以外の他の小麦粉及び/又は小麦全粒粉は、パン用小麦粉組成物の全量に対し、0~95質量%含むことが好ましく、50~90質量%含むことがより好ましく、60~85質量%含むことが更に好ましい。
本発明のパン用小麦粉組成物は、小麦全粒粉をパン用小麦粉組成物の全量に対して5~100質量%含むことが好ましく、5~70質量%含むことがより好ましく、5~50質量%含むことが更に好ましく、5~30質量%含むことが特に好ましい。
また本発明のパン用小麦粉組成物は、更にデュラム小麦粉、ライ麦粉、コーンフラワー、大麦粉、米粉等の穀粉類;GA-SX小麦穀粒由来以外の小麦ふすま、米ぬか等の糟糠類;イースト、イーストフード;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉等の澱粉類及びこれらの澱粉類にα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等を行った加工澱粉類;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトース等の糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等の油脂類;大豆蛋白、小麦蛋白等の蛋白素材;乳化剤;増粘剤;食塩等の無機塩類;保存料;香料;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常パン製造に用いる副原料や副資材、調味料等を適宜配合してパン用プレミックス粉を得ることもできる。
本発明のパン生地は、上記パン用小麦粉組成物又はパン用プレミックス粉を含む。上記パン用小麦粉組成物又はパン用プレミックス粉に、水分を加えて混捏することで上記パン生地が得られる。混捏手段は特に限定されない。
本発明のパン類は、上記パン生地を焼成して得られる。焼成条件は特に限定されないが、例えば温度180~300℃、焼成時間5分~1時間であってもよい。なおパン類とは、小麦粉を主体とする生地をイースト発酵の後に加熱して膨化させることにより得られる多孔質性の食品を意味する。
パン類の製法として、一般にストレート法、中種法等が挙げられるが、いずれの製法を採用してもよい。パン類の種類としては、プルマン、イギリスパン等の食パン;バターロール等のロールパン;バンズ等の菓子パン;フランスパン等が挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<製造例1:衝撃式粉砕機による全粒粉の製造>
特開2013-188206号公報に記載の手法に従って得られたGA-SA小麦穀粒又は標準的な小麦穀粒(ミナミノカオリ)を精選して、加水及び調質せずに衝撃式微粉砕機(西村機械製作所社製、商品名「SPM-R200」)で粉砕してGA-SA小麦全粒粉及び標準的な小麦全粒粉を得た。
得られた小麦全粒粉を目開き500μm及び100μmの篩でふるい分けた。目開き500μmの篩上に残ったもの(500μmオン)、目開き500μmの篩を抜けて目開き100μmの篩上に残ったもの(100μmオン)、100μmの篩を抜けたもの(100μmスルー)の重量をそれぞれ測定し、それらの重量比(質量%)を表1に示す。衝撃式粉砕機で小麦穀粒を粉砕すると、小麦ふすまの約2/3(=(15-5)/15)が目開き500μmの篩を通過する程度の粒径にまで粉砕されており、ふるい分けた各画分の比率は、GA-SA小麦穀粒と標準的な小麦穀粒とで大差なかった。
Figure 0007462209000001
<製造例2:ロール式粉砕機による全粒粉の製造>
GA-SA小麦穀粒又は標準的な小麦穀粒(ミナミノカオリ)を精選して、加水及び調質せずにロール式粉砕機であるテストミル(ビューラー社製、商品名「テストミルMLU-202型」)で粉砕し、8画分に分離された小麦粉砕物を再度混合して小麦全粒粉を得て、製造例1と同様にしてふるい分けた。結果を表2に示す。ロール式粉砕機で小麦穀粒を粉砕すると、小麦ふすまの大半が目開き500μmの篩を通過しない程度に粉砕されており、ふるい分けた各画分の比率は、GA-SA小麦穀粒と標準的な小麦穀粒とで大差なかった。
Figure 0007462209000002
衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機のいずれの場合でも、篩で分けた100μmスルーの画分は、胚乳の粉砕物である小麦粉であった。500μmオンの画分は、小麦ふすま、小麦ふすまに付着して分離できなかった胚乳、小麦ふすまに付着した小麦粉が含まれていた。100μmオンの画分は、粒子径の大きい小麦粉、目開き500μmを通過する程度に粉砕された小麦ふすま及び胚芽が含まれていた。
このようにしてふるい分けられた各画分を混合して小麦全粒粉を得た。
<製造例3:イギリスパンの製造>
(1)小麦粉100質量部、水70質量部、インスタントドライイースト0.8質量部、砂糖3質量部、食塩2質量部、及び脱脂粉乳2質量部を加え、市販の製パン用ミキサー(エスケーミキサー社製、商品名「SK200」)を使用して、低速2分、中速3分、高速1分でミキシングし、更にショートニング5質量部を加え、低速1分、中速3分、高速3分でミキシングしてパン生地を得た。
(2)この生地を温度27℃、相対湿度75%の環境下で90分間発酵させ、パンチ後、更に30分間発酵させた。
(3)発酵させた生地を1個当たり220gとなるように分割した。
(4)分割後、室温で25分間のベンチタイムを取り、モルダー(成形機)を用いてパン生地を成形した。
(5)成形生地を焼型(100mm×240mm×60mm)に投入し、温度38℃、相対湿度85%の環境下で、焼型の高さに生地が膨らむまでホイロ発酵させた。
(6)ホイロ発酵後、焼型に蓋をせず200℃に予熱したオーブンに入れ、200℃で25分間焼成し、イギリスパンを得た。
<試験例1:衝撃式粉砕機を用いて製造された小麦全粒粉を使用したイギリスパン>
製造例1に従って製造したGA-SA小麦全粒粉、標準的な小麦全粒粉及び市販の小麦粉(日本製粉株式会社製、商品名「クイン」)を、表3及び4に記載の質量部で使用した以外は製造例3と同様にしてイギリスパンを製造した。なおGA-SA小麦全粒粉、標準的な小麦全粒粉及び小麦粉の合計量が100質量部となる。
得られたイギリスパンの粗熱を取った後、樹脂製袋に入れて密封して一晩静置した。その後、厚さ15mmにスライスし、熟練パネラー10名により、表5に記載の評価基準に従ってイギリスパンを評価した。なお30質量部の標準的な小麦全粒粉を配合して製造したイギリスパン(比較例3)における風味、口溶け、及びざらつきの点数を3点とし、小麦全粒粉を使用せず小麦粉のみを使用して製造したイギリスパン(比較例5)における口溶け及びざらつきの点数を5点とし、風味の点数を1点とした。結果を表3及び4に示す。評価点は、熟練パネラー10名の平均点である。
Figure 0007462209000003
Figure 0007462209000004
Figure 0007462209000005
表3~4から、GA-SA小麦全粒粉、標準的な小麦全粒粉のいずれを使用した場合でも、小麦全粒粉を配合することで風味が改善された。また、小麦全粒粉の配合割合が増加するにつれて口溶けが悪くなり、ざらつきを感じやすくなるものの、同じ配合量のGA-SA小麦全粒粉及び標準的な小麦全粒粉を含むパンを比較すると、GA-SA小麦全粒粉の方が風味及び口溶けが良好になり、ざらつきが効果的に抑制された。GA-SA小麦全粒粉が小麦粉組成物の全量に対して5質量%含む実施例1では、比較例3よりも風味が若干劣るものの、ざらつきをほとんど感じず、口溶けも良好であった。GA-SA小麦全粒粉が小麦粉組成物の全量に対して30質量%含む実施例3では、小麦ふすま由来の穀物風味を良く感じることができたが、これ以上配合するとふすま臭やエグミを感じやすくなる傾向であった。
<試験例2:ロール式粉砕機を用いて製造された小麦全粒粉を使用したイギリスパン>
製造例2に従って製造したGA-SA小麦全粒粉、標準的な小麦全粒粉及び市販の小麦粉(日本製粉株式会社製、商品名「クイン」)を、表6及び7に記載の質量部で使用した以外は製造例3と同様にしてイギリスパンを製造し、試験例1と同様に評価を行った。実施例3及び比較例7は再掲である。
Figure 0007462209000006
Figure 0007462209000007
実施例9と実施例3との対比により、ロール式粉砕機を用いて製造された小麦全粒粉を使用して得られたイギリスパンの方が、衝撃式粉砕機を用いて製造された小麦全粒粉を使用して得られたイギリスパンよりも、小麦ふすま由来の穀物風味を良好に感じることができた。一方、口溶け及びざらつきは、衝撃式粉砕機を用いて製造された小麦全粒粉を使用して得られたイギリスパンの方が優れる結果となった。これはロール式粉砕機を用いて製造された小麦全粒粉の粒度が、衝撃式粉砕機を用いて製造された小麦全粒粉の粒度よりも大きいことに起因するものと考えられる。また、試験例1の結果と同じく、GA-SA小麦全粒粉、標準的な小麦全粒粉のいずれを使用した場合でも、小麦全粒粉を配合することで風味が改善され、また、小麦全粒粉の配合割合が増加するにつれて口溶けが悪くなり、ざらつきを感じやすくなるものの、同じ配合量のGA-SA小麦全粒粉及び標準的な小麦全粒粉のパンを比較すると、GA-SA小麦全粒粉の方が風味及び口溶けが良好になり、ざらつきが効果的に抑制された。GA-SA小麦全粒粉が小麦粉組成物の全量に対して5質量%含む実施例7では、比較例10よりも風味が若干劣るものの、ざらつきをほとんど感じず、口溶けも良好であった。GA-SA小麦全粒粉が小麦粉組成物の全量に対して30質量%含む実施例9では、小麦ふすま由来の穀物風味を良く感じることができたが、これ以上配合するとふすま臭やエグミを感じやすくなる傾向であった。
<製造例4:フランスパンの製造>
(1)小麦粉100質量部、水70質量部、インスタントドライイースト0.7質量部、生地改良剤0.1質量部、食塩2質量部、モルトシロップ0.3質量部を加え、市販用の製パン用ミキサー(エスケーミキサー社製、商品名「SK-81」)を使用して、低速5分、中速4分ミキシングしてパン生地を得た。
(2)このパン生地を温度27℃、相対湿度80%で90分間発酵させ、パンチ後、更に30分間発酵させた。
(3)発酵させた生地を1個当たり60gとなるように分割した。
(4)分割後、室温で30分間のベンチタイムを取り、パン生地を棒状に成形した。
(5)成形生地を天板に乗せ、温度30℃、相対湿度85%の環境下で60分間ホイロ発酵させた。
(6)得られたホイロ発酵済みのパン生地を210℃に予熱したオーブンに入れ、210℃で20分間焼成し、フランスパンを得た。
<試験例3:衝撃式粉砕機を用いて製造された小麦全粒粉を使用したフランスパン>
製造例1に従って製造したGA-SA小麦全粒粉、標準的な小麦全粒粉及び市販の小麦粉(日本製粉株式会社製、商品名「クイン」)を、表8に記載の質量部で使用した以外は製造例4と同様にしてフランスパンを製造し、試験例1と同様に評価を行った。なお30質量部の標準的な小麦全粒粉を配合して製造したフランスパン(比較例14)における風味、口溶け、及びざらつきの点数を3点とし、小麦全粒粉を使用せず小麦粉のみを使用して製造したフランスパン(比較例15)における口溶け及びざらつきの点数を5点とし、風味の点数を1点とした。結果を表8に示す。
Figure 0007462209000008
表8より、フランスパンにおいても、GA-SA小麦全粒粉を用いることにより、標準的な小麦全粒粉を用いるよりも風味及び口溶けに優れ、ざらつきを抑制することができることが分かった(実施例13及び比較例14)。また、小麦全粒粉としてGA-SA小麦全粒粉と、標準的な小麦全粒粉とを併用した場合(実施例14)であっても、全粒粉の全量が標準的な小麦全粒粉である場合(比較例14)よりも風味及び口溶けに優れ、ざらつきを抑制できることが分かった。

Claims (9)

  1. パン用小麦粉組成物であって、
    GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦全粒粉(GA-SX小麦全粒粉)を、前記パン用小麦粉組成物の全量に対して5~50質量%の範囲で含有する、パン用小麦粉組成物。
  2. 前記GA-SX小麦全粒粉を前記パン用小麦粉組成物の全量に対して10~50質量%含有する、請求項1に記載のパン用小麦粉組成物。
  3. 前記GA-SX小麦全粒粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦全粒粉(GA-SA小麦全粒粉)である、請求項1又は2に記載のパン用小麦粉組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載のパン用小麦粉組成物を含む、パン用プレミックス粉。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載のパン用小麦粉組成物又は請求項4に記載のパン用プレミックス粉を含む、パン生地。
  6. 請求項5に記載のパン生地を焼成してなるパン類。
  7. 請求項1~3のいずれか1項に記載のパン用小麦粉組成物又は請求項4に記載のパン用プレミックス粉を使用してパン生地を得る工程、前記パン生地を焼成する工程を含む、パン類の製造方法。
  8. 前記GA-SX小麦全粒粉を、衝撃式粉砕機を用いてGA-SX小麦穀粒を粉砕することによって得る、請求項7に記載のパン類の製造方法。
  9. 前記GA-SX小麦全粒粉を、ロール式粉砕機を用いてGA-SX小麦穀粒を粉砕することによって得る、請求項7に記載のパン類の製造方法。
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